裏の樹に蝉の一つが鳴きとおす
蝉音止み遠くで一つまた鳴けり
明日朝の食事に冷やす梨・トマト
朝日が溢れみんみん蝉がよく鳴けり
西瓜切ってみな故郷をもちたがる
夕立の気配集まる金の雲
鶏頭の花色いろいろ少しずつ
押入れに毛糸あること秋立ちぬ
立秋のコロッケからりと揚がりたり
青梨の冷たき甘さ歯に染みぬ
朝顔に水遣ってから留守にする
被爆手帳も父も死にゆき原爆忌
鶏頭の花が咲き出す原爆忌
原爆忌ラジオに鳴りて朝の鐘
夜の灯に鶏頭の苗涼しかり
朝の手にセロリーの香が移りたる
築地出て炎暑の風に煽られし
葉桜の蔭から勝鬨橋がよい
炎昼の勝鬨橋の開かぬまま
炎天に静もっている築地寺
遊覧船の下りゆく川水すずし
炎天の塔より水の浜離宮
えのころの夕日の色の風が吹き
えのころを誰かさびしい草にする
ゆらゆらと蔓を伸ばして育つ朝顔
樹があれば遠くにみんみん蝉の声
みんみんの声のしてくる遠い空
みんみんの遠き声へと耳とがる
ハイビスカス瞳大きな子の目覚め
ベランダに蝶が来ていて朝涼し
夏蝶の黄がひらひらと留まれリ
夕涼の山も木立もはや淋し
夏の雨降りやみ遠く鳴く雀
みんみんに鳴かれ太陽かっと照り
朝涼の粥噴く音のほかはなき
朝焼けにぱっちり苺の花の白
かなかなに夕べさみしき灯がともり
百合の香よ涼しき風よ買い物に
朝粥に胡瓜茗荷を漬けて寝る
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