■十三夜ネット句会入賞発表■


■2016年十三夜ネット句会■
■入賞発表/2016年10月17日

【金賞】
★コスモスにうもれて子らの声がする/祝 恵子
コスモスの花に埋もれて遊ぶ子らの声が、コスモスの花の中に響く。コスモスに響く子らの声が天使のように清らかに、無垢に思える。(高橋正子)

【銀賞2句】
★十三夜ふと口ずさむ校歌かな/河野啓一
十三夜の月は淋しさを誘う。その淋しさは、また青春へのなつかしさでもあって、思わず、校歌が口をついて出る。(高橋正子)

★寝入る児に童話本閉ず十三夜/小川和子
読み聞かせていた童話に聞き入りながら、幼子は寝入ってしまった。静かに童話の本を閉じると、折しも今宵は十三夜。安らかな子の寝息に十三夜の月が光を投げている。(高橋正子)

【銅賞3句】
★抱きし子の鈴音響かせ秋祭り/藤田洋子
子を抱いて秋祭りに連れ出す。祭りの法被や鈴を着けられているのだろう、その鈴がりんりんと可愛く響く。その響きで、嬰児も祭りに加わっているのだ。(高橋正子)

★高原のベンチに?ける林檎の香/柳原美知子
高原と林檎の香りの取り合わせが、すっきりと爽やかだ。木から採ったばかりの林檎の香り、淡いグリーンの香りとしてイメージされる。(高橋正子)

★背筋立てきっぱり歩く冬支度/廣田洋一
背筋を立てて、きっぱりと歩く。その姿勢は「冬」という季節の本質であるのだ。冬支度の心構え。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★十三夜ふと口ずさむ校歌かな/河野啓一
最高の名月なので名残の月とも言われる十三夜を見て、ふと青春時代の懐かしいいろいろな事を思い出し校歌を口ずさむ作者の若かりし姿が鮮明に見えて来ます。
(小口泰與)
澄み切った夜空に輝く十三夜を愛で、眺めていれば、よって来たる遠い過去から今迄の長い年月を想い出します。何十年も会っていない学校時代の友人は、今頃どうしているのかな?など少し夜冷えもしている十三夜の感慨に、校歌を口ずさんでいます。 (桑本栄太郎)

★寝入る児に童話本閉ず十三夜/小川和子
子供さんに童話を聞かせて寝付かされた頃は9時ごろでしょうか。やっと空を見上げると、薄雲のベールに覆われた十三夜を見られたのではないでしょうか。私も広島でこの時間にこのような十三夜を見ました。 (谷口博望/満天星)

★コスモスにうもれて子らの声がする/祝 恵子
子どもの背丈を越えるほどに咲き群れているコスモス。子ども達はコスモスの迷路に入りこんで楽しそう。うららかな秋のひと時が思われます。 (小川和子)

★枝垂れたるままびっしりと萩は実に/佃 康水
可憐な紅白の花を咲かせ枝垂れて風に揺れていた萩が、いつの間にかそのままの姿で実をつけていて、秋の深まりを実感すると共にその生命力に感動します。(柳原美知子)

★伊予小富士稜線丸き十三夜/藤田洋子
伊予小富士の稜線が十三夜の月明かりに丸みを帯びて感じられ、幻想的な十三夜の景がしみじみと胸に沁みわたります。(柳原美知子)

★背筋立てきっぱり歩く冬支度/廣田洋一
★抱きし子の鈴音響かせ秋祭り/藤田洋子
★高原のベンチに?ける林檎の香/柳原美知子

【高橋正子特選/8句】
★夜半澄めば肌に染み入る後の月/小川和子
後の月の透明感のある美しさと清らかな月光は、本当に「肌に染み入る」ように心身を安らかにしてくれるような気がします。 (柳原美知子)

★星月夜駅舎に隠れ遠い空/高橋句美子
月も星も輝いているはずが駅舎に隠れて遠くに感じる。雲ののない秋の夜空が幻想的に感じます。 (高橋秀之)

★ごんぎつね出てきそうなり彼岸花/井上治代
江戸-明治期の民話に基づき創作された童話・ごんぎつね。戦後テレビその他で大変よくしられるようになりましたが、そうした庶民性と「彼岸花」という呼称がよく響き合っていると思いました。ほのぼのとした一句ですね。(河野啓一)

★十三夜ふと口ずさむ校歌かな/河野啓一
★背筋立てきっぱり歩く冬支度/廣田洋一
★コスモスにうもれて子らの声がする/祝 恵子
★抱きし子の鈴音響かせ秋祭り/藤田洋子
★高原のベンチに?ける林檎の香/柳原美知子

【入選/7句】
★富士山が秋の車窓に影絵となる/多田有花
新幹線や東名高速で行き来していると。光の方角によっては富士山が影絵のように見えるときがあるのでしょうね。素晴らしい大景を描写されたものと思いました。(河野啓一)

★朝明けやどどっと畦の曼殊沙華/小口泰與
朝の空の茜色と地の赤い花の大きな景色を読み込んだ美しい句と思います。 (廣田洋一)
朝の澄んだ大気の中、「どどっ」と畦に咲き揃う曼珠沙華、ことさらさやかで澄明な秋の到来に、季節の喜びを感じさせてくれます。(藤田洋子)

★一枚を羽織り二夜の月を愛づ/桑本栄太郎
十五夜の頃はまだ暑いくらいでしたが、十月も半ばを過ぎ、朝晩は肌寒さを覚えるようになりました。季節の移り変わりの微妙な感覚がさらりと詠まれていて好きです。 (多田有花)

★虫の背に月影青き十三夜/河野啓一
小さな虫の背にも、十三夜の月の光が降り注ぎ、静かに夜が更けてゆく様子が感じられます。細かな観察と流れるような五、七、五の調べがすばらしいと思いました。(井上治代)

★鰯雲茜に染まりゆくかなた/柳原美知子
茜に染まる夕暮れのいわし雲が晴香彼方の遠い空にある。秋ならではのひとときを感じます。(高橋秀之)

★藤袴へアサギマダラは命継ぐ/谷口博望 (満天星)
どちらも生存数の減少が懸念されている希少生物かと思いますが、大げ差に言えばお互いに相手を必要とする共生関係なのでしょうね。うつくしいちょうときれいなはな。興味深く読ませていただきました。(河野啓一)
海を渡り長距離を移動するアサギマダラ、淡い藤袴に浅葱色の羽の紋様も美しく、命を継ぐアサギマダラに心寄せ、愛しむ眼差しを感じます。(藤田洋子)

★電車待つホームにふたり十三夜/高橋秀之
日中の喧騒とは違ってひっそりと静まるプラットホーム。ふたりとなるホームに秋の夜の澄んだ空気が漂い、深まる秋の十三夜です。 (藤田洋子)

■選者詠/高橋信之
★いさぎよく切られ南瓜の内部の黄
この南瓜は、見事というほど、すぱっと、いさぎよく切られている。そして中は充実した黄色の実となっている。昨今はハロウィンの南瓜を思い出させるが、収穫への感謝でもある。(高橋正子)

★さわやかに朝日射し込むわが書斎
書斎へ今、朝日が射し込み心も晴れ晴れした今日一日のスタートです。と同時に書斎もきれいに整理され、さっぱりとした快い佇まいまでも見えて参ります。 (佃 康水)
大変な残暑が去って急に朝晩寒くなりました。それだけに書斎に朝日が差し込むさわやかさと温かみは何物にも代えられないと思います。共感の一句です。(河野啓一)

★さわやかな畳の上に寝転べる
秋の日差しがほんのりと畳をあたため、秋風がさわやかに感じられる和室。その畳の上に伸び伸びと寝転ぶ心身ともに安らかな至福の秋のひとときです。(柳原美知子)

■選者詠/高橋正子
★木の実落つる音に子の耳鋭くなれり
小さな子どもは何にでも素直にまた敏感に反応し興味を示します。そういった時期に自然豊かな場所へご一緒され、益々感性も養われるのではと思います。素早く反応を示す子に作者の喜びも伝わって参ります。 (佃 康水)

★蝶ふたつ野菊をこぼれ地に遊ぶ
蝶が遊んでいる、ふたつで遊んでいる。野菊の後は地に下りた蝶たち。「野菊をこぼれ」とは、新鮮な思いです。 (祝恵子)
「蝶ふたつ野菊をこぼれ」がすばらしいと思いました。秋チョウがもつれ合うように花からこぼれおち、地面すれすれにあそんでいる光景が目に浮かびます。晩秋の虫たちへの愛情も感じられる情景です。 (河野啓一)

★天空の紺ひと色の十三夜
月夜の空をすっきりと直截に言い切られた御句と感じました。(河野啓一)

■互選高点句
●最高点(5点/同点3句)
★電車待つホームにふたり十三夜/高橋秀之
★コスモスにうもれて子らの声がする/祝 恵子
★高原のベンチに?ける林檎の香/柳原美知子

●次点(4点/同点2句)
★十三夜ふと口ずさむ校歌かな/河野啓一
★寝入る児に童話本閉ず十三夜/小川和子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

●十三夜ネット句会清記●


2016年10月16日

■十三夜ネット句会清記

16名48句

01.富士山が秋の車窓に影絵となる
02.大橋の上を流れるうろこ雲
03.木の実落つ音夕暮れの森に
04.虫の背に月影青き十三夜
05.十三夜ふと口ずさむ校歌かな
06.同窓の集いに一句十三夜
07.今朝の畦忽と消えたる蜻蛉かな
08.朝明けやどどっと畦の曼殊沙華
09.常よりも今朝の赤城山(あかぎ)や水澄めり
10.京なれや路地にゆかしき実むらさき

11.月代や今宵の空は特別ぞ
12.一枚を羽織り二夜の月を愛づ
13.万歳の歓喜の赤や十三夜
14.藤袴へアサギマダラは命継ぐ
15.緑なる榧(かや)の実拾ふ山路かな
16.ごんぎつね出てきそうなり彼岸花
17.秋の飛行機夕日にむかい落ちてゆく
18.正装し月ゆっくりと昇りゆく
19.線路際電車になびく尾花かな
20.木漏れ日に一つ照りたる烏瓜

21.背筋立てきっぱり歩く冬支度
22.電車待つホームにふたり十三夜
23.鉢巻を締めて応援運動会
24.ただいまと帰れば秋刀魚の晩ご飯
25.藤袴池の周囲で背を伸ばす
26.コスモスにうもれて子らの声がする
27.芙蓉花蜂は切り取り持ち去りぬ
28.いさぎよく切られ南瓜の内部の黄
29.さわやかに朝日射し込むわが書斎
30.さわやかな畳の上に寝転べる

31.おもたせの薄茶点て合う十三夜
32.枝垂れたるままびっしりと萩は実に
33.亀島の甲羅に乗りて松手入れ
34.夜半澄めば肌に染み入る後の月
35.寝入る児に童話本閉ず十三夜
36.日照り雨受けて真っ赤にみずきの実
37.天空の紺ひと色の十三夜
38.木の実落つる音に子の耳鋭くなれり
39.蝶ふたつ野菊をこぼれ地に遊ぶ
40.伊予小富士稜線丸き十三夜

41.抱きし子の鈴音響かせ秋祭り
42.ネオンの灯揺らぐ秋霖中也の碑
43.高原のベンチに?ける林檎の香
44.鰯雲茜に染まりゆくかなた
45.田の闇を仰げば仄かに後の月
46.星月夜駅舎に隠れ遠い空
47.見上げるとすすき穂のみな銀色に
48.一面のどんぐり踏みしめ音鳴らす

※互選を開始してください。5句選をし、その中の一番好きな句にコメントしてください。
(選句期間:10月16日午後6時~午後9時)

●10月月例(十三夜)ネット句会のご案内●


●10月月例(十三夜)ネット句会のご案内●

①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠発行所にお申し込みください。
②当季雑詠(十三夜・秋の句)計3句を下記ブログ<コメント欄>にお書き込みください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d
③投句期間:2016年10月10日(体育の日)午前0時~10月16日午後5時
④選句期間:10月16日午後6時~午後9時
⑤入賞発表:10月17日午前10時
⑥伝言・お礼等の投稿は、10月17日午前10時~10月18日午前10時

■2016年子規忌ネット句会入賞発表■


■2016年子規忌ネット句会■
■入賞発表/2016年9月20日

【金賞】
★子規の忌の汽笛を曳けり予讃線/藤田洋子
子規は、松山の三津浜港から上京や帰郷している。子規の時代は予讃線はまだ開通していないが、高松・宇和島間の瀬戸内沿岸を走る列車の汽笛が長く響くのを聞けば、思いは子規へと届く。子規は松山人の誇りである。(高橋正子)

【銀賞2句】
★野にボール弾み歓声子規忌来る/河野啓一
子規は野球の用語を日本語に翻訳したり、野球を楽しんでいた。子規の幼名は処之助(ところのすけ)で、のちに升(のぼる)と改めた。「野ボール」「野球」もそれに因む。図らずも野にボールが弾んで、歓声が上がっている。元気な折の子規を思い出す。(高橋正子)

★高々と無月の池を魚の跳ぶ/佃 康水
真実味のある句。無月の池を魚が跳び、水音が跳ねる。無月の闇の強さ、跳ぶ魚の力強さに、作者の前向きな力に訴えるものがある。(高橋正子)

【銅賞3句】
★道後へと旅す日ありき獺祭忌/小川和子
子規忌は獺祭忌とも呼ばれる。子規と言えば、多くの人は道後を思い出す。子規の育った松山道後へ旅をしたことが、懐かしく偲ばれる。子規への親しみが湧くというもの。(高橋正子)

★夕月夜赤子抱く娘の傍らに/藤田洋子
夕月のかかる夜、赤子を抱く娘の傍に、その母がいる。母と娘、その赤子の円居が幸せで、切ないまでに、やさしく、温かい詩情ある句だ。(高橋正子)

★辛夷の実孫それぞれの自己主張/谷口博望 (満天星)
辛夷の実は、その名の言われになったように、ごつごつと、握りこぶしのようだ。夏が過ぎ、充実の秋になり、孫それぞれを観察していると、それぞれ、個性があって、頑なまでに、自己主張がある。それも愉快で、頼もしいことだろう。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★野にボール弾み歓声子規忌来る/河野啓一
正岡子規のあまり知られていない一面に野球に大変親しみ、自ら選手として活躍を行い、明治の導入時のルールの「打者」「走者」「四球」「飛球」などの野球用語も彼が翻訳を行い、普及に努めたといわれている。子規忌の9月19日の頃の爽やかな季節が思われる。 (桑本栄太郎)
野球が大好きだったという子規。のぼるという本名にかけて「のぼーる」と号したとか。忌日の俳句でありながら明るく楽しく、子規らしさも溢れており斬新です。 (多田有花)

★青年に声を掛け居り秋の畑/桑本栄太郎
畑の若い人に思わず声をかけたくなるような収穫期の情景が想像されます。稔りの秋の作物は何だったのでしょうか。 (河野啓一)

★辛夷の実孫それぞれの自己主張/谷口博望 (満天星)
辛夷の実はそれぞれ、面白い形をしています。お孫さんに目を向けられ、一人ひとりの個性があり、実とお孫さんを自己主張ととらえられたのが面白いですね。 (祝恵子)

★子規の忌の汽笛を曳けり予讃線/藤田洋子
雨模様の静かな子規忌、故郷の鉄路より子規を偲ぶかのように汽笛が尾を曳き、秋の深まりを感じさせてくれます。(柳原美知子)

★夕月夜赤子抱く娘の傍らに/藤田洋子
夕月夜は宵の間だけ月の有る夜と聞いていますがとても詩情がありますね。夕月夜のもと、赤子を抱いている我が子と共に、幸せな時間を共有され、さぞかし至福なひと時を過ごされたことでしょう。親と子そしてお孫さんとの温かいご家庭に胸が熱くなります。 (佃 康水)

★天心の月に時計が十一時/高橋正子
就寝前の良きひと時を得た。これも良き生活の「ひと時」であり、「天心の月」は美しく、誰もが共有し得る世界だ。(高橋信之)

★高々と無月の池を魚の跳ぶ/佃 康水
真実味のある句。無月の池を魚が跳び、水音が跳ねる。無月の闇の強さ、跳ぶ魚の力強さに、作者の前向きな力に訴えるものがある。(高橋正子)

★道後へと旅す日ありき獺祭忌/小川和子
子規忌は獺祭忌とも呼ばれる。子規と言えば、多くの人は道後を思い出す。子規の育った松山道後へ旅をしたことが、懐かしく偲ばれる。子規への親しみが湧くというもの。(高橋正子)

【高橋正子特選/8句】
★寝転んだ先に大きく秋の空/高橋秀之
大きな世界だ。日常で捉えることが出来たのがいい。(高橋信之)

★曼珠沙華ゆらす川風水の音/柳原美知子
風と水を捉えた。「曼珠沙華」が捉えたのであり、作者が捉えたのである。広々として深い俳句だ。(高橋信之)

★赤とんぼバンジージャンプで子ら跳ねる/祝恵子
バンジージャンプの子らに赤とんぼを添えた。作者の眼がいい。生き生きとして美しい世界だ。(高橋信之)

★夕月夜赤子抱く娘の傍らに/藤田洋子
宵に現れ夜半には没する月の夜、可愛い赤ん坊を抱く娘さんの傍らで静かに親子の幸せを感じている素敵なおばあさんの姿が感じられて素晴らしい句ですね。 (小口泰與)

★野にボール弾み歓声子規忌来る/河野啓一
子規は野球の用語を日本語に翻訳したり、野球を楽しんでいた。子規の幼名は処之助(ところのすけ)で、のちに升(のぼる)と改めた。「野ボール」「野球」もそれに因む。図らずも野にボールが弾んで、歓声が上がっている。元気な折の子規を思い出す。(高橋正子)

★子規の忌の汽笛を曳けり予讃線/藤田洋子
子規は、松山の三津浜港から上京や帰郷している。子規の時代は予讃線はまだ開通していないが、高松・宇和島間の瀬戸内沿岸を走る列車の汽笛が長く響くのを聞けば、思いは子規へと届く。子規は松山人の誇りである。(高橋正子)

★高々と無月の池を魚の跳ぶ/佃 康水
真実味のある句。無月の池を魚が跳び、水音が跳ねる。無月の闇の強さ、跳ぶ魚の力強さに、作者の前向きな力に訴えるものがある。(高橋正子)

★今日子規忌遠きところに住む子規よ/高橋信之
「子規忌」がこの句の主題であり、中七の「遠きところに」が作者の思いである。作者の詩心がそこにある。詩は作者のごく近くにあることも、また遠くにあることもある。(高橋信之)

【入選/5句】
★指さして城を教える秋の頂/多田有花
遠いところの風景を身近に引き寄せた。上五の「指さして」がいい。「秋」を絞りこんで詠んだのだ。(高橋信之)

★常夜灯がぽつぽつ灯る秋の夜/髙橋句美子
「秋の夜」を詠んで、「ぽつぽつ灯る」がいい。作者自身の言葉だ。(高橋信之)

★雨の萩雫受けては庭巡る/ 祝恵子
雨に濡れた萩も清々しく、萩に触れ萩に心を寄せる作者の姿に、しっとりと澄んだ秋の気配が感じられます。 (藤田洋子)

★波打ちて露地に溢るる枝垂れ萩/ 佃 康水
萩の花が咲きみちる季節ですね。路地をふさぐほどみごとに咲いた枝垂れ萩が圧巻です。 (小川和子)

★白波の仁王立ちなる野分かな/小口泰與
「仁王立ち」と言い切ったところがいい。作者の思いが無理なく言葉となった。(高橋信之)

■選者詠/高橋信之
★今日子規忌遠きところに住む子規よ
「子規忌」がこの句の主題であり、中七の「遠きところに」が作者の思いである。作者の詩心がそこにある。詩は作者のごく近くにあることも、また遠くにあることもある。(高橋信之)

★遠くの空仰ぐ今日子規忌なれば
作者は長く愛媛にお住まいでした。現在は松山を離れ、横浜に居を移しておられます。今日は子規の忌日、松山で過ごした日々が思い出され、それゆえの「遠くの空」です。さりげない言葉の中に作者のさまざまな思いが詰っています。 (多田有花)
「遠くの空」に込められた今日の「子規忌」なればこその感慨がひしひしと伝わります。作者の仰ぐ「遠くの空」に、明治の偉大な文人、子規へのはるかな思いを抱かせていただきました。(藤田洋子)
松山に生まれ、明治期を生きた子規ですが、明治も遠くなり、御句からは時空をこえた子規への思いが深く伝わってきます。(小川和子)

★散歩に出る一歩踏み出て秋高し
家から一歩足を踏み出すと自然と秋の澄み切った大空が目にとびこんできます。爽やかな風に包まれ、秋の深まりを楽しみながら散歩されるお姿が目に浮かぶようです。 (柳原美知子)
日頃から花冠俳句やその他の業務にご多用の中、気分転換にと散歩に出られました。その一歩に秋空の高く澄み切ったさまを瞬時にして感じとられたのでしょうか。作者の直観がそのまま清々しく伝わって参ります。(佃 康水)

■選者詠/高橋正子
★栗飯にぐっとすずしき夜がここに
栗ご飯が美味しい時期になり、暑かった夏の夜が終わり涼しい秋の夜の季節がここにあります。 (高橋秀之)

★天心の月に時計が十一時
就寝前の良きひと時を得た。これも良き生活の「ひと時」であり、「天心の月」は美しく、誰もが共有し得る世界だ。(高橋信之)

★糸瓜棚思い出ふかき昭和かな
「昭和」も思い出ふかき歳月となった。上五に置いた季語の「糸瓜棚」がいい。中七の「思い出」とも、また下五の「昭和」ともふかく関わって一句をなしている。(高橋信之)

■互選高点句
●最高点(6点)
★子規の忌の汽笛を曳けり予讃線/藤田洋子
子規は、松山の三津浜港から上京や帰郷している。子規の時代は予讃線はまだ開通していないが、高松・宇和島間の瀬戸内沿岸を走る列車の汽笛が長く響くのを聞けば、思いは子規へと届く。子規は松山人の誇りである。(高橋正子)

●次点(5点)
★高々と無月の池を魚の跳ぶ/佃 康水
真実味のある句。無月の池を魚が跳び、水音が跳ねる。無月の闇の強さ、跳ぶ魚の力強さに、作者の前向きな力に訴えるものがある。(高橋正子)

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)

■子規忌ネット句会清記


2016年9月19日

■子規忌ネット句会清記
14名42句

01.明け初めて目覚めさやかに虫の声
02.野にボール弾み歓声子規忌来る
03.笹の葉の軒端に揺れて星まつり
04.青年に声を掛け居り秋の畑
05.秋きざす風の葉擦れの音さえも
06.乙訓の風の田道や秋の声
07.落鮎や利根の川面は夕日蹴る
08.走り根の鳴虫山の虫鳴けり
09.白波の仁王立ちなる野分かな
10.指さして城を教える秋の頂

11.薄雲を透かしほのかに今日の月
12.床に就くころは無月となっており
13.遠くからかすかに届く法師蝉
14.寝転んだ先に大きく秋の空
15.秋の月雲に隠れてぼんやりと
16.辛夷の実孫それぞれの自己主張
17.旅順へと広島発ちし子規忌かな
18.むら雲や流るるごとく今日の月
19.赤とんぼバンジージャンプで子ら跳ねる
20.吾亦紅活けられ野の原風の原

21.雨の萩雫受けては庭巡る
22.栗飯にぐっとすずしき夜がここに
23.天心の月に時計が十一時
24.糸瓜棚思い出ふかき昭和かな
25.常夜灯がぽつぽつ灯る秋の夜
26.台風が過ぎてまた来て台風裡
27.糸瓜忌の街空覆う雲灰色
28.句碑の青まさり子規忌の街に雨
29.子規の忌の汽笛を曳けり予讃線
30.夕月夜赤子抱く娘の傍らに

31.波打ちて露地に溢るる枝垂れ萩
32.泉庭へ秋果供わる野点席
33.高々と無月の池を魚の跳ぶ
34.道後へと旅す日ありき獺祭忌
35.友等との円居懐かし青蜜柑
36.ひもすがら樹にも草にも雨月かな
37.曼珠沙華ゆらす川風水の音
38.蜜柑青々と枝先まで垂るる
39.朝よりの雨の田に沁む子規忌かな
40.遠くの空仰ぐ今日子規忌なれば

41.今日子規忌遠きところに住む子規よ
42.散歩に出る一歩踏み出て秋高し

※互選を開始してください。
5句選をし、そのうちの一句にコメントをお願いします。

●9月月例ネット句会のご案内●


●9月月例ネット句会のご案内●

①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠発行所にお申し込みください。
②当季雑詠(秋の句)計3句をブログ<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2016年9月11日午前0時~9月19日(子規忌・敬老の日)午後5時
④選句期間:9月19日(子規忌・敬老の日)午後6時~午後9時 5句選、そのうちの一句にコメントをお願いします。
⑤入賞発表:9月22日(秋分の日)午前10時
⑥伝言・お礼等の投稿は、9月22日(秋分の日・木)午前10時~9月23日(金)午前10時

◆ご挨拶/8月ネット句会(句会主宰:高橋正子)◆


ご挨拶
8月句会は、リオのオリンピックも終盤に入った21日に開催しました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。11名33句の投句がありました。参加者はいつもより少し少なかったですが、その方らしい秀句があって、楽しく拝読しました。開催してよかったと思いました。
ラジオ深夜便を聞いていますと、七十二候寄せてピアノの曲を弾いてくれます。七十二候について、去年の暮あたりからよく聞くようになりました。七十二候は五日ごとに変わる季節ですから、より細かく季節を感じ、それに合わせた生活を楽しもうという世の中の傾向かもしれません。私たちは意識することなく、季節の微妙な変化を句に詠んでいます。そして、その微妙な変化をよく捉えた句に、感銘を受けたり、感心したりして、句会の面白さになっていると思います。今月の八月ネット句会にもそんな句が多くあったことを喜びたいと思います。選とコメントをありがとうございました。最後になりましたが、入賞の皆様おめでとうございます。来月の句会を楽しみにご健吟ください。これで、八月月例ネット句会を終わります。

◆入賞発表/8月月例ネット句会◆


■2016年8月月例ネット句会■
■入賞発表/2016年8月22日

【金賞】
★一筆を画布に添えけり秋気澄む/小口泰與
秋になると絵心が動く。画布に一筆添えると、秋らしく、色だけでなく、空気も澄んでいる。すっかり秋の景色になった。こちらまで心が澄み、絵を描きたくなる。(高橋正子)

【銀賞2句】
★籾殻に隠れし林檎香り立つ/廣田洋一
木箱に籾殻と一緒に詰められた林檎。箱の蓋を開ければ、すぐさま林檎の香りがしてくる。籾殻に隠れた林檎は、私には昭和の思い出とともに記憶に残っている。(高橋正子)

★啼き合いて秋燕万羽葦の原/ 佃 康水
燕が南の国へ帰るときがきた。それぞれの場所で過ごしていた燕たちは、千羽も万羽もというほど集まって、旅立つ前を過ごす。葦原に集まって啼きあっている。旅立つ前の忙しさと一抹のさびしさを思う。(高橋正子)、

【銅賞3句】
★鰯雲白きを見れば旅心/河野啓一
鰯雲が白く空高くに広がるのをみれば、誰の心にも遠くへ、旅へ、出たい気持ちが湧くのだろうと思う。(高橋正子)

★カマキリの怒りは吾へ指差せば/祝恵子
カマキリは攻撃されると大きな鎌を振り上げる。カマキリを指差しただけで、怒りが自分に向かうとは。いよいよ命短くなったカマキリの抵抗か。(高橋正子)

★子らの乗る飛機遠ざかる鰯雲/ 佃 康水
帰省した子供たちが、空港から帰路に就く。子らの乗った飛行機はぐんぐん小さくなって、鰯雲の広がりのなかに消えた。一抹のさびしさをまた会える楽しみに。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★一筆を画布に添えけり秋気澄む/小口泰與
俳句を嗜む人が秋の到来を待ちわびるように、絵を描く事に嗜みのある方も秋の景色の到来を待っているものです。日中はまだ残暑が厳しいながらも、そこはかとなき秋の気配に絵筆を執った作者である。一筆を画布に添えるとの措辞に、その心情がよく表された。 (桑本栄太郎)

★籾殻に隠れし林檎香り立つ/廣田洋一
林檎箱を開けると一杯に詰まった籾殻の中に林檎が整然と並んでいる。その林檎箱を開けると林檎の素晴らしい香りが漂って食欲をさそう。秋の素敵な景ですね。 (小口泰與)

★鯔飛ぶや鷺の佇む被爆川/満天星
★啼き合いて秋燕万羽葦の原/ 佃 康水
★子らの乗る飛機遠ざかる鰯雲/ 佃 康水
★カマキリの怒りは吾へ指差せば/祝恵子
★一本の鉢植え甘藷の葉は繁り/祝恵子
★切り分けて冷えたる西瓜の赤尖る/ 髙橋正子

【高橋正子特選/8句】
★籾殻に隠れし林檎香り立つ/廣田洋一
木箱に入った林檎、籾殻に手を入れ探したものです。懐かしい思い出です。(祝恵子)

★街路樹に秋蝉小さく鳴いている/髙橋句美子
先日、公園の木々で啼いている秋の蝉に初めて遭遇し、とても嬉しく思いましたが、御句の「秋蝉小さく鳴いている」の措辞に小さな秋を見つけた!の思いと、夏蝉から秋蝉に変わったばかりのまだ弱々しい蝉のすがたを見せて頂きました。(佃 康水)

★鰯雲白きを見れば旅心/河野啓一
先日、飛行場で小さな鰯雲をみました。澄んだ青空へ白い鱗が美しく並んでいました。あの一つ一つの白い鱗を見ると秋への移ろいが感じられ、何となく侘しさも有り、何処かへ旅をしたい気持ちも湧いて来ますね。(佃 康水)

★一筆を画布に添えけり秋気澄む/小口泰與
★次次にかなかならしく鳴きにけり/小口泰與
★啼き合いて秋燕万羽葦の原/ 佃 康水
★子らの乗る飛機遠ざかる鰯雲/ 佃 康水
★回覧板持ちゆけば知る地蔵盆/祝恵子

【入選/4句】
★名乗り出で寸暇惜しむや法師蝉/桑本栄太郎
蝉の最後に出て来る法師蝉の鳴き声を上手く表現している。 (廣田洋一)

★木槿咲き客の送迎定食屋/廣田洋一
お好み屋の玄関に木槿が咲いているのを見たことがありますが、同じ情景をうまく詠われていると思いました。(満天星)

★雨上がり晴れたる空に秋の雲/廣田洋一
この時期の雨はわずかの時間にまとまって降るので、雨が上がるときも気持ちいいぐらいすっきりと上がります。その雨上がりの空に広がる秋の雲に、夏から秋へ移る季節が感じられます。 (高橋秀之)

★初鳴きの鈴虫音色がぎこちなく/高橋秀之
草むらではもう鈴虫が啼き始めたのですね。鈴を鳴らすような澄んだリーン、リーンと言う声が聞こえますが、如何にも涼しそうです。まだまだぎこちなく練習中なのでしょうか。本格的な秋ももうすぐですね。
(佃 康水)

■選者詠/高橋信之
★じゃがいもときゅうりのサラダ卓に盛らる
散文的で平易なな記述ながら、山盛りで豊かな秋の食卓を感じさせます。ユニークで面白いと思いました。(河野啓一)

★卓上の西瓜が切られ内部の赤
★団らんの卓に西瓜の赤楽し

■選者詠/高橋正子
★切り分けて冷えたる西瓜の赤尖る
真っ赤に熟れた新鮮な西瓜を良く冷やし、雫を滴らせながら頂く味は何とも言えません。切り分けた時のあの尖った部分が一段と美味で、いち早くかぶり付きたくなります。如何にも美味しそうな西瓜が目に浮かびます。(佃 康水)

★クーラーに吾亦紅活け秋呼べり
★薄まりし藍の色なる牽牛花

■互選高点句
■互選高点句
●最高点(5点)
★子らの乗る飛機遠ざかる鰯雲/ 佃 康水

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

●8月月例ネット句会のご案内●


●8月月例ネット句会のご案内●

①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠発行所にお申し込みください。
②当季雑詠(秋の句)計3句をブログ<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2016年8月18日(木)午前0時~8月21日(日)午後6時
④選句期間:8月21日(日)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:8月22日(月)午前10時
⑥伝言・お礼等の投稿は、8月22日(月)午前10時~8月23日(火)午前10時

◆8月月例ネット句会清記◆


2016年8月21日

■8月月例ネット句会清記
11名33句

01.夕日映え東の空に入道雲
02.鯔飛ぶや鷺の佇む被爆川
03.書斎より「サノヨイヨイ」の盆踊
04.次次にかなかならしく鳴きにけり
05.秋の水山間の里走りけり
06.一筆を画布に添えけり秋気澄む
07.名乗り出で寸暇惜しむや法師蝉
08.喫水線の水脈深々と秋の潮
09.秋潮の運河きらめく入日かな
10.籾殻に隠れし林檎香り立つ

11.雨上がり晴れたる空に秋の雲
12.木槿咲き客の送迎定食屋
13.木漏れ日の明るさに見る秋気
14.鰯雲白きを見れば旅心
15.水澄める箕面の谷の楓かな
16.啼き合いて秋燕万羽葦の原
17.リオ五輪見つつ窓辺の遠花火  
18.子らの乗る飛機遠ざかる鰯雲
19.初鳴きの鈴虫音色がぎこちなく
20.仕事終え歩く夜道に虫の声

21.夕暮れの空に茜の鰯雲
22.回覧板持ちゆけば知る地蔵盆
23.カマキリの怒りは吾へ指差せば
24.一本の鉢植え甘藷の葉は繁り
25.切り分けて冷えたる西瓜の赤尖る
26.クーラーに吾亦紅活け秋呼べり
27.薄まりし藍の色なる牽牛花
28.卓上の西瓜が切られ内部の赤
29.団らんの卓に西瓜の赤楽し
30.じゃがいもときゅうりのサラダ卓に盛らる

31.花火の光り河川敷へと落ちてゆく
32.灰色に分厚く満ちる夕立雲
33.街路樹に秋蝉小さく鳴いている
 
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