■6月月例ネット句会/入賞発表■


■2020年6月月例ネット句会■
■入賞発表/2020年6月14日

【金賞】
★卯の花の白こぼれ咲く谷の水/柳原美知子
卯の花は古くから日本の詩歌などに詠まれ、初夏の風物詩となっている。山野の路傍、崖地など日当たりの良い場所に生育する。この句の卯の花は、谷水の湧くところに咲いている。白い花びらがほろほろと谷の水にこぼれ、谷の水がいっそうきれいに、柔らかく思われる。(高橋正子)

【銀賞】
★青ピーマン色濃く畑にみずみずし/高橋句美子
ピーマンはすっかり日本の野菜に馴染んで当たり前に店頭で見られる。この句のピーマンは畑に生っているもので、緑色が濃くて、しっかり太って、みずみずしい光を放っている。売られているピーマンとは違う本当のみずみずしさに驚いた気持ちを素直に句にした。(高橋正子)

★風五月ふうせんかづらの種をまく/川名ますみ
ふうせんかづらのふっくりと膨らんだ実を想像しながら種を播いたことだろう。五月の風がさわやかに吹く中で、ふせんかづらの種を播いたのだ。想像どおり、風に吹かれるふうせんかづらの実ができることだろう。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★豆ごはん幼いときは大家族/祝恵子
豆ごはんは、グリーンピースを白米と塩味で炊いた初夏のご飯。緑色が白い飯に爽やかで、お変わりをしたくなるご飯だ。戦後の幼いころは大家族で、みんなでこの季節の豆ごはんを食べた。戦後の貧しい中にも大家族のあたたかさがある時代だった。(高橋正子)

★放たれてしばらくは散る稚鮎かな/吉田晃
稚鮎を川に放流すると、しばらくは、水に驚いて、ちりぢりに散らばる。しばらくすると、落ち着いて、水を得た魚となって泳ぎ出す。稚鮎の放流は、教育の一環の役割もあって、園児たちに放流させたりするが、ほほえましい光景である。漁業組合などでは、稚鮎をタンクからホースを使って放流したりもするが、いずれもこの時期の風物詩である。(高橋正子)

★白鷺を水に映して田の明ける/柳原美知子
明け始めた田は、涼風が吹いて、すがすがしい。白鷺が田水に映るほどであるから、植田の景。身の回りの風景を美しく捉えている。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★豆ごはん幼いときは大家族/祝恵子
季節の空豆やえんどう豆を味付けし炊いたご飯に大家族全員が満足した昔の景も懐かしいに魅せられますね。素敵な景ですね。 (小口泰與)

★青ピーマン色濃く畑にみずみずし/高橋句美子
若く明るい一句。毎日の瑞々しい生活から生まれる一句だと思う。 (吉田晃)

★卯の花の白こぼれ咲く谷の水/柳原美知子
水と花の白さが清らかで綺麗な句です。 (髙橋句美子)

★鍬を振る近くにヨシキリ聞きながら/古田敬二
★風五月ふうせんかづらの種をまく/川名ますみ
★花ズッキーニ皿に鮮やか今朝晴れて/柳原美知子
★白鷺を水に映して田の明ける/柳原美知子

【高橋正子特選/7句】
★紫陽花の向こうを列車は走り抜け/高橋秀之
梅雨空の下、静かに咲いている紫陽花の色彩の向こうに、列車の動きが一層鮮やかに感じられます。 (柳原美知子)

★豆ごはん幼いときは大家族/祝恵子
★放たれてしばらくは散る稚鮎かな/吉田晃
★青ピーマン色濃く畑にみずみずし/高橋句美子
★風五月ふうせんかづらの種をまく/川名ますみ
★卯の花の白こぼれ咲く谷の水/柳原美知子
★白鷺を水に映して田の明ける/柳原美知子

【入選/12句】
★そら豆を剥くシューベルトを聞きながら/古田敬二
そろそろ夕餉の支度です。シューベルトのクラシック音楽を聴きながら、そら豆を剥いています。時折コロンとボールに豆の転がる不規則な音と、心地よいクラシック音楽の取り合わせが良い。 (桑本栄太郎)

★支柱遣るトマト静かに香りけり/古田敬二
トマト苗がよく育ち支柱が要るようになった。香りの広がる畑での作業も楽しく、青い実が日々色づくのがうれしいですね。(柳原美知子)

★叱られて散り散りの子の手に黒穂/吉田晃
子供ごごろに麦の黒穂は印象的で、思わず抜き取ってしまいます、今はあまり見かけなくなった懐かしくほほえましい光景ですね。 (柳原美知子)

★荒梅雨や洗濯籠に猫眠る/西村友宏
荒梅雨となり、猫も外にでられなくなり、家でごろごろしています。洗濯籠はひんやりしていて、恰好の寝場所ですね。 (柳原美知子)

★青年のいのちまぶしき栗の花/桑本栄太郎
★山を背に仁王立ちたる雲の峰/小口泰與
★増えてゆく朝の楽しみメダカの子/祝恵子
★せせらぎに波長合わせる蛍かな/西村友宏
★居残りの千本ノック夏の月/西村友宏
★夏あざみ雨ふる中に点々と/高橋句美子
★新緑の夢見ヶ崎の果てに富士/川名ますみ
★紫陽花の濃くなりさうな曇り空/廣田洋一

■選者詠/高橋信之
★五月雨も今日あることの楽しみに
何事も前向きの生き方ですね。五月雨を歩くのも、楽しみの一つとか。 (祝恵子)

★五月雨の中を楽しむ妻と散歩
★塀沿いの散歩に紫陽花いろいろと

■選者詠/高橋正子
★中空に鳥声弾け梅雨入
梅雨の気配を鳥はいちはやく感じるのか、これまでより低い空に鳥の声が弾けるようです。 (柳原美知子)

★笹まんじゅう食べればどこか濡れている
★風が立ち赤がはっきり金魚草

■互選高点句
●最高点(5点)
★.卯の花の白こぼれ咲く谷の水/柳原美知子

6月月例ネット句会/清記


■6月月例ネット句会清記■
2020年6月14日
13名(39句)

01.青年のいのちまぶしき栗の花
02.若竹の天を占めたる枝の影
03.きらきらと窓の若葉の入日かな
04.人魂か蛍か闇を遊泳す
05.山を背に仁王立ちたる雲の峰
06.紫陽花や利根の瀬尻の波響(とよ)む
07.支柱遣るトマト静かに香りけり
08.そら豆を剥くシューベルト聞きながら
09.鍬を振る近くにヨシキリ聞きながら
10.豆ごはん幼いときは大家族

11.増えてゆく朝の楽しみメダカの子
12.夏の畑役割終えしポットの列
13.紫陽花の向こうを列車は走り抜け
14.緑濃き六甲山の近くなり
15.夏の海はるか遠くに陽が昇る
16.放たれてしばらくは散る稚鮎かな
17.叱られて散り散りの子の手に黒穂
18.夏蝶の放物線を追って蝶
19.せせらぎに波長合わせる蛍かな
20.荒梅雨や洗濯籠に猫眠る

21.居残りの千本ノック夏の月
22.青ピーマン色濃く畑にみずみずし
23.夏あざみ雨ふる中に点々と
24.紫陽花に雨滴りて褪せる花
25.花も葉も梅花空木の丸きこと
26.風五月ふうせんかづらの種をまく
27.新緑の夢見ヶ崎の果てに富士
28.五月雨の中を楽しむ妻と散歩
29.五月雨も今日あることの楽しみに
30.塀沿いの散歩に紫陽花いろいろと

31.中空に鳥声弾け梅雨入
32.笹まんじゅう食べればどこか濡れている
33.風が立ち赤がはっきり金魚草
34.卯の花の白こぼれ咲く谷の水
35.花ズッキーニ皿に鮮やか今朝晴れて
36.白鷺を水に映して田の明ける
37.紫陽花の濃くなりさうな曇り空
38.富士山を横に見ながら虹二重
39.橋消えて脚だけ残る昼の虹

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

6月月例ネット句会のご案内


●6月月例ネット句会ご案内●
①投句:当季雑詠(夏の句)3句
②投句期間:2020年6月8日(月)午前6時~2020年6月14日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:6月14日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:6月15日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、6月15日(月)正午~6月18日(木)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

ご挨拶


5月となりましても、新型コロナウィルス感染が広がって、なかなか収束する様子も見えません。多くの催し物が中止や延期になったり、オフ句会は、開催できなく困っていると聞きます。幸い花冠では、ネット上の句会を開催し、ネットを使った句会のさまざま経験を経験してまいりました。オフ句会にはオフ句会の重要性やその良さはありますが、感染症が流行る場合などは、ネット句会の良さを改めて知る思いです。いつもと変わらず句会にご参加いただき、ありがとうございます。

五月には五月の、季節を楽しく過ごされている句をたくさんご投句いただき、居ながらにして、各地の季節や行事、それぞれの暮らしの一端を楽しませていただきました。
選とコメントもありがとうございました。まだまだ、新型コロナウィルスへの警戒はひつようですが、気を付けて過ごすようにいたしましょう。これで、5月月例ネット句会を終わります。(花冠 高橋正子)

■5月月例ネット句会/入賞発表■


■2020年5月月例ネット句会■
■入賞発表/2020年5月10日

【金賞】
07.風を待つヨットに海のきらきらと/多田有花
はつらつと、明るさに満ちた快い句。きらきらと輝く海へこれから乗り出そうと風を待つヨット。「風を待つヨット」に明らかな思いがあってよい。(高橋正子)

【銀賞】
37.湧き水を掬う手元に野ばら垂る/柳原美知子
湧き水に差し出された水を掬おうとする手。その手元に野ばらが垂れ下がる。初夏の爽やかさ、やさしさが遺憾なく伝わる句。(高橋正子)

15.筍を掘って行けやと美濃の藪/古田けいじ
「筍を掘って行けや」と言ったのは、ふるさと美濃の藪。美濃の藪を見ると、藪はいまは亡き父母に代わり、「筍を掘って行けや」と言ってくれているようだというのだ。掘らずに帰るわけにはいかない。うれしい里土産となったことだろう。めずらしい表現だが、全く自然だ。

【銅賞/3句】
39.麦刈られ藁束どっと土に匂う/柳原美知子
麦を刈り藁を束ねると、土の匂いが強烈にする。経験しないとわからないと思うが、土の匂いもいろいろあって、麦畑には麦畑特有の土の匂いがある。麦秋の季節が持つ畑土の匂いが、実感をもって詠まれている。(高橋正子)

12.自転車も吾も棚下藤枝垂る/祝恵子
自転車でちょっと、藤棚の藤を見に出かけた来たのだ。自転車を踏んで少し汗ばむと藤棚の下が快い。銀輪輝く自転車も藤棚の下に入れて、藤の花を楽しむ。きれいな風が吹いていそうだ。(高橋正子)

24.葉桜を風だけが過ぐつややかに/川名ますみ
葉桜を過ぎるのは風だけ。葉桜の大きな茂りが、風だけを見せている。それだけに葉桜はつややかにそよいでいる。気持ちが広がる句だ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
37.湧き水を掬う手元に野ばら垂る/柳原美知子
透き通った湧き水と咲きかけの白い野ばら。気持ちの良い組み合わせの句である。 (古田けいじ)

07.風を待つヨットに海のきらきらと/多田有花
愈々夏到来です。夏と云えば「海」であり、海と云えば「ヨット」と喜びの連想が続きます。きらきら輝く波間の白帆に、潮の香まで想われます。(桑本栄太郎)

12.自転車も吾も棚下藤枝垂る/祝恵子
15.筍を掘って行けやと美濃の藪/古田けいじ
28.玉ねぎが目に染む初のお手伝い/西村友宏
36.薄暑の朝洗濯物を重ね置く/高橋句美子
39.麦刈られ藁束どっと土に匂う/柳原美知子

【高橋正子特選/7句】
24.葉桜を風だけが過ぐつややかに/川名ますみ
初夏の爽やかな景色が想像できます。 (髙橋句美子)

34.若葉伸び小さな花瓶を台所に/高橋句美子
若葉が伸びてきたので、枝を剪定したのでしょうか。その枝を挿した花瓶が台所に春を連れてきてくれました。 (高橋秀之)

07.風を待つヨットに海のきらきらと/多田有花
12.自転車も吾も棚下藤枝垂る/祝恵子
15.筍を掘って行けやと美濃の藪/古田けいじ
37.湧き水を掬う手元に野ばら垂る/柳原美知子
39.麦刈られ藁束どっと土に匂う/柳原美知子

【入選/13句】
02.麦笛や少年の日の哀しみに/桑本栄太郎
少年も少女も哀しみは持つものですが、麦笛が似合うのは少年という気がします。 (多田有花)

03.好きな子に思い込め居り草矢射る/桑本栄太郎
青青とした茅草などを抜きとって作った草矢を大好きな子に飛ばして嫌われた経験は男の子には誰しも有る懐かしく切ない思い出ですね。 (小口泰與)

04.薄暑はや木陰うれしき鳥の声/小口泰與
つい先日までまだ肌寒い日もあったのに、すでに日向が暑く感じられるようになってきました。湿気のないからりとした暑さで心地よいものです。 (多田有花)

06.雨蛙昨夜(よべ)の雨をば零しける/小口泰與
雨蛙の声があちこちから聞こえてくるようになりました。昨夜(よべ)の雨を零したのが雨蛙なのですね。まだこちらは姿を見せません。 (祝恵子)

10.鯉のぼり園児の姿なき空に/祝恵子
青空の下、休園している施設の庭に鯉幟がはためいている。子供がいないのは寂しいが、子を思う気持ちが見える句です。 (廣田洋一)

11.花水木ピンクに透けて瓦紋/祝恵子
晩春から初夏に移るころ、ハナミズキのピンクと白の花が咲きそろいます。吹く風も心地よく、街路が最も明るく感じられるときです。 (多田有花)

14.初物の蚕豆二人で剥く夕餉/古田けいじ
初物の蚕豆に初夏の訪れを喜び、ご夫婦で剥くかけがえのないひと時、四季を大切に楽しまれる丁寧なお暮しがうかがえます。 (柳原美知子)

20.黒揚羽止まる花なく飛び去りぬ/廣田洋一
大きく羽ばたいて飛んできた黒揚羽も止まるところがなければずぐ飛び去って行きます。あっという間の黒揚羽がそこにありました。 (高橋秀之)

36.薄暑の朝洗濯物を重ね置く/高橋句美子
分厚い冬物から薄着の夏物への過渡期の薄暑の洗濯物。洗濯機から出して重ね置く洗濯物に程よい季節感があります。(高橋秀之)

38.谷若葉映す水音風の音/柳原美知子
尾根から谷を見下ろされているのでしょう。谷を風が通り過ぎ若葉を揺らしていきます。その先には心地よい清流のせせらぎの音があります。 (多田有花)

08.本堂の扉は若葉に開かれて/多田有花
17.初蝶の飛び行く先の空青き/高橋秀之
21.一切れの生姜を加へ一夜酒/廣田洋一
29.朝練や坂登り切り風薫る/西村友宏

■選者詠/高橋信之
25.朝日さんさん五月の窓を大きく開け
26.五月の窓開けて朝日に身を入れる
27.五月の野がひろびろ拡がる窓の外

■選者詠/高橋正子
31.雷の走る夜空を胸に寝る
32.夏雲と富士の雪嶺とおなじ白
33.野茨らし白きマッスが月の下

■互選高点句
●最高点(6点)
37.湧き水を掬う手元に野ばら垂る/柳原美知子

※コメントのない句にコメントをお願いします。

■5月月例ネット句会清記■


■5月月例ネット句会清記■
2020年5月10日
13名(39句)

01.追憶と夢のうつつの朝寝かな
02.麦笛や少年の日の哀しみに
03.好きな子に思い込め居り草矢射る
04.薄暑はや木陰うれしき鳥の声
05.夏暁や寺に安全祈りける
06.雨蛙昨夜(よべ)の雨をば零しける
07.風を待つヨットに海のきらきらと
08.本堂の扉は若葉に開かれて
09.高きにて日が交差する若楓
10.鯉のぼり園児の姿なき空に

11.花水木ピンクに透けて瓦紋
12.自転車も吾も棚下藤枝垂る
13.衣変隣に妻の寝息かな
14.初物の蚕豆二人で剥く夕餉
15.筍を掘って行けやと美濃の藪
16.新緑を見れば青くて眩しくて
17.初蝶の飛び行く先の空青き
18.表札の横に小さな鯉のぼり
19.薔薇活けて思ひ出したりバッキンガム
20.黒揚羽止まる花なく飛び去りぬ

21.一切れの生姜を加へ一夜酒
22.並木路隣の花は伐られけり
23.石楠花のめいっぱいなる花よ芽よ
24.葉桜を風だけが過ぐつややかに
25.朝日さんさん五月の窓を大きく開け
26.五月の窓開けて朝日に身を入れる
27.五月の野がひろびろ拡がる窓の外
28.玉ねぎが目に染む初のお手伝い
29.朝練や坂登り切り風薫る
30.マスクして散歩帰りにあやめ咲く

31.雷の走る夜空を胸に寝る
32.夏雲と富士の雪嶺とおなじ白
33.野茨らし白きマッスが月の下
34.若葉伸び小さな花瓶を台所に
35.母の日の薔薇を届けて写真貰う
36.薄暑の朝洗濯物を重ね置く
37.湧き水を掬う手元に野ばら垂る
38.谷若葉映す水音風の音
39.麦刈られ藁束どっと土に匂う

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

5月月例ネット句会ご案内


●5月月例ネット句会ご案内●
①投句:当季雑詠(春の句・夏の句)3句
②投句期間:2020年5月4日(月)午前6時~2020年5月10日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:5月10日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:5月11日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、5月11日(月)正午~5月14日(木)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

ご挨拶/4月月例ネット句会を終えて


ご挨拶
四月月例ネット句会にご参加くださいましてありがとうございました。新型コロナウィスルによる肺炎の感染が世界に広まり、ついには、緊急非常事態宣言が出され、外出自粛や職種によっては、休業要請されるという経験したことのない事態が起こりました。オフ句会などは中止せざるを得ない事態も起きていると聞きます。

幸い花冠の月例ネット句会は、ネット上の句会を継続していて、いつも通りの句会が開催でき、ありがたいことでした。それぞれの方が遠出をしなくても、身辺を大切に詠んで季節感あふれる句をご投句いただきました。そして全国にいらっしゃる皆さんの句から、あちこちを旅したと同じような景色を見せていただきました。外出自粛の中、これは、大変うれしいことです。また、選とコメントをありがとうございました。

一日も早く新型コロナウルスの感染が無くなることを祈るばかりです。皆様もご健康には十分注意なさって日々をお過ごしください。これで、4月月例ネット句会を終わります。来月は、5月10日の第2日曜日となります。母の日と重なりますが、よろしくお願いいたします。

                                花冠代表 髙橋正子

■4月月例ネット句会/入賞発表■


■2020年4月月例ネット句会■
■入賞発表/2020年4月12日

【金賞】
★菜の花の背後はいつも青い空/多田有花
菜の花は、いつも青空を背景に咲いている。実際は、そうとは限らないが、一番印象的なのが、青い空を背景に咲くとき。菜の花の黄色、空の青は、明快な色彩の中にも春らしい柔らかさがあって、誰もが好きな景色だ。(高橋正子)

【銀賞】
★石椅子に遊具に触れて花吹雪く/祝恵子
花吹雪は公園の石の椅子に、遊具に降りかかっては、風に乗り、また滑り落ちる。冷たい石の椅子さえも華やかな花が触れて彩られる。(高橋正子)

★襞深き皿ケ峰へと飛花透けて/柳原美知子
皿ケ峰は西日本の最高峰石鎚山に繋がる山。山が平らに皿のようになって、ちょっとした登山に楽しまれている。その山も遠くから見ると襞が深く、藍色。その山を背景に飛花が流れる。さらさらと飛ぶ花は、「透けて」いる。「飛花透けて」が素晴らしい。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★山吹の明かりとなりぬ水車小屋/桑本栄太郎
里山の裾などには、このような古風な風景が見られるのだろう。山吹は川沿いなどに自生していることが多く、水車小屋の辺りにもよく育つ。花は山吹色と言われる明るく強い黄色。「明かり」と言えるほどの咲き具合に圧倒される。(高橋正子)

★春キャベツ葉の柔らかさを刻む昼/高橋句美子
春キャベツは葉がふんわりと玉を巻き、食べて柔らかい。葉を?いで、洗って重ねると、クッションのようなと柔らかさを手に感じる。包丁に当たるときも柔らかだ。時定まらぬような春の昼は、春キャベツの柔らかさを表しているようでもある。(高橋正子)

★揃い咲く癌の友植えしチューリップ/古田敬二
チューリップは、誰にも好かれる元気でかわいらしい花。そんな花がたくさん見事に咲いた。癌の友は、今闘病中だろうか。その留守に咲く花は、眩しさが加わる。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★山吹の明かりとなりぬ水車小屋/桑本栄太郎
流れのほとりなどに自生する山吹。日本固有のもので、豊かな趣きは、古来詩歌にうたわれている。水車小屋をより一層明るくしている。趣きのある句ですね。(小口泰與)
水車小屋を訪ねるには、山吹の黄色い明るさを目指せばいいのですね。 (祝恵子)

★石椅子に遊具に触れて花吹雪く/祝恵子
公園の桜が静かに美しく散っていく様子が新鮮に詠まれていて、石椅子や遊具の質感が感じられます。 (柳原美知子)

★春キャベツ葉の柔らかさを刻む昼/高橋句美子
お昼ごはんの副菜に春キャベツ。柔らかい葉の食感が春のひとときを引き立ててくれます。 (高橋秀之)

★通勤のほっと一息桜見ゆ/高橋秀之
新型コロナウイルスの感染拡大で、通勤にも気を遣い緊張を強いられる日々、桜の美しい色合いを目にするとほっと気持ちも和むようです。 (柳原美知子)

★菜の花の背後はいつも青い空/多田有花
★揃い咲く癌の友植えしチューリップ/古田敬二
★襞深き皿ケ峰へと飛花透けて/柳原美知子

【高橋正子特選/7句】
★春の月あす入学の靴磨く/西村友宏
明日の入学式のための靴を磨きながら、さまざまな感慨に浸る夜。みずみずしい春の月に照らされて、希望に満ちた明日が感じられます。 (柳原美知子)

★菜の花の背後はいつも青い空/多田有花
★山吹の明かりとなりぬ水車小屋/桑本栄太郎
★石椅子に遊具に触れて花吹雪く/祝恵子
★襞深き皿ケ峰へと飛花透けて/柳原美知子
★山桜一枝に宿る夕焼けを/柳原美知子
★春キャベツ葉の柔らかさを刻む昼/髙橋句美子

【入選/13句】
★さらさらと桜散りゆく目黒川/西村友宏
「さ」の音の連なりが心地よく感じられました。穏やかな桜の散るころの川辺の情景が目に浮かぶようです。(多田有花)

★地に落ちてその色増せり花吹雪/古田敬二
今年のお花見は遠出を自粛して居り、近在の桜を散策がてらに色々見て周った。今では歩みゆく度に花吹雪もあり、花びらが積って花屑となり、ピンク色が更に艶やかであった。 (桑本栄太郎)

★虚子の忌や花咲き鳥の歌ひをり/桑本栄太郎
虚子忌は4月8日で、まさに花が咲いて鳥が歌っている時期です。花鳥諷詠を提唱した虚子の忌にぴったりの句です。(廣田洋一)

★川岸の風のかたちの柳かな/小口泰與
柳が風の流れのままになびく姿が想像できます。 (高橋句美子)

★十州に囲まる信濃風光る/小口泰與
信濃はほぼ現在の長野県に一致しています。海の無いところです。 地図を見ると確かに三河、遠江、駿河、甲斐、武蔵、上野、越後、越中、飛騨、美濃の十州に囲まれています。山の美しい国、風光るが生きています。 (多田有花)

★ブランコを揺すり昔の子となりぬ/祝恵子
公園にあるブランコでしょうか。ふとそれにふれて乗ってみた。そうしたら、子どものころ思い出や感覚が蘇ってきた、それを懐かしくかみしめておられるのでしょう。 (多田有花)

★窓に花魔笛を歌うカーラジオ/川名ますみ
「魔笛」はモーツァルトの歌劇です。ここで流れてきたのは「夜の女王のアリア」ではないでしょうか。ソプラノの最高難度の歌曲で究極の高音が聴かせどころです。車窓には花盛りの桜、そこで流れてくる絶望と復讐を歌う歌曲(でも美しい曲です)その取り合わせが素晴らしい。 (多田有花)

★ベランダの猫に弾ける石鹸玉/西村友宏
★満開の桜従えポスト立つ/多田有花
★真夜中の家路に仰ぐ朧月/廣田洋一
★夕けむり峡の桜に流れおり/柳原美知子
★地に桜天に満月あり今宵/多田有花
★入学式なくとも凛々しきわが子たち/高橋秀之

■選者詠/高橋信之
★八十路の道若葉にさんさん陽がふりぬ
桜も散り、若葉のみずみずしい散歩道。さんさんとふる日を浴びながら、新たな季節を迎えられる喜びが感じられます。 (柳原美知子)

★曇り空見上げて見れば春の雪
★寺への道散り敷く花を踏み歩く

■選者詠/高橋正子
★たんぽぽのどこに咲いても黄を強む
たんぽぽの黄色はとても存在感があり、目がゆく様子を表しています。 (高橋句美子)

★山吹に月のゆたけく照るひかり
密やかに咲く山吹に、スーパームーンのゆたかな光が差し、ひときわ明るい春野を感じさせてくれるようです。 (柳原美知子)

★煙りたる緑みどりに山桜

■互選高点句
●最高点(5点/同点2句)
14.山吹の明かりとなりぬ水車小屋/桑本栄太郎
39.春キャベツ葉の柔らかさを刻む昼/髙橋句美子

■4月月例ネット句会清記■


■4月月例ネット句会清記■
2020年4月12日
13名(39句)

01.さらさらと桜散りゆく目黒川
02.ベランダの猫に弾ける石鹸玉
03.春の月あす入学の靴磨く
04.山吹に月のゆたけく照るひかり
05.煙りたる緑みどりに山桜
06.たんぽぽのどこに咲いても黄を強む
07.地に桜天に満月あり今宵
08.満開の桜従えポスト立つ
09.菜の花の背後はいつも青い空
10.帆翔の鳶の青空麦あおむ

11.十州に囲まる信濃風光る
12.川岸の風のかたちの柳かな
13.山すその里へ向かえば花の雲
14.山吹の明かりとなりぬ水車小屋
15.虚子の忌や花咲き鳥の歌ひをり
16.通勤のほっと一息桜見ゆ
17.昨日より今日が青々春の空
18.入学式なくとも凛々しきわが子たち
19.曇り空見上げて見れば春の雪
20.寺への道散り敷く花を踏み歩く

21.八十路の道若葉にさんさん陽がふりぬ
22.ブランコを揺すり昔の子となりぬ
23.石椅子に遊具に触れて花吹雪く
24.春の野に座してつめくさ花の冠
25.白つつじ先がけて咲きはかなげに
26.朝寝などしてはいられぬ吉野山
27.真夜中の家路に仰ぐ朧月
28.窓に花魔笛を歌うカーラジオ
29.花満ちし帰路のカーラジオに魔笛
30.春嵐波の音以て窓たたく

31.地に落ちてその色増せり花吹雪
32.固まりて咲けばネモフィラ麗しき
33.揃い咲く癌の友植えしチューリップ
34.夕けむり峡の桜に流れおり
35.襞深き皿ケ峰へと飛花透けて
36.山桜一枝に宿る夕焼けを
37.すみれ咲くレンガ畳の隙間から
38.川沿いの桜若葉の明るい色
39.春キャベツ葉の柔らかさを刻む昼

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