■9月月例ネット句会/入賞発表■


■2020年9月月例ネット句会■
■入賞発表/2020年9月14日

【金賞】
34.水抜かれ風に真白き稲の花/吉田晃
稲の生育には、水の管理が大切とされるが、出穂後は、特にこまめな水の管理が必要と言われる。この句では、水を抜かれた田。稲の花の咲きはじめはやや黄色みを帯びているが、咲いてしまうと、白い花と言える。風に小さくちらちらと震える花は綺麗な白。稲の花言葉は、「神聖」ということだが、それにふさわしい。日本人の命を支えてきた稲の神聖さを思う。(高橋正子)

【銀賞/2句】
04.星影を溜めて木犀香りけり/小口泰與
「星影」という綺麗な言葉が、木犀の花と香りを綺羅と輝かせている。星の光を溜めた夜の木犀は、匂いが露けく思えて来る。(高橋正子)

08.通勤電車山と稲田のあわいゆく/多田有花
電車の線路は、建物などの障害物を避けて設置されるので、山と田んぼの間などは敷設に残された場所だろう。通勤に毎日使う電車は、乗って居ながらにして、紅葉する秋山や、実りに色づく稲田が触れんばかりに見える。通勤電車ながら、旅をゆく気持ちが湧く。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
26.読み耽けて栞挟めば良夜かな/西村友宏
本に引き込まれて夜も深くなった。今日はここまでと栞を挟み、目を外に映すと、月のきれいな夜。読書で満ち足りた心に良夜の美しさが響く。(高橋正子)

32.鈴虫の夜道に添って響く鈴/髙橋句美子
鈴虫が鳴いている夜道に添って歩いて行くと、道を歩くかぎり、鈴虫が鳴いている。耳も次第に鋭くなって、聞けば聞く程に、鈴の音色に聞こえてくる。(高橋正子)

36.かげろうの月夜に透けて飛ぶ軽さ/吉田晃
この句の良さは、「軽さ」にある。情を消したように「軽さ」と言った。かげろうの命は成虫になって数時間とも言われる。月の光を透かすようなうすい翅。軽いが上にも軽い命、はかない命が愛おしい故に軽さなのだ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
04.星影を溜めて木犀香りけり/小口泰與
夜、路地を歩いていたらふとどこかから木犀の香りがしました。もう木犀が咲き始めたのか、どこで咲いているのだろう、と辺りを見回されました。夜空には秋の星。木犀が香り始める季節らしい一句です。 (多田有花)
星に照らされた木犀は、その香りとともに存在感があります。秋の到来を感じる句です。(髙橋句美子)
木犀の花は星と一体となって光る。空に星があり、地にも星があって豊かに香る。作者の心も豊かなのだと想像する。 (吉田晃)

35.秋アカネ干されて白き割烹着/吉田晃
秋茜は日本で最もよく見られるトンボで雄は成熟すると赤色になり、秋になると平地に群れる。割烹着の白さと赤とんぼの対比が素晴らしいですね。(小口泰與)

28.初秋の山麓より虹大空に/柳原美知子
山、虹、大空。大きなものをとらえすぎという感じもありますが、逆にそこが自然の雄大さを物語ってくれていると感じます。 (高橋秀之)

07.新涼に白きにんにく咲きにけり/多田有花
日常よく見かける花ではない。そこに目を向けた作者の豊かな心情がいいと思う。新涼に咲くにんにくの花の風景を想像すると心が安らぐ。 (吉田晃)

08.通勤電車山と稲田のあわいゆく/多田有花
32.鈴虫の夜道に添って響く鈴/髙橋句美子
34.水抜かれ風に真白き稲の花/吉田晃

【高橋正子特選/7句】
26.読み耽けて栞挟めば良夜かな/西村友宏
夜ともなれば心地良く、まさに燈火親しむ候となりました。本を読み耽っていても明日の為栞を挟めば、満月の月明りが何と明るい事でしょう。 (桑本栄太郎)
夜の更けゆくに気づかず、つい読み耽ってしまうほど没頭している作者の姿がいい。栞を挟んで観た月は満ち足りた心にさぞ美しく映ったことと思う。 (吉田晃)

36.かげろうの月夜に透けて飛ぶ軽さ/吉田晃
はかなさの象徴がかげろう。秋に月夜に飛ぶかげろうは月と相まってますますはかなく見える。 (古田敬二)

30.谺して太古の地層や秋の滝/柳原美知子
滝の姿ではなく、その周りに見える地層とそこに響く滝の音を詠まれました。それがかえって滝の大きさと迫力を眼前に見る思いに誘ってくれます。 (多田有花)
秋、滝、地層。どれもが大自然でありこれらの営みが谺となって作者を包む。これほどの贅沢があるだろうか。 (吉田晃)

04.星影を溜めて木犀香りけり/小口泰與
08.通勤電車山と稲田のあわいゆく/多田有花
32.鈴虫の夜道に添って響く鈴/髙橋句美子
34.水抜かれ風に真白き稲の花/吉田晃

【入選/13句】
05.包めるは農事新聞山の芋/小口泰與
農事新聞に包まれた採れたての山の芋をいただいた。農事新聞を読み、丹精された様子がうかがえる心のこもった嬉しいおくりものに、秋の到来が実感されます。 (柳原美知子)

02.余波なれどこの強きもの野分過ぐ/桑本栄太郎
先日の台風10号は風が強かったですね。関西では雨よりも風の印象が強かったのではと思います。特に台風の本体はすでに朝鮮半島なのに余波の風が強かったです。 (多田有花)

18.次々と友の指差す葡萄摘む/廣田洋一
美味しそうな葡萄がここにも、あそこにもと言われるままに摘んでいく友人との葡萄狩り、楽しそうですね。 (祝恵子)

11.秋風や生家の見える分かれ道/古田敬二
お生まれになった家を訪れられました。今はすでにご両親は亡く次の代のご兄弟がお住まいなのでしょう。ここまで来たら先はその家が見えなくなる地点まで来てお家を振り返られました。そのときの感慨が思われます。 (多田有花)
懐かしいふるさとであるが、生家があることが羨ましい。血縁に時を越えて受け継いで欲しい作者なのだと思う。一方の道は生家へ、もう一方の道は作者の現在の家に続く道なのだろう。 (吉田晃)

14.路地により風や匂いの違う秋/祝 恵子
 匂いにはその家独特のものがある。それが集まって路地の匂いが生まれる。そこに吹く風は、他の路地とは違う匂いがする。その匂いを心地よく鼻に感じさせてくれるのが秋なのだろう。 (吉田晃)

01.秋冷の哀しき夢を見たりけり/桑本栄太郎
 秋の肌寒さは冬のそれとは違い、思わぬ気持ちを起こさせる。感傷とでも言えばいいのだろうか。そんな心持ちの夜には哀しい夢を見るのだろう。 (吉田晃)

17.俄雨開きしままや秋日傘/廣田洋一
 気まぐれな雨。雨宿りするほどではなく、日傘で受けてやりすごした。雨から生まれたちょっと涼しい微風を作者は好ましく受け取ったのだと想像する。 (吉田晃)

31.無花果の甘さ柔らか帰省して/高橋句美子
 どこで食べても無花果の甘さややわらかさは物理的には同じもの。そうでない理由が「帰省して」にある。両親の元で食べる無花果はどこにもない甘さ、柔らかさなのである。 (吉田晃)

29.初秋の木洩れ日ゆれる湯に浸り/柳原美知子
03.ゑのころの風の売地のただならず/桑本栄太郎
06.落鮎を釣戻りたる無精髭/小口泰與
12.小節をずらして鳴けりつくつくし/古田敬二
13.稲の穂の色づき垂れて水の中/祝 恵子

■選者詠/高橋信之
19.葛の花妻が摘み来て卓上に
昔からの高橋家の生活がプンプン匂ってくる、たいへん好ましい句だと感じた。 (吉田晃)

20.秋の日の今日金曜の日がありぬ
21.有明の月が東に明け近し

■選者詠/高橋正
22.秋暁のオリオン星の一つ欠け
空気が澄み、星の光が美しく見える秋であるが、大小・強弱の光は明けが近づくにつれ薄れてゆく。朝の気配の中、星座を形作っている星が一つ視界から消えた。爽やかな今日を約束しているように感じた。 (吉田晃)

24.曲がる道曲がるとおりに虫の声
何処にいても虫の音が聞こえるのどかな風景が目に浮かびます。 (西村友宏)

23.虫の音の更地水栓光ち立つ

■互選高点句
●最高点(5点/同点2句)
04.星影を溜めて木犀香りけり/小口泰與
36.かげろうの月夜に透けて飛ぶ軽さ/吉田晃

■9月月例ネット句会清記■


■9月月例ネット句会清記■
2020年9月13日
12名(36句)

01.秋冷の哀しき夢を見たりけり
02.余波なれどこの強きもの野分過ぐ
03.ゑのころの風の売地のただならず
04.星影を溜めて木犀香りけり
05.包めるは農事新聞山の芋
06.落鮎を釣戻りたる無精髭
07.新涼に白きにんにく咲きにけり
08.通勤電車山と稲田のあわいゆく
09.虫の音に囲まれている夜の部屋
10.父母の遺影に見られ葡萄食む

11.秋風や生家の見える分かれ道
12.小節をずらして鳴けりつくつくし
13.稲の穂の色づき垂れて水の中
14.路地により風や匂いの違う秋
15.サルスベリ園より洩れ来児らの声
16.人知れず咲き継ぐ苦労花木槿
17.俄雨開きしままや秋日傘
18.次々と友の指差す葡萄摘む
19.葛の花妻が摘み来て卓上に
20.秋の日の今日金曜の日がありぬ

21.有明の月が東に明け近し
22.秋暁のオリオン星の一つ欠け
23.虫の音の更地水栓光ち立つ
24.曲がる道曲がるとおりに虫の声
25.栗飯の匂いに昼寝より目覚め
26.読み耽けて栞挟めば良夜かな
27.街路樹も我も酷暑に根を上げる
28.初秋の山麓より虹大空に
29.初秋の木洩れ日ゆれる湯に浸り
30.谺して太古の地層や秋の滝

31.無花果の甘さやわらか帰省して
32.鈴虫の夜道に添って響く鈴
33.秋雷の突然空を割るかの音
34.水抜かれ風に真白き稲の花
35.秋アカネ干されて白き割烹着
36.かげろうの月夜に透けて飛ぶ軽さ

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

9月月例ネット句会ご案内


●9月月例ネット句会ご案内●
①投句:当季雑詠(秋の句)3句
②投句期間:2020年9月7日(月)午前6時~2020年9月13日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:9月13日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:9月14日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、9月14日(月)正午~9月17日(木)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

■8月月例ネット句会/入賞発表■


■2020年8月月例ネット句会■
■入賞発表/2020年8月10日

【金賞】
39.朝顔のつぼみの先に明日の色/川名ますみ
「明日の色」は、実際に明日朝開く朝顔の色でもあるし、未来の色でもある。この二つのことを思うと、朝顔のつぼみに期待と希望を抱く。「つぼみ」が漢字の「蕾」でなく、平仮名であることがいい。(高橋正子)

【銀賞/2句】
36.手花火の煙の中に子と居りて/吉田晃
手花火に興じる子どもといると、次から次に火を点けて煙がもうもうと立つ。それもおかまいなしの子とそれを見守る親の姿が温かい。(高橋正子)

33.山風にひらく朝顔海の色/柳原美知子
今朝顔は山から吹いてくる風に花びらを揺らしている。でも、その花の色は、海の青い色。「海」には、作者の思いがいろいろと籠められているのだろう。山がちなところに住まいながらも海近く暮らした生活が親しく思い起こされる。(高橋正子)

【銅賞/3句】
04.何処までも暗き地底や蝉の穴/桑本栄太郎
蝉の穴の暗さにふと見入る。覗いて覗ききれるものではなく、どこまでも暗い地底に繋がっている。こんな暗い地底から生まれた蝉が夏を謳歌するのもひととき。(高橋正子)

05.遠富士の風新涼でありにけり/廣田洋一
富士山が遠くに見える。たしかに新涼の風は姿正しい富士山から吹いてくる。「新涼でありにけり」と風格をもって詠まれ、句の姿が美しい。(高橋正子)

10.夏日はじく鐘撞堂の鬼瓦/祝 恵子
昭和時代の夏を回想してしまうような句。鐘撞堂があって、どっしりと鬼瓦が座っている。その鬼瓦が夏日をはじき、まさに炎暑。人々の生活が暑さの中にも楽しく繰り広げられて、良き時代の生活が今も続いている。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
08.炎昼の街に立ちたり日章旗/多田有花
昭和20年8月15日は太平洋戦争に敗戦終了した年であります。それ以降、毎年8月は広島・長崎への原爆投下、15日の終戦日と多大な戦争犠牲者と被爆者を偲び、鎮魂と懴悔の月であります。それでも先人達の多大な努力の賜物により、我が国もここ迄立ち直りました。炎昼の街に翻る日章旗を見るたびに、感慨深いものを感ずる日本人です。 (桑本栄太郎)

28.立秋の風に高々雲動く/高橋正子
今年の立秋は良く晴れていた。 雲も白く浮かんでいた。この様な空の動きを良く捕らえている。 (廣田洋一)

29.萩を吹く風に出でけり試歩のため/高橋正子
「萩を吹く風」の表現が気持ちよく、秋が来たことを優しく教えてくれている。季節の変わり目を肌に感じ、歩いてみようとする前向きの気持ちになったのであろう。季節の移り変わり、特に秋への移りは人の心をそうさせてくれるのだろう。 (吉田晃)

39.朝顔のつぼみの先に明日の色/川名ますみ
明朝咲く朝顔。その色は何か、その色が蕾の先に既に見える。明日の確かな約束に生きる喜びが感じられる。 (古田敬二)
朝顔のつぼみはこれから花が開く期待に満ちてます。まさにつぼみの先に明日の色があります。 (高橋秀之)

04.何処までも暗き地底や蝉の穴/桑本栄太郎
06.赤き顔挙げて歓声夜振りの子/桑本栄太郎
36.手花火の煙の中に子と居りて/吉田晃

【高橋正子特選/7句】
15.遠富士の風新涼でありにけり/廣田洋一
遠くに富士山が見える晴れた日、それでもどこかから吹いてきた風には秋の香りがしました。晴れ晴れと富士を見ておられる作者、その背後に広がる初秋の空、頬を撫でる秋の風それらが感じられます。 (多田有花)

36.手花火の煙の中に子と居りて/吉田晃
庭先に消火用のバケツを用意し、家族そろって手花火に興する様は、素晴らしい家族の夏の風物詩ですね。有難う御座います。 (小口泰與)

06.赤き顔挙げて歓声夜振りの子/桑本栄太郎
10.夏日はじく鐘撞堂の鬼瓦/祝 恵子
32.上布まだ仕付けも解かず夫逝けり/ 柳原美知子
33.山風にひらく朝顔海の色/柳原美知子
39.朝顔のつぼみの先に明日の色/川名ますみ

【入選/17句】
02.乙女らの脛を惜しまず水遊び/小口泰與
楽し気な様子が伺える。脛を惜しまずは、水遊びに興じている屈託のない姿。作者も乙女らと同じ気持ちになっているのだろう。 (吉田 晃)

09.秋立つや青色深きトルコ石/多田有花
トルコ石に注ぐ作者の瞳がいい。秋の光の中のトルコ石の深い青。きっと美しいことだろう。深い青は、秋の色、作者の心の色でもあると思う。 (吉田晃)

13.鎮魂の歌しめやかに長崎忌/廣田洋一
コロナの影響で参列は500名ほどに絞られたようだが、参列できなかった人たちの、しめやかな唱和の歌声が聞こえてくる。作者の優しさが窺える。 (吉田 晃)

16.友と会うまずは注文冷奴/高橋秀之
冷奴は料理ともいえないような料理なのに、暑い季節には欠かせません。このあと、「とりあえずビール」となるのでしょうか。気の置けない旧友と会って美味しいものを食べるひとときの楽しさ、いいですね。 (多田有花)

17.青き海広がる大空夏の虹/高橋秀之
暑い夏だが、この句からは涼しさが伝わって来る。青い海、大空、虹、作者の開かれた心が感じられて読み手もいい気持ちになった。 (吉田 晃)

21.手に取れば赤々光る初トマト/西村友宏
作者自らが菜園に植えたものであろう。水をやりながら毎日成長を楽しみにしていたトマトを摘果した。だから一層トマトの 赤が映えるのだと思う。 (吉田晃)

22.蝉の羽透ける木陰を歩き出す/ 高橋句美子
 「蝉の羽透ける木陰」は好きな表現。緑陰と言ってもいいのではないかと思うが、この表現の方がずっといい。緑陰以上に涼しさを感じる。 (吉田 晃)

24.白桃の冷えが占めてる頬一杯/高橋句美子
白桃のとろけるような甘さ、香り、それを頬ばる楽しさ。旬の果物を思い切り味わうことのだいご味が感じられます。 (多田有花)

31.渓流に素足遊ばす石に座し/柳原美知子
気持ちよさそうです。渓流の音と水しぶきが涼しげで、こちらにまでその涼感が届きます。足を浸した渓流の冷たさ、心地よさも想像できます。 (多田有花)
石に座りながら、川の流れに足を入れ涼んでいる様子が楽しげです。 (髙橋句美子)

34.夜濯ぎの水汲むつるべ月の井戸/吉田 晃
つるべで水を汲む井戸の涼しさと水に映る月。昔ながらの日本情緒あふれる美しくも懐かしい光景です。 (柳原美知子)

40.鷺草の群舞の構えに咲きそろう/古田敬二
今にも飛び立とうと見える鷺草、群れが広がって咲いています。 (祝 恵子)

42.梅雨明けや妻の顔も晴れやかに/古田敬二
敬二さんとお会いしたのはずいぶん昔。お二人が 健在であることが句から伺え安心。 (吉田 晃)

05.行水の妻覗かばや草田男忌/桑本栄太郎
20.快方へとろろご飯と朝の風/西村友宏
35.合歓の花てんでに触れて眠らせる/吉田 晃
38.朝蝉の空を鳴らして飛び立てり/川名ますみ
41.天を指す芝生に一本ねじり花/古田敬二

■選者詠/高橋信之
25.湯の音に母思い出す夏夕べ
暑い夏の一日、家事を早めに終え、ゆっくりとお湯に浸かるのは、主婦にとってほっと安らげるひととき。お湯をつかう音にも涼しさが感じられ、湯上りの清々しいお母さまの姿が思い出されるようです。(柳原美知子)

26.夜の秋机上に数字書き並べ
27.スタンドの明かりが照らす夜の秋

■選者詠/高橋正子
28.立秋の風に高々雲動く/高橋正子
今年の立秋は良く晴れていた。 雲も白く浮かんでいた。この様な空の動きを良く捕らえている。 (廣田洋一)

29.萩を吹く風に出でけり試歩のため/高橋正子
「萩を吹く風」の表現が気持ちよく、秋が来たことを優しく教えてくれている。季節の変わり目を肌に感じ、歩いてみようとする前向きの気持ちになったのであろう。季節の移り変わり、特に秋への移りは人の心をそうさせてくれるのだろう。 (吉田晃)

30.みんみんの中の蜩水のごと

■互選高点句
●最高点(6点)
39.朝顔のつぼみの先に明日の色/川名ますみ

※コメントのない句に、コメントをお願いいたします。コメントをいただくと嬉しいものですので、ぜひ、よろしくお願いします。

■8月月例ネット句会清記■


■8月月例ネット句会清記■
2020年8月9日
14名(42句)

01.夏行くや空蒼くして深深と
02.乙女らの脛を惜しまず水遊び
03.初秋やいよよ渓流透き通る
04.何処までも暗き地底や蝉の穴
05.行水の妻覗かばや草田男忌
06.赤き顔挙げて歓声夜振りの子
07.振り仰ぐ空の青さよ広島忌
08.炎昼の街に立ちたり日章旗
09.秋立つや青色深きトルコ石
10.夏日はじく鐘撞堂の鬼瓦

11.蝉を手にスケボー遊ぶ男の子
12.皮をむき夜は漬物初スイカ
13.鎮魂の歌しめやかに長崎忌
14.焼き唐黍醤油の匂ひ広がりぬ
15.遠富士の風新涼でありにけり
16.友と会うまずは注文冷奴
17.青き海広がる大空夏の虹
18.一輪の向日葵我より背が高く
19.食卓に西瓜が並ぶ日曜日
20.快方へとろろご飯と朝の風

21.手に取れば赤々光る初トマト
22.蝉の羽透ける木陰を歩き出す
23.旱道アイスティーの滴りて
24.白桃の冷えが占めてる頬一杯
25.湯の音に母思い出す夏夕べ
26.夜の秋机上に数字書き並べ
27.スタンドの明かりが照らす夜の秋
28.立秋の風に高々雲動く
29.萩を吹く風に出でけり試歩のため
30.みんみんの中の蜩水のごと

31.渓流に素足遊ばす石に座し
32.上布まだ仕付けも解かず夫逝けり
33.山風にひらく朝顔海の色
34.夜濯ぎの水汲むつるべ月の井戸
35.合歓の花てんでに触れて眠らせる
36.手花火の煙の中に子と居りて
37.山の端や梅雨の日暮れの穏やかに
38.朝蝉の空を鳴らして飛び立てり
39.朝顔のつぼみの先に明日の色
40.鷺草の群舞の構えに咲きそろう

41.天を指す芝生に一本ねじり花
42.梅雨明けや妻の顔も晴れやかに

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

8月月例ネット句会ご案内


●8月月例ネット句会ご案内●
①投句:当季雑詠(夏の句・秋の句)3句
②投句期間:2020年8月3日(月)午前6時~2020年8月9日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:8月9日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:8月10日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、8月10日(月)正午~8月14日(木)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

7月月例ネット句会/入賞発表


■2020年7月月例ネット句会■
■入賞発表/2020年7月12日

【金賞】
11.四肢伸ばす風よく通る夏座敷/多田有花
すっきりと曇りのない快い俳句。風がよくとおる座敷は、夏には何よりも嬉しいところ。四肢を伸ばし、全身を伸ばせば、心身ともにくつろげる。自然の風にくつろげる夏座敷は、日本の良さ。(高橋正子)

【銀賞/2句】
39.桔梗のまず縦に割れひらきそむ/川名ますみ
観察がユニークで端正な句。典雅な楽曲を分析したような印象を受ける。作者は今、闘病中のピアニストだが、曲を弾く前には、楽曲を分析されるのであろうか。そんなことを思った。(高橋正子)

40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し/髙橋句美子
「ふっくら焼けて」の「ふっくら」に作者らしさが見える。塩を打って焼かれた鮎は、遠火でふっくらと焼かれて、塩味がほどよく、口にすがすがしい。香魚と言われる鮎の塩焼きである。(高橋正子)

【銅賞/3句】
32.雨水の滝なす峠合歓の花/柳原美知子
合歓の花が咲くころは、梅雨も末期になり、雨水も峠に滝となって落ちる。優しい合歓の花を煽るかのような荒々しい滝が対比され、景色がリアルになった。(高橋正子)

18,しそを摘む雨にぬれてる手でつまみ/祝 恵子
しその葉がやわらkに育つころは、梅雨の最中。自然、しそを摘む手も雨に濡れている。しそも、摘む人も濡れて、水に潤う日本の生活がよく詠まれている。(髙橋正子)

25.カサブランカの白へまっすぐ朝陽差す/古田敬二
芳香を放つ大きな百合のカサブランカ。まっ白なカサブランカは存在感もたっぷり。朝陽は迷いもなく、白いカサブランカへ差す。カサブランカは、日本の山百合から作られた花と聞く。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
11.四肢伸ばす風よく通る夏座敷/多田有花
日毎に暑さが募り籐蓆を敷き、葭戸を入れ、縁側には青簾を掛け、籐椅子も置き、夏暖簾に架け替え、ようやく夏座敷を設え終えました。戸をあけ放てば風も良く通り、仰のけになって四肢を伸ばします。夏用に建てられた日本家屋の醍醐味ですね。 (桑本栄太郎)
風がよく通るだけで気持ちの良い夏の座敷。自然の素晴らしさのひとこまです。 (高橋秀之)

25.カサブランカの白へまっすぐ朝陽差す/古田敬二
明るいカサブランカが清々しいです。 (髙橋句美子)

33.雨雫手に受け今朝のトマト摘む/柳原美知子
雨上がりの朝なんでしょう。トマトを摘もうとすると雨雫も手の中に受けてしまう。朝の天気の良さとトマトの瑞々しさが合わさって伝わってきます。 (高橋秀之)

40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し/髙橋句美子
串刺しにして炭火で焼かれた鮎の香りが漂ってきそうです。熱々をそのまま頬張ればぱりっとした鮎の皮とそこに打たれた塩の味が口の中に広がります。(多田有花)
五感を豊かに働かせ見事に鮎を詠みあげていると思う。作者の清々しい日常が匂う。 (吉田晃)
夏の風物は鮎が一番。尾びれに化粧塩を付けてふっくら焼きあがった鮎。頭からかぶりつく鮎はほろ苦く何とも言えぬ味である。 (古田敬二)

15.休日の港に一艘ヨットくる/高橋秀之
18,しそを摘む雨にぬれてる手でつまみ/祝 恵子
39.桔梗のまず縦に割れひらきそむ/川名ますみ

【高橋正子特選/7句】
20.細道へ揚羽を誘う朝の風/西村友宏
細道を抜けると田や畑に出るのかも。風が誘って連れて行ってくれてるのでしょうか。 (祝恵子)

11.四肢伸ばす風よく通る夏座敷/多田有花
15.休日の港に一艘ヨットくる/高橋秀之
18,しそを摘む雨にぬれてる手でつまみ/祝 恵子
32.雨水の滝なす峠合歓の花/柳原美知子
33.雨雫手に受け今朝のトマト摘む/柳原美知子
40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し/髙橋句美子

【入選/14句】
02.浮雲もまた旅人や心太/小口泰與
夏空に流れゆく浮雲をながめ、無心に心太を食べる旅にあるような涼し気な境地が思われます。 (柳原美知子)

07.荒梅雨や底の抜けたる天の闇/桑本栄太郎
最近の九州、岐阜、長野の豪雨を、底の抜けたる天と表現したのが上手い。(廣田洋一)

08.いさり火の隠岐の闇へと夏ともし/桑本栄太郎
故郷の海岸から沖をご覧になったら、漁火が見えたのですね。沖には壱岐があります。日本海の海の暗さと波の音、沖にきらめく漁火、大きな景色を感じます。 (多田有花)

14.伊賀上野梅雨の晴れ間の芭蕉館/高橋秀之
鉄道に乗って出かけられるのがご趣味です。梅雨の晴れ間のお休みの一日、伊賀上野までお出かけになったのでしょう。地名がよく生きています。 (多田有花)

16.ひまわりや学童保育の子等帰る/祝 恵子
学童保育の子らが帰る様子を見守るように大きなひまわりが咲いている清々しい夏の光景が思い浮かびます。 (高橋秀之)

27.雨あとのよく伸びている草むしり/古田敬二
雨の後は草もよく伸びてくるのも自然を感じる瞬間です。そんな草むしりは大変でもあり自然に触れるひとこまでもあります。 (高橋秀之)

37.泰山木咲けばひかりの弾けたり/川名ますみ
大きな白いタイサンボクの花が弾けると、それはそのまま光が弾けたようです。ある種の驚きをもって花を見つめておられる様子がわかります。 (多田有花)

04.漁師らの喜々たる声やかつお船/吉田 晃
05.高階へ影のぼりゆく梅雨の月/吉田 晃
10.降る音に取り囲まれて梅雨深し/多田有花
13.蝉の声近くに在宅勤務の朝/高橋秀之
29.若き日の友の夢見る夏の夜/廣田洋一
30.溜池の雨音激し蓮の花/ 廣田洋一
31.波音へ昼顔ひらく白砂踏む/柳原美知子

■選者詠/高橋信之
22.鶏の朝の一声夏休み
23.夏休み窓の遠くに野が拡がり
24.六月の朝さわやかに陽が昇る

■選者詠/高橋正子
34.緑陰に水のごとくに日の斑
明るい初夏の日射しの中の緑したたる木立の陰。木陰に織りなす木漏れ日の縞が水の流れのごとくに美しい。素敵な句ですね。(小口泰與)

35.向日葵を人のごとくに風雨打つ
36.初蝉は何蝉の声短すぎ

■互選高点句
●最高点(7点)
40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し/髙橋句美子

※コメントのない句にコメントをお願いいたします。

■7月月例ネット句会清記■


■7月月例ネット句会清記■
2020年7月12日
14名(42句)

01.手花火や小犬買いたし我が髪膚
02.浮雲もまた旅人や心太
03.凌霄や噴煙天を驚かす
04.漁師らの喜々たる声やかつお船
05.高階へ影のぼりゆく梅雨の月
06.夏空へ飛び発つ少女沈下橋
07.荒梅雨や底の抜けたる天の闇
08.いさり火の隠岐の闇へと夏ともし
09.掘割の高瀬舟ゆく鴎外忌
10.降る音に取り囲まれて梅雨深し

11.四肢伸ばす風よく通る夏座敷
12.絵日傘が長き陸橋渡りゆく
13.蝉の声近くに在宅勤務の朝
14.伊賀上野梅雨の晴れ間の芭蕉館
15.休日の港に一艘ヨットくる
16.ひまわりや学童保育の子等帰る
17,合歓の花ここまで歩いて3千歩
18,しそを摘む雨にぬれてる手でつまみ
19,打水に燥ぐ園児の靴光る
20.細道へ揚羽を誘う朝の風

21.ピーマンの瑞々しさに母喜々と
22.鶏の朝の一声夏休み
23.夏休み窓の遠くに野が拡がり
24.六月の朝さわやかに陽が昇る
25.カサブランカの白へまっすぐ朝陽差す
26.梅雨上がるまだ鳴っているさだまさし
27.雨あとのよく伸びている草むしり
28.垣根よりひょいと出で来し揚羽蝶
29.若き日の友の夢見る夏の夜
30.溜池の雨音激し蓮の花

31.波音へ昼顔ひらく白砂踏む
32.雨水の滝なす峠合歓の花
33.雨雫手に受け今朝のトマト摘む
34.緑陰に水のごとくに日の斑
35.向日葵を人のごとくに風雨打つ
36.初蝉は何蝉の声短すぎ
37.泰山木咲けばひかりの弾けたり
38.ひかり降り泰山木の花に散る
39.桔梗のまず縦に割れひらきそむ
40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し

41.雷鳴の聞こえぬ夜がふけている
42.洗濯物窓にかかりて梅雨の朝

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

7月月例ネット句会ご案内


●7月月例ネット句会ご案内●
①投句:当季雑詠(夏の句)3句
②投句期間:2020年7月6日(月)午前6時~2020年7月12日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:7月12日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:7月13日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、7月13日(月)正午~7月16日(木)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

ご挨拶


6月月例ネット句会にご参加ありがとうございました。投句にはじまり、選とコメントをありがとうございました。入賞の皆さまおめでとうございます。

昨日21日は夏至で、梅雨の中休みの地方もあり、部分日食も見られました。新型コロナの影響で県境を越えることへの自粛が解除され、本格的な夏へ動き出した印象です。生活の自粛を迫られて、外出も思うようにならないなか、季節の様々な句をご投句いただき、楽しませていただきました。

また、今月は、愛媛県の教職員や中学生俳句を指導され、以前水煙誌時代にご活躍いただいた吉田晃さんがご参加くださり、なつかしいことでした。ありがとうございました。

来月も第2日曜日の月例句会となります。楽しみにご健吟ください。これで、6月月例ネット句会を終わります。