■11月ネット句会■
■入賞発表/2013年11月11日■
【金賞】
★初鴨や波打つ音へ啼き交わし/佃 康水
この秋初めて飛来した鴨が、生き生きと詠まれている。波打つ音に声を混じらせ、仲間を呼び合い、これからここで冬を過ごすのだ。(高橋正子)
【銀賞】
★木の実踏む吾の後先木の実降る/桑本栄太郎
木の実を踏むや、その間を置かず、自分の後ろにも前にも木の実が降ってくる。木の実が雨のように降る晩秋の経験である。(高橋正子)
【銅賞】
★温き陽の大木に寄る今日立冬/古田敬二
立冬の大木に寄り掛かると、幹は陽に温められ温かい。立冬にも拘わらず、大きな木は意外にも温かい。(高橋正子)
★小春日の芝生へ児ら吹くシャボン玉/小川和子
芝生で遊ぶ児がしきりにシャボン玉を吹いている。小春日のうららかさが、シャボン玉を吹く児を通してよく詠まれている。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★晩秋の空は深かり薔薇園に/高橋正子
何処までも澄み切った青い空 それに秋薔薇の花の色は深みがあって一年で一番美しいと思います。去っていく秋を惜しむ心にも触れ好きな句です。 (迫田和代)
★麦の芽を揺らせて列車北へ行く/黒谷光子
冬枯れの中、麦の青い芽は、見るだけで明るい心地になります。その隣を列車が過ぎる。さらに寒さが厳しいでしょう、北へと向かう車両に、少し伸びた葉を揺らす麦畑。強さを感じる景色です。 (川名ますみ)
★大根引き寝っ転がって青い空/古賀一弘
大根を引き、力あまってのけぞったのだろうか。そのまま起き上がらずに暫し寝転んでいれば、青い空。大きな自然の下での、のびのびとした出来事である。 (小西 宏)
★小春日や青空の中に鳥と居る/河野啓一
暖かい秋の一日。空はどこまでも青く澄み、鳥の声をききながらゆったりと過ごす時間は幸福そのものです。 (井上治代)
★木の実踏む吾の後先木の実降る/桑本栄太郎
★初鴨や波打つ音へ啼き交わし/佃 康水
★小春日の芝生へ児ら吹くシャボン玉/小川和子
【高橋正子特選/7句】
★木の実踏む吾の後先木の実降る/桑本栄太郎
木の実踏むと木の実降るのレフレインが楽しい。自分の前後に木の実の落ちる音秋を楽しむ作者の笑顔が浮かぶ。 (古賀一弘)
★初鴨や波打つ音へ啼き交わし/佃 康水
飛来してきたばかりの鴨が仲間と無事を確認しているように思いました。波の音と鴨、長浜の湖岸の光景と重なります。(黒谷光子)
★温き陽の大木に寄る今日立冬/古田敬二
冬の到来を告げる立冬だが、大木に寄れば陽はまだ温い。季節の移り変わりを大らかに受け止めて、心は澄み伸びやかである。 (小西 宏)
★白波の拡がり見せる良夜かな/迫田和代
月の光がまばゆいばかりの海を見ていて、静かに白波が漂い拡がっていく光景が浮かんでまいります。(祝恵子)
★自転車の荷台にみかん箱を積む/高橋秀之
みかんが美味しくなってきました。荷台に載せる箱入り、お子さんたちの喜ぶ顔が見えてきます。(祝恵子)
★土や苗植え替え急ぐ冬隣り/祝恵子
朝夕は肌寒くなってきました。立冬も過ぎしだいに寒さも厳しくなることでしょう。その前に植え替えをと、いそいそと草花の世話をする様子がよく伝わってきました。 (井上治代)
★冬鳥の枝移りゆく声の澄み/黒谷光子
冬鳥がやってきて、枝を移りながら鳴く声は、冬の空気とを伝わってよく澄んで耳に届きます。(高橋秀之)
【入選/10句】
★俎板に骨断つ音の冷やかに/川名ますみ
夕餉の支度であろうか?台所の俎板の上で骨を断つ音がいつもより大きく、冷え冷えと聞こえて来る・・・。日毎に深まりゆく晩秋の情景が日々の生活音からも想われ素晴らしい。 (桑本栄太郎)
晩秋になると朝夕は冷えびえとしてくる。雨が降るとその感はいっそう深い。俎板の上で大きな魚の料理、太い骨を断つ音のがいっそう深く寂しさを感じる。(小口泰與)
★鳥も無き池面に枯葉舞い降りぬ/小西 宏
暖かいときは水鳥で賑わっていたであろう池も冬が来て今は静かになっている。そんな池ではあるが、まだ枯葉が舞い降りぬ、秋が終わり冬を迎えるそんな瞬間の様子を捉えています。(高橋秀之)
★裏返す鮃の白さ冬近し/川名ますみ
鮃の表は茶褐色で裏返すと白。濡れた新鮮なヒラメを俎板に載せ裏返すとひんやりとした風情となる。そのひんやりの中に近づいてくる冬を感じた。(古田敬二)
釣り果のおすそ分けを頂いたのでは、と拝察いたします。釣り上げたばかりの大きな平目は滑りもあり、新鮮で、どうお料理しても美味しくいただけそうです。(小川和子)
★臨月の腹の艶めく秋ともし/安藤智久
臨月と秋とは直接の必然性はない(少なくとも人類は)。人それぞれに、それぞれの季節に生まれてくる。しかし親としては、その季が絶対なのだ。この「秋ともし」の下の「腹の艶めき」はしかし/だから、全ての人に共有される、と私は思う。(小西 宏)
★踏み迷ふ百万本のコスモスや/ 渋谷洋介
見渡す限りのコスモス、百万本もあるという。歩くたびに気をつけていかなければと思う優しさ。(祝恵子)
★薄き影野良に流して秋の蝶/古田敬二
薄日をまとって野を低く流れるように飛ぶ秋蝶の儚さと愛しさ。野に山に季節の移ろいを感じます。(柳原美知子)
「影を流す」に、秋の蝶の儚さが上手く表現されています。 (安藤智久)
★掘りすすむ甘藷の輪郭豊けしや/柳原美知子
芋蔓を刈り取った後、畝の中の甘藷の成長に期待が膨らみます。いよいよ掘り進んで行くと立派な輪郭の甘藷が現れ思わず大歓声。収穫の喜びが聞こえて来るようで、私まで豊かな気持ちにさせていただきました。 (佃 康水)
★残菊や雨に打たれてなお強し/井上治代
咲き誇った時期が過ぎてもなお残っている菊の花は、雨に打たれても散ることなく、残っている。そこに力強さがあります。(高橋秀之)
★秋風に波音遠き礁かな/下地鉄
礁に打ち寄せる波の音も、秋風の吹く中に遠く聞こえる。秋海の侘しさが静かに伝わってくる。(高橋正子)
★北風や母家を叩くくさり樋/小口泰與
母屋に垂れているくさり樋が、北風になぶられて鎖の音を立てている。音は北風の強さそのままの音だが、「母屋を叩く」に言い知れぬ思いがある。(高橋正子)
■選者詠/高橋信之
★園児楽しどんぐり拾い吾に呉れぬ
どんぐりを楽しげに拾う園児たち。その喜びを作者にも分けてくれる。どんぐりだけでなく、秋の実りの喜び、子供らの遊び育つ喜びを分けてくれているのだ。 (小西 宏)
どんぐり拾いを楽しむ可愛い子どもの笑顔とどんぐりを受け取る優しい作者の微笑みが目に浮かびました。(井上治代)
★明日あれば丘に秋ばら咲くことも
海が見える見晴らしのいい丘の薔薇のつぼみを連想。
明日には咲きそうな気配のつぼみ。穏やかな老齢期でなければ詠めない句と思います。明日も穏やかな日であることを願いつつ詠まれたのでしょうか。 (古田敬二)
★菊咲いて年寄り多く平和なる
菊の季節です。社会全体が高齢化しており、我が家を含め地域は老人が多くなっています。菊は老人に似合う花です。菊を愛で穏やかな平和な生活であることを願うばかりです。 (古田敬二)
■選者詠/高橋正子
★晩秋の空は深かり薔薇園に/高橋正子
何処までも澄み切った青い空 それに秋薔薇の花の色は深みがあって一年で一番美しいと思います。去っていく秋を惜しむ心にも触れ好きな句です。 (迫田和代)
★秋水に空ひたひたと映りたる
澄みきった秋の水に美しい空がひたひたと揺らめいている。大きな池であろうか。「ひたひたと」が静かな晩秋の風情をも想像させます。 (佃 康水)
★武蔵野の林に秋空まばらなり
■互選高点句
●最高点(6点)
★秋水に空ひたひたと映りたる/高橋正子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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