■10月ネット句会■
■入賞発表/2013年10月13日■
【金賞】
★葦の田の刈られて軽し水の音/小西 宏
青々と茂げっていた葦田の葦も枯れた。その葦をすっかり刈り取ると、葦の根元を流れていた楚々とした軽やかな音を立てて流れるようになった。清潔さがあり、なお、軽やかさがある。(高橋正子)
【銀賞】
★掛軸もすっと真すぐに糸すすき/高橋句美子
糸すすきは、すすきの中でももっとも遅く花を開く。残る虫の声のように細く、こじんまりとしている。それに合わせるように掛軸もすっと真すぐに垂れている。そのままの情景を詠んでいるが、茶席の雰囲気が出ている。(高橋正子)
【銅賞】
★朝々に柿の色付き婚近し/藤田洋子
「朝々に」の言葉が楚々としているので、嫁ぎゆく娘の雰囲気を、母親としての慈しみをもって表現できている。柿の色が光が差すように熟れると婚礼の日となるのだ。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★朝々に柿の色付き婚近し/藤田洋子
日一日と秋の深まりと共に愈々婚礼の日も近づき、身の引き締まる思いがありありと伝わって来ます。「朝ごとに」ではなく、「朝々に」との措辞が心情をよりリアルに表現されている。 (桑本栄太郎)
★掛軸もすっと真すぐに糸すすき/高橋句美子
床の間の掛け軸も真っすぐに下がり花瓶には糸ススキが活けてある。落ちつける和室です。 (祝恵子)
★背伸びして胸元に貼る赤い羽根/高橋秀之
自分で募金箱にお金を入れたのでしょうか。不自由な人、力の弱い人たちへの優しい気持ちを胸にしっかりと抱きしめる決心と子供らしい誇りが体現されています。 (小西 宏)
★秋晴れて風車の前の丘に立つ/祝恵子
秋晴れて天高しである。丘に立てば、なお、秋晴れて天高しである。晴れ晴れとして広々として、丘に立つ詠み手の姿が見えてくる。読み手も嬉しくなる。(高橋信之)
★豊作や新米どかと届けられ/河野啓一
中七の「新米どかと」はリアルな表現で、作者の喜びが読み手に強く伝わってくる。無駄な言葉のない一句である。(高橋信之)
★裏木戸へ弾けて真っ赤檀の実/佃 康水
こういうお庭があればなぁと思う景です。(祝恵子)
★葦の田の刈られて軽し水の音/小西 宏
【高橋正子特選/7句】
★野菊咲く道は遠くの山に向き/迫田和代
道の野菊の咲く道は、遠くの山に向かって伸びてゆく。遠くの山だからこそ、秋に向かう風情が感じられます。(高橋秀之)
遠くの山がすっきりと見わたせる道を通られたのでしょう。野菊の咲く道は空気も澄んで、秋らしい気持ちのよい情景が思われます。(小川和子)
★朝々に柿の色付き婚近し/藤田洋子
お子様のご結婚と言う慶びの日を間近に控えられ、色付いて来た柿の実を朝な朝なに眺めるにつけ嬉しくも有り寂しくも有り、親の複雑な心境がひしひしと伝わって参ります。(佃 康水)
★掛稲の穂垂れ軽々吹かれおり/柳原美知子
機械化されず稲架に掛けて天日で干される稲穂、風とともに軽やかにそよぐあり様が、いっそう収穫の喜びを感じさせてくれます。 (藤田洋子)
★虫の夜のただそれだけの住まいかな/下地鉄
きっと静かな夜をすごしておられるのでしょう。ただ、虫の音だけが聞こえてくる住まいで、ゆったりとした時間が流れていきます。(高橋秀之)
★朴の葉の白き葉裏の落ちて秋/桑本栄太郎
朴の大きな葉が裏返り、ぱさっと落ちたところに秋を感じたのがよい。(高橋正子)
★葦の田の刈られて軽し水の音/小西 宏
★掛軸もすっと真すぐに糸すすき/高橋句美子
【入選/5句】
★天空は風尽きるらし鱗雲/桑本栄太郎
空の果てまで続き、だんだん小さくなってゆく鱗雲を眺めているとそんな風にも思われますね。広やかな想像力に惹かれました。 (河野啓一)
★遠出の日高い空には鰯雲/迫田和代
鰯雲の広がる大空を見上げ、心も晴れ晴れと秋光に包まれての遠出。秋たけなわの自然をゆったりと満喫する喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)
★何を見に秋天を飛ぶヘリコプター/矢野文彦
報道取材なのか、遊覧飛行なのか。高く澄んだ秋の空を飛ぶヘリコプターを見て、いろいろと思いをめぐらせる時間もいいものです。(高橋秀之)
★残る虫御苑の太き銀杏の根/古田敬二
御苑の散策でしょう、大銀杏の張り込んだ根っこ、佇めば虫の声も聞こえ、足元にはぎんなんが落ちているのやも。(祝恵子)
★秋高く上水瀬音響かせる/小川和子
東京地方では玉川上水、神田上水などという名前を子供の頃から聞いていました。今でも使われているのでしょうか。澄んだ秋空の下に流れる飲料水としての小さな川。清澄な響きです。 (小西 宏)
■選者詠/高橋信之
★秋高し柏手を打つ妻も打つ
豊穣の秋、天高く澄み渡った空の下で、二人そろって神に感謝する。われわれ日本人の肌に染みついた自然の恵みへの感謝の気持こころ。リズムよく詠まれまれた気持ちの良い御句です。(河野啓一)
★野葡萄の低きに垂れて実が優し
「野葡萄」がもつ野趣が一句を貫いていて、秋の深まりを感じます。(小川和子)
★空青く晴れきて白き杜鵑草
■選者詠/高橋正子
★竜胆の青透く峡の朝日差し
峡の中に咲いている秋らしい竜胆に朝日が差して輝いてる。青く透けて見えるのもいいですね。青い竜胆の色が目の前にちらつきます。(迫田和代)
★一碗の茶をいただけばきりぎりす
一椀のお茶の味。間遠に鳴くきりぎりす。忙中閑ありの上品な所作が偲ばれます。 (矢野文彦)
★関守石の露に濡たる縄の色
■互選高点句
●最高点(5点/同点3句)
★竜胆の青透く峡の朝日差し/高橋正子
★野菊咲く道は遠くの山に向き/迫田和代
★コスモスの高さに子らの見え隠れ/祝 恵子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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