■2021年11月月例ネット句会■
■入賞発表/2021年11月15日
★建つ家の槌音高く冬に入る/藤田洋子
「冬に入る」に重みがある。ほかの季節でなく厳しい季節である冬が始まるとき、建築中の家の柱を打つ槌音がきりっとした空気を響かせて弾んでいる。高い槌音は喜びとして聞こえる。(髙橋正子)
【銀賞】
★小鳥来て金柑黄に輝ける/吉田 晃
小鳥が来ることは、生活に楽しさが加わること。金柑の実は黄色が輝き、小鳥が来て、羽音や鳴き声を立てる。小さきものへの優しいまなざしの句。(髙橋正子)
残業を終えて電車を待つために座る駅の椅子。疲れの深さとともに、秋の深さ、時の深さが否応なく寄せて来る。そんな感覚をうまく詠んだ。(髙橋正ko 子)
★秋の日に尾を燦めかせ猫過ぎる/川名ますみ
猫が尾を巻きあげて通り過ぎるのであろう。その尾に秋の日が当たって、尾の毛が燦めく。通り過ぎる猫によって、「秋の日」という日の燦めきを見ることができた。(髙橋正子)
秋の暮は、そぞろ寒く、あたたかいところが恋しい。グラタンが煮え立つ生活の音に秋の深まりを感じたのがよい。(髙橋正子)
小春日和の窓脇は、あたたかくて快い。その窓際に寄り、服を畳んで整える。ゆっくりと流れる時間は、まさに小春日和そのもの。(髙橋正子)
★建つ家の槌音高く冬に入る/藤田洋子
寒気をふるわせ、立冬の青空へと音高く響く槌音。新築の家への期待と新たな季節と生活への希望に満ちた力強い句です。(柳原美知子)
★小鳥来て金柑黄に輝ける/吉田晃
★秋深し残業帰りの駅の椅子/高橋秀之
★木の実降るはっしと森に鋭き音を/髙橋正子
★グラタンの煮え立つ音や秋の暮/西村友宏
★服を畳む小春日和の明るき窓/髙橋句美子
【髙橋正子特選/7句】
★秋雲の掃かれし先の青ばかり/川名ますみ
漂う雲が形を変えて消えていく様を「掃かれ」と表現するのは美しいと感じましたし、「青ばかり」という言葉で空気の澄んだ気持ちのよい秋晴れが鮮明に浮かびました。 (西村友宏)
秋の雲が掃かれるように、それはそれはゆっくりと風に流れる。薄い雲が流れた後には、秋独特の薄く青い空が高く広がっていて、詠者はそこに秋の美しさを見つけたのだろう。(吉田 晃)
★小鳥来て金柑黄に輝ける/吉田晃
★秋深し残業帰りの駅の椅子/高橋秀之
★建つ家の槌音高く冬に入る/藤田洋子
★グラタンの煮え立つ音や秋の暮/西村友宏
★服を畳む小春日和の明るき窓/髙橋句美子
★空青ければ銀杏黄葉を輝かす/髙橋信之
★束の間の没日差しけり石蕗の花/小口泰與
日陰に咲く石蕗の花に入り日が差し、しばらく幻想的な黄の色に染められ、静かで心やすらぐ夕暮れとなりました。(柳原美知子)
旧暦10月は全国の神様が松風の優しく吹く出雲の大社にあつまります。これを出雲では神存月と呼び、神と人の神秘的な伝統伝統行事「神在祭」が行われます。 (小口泰與)
坂を巡り歩いて、お茶の花を見つけたときのうれしい気持ちが感じられます。(髙橋句美子)
風もなく穏やかな日、背中に日差しを浴びながらお弁当をいただくひとときは至福ですね。ひとりで食べても美味しいし、他愛も無い事をしゃべりながら親しい者が集まって食べるのもいいものです。 (多田有花)
★大空の雲は素早し冬立てる/高橋秀之
冬に入った日、まだ暖かさが残っていますが、空を行く雲の流れは速く上空の風の強さを思います。町に北風がやってくるのももうすぐ。 (多田有花)
枯れすすきが風に揺れている様が良く見える。揺れるのを空を掃くとしたのが上手い。 (廣田洋一)
★高きより地上に降らす木の葉雨/多田有花
天上から光とともに降ってくるような色とりどりの木の葉雨。その音と風に包まれて、自然の懐にいる充足感が感じられます。(柳原美知子)
★木枯しを独り聞きたる厨かな/廣田洋一
あれ程暖かった初冬も過ぎ、11月も中旬ともなれば木枯し一番の吹く頃である。今夜は鍋料理であろうか?色々食事の支度を行いながら、木枯しの音を聞いています。 (桑本栄太郎)
★棟上げの朝新米の封を切る/藤田洋子
気持ちのいい句です。棟上げ、新米、気持ちが浮き立ち「さあ」という勢いを感じます。ありありとその瞬間の光景が見えてきます。(多田有花)
棟上げ、新米、新しいものへの喜びが感じられます。今年もあと二か月足らず。新たな年が幸多いものであることを願う詠者の願いがあるのでしょう。(吉田 晃)
★柿紅葉添えて熟柿をいただきぬ/柳原美知子
熟柿が好きな方にはたまらない美味しさでしょう。柿だけでなくそこに柿紅葉を添えられるあたり、粋ですね。 (多田有花)
★田の鋤かれ畝整然と冬に入る/柳原美知子
冬に入った日に、草一本無く鋤かれていて、冬の用意が調いました。 (祝恵子)
★まっ新なセーター羽織って演奏会/西村友宏
演奏会に出演されたのでしょうか?楽器は何を演奏されたのか?どんな曲だったのかなどと想像が膨らみます。 (多田有花)
★活気づく赤提灯と冬の月/西村友宏
たまたまですが、今日の仕事帰り、赤提灯行ってきました。そして、月もきれいな夜でした。活気づく赤提灯、今の世相を感じます。 (高橋秀之)
★裸木の枝伸びのびと風ほふる/小口泰與
★玄関へ挿し置く棉の実の白さ/吉田晃
★いましばし石燈籠に冬紅葉/多田有花
★枯すすき風吹くたびに空を掃く/多田有花
★木枯しを独り聞きたる厨かな/廣田洋一
★玄関に朝を待ちたる落葉かな/廣田洋一
★芽水仙日の廻り来る庭の隅/藤田洋子
★水仙のはがきを選び筆が乗る/髙橋句美子
★水遣れば土の吸う音秋の風/川名ますみ
■選者詠/髙橋信之
★冬黄葉今日を輝く一日に
ずっと昔から変わらず、今日を前向きに生きておられる。ただ生きるだけなら今日は輝かない。先生の俳句への日々の精進があって、今日を輝かせたいとh日々取り組んでおられるのだ。(吉田 晃)
★空青ければ銀杏黄葉を輝かす
★皇帝ダリア咲いて空のあやうさよ
★届きたる芋に田泥のほろほろと
土のついた芋。洗わずに泥のついたままを送ってきた。洗わなかったのは送り主の心遣いであり、詠者はその心遣いを嬉しく感じ、句にしたためたのだと思う。泥のついた芋は、土の手触りと匂いがして田舎を思い起こさせてくれたのだろう。 (吉田晃)
●最高点(5点)
★建つ家の槌音高く冬に入る/藤田洋子
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22.棟上げの朝新米の封を切る/藤田洋子
棟上げ、新米、新しいものへの喜びが感じられます。今年もあと二か月足らず。新たな年が幸多いものであることを願う詠者の願いがあるのでしょう。
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14.大空の雲は素早し冬立てる/高橋秀之
冬に入った日、まだ暖かさが残っていますが、
空を行く雲の流れは速く上空の風の強さを思います。
町に北風がやってくるのももうすぐ。
26.柿紅葉添えて熟柿をいただきぬ/柳原美知子
熟柿が好きな方にはたまらない美味しさでしょう。
柿だけでなくそこに柿紅葉を添えられるあたり、粋ですね。
32.まっ新なセーター羽織って演奏会/西村友宏
演奏会に出演されたのでしょうか?楽器は何を演奏されたのか?
どんな曲だったのかなどと想像が膨らみます。
真っ白なセーターが印象的です。
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37.冬黄葉今日を輝く一日に 選者詠/髙橋信之
ずっと昔から変わらず、今日を前向きに生きておられる。ただ生きるだけなら今日は輝かない。先生の俳句への日々の精進があって、今日を輝かせたいと日々取り組んでおられるのだ。
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40.秋雲の掃かれし先の青ばかり/川名ますみ
秋の雲が掃かれるように、それはそれはゆっくりと風に流れる。薄い雲が流れた後には、秋独特の薄く青い空が高く広がっていて、詠者はそこに秋の美しさを見つけたのだろう。
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08.冬うらら堤防に座しお弁当/祝 恵子
風もなく穏やかな日、背中に日差しを浴びながらお弁当をいただくひとときは至福ですね。
ひとりで食べても美味しいし、他愛も無い事をしゃべりながら親しい者が集まって食べるのもいいものです。
お礼
信之先生、正子先生、ネット句会の開催ありがとうございます。長く参加も出来ず失礼しております。今回、皆さんの投句の中に入れていただき、嬉しくありがたいです。
思いもかけず「冬に入る」の句を金賞に選んでいたきました。大変ありがとうございます。正子先生、ご丁寧なコメントをいただきありがとうございます。現在、娘夫婦が自宅建設中です。美知子様、同句に温かなコメントをありがとうございました。
入選句に「新米」「芽水仙」の句を選んでいただきありがとうございました。有花様、晃様、嬉しいコメントをありがとうございました。皆様の選やコメント励みにいたします。
御礼
高橋信之先生、正子先生
11月度花冠ネット句会を開催していただき有難う御座いました。大変に勉強になりました。
また、「石蕗の花」の句と「裸木」の句を入選句にお取り上げいただき有難う御座いました。
今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
桑本栄太郎様、祝恵子様、西村友宏様には「石蕗の花」の句を選にお取り上げ頂き有難う御座いました。
廣田洋一様「裸木」の句を選にお取り上げ頂き有難う御座いました。
寒さの折り皆様のご健勝を祈念申し上げます。
お礼
高橋信之先生、正子先生、11月月例ネット句会の開催をありがとうございました。
入選に「冬うらら」をお選び頂きましてありがとうございました。
多田有花様、同句へ選と優しいコメントを頂きまして、ありがとうございました。
お礼
信之先生、正子先生
11月月例ネット句会を開催いただきありがとうございます。
思いがけず三句とも入選句にお選びいただき感謝いたします。
「枯すすき風吹くたびに空を掃く」に選をいただいた
廣田洋一さま、小口泰與さま、祝恵子さま、ありがとうございました。
廣田洋一さまには貴重なコメントをいただきうれしく拝読しました。
「高きより地上に降らす木の葉雨」に選をいただいた
柳原美知子さま、髙橋句美子さま、ありがとうございました。
「いましばし石燈籠に冬紅葉」に選をいただいた 高橋秀之さま
ありがとうございました。
御礼
高橋信之、正子先生
11月度花冠月例ネット句会を開催頂き、大変有難う御座います!!。
「松籟の神在り月の大社かな」、「山里の坂を巡ればお茶の花」の二句を入選句にお選び頂き大変有難う御座いました。
小口泰與様には「神在り月」の句に選とコメントを、又高橋句美子様には「お茶の花」の句に選とおコメントを頂戴しまして大変有難う御座いました。
本格的な寒さに向かう折柄、信之先生、正子先生を初め会員の諸兄諸姉の皆様、どうぞお体をご自愛下さいますよう!!。
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30.青空のさいはてなりき雪の富士/髙橋正子
雪の富士山の圧倒的な存在感と身の引き締まるようなひろびろとした青空が想像されます。新たな季節の到来が喜びをもって感じられます。
01.束の間の没日差しけり石蕗の花/小口泰與
日陰に咲く石蕗の花に入り日が差し、しばらく幻想的な黄の色に染められ、静かで心やすらぐ夕暮れとなりました。
18.高きより地上に降らす木の葉雨/多田有花
天上から光とともに降ってくるような色とりどりの木の葉雨。その音と風に包まれて、自然の懐にいる
充足感が感じられます。
お礼
信之先生、正子先生、11月月例句会を開催していただき、ありがとうございました。
「冬に入る」と「塾柿」の句を入選句にお加えいただき、ありがとうございました。
祝恵子様には「冬に入る」に選と温かいコメントを、廣田洋一様、髙橋句美子様には選をいただき、ありがとうございました。
多田有花様には、「熟柿」に選と嬉しいコメントを、桑本栄太郎様には選をいただき、ありがとうございました。
私は熟柿が大好きで、ご近所さんに樹齢83年の渋柿
の大樹があり、鈴生りの柿に目を奪われ、「いい色
ですね。」とほめると、「熟柿たべます? よう採らないから採って持って帰ってください」と言われ
勝手に採らせてもらって、きれいな柿紅葉も一枚いただいて帰ったのです。残りの柿も後で持っていくから干し柿にしたらいいよ。とありがたいお言葉。
温かい隣人たちにめぐまれ、その交流も句にできたらと願っています。
お礼
美知子さん、雪の富士の句にコメントをありがとうございました。横浜に来てから、日々目にする山という山がありません。丘ばかりです。遠くに南アルプスの連山と、天気が良ければ富士山の山頂が見えます。
私にとって、山は自分を支えてくれるようなもので、石鎚山もそうでしたし、故郷の前山もそうでした。
お礼
信之先生、正子先生、11月月例ネット句会に参加させて頂きまして、ありがとうございました。
晩秋から冬に入る、彩り豊かで少し緊張感のある季節を、皆さまの御句とコメントから感じました。
この度は「秋の日に」の句に銅賞を賜りまして、大変嬉しく存じます。しっぽに陽射しをきらきらさせながら、通り過ぎる猫を見掛けました。猫は大好きですが、愛猫がいた頃は句に詠むことができませんでした。かわいがり過ぎて、客観的に観察できなかったのかもしれません。同句に選を下さいました美知子さま、お礼申し上げます。
「秋雲の」の句には、正子先生の特選、友宏さま、晃さまの貴重な選とコメントを頂戴しまして、感謝いたします。頂きましたコメント通りの、美しい空を望みました。拙い句からお汲み取り下さり、嬉しいばかりです。
また「水遣れば」の句に入選、友宏さまの選を頂きまして、ありがとうございました。穏やかな秋の日、鉢植えに水を遣りましたら、土が飲み込むような音を立てました。日常のひとこまを俳句に書き留め、こうしてご共感頂けますこと、幸せに思います。