今日の秀句/4月11日~20日

4月20日(句)
★静けさや雨の団地に松の芯/桑本栄太郎
雨が降る団地の静けさ。人は家に籠り、人声も、物音もない世界に、松の芯は、ぐんぐん伸びている。驚くほどの勢いに、松の生命力を見る。(高橋正子)
4月19日(1句)
★囀りのいろいろ部屋に届きけり/多田有花
外出自粛を要請される日々。家に居ることも多いが、部屋にいて聞こえてくるものは、いろんな鳥の囀り。その声の主の姿を思って見たり、家居も楽しい。(高橋正子)
4月18日(1句)
★日差しはや強し咲き初む八重桜/多田有花
そめいよしのが終わると八重桜が咲く。そのころには、日差しは初夏を思わせるような日もあって、日差しの強さを実感する。ぼってりと思い八重桜と、日差しが相重なる。(高橋正子)
4月17日(1句)
谷あいに入り行く貨車や初燕/小口泰與
貨物列車が通りすぎてゆき、谷あいに入って小さくなった。そこへ初燕がかろやかに過っていった。貨車も燕もみんな通り過ぎてゆくもの。(高橋正子)
4月16日(1句)
★蝶を追う幼ふたりや休園中/桑本栄太郎
幼稚園や保育園が休みになっても、幼子たちは、遊びに困らない。姉妹か、兄弟か、外で蝶を追いかけて遊んでいる。その無邪気さ、それ自体が絵になっている。(高橋正子)
4月15日(2句)
★家々の裏を流れて花筏/多田有花
家々の裏を川が流れている。近くに桜の木があるかもしれないが、花筏は遠くから流れ来たかもしれない。「裏を流れて」が味わい深い。(高橋正子)
★花大根はるか故郷の凪の海/桑本栄太郎
花大根は薄紫の花で固まって咲くことが多い。栄太郎さんの故郷は鳥取。日本海の凪いだ海と、花大根の色は似あう。以前城ヶ島に行ったとき、海辺近くに花大根が群れ咲いていた。そんな景色が急に思い出された。(高橋正子)
4月14日(1句)
★快晴に深呼吸して木の芽山/多田有花
深呼吸するのは、木の芽山。晴れ晴れとした青空に、木の芽山は、伸びあがって深呼吸しただろう。もちろん、作者も思わず深呼吸したくなっただろう。(高橋正子)
4月13日(1句)
全身を花粉まみれや熊ん蜂/小口泰與
やんちゃ坊主ような熊ん蜂。花に体を突っ込んで、花粉まみれになって蜜を吸ったらしい。(髙橋正子)
4月12日(2句)
★園児らの声に燃え立つ躑躅かな/廣田洋一
躑躅の色は、鮮烈。「燃え立つ」と言って過言ではない。園児らがあげる無邪気な声に、呼応するかのように花色を強める躑躅だ。(高橋正子)
★午後よりは桜を散らす風の音/多田有花
午後になって風が出てきた音がする。その音は、桜を散らす風だった。「散らす風の音」というからには、風は見えないけれど、桜の散る様に風の姿が見て取れる。(高橋正子)
4月11日(1句)
★花楓光と影が交差する/多田有花
楓の若葉、その中に暗紅色の種をなした小さい花が見られる。楓の若葉に降り注ぐ光、光が作る影が交差して、また若緑と暗紅色が光と影のように対比されて、桜が終わるころの明媚な景色となっている。(高橋正子)

4月11日~20日

4月20日(4名)
小口泰與
聞え来る謡の声や蝶の昼★★★
春光や白衣観音青空へ★★★
和紙に書く友への文や桃の花★★★
廣田洋一
今を盛りの桜を揺らす地震の朝★★★★
休業の店の並びて落花舞ふ★★★
川底に鯉の二匹や花筏★★★
多田有花
残る花一掃夜の雨と風★★★
くぐり入り枝垂桜を見上げおり★★★★
境内に絵を描く人や糸桜★★★

桑本栄太郎

夢に在り惰眠むさぼる穀雨かな★★★
静けさや雨の団地に松の芯★★★★
雨が降る団地の静けさ。人は家に籠り、人声も、物音もない世界に、松の芯は、ぐんぐん伸びている。驚くほどの勢いに、松の生命力を見る。(高橋正子)
玉房の濡れて垂れ居り八重ざくら★★★
4月19日(4名)
廣田洋一
農小屋に人影見ゆる穀雨かな★★★★
ビニールの覆ひし畝に穀雨かな★★★
雲去りて日のさんさんと穀雨かな★★★
小口泰與
写真家の望遠レンズ山笑う★★★
海棠の雨のしずくの刹那かな★★★
菜の花や千曲の流れ平らかに★★★★
多田有花
日永かなもういいかいの声がする★★★
囀りのいろいろ部屋に届きけり★★★★
外出自粛を要請される日々。家に居ることも多いが、部屋にいて聞こえてくるものは、いろんな鳥の囀り。その声の主の姿を思って見たり、家居も楽しい。(高橋正子)
濃き影を宿して咲きぬ八重桜★★★

桑は本栄太郎

春風や坂道くだる一輪車★★★
山里の甍きらめく揚ひばり★★★★
春雨のスカイプ通話の家居なりぬ★★★
4月18日(4名)
小口泰與
春ゆうべ漁を終えたる夫婦船★★★
隠り沼の公魚尾びれぴちぴちと★★★
上野毛の空均しけり春の鳶★★★★
廣田洋一
ひるがへり橋をくぐりし燕かな★★★★
あの屋根かこちらの屋根か百千鳥★★★★
やはらかき朝の日差しや百千鳥★★★
多田有花
しばし座す蝶の集いし頂に★★★
日差しはや強し咲き初む八重桜★★★★
そめいよしのが終わると八重桜が咲く。そのころには、日差しは初夏を思わせるような日もあって、日差しの強さを実感する。ぼってりと思い八重桜と、日差しが相重なる。(高橋正子)
大腿骨頚部骨折春疾風★★★

桑本栄太郎

山吹の一重と云うは風まかせ★★★★
著莪の花咲いて曇りや明日は雨★★★
遠目にも赤き垣根や新芽吹く★★★
4月17日(4名)
廣田洋一
山吹や道灌濠に咲き誇る(原句)
山吹や道灌濠に黄を尽くし★★★★(正子添削例)
「咲き誇る」で問題はないですが、添削例のようにもできます。
山吹や寿司屋の前に黄金吹く★★★
遠き日の友の面影濃山吹★★★
小口泰與
谷あいに入り行く貨車や初燕★★★★
貨物列車が通りすぎてゆき、谷あいに入って小さくなった。そこへ初燕がかろやかに過っていった。貨車も燕もみんな通り過ぎてゆくもの。(高橋正子)
つばくらや白衣観音朝日差す★★★
天平の箜篌の調べや春の雨★★★
多田有花
伽藍仰ぐ枝垂桜のその向こう★★★★
見上げれば視界いっぱい糸桜★★★
新幹線霞の彼方へ去りゆけり★★★

桑本栄太郎

川に沿い地道下りぬ春柳★★★★
揚ひばり甍きらめく里の屋根★★★
丘うえの早瀬聞き居り芝さくら★★★
4月16日(4名)
小口泰與
散る花の境内に満ち躓けり★★★
夕日染む利根の白波揚雲雀(原句)
夕日染む利根の波の上揚雲雀★★★★(正子)添削
もとの句、言いたいことを一つ(揚雲雀)に絞るのがよいと思います。白波が強すぎます。
辰之の地ゆうるり流る春の川★★★
廣田洋一
早々と頭揺らせる雛罌粟かな(原句)
雛罌粟の開けば早も風に揺れ★★★★(正子添削)
「頭」は雛罌粟の花冠のことですが、 花びらのひらひらしたイメージに少しそぐわない感じです。
名を知らぬ草花あまた春惜しむ★★★
八重桜枝垂れる先に緋鯉かな★★★
多田有花
花びらを風吹くたびに放ちけり★★★★
小綬鶏に呼ばれて開ける昼の窓★★★
一山に影を落として春の雲★★★

桑本栄太郎

蝶を追う幼ふたりや休園中★★★★
幼稚園や保育園が休みになっても、幼子たちは、遊びに困らない。姉妹か、兄弟か、外で蝶を追いかけて遊んでいる。その無邪気さ、それ自体が絵になっている。(高橋正子)
白き腹見せて反転つばくらめ★★★
げんげ田の鋤き込まれゆく日差しかな★★★
4月15日(4名)
小口泰與
満ち満ちて一花だに放下せず★★★
鳥だにも来ぬ隠り沼のはこべかな★★★★
頼もしき凪の湖なり残る鴨★★★
廣田洋一
野良として箱に捨てられ子猫かな★★★
天辺の赤く光れる残花かな★★★★
町の川挟みて散りし残花かな★★★
多田有花
花筏家々の裏を流れゆく(原句)
家々の裏を流れて花筏★★★★(正子添削)
家々の裏を川が流れている。近くに桜の木があるかもしれないが、花筏は遠くから流れ来たかもしれない。「裏を流れて」が味わい深い。(高橋正子)
麗かな頂でコロナ禍を語る★★★
日永かな明るさの中で夕食を★★★

桑本栄太郎

青ざむる御衣黄桜や里の辻★★★
花大根はるか故郷の凪の海★★★★
花大根は薄紫の花で固まって咲くことが多い。栄太郎さんの故郷は鳥取。日本海の凪いだ海と、花大根の色は似あう。以前城ヶ島に行ったとき、海辺近くに花大根が群れ咲いていた。そんな景色が急に思い出された。(高橋正子)
コロナ禍と云えど樹上の百千鳥★★★
4月14日(4名)
小口泰與
渓流を讃え雪代山女かな★★★
つくしんぼ立ち居定かに新入生★★★★
公魚のかすかな魚信たなごころ★★★
廣田洋一
出で来る芽にせかされし春落葉★★★★
已む無くも休業したり春落葉★★★
春落葉吹き寄せられしフェンス際★★★
多田有花
我もまた家に籠りぬ花の冷え★★★
災難はいつも突然春嵐★★★
快晴に深呼吸して木の芽山★★★★
深呼吸するのは、木の芽山。晴れ晴れとした青空に、木の芽山は、伸びあがって深呼吸しただろう。もちろん、作者も思わず深呼吸したくなっただろう。(高橋正子)

桑本栄太郎

夜もすがら闇の雄叫ぶ春疾風★★★
残花早や散るべくあらん夜半の風★★★
枝先のすでに若葉の日差しかな★★★★
4月13日(3名)
小口泰與
全身を花粉まみれや熊ん蜂★★★★
やんちゃ坊主ような熊ん蜂。花に体を突っ込んで、花粉まみれになって蜜を吸ったらしい。(髙橋正子)
ヒヤシンス深閑とせる小料理屋★★★
青柳や風の岸辺の只ならず★★★
廣田洋一
子の声に応へるごとし椿落つ★★★★
緑の葉押し分け咲ける八重椿★★★
門前に笑顔見せたる白椿★★★
桑本栄太郎
ひたひたと音に目覚めり菜種梅雨★★★
花屑の水面に集い浮かびけり★★★
雨雲の晴れて現わる花の雲★★★★
4月12日(4名)
小口泰與
隠り沼の春たけなわや鳥の声★★★★
定かなる日差しの音色チューリップ★★★
夕闇や乙女椿のたたずまい★★★
廣田洋一
見開きて海の夢見る桜鯛★★★
園児らの声の燃え立つ躑躅かな(原句)
園児らの声に燃え立つ躑躅かな★★★★(正子添削)
「燃え立つ」のは、「園児の声」か「躑躅」かということになりますが、「躑躅」のほうが、自然ではないでしょうか。
躑躅の色は、鮮烈。「燃え立つ」と言って過言ではない。園児らがあげる無邪気な声に、呼応するかのように花色を強める躑躅だ。(高橋正子)
道はさみ色とりどりのつつじ咲く★★★
多田有花
日曜の朝の静かな春の雨★★★
午後よりは桜を散らす風の音★★★★
午後になって風が出てきた音がする。その音は、桜を散らす風だった。「散らす風の音」というからには、風は見えないけれど、桜の散る様に風の姿が見て取れる。(高橋正子)
点々と高き所に芽吹く木々★★★

桑本栄太郎

窓辺より見やる空へと木の芽雨★★★
残花早や蘂の赤きが目立ちけり★★★★
満天星の花の滴やうつむいて★★★
4月11日(4名)
小口泰與
また二人車より降る田芹かな★★★
海棠や小犬親子は夢の中★★★
囀りや浅間南面青々と★★★★
多田有花
大霞なり淡路家島六甲も★★★
楠落葉はらはら続く交差点★★★
花楓光と影が交差する★★★★
楓の若葉、その中に暗紅色の種をなした小さい花が見られる。楓の若葉に降り注ぐ光、光が作る影が交差して、また若緑と暗紅色が光と影のように対比されて、桜が終わるころの明媚な景色となっている。(高橋正子)

廣田洋一

大取りの色鮮やかに八重桜★★★
散り敷きし花に降りたる桜蘂★★★
かくれんぼの子に降りかかる桜蘂★★★★
桑本栄太郎
ねぎ畑に狂い舞うかに蝶の昼★★★
日を透きし赤き垣根や新芽噴く★★★
川べりの坂を下りぬ花吹雪★★★★

自由な投句箱/4月1日~10日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/4月1日~10日

4月10日(1句)
★魚棚に背鰭びしりと桜鯛/廣田洋一
鯛はなんといっても桜鯛。鱗のかがやきはもちろんのこと、背鰭がびしりとしていることが要。活きの良さと大きさは、「びしり」が表す。(高橋正子)
4月9日(2句)
★逞しき利根の流れや春耕す/小口泰與
農耕に水は欠かせない。肥沃な土地もまた川がもたらしたもの。耕しの季節が来ると、利根の流れは雪解け水に勢いづいて、「逞しき流れ」となる。逞しき流れに、農作業も勢いを得るのだ。(高橋正子)
★山路いまつつじ回廊となりぬ/多田有花
低山に上ると、山つつじが咲き誇るのに出会う。つつじ回廊と言うほどに咲いている。燃えるようなつつじの色に、元気が湧く。はやも初夏の気配が見える。(高橋正子)
4月8日(3句)
★幼子も母と茶をかけ花祭/廣田洋一
花御堂の小さな誕生仏に甘茶をかけて祝う花祭り。誕生仏のような幼子と母が甘茶をかけている姿は、「柔和」そのもので、花祭りにふさわしい。(高橋正子)
★満開の桜兵士の墓に触れ/多田有花
明らかに兵士の墓とわかるのは、墓石の尖塔のようにとがっているからだ。潔くお国のために散った兵士と称えられるが、本情はどうであったが。今、桜が兵士の墓に触れ、慰霊の意味を新たにしている気がする。(高橋正子)
★上り行く花の寺へと花の雲/桑本栄太郎
桜が咲き誇る寺へ上ってゆく。道々にも花が雲のように咲つづいている。花浄土といいたい眺めだ。(高橋正子)
4月7日(2句)
★花散るや嶺より絶えず根無し雲/小口泰與
花が散り急ぎ、嶺からは、根無し雲が流れ去る。その景色を見ていると、時の移る速さがあきらかに目に見える。(高橋正子)
★堂々の桜が囲む広場かな/多田有花
広場を桜大樹が囲んでいる。どっしりとした桜に囲まれた広場は、また大いに安心の場である。(高橋正子)
4月6日(2句)
★清明や流れ始めし用水路/廣田洋一
清明は、4月5日にあたる。雁が北に帰り、燕がやって来、季節は一気に明るくなる。用水路には、田へ流れ込む水が流れ始める。明快な句。(高橋正子)
★菜の花の漬物青き朝餉かな/桑本栄太郎
菜の花がよく漬かり、ぐっと引き締まった葉の青さ。朝餉の漬物の色どりは、目を覚ましてくれる。すっきりと爽やかなのがよい。(高橋正子)
4月5日(2句)
★造り酒屋桜一枝のその向こう/多田有花
満開の桜の一枝が、造り酒屋の古い甍を支えるように、また目立たせて咲いている。
日本の大切な風景に思える。(高橋正子)
★投げ釣りの糸の光れる春の川/廣田洋一
投げ釣りの糸が一瞬きらっと光る。それは春の川なのだ。春の川の光あふれる、のどかさがうれしい。(高橋正子)
4月4日(1句)
★榛名湖にほどけ初めたる楓の芽/小口泰與
標高の高い榛名湖にも、楓の芽がほどけ始めた。湖水の色とほどけ始めた楓の芽の色とがよくなじんで、ただそれだけで、美しい。(高橋正子)
4月3日(2句)
★遍路笠脱ぎて仰ぎぬ大師像/廣田洋一
霊山寺は四国遍路の一番札所。鳴門にある。遍路笠を脱いで、弘法大師の像を仰いだには、ここから遍路が始まる思う決意のような気持ち。(高橋正子)
★西山の峰の鐘鳴る花の雲/桑本栄太郎
京都西山の峰の寺から鐘の音が花の雲を伝わって響いてい来る。西山の峰寺からの眺望も自然に思い浮かぶ。上野寛永寺の鐘の音も花の雲と句に詠まれたが、京には、また別の趣がある。(高橋正子)
4月2日(2句)
★渓流も春たけなわの流れかな/小口泰與
渓流に親しんでいると、折々の流れの変化に時や季節の移ろいに気づく。今日の流れは、春たけなわと思える水量と速さがある。心弾む渓流の流れだ。(高橋正子)
★窓に花魔笛を歌うカーラジオ/川名ますみ
車で外出すると、桜が窓いっぱいに入り、カーラジオは、モーツァルトの「魔笛」を歌う。思いがけなく贅沢なひと時をいただいた。(高橋正子)
4月1日(1句)
★山桜大樹は日輪を隠し/多田有花
咲き満ちた山桜が日輪を隠し、自然のままに、堂々と咲き満ちる姿が想像される。(高橋正子)

4月1日~10日

4月10日(4名)
廣田洋一
魚棚に背鰭びしりと桜鯛★★★★
鯛はなんといっても桜鯛。鱗のかがやきはもちろんのこと、背鰭がびしりとしていることが要。活きの良さと大きさは、「びしり」が表す。(高橋正子)
秘帖求め海を渡れり桜鯛★★★
鳥の声聞きつつ歩む花見かな★★★
小口泰與
激つ瀬に蝶飲み込まれ如何とも★★★★
峡の里一本桜爛漫と★★★
また二人車より降る田芹かな★★★
多田有花
鬼瓦に寄り添い桜咲きにけり★★★★
尺八や花盛りなる境内に★★★
ひとり座す花びら舞い続く中に★★★

桑本栄太郎

花の雲見下ろす天に放れ雲★★★★
おもかげの母を慕いき花だいこん★★★
満天星の花に夕日やつまみ見る★★★
4月9日(4名)
小口泰與
隠り沼や落花盛んな鳥の声★★★
たぐいなき千本桜雨の中★★★
逞しき利根の流れや春耕す★★★★
農耕に水は欠かせない。肥沃な土地もまた川がもたらしたもの。耕しの季節が来ると、利根の流れは雪解け水に勢いづいて、「逞しき流れ」となる。逞しき流れに、農作業も勢いを得るのだ。(高橋正子)
廣田洋一
朝寝覚め夢見し名句消えにけり★★★
朝寝して朝湯に浸かる湯治かな★★★★
今日よりは在宅勤務朝寝せむ★★★
多田有花
散り敷ける花びらを踏む山路かな★★★
銀色に芽吹き初めにし小楢かな★★★
山路いまつつじ回廊となりぬ★★★★
低山に上ると、山つつじが咲き誇るのに出会う。つつじ回廊と言うほどに咲いている。燃えるようなつつじの色に、元気が湧く。はやも初夏の気配が見える。(高橋正子)

桑本栄太郎

みほとけの横顔憂う仏生会★★★
ぽつぽつと緑吹き居り銀杏の芽★★★★
一陣の風に地獄や花ふぶき★★★
4月8日(4名)
小口泰與
噴煙の北へ流るる落花かな★★★
裏庭と景違えてや八重桜★★★
囀りや新車納入されにける★★★★
廣田洋一
ちらほらと花の散りたる虚子忌かな★★★★
幼子も母と茶をかけ花祭★★★★
花御堂の小さな誕生仏に甘茶をかけて祝う花祭り。誕生仏のような幼子と母が甘茶をかけている姿は、「柔和」そのもので、花祭りにふさわしい。(高橋正子)
丸ビルに釈迦のおはせし花祭★★★
多田有花
絢爛たる一本桜墓の前★★★
戦死者の墓標並びし桜かな★★★
満開の桜兵士の墓に触れ★★★★
明らかに兵士の墓とわかるのは、墓石の尖塔のようにとがっているからだ。潔くお国のために散った兵士と称えられるが、本情はどうであったが。今、桜が兵士の墓に触れ、慰霊の意味を新たにしている気がする。(高橋正子)
桑本栄太郎
しべ赤く散るべき時か花あはれ★★★
上り行く花の寺へと花の雲★★★★
桜が咲き誇る寺へ上ってゆく。道々にも花が雲のように咲つづいている。花浄土といいたい眺めだ。(高橋正子)
虚子の忌や花咲き鳥の歌い居り★★★
4月7日(4名)
小口泰與
太白や庭おぼろなる竹林★★★
花散るや嶺より絶えず根無し雲★★★★
花が散り急ぎ、嶺からは、根無し雲が流れ去る。その景色を見ていると、時の移る速さがあきらかに目に見える。(高橋正子)
君子欄一朶の雲の動かざる★★★
廣田洋一
芝生にて弁当広げ暖かし★★★
公園の古りしベンチや暖かし★★★
春の暮赤き火の玉沈み行く★★★
多田有花
眼前に花びら放ち初む桜★★★
小さくもしゃんと咲きたりチューリップ★★★
堂々の桜が囲む広場かな★★★★
広場を桜大樹が囲んでいる。どっしりとした桜に囲まれた広場は、また大いに安心の場である。(高橋正子)

桑本栄太郎

余寒なほドゥィンドゥィンとMRI★★★
ソーシャルの間隔如何に春愁ふ★★★
幼子のスキップ走りや春たのし★★★
4月6日(4名)
小口泰與
はくれんや風通りける裏鬼門★★★
太古より川の流れや松の花★★★★
鳥声を足して桜のそろい咲く★★★
廣田洋一
大根の花咲き誇る畑かな★★★★
花大根薄紫の柔らかし★★★
清明や流れ始めし用水路★★★★
清明は、4月5日にあたる。雁が北に帰り、燕がやって来、季節は一気に明るくなる。用水路には、田へ流れ込む水が流れ始める。明快な句。(高橋正子)
桑本栄太郎
菜の花の漬物青き朝餉かな★★★★
菜の花がよく漬かり、ぐっと引き締まった葉の青さ。朝餉の漬物の色どりは、目を覚ましてくれる。すっきりと爽やかなのがよい。(高橋正子)
咲くものは咲き満ち居たる花吹雪★★★
大根の花に夕日や大原野★★★

多田有花

山裾も頂もみな花盛り★★★★
峠から流れと花を眺めおり★★★
頂を占めて咲きおり遠ざくら★★★
4月5日(4名)
小口泰與
榛名山より風神に乗る春の雲★★★
この時間鳥の来ている遅日かな★★★★
うららかや十方へ陽の差しにける★★★
多田有花
ため池にソーラーパネル桜咲く★★★
造り酒屋桜一枝のその向こう★★★★
満開の桜の一枝が、造り酒屋の古い甍を支えるように、また目立たせて咲いている。
日本の大切な風景に思える。(高橋正子)
咲き満ちて人の気配は無き桜(原句)
咲き満ちて人の気配の無き桜★★★★(正子添削)

廣田洋一

春光や投げ合へる球山なりに★★★
投げ釣りの糸の光れる春の川★★★★
投げ釣りの糸が一瞬きらっと光る。それは春の川なのだ。春の川の光あふれる、のどかさがうれしい。(高橋正子)
ここまでと句切る行列マスク買ふ★★★
桑本栄太郎
校門の生徒待ち居り花盛り★★★
春風のマルチ波打つ大原野★★★★
遠目には少し青ざめ辛夷咲く★★★
4月4日(4名)
小口泰與
高高と白衣観音春の空★★★★
榛名湖にほどけ初めたる楓の芽★★★★
標高の高い榛名湖にも、楓の芽がほどけ始めた。湖水の色とほどけ始めた楓の芽の色とがよくなじんで、ただそれだけで、美しい。(高橋正子)
命ある限り枝はる桜かな★★★
廣田洋一
軒の下忘れず来る燕かな★★★
目の前で燕返しを見せられし★★★
土咥えひらり潜れる燕の巣★★★★
桑本栄太郎
遠き日の母想いをり紫木蓮★★★★
山あいの日々に色付く花の雲★★★
殊更にことしは惜しき花の屑★★★
多田有花
川に沿い道に沿いたり桜咲く★★★
廃屋となりしはいつか花楓★★★★
一本の桜が守る社かな★★★
4月3日(4名)
廣田洋一
青き眼の遍路も居たる霊山寺★★★
遍路笠脱ぎて仰ぎぬ大師像★★★★
霊山寺は四国遍路の一番札所。鳴門にある。遍路笠を脱いで、弘法大師の像を仰いだには、ここから遍路が始まる思う決意のような気持ち。(高橋正子)
波の音囁くごとし春の海★★★
小口泰與
はくれんや黙の水面の流れける★★★★
花の雲乗りて休みて眠りたし★★★
田の上をなぞえに翔ける燕かな★★★
桑本栄太郎
から梨の花の昼なり村の辻★★★
まくなぎの遮り居たる明日は雨★★★
西山の峰の鐘鳴る花の雲★★★★
京都西山の峰の寺から鐘の音が花の雲を伝わって響いてい来る。西山の峰寺からの眺望も自然に思い浮かぶ。上野寛永寺の鐘の音も花の雲と句に詠まれたが、京には、また別の趣がある。(高橋正子)
多田有花
頭をあげよいずこも桜満開に★★★★
更紗木蓮高く銀の馬車道に★★★
さくら咲く捨てられにゆく古畳★★★
4月2日(4名)
小口泰與
古傷のいつもの事よ木の芽時★★★
渓流も春たけなわの流れかな★★★★
渓流に親しんでいると、折々の流れの変化に時や季節の移ろいに気づく。今日の流れは、春たけなわと思える水量と速さがある。心弾む渓流の流れだ。(高橋正子)
咲き満し花の上にて眠りたし★★★
多田有花
広くなる川面に静か残る鴨★★★
春の雨窓辺に来る鳥の影★★★
目覚めけり磯鵯の囀りに★★★★

川名ますみ

窓に花魔笛を歌うカーラジオ★★★★
車で外出すると、桜が窓いっぱいに入り、カーラジオは、モーツァルトの「魔笛」を歌う。思いがけなく贅沢なひと時をいただいた。(高橋正子)
花満ちし帰路のカーラジオに魔笛★★★
春嵐波の音以て窓たたく★★★
桑本栄太郎
めぐり行く路線バス見え菜種梅雨★★★★
花冷えの在所となりぬ日暮れかな★★★
篝火の焚かれ人無き花しぐれ★★★
4月1日(5名)
小口泰與
花冷や医師の言葉は血の検査★★★
のどけしや鳶滑空ととびの笛★★★
うららかやきらきら光る潦★★★
多田有花
染井吉野開山堂に開き初め★★★
山桜大樹は日輪を隠し★★★★
咲き満ちた山桜が日輪を隠し、自然のままに、堂々と咲き満ちる姿が想像される。(高橋正子)
青鷺の静かなる狩春の池★★★

廣田洋一

咲き満ちし花に生気や朝の雨(原句)
「生気」と「いきいき」は意味は同じです。「花に生気(がある)」と「花のいきいき(としている)」の違いがおわかりでしょうか。
咲き満ちて花のいきいき朝の雨★★★★
友達とレッスン予約花の雨★★★
接待の茶席案内遍路道★★★
桑本栄太郎
三鬼忌のボヘミアンとて春帽子★★★★
議員らの今日よりマスク四月馬鹿★★★
歩みゆく土手の川辺や柳絮降る★★★

古田敬二

人を待つ高瀬川面と夜桜と★★★
高瀬川石の橋げた夜の桜★★★
夜桜の映る川面や高瀬川★★★

自由な投句箱/3月21日~31日


※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/3月21日~31日

3月31日(1句)
★すかんぽの茎の赤きが並びけり/桑本栄太郎
すかんぽの茎の赤さは野の明るさを象徴すするような自然の赤。そんな赤い茎が並ぶとなつかしい故郷へいざなわれるような気持ちになる。(高橋正子)
3月30日(3句)
★のどかさや手漕ぎボートの櫂の水/小口泰與
うららかさに誘われて、ボートを漕ぐ。漕ぐと櫂から水がしたたり、うららかな日差しに櫂の水が光る。櫂の水がのどかさをよく表している。(高橋正子)
★一握りの蕨たずさえ山下りる/多田有花
一握りの蕨。それだけで山遊びの楽しさが伝わる。蕨の深いみどりの色、そのころの木々のみどりの色、それらが自然に思い起こされる。(高橋正子)
★花冷えに耐えし桜のつやつやと/廣田洋一
29日の日曜日には、花に雪という風雅な景色も見られた。そのあとの花冷えに耐えた桜は、陽気に誘われて咲いた桜とは違って、つやつやとして命を研ぎ澄ましたかに見える。(高橋正子)
3月29日(2句)
★すみれ地に小さき影を成して咲く/多田有花
すみれの可憐さは、その影にもある。小さな影を見つけた作者のやさしさが、すみれをいっそう愛おしにものにしている。(高橋正子)
★蹲にあふれて静かな春の水/古田敬二
蹲に水が流れて、あふれている。けれども、あふれながら静かな水である。春の水、つややかさが感じられる。(高橋正子)
3月28日(1句)
青空にいまさんしゅゆの花黄色★★★
山桜その花びらの真白さよ/多田有花
桜は淡いピンクと思いがちだが、山桜は白い。桜の白さである。山の静謐な白さである。(高橋正子)
3月27日(1句)
★一画の尚も明るき菜種梅雨/桑本栄太郎
菜種梅雨は、本来は春の東南の大風のこと。それから菜種が咲くころは雨が多いのでこのように使われるようになった。雨が降りながら、どこか明るさがある。あたりを見ても、一画は、なおも明るい。菜の花のイメージがどこかにある。(高橋正子)
3月26日(1句)
★誓子忌の山風海に凪ぎとなる/桑本栄太郎
誓子の忌日は3月26日。誓子は1901年(明治34年)11月3日 京都府生まれ、 1994年(平成6年)3月26日死去。「山風海に」の件りまで読むと、「海で出て木枯帰るところなし(誓子)」の句が浮かんで来る。急に吹いた強い山風は海に出て凪となったのだ。風と共にあった誓子である気がする。(高橋正子)
3月25日(2句)
★捨畑の土黒々と草若葉/廣田洋一
捨畑だけれど、土は黒々として草若葉が萌え出ている。食する野菜でなく、草若葉であっても、みずみずしく生い出でたものは、すばらしい。すっきりとした句。(高橋正子)
★川蛇行しつつ流れる花の下/多田有花
悠久の時をかけて流れる蛇行する川と今年の花の刹那の出会いが人知では測りしれないものを感じさせてくれる。(高橋正子)
3月24日(3句)
★辛夷咲く獣の臭う杣の道/小口泰與
山に自生する辛夷。清楚で可憐な辛夷の花の下も獣が臭いをさせて通う道となる。野性が残る杣の道と、辛夷の花の対比が自然の景をよく映し出している。(高橋正子)
★今年いよよ房の小さき風信子/廣田洋一
毎年咲く風信子を楽しみにしているが、球根も年ごと弱って花の房が小さくなるばかりだ。力を絞って咲いた今年の風信子をいとおしむ気持ち。(高橋正子)
★白雲の水面にありぬ蘆の角/桑本栄太郎
蘆の角の真みどりが水面から出るとき、すがすがしいものを感じるが、その水面に白い雲が映っている。青空も平らかに映っているだろう。(高橋正子)
3月23日(2句)
★朝毎に山の桜の開きおり/多田有花
毎朝山を眺めている、毎朝山へ散策に出かける。こんなとき昨日の朝はここ、今朝はここと山桜が思わぬところで開く。山桜のつつましく、におやかな美しさが見られる一期一会のすばらしさがある。(高橋正子)

★瀬の落つるよどみに番う残り鴨/桑本栄太郎

春も進んだというのに、まだ北に帰らない番の鴨。瀬が落ちるよどみに何か思うような鴨である。(高橋正子)
3月22日(2句)
★春昼や金魚掬いのポイ破れ/小口泰與
春の昼の気だるさ、物憂い気分が金魚掬いのポイが破れたことで意識された。
★汽笛鳴る上り列車や山笑う/古田敬二
上り列車は、大きな町へ都市へ向かう列車がほとんだ、それに人はさまざまな思いをのせる。汽笛を鳴らして走る上り列車に春の山ものどかで、旅ごころを誘う。(高橋正子)
3月21日(1句)
雨止みて三陸の野に春の虹/廣田洋一
津波や地震の被害を受けた三陸も震災後9年が経った。いまその野の春の虹が弧を描き、希望のある景色を見せてくれた。(高橋正子)

3月21日~31日

3月31日(4名)
小口泰與
長閑さや噴煙の垂直に立つ浅間山★★★
繋がれて日永の犬の遠吠えよ★★★
湯の街の石段街や花の冷え★★★★
廣田洋一
白き花若葉と共に光りをり★★★
散歩道花散る道となりにけり★★★★
道端にひょいと咲きたる木瓜の花★★★
桑本栄太郎
うす紅の房に雨降り馬酔木咲く★★★
すかんぽの茎の赤きが並びけり★★★★
すかんぽの茎の赤さは野の明るさを象徴すするような自然の赤。そんな赤い茎が並ぶとなつかしい故郷へいざなわれるような気持ちになる。(高橋正子)
ひこばえの花をつけたる根方かな★★★
多田有花
燕飛ぶ雲切れ初めし空の中★★★★
花冷えを東へ向かう新幹線★★★
山路にはどっとつつじの咲きそろう★★★
3月30日(4名)
小口泰與
のどかさや手漕ぎボートの櫂の水★★★★
うららかさに誘われて、ボートを漕ぐ。漕ぐと櫂から水がしたたり、うららかな日差しに櫂の水が光る。櫂の水がのどかさをよく表している。(高橋正子)
うららなる小流れに射す入日かな★★★
妻と居て庭仕事せる遅日かな★★★★
多田有花
一握りの蕨たずさえ山下りる★★★★
一握りの蕨。それだけで山遊びの楽しさが伝わる。蕨の深いみどりの色、そのころの木々のみどりの色、それらが自然に思い起こされる。(高橋正子)
山路ゆくわが足元につつじ落つ★★★
談笑す桜の見える頂で★★★

廣田洋一

花冷えに耐えし桜のつやつやと★★★★
29日の日曜日には、花に雪という風雅な景色も見られた。そのあとの花冷えに耐えた桜は、陽気に誘われて咲いた桜とは違って、つやつやとして命を研ぎ澄ましたかに見える。(高橋正子)
遠き日々夢に現る朝桜★★★
雨上がり滴点々朝桜★★★
桑本栄太郎
生徒待つ校門ありぬ花盛り★★★★
遠目にはほんのり青く辛夷咲く★★★
”陽菜人”とや無人店舗の春野菜★★★
3月29日(4名)
小口泰與
母屋まで百歩以上や春の雪★★★
暖かや墨する指の力瘤★★★★
ツインクルチョコより菓子やあたたかし★★★
廣田洋一
花冷や子らの声なき丸太小屋★★★
花冷や雪降りしきる日曜日★★★★
風も無くひたすら降れる春の雪★★★
多田有花
すみれ地に小さき影を成して咲く★★★★
すみれの可憐さは、その影にもある。小さな影を見つけた作者のやさしさが、すみれをいっそう愛おしにものにしている。(高橋正子)
裏山を双眼鏡で花見する★★★
風の辛夷誰に別れの袖を降る★★★
古田敬二
夜桜や高瀬の川面に映りけり★★★
鯉動かず山から静かな春の水★★★
蹲にあふれて静かな春の水★★★★
蹲に水が流れて、あふれている。けれども、あふれながら静かな水である。春の水、つややかさが感じられる。(高橋正子)
3月28日(5名)
小口泰與
花の日や太古の山河永久に無し★★★
尻尾下げ畦行く犬や春の暮★★★
好きな子に悪戯の過去や春の夜★★★
廣田洋一
雨上がり色鮮やかにチューリップ★★★
流れ行く水に手を伸べ初桜★★★★
車椅子乳母車行く初桜★★★
多田有花
青空にいまさんしゅゆの花黄色★★★
山桜その花びらの真白さよ★★★★
桜は淡いピンクと思いがちだが、山桜は白い。桜の白さである。山の静謐な白さである。(高橋正子)
いつかまた降りだしている花の雨★★★★

桑本栄太郎

余寒なほ団地の庭に子等を見ず★★★
大振りの蘂上向きに椿落つ★★★
うす紅の房となりたる馬酔木咲く★★★
古田敬二
夕暮れの池に飛翔す初燕★★★
山からの水清くして芹を摘む★★★★
沈丁花夕暮れ雨戸を閉ずるとき★★★
3月27日(3名)
廣田洋一
春風や朝日を浴びて深呼吸★★★★
あの人のほほえみ見たし春の風★★★
御開帳縁なき衆生行列す★★★★
小口泰與
そも若き日を振り返り薄霞★★★
尺ものの雪代山女褒めそやす★★★
麗らかや今を大事に生きたきよ★★★★
桑本栄太郎
コロナ禍も洗い流せよ春の雨★★★
一画の尚も明るき菜種梅雨★★★★
菜種梅雨は、本来は春の東南の大風のこと。それから菜種が咲くころは雨が多いのでこのように使われるようになった。雨が降りながら、どこか明るさがある。あたりを見ても、一画は、なおも明るい。菜の花のイメージがどこかにある。(高橋正子)
人はみな褒められ育つ花の雨★★★
3月26日(3名)
小口泰與
そぞろなる風に散りたる梅の花★★★
夜桜やホテルロビーの漫ろ神★★★
眼間の今朝の浅間は雪解かな★★★★
廣田洋一
雉子神社由緒学べど雉啼かず★★★
やつとできた逆上がりの子風光る★★★★
五重塔見下ろす鳶や風光る★★★
桑本栄太郎
大振りの蘂の上向き椿落つ★★★
散るすべを知らず咲き初む花あはれ★★★
誓子忌の山風海に凪ぎとなる★★★★
誓子の忌日は3月26日。誓子は1901年(明治34年)11月3日 京都府生まれ、 1994年(平成6年)3月26日死去。「山風海に」の件りまで読むと、「海で出て木枯帰るところなし(誓子)」の句が浮かんで来る。急に吹いた強い山風は海に出て凪となったのだ。風と共にあった誓子である気がする。(高橋正子)
3月25日(5名)
小口泰與
海棠の蕊の底ひや小ぬか雨★★★
風に乗り忽と春雪舞いにけり★★★
紺碧の暁の榛名山(はるな)や雪柳★★★

廣田洋一

捨畑の土黒々と草若葉★★★★
捨畑だけれど、土は黒々として草若葉が萌え出ている。食する野菜でなく、草若葉であっても、みずみずしく生い出でたものは、すばらしい。(高橋正子)
囀りや保育園児の昼寝中★★★★
多田有花
日差し背に座せば囀り絶え間なく★★★★
川蛇行しつつ流れる花の下★★★★
悠久の時をかけて流れる蛇行する川と今年の花の刹那の出会いが人知では測りしれないものを感じさせてくれる。(高橋正子)
鎮魂の陽光桜満開に★★★
桑本栄太郎
”陽菜人”(ひなと)とや無人店舗の春野菜★★★
土壁の塀の中なり紫木蓮★★★
土手ごとに高くなりたるたんぽぽ黄★★★★
川名ますみ
膨らめる花芽の影の若芝に★★★★
小さく丸き蕾に映ゆる春夕焼(原句)
「小さく丸き蕾」のイメージが湧きにくいので、仮に桜の蕾としました。
小さく丸き桜蕾に夕焼す★★★★(正子添削)
「夕焼」の季語は夏ですが、事実として桜蕾があるので、季節は春と解釈します。
窓を指す明日の花見の並木道★★★
3月24日(4名)
小口泰與
湖へ道一直線やつくつくし★★★★
公魚や湖を背向に鳶の声★★★
辛夷咲く獣の臭う杣の道★★★★
山に自生する辛夷。清楚で可憐な辛夷の花の下も獣が臭いをさせて通う道となる。野性が残る杣の道と、辛夷の花の対比が自然の景をよく映し出している。(高橋正子)
廣田洋一
庭先に赤き一輪チューリップ★★★
チューリップ花は大きく背低し★★★
年ごとに房の小さき風信子(原句)
「年ごとに」が少し説明的ですので、今現在のことを述べるよう工夫しました。
今年いよよ房の小さき風信子★★★★
毎年咲く風信子を楽しみにしているが、球根も年ごと弱って花の房が小さくなるばかりだ。力を絞って咲いた今年の風信子をいとおしむ気持ち。(高橋正子)
多田有花
山桜咲き集い山の彼方まで★★★
次々と笑みの山から車出(原句)
「笑みの山」より、「笑う山」の季語を使う方がわかりやすいと思います。
次々と笑う山から車出る★★★★(正子添削)
初蝶や日差しあふれる頂に★★★★

桑本栄太郎

ぽつぽつと花の三分や桜咲く★★★
無残なや傷つき散りぬ白木蓮★★★
白雲の水面にありぬ蘆の角★★★★
蘆の角の真みどりが水面から出るとき、すがすがしいものを感じるが、その水面に白い雲が映っている。青空も平らかに映っているだろう。(高橋正子)

3月23日(5名)
小口泰與
ものの芽や鳥の来ている背戸の池★★★★
里山の春の校庭草の丈★★★
昨日今日地雨の庭や沈丁花★★★
古田敬二
山容は変わらず故郷山笑う★★★
山笑う裾裳を洗う飛騨の川★★★
山笑う父母の墓へ上りけり★★★★

廣田洋一

犬ふぐり玄関前に座りをり★★★
そこだけが赤く燃えたる桃の花★★★
新築の家の華やぐ桃の花★★★★
多田有花
芽柳に宇治川の風やわらかく★★★
朝毎に山の桜の開きおり★★★★
毎朝山を眺めている、毎朝山へ散策に出かける。こんなとき昨日の朝はここ、今朝はここと山桜が思わぬところで開く。山桜のつつましく、におやかな美しさが見られる一期一会のすばらしさがある。(高橋正子)
そちこちに鶯の声山路ゆく★★★

桑本栄太郎

つんつんんと赤き垣根や新芽立つ★★★★
歩みゆく吾が影見えず霾ぐもり★★★
瀬の落つるよどみに番う残り鴨★★★★
春も進んだというのに、まだ北に帰らない番の鴨。瀬が落ちるよどみに何か思うような鴨である。(高橋正子)
3月22日(4名)
小口泰與
春朝や噴煙定か垂直に★★★
春昼や金魚掬いのポイ破れ★★★★
春の昼の気だるさ、物憂い気分が金魚掬いのポイが破れたことで意識された。
泥咥えせちに燕のひるがえる★★★
廣田洋一
黄蝶二つ絡み合ひつつ飛び去りぬ★★★
霊園の供花かぐわし蝶来たる★★★★
神棚を祀りし湯宿朧月★★★★
桑本栄太郎
うつむけど花の明るき連翹黄★★★
白壁の里の民家や桃の花★★★★
ぼつてりと紅をふふめり桜の芽★★★

古田敬二

山笑う裾野を縫って高山線★★★
ジーゼルカー走るよ春の高山へ★★★
汽笛鳴る上り列車や山笑う★★★★
上り列車は、大きな町へ都市へ向かう列車がほとんだ、それに人はさまざまな思いをのせる。汽笛を鳴らして走る上り列車に春の山ものどかで、旅ごころを誘う。(高橋正子)
3月21日(4名)
小口泰與
逃水や俳句投稿急かれしや★★★
エプロンや釣たる鱒へ化粧塩★★★
「エプロン」が取って付けたようです。「わが妻」とされたらどうでしょう。
わが妻や釣りたる鱒へ化粧塩★★★★(正子添削)
夕映えの光り返して春の水★★★
多田有花
<宇治三句>
平等院へ八重のこぶしの咲く道を★★★★
鳳凰堂の阿弥陀の顔を見る彼岸★★★
一服の宇治茶いただく彼岸かな★★★

廣田洋一

連山の稜線ぼやけ春の雲★★★
雨止みて三陸の野に春の虹★★★★
津波や地震の被害を受けた三陸も震災後9年が経った。いまその野の春の虹が弧を描き、希望の景色を見せてくれた。(高橋正子)
春の雪ちと積もりては風に舞ふ★★★
桑本栄太郎
春耕の土の香風にトラクター★★★★
「春耕の土の香風に」に「トラクター」がただ取って付けられただけとなっています。その関係を丁寧に表現してください。
トラクターの耕す土の香風に乗り (添削)
春水の早瀬となりぬ丘の道★★★
花ゑんどう支柱の丈の足らずなり★★★

自由な投句箱/3月11日~20日


※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/3月11日~20日

3月20日(1句)

★全身に陽を受け伸びる楤若芽/
古田敬二
棒のような楤の木に若い芽が出ていて、その芽を掻いて食用にするが、そのの若芽は、山畑で全身に陽を受けて伸びている。全身に陽を受けて伸びる健やかさがいい。(高橋正子)
3月19日(1句)

★ 春潮のはるか遠くに隠岐の島/桑本栄太郎
この句は、春潮と隠岐の島が醸す情緒がかなめ。隠岐の島は、島根県の北80kmにある。古く遠流の島として、また自然がそのま残る島として眺めれば、どんな思いになるだろう。「はるか遠くに」に作者の思いがある。(高橋正子)
3月18日(2句)
★春蘭や源流の水光りける/小口泰與
渓流をさかのぼり、源流に至ると、そこに春蘭が咲いている。源流の水も春の光にかがやき、春蘭の花もはじけるように咲いている。確かな春だ。(高橋正子)

★初つばめ朝日に翼きらめかせ/多田有花
初つばめが見られた。朝日に翼をきらめかせ、さっそうと飛ぶ姿に、なつかしささえ覚える。ずいぶん暖かくなった。(高橋正子)

3月17日(2句)
★てんからの釣り人遡上初わらび/小口泰與
渓流をのぼってゆくとわらびがある。今年初めてわらびは、釣果もさることながら、春のうれしさだ。(高橋正子)
★姪甥と会うのも久し彼岸かな/廣田洋一
彼岸の句に波郷の「兄妹の相睦みけり彼岸過」がある。彼岸は、身内のものたちの心がおだやかに通うときでもあるように思う。(高橋正子)
3月16日(2句)

★ 園児らのままごとの声暖かし/廣田洋一
園児らがままごとをしているかわいらしい声を耳にした。日差しもあたたかく、ほっこりと和む気持ちに。(高橋正子)
★ 忙しげ風に揺られて初黄蝶/古田敬二
黄色を初めて目にしたものの、まだ冷たい風が吹いて、黄蝶はなぶられがち。小さきものの愛おしさ。(高橋正子)

3月15日(1句)

★自転車の集結したり春休み/桑本栄太郎
「集結したり」が青春らしく面白い。春休みになり、自転車をもって集まった生徒たち。これから大勢で出かけようというのだ。青春真っただ中のさわやかさがいい。(高橋正子)

3月14日(2句)

★浅間燃え襞黒黒と雪解かな/小口泰與
今なおA級活火山として噴煙をあげる浅間山は、燃える山と言えよう。雪解けに山の地熱が関係するかどうか知らないが、この句からは、山の熱が雪解けを促している印象だ。「襞黒黒」が実感。(高橋正子)

★じゃが芋の芽を温めて畝静か/古田敬二
じゃが芋を地中深く植えて、そのあとは、芽が地上に出るのを待つばかり。今は土が芽を静かに温めている時。静かな畝は生きている。(高橋正子)

3月13日(1句)

★茎立ちや独り暮らしの峡の家/小口泰與
山峡の集落。独り暮らしの家もあって食べ余した畑の菜は茎立っている。薹が立ったり花をつけたりして峡の村に春が確かに来ている。(高橋正子)

3月12日(2句)

★春の湖画布いっぱいの色使い/小口泰與
春の湖の色あいを見れば、絵心が誘われるというもの。春の湖を思い切り描いている人がいるのだろう。画布いっぱいの色使いに、春の色を見た。(高橋正子)

★白れんの今日は飛び翔つ日差しかな/桑本栄太郎
白れんがほぼ満開となり、日差しを受けると花びらが開き空へ飛び翔つような姿勢になる。
「飛び翔つ日差し」に実感があって、上手。(高橋正子)

3月11日(2句)

★永き日の仏舎利塔に猫二匹/多田有花
「永き日」がよく効いている。永き日だからこそ、二匹の猫も釈迦のほとりにいたがる。極楽にも似た雰囲気がある。(高橋正子)

★歩みゆく丘の田道や春帽子/桑本栄太郎
なんでもないような句だが、「春帽子」に味わいがあっていい。春帽子をかぶるのは少々年取った男性がいい。風に寒さはあるもののあたたかい丘の田道が快い。(高橋正子)