9月1日~10日

9月10日(4名)
廣田洋一
揃ひたる粒ぎっしりと黒葡萄★★★
夜の卓にぶどう一房置かれをり★★★
富士仰ぐ畑に垂れる青葡萄★★★★
小口泰與
蜩や忽と馬の背森を分け★★★
川風を譲らる里やきりぎりす★★★
夕影となりし川面やむら薄★★★
多田有花
夜更かしはせずに夜長を過ごしけり★★★
ひいやりとせし早朝の空気かな★★★
よく晴れて天の高さを仰ぎけり★★★★
桑本栄太郎
くつきりと稜線定む秋の嶺★★★★
秋の嶺が自らの存在を示すように、くっきりとした稜線を見せている。その澄み切った存在感の確かさがいい。(髙橋正子)
淀川のはるか下流や秋霞★★★
仕立てられ棚に垂るるや蔓南瓜★★★
9月9日(5名)
廣田洋一
爽やかや川沿ひの道散歩せり★★★
エプロンの婦人爽やか宅配弁当★★★
衣擦れの音爽やかに巫女の舞ひ★★★★
小口泰與
卓袱台を囲み秋刀魚や昭和の夜★★★
雲速き丘に立ちけり弁慶草★★★★
行きゆきて尾瀬の木道秋の暮★★★
多田有花
長雨のあけし夜明けや燕去る★★★
鶏頭の赤と黄色の並び咲く★★★★
鶏頭の赤と黄色が鮮明で、秋の澄んだ空気感がよく出ている。(髙橋正子)
窓に入る秋の日差しや豆を煮る★★★
桑本栄太郎
高層の眼下に見ゆるうす紅葉★★★★
身に入むや風の音さえ荒びをり★★★
冷ややかな風の窓辺や夕日落つ★★★
吉田 晃
新涼の空を清しき色の風★★★
燕いなくなってしまい唯の秋の道★★★
秋簾古びて静か夕暮れに★★★
9月8日(5名)
小口泰與
榛名湖へ道真直ぐや松虫草★★★★
秋宵や渓のゆかしき魚の数★★★
秋の夜の書肆の如きの堆書かな★★★
廣田洋一
贈られし葡萄一箱藤沢産★★★
ぱっと食べニコッと笑ふマスカット★★★
ラジオの声聞くともなしに夜業かな★★★★
静まった夜のラジオは人懐かしい。夜業をしながら聞くラジオは「聞くともなし」だが、時にはよく耳を傾けたりもする。ラジオと夜業のつかず離れずの関係が秋の夜らしい。(髙橋正子)
桑本栄太郎
うそ寒や千の風吹く我が胸に★★★
稲の香やふるさと遠く想い居り★★★
身に入むや窓を開ければ雨の声★★★★
多田有花
棗の実修道院の外庭に★★★★
棗はヨーロッパ南部やアジア東部南部の原産の落葉灌木。「修道院」と「棗の実」があれば、南仏やイタリアなどの修道院がある景色が思い浮かぶ。南仏の旅にいるような気分。(髙橋正子)
軽やかに蜻蛉車列の上をゆく★★★★
秋の昼バロック音楽をかける★★★
吉田晃
庭陰に露草一つが開きけり★★★
花の絵の団扇静かや風は秋★★★★
木漏れ日の杉の湿地に茗荷咲く★★★
9月7日(4名)
小口泰與
明け六つの厨の灯りちちろ鳴く★★★
みせばやや和紙に包まる金平糖★★★★
のど飴を欲しがる時期やきりぎりす★★★
廣田洋一
月やいずこ雲の端端光りをり★★★★
朝の月今日も良き日となりさうな★★★
主なき庭に華やぐ溝萩かな★★★
多田有花
赤まんま飢えは知らずに半世紀★★★
しみじみと白露の空気肌に触れ★★★★
拳ほどありてたわわに栗の毬★★★
桑本栄太郎
白々と朝の明けゆく白露の日★★★
リーダーの誰とも知れず稲すずめ★★★
風吹けば風に色づく猫じやらし★★★★
猫じゃらしはイネ科。稲が色づくように、色づき始めた。風が吹いたからなのだ。この把握は面白い。稲が熟れるころ吹く風にはるか彼方への思いを人に呼び起こす。(髙橋正子)
9月6日(4名)
小口泰與
鰯雲山家の土間に鍬と籠★★★
山峡の水の迅しや下り鮎★★★★
雲一朶月の歪みて出しかな★★★
多田有花
朝顔の一輪咲いて空の色★★★★
朝顔の色もさまざま。紺色の朝顔が俳句によく詠まれるが、空の色の朝顔は、新涼の、さわやかな季節をあらわして瑞々しい。(髙橋正子)
朝ごとに露新しき稲穂かな★★★
法師蝉鳴く午後静かなピアノ曲★★★
廣田洋一
川底の白石光る秋の水★★★
秋水にのびのびと浮く花藻かな★★★★
「花藻」(藻の花)は、夏の季語だけれども、秋水となって、のびのびとした感じが受け取れるということで、季重なりとしない。(髙橋正子)
海外部夜業の灯り消えやらず★★★
桑本栄太郎
干上がれば足跡ありぬ稲田かな★★★
ふるさとの遠くに想う稲の秋★★★★
煮干入れ獅子唐炊くや綾子の忌★★★
9月5日(4名)
小口泰與
赤とんぼ田川の底のきらきらと★★★★
赤とんぼが飛ぶ田川。清らかな流れに秋の日が差し込んで浅い川の底がきらきらとしている。静かで明るい田川の景色がいい。(髙橋正子)
妻の炊く新米の香や川場米★★★
虫の闇外つ国にからのメールかな★★★
廣田洋一
柄杓汲む産土神の秋の水(原句)
柄杓に汲む産土神の秋の水★★★★(正子添削)
「柄杓汲む」は字余りになっても「柄杓に汲む」としていただきたいです。(髙橋正子)
秋冷の道に点々潦★★★
月を愛でるならいとなりし八十路かな★★★★
多田有花
夜明け前町を照らせる稲光★★★
アベリアに初秋の朝日昇り来る★★★
弾き終えて虫すだく夜となりにけり★★★★
桑本栄太郎
木槿咲く蘂の芯まで白きかな★★★★
溝川の瀬音うるはし落し水★★★
八千草の咲き乱るるや大原野★★★
9月4日(4名)
多田有花
花大きく咲いて南瓜を実らせる★★★★
鉄塔の彼方に残り朝の月★★★
眠りからまだ覚めやらぬ蜻蛉かな★★★
小口泰與
秋ばらや洋館に灯の灯りける★★★★
五六回叩きて黙や鉦叩★★★
産土の老のいしずえ蝗かな★★★
廣田洋一
見はるかす稜線伸びる秋の空★★★★
秋の空の爽やかさが何よりも快い。「見はるかす」「伸びる」に作者の伸びやかな気持ちがよく出ている。(髙橋正子)
木の枝を橋に引っ掛け秋の水★★★
道端にあふれ出でたり秋の水★★★
桑本栄太郎
大根蒔く鉢の芽の出る朝かな
大根はすでに蒔いてしまっているのでしょうか。そうなら、「大根蒔く」という表現を変えなければ意味が通じなくなります。(髙橋正子)
夕暮れの村の辻なり赤とんぼ★★★
早風呂を終えて夕餉や涼新た★★★
9月3日(3名)
小口泰與
きめ荒き里の豆腐や星月夜★★★★
絶壁と奇岩の山や鵯の秋★★★
めはじきや婆の煎ずる土鍋にて★★★
廣田洋一
色付きし葉秋の水へと散りにけり★★★
青空にコスモス揺れる谷戸の道★★★★
「谷戸」は神奈川などで見られる丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形。鎌倉に入れは成り立ちも違って「谷(やつ)とよばれる。その谷間の道をあるくと、青空とコスモスの美しい景色に出会った。それを素直に詠んでいてさわやか。(髙橋正子)
秋天によろめき舞ひぬ蝶二頭★★★
桑本栄太郎
ふるさとの海を想いぬ秋あはれ★★★
さめざめと雨の一日や折口忌★★★
早風呂の妻の濡れ髪秋涼し★★★
9月2日(3名)
廣田洋一
冷やかや布団一枚かけ直す★★★
秋冷や大気澄む野を散歩せり★★★
「秋澄む」と言う季語がありますが、これは「秋の大気が澄む」意味で使われます。「秋冷」と「大気澄む」の重なりが惜しいです。(髙橋正子)
鯉の群縦に広がる秋の水★★★
小口泰與
秋海棠コーラの瓶へ挿しにけり★★★★
朝がひんやりとしてくると、庭の秋海棠が咲き始める。秋海棠の可憐な花をコーラの瓶に挿した。そんな花を身近に置きたくなる心持ちが爽やか。(髙橋正子)
眼間を駆けぬくリスや新松子★★★
鬼やんま赤城の放つ雲迅し★★★
桑本栄太郎
うそ寒や目覚めの夢に父が居り★★★
高らかにうす紅寄り添う辛夷の実★★★
椎の実の房の爆ぜをり丘の上★★★★
9月1日(4名)
小口泰與
露草や浅間は夕日呼び込みし★★★
大利根へ没日映せし花カンナ★★★
葛咲くや四方八方風の道★★★★
廣田洋一
秋めくや車窓流れる茜雲★★★★
踊りの輪さらに盛り上げ地元歌手★★★
庭の草冷やかに見え窓辺かな★★★
桑本栄太郎
秋蝉の落つや翅透くうすみどり★★★★
寄り添いて黒く笑み居り椎の秋★★★
葛の葉の一木被い花は見ず★★★
川名ますみ
青空へけさ鷺草の二羽となり★★★★
鷺草の真白と青空の青の対比、それに「けさ」が加わって、すがすがしい。鷺草の花を一羽二羽と数えて生き生きとさせたのも若々しい。(髙橋正子)
鷺草の二羽になりし日遠き空★★★
鷺草の音を立てずに羽ばたけり★★★

自由な投句箱/8月11日~20日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/8月11日~20日

8月20日(1句)
★かなかなや明日こそ晴れと想い居り/桑本栄太郎
日本のどこかで水害や土砂災害が起きるほど、大雨が続いている。雨が止んだおりには、蜩がなく頃になった。明日こそ晴れてくれよとこの雨続きに願う。(高橋正子)
8月19日(1句)
★全天がほのかに焼けし秋の朝/廣田洋一
夏とはたしかに違って来た朝の空。全天がほのかに焼けた秋の朝の透明感がいい。(髙橋正子)
8月18日(1句)
★上州の山並み嶮し鳥渡る/小口泰與
険しい上州の山並みの、そのはるか上を鳥が渡る。この景色に粛然とした思いになる。(髙橋正子)
8月17日(1句)
★切り分けし白桃光る瑠璃の皿/廣田洋一
みずみずしい白桃はそれにふさわしい器に載せたい。この句の「瑠璃」は、ガラスの古称として十分だろう。「瑠璃」という美しい言葉がよく働いている。(高橋正子)
8月16日(1句)
★雨雲の峰に引き上げ芋の露/桑本栄太郎
雨雲が峰に去っていき、里の畑の芋の葉に雨露がしとどに溜まっている。力強さがある句だ。(髙橋正子)
8月15日(1句)
★暁闇のはるか遠くに威し銃/桑本栄太郎
急に鳴る威し銃には、鳥獣でなくても驚かされるが、暁の闇を響かせて遠くで鳴る。田んぼが遠くにあることでもある。稲が実り始めた。(髙橋正子)
8月14日(1句)
★盆供養天女鳳凰舞う本堂/多田有花
お盆に寺に参ると本堂に、天女や鳳凰が舞う天井絵が目に入る。絵ではあるが、ありがたくも、極楽の様子を見せてもらうことに。(髙橋正子)
8月13日(1句)
★盆波の雨にけぶりぬ隠岐の島/桑本栄太郎
大きくうねる盆波の向こうに隠岐の島が、今日は雨でけぶっている。「雨にけぶる」に望郷の思いが重なって読める。(高橋正子)
8月12日(2句)
★朝顔やことに一輪深き色/小口泰與
たくさん咲いている朝顔の中に、深い色の花一輪を見つけた今朝の印象深さ。(髙橋正子)
★朝露を纏いて並ぶ稲の花/多田有花
稲の白い花が朝露をまとい、今朝の爽やかさもひときわ。稲の花への優しさ。(髙橋正子)
8月11日(1句)
★栗の毬うすみどりしてそろいおり/多田有花
暑い最中にも栗の実は確実に育って、うすみどり色の毬にまで生長した。それもいくつも。秋の到来を実感する。(髙橋正子)

8月11日~20日

8月20日(4名)
小口泰與
吾も犬も朝日の影や稲の花★★★★
玉ボケの蓮華升麻や森の秋★★★
蟋蟀や芝と花壇の鳴き別れ★★★
廣田洋一
鬼灯の赤き膨らみご仏前★★★
鬼灯を鳴らすイクメン慕はれし★★★
梨畑白き袋の鈴なりに★★★
多田有花
ヘッドフォンで電子ピアノを秋の夜★★★
ゆったりとヨガにあずける秋の暮★★★
秋雨のやむ間に急ぎ洗濯を★★★
桑本栄太郎
柿の実のぬつと日差しへ出で来たり★★★
秋の日の峰に老いゆく茜かな★★★
かなかなや明日こそ晴れと想い居り★★★★
日本のどこかで水害や土砂災害が起きるほど、大雨が続いている。雨が止んだおりには、蜩がなく頃になった。明日こそ晴れてくれよとこの雨続きに願う。(高橋正子)
8月19日(4名)
小口泰與
薄荷咲く木戸の辺りの風匂う★★★★
此処からもオキの耳見ゆ秋の晴★★★
夕さりの商店街のちちろかな★★★
廣田洋一
オクラの実伸びるにつれて星となり★★★
全天がほのかに焼けし秋の朝★★★★
夏とはたしかに違って来た朝の空。全天がほのかに焼けた秋の朝の透明感がいい。(髙橋正子)
女子高生見向きもせずに白粉花★★★
多田有花
秋出水呼ぶかまた雨降り始め★★★
秋燕の群れて飛ぶなり雨あがり★★★
秋蝉や命を終えて仰向けに★★★
桑本栄太郎
青空の雲間に抜ける稲穂垂る★★★
歩みゆく川辺に在りぬ花野風★★★
落蝉の翅のみ残る夕べかな★★★
8月18日(4名)
小口泰與
オカリナの音に風吹く渡り鳥★★★
贈り來し酢橘や瀬戸の日の温み★★★
上州の山並み嶮し鳥渡る★★★★
険しい上州の山並みの、そのはるか上を鳥が渡る。この景色に粛然とした思いになる。(髙橋正子)
廣田洋一
萎みし花隣に見つつ酔芙蓉★★★
朝九時や紅みさしたり酔芙蓉★★★
赤蜻蛉先づは一偵察に★★★
桑本栄太郎
秋蝉の疲れ果て居り長き雨★★★
溝川の怒涛となりぬ秋出水★★★
雨止めば色づき覚ゆ銀杏の葉★★★
多田有花
虫の音の窓辺に続く夜明け前★★★
秋雨の夜明け磯鵯の鳴く★★★
秋の夜の風呂場に一匹の家守★★★
8月17日(5名)
小口泰與
甲高き鵯や森を目覚めさす★★★
外で待つ眼科のベンチ雨の秋★★★
職人の稚鰤を捌く出刃の冴★★★
廣田洋一
送火や煙は家に流れたり★★★
風を呼び炎立ちたる送火かな★★★
切り分けし白桃光る瑠璃の皿★★★★
みずみずしい白桃はそれにふさわしい器に載せたい。この句の「瑠璃」は、ガラスの古称として十分だろう。「瑠璃」という美しい言葉がよく働いている。(高橋正子)
多田有花
法師蝉休暇の終わりに鳴き始め★★★
初秋の朝やリュートの曲を聴く★★★★
秋雨の荒ぶる午後となりにけり★★★
桑本栄太郎
うそ寒や目覚めの際に父の夢★★★
合歓の実の莢の青さの川辺かな★★★
橡の実や陸橋よりの天辺に★★★
川名ますみ
大小のつぼみいきいき日々草★★★★
敗戦忌源平かづらを賜りぬ★★★
三人で鷺草の鉢回しあう★★★
8月16日(4名)
小口泰與
波去りし岩へ翔けくる石叩★★★★
鵯の雀追いたる上枝かな★★★
仰山の椋鳥を蓄わう大樹かな★★★
廣田洋一
落蝉をそつと移せし道の端★★★
落蝉を踏みさうになり足を止め★★★
まだ居たき妻子に合はせ送火焚く★★★★
多田有花
皿溢る大粒の葡萄独り占め★★★
雨あがり窓からの風秋めきぬ★★★
湯に入れば虫の音聞こゆ夜となり★★★★
桑本栄太郎
田道行く野辺の朝や草ひばり★★★
ゑのころの色づき来たる荒野かな★★★
雨雲の峰に引き上げ芋の露★★★★
雨雲が峰に去っていき、里の畑の芋の葉に雨露がしとどに溜まっている。力強さがある句だ。(髙橋正子)
8月15日(4名)
小口泰與
嬬恋の棚田に溢る秋津かな★★★
半助の素地の花瓶や山桔梗★★★
兀として奇岩の山や桐一葉★★★
廣田洋一
外出は控えなさいと秋の雨★★★
秋の雨止むことなしに川溢れ★★★
鎮魂歌流れるホール終戦の日★★★
桑本栄太郎
暁闇のはるか遠くに威し銃★★★★
急に鳴る威し銃には、鳥獣でなくても驚かされるが、暁の闇を響かせて遠くで鳴る。田んぼが遠くにあることでもある。稲が実り始めた。(髙橋正子)
特攻の三日後なりぬ終戦日★★★
かなかなの窓の日差しや峰に老ゆ★★★
多田有花
盆のメロン銀の匙もて掬い食ぶ★★★★
盂蘭盆や木彫りの仏に手を合わす★★★
雨やむやいなや秋蝉鳴き始め★★★
8月14日(4名)
小口泰與
山風の案山子かたかた動きけり★★★
段畑の白き圃のあり秋の蝶★★★
秋蝉や故人の愛でし腕時計★★★
廣田洋一
道の端並び咲きたる白芙蓉★★★
花閉じし芙蓉をみつつ縄のれん★★★
真白なる芙蓉咲きたり古き家★★★
多田有花
盆供養天女鳳凰舞う本堂★★★★
お盆に寺に参ると本堂に、天女や鳳凰が舞う天井絵が目に入る。絵ではあるが、ありがたくも、極楽の様子を見せてもらうことに。(髙橋正子)
盆の寺僧の読経を聞いており★★★
珍しや今年の盆は雨続き★★★
桑本栄太郎
警報の日に何度とも盂蘭盆会★★★
苧殻焚く雨の門辺の庇かな★★★
ふるさとの雨の盆会や如何ばかり★★★★
8月13日(4名)
小口泰與
落鮎や波が波追うなみの音★★★★
水庭の木木と水辺や赤とんぼ★★★
隠り沼や利鎌の如き蛾眉の月★★★
廣田洋一
迎え火を気短な母待ちてをり★★★
ペルセウス流星見えぬ雨の夜★★★
待ち焦がれし流星隠す雲の有り★★★
桑本栄太郎
盆波の雨にけぶりぬ隠岐の島★★★★
大きくうねる盆波の向こうに隠岐の島が、今日は雨でけぶっている。「雨にけぶる」に望郷の思いが重なって読める。(高橋正子)
ふるさとを遠くに想う魂祭★★★
二年目も叶う事無き盆帰省★★★
多田有花
鬼灯を生らせ団地のフェンスかな★★★
初秋の花壇にアルストロメリア★★★
副住職盆提灯の準備中★★★
8月12日(4名)
廣田洋一
恙なき日を祈りたる白木槿★★★★
道の辺のすいと伸びたる白木槿★★★
アパートの狭庭に揺れる花木槿★★★
小口泰與
朝顔やことに一輪深き色★★★★
たくさん咲いている朝顔の中に、深い色の花一輪を見つけた今朝の印象深さ。(髙橋正子)
逆光の夕日たまわる尾花かな★★★
夕さりの雨の庭先木槿にて★★★
多田有花
板塀に寄り添い咲くや秋の薔薇★★★
朝露を纏いて並ぶ稲の花★★★★
稲の白い花が朝露をまとい、今朝の爽やかさもひときわ。稲の花への優しさ。(髙橋正子)
はやぽつぽつ桜紅葉の兆しおり★★★
桑本栄太郎
秋霖の降つては止みぬひと日かな★★★
コスモスの黄花ばかりや雨ひと日★★★
蘂の黄を見せて盛んやさるすべり★★★★
8月11日(4名)
小口泰與
光陰のああ矢の如しはや秋ぞ★★★
好日のひと日や湖は菊日和★★★
秋立つや朝の井戸水暖かき★★★★
廣田洋一
宗旦てふ雅な名前白木槿★★★
潦蜻蛉飛び交ふ朝の径★★★★
池の面ちょんちょん叩く塩辛蜻蛉★★★
桑本栄太郎
露けしや草のきらめく朝の川★★★★
吾が影の更に色濃く秋日さす★★★
コスモスの黄花ばかりや畦を占む★★★
多田有花
栗の毬うすみどりしてそろいおり★★★★
暑い最中にも栗の実は確実に育って、うすみどり色の毬にまで生長した。それもいくつも。秋の到来を実感する。(髙橋正子)
鶏頭に朝の光の差しにけり★★★
朝が来るマゼンタ色の白粉花★★★

自由な投句箱/8月1日~10日

※当季雑詠3句(夏の句・秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/8月1日~10日

8月10日(1句)
★甲子園テレビ画面に赤とんぼ/桑本栄太郎
2年ぶりの甲子園での高校野球。中継のテレビ画面にすっと赤とんぼが入った。熱戦の繰り広げられる球場は、もう、秋。(髙橋正子)
8月9日(1句)
★鬼やんま岩を越え行く水迅し/小口泰與
岩を越える水の迅さ。その岩の周りを飛ぶ鬼やんま。清涼感があふれる。(髙橋正子)
8月8日(2句)
大津絵の団扇厨に置かれける/小口泰與
大津絵は仏画と世俗画に分かれるようだが、世俗画はいろいろあって、ひょうきんな画もあり楽しい。厨に置かれる団扇は、すし飯を扇いだり、急に冷ます必要なものがあったりと、活躍する。いつも手近にあるものは、面白いもの、楽しいものがいい。(髙橋正子)
★秋きぬと真白き蓮の開きけり/多田有花
秋が来たといって真っ白い蓮が開いた。真白き蓮が秋を見せてくれるかのように、目にすがすがしい。(髙橋正子)
8月7日(2句)
★ものの実の小さく生りて秋立ちぬ/廣田洋一
「小さく生りて」が「秋立ちぬ」の季節感をうまく表している。(高橋正子)
★蟻には広き朝顔の花の上/多田有花
お釈迦様の手のひらの孫悟空を思い出すが、朝顔の花の上の蟻。蟻にとっては、きれいでみずみずしい広い世界。着眼がいい。(高橋正子)
8月6日(1句)
★青空の今日も広がり原爆忌/多田有花
昭和20年8月6日8時15分、広島の上空は快晴だったと聞く。その日と同じように、去年もそうだったが、青空が広がる。それが哀しみを深くする。(髙橋正子)
8月5日(2句)
★翡翠の碧一筋に川渡る/廣田洋一
翡翠が狙った魚を一閃の光のごとく獲る様子と、その羽の色は魅力的。この句は、翡翠が川を渡る様子でこれは少し長く、「碧一筋」を目に焼き付けて飛ぶ様子。川の水を渡り飛ぶ「碧一筋」が涼しそうだ。(髙橋正子)
★朝涼のなかを鉄路はまっすぐに/多田有花
なんと気持ちのよい句だろう。朝の涼しさの中を鉄路がまっすぐ、どもまでも延びる。それだけで、十分な句の世界が成り立っている。(髙橋正子)
8月4日(1句)
★富士の峯青々そびえ夏惜しむ/廣田洋一
富士山の山頂が青々としているのは、本当に夏の間だけ。この青さを惜しみ、ゆく夏を惜しむ気持ちがいい。(高橋正子)
8月3日(1句)
★庭先の小さき浄土蓮の花/多田有花
蓮の花が咲くと、たとえ、そこが小さな池や小さな鉢でも、そのあたりが浄土と思える空気が漂う。蓮の花の清浄さがそうさせる。(高橋正子)
8月2日(1句)
★何もかも忘れたき日や茗荷掘る/桑本栄太郎
茗荷が食べるとものを忘れるという言い伝えがある。人は一切合切忘れてみたくなるとこもある。忘れることで珍事も起こるが、人生にユーモアがあっていい。「茗荷掘る」が真実味があるようで、遊んでいるようで。(高橋正子
8月1日(1句)
★芋の葉の彼方に夏の日が昇る/多田有花
芋の葉が一面畑を覆うその向こうから夏の日が昇る。神々しいまでの夏の日の出を芋の葉が力強く受け止めている。(髙橋正子)

8月1日~10日

8月10日(4名)
小口泰與
魚影の浅瀬の瀬尻秋の雲★★★
破顔して下山の髭や草の絮★★★
秋蝉や朝の浅間の褪せにける★★★
廣田洋一
木の実降る音を聞きつつ家路かな★★★★
木槿咲く枝の大きく広がりて★★★
新築の家の石垣宗旦木槿★★★
桑本栄太郎
夜気と云う風の窓辺や涼新た★★★
甲子園テレビ画面に赤とんぼ★★★★
2年ぶりの甲子園での高校野球。中継のテレビ画面にすっと赤とんぼが入った。熱戦の繰り広げられる球場は、もう、秋。(髙橋正子)
訳も無く走り遊ぶや子等の夏★★★
多田有花
台風一過一面に青葉散る★★★
干し物をするや秋めく風のなか★★★★
秋茄子のまだまだ生りし構えなり★★★
8月9日(4名)
小口泰與
鬼やんま岩を越え行く水迅し★★★★
岩を越える水の迅さ。その岩の周りを飛ぶ鬼やんま。清涼感があふれる。(髙橋正子)
しののめの棚田の雨や姫ばつた★★★
山峡の日のつれなしや崩れ簗★★★
廣田洋一
松手入終へたる庭を開け放ち★★★★
軽快な音の続きし松手入★★★
遠見には三角形の松手入★★★
桑本栄太郎
大荒れの木の葉飛び散る初嵐★★★
休日の鉄砲百合や幼稚園★★★
わくら葉ともう云えぬなり野分凪ぐ★★★
多田有花
台風の音を聞きつつ描きおり★★★
喫煙の習慣は無し花煙草★★★
カンナ咲く踏切へ電車やってくる★★★
8月8日(4名)
小口泰與
大津絵の団扇厨に置かれける★★★★
大津絵は仏画と世俗画に分かれるようだが、世俗画はいろいろあって、ひょうきんな画もあり楽しい。厨に置かれる団扇は、すし飯を扇いだり、急に冷ます必要なものがあったりと、活躍する。いつも手近にあるものは、面白いもの、楽しいものがいい。(髙橋正子)
きちきちや赤城の雲の動かざる★★★
螻蛄鳴くや田の水口の水車★★★★
廣田洋一
池の水こつんと叩けり鬼やんま★★★
昨日見し揚羽がここに秋の庭★★★
玉蜀黍刈られし畑広々と★★★★
桑本栄太郎
サングラス散歩の犬に吠えらるる★★★
きちきちの朝の田道を先導す★★★★
ユニクロのセールに集う涼新た★★★
多田有花
秋きぬと真白き蓮の開きけり★★★★
秋が来たといって真っ白い蓮が開いた。真白き蓮が秋を見せてくれるかのように、目にすがすがしい。(髙橋正子)
蓮蕾のすこやかに立つ今朝の秋★★★
かなかなや夜明けを告げて鳴き始め★★★
8月7日(4名)
廣田洋一
庭の草秋色まとふ朝かな★★★
庭隅の草の葉そよぎ秋立ちぬ★★★
ものの実の小さく生りて秋立ちぬ★★★★
「小さく生りて」が「秋立ちぬ」の季節感をうまく表している。(高橋正子)
小口泰與
遠花火浄土の声の聞ゆなり★★★
安けくて仏間に昼寝木木の風★★★
青鷺のはぎ濡れし沼夕間暮れ★★★
多田有花
吹く風が告げてゆきけり今朝の秋★★★
蟻には広き朝顔の花の上★★★★
お釈迦様の手のひらの孫悟空を思い出すが、朝顔の花の上の蟻。蟻にとっては、きれいでみずみずしく広い世界。着眼がいい。(高橋正子)
暑中から残暑へ暑さは変わらずに★★★
桑本栄太郎
空腹を覚え目覚むる今朝の秋★★★
ベランダの鉢に水撒く入日かな★★★
ふるさとの漁火想う秋の宵★★★★
8月6日(4名)
小口泰與
被写体へやすき心や含羞草★★★
物言わぬ犬や夕べのはたた神★★★
水換えて目高やすらい犬欠伸★★★
廣田洋一
あの人もこの人も去り8月かな★★★
その奥に炎立つごと夕焼雲★★★
幾筋も火の帯流れ大夕焼★★★
多田有花
青空のいつも広がり原爆忌(原句)
青空の今日も広がり原爆忌★★★★(正子添削)
俳句は、今、現在のことを詠みます。そしてそれが永遠であることの象徴とします。そういう観点で添削しました。
昭和20年8月6日8時15分、広島の上空は快晴だったと聞く。その日と同じように、去年もそうだったが、青空が広がる。それが哀しみを深くする。(髙橋正子)
秋近き夜明けの空を見上げおり(原句)
「おり」の動作が強く出過ぎるので、もう少し、しっとりするように添削しました。
秋近き夜明けの空を見上ぐなり★★★★(正子添削)
百合白し朝日を浴びる家のそば★★★
桑本栄太郎
黒き雨ようやく止みぬ原爆忌
炎天の火に祈り居り原爆忌
逝く君の日と重なりし原爆忌
8月5日(4名)
小口泰與
蟾蜍からぶ大地に鎮座せり(原句)
「からぶ」は、文語で上二段活用をしますから、字余りとなっても、連体形の場合は「からぶる」にしてください。
蟾蜍からぶる大地に鎮座せり★★★(正子添削)
雷鳴や春子俳句の奇の乱舞★★★
降臨の大樹や風の滝の音★★★
廣田洋一
露店湯の湯煙高き山滴る(原句)
「露店湯」は変換ミスかと思います。「高き」は「山」を修飾していますので、添削のようにしました。「高し」で切りましたので、「山滴る」(終止形)として切ることはできませんのでこちらも直しました。(高橋正子)
露天湯の湯煙高し山滴り★★★★(正子添削)
山滴る谷川の水青きかな★★★
句意はとても良いと思います。切れが二か所にありますので,気になるところです。(髙橋正子)
翡翠の碧一筋に川渡る★★★★
翡翠が狙った魚を一閃の光のごとく獲る様子と、その羽の色は魅力的。この句は、翡翠が川を渡る様子でこれは少し長く、「碧一筋」を目に焼き付けて飛ぶ様子。川の水を渡り飛ぶ「碧一筋」が涼しそうだ。(髙橋正子)
多田有花
朝涼のなかを鉄路はまっすぐに★★★★
なんと気持ちのよい句だろう。朝の涼しさの中を鉄路がまっすぐ、どもまでも延びる。それだけで、十分な句の世界が成り立っている。(髙橋正子)
朝の田にしばし白鷺の立てり★★★
家々にペチュニア新興住宅★★★
桑本栄太郎
地の塩の噴き出す日なり草田男忌★★★
歩みゆく程にきらめく草の露★★★★
つんつんと青無花果の川辺かな★★★
8月4日(4名)
小口泰與
久に会う友の白髪や大海月★★★
白昼の商店街や風死せり★★★
死の果にある星空や旅晩夏★★★
廣田洋一
富士の峯青々そびえ夏惜しむ★★★★
富士山の山頂が青々としているのは、本当に夏の間だけ。この青さを惜しみ、ゆく夏を惜しむ気持ちがいい。(高橋正子)
アロエの葉枯れてしまひし夏の果★★★
窓を打つ雨音高し夏の果★★★
多田有花
空蝉のいつまで確とつかまりぬ★★★
総身に蝉しぐれ浴び古墳に立つ★★★★
蝉ぐれブランコの風心地よし★★★
桑本栄太郎
青田道縫つて辿りぬ路線バス★★★
鳴くもあり鳴かぬも並ぶ蝉の枝★★★
アスファルト鋪道に流る酷暑かな★★★
8月3日(4名)
小口泰與
風薫る浅間の雲の軽きかな★★★★
ステテコやぬれ縁に来る二羽の鳩★★★
日雷ソフトボールの少女達★★★
多田有花
庭先の小さき浄土蓮の花★★★★
蓮の花が咲くと、たとえ、そこが小さな池や小さな鉢でも、そのあたりが浄土と思える空気が漂う。蓮の花の清浄さがそうさせる。(高橋正子)
朝の月白く残りぬ百日紅★★★★
燕の子寄りあい並び電線に★★★
桑本栄太郎
風音と雨の降る音夜立来る★★★
嶺の端の雨雲去りて虹出ずる★★★
歴史的仮名遣いの表記をするならば、「出(い)づ」は終止形なので、連体形は「出(い)づる」がより正しい表記とされています。(高橋正子)
かなかなの山の端遠く茜かな★★★
廣田洋一
夏の雨止みし途端に湿気かな★★★ 
短夜の更けたる空に地球儀かな★★★
「オリンピック開会式」のドローンの光で作った地球儀でしょうか。前書きがあるとわかりやすいと思います。
短夜や寝技で勝ちし柔道家★★★
8月2日(4名)
小口泰與
常夏や里の小川のさらさらと★★★
木道の下野草や雲湧きぬ★★★
花合歓や天地賜わる我が一世★★★
廣田洋一
揚羽蝶木の香を吸ひて飛び去りぬ★★★
雷鳴の近づきたるや雨烈し★★★
オンライン会議終へたり雷雨去る★★★
桑本栄太郎
かなかなの暁けの茜や朝まだき★★★
何もかも忘れたき日や茗荷掘る★★★★
茗荷が食べるとものを忘れるという言い伝えがある。人は一切合切忘れてみたくなるとこもある。忘れることで珍事も起こるが、人生にユーモアがあっていい。「茗荷掘る」が真実味があるようで、遊んでいるようで。(高橋正子)
音のみの在りて降らずやはたた神★★★
多田有花
紅蓮開く朝の気を吸うごとく(原句)
「ごとく」ではなく、主観で「吸う(吸って)」のほうが、すっきりします。
俳句は詩という観点から見ると、こういった主観はむしろ尊ばれます。(高橋正子)
朝の気を吸って開けり紅蓮★★★★(正子添削)
散る蓮の隣新たに開く蓮★★★★
重たげに開きぬ八重の蓮の花★★★
8月1日(4名)
小口泰與
萱草や溶岩道の岩の数★★★
綿菅や降りたるリフト渦の風(原句)
綿菅や降りたるリフトに風の渦★★★★(正子添削)
雲の峰育つや犬の窶れける★★★
廣田洋一
葉陰より青柿一つ現れし★★★
青柿の踏み潰されし道の端★★★
青柿や水の枯れたる用水路★★★
多田有花
芋の葉の彼方に夏の日が昇る★★★★
芋の葉が一面畑を覆うその向こうから夏の日が昇る。神々しいまでの夏の日の出を芋の葉が力強く受け止めている。(髙橋正子)
山門を入れば一面蓮の花★★★★
花びらの先のみわずかに紅の蓮★★★
桑本栄太郎
想い出のあまたありたる八月来★★★
ひらひらと水辺漂う糸とんぼ(原句)
ひらひらと水辺漂い糸とんぼ★★★★(正子添削)
仰のけのままに羽ばたき蝉の果つ★★★

自由な投句箱/7月21日~31日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/7月21日~31日

7月31日(1句)
★山翡翠や日ごとに透ける峡の空/小口泰與
山翡翠の野性味と日ごと透けていく山峡の空が見事にマッチしてゆるぎない世界が生まれている。(高橋正子)
7月30日(1句)
★県境跨げば上がる夏の雨/廣田洋一
県境は、谷筋や山脈など地形によって引かれていることが多い。雨雲も地形に影響される。急に降り出し、急に止む夏の雨は、県境を跨ぐと上がることもあって、面白い現象がみられる。夏の雨の特徴をよく詠んでいる。(高橋正子)
7月29日(1句)
★ことごとく朝露宿す青田かな/多田有花
朝の青田は、どの田も一様に露が宿っている。おびただしい露が目にも心にも涼やかに映る。(髙橋正子)
7月28日(1句)
★太陽へ大きく咲けりハイビスカス/多田有花
「大きく咲けり」が面白い。ハイビスカスは、もともと大きな花であるが、太陽へ向かって大写しされるように明るく屈託なく咲く。そこが南国の花らしい。(高橋正子)
7月27日(1句)
★竹席を敷きて奥利根夏座敷/小口泰與
日本の夏を涼しく暮らす工夫はいろいろあるが、竹席もその一つ。奥利根の夏座敷に敷かれた竹席が陰影深く、涼感を伝えている。(髙橋正子)
7月26日(2句)
★蓮の花音高々と水噴けり/廣田洋一
蓮が咲くのは早朝。きれいな朝の空気に咲く蓮の花に、噴く水の音も高々として涼しげだ。清浄な句。(髙橋正子)
★子供らの蝉採り走る入り日かな/桑本栄太郎
日が暮れそうになっても、子供らは虫取り網と虫籠をもって走りまわり、蝉取りに夢中だ。入日の中のそんな子供らを見ていると、幼いころの遠い景色に重なるようだ。(髙橋正子)
7月25日(1句)
★石鹸の香りほのかにタンクトップ/多田有花
タンクトップを着た人から石鹸の香りが立っている。コロンでも香水でもないく石鹸なのがいい。清潔感があって、爽やかで、若々しい。(髙橋正子)
7月24日(1句)
★炎昼の虚空を渡る歩道橋/多田有花
なにもかも、陽炎のように燃える炎昼。路面より高く設置された歩道橋を渡るときは、あたかも虚空を渡るかのような感じ。炎昼ならばこその感覚。(高橋正子)
7月23日(1句)
★もぎ立ての李や峡の日の温み/小口泰與
李をもいでみると、日の温みが残っている。たしかに、この峡の日に熟れた李への愛おしさが湧いてくる。(高橋正子)
7月22日(1句)
★花ダリア紅の色澄み透り/廣田洋一
夏の庭で、ダリアの花は燃えんばかりに力強く咲く。けれども、その紅の色は純粋で澄んでいる。その発見と驚き。(高橋正子)
7月21日(1句)
★歩み行くほどにきらめく露涼し/桑本栄太郎
歩んでゆく径に置く露。歩いていくほど、露が増えて、きらめく様子に涼しさを覚える。「露涼し」の実感が伝わる。(髙橋正子)

7月21日~31日

7月31日(4名)
小口泰與
山翡翠や日ごとに透ける峡の空★★★★
山翡翠の野性味と日ごと透けていく山峡の空が見事にマッチしてゆるぎない世界が生まれている。(高橋正子)
夕菅や湖を囃せる日の光★★★
山峡の棚田いっせい青蛙★★★
多田有花
熊蝉や胴震わせて鳴き続く★★★
色とりどりペチュニア咲かせ歯科医院★★★
ラジコン飛行機夏野に飛ばしおり★★★★
廣田洋一
今年また親子で囲む土用鰻★★★
値段にて産地の知れる大鰻★★★
昼食に鰻せいろを奢りたる(原句)
「昼食に」があるために、事実報告の句になっています。「昼食に」は、読者に想像させましょう。
子に奢る鰻せいろの匂い立ち★★★★(正子添削例①)
子に奢る鰻せいろのおおぶりに(正子添削例②)「おおぶりに」なら、子の年齢もおおよそ知れると思います。(髙橋正子)
桑本栄太郎
ひらひらと水辺漂う糸とんぼ(原句)
添削のように、切れを入れると、糸とんぼの動きが自由になります。(髙橋正子)
ひらひらと水辺漂い糸とんぼ★★★★(正子添削)
風吹けばよろこび詠う稲の花★★★
空蝉の眼遠くを見つめ居り(原句)
空蝉なので、「見つめ居り」は、生々しすぎる感じです。「見つむかに」で修めます。(髙橋正子)
空蝉の眼遠きを見つむかに★★★★(正子添削)
7月30日(4名)
小口泰與
湧き出づる雲の匂いや夏薊★★★
たちまちに畦を責め來る滑莧★★★
グラジオラス一途な恋は剣の如★★★
廣田洋一
夏の雨明るき窓を濡らしけり★★★
県境跨げば上がる夏の雨★★★★
県境は、谷筋や山脈など地形によって引かれていることが多い。雨雲も地形に影響される。急に降り出し、急に止む夏の雨は、県境を跨ぐと上がることもあって、面白い現象がみられる。夏の雨の特徴をよく詠んでいる。(高橋正子)
ぽつと来て一度は止みぬ夏の雨★★★
多田有花
夏つばめ羽繕いに余念なし★★★
風鈴の音に誘われ路地をゆく★★★
蜘蛛渡る朝露宿す稲の間を★★★★
桑本栄太郎
姉妹らの船場言葉や谷崎忌★★★
雨匂い土のにおうや驟雨来る★★★
雷雨去り夕の茜や蝉しぐれ★★★
7月29日(4名)
小口泰與
嬬恋の峡田棚田のあめんぼう★★★★
秋近し街騒遠き杣の宿★★★
花街も灯まばら夏柳★★★
廣田洋一
日焼けせぬ腕を見せ合ふ受験生★★★
サングラスより下は日焼けのランナーかな★★★
日焼け止めアームカバーの理容師かな★★★
多田有花
花魁草朝の散歩の道彩る★★★
ことごとく朝露宿す青田かな★★★★
朝の青田は、どの田も一様に露が宿っている。おびただしい露が目にも心にも涼やかに映る。(髙橋正子)
朝涼やぶらり路地ゆく楽しさよ★★★
桑本栄太郎
こつ然とかなかな鳴きぬ茜かな★★★
<オリンピック女子選手の大活躍>
日の本はやはりをみなや雲の峰★★★★
枝の揺れ葉の擦れあいて夜の秋★★★
7月28日(4名)
小口泰與
もろもろの草の動きや青大将★★★
三山は雲にかしづき夏燕★★★
老犬の安寝の息や合歓の花★★★
廣田洋一
高波を捉えしサーファー銀メダル★★★
炎天に急ぎ飛び去る黒き蝶★★★
プール出でわが体重を感じたり★★★★
多田有花
田草取る人のありけり早朝に★★★
朝散歩夏の流れに沿いてゆく★★★
太陽へ大きく咲けりハイビスカス★★★★
「大きく咲けり」が面白い。ハイビスカスは、もともと大きな花であるが、太陽へ向かって大写しされるように明るく屈託なく咲く。そこが南国の花らしい。(高橋正子)
桑本栄太郎
白靴を買うと決めたる五倍デー★★★
日盛りのみみず干乾ぶ鋪道かな★★★
かなかなの鳴いて入日や夕風に★★★
7月27日(4名)
小口泰與
竹席を敷きて奥利根夏座敷★★★★
日本の夏を涼しく暮らす工夫はいろいろあるが、竹席もその一つ。奥利根の夏座敷に敷かれた竹席が陰影深く、涼感を伝えている。(髙橋正子)
人は皆脆きものなり夏の露★★★
妙義榛名ともろ共に夕焼ぞ★★★
廣田洋一
ぎんぎんに冷えし甘酒酌みたりき★★★
甘酒や生姜を効かし一気飲み★★★
立飲みの甘酒啜る紙コップ★★★
多田有花
庭先でボール蹴る音夏の夕★★★
涼風を受けゆっくりとピラティスを★★★
大樹あり蝉をいっぱいとまらせて★★★
桑本栄太郎
夜気来たる風の窓辺や秋近し★★★
軽鴨のファミリーらしき田水かな★★★
青空に火炎放つやさるすべり★★★
7月26日(4名)
多田有花
夏鶯夜明けとともに鳴き始め★★★
昼餉には茄子やわらかく味噌炒め★★★
昼の部屋ただ涼風があればよし★★★
小口泰與
百草の隣家や雨の雨蛙★★★
贈り來し山女や峡の水の色★★★★
百日紅開かずのままの裏鬼門★★★
廣田洋一
打水に黒く染まりしアスファルト★★★★
蓮池や透ける花弁重なりぬ(原句)
蓮池や花弁の透けて重なりぬ★★★★(正子添削)
噴水の音高々と蓮の花★★★★
「噴水の音高々と」と「蓮の花」が同等に強いので、「噴水」(夏)、「蓮の花」(夏)の季重なりと言えます。添削では、「蓮の花」をメインとしました。
蓮の花音高々と水噴けり(正子添削①)
「蓮の花」の語調がやわらかい(締まらない)と思われるなら、「蓮の花」を
「花蓮(はなはちす)」にされてもよいと思います。
花蓮(はなはちす)音高々と水噴けり(正子添削②)
蓮が咲くのは早朝。きれいな朝の空気に咲く蓮の花に、噴く水の音も高々として涼しげだ。清浄な句。(髙橋正子)
桑本栄太郎
草むらの風に鳴き初むきりぎりす★★★★
炎昼や鳴くものすべて鳴き止みぬ★★★
子供らの蝉採り走る入り日かな★★★★
日が暮れそうになっても、子供らは虫取り網と虫籠をもって走りまわり、蝉取りに夢中だ。入日の中のそんな子供らを見ていると、幼いころの遠い景色に重なるようだ。(髙橋正子)
7月25日(4名)
小口泰與
隠り沼の朽舟に舞う水馬★★★
訪ね来し眉雪の友や冷やし酒★★★
物寂ぶる梔子の花地を転ぶ★★★
廣田洋一
青き地球空に浮かびし五輪祭★★★
少しづつ彩り変へて夏料理★★★
緑に始まり緑に終る夏料理★★★
多田有花
夏満月低く南の空にあり★★★
家包み湧きたつ如し蝉の声★★★
石鹸の香りほのかにタンクトップ★★★★
タンクトップを着た人から石鹸の香りが立っている。コロンでも香水でもないく石鹸なのがいい。清潔感があって、爽やかで、若々しい。(髙橋正子)
桑本栄太郎
古池の蓮の葉被い蓮ひらく(原句)
古池を蓮の葉被い蓮ひらく★★★(正子添削)
猫バスのトトロの森や木下闇★★★
坂道を下り迫り出す百日紅★★★
7月24日(4名)
廣田洋一
茶碗の水に溺れし小蠅かな★★★
牛の尾のゆらりと揺れて蠅を追ふ★★★
オリンピックの賛歌と聞きし蝉時雨★★★
小口泰與
凌霄花や風の抗弁激しけれ★★★
郭公や風が物言う山上湖★★★
山風を大樹が庇う百合の花★★★
多田有花
炎昼の虚空を渡る歩道橋★★★★
なにもかも、陽炎のように燃える炎昼。路面より高く設置された歩道橋を渡るときは、あたかも虚空を渡るかのような感じ。炎昼ならばこその感覚。(高橋正子)
夏暁けの空に伸びゆく飛行機雲★★★
陽がさせば早も炎暑の気配あり★★★
桑本栄太郎
河童忌や夕日に光る蜘蛛の糸★★★
かなかなの茜となりぬ遠嶺かな★★★
空蝉の命あるかに構えけり★★★
7月23日(3名)
小口泰與
もぎ立ての李や峡の日の温み★★★★
李をもいでみると、日の温みが残っている。たしかに、この峡の日に熟れた李への愛おしさが湧いてくる。(高橋正子)
雲の峰家業固守せる我が一世★★★
梔子や古手拭の如しなる★★★
多田有花
炎昼の道は峠に向かいおり★★★★
片陰を選び駅前ロータリー★★★
夏野菜いろいろ刻みラタトゥイユ★★★
桑本栄太郎
梅漬けの笊に干さるる大暑かな★★★
<故郷の話題二つより>
隠岐や今遥か彼方や土用波★★★★
松蔭の敗れて夏の終わりけり★★★
7月22日(4名)
廣田洋一
下戸なりし妻の漬けたる梅酒かな(原句)
下戸なりし妻の遺せし梅酒かな★★★★(正子添削)
ポンポンダリア団地の庭の華やげる★★★
花ダリア紅の色澄み透り★★★★
夏の庭で、ダリアの花は燃えんばかりに力強く咲く。けれども、その紅の色は純粋で澄んでいる。その発見と驚き。(高橋正子)
小口泰與
落日を一顧だにせず山女釣★★★
下校児の畦の桑の実家遠し★★★
遠き日の端居の父の強面★★★
多田有花)
朝の窓開け放ちたり盛夏来る★★★
ブーツ型のグラスに入りしレモンスカッシュ★★★
遠雷よりわずかに雨滴吹かれ来る★★★★
桑本栄太郎
木洩れ日の道を伝いて朝涼し★★★
蝉の翅の透きたるような夏衣かな★★★
葉を透きし窓の樹木や西日さす★★★
7月21日(3名)
小口泰與
夕虹の掉尾や風の峡に住む★★★
贈られし奥多摩山女舌肥し★★★
紅蓮や閨秀詩人住まいける★★★
廣田洋一
夕暮れの川辺にそよぐ青田かな★★★
道はさみ開発進む青田かな★★★
年古りて琥珀色なる梅酒酌む★★★
桑本栄太郎
歩み行くほどにきらめく露涼し★★★★
歩んでゆく径に置く露。歩いていくほど、露が増えて、きらめく様子に涼しさを覚える。「露涼し」の実感が伝わる。(髙橋正子)
朝日差す風に蹲踞やさるすべり★★★
蜘蛛の囲の朝日が差せば主無し★★★