12月11日~20日

12月20日(4名)
小口泰與
寒鴉松百幹に潜む闇★★★
冬梨の瑕瑾なき汁溢れけり(原句)
瑕瑾なき冬梨の汁溢れけり★★★★(正子添削)
山風や利根の瀞へと枯葉舞う★★★
廣田洋一
冬凪や渚に貝を拾ひけり★★★★
冬凪の渚には、風は冷たいものの明るい日差しがとどき、貝を拾いたくなる。この所作に素敵な静けさがあっていい。上品で穏やかな静けさに心休まる句。(高橋正子)
冬凪の沖に浮かべる島青し★★★
冬ざれの畑啄む小鳥どち★★★
多田有花
冬帝のどっと渡りし日本海★★★★
カレンダー紙一枚の十二月★★★
重ね着て心がけたりエコロジー★★★
桑本栄太郎
小春日や買物道の蒼き空★★★
冬旅の妻の土産は吊し柿★★★★
霜の夜の頻尿なるや三度目に★★★
12月19日(4名)
廣田 洋一
冬凪や渚に遊ぶ鳥の群★★★
新しき仕事引き受け日記買ふ★★★★
冬ざれや倒れし竹のそのままに★★★
小口泰與
葉牡丹の雨を受けたる盃の如★★★
わたらせに沿いて単線冬ざるる★★★★
青首の伸びて縮んで眠りけり★★★
桑本栄太郎
洗面の水の悴む朝かな(原句)
洗面の水に悴む朝かな★★★(正子添削)
燦々と背ナに冬日や朝餉摂る★★★★
朝餉の時間、ちょうど背ナに冬日が当たって、暖かい。日の当たる背ナは、暮らしてきた歳月がそのまま表れて見える。(高橋正子)
階段の踊り場に舞う落葉かな★★★
多田有花
風の音激しく月光の冴える★★★
風荒れて眠る山への子守歌★★★
北の山雪に輝く山となる★★★★
12月18日(4名)
廣田 洋一
診療所の庭を明るく花アロエ★★★★
赤き花出窓に飾りクリスマス★★★
マンションの窓の電飾聖樹かな★★★
小口泰與
健啖の老の眼差しずわい蟹★★★
葉牡丹や帰省児居間に大の字に★★★
空風や砂利を噛みたる天邪鬼★★★
多田有花
暮れてゆく窓辺に北風のつのりけり★★★
寒波くる入日いっそう輝けり(原句)
「くる」「輝けり」の二か所に切れがあります。切れは一か所に。(髙橋正子)
寒波来て入日いっそう輝けり★★★★(正子添削)
寒波の厳しさが入日を磨くように、いっそう輝かせる。厳しい寒さが空気を鋭利にさせたようだ。(高橋正子) 
北風の音の激しき夜の窓★★★
桑本栄太郎
初雪や想い出遠き宙の果て★★★
初雪の止んで日差しの燦々と★★★★
切干の室に取り込み甘き香よ(原句)
切干を室に取り込み甘き香よ★★★★(正子添削)
12月17日(4名)
小口泰與
膝折りて枯菊根より切にける★★★
冬萌や牧舎の牛の鋭声せる★★★
漢薬を煎じる土瓶枯忍★★★
廣田 洋一
冬凪のヨットハーバー静まれり★★★
冬凪や鳥は渚に遊びをり★★★
電飾の華やぐ聖夜丸の内★★★
多田有花
旧宅の鍵送り出す師走かな★★★
ニット帽耳まで被り買物へ★★★
冬林檎にかけし豆乳ヨーグルト★★★
桑本栄太郎
大木の伐り株白し寒波来る★★★★
大木ならば、切株も大きく白さも鮮やかだろう。切株の白の鮮烈さに、生々しささえ見える。寒波が来て、いっそう切株の白さば目立つ。(髙橋正子)
しがみつく楓もみじや冬の風★★★
山すその里に灯点る冬暮色★★★
12月16日(3名)
廣田洋一
湯豆腐の煮くずれ掬ふ手の白し★★★
贈り物箪笥に隠し聖夜待つ★★★
地下広場讃美歌響くクリスマス★★★
小口泰與
枯葦や入日受けたる群雀★★★
一筋の没日の剣や冬の沼★★★
猪肉や下仁田葱の香の甘し★★★
桑本栄太郎
小春日や遠回りなる買物へ★★★
一枚を脱いで歩きぬ冬ぬくし★★★
満天星の冬の紅葉の緋色かな★★★
12月15日(3名)
小口泰與
寒風や農婦の手足ねこ車★★★
山峡に雲一刷や紅蜜柑★★★
一献のあとの味噌汁滑子かな★★★
廣田洋一
湯豆腐や気の向くままに一人鍋★★★
湯豆腐や一升瓶を横に置き★★★
マンションの窓を飾れる聖樹かな★★★
桑本栄太郎
星冴ゆる真夜の報せや叔父逝去★★★★
叔父様のご逝去お悔み申し上げます。
星が冴える夜は、冷え込みがまし、家うちに居ながら、感覚がさえる。そんなときの身内の訃報はある意味納得し、ある意味受入がたく、思い出がふつと湧く。人の死と切り離せない星の冴える夜である(髙橋正子)
枯尾花風に抗うすべ知らず★★★
又一枚木の葉しぐれのはらり落つ★★★
12月14日(4名)
小口泰與
隠り沼の彼方此方に鴨の陣★★★
産土の山風堅き空っ風★★★
在野に遺賢居り枇杷の花咲けり★★★
廣田洋一
湯豆腐や舌の先にて右左★★★
湯豆腐のをどりに合わせ酒を酌む★★★
駅出れば星の迎へる十二月★★★★
日もいよいよ短くなり、寒さがつのり、空気が澄んでくる十二月。駅を出るとたくさんの星が空にきらめき、出向かえてくれるようである。(髙橋正子)
多田有花
脱水機手で回しおり年の内★★★
大霜の中自転車のセーラー服★★★★
霜の朝日差しあふれる昼となり★★★
桑本栄太郎
水禽の次々潜る静寂かな★★★★
からからと枯れし落葉や踏みしだく★★★
讃美歌の窓にあふるる待降節★★★★
12月13日(4名)
小口泰與
眼間の朱き冬芽のひたすらに★★★★
庭の木々を見上げると、眼間には朱い冬芽がたくさん育っている。その姿は「ひたすら」とさえ思える。そう思うのは優しさ。(髙橋正子)
雪山やあだに年取る吾髪膚★★★
新しき日に錆にける冬薔薇★★★
廣田洋一
喪中挨拶日毎に増える十二月★★★
電飾のトナカイ駆ける十二月★★★
湯豆腐やゆっくり煮込む一人鍋★★★
多田有花
渋皮煮たっぷり載せし冬のケーキ★★★
背に冬陽浴びつつ洗濯機を回す★★★
土踏まずじんわり温し足温器★★★
桑本栄太郎
木枯や園児ら駆ける鬼ごつこ★★★
竹林の節の白さや寒波来る★★★★
木々の枝の闇に悲鳴や冬の鵯★★★
12月12日(3名)
小口泰與
潮風の香る金時蜜柑かな★★★
凍草や湖の紫紺を極めける(原句)
凍草や湖は紫紺を極めける★★★★(正子添削)
湖のほとりは凍草が覆っている。湖も紫紺の色を極め、静寂がやがてこころのなかに、華やかさに変わっていく、美的なセンスのある句だ。(髙橋正子)
青首や浅間の雲の遊びける★★★
廣田洋一
ブロッコリー採られぬままに花咲きぬ★★★
口開けて冬の日呑めり鯉の群★★★
裸木の実をついばむや鳥せわし★★★
桑本栄太郎
一つのみぽつと日に咲く返り花★★★
チリチリと赤き地肌や山眠る★★★
山茱萸の赤き実乾ぶる冬日かな★★★
 
12月11日(4名)
小口泰與
弓道の師範の声や冬の月★★★
赤く染む冬夕焼の忽と消え★★★
田雲雀や田は寂寞の草の原★★★★
廣田洋一
黄ばみたる障子のままや男世帯★★★
破れ障子小鳥の動き忙しなし(原句)
障子の破れた穴から小鳥の動きが見えるということでしょうか。添削は、障子に小鳥の影が映って、その影が忙しく動いている情景にしました。
破れ障子小鳥の影の忙しなし★★★★(正子添削)
電飾に見とれて歩く十二月★★★
多田有花
仲冬の入日は塔とあいまみえ★★★
本年の講義を終えし年の内★★★
裸木の立つ雲低き午後の空★★★★
桑本栄太郎
バスに乗り冬の日差しの眩しさよ★★★
落葉松の錆びのようなる落葉かな(原句)
情景が足りないように思います。(髙橋正子)
落葉松の錆びのようなる積む落葉★★★★(正子添削)
落葉松は金色の黄葉から錆び色の落葉へと変わっていく。錆びを落としていくように地面に深々と降り積もる。芽吹くときも、黄葉のときも、名のとおり落葉となるときも、人の一生のごとく趣ある変化を見せて来る。(髙橋正子)
くもり来る午後の日差しや冬ざるる★★★

自由な投句箱/12月1日~10日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/12月1日~10日

12月10日(1句)
★霜晴や深閑として大庇/小口泰與
見上げる大庇の向こうに霜晴れの空。大屋根に霜が強く降りているであろう。森閑としたわが家を囲む霜の朝が堂々と詠まれている。(髙橋正子)
12月9日(1句)
★冬の水並木の枝をくっきりと/廣田洋一
静かな冬の水が、ただ並木の枝をくっきりと映している。水と枝だけの簡明さがすっきりとして、冬の清浄イメージを喚起させてくれる。(髙橋正子)
12月8日(1句)
★仲冬の野葡萄に青まだ残り/多田有花
仲冬は大雪から小寒の前日までをいうが、寒さもいよいよ厳しくなり、霜も降りるようになる。そう言った寒さの中に野葡萄はきれいな青色を残している。枯れの中で生き生きとした青さが印象に残る。(髙橋正子)
12月7日(1句)
★新障子真白き中にラジオ聞く/廣田洋一
貼り替えられた障子は、真っ白で、ぴんと張っている。聞いているラジオの声もきれいに響くようだ。ささやかながらも、生活の喜びが感じられて、昭和のような、なつかしさを覚える。(高橋正子)
12月6日(1句)
★八つ手咲く厨の窓に食器の音/桑本栄太郎
八つ手は日陰に強く、日陰となる厨の窓の近くにあるのを目にする。八手の花の白さが食器の清潔さを想像させてくれる。(高橋正子)
12月5日(1句)
★枯枝の枝垂れ桜のしだれけり/桑本栄太郎
枯枝となった枝垂れ桜は、花を付けていたときそのままの枝垂れ具合。華やかな花の枝と枯れ枝が対比されて自明の理の納得の句。(高橋正子)
12月4日(1句)
★後の日は空白故人の古日記/多田有花
日記をつけていた故人。亡くなってからは空白のページが続く。古日記の空白のページが意味するものは、あきらか。それだけに喪失感が募る。(高橋正子)
12月3日(1句)
★寒犬や耳門に鈴の鳴りにける/小口泰與
耳門は、この句ではくぐり戸。くぐり戸をくぐろうとすると、愛犬が主人の気配を感じて鈴を鳴らして近寄っている。寒々とした日、鈴を鳴らしてよってくる犬にほのぼのとした温かさを感じる。(高橋正子)
12月2日(1句)
★短日の通夜に集まる親族ら/多田有花
夕やみがたちまちにやってくる「短日」は、気持ちもあわただしい。死亡の知らせに通夜に集まった親族たちは、短日のあわただしさの中にも、密やかに、温かく、故人の冥福を祈ったことであろうことが知れる句。「短日」が効いている。(高橋正子)
12月1日(1句)
★綿虫の青き翅浮く川辺かな/桑本栄太郎
綿虫は小さく宙に浮かんで、点のような綿虫は灰色にも見えるが、明るい光があれば、翅が青がかって見える。その妖しいような青を川辺の光が見せてくれた。それを捉えた感覚がいい。(高橋正子)

12月1日~10日

12月10日(4名)
小口泰與
雪蒼き谷川岳の狭間かな★★★
霜晴や深閑として大庇★★★★
見上げる大庇の向こうに霜晴れの空。大屋根に霜が強く降りているであろう。森閑としたわが家を囲む霜の朝が堂々と詠まれている。(髙橋正子)
百態の水の流れや紙漉女★★★
廣田洋一
ガード下おでん屋台の賑わへり★★★
冬の水しんと映れる金閣寺★★★
冬の水河原の石を磨きをり★★★
多田有花
韋駄天と呼ばれし人よ師走に逝く★★★
昼休み甘き蜜柑を二つ剥く★★★
あぶらげと焚かれ大根のやわらかし★★★
桑本栄太郎
くいくいと桜冬芽や蒼空に★★★
川べりのあっけんからと枯尾花★★★
からす飛びあまた塒へ冬夕焼け★★★
12月9日(4名)
小口泰與
青星や赤城のすそ野明らかに★★★
蔵開けて潜みし凍てにぶち当たり★★★
白鳥やあくまで蒼き湖の色★★★★
廣田洋一
定時にて退社の友とおでん酒★★★
冬の水浮かべるものの何もなし★★★
冬の水並木の枝をくっきりと★★★★
静かな冬の水が、ただ並木の枝をくっきりと映している。水と枝だけの簡明さがすっきりとして、冬の清浄イメージを喚起させてくれる。(髙橋正子)
桑本栄太郎
日を透きし空の蒼さや枯木立★★★★
綿虫の翅の大きく透き通る★★★
手袋の二つで一つ何処へやら★★★
多田有花
開戦日友の訃報の届きけり★★★
小春日や老人ホームの母を訪う★★★★
母のため電気毛布を買いにけり★★★
12月8日(4名)
小口泰與
奥利根の峡田棚田の霜柱★★★
碧天や雪の浅間へ禽の群★★★
おやみなき風や麦芽の谷戸の空★★★
廣田洋一
大根の味しみわたるおでんかな★★★
冬の水鯉の動きも緩やかに★★★
川底の石光りけり冬の水★★★★
桑本栄太郎
照るくもる冬の日差しの定まらず★★★
固まつて孤独のままに枯蟷螂★★★
綿虫のたじろき舞いぬ田道かな★★★
多田有花
葉は枯れて花のみ残り冬の菊★★★
仲冬に野葡萄の青残りおり(原句)
もとの句は「仲冬に」の「に」で句が、散文的、説明的になっています。(髙橋正子)
仲冬の野葡萄に青まだ残り★★★★(正子添削)
仲冬は大雪から小寒の前日までをいうが、寒さもいよいよ厳しくなり、霜も降りるようになる。そう言った寒さの中に野葡萄はきれいな青色を残している。枯れの中で生き生きとした青さが印象に残る。(髙橋正子)
山茶花の赤白ピンクと咲きそろう★★★
12月7日(4名)
小口泰與
突然に羚羊に遭い棒立ちに★★★
羚羊、ニホンカモシカは渋川市あたりでも見られるようですね。びっくりしました。(高橋正子)
綿虫や赤城陰れば利根晴るる★★★★
天つ日と風の群馬や麦畑★★★
廣田洋一
大根が主役を努めおでん鍋★★★
新障子真白き中にラジオ聞く★★★★
貼り替えられた障子は、真っ白で、ぴんと張っている。聞いているラジオの声もきれいに響くようだ。ささやかながらも、生活の喜びが感じられて、昭和のような、なつかしさを覚える。(高橋正子)
花模様透かして浮かぶ白障子★★★
桑本栄太郎
大雪や雨の一日の暮れゆける★★★
水涸るる近江の湖や浮御堂★★★
夢に見るふるさと遠き枯野かな★★★
多田有花
紅白の実南天に迎えらる★★★
銀杏落葉踏み自転車の疾走す★★★
冬半ば素焼きの鉢にパンジー咲く★★★
12月6日(4名)
小口泰與
帰り花朝明(あさけ)の空へ伝書鳩★★★
渓音にのめり込んでる冬黄葉★★★
谷川へ影踊らすや柿落葉★★★
廣田洋一
隠し味は土地の銘酒やおでん炊く★★★
子供らにおでん残して一人旅★★★
冬紅葉今を盛りの六義園★★★
桑本栄太郎
八つ手咲く厨の窓に食器の音★★★★
八つ手は日陰に強く、日陰となる厨の窓の近くにあるのを目にする。八手の花の白さが食器の清潔さを想像させてくれる。(高橋正子)
白き実のナンキン櫨や冬ざるる★★★
雲間より水色空や寒波来る★★★
多田有花
裸木の囲む広場でキャッチボール★★★
遠目にも赤き実南天と思う★★★
青空に憧れている木守柿★★★
12月5日(4名)
廣田洋一
綿虫や雪富士見つつ飛びてをり★★★
鍋持ちてコンビニへ行くおでんかな★★★
おでん煮て夕餉の支度終へにけり★★★
小口泰與
あかつきの日日渡り行く舟と鴨★★★
茜さす雪の浅間や下校の児★★★
雪山を下りし漢のあぎとかな★★★
多田有花
漢方薬煎じる香り冬厨★★★★
冬野菜たっぷり入れしスープかな★★★
道の辺の花壇の手入れ冬の朝★★★
桑本栄太郎
峰奥の日差し明るき時雨かな★★★
枯枝の枝垂れ桜のしだれけり★★★★
枯枝となった枝垂れ桜は、花を付けていたときそのままの枝垂れ具合。華やかな花の枝と枯れ枝が対比されて自明の理の納得の句。(高橋正子)
一斉に翔びしすずめや冬田晴れ★★★
12月4日(4名)
小口泰與
鈴鳴らす魚の魚信や冬の沼★★★
へら浮子の塗りは漆や囲炉裏端★★★
牧場の白馬足掻くや空っ風★★★
多田有花
後の日は空白故人の古日記★★★★
日記をつけていた故人。亡くなってからは空白のページが続く。古日記の空白のページが意味するものは、あきらか。それだけに喪失感が募る。(高橋正子)
年々の月日の加速師走かな★★★
クリスマスソング聞きつつ洗濯を★★★
廣田洋一
久闊を叙したるともとおでん酒★★★
コンビニでおでんを選ぶ昼餉かな★★★
散り来たる木の葉とつかる露天風呂★★★★
桑本栄太郎
冬蝶の日差しためらい彷徨いぬ★★★★
ひと風に木の葉しぐれやバス通り★★★
落葉松の冬の紅葉や蒼き空★★★
12月3日(4名)
小口泰與
来し方の煙の町や寒の晴★★★
寒犬や耳門の鈴の鳴りにける(原句)
寒犬や耳門に鈴の鳴りにける★★★★(正子添削)
耳門は、この句ではくぐり戸。くぐり戸をくぐろうとすると、愛犬が主人の気配を感じて鈴を鳴らして近寄っている。寒々とした日、鈴を鳴らしてよってくる犬にほのぼのとした温かさを感じる。(高橋正子)
廃寺への九十九折なり息白し★★★
廣田洋一
山間にぱつと光れる紅葉かな★★★
冬の陽をきらきら返す播磨灘★★★
木枯しに少し揺れたるケーブルカー★★★
多田有花
斎場への道の傍ら冬紅葉★★★
捨てるべきものを物色十二月★★★
いと軽しベビーピンクのジャケットは★★★
桑本栄太郎
園児らのカートに乗りて冬田道★★★
煉瓦這い日差し明るく蔦枯るる★★★
降るように零れるように落葉時★★★
12月2日(4名)
小口泰與
冬草の各各の挙措雨の丘★★★
夕暮や時雨の遊ぶ鎖樋★★★
鋭声上げ鳥発ちにけり寒茜★★★
廣田洋一
白丸に三角四角おでん食ぶ★★★
おでん鍋久し振りなと迷ひ箸★★★
枯菊を焚きたる煙香りけり★★★★
多田有花
凩や叔父の訃報の届きけり★★★
午後の陽の翳り具合の冬めきぬ★★★
短日の通夜に集まる親族ら★★★★
夕やみがたちまちにやってくる「短日」は、気持ちもあわただしい。死亡の知らせに通夜に集まった親族たちは、短日のあわただしさの中にも、密やかに、温かく、故人の冥福を祈ったことであろうことが知れる句。「短日」が効いている。(高橋正子)
桑本栄太郎
瘤かざすように立ちたる冬木かな★★★
さざ波を切つて進むや浮寝鳥(原句)
浮寝鳥は水に浮かんで眠っている鳥を指しますが、「さざ波を切つて進む」のは、どんな状況でしょうか。(高橋正子)
さざ波に乗れば進むかに浮寝鳥★★★★(正子添削)
実際は、添削のような場合と思います。
峰の端に冬の入日や今まさに★★★
12月1日(3名)
小口泰與
忽と消え忽と現る雪浅間★★★
水枯れの添水や風の竹林★★★
隼の真一文字の雄飛かな★★★
廣田洋一
去年今年希望の光点滅す★★★
枯菊を折れば放てる香のありぬ★★★★
枯菊のごみとなりてもなほ香る★★★
桑本栄太郎
綿虫の青き翅浮く川辺かな★★★★
綿虫は小さく宙に浮かんで、点のような綿虫は灰色にも見えるが、明るい光があれば、翅が青がかって見える。その妖しいような青を川辺の光が見せてくれた。それを捉えた感覚がいい。(高橋正子)
冬日差す旧家にありぬ網代垣★★★
ふかふかと銀杏落葉を歩きけり ★★★

自由な投句箱/11月21日~30日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/11月21日~30日

11月30日(1句)
★牡丹の冬芽や雨を弾きける/小口泰與
牡丹の冬芽が雨を弾いている。それによって分かる、牡丹の芽の固さ、艶やかさ、そして膨らみ。冬の雨に降られながらいきいきと命を輝かせている牡丹の冬芽を愛おしむ気持ちが伝わる句。(高橋正子)
11月29日(1句)
  南禅寺
★冬紅葉中にどっしり水路閣/多田有花
南禅寺境内を通る琵琶湖の水を送るための水路橋、水路閣は、幅4メートル、高さが9メートルという花崗岩づくりのどっしりとしたもの。今は南禅寺の冬紅葉に色合いもしっくり溶け込んで、堂々たる風情。(髙橋正子)
11月28日(1句)
★円光の朝日や樹氷包みける/小口泰與
昇ったばかりの朝日が樹氷をまぶしくかがやかす。夜があけ、あたらに蘇った景色が感動的。(髙橋正子)
11月27日(1句)
 永観堂
★冬紅葉光と影の差し交じり/多田有花
冬の陽ざしを受けた紅葉は、光と影が入り交じり、陰翳が濃くなり、妖艶なまでの色どりを見せてくれる。それが季節の深みとも言える。(髙橋正子)
11月26日(1句)
★水中花をうすく閉じ込め初氷/廣田洋一
水中花は、水に浮かべた花を指す場合もあるので、この句は、そんな場合の様子であろうか。花の浮かぶ水をうすく凍らせてしまった初氷。儚くも美しい。(髙橋正子)
11月25日(1句)
<永観堂>
★うめもどき赤々として冬はじめ/多田有花
枯れの始まる季節、葉を落とすと、うめもどきの赤々と熟れた実が目に強く映る。温かそうな色で人の目を引き付ける。冬の到来を思う。(髙橋正子)
11月24日(1句)
★落葉松の並木通りや冬日さす/桑本栄太郎
落葉松は日当たりのより乾いた土が適地だという。私は小諸へ行く途中、11月22日だったか、追分をすぎたところから落葉松林を車窓から見て感激した。そのような落葉松の並木だろうと思う。冬日が差して情趣深い景色になった。(髙橋正子)
11月23日(1句)
★銀杏黄葉光撒きつつ散りゆけり/廣田洋一
銀杏黄葉が散る様子は、光をまき散らしているかのようである。光に透けたような銀杏の黄葉が今生を尽くして散る様は美しい。(髙橋正子)
11月22日(1句)
★大根のりゅうと立ち居り屋敷畑/桑本栄太郎
日々の蔬菜として屋敷畑にはこまごま野菜が植えられている。大根もその一つ。土が肥え、水も十分で形は多少いびつでも良く育っている。「りゅうと立ち」の大根が頼もしい。(髙橋正子)
11月21日(1句)
★控え目に鳴きつつ枝に冬の鵙/多田有花
秋には猛々しい声で鳴いていた鵙も、冬になると、姿も見つけにくく、声さえも控え目になっている。そこがおかしい。鵙も自然には逆らえないのは自然界の生き物。(高橋正子)

11月21日~30日

11月30日(4名)
小口泰與
冬空や星座の鳥獣翔けにける★★★★
雀らの塒は庇や青木の実★★★
牡丹の冬芽や雨を弾きける★★★★
牡丹の冬芽が雨を弾いている。それによって分かる、牡丹の芽の固さ、艶やかさ、そして膨らみ。冬の雨に降られながらいきいきと命を輝かせている牡丹の冬芽を愛おしむ気持ちが伝わる句。(高橋正子)
廣田洋一
エプロンを着たまま出かけ年の暮★★★
読みかけの本を積み上げ年の暮★★★
練り物のゆかしき味やおでん鍋★★★
多田有花
<蹴上インクライン>
インクライン彩る冬の紅葉かな★★★
<瓢亭>
冬紅葉堪能ののち京料理★★★
山茶花に照る陽曇る陽風吹く日★★★
桑本栄太郎
川べりの地道を行くや枯尾花★★★
堰水の冬日燦々光りけり★★★
玄関に冬の小菊や小料理屋★★★
11月29日(4名)
小口泰與
しぐるるや野面うすうす木木の息★★★★
寒月や逃げ足早き雲一朶★★★
瀞の面の鋼や木の葉跳ね返す★★★★
廣田洋一
電飾の点る並木や暮早し★★★
暮早し帰宅をせかす曲流れ★★★
桜落葉華やぐ色を残しをり★★★★
多田有花
<南禅寺三句>
冬紅葉中にどっしり水路閣★★★★
南禅寺境内を通る琵琶湖の水を送るための水路橋、水路閣は、幅4メートル、高さが9メートルという花崗岩づくりのどっしりとしたもの。今は南禅寺の冬紅葉に色合いもしっくり溶け込んで、堂々たる風情。(髙橋正子)
句碑ありぬ冬の紅葉に囲まれて★★★
三門に立てば絶景冬紅葉★★★
桑本栄太郎
冬ざれや喪中はがきの今日も来る★★★
日差し受くどうだん躑躅や冬紅葉★★★
道の辺に散り積りたる落葉かな★★★
11月28日(4名)
廣田洋一
葱の束買物かごをはみ出せり★★★
駅出でてつい立ち寄りぬおでん酒★★★
週末はおでん鍋にて手抜きせり★★★
小口泰與
熱熱の焼芋割るや湯気かおる★★★
円光の朝日や樹氷包みける★★★★
昇ったばかりの朝日が樹氷をまぶしくかがやかす。夜があけ、あたらに蘇った景色が感動的。(髙橋正子)
裸形なる尻丸大根抜きにけり★★★
桑本栄太郎
あおぞらに銀杏冬木の梢かな★★★
ひと風に木の葉しぐれやバス通り★★★
寒風に地団駄踏みてバスを待つ★★★
多田有花
<永観堂三句>
山茶花や数多の人を見上げおり★★★
冬紅葉苔に水面に散りゆきぬ★★★
銀杏散るとき地は金色に変わり★★★
 
11月27日(4名)
小口泰與
あえかなる朱き冬芽や山の風★★★
切れ字「や」強く切ってしまうと、「あえかなる朱き冬芽」に対する詠者の気持ちが消えてしまいます。切れは「不即不離」「付かず離れず」です。(髙橋正子)
校庭へ冬韋駄天の足音かな★★★
赤金の朝日や沼の鴨陣★★★
廣田洋一
電車より川面の見えず暮早し★★★
電飾の駅前広場暮早し★★★
塾の窓子の頭見え暮早し★★★
桑本栄太郎
木守の赤く熟せる軒端かな★★★
あおぞらの銀杏梢や裸木に★★★
日照雨(そばえ)降る日差し明るき冬日かな★★★
多田有花
<永観堂三句>
3句とも
状況がもう少し読み手に分かる表現だとさらにいい句になると思います。(髙橋正子)
冬紅葉光と影の交差する(原句)
冬紅葉光と影の差し交じり★★★★(正子添削)
冬の陽ざしを受けた紅葉は、光と影が入り交じり、陰翳が濃くなり、妖艶なまでの色どりを見せてくれる。それが季節の深みとも言える。(髙橋正子)
冬紅葉の色も浮かべし流れかな(原句)
冬紅葉の色を浮かべて流れかな★★★★(正子添削)
初冬の流れに紫式部の実(原句)
初冬の流れに差し出づ式部の実★★★★(正子添削)
11月26日(4名)
小口泰與
庭芝の醜草とるや冬の虫★★★
寒暁や花園のホース棒の如★★★
白波の利根のおりふし冬の虹★★★
廣田洋一
水中花うすく閉じ込め初氷(原句)
水中花をうすく閉じ込め初氷★★★★(正子添削)
水中花は、水に浮かべた花を指す場合もあるので、この句は、そんな場合の様子であろうか。花の浮かぶ水をうすく凍らせてしまった初氷。儚くも美しい。(髙橋正子)
ほうとう鍋のふた取る先に小春富士★★★
地元産の葱の溢れる市場かな★★★
多田有花
<永観堂三句>
地蔵像隣に八手の花咲かせ★★★
冬紅葉中を登るや臥龍廊★★★
多宝塔冬の紅葉の波のうえ★★★
桑本栄太郎
さざ波の水面煌めくかいつぶり★★★
鬼貌の誰とも知れず芙蓉枯る★★★
畦道の日差しや冬の草もみぢ★★★
11月25日(3名)
多田有花
<永観堂三句>
うめもどき赤々として冬はじめ★★★★
枯れの始まる季節、葉を落とすと、うめもどきの赤々と熟れた実が目に強く映る。温かそうな色で人の目を引き付ける。冬の到来を思う。(髙橋正子)
とりまぜて赤や緑や冬の庭★★★
白壁を彩る冬の紅葉かな★★★
桑本栄太郎
バスに乗り銀杏落葉を踏みに行く★★★
光りつつ木の葉しぐれの銀杏かな★★★
市ヶ谷の銀杏散りたる憂国忌★★★
廣田洋一
雪富士の裾長く伸び甲斐路かな★★★★
冬めきぬ湖に浮かべる小舟かな★★★
小春の日跳ね返す富士の白雪★★★
11月24日(4名)
小口泰與
田雲雀や湖一面の絖を成し★★★
冬蝗稲藁ロールおちこちに★★★
和菓子屋の歴史をつなぐ冬柏★★★
廣田洋一
北国を思い出したる目貼かな★★★
山茶花や空き家の庭を紅く染め★★★
日を浴びて青く光れる冬菜かな★★★★
多田有花
<永観堂三句>
永観堂冬の紅葉を見るばかり★★★
紅葉散る水面の底の鯉静か★★★
唐門の盛り砂鮮やか冬の陽に★★★
桑本栄太郎
落葉松の並木通りや冬日さす★★★★
落葉松は日当たりのより乾いた土が適地だという。私は小諸へ行く途中、11月22日だったか、追分をすぎたところから落葉松林を車窓から見て感激した。そのような落葉松の並木だろうと思う。冬日が差して情趣深い景色になった。(髙橋正子)
ふるさとの遠くに想う波の花★★★
落葉踏む銀杏並木となりにけり★★★
11月23日(4名)
小口泰與
奥利根の棚田うるおす小夜時雨★★★
庭隅の石蕗を切り白磁壺(原句)
庭隅の石蕗を白磁の壺に挿し★★★(正子添削)
老農の猫背や畑の蕎麦を刈る★★★
廣田洋一
銀杏黄葉光撒きつつ散りにけり(原句)
銀杏黄葉光撒きつつ散りゆけり★★★★(正子添削)
銀杏黄葉が散る様子は、光をまき散らしているかのようである。光に透けたような銀杏の黄葉が今生を尽くして散る様は美しい。(髙橋正子)
団地の道一筋に石蕗の花★★★
山茶花や零れし花の光をり★★★
多田有花
<永観堂三句>
山門を入れば一面冬紅葉★★★
絞り椿江戸の湯舟の足元に★★★
石蕗の花石に巨木に寄り添いて★★★
桑本栄太郎
電線の雄叫び立つるもがり笛★★★
風の子は鬼ごつことや寒波来る★★★
つむじ風巻いて寒波の来たりけり★★★
11月22日(4名)
小口泰與
丹田を守る八十路の懐炉かな★★★
返り花小堀の渡しマスクして★★★
神の旅里の社の蒼然と★★★
廣田洋一
目貼りして煙草は外で吸ひにけり★★★
まだまだしたきことあり木の葉髪★★★
傘寿後の恙なき日々木の葉髪★★★
多田有花
冬浅き京でいただく生ジュース★★★
小春日やオープンカーを走らせる★★★
窓際のパキラへ冬の陽の淡し★★★
桑本栄太郎
時雨るるや更に色濃き冬紅葉★★★
大根のりゅうと立ち居り屋敷畑★★★★
日々の蔬菜として屋敷畑にはこまごま野菜が植えられている。大根もその一つ。土が肥え、水も十分で形は多少いびつでも良く育っている。「りゅうと立ち」の大根が頼もしい。(髙橋正子)
少年の遠き日ありぬ龍の玉★★★
11月21日(4名)
小口泰與
冬鵙や尾上の松へ靄覆う★★★
逆光を集む冬ばら風の中★★★
鳶の輪のました段畑大根引★★★
廣田洋一
目貼りして雨戸を開ける応接間★★★
一斉に街灯点る夕時雨★★★
鷹一羽小屋に佇み時雨空★★★
桑本栄太郎
綿虫のつんのめり居り手のひらに★★★
枝垂れたるしだれ桜の冬木かな★★★
春日野のひらがな歌碑や八一の忌★★★
多田有花
短日や皇帝ダリア咲き誇る★★★
経堂へ枝を差し伸べ冬紅葉★★★
控え目に鳴きつつ枝に冬の鵙★★★★
秋には猛々しい声で鳴いていた鵙も、冬になると、姿も見つけにくく、声さえも控え目になっている。そこがおかしい。鵙も自然には逆らえないのは自然界の生き物。(高橋正子)

自由な投句箱/11月11日~20日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/11月11日~20日

11月20日(1句)
★月食の後の夜明けの冬満月/多田有花
前日の夕方、月食で月の変容を見せてくれた満月は、夜明けを迎え、大事を為し終えたかのように、いっそう研ぎ澄まされた光を放っている。(高橋正子)
11月19日(1句)
★月食の東寺にかかる冬の月/桑本栄太郎
きのうは夕方6時過ぎに部分月食が見られた。研ぎ澄まされた月の光が欠けて、東寺の空にかかっている。冬月の月食と東寺と取り合わされることで、
古典的、神秘的な夜空となってた。(髙橋正子)
11月18日(1句)
★大根干す風瞭かに赤城より/小口泰與
たくあん漬けなどにするために、大根を振り分けにして竿に吊るしたり、縄で編んで吊るししんなりするまで風に当てるのが大根干し。大根を干すには、風が肝心。赤城山からの風が瞭らかに吹いてきている。赤城颪への恃みは先祖代々から。(髙橋正子)
11月17日(1句)
★吹き溜まる木の実踏むなり歩く音/桑本栄太郎
この季節、木の実がたくさん降っているのを私も目の当たりにしている。踏むと木の実が乾いているのか、歩くたび、踏むたびにパリッと音を立てる。それが、自分が歩くという行為の音。(髙橋正子)
11月16日
該当句無し
11月15日(1句)
★小春日や土手に座りて暇ありぬ/廣田洋一
小春日に土手に座ってみる。普段忙しくしている身だからこそ、小春日の温かい日差しに「暇」を感じる。「暇」という表しにくいことをよく詠んでいる。(髙橋正子)
11月14日(1句)
★火の匂う焼芋割るや屏風岩/小口泰與
屏風岩は切り立った岩で、風よけにもなるような場所であろうか。「火の匂う」焼き芋があつあつで美味しそう。「火の匂う」が何よりもリアルなのがいい。(高橋正子)
11月13日(1句)
★薪積みて消火器備へ冬構/廣田洋一
薪を積むだけでなく、消化器を備えて冬への準備が整った。用意周到の冬構えに、災害と隣り合わせの現代の生活の有り様を考えさせられる。(髙橋正子)
11月12日(1句)
★並木道見通し良きや冬構/廣田洋一
並木道がまっすぐ通っている。見通しのよさに、さっぱりとした冬構の様子が知れる。気持ちの良い句だ。(髙橋正子)
11月11日(1句)
★ベランダの明かりや二連の柿すだれ/桑本栄太郎
ベランダに干柿が二連吊るしてある。二連だけれど、たくさんの柿すだれ同様、ベランダが明るくなった。市民の簡素な生活が明るく詠まれている。(髙橋正子)

11月11日~20日

11月20日(4名)
小口泰與
雪浅間正面に見し今日小春★★★
利根川へ山風流す冬の松★★★
山風の里に住みけり神無月★★★
廣田洋一
バス停にざっと降りこむ時雨かな★★★
休耕の畑打ちたる時雨かな★★★
色紙を短冊にして目貼かな★★★
多田有花
月食を見る冬浅きベランダで★★★
月食の後の夜明けの冬満月
前日の夕方、月食で月の変容を見せてくれた満月は、夜明けを迎え、大事を為し終えたかのように、いっそう研ぎ澄まされた光を放っている。(高橋正子)
朝ごとに冬の紅葉の山仰ぐ★★★
桑本栄太郎
亀虫の張り付き逃げず冬めける★★★
少年の遠き想う龍の玉★★★
踏みしだく落葉通りやプラタナス★★★
11月19日(4名)
小口泰與
丹精の冬ばらに声かかりける★★★
山風に一糸纏わぬ枯木かな★★★
突堤に迫る波なみ冬鴎★★★
廣田洋一
返り咲く白き躑躅や紅ほのか★★★
薬局の庭に咲きたる返り花★★★
宅配便受け取る朝小春かな★★★
桑本栄太郎
綿虫の想い出淡く浮かびけり★★★
小春日や天のきらめきヘリコプター★★★
月食の東寺にかかる冬の月★★★★
きのうは夕方6時過ぎに部分月食が見られた。研ぎ澄まされた月の光が欠けて、東寺の空にかかっている。冬月の月食と東寺と取り合わされることで、
古典的、神秘的な夜空となってた。(髙橋正子)
多田有花
レンジ出る緑鮮やかブロッコリ★★★
見上げれば日差しを透かす冬紅葉★★★
開山堂冬の紅葉に取り巻かれ★★★
11月18日(4名)
廣田洋一
ラリー続くテニスコートの小春かな★★★
小春日や地元の野菜売られをり★★★
帰り花思はず声をかけにけり★★★
小口泰與
語部の宿の女将や囲炉裏端★★★
夕映えの石蕗の私語風の私語★★★
大根干す風瞭かに赤城より★★★★
たくあん漬けなどにするために、大根を振り分けにして竿に吊るしたり、縄で編んで吊るししんなりするまで風に当てるのが大根干し。大根を干すには、風が肝心。赤城山からの風が瞭らかに吹いてきている。赤城颪への恃みは先祖代々から。(髙橋正子)
多田有花
冬菜畑紋白蝶の集いおり★★★
鯖缶の水煮を加え煮大根★★★
枯れてこそ光を放つ尾花かな(原句)
「こそ」は、理屈が勝ってるように感じます。
枯れてより光放てる尾花かな★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
点滅の代わる信号冬紅葉★★★★
とんからり二段の音や木の実落つ★★★
綿虫や去年(こぞ)の記憶の戻りしか★★★
11月17日(4名)
小口泰與
山裾の蒼茫とあり冬の草★★★
麦蒔や長きすそ野に安らぎぬ★★★
冬立や神樹の影を砂利に踏む★★★
多田有花
どの家の南天の実も色づいて★★★
からすうり木守のごとく枝にあり★★★
裸木となりて古巣のあきらかに★★★★
桑本栄太郎
吹きさらす風に赤きや真弓の実★★★
誰も居ぬ池を巡るや蘆枯るる★★★
吹き溜まる木の実踏みつつ散歩かな(原句)
「散歩」に工夫がいります。
吹き溜まる木の実踏むなり歩く音★★★★(正子添削)
この季節、木の実がたくさん降っているのを私も目の当たりにしている。踏むと木の実が乾いているのか、歩くたび、踏むたびにパリッと音を立てる。それが、自分が歩くという行為の音。(髙橋正子)
11月16日(4名)
小口泰與
印伝の鼻緒の草履今日小春 ★★★
里住みの風の上州神無月★★★
おやみなき風や上州冬の山★★★
 廣田洋一
老いてなほ高みを目指す帰り花★★★
咲くほどにはかなげな色返り花★★★
小春日にもつれ合ひたる蝶二頭 ★★★
多田有花
初冬の山は日毎に色を変え ★★★
紅の山茶花一輪角曲がる ★★★
売物件の幟ありけり実南天 ★★★
桑本栄太郎
綿虫の今年も想い出持ちしかな ★★★
冬蜂のよるべ無き身を歩みけり (原句)
「身を歩み」の「を」が文法的に不自然です。
冬蜂のよるべ無き身の歩みけり★★★(正子添削)
村上鬼城の「冬蜂の死にどろこなく歩きけり」の句が先行してしまいますね。
山茶花の高き垣根や山の里★★★
11月15日(4名)
小口泰與
沼の上深き蒼空番鴛鴦★★★
山風によたよた舞うや冬の蝶★★★
枯菊や山風私語を奪ひける★★★
廣田洋一
小春日や土手に座りて暇つぶし(原句)
「暇つぶし」が、常套的な言葉なので、俳句の言葉としては、やや問題があります。
小春日や土手に座りて暇ありぬ★★★★(正子添削)
小春日に土手に座ってみる。普段忙しくしている身だからこそ、小春日の温かい日差しに「暇」を感じる。「暇」という表しにくいことをよく詠んでいる。(髙橋正子)
小春日や二人は無事に旅立ちぬ★★★
空き家にも返り咲きたるつつじかな★★★
多田有花
枯すすき後ろは遠き淡路島★★★
冬紅葉やさしき色もありにけり★★★
続々と開くよここの山茶花は★★★
桑本栄太郎
ベランダに紅の溢れや冬の薔薇(原句)
ベランダに紅の溢るや冬の薔薇★★★★(正子添削)
山茶花の白にうす紅混じりけり★★★
双葉菜の畝の筋目やどこまでも★★★
11月14日(4名)
廣田洋一
小春日和鉢から鉢へ蜆蝶★★★
風に乗り吾が庭染める落葉かな★★★
銀杏落葉キャンパスの道埋め尽くし★★★★
小口泰與
火の匂う焼芋割るや屏風岩★★★★
屏風岩は切り立った岩で、風よけにもなるような場所であろうか。「火の匂う」焼き芋があつあつで美味しそう。「火の匂う」が何よりもリアルなのがいい。(高橋正子)
滔滔の利根の川原や三十三才★★★
寒月と一番星と見合いせり★★★
多田有花
午後の陽が海はや光らせ日短か★★★★
小春空横切っていくヘリコプター★★★
青空になお赤々と冬紅葉★★★
桑本栄太郎
生垣の香りつづくや金木犀★★★
落葉松の大木凛と黄葉せる★★★★
あおぞらを見上げ銀杏の黄葉かな★★★
11月13日(4名)
小口泰與
おやみなき枯葉の音や夕明かり★★★★
遥かなる歳月過ぎし石蕗の花★★★
とも綱へとまりし鳥や散黄葉★★★
廣田洋一
冬構へ終えたる庭に客招く★★★
藁筵日に乾かして冬囲い★★★
薪積みて消火器備へ冬構★★★★
薪を積むだけでなく、消化器を備えて冬への準備が整った。用意周到の冬構えに、災害と隣り合わせの現代の生活の有り様を考えさせられる。(髙橋正子)
桑本栄太郎
小春日や土塀崩るる山の里★★★
嶺上の雲の茜や冬の宵★★★
山里の早も灯点り冬めける★★★★
多田有花
冬の蝶日差しに翅を広げおり★★★
庭石の出自はいずこ石蕗の花★★★
石蕗咲いて日向へ差し出す黄色かな★★★★
11月12日(4名)
小口泰與
炉明りに眉雪集いし大広間★★★
山風に鳶の輪二つ花八手★★★
白鳥を待つ大沼の静けさよ★★★★
多田有花
遠く見ゆ嘴広鴨と思いけり★★★
白壁が囲みし庭や石蕗の花★★★★
大鷺の群れて立つなり冬の川★★★
桑本栄太郎
冬ざれや赤き実集うピラカンサ★★★
穭穂の刈り取る頃となりぬべし★★★
水禽の水脈きらめくや今着水★★★★
廣田洋一
並木道見通し良きや冬構★★★★
並木道がまっすぐ通っている。見通しのよさに、さっぱりとした冬構の様子が知れる。気持ちの良い句だ。(髙橋正子)
破れたる障子直せし風の夜★★★
幸運を掻き寄せたきや酉の市★★★
11月11日(4名)
廣田洋一
冬構へ縄を垂らして寺の庭★★★
町中を電飾照らし冬構★★★
納屋の前薪積み上げて冬構★★★
多田有花
木枯しや沖の島まで吹いてゆく★★★
夕陽鮮やか木枯しの去りし後(原句)
句の趣向はいいです。5-7-5にまとめると、下のようになります。これをもとに、力強さやリズム感を工夫なさってください。
木枯らしの去りて夕陽の鮮やかに★★★★(正子添削)
(髙橋正子)
冬の菊群れ咲くところ日差しあり★★★
小口泰與
山巓の冬綺羅星や文机(原句)
句の趣向は★4つですが、文机が取って付けたことなって、句意が通らないのが残念です。(髙橋正子)
山巓の冬綺羅星を文机(ふづくえ)に★★★★(正子添削)
「山巓の冬綺羅星を文机にひき寄せて見る。」の句意にしました。
夕暮の眉雪集まる囲炉裏かな★★★
天窓へ朝日集めし冬の梅★★★
桑本栄太郎
二連とてベランダ明りや柿すだれ(原句)
「とて」が理屈です。ズバリ言うのがいいので、無い方が良いと思います。(髙橋正子)
ベランダの明かりや二連の柿すだれ★★★★(正子添削)
ベランダに干柿が二連吊るしてある。二連だけれど、たくさんの柿すだれ同様、ベランダが明るくなった。市民の簡素な生活が明るく詠まれている。(髙橋正子)
吹きさらす天の息吹や木の葉舞う★★★
木々の枝の色濃くなりぬ冬もみじ★★★