1月19日(日)

★日は燦と冬芽の辛夷生かしめて  正子
陽の光りを浴びて、冬を越す辛夷の芽のいのちが生き生きと輝いています。やがて春にほころぶ辛夷を思い、未来への希望を明るく抱かせてくれる御句です。(藤田洋子)

○今日の俳句
一路澄み石鎚見ゆる寒の晴/藤田洋子
行く手の一路の道が澄んで、その先に雪を冠った石鎚山が見える。寒晴れがくれたすっきりと、晴れやかな景色。(高橋正子)

○冬桜

[冬桜/横浜日吉本町]

★冬櫻飛ぶ鳥の影当りけり 宮津昭彦
★冬桜日当りて花増えてきし/大串章
★一葉の晩年日記冬桜/深見けん二
★冬桜咲いては空を曇らしむ/有働亨
★咲きつづくほかなき白さ冬桜/山田弘子
★冬ざくら朝日しづかに射しわたる/阿部ひろし
★陵や静もる朝の冬桜/青木政江
★冬桜日差せば母と在るごとし/松田雄姿
★汲みたての水ほのめくや冬桜/三橋迪子
★この深き空の青さよ冬桜/西山美枝子

★冬桜咲きいて空の美しき/高橋信之
★冬桜風受けやすき丘に咲く/高橋信之
★冬桜見ている眼を風が過ぐ/高橋正子
★冬桜どれも高くて雲に見る/高橋正子

 冬桜は、元日桜、寒緋桜などの別名がある。桜にはめずらしく緋色をしているが、一般には、冬にさく桜を冬桜と呼んでいる。
 冬桜として印象が深いのが、鎌倉報国寺にあるもので、緋色ではなく、桜色をしたもの。外国人が、枝にほちほちと咲いた小さな桜をいとおしそうに、目を近づけて見ていた。そのあと、私も近づいて眺めたが、消え入りそうに、でも確かに咲いている。あまり多く花をつけないのが見どころであろう。背景に青い空があると、いかにも、儚く美しい。
 冬桜は、バラ科サクラ属の落葉高木で、学名は Prunus x parvifolia cv.Parvifolia。「オオシマザクラ(P. speciosa)」と「マメザクラ(P. incisa)」との種間交雑種と考えられている。江戸時代の後期から栽培され、「コバザクラ(小葉桜)」とも呼ばれている。冬桜と同様に、秋から冬にかけて咲く桜に「十月桜」がある。冬桜と同じバラ科サクラ属。秋や冬に、「季節はずれに桜が咲いてるな」というときは、この十月桜であることが多い。十月桜も含めて、秋から冬にかけて咲く桜のことを総称して「冬桜」と呼ぶこともある。

◇生活する花たち「十両(やぶこうじ)・百両(からたち)・千両」(東京白金台・国立自然教育園)

1月18日-19日

1月19日

●小口泰與
黄昏の白鳥嘴(ハシ)を胸に埋め★★★★
白鳥や遥か彼方に芙蓉峰★★★
白鳥の羽をひろげし入日かな★★★

●祝恵子
左義長の傍を子どもの登園す★★★★
左義長は、子供が中心で行うものではなかったかと思うが、その子供は左義長を横目に登校している。伝統の行事も学校の日程によって主役不在のまま行われているようだ。(高橋正子)

時々は焔を返しとんど焚く★★★
小豆粥とろんと喉をとおりすぐ★★★

●小川和子
 回想
かわたれの雪原里の灯明りかな★★★
薪ストーブ燃える円居の歌留多とり★★★★
吹雪く夜の窓打つ音よラジオ聴く★★★

●桑本栄太郎
もくれんの冬芽つやめく青き空★★★
山茶花の紅の散り敷く坂の道★★★

探梅や堅きつぼみの丘の風★★★★
梅はまだかと探す探梅行は、たとえ開いた梅に出会わなくても気持ちが明るくなるものだ。丘の風は冷たいながらも日差しは仕出しに明るくなっているのだ。(高橋正子)

●小西 宏
深深(しんしん)と晴れたる空や寒椿★★★
枯木立小鳥に空の青を見る★★★

波近き風自在なり冬鴎★★★★
鴎が波に低く飛ぶ。風は自在に波をあそばせ 鴎をあそばせている。こんな渚の風景は屈託がなく楽しい。(高橋正子)

●川名ますみ
聖堂へ冬青空とアイビーと★★★★
飯桐の落葉し空は朱ばかり★★★★
ベランダの梅の莟に指す朝陽★★★

●多田有花
いつもより静かな日曜雪の朝★★★
雪の舞う城址より河口を見下ろす★★★
 <播磨国分寺跡>
天平も天正も遠し蝋梅に★★★★

●佃 康水
 全国都道府県対抗男子駅伝
寒風を切って襷の駈け抜けり★★★★ 
走者追いヘリの近づく寒の空★★★
駅伝の果てて寒さのつのりけり★★★

●古田敬二
青空へ新たな広がり枯欅★★★
餌を探す鋭き眼冬のモズ★★★
生きている証拠よ冬芽はどの枝にも★★★★

1月18日

●小口泰與
露天湯の後の薬や寒の内★★★
探梅や諾いがたき山の風★★★
静もりて街を洗いし夜の雪★★★★

●迫田和代
わが心すっかり決めて初詣★★★★
峠より下る雪道まっすぐに★★★
島々を結ぶ舟あり冬の凪★★★

●古田敬二
子離れの時遠からず龍の玉★★★
空や海の色濃き時や竜の玉★★★
青空へ香り広げて枇杷の花★★★★

●桑本栄太郎
鉄塔の嶺の空へと寒晴るる★★★★
見詰めれば天の凍雲ゆるぎおり★★★
あおぞらへ背伸び讃歌や冬芽どち★★★

●小川和子
初日今天城連山離れんと★★★
初御空海パノラマの快晴に★★★★
航跡を曳く海を飛ぶ冬鴎★★★

●多田有花
すぐそこの海を隠して寒霞★★★

鴨雑炊峠の先は雪模様★★★★
鴨打ちのあとの鴨雑炊とでも思わせる句だ。野趣味のある鴨雑炊に峠に舞う雪を奥深いものにしている。(高橋正子)

頂の切り株白く冬深し★★★

●川名ますみ
冬の日に書類をかざす勤め人★★★
しぐるればアイビー光る聖堂に★★★

窓越しにつぼみ明々鉢の梅★★★★
窓越しに見る梅の鉢植え。蕾に明々とした色が見える。待春の明るい気持ちが快い。(高橋正子)

●河野啓一
阪神淡路震災忌はや十九年の歳月が★★★
震災忌往時を思う人の群れ★★★
震災忌菊の白さが目にしみて★★★★

1月17日

●小口泰與
麦の芽や鳶を襲いし鴉二羽★★★
あけぼのの庭に綾なす氷かな★★★
麦の芽や風をあやつる鳶の群★★★

●多田有花
風なくて寒の煙はまっすぐに★★★★
ひと時風が止まる時間がある。そんなとき、当たり前ながら、あれっと気づくことがあって、煙がまっすぐ上るのもその一現象。(高橋正子)

麓よりチャイムが響く寒の昼★★★
寒風に一瞬書類さらわれる★★★

●桑本栄太郎
寒晴れや一点白き放れ雲★★★
リーダーの誰とも知れず寒すずめ★★★
枯蘆の風透き通しゆらぎ居り★★★★
「透き通し」はむしろ「梳き通し」の意味かと思う。枯蘆を梳るように風が通り抜け、蘆を揺らしている。枯蘆のあたりに漂う透明な気配。枯の清潔さだ。(高橋正子)

●祝恵子
出店にはビリケンさんいて宵戎★★★

鳥の声する森にとんどの火と煙★★★★
とんどは、田んぼや河原など、その地域でおおよそ決められた場所で焚かれる。恵子さんの句は、鳥の声のする森の広場だ。神社の境内かもしれないが、鳥の声に合わせるかのように火が弾け、煙が上る。正月気分に区切りがつく、気持ちのよい「とんど」である。(高橋正子)

バチを打つ熱演ありて冬広場★★★

●佃 康水
霜晴れや土黒々と鍬を振り
【添削】霜晴れや鍬振る土の黒々と★★★★

炎から抜けて空ゆく吉書かな★★★
喚鐘や寒満月を寺参り★★★

●小西 宏
枯枝に鳥来て鳴ける陽の光★★★★
古き枝閉ざして池の縞凍る★★★
膝の冷え指先痛き夜の机★★★

1月18日(土)

★冬桜どれも高くて雲に見る/高橋正子
寒空に冬桜が咲いている。見上げれば、ほつほつと咲く花はどれも雲と同化しているようにみえ、心は温まります。 (祝恵子)

○今日の俳句
ラディッシュの水を通せばなお美し/祝恵子
ラディッシュの紅色はそれ自体で美しいが、水に放てば、さらに紅色がみずみずしく美しくなる。小さなことだが、これも生活の楽しさ。(高橋正子)

○辛夷の花芽

[辛夷の花芽/横浜日吉本町(2013年1月12日)][辛夷の花蕾/横浜日吉本町(2012年3月25日)]

★晴ればれと亡きひとはいま辛夷の芽/友岡子郷
★風の日の白の際立ち花辛夷/鷹羽狩行
★朝空のすでにおほぞら花辛夷/林誠司
★墓のみとなりしふるさと辛夷咲く/山田暢子
★夕空にさざなみたちぬ花こぶし/貞吉直子
★こぶし咲く坂登りゆくバスの数/辻のぶ子
★花辛夷やまびこゆきてかへるかな/坂田和嘉子
★花辛夷朝の光りにふるへ咲く/勝又寿ゞ子
★人を待つ辛夷の光見上げつつ/高橋正子

 コブシ(辛夷)の花芽(広島市植物公園2月14日)
 辛夷の花芽が柔らかくひかっていた。開花期は地域の気候に左右され3~5月と幅がある。自分の住む広島県西部の山に自生しているのは、「コブシ(辛夷)」ではなく「タムシバ(匂辛夷)」だから、これは植栽されたものである。両者にほとんど違いはないが、辛夷は花の付け根に小さな葉が一つついているのに対し、タムシバの場合は葉がつかない。この地方では4月上旬に開花することが多い。いっせいに咲いて咲き終わり、また山に紛れてしまう。(ブログ「山野草、植物めぐり」より)

 コブシ(辛夷、学名:Magnolia kobus)は、モクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。別名「田打ち桜」。

◇生活する花たち「蝋梅・冬桜・さんしゅゆの実」(横横浜・四季の森公園)

1月17日(金)

 早稲田大学
★学生喫茶ジャズと会話と暖房と  正子
最近の様子はよく知らないが、寒いこの季節暖房のよく聞いた喫茶店に学生たちが大勢やってきておしゃべりに興じている。店内に流れるジャズのりずむが若者たちの熱気を投影しているようだ。平易な詠みでこの季節の風物がたくみに表現されている。共感を呼ぶ御句と思います。 (河野啓一)

○今日の俳句
寒晴れの朝日に鵯のやって来て/河野啓一
「朝日に鵯がやって来る」というのがいい。力強く鳴く鵯の声と朝日の明るさが生気に満ちている。(高橋正子)

○寒林

[寒林/横浜・四季の森公園]          [寒禽/横浜・四季の森公園]

★冬木立いかめしや山のたたずまひ 才磨 
★斧入れて香におどろくや冬木立 蕪村 
★郊外に酒屋の蔵や冬木だち 召波 
★冬木だち月骨髄に入る夜かな 几董 
★冬木立烏くひきるかづらかな 闌更 
★寒林の日すぢ争ふ羽虫かな/杉田久女 
★学園の寒林の中牧師棲む/松本たかし 
★牛乳の噴きこぼれをり冬木立/長谷川櫂 
★野の入日燃えて寒林の道をはる/水原秋桜子

★寒禽となり了んぬる鵙一羽/竹下しづの女
★寒禽の叫び古墳の揺るるほど/大串章
★寒禽の声の飛び交ふ雨の中/片山由美子
★寒禽の声はお隣かも知れぬ/稲畑汀子
★影と来て影一点となる寒禽/豊田都峰  
★寒禽の嘴をひらきて声のなき/長谷川櫂

★寒林を行けばしんしん胸が充つ/高橋正子
★寒禽の止まりし枝の丸見えに/高橋正子

寒林とは、冬枯れの、寒々とした林。(デジタル大辞泉の解説)
「寒いですね」というと「寒中だから」という。そう云われれば、冬であり、寒中だから寒さも厳しくて当り前なのでしょう。これで気温が35℃もあったりしたら「どうなってっの」と気候変動を心配しなければなりません、寒くていいのでしょうね。寒林、冬木立が寒に入った状態だそうですが、あえて説明するならば「葉を落とし尽くしてしまった落葉樹の冬の林の蕭条(しょうじょう)したさま」ということになるようです。木だって寒いでしょうから(?)、寒くないように家の中に入れてあげました。すこしでも温かくなるようにというささやかな気持ちなのですが「小さな親切大きなお世話」なのかもしれませんね。やはり、冬木立、冬木群(ふゆこむれ)は自然のままがいいようです。(ブログ「as time goes by」より)

◇生活する花たち「獅子頭(寒椿)・藤冬芽・老鴉柿(ロウヤガキ)」(東京・小石川植物園)

1月16日(木)

★寒空の青に鳥らの飛ぶ自由  正子
寒空の広々とした澄んだ大空は鳥たちが自由に飛ぶに十分な雄大さです。(高橋秀之)

○今日の俳句
冬草に海の青さが押し寄せる/高橋秀之
海の岸辺近くの冬草。日にかがやく海の青が強くて、冬草にまでその光が及んでいる景。テーマは「冬草」。(高橋正子)

○桜冬芽

[桜冬芽/横浜市緑区北八朔(2013年1月9日)]_[桜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]

★蔵したる桜冬芽の守る句碑/稲畑汀子
★雨雫桜冬芽に小宇宙/堀佐夜子
★城跡へ桜冬芽の未だ固し 惟之
★尖りしは桜冬芽の力なり/高橋正子
★青空に桜冬芽の赤味帯ぶ/高橋正子

 2月9日に海老谷桜の再生状況について、専門家や地元の皆さんと検討会を開催しました。その内容について報告します。
 海老谷桜の状況は、各枝の色あいや艶(つや)も良く、新しい枝も延びてきていますし、枝には冬芽(とうが 花や葉のもとになる芽)もしっかりと付いて膨らみ、春に向けた準備が確認できます。全体的には、順調な回復をみせていると言えます。しかし、根や幹枝の状況や冬芽の付き方を細かく観察すると、現在の再生は、人間の助力によるところが大きく、今後も引き続き支えていかなければならない状況であると判断され、依然として、その再生には予断を許さない状況にあります。
 開花のためのエネルギー消費は、大きなものがありますが、最も大量に消費するのが、開花後の「実」を付ける営みです。そのため、「実」を付けさせないように人間がコントロールすることが大切であるとの認識で一致しました。その方法としては、海老谷桜自身の力を引き出すために、自然な形で開花させた後、速やかに花を摘み取る方法と最初から人間がコントロールする形で花芽(はなめ)を摘み取り、花を咲かせない方法があります。この点について検討した結果、市としては、冬芽が成長して花芽と葉芽(はめ)に識別できる3月後半の段階で、花芽の量や付き方を調査し、最終的に判断することにしました。
多くの皆さんが花咲く海老谷桜の姿を思い、ご支援、ご心配をいただいておりますが、引き続き見守っていただきたいと思っております。(浜田市のホームページより)

◇生活する花たち「寒桜・房咲き水仙・鈴懸の実」(神奈川・大船植物園)

1月15日-16日

1月16日

●小口泰與
寒声や風に逆らう鴉二羽★★★

せんべいの売上伸びし空っ風★★★★
空っ風が吹く日は、炬燵やストーブを囲み、熱いお茶を呑み、せんべいを食べることが多いのだろう。勢いせんべいがよく売れる。結構なことだ。(高橋正子)

夕づきて干かごの餅揺れにけり★★★

●小西 宏
土黒く載せて雲母(きらら)の霜柱★★★★
霜柱が黒土を持ち上げていることがある。黒土に混じって雲母が輝いていることもあって、自然の成り行きながら驚かされる。(高橋正子)

冬晴の梯子に籠り松手入れ★★★
枯枝に柿刺してあり鳥の為★★★

●桑本栄太郎
赤き実の空へ干乾び寒晴るる★★★
水色の空に背伸びや冬芽どち★★★
水禽のつがいの離れ呼び合える★★★

●多田有花
むかし綿いまはダウンのちゃんちゃんこ★★★

寒の夕沖金色に光りけり★★★★
入日間際の日が沖に反射し、沖は金色になる。寒の夕が金色を渋くさせて、落ち着いている。(高橋正子)

万両や古刹が伝える略系図★★★

1月15日

●小口泰與
うま酒の信濃にありて冬の月★★★
切炬燵玉子ごはんのほっかほか★★★

藁仕事煤のつきたる自在鉤★★★★
炉辺での藁仕事はが昔ながらに続いているのも貴重なことだ。炉の上にぶら下がる自在鉤もさすがに煤けて年代を感じさせている。(高橋正子)

●多田有花
土を崩せばきらやかに霜柱★★★
寒の陽を浴び石段を登る★★★

池凍り真昼の日差し跳ね返す★★★★
凍った池が跳ね返す真昼の光の白い世界が洒落ている。「真昼」なので光に混ざりけがない。(高橋正子)

●桑本栄太郎
寒晴れの起重機高く日の中へ★★★★
起重機は機械でありながら、人間的な雰囲気がある。寒晴れの日の中に突き出て作業をしている様子は、見ていても面白いものだ。(高橋正子)

一月の真中や川の涸れ尽きぬ★★★
水色の空に風花舞い揚がる★★★

●河野啓一
網張って虫よけしたる冬野菜★★★
冬ざれの並木道にも鳥の影★★★

稜線をそぎ落としたる雪六甲★★★★
雪が積むと山稜がくっきりとする。無駄をそぎ落としたような厳しい姿を見せる。雪嶺の厳しい美しさである。(高橋正子)

●小西 宏
昼どきの物思いして雪を待つ★★★
探梅の谷地深きなる薄緑★★★

太箸に粗(あら)を突ついて鮟鱇鍋★★★★
「太箸」がいい。酒が進み、話が湧いている男連中の囲む鮟鱇鍋だろう。(高橋正子)

1月15日(水)

★正月の山の落葉のかく深し   正子
正月の山は既に木の葉もすっかり落葉してしまっていることでしょう。山路の落ち葉の嵩を見て「かく深し」と感嘆の声が聞こえてきそうです。里の暮らしとは少し離れた寒の季節の静寂な山中を思い起こします。(佃 康水)

○今日の俳句
牡蠣揚がる瀬戸の潮(うしお)を零しつつ/佃 康水
広島は牡蠣の産地として知られているが、牡蠣の水揚げを詠んだ句。潮を零しながら、しかも瀬戸の、と具体的な詠みに情景がくっきりと浮かび上がり、臨場感が出た。(高橋正子)

○神奈川・大船植物園
 1月12日、大船植物園(フラワーセンター)を信之先生と訪ねた。水仙と寒椿がお目当ての吟行と写真撮影。
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f598/

○梅冬芽

[梅冬芽/横浜日吉本町(2013年1月6日)]_[梅の花蕾/大船植物園(2014年1月12日)]

★細幹の冬芽の滲み出す如し/行方克己
★冬芽粒々水より空の流れゐつ/野澤節子
★人眠る頃も一気の冬芽かな/阿部みどり女
★雪割れて朴の冬芽に日をこぼす/川端茅舎
★高空の風の冬芽となりにけり/川合憲子

★雲刷かれ梅の冬芽の枝真すぐ/高橋正子
★剪定の木口あたらし梅冬芽/多田有花

▼梅冬芽/2012年12月11日(多田有花)
寒波は和らいだようです。ここ数日で落葉が進みました。冬至まであと十日、まだ日は短くなっていきますが、日没が最も早いのはここ二三日ほどのことです。落葉樹が裸になってしまうと、あとは「春を待つ」という感覚になります。
増位山の梅林のまわりの木々も落葉しました。梅も11月の間はまだ葉を残していましたが、今日見ると、すっかり葉を落としつくしていました。早生から晩生までいろいろな種類の梅があります。葉を落とすのもやはり早生が先です。葉を落とした梅の間を歩いていると、もう花芽が準備を整えて整然と枝に並んでいました。
★散り終えし枝にはしかと梅冬芽/多田有花

▼梅冬芽/2009年1月9日(多田有花)
今日も穏かで風も無く日中は暖かな一日でした。早朝はそれなりに寒いのかもしれませんが、出勤しないので、その寒さも昔のことになりました。ペットボトルに入れたぬるま湯をフロントガラスにかけて、霜を溶かしたのもなつかしい思い出です。
増位山の梅林の梅が膨らんでいます。紅梅と白梅、それぞれに花の色がはっきりわかり、もう間もなく綻ぶというところまてきています。春の接近を告げてくれる花ですね。楽しみです。(多田有花)
★紅白を見せて膨らむ梅冬芽/多田有花

▼梅冬芽/2007年1月9日(gogogobar)
ちょっと遅い仕事始めの日。岐阜まで朝、往復しました。朝6時前はまだ夜。月と星が輝いていました。一宮あたりで日の出。名神から東海北陸自動車道に分かれると目の前には恵那山、ちょっと左手に御岳、乗鞍。白く大きな姿が遠望できる。岐阜の茜部では暖かい朝。恵那の雪景色とは全く別世界でした。私の家のまわりでは、杉も檜木も白砂糖をまぶしたお菓子のようにおいしそう。梅の木は冬芽を大事に春の準備をしているようだ。

◇生活する花たち「辛夷の花芽・水仙・千両」(横浜日吉本町)

1月14日(火)

★水仙を活けしところに香が動く  正子
水仙の活けられてある静かな座敷。人のよぎる度に、あるいはちょっとした風の気配に、甘い香りが揺れ動き届いてくる。水仙のもつ高雅で安らかな香気。 (小西 宏)

○今日の俳句
枯原を高さ自由に熱気球/小西 宏
広い枯原の上に熱気球が、さまざまに浮いている。「高さ自由に」はのどかな景色で、夢がある。(高橋正子)

○寒椿

[乙女椿(寒中に咲く椿)/横浜日吉本町] [寒椿(山茶花との交雑種)/ネットより]

★竪にする古きまくらや寒椿 野坡
★折り取つて日向に赤し寒椿 水巴
★瀞の岩重なり映り寒椿 石鼎
★寒椿少しく紅を吐きにけり 青邨
★寒椿咲きたることの終りけり 風生
★寒椿落ちたるほかに塵もなし 悌二郎
★寒椿月の照る夜は葉に隠る 貞
★寒椿線香の鞘はしりける 茅舎
★ことごとに人待つ心寒椿 汀女
★くれなゐのまつたき花の寒椿 草城
★何といふ赤さ小ささ寒椿 立子
★寒椿けふもの書けて命延ぶ 林火
★園丁の昼煙草寒椿かな/村山古郷
★寒椿落ちたるほかに塵もなし/篠田悌二郎

★寒椿というや雪の公園に/高橋正子

寒椿は、広辞苑によれば、(1)寒中に咲く椿と(2)ツバキ科の常緑中低木とに分けられている。(1)寒中に咲く椿は、乙女椿(おとめつばき)・大神楽(だいかぐら)・侘助(わびすけ)などであり、(2)ツバキ科の常緑中低木は、椿と山茶花の交雑種とされるツバキ目ツバキ科ツバキ属のひとつの「寒椿」である。ツバキ目ツバキ科ツバキ属の「寒椿」は、「山茶花」との区別が難しく、低木で枝と葉に毛がある。花は紅色の八重咲きで、やや小さく、11月~1月頃開花する。

◇生活する花たち「獅子頭(寒椿)・藤冬芽・老鴉柿(ロウヤガキ)」(東京・小石川植物園)

1月14日

●小口泰與
天碧く雪の赤城や街は風★★★
しわしわの土に朝日や寒烏★★★★
山風に言葉奪われ探梅行★★★

●井上治代
ちぎり絵の紫清し冬菫★★★★
冬菫は、花のすくない真冬にもで花を咲かせてくれる。ちぎり絵にされた冬菫の紫は、この季節「清し」というにふさわしい。季節がそう感じさせてくれる。(高橋正子)

冬日和寡黙な夫と農作業★★★
臘八會父の忌日の近づきぬ★★★

●桑本栄太郎
大学の赤き煉瓦や寒の晴れ★★★★
寒晴れの真っ青な空に、大学の煉瓦の赤が印象的だ。寒の晴れの下で学問の厳しさと大学の権威が今も感じられる赤煉瓦だ。(高橋正子)

廃屋の捺染工場や枇杷の花★★★
剪定の切り口晒し寒波来る★★★

●多田有花
はるばると遠くに寒九の海光る★★★★
寒に入って九日目、寒さも極まってきた。遠く眺める海の光り具合も寒九の光なのだ。(高橋正子)

頂にひと山向こうの雪を見る★★★
まっすぐな霜の道ゆくセーラー服★★★

●小西 宏
枯芝の日向に白き月見上ぐ★★★
冬枯の小山に赤き陽の残り★★★
枯枝に月彷徨える雲明かり★★★