■1月月例ネット句会入賞発表■(2024年)

■1月月例ネット句会入賞発表■
2024年1月14日
【金賞】
34.冬銀河ピアノの音色の軽くなる/髙橋句美子
冬銀河の冴えた小さな光と、ピアノの軽やかな音色が通いあい、宇宙的な想いにさせられる。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
04.ともがらと火の粉を払うとんどかな/弓削和人
伝統行事である「とんど」が、いまも生き生きと伝えられているのは、嬉しいことだ。「ともがらと火の粉を払う」の実景がそれをよく物語っている。(髙橋正子)
14.一望す阿蘇の山々冬の空/高橋秀之
雄大な阿蘇山の山々とその上に広がる冬の空を、一望して、それを句に収める作者の大らかな把握が快い。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
27.蝋梅の活けられ花屋の大き甕/吉田 晃
正月前後から咲き始める?梅は、香りが高く、枝ぶりも自由である。?梅の枝は大きな甕に活けられるのがふさわしい。花屋の?梅も大きな甕に入れられ、売られている。(髙橋正子)

29.屠蘇器しまう丁寧に包み込み/祝 恵子
屠蘇器はその家に何年にもわたって使われてきたもの。その出し入れはたいてい主婦に任される。和紙や絹布に丁寧に包んでしまう。
「包み込み」と、さらに念がいれられてしまわれる。(髙橋正子)

33.四分の三世紀生き寒の入り/柳原美知子
四分の三世紀とは、七十五年。寒の入りを機にさらに寒さは厳しくなる。四分の三世紀生きた身をもって、それに突入する。そこに揺るがぬ固きものが感じられる。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
04.ともがらと火の粉を払うとんどかな/弓削和人
とんど焼きと云えば、家にある松飾りや注連縄をみな持ち寄り、焚き上げを行う行事である。先ずその場に行けば、暗い夜空に火の粉が高く上がり、大きな焚火が想われるのです。一緒に行った友人と火の粉を払います。(桑本栄太郎)
お正月に行われる火祭りの行事。松飾や注連縄などを燃やす行事を友達たちと盛んに燃やし、1年を無病息災を祈る。また,書初めなどを燃やすことを古書揚といい、燃えながら高く舞い上がると、書道の手が上がるという俗信がある。(小口泰與)

27.蝋梅の活けられ花屋の大き甕/吉田 晃
1月になれば蝋梅が咲き始めます。それをさっそく大きな甕に活けて店先に飾っておられるのでしょう。近寄ると蝋梅の馥郁とした香りに包まれます。(多田有花)
冬空に枝を伸ばし甘やかな香を放つ蝋梅、それが花屋に活けられるとなれば、やはり大きな甕が合うでしょう。おおらかに冬の花を挿す、趣味の良いお店に、心惹かれます。(川名ますみ)

34.冬銀河ピアノの音色の軽くなる/髙橋句美子
満天に広がる冬銀河がピアノの音色も軽く響くような大きな世界を作っていると感じます。(高橋秀之)
澄み切った冬銀河へと立ち昇っていくピアノの音色の美しさが想われます。やがて大空と溶け合い、眠れるものたちへの鎮魂の歌を奏でるようです。(柳原美知子)

14.一望す阿蘇の山々冬の空/高橋秀之
29.屠蘇器しまう丁寧に包み込み/祝 恵子
33.四分の三世紀生く寒の入り/柳原美知子
35.七草の緑鮮やか巡る日々/髙橋句美子

【髙橋句美子特選/7句】
01.初霜や子犬のふっと居なくなる/小口泰與
 子犬も寒い朝が初めてなのか、元気な様子が想像出来ます。(髙橋句美子)
 子犬が初霜の頃合いに、戯れ遊びはねているうちに居なくなる。親犬のもとに帰る情景がほほえましい。(弓削和人)

06.日の暮れしまぎわに農婦夕焚火/弓削和人
羽後国と以前句にされていたので、秋田県にお住まいでしょうか?今頃は田畑にも雪が降り積もっていることでしょう。
雪がやみ夕闇が迫るなか田畑で焚火をされているのですね。(多田有花)

37.真新しきマフラー巻いて参拝す/西村友宏
初詣なのでしょう。新年が明けて真新しいマフラーをおろして気持ちを新たに参拝する気持ちよさがあります。(高橋秀之)

14.一望す阿蘇の山々冬の空
24.オオバンの群れて黒々冬萌に
26.七種の粥のほのかなうす緑
27.蝋梅の活けられ花屋の大き甕

【入選/13句】
03.霜防ぐ藁ぎょうさんや幼稚園/小口泰與
幼稚園の庭にある植木などに藁囲いがしてある。それもぎょうさんの藁で。先生や父兄が囲ったものでしょうか。温かい気持になります。(祝恵子)

07.倒壊の家屋あまたや寒の雨/桑本栄太郎
元日早々の能登半島の大地震。被災地に降る寒の雨に二次被害が心配されます。一日も早くライフラインが復旧し、被災された方々が日常を取り戻せるよう心より願っています。(柳原美知子)

12.定刻に集える笑顔初句会/廣田洋一
「あけましてめでとうございます」からはじまったであろう初句会。今年もまたおなじみのメンバーがそろって初句会を迎えられました。お互いの息災を喜びつつ、華やかな気持ちで句会が始まりました。 (多田有花)

13.初乗車若葉マークの子の運転/高橋秀之
息子さんが運転免許を取得されたのですね。そして新しく車も購入された。その車にご夫婦そろって乗り込まれたのでしょう。お正月がさらに華やぐ瞬間です。 (多田有花)

16.背を起こし睫毛に眩し初日影/川名ますみ
長く病床にあられる詠者です。それでも元日は背をのばして座り初日を拝まれました。気概を感じます。(多田有花)

17.初笑い静かな男のヘルパーと/川名ますみ
ふだん物静かな男性のヘルパーさんがきてくれ、思いがけず面白いことを言って初笑いをさせてくれたうれしさ。温かい気持ちが伝わってきます。(柳原美知子)

19.霜溶けてゆく陽の当たるところより/多田有花
朝日が差し、日陰の霜を残して溶けてゆく。当然と言えば当然であるが、自然の働きを見逃さず、誰もが見逃してしまうところを平易な言葉て詠んだことに心動かされた。 (吉田 晃)

21.中天に三日月浮かべ寒茜/多田有花
寒々とした寒の夕方の景色が良く見える。三日月が効いている。(廣田洋一)
三日月の鋭さと鮮やかな夕焼けがマッチした綺麗な光景が目に浮かびます。(西村友宏)

26.七種の粥のほのかなうす緑/吉田晃
新暦の1月7日は冬の真っ只中ゆえ七種は買い求めるしかありません。でも、それで作られた七種粥のうす緑からは春遠からじの気持ちを感じられますね。 (多田有花)

02.期し方を思い起こせし雪眼鏡/小口泰與
06.日の暮れしまぎわに農婦夕焚火/弓削和人
13.初乗車若葉マークの子の運転/高橋秀之
18.豚汁のレシピ書き足し初雪に/川名ますみ
31.解体さる鮪取り合う尾の部分/柳原美知子
37.真新しきマフラー巻いて参拝す/西村友宏

■選者詠/髙橋正子
23.水鳥の流れその影流れける/髙橋正子
流れに乗って気持ちよさそうに泳ぐ水鳥にそそぐ冬の光と影、流れる水の透明感が感じられ、印象派の絵を見るようで心惹かれます。(柳原美知子)

22.鴨の声水にひびきてほのかなり
23.水鳥の流れその影流れける
24.オオバンの群れて黒々冬萌に

■選者詠/髙橋句美子
35.七草の緑鮮やか巡る日々
子供の頃から親しまれていた七草と七草粥、お父様を亡くされて目にする七草の緑の鮮やかさに、来し方の感慨を覚えられたことでしょう。巡る日々に実感がこもっています。(柳原美知子)
36.マフラーを幾度も試す誕生日
誕生日のプレゼントはマフラー。それ巻いて初詣に行かれた。「真新しきマフラー巻いて参拝」されたのは久美子さまですね。
初詣がよりほほえましいものになります。(多田有花)
34.冬銀河ピアノの音色の軽くなる
互選高点句
●最高点句(7点)
27.蝋梅の活けられ花屋の大き甕/吉田 晃
次点句(同点3句/5点)
04.ともがらと火の粉を払うとんどかな/弓削和人
21.中天に三日月浮かべ寒茜/多田有花
34.冬銀河ピアノの音色の軽くなる/髙橋句美子
集計:髙橋正子
※1月16日の集計により、最高点句が変わりました。
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。

■1月月例ネット句会清記■

■1月月例ネット句会清記■
2024年1月14日
39句(13名)

01.初霜や子犬のふっと居なくなる
02.期し方を思い起こせし雪眼鏡
03.霜防ぐ藁ぎょうさんや幼稚園
04.ともがらと火の粉を払うとんどかな
05.湖の霧立つ朝や浮寝鳥
06.日の暮れしまぎわに農婦夕焚火
07.倒壊の家屋あまたや寒の雨
08.白き実のナンキン櫨や冬日燦
09.寒風の田面駆けゆく田道かな
10.早梅の香りに惹かれ女学生

11.新年の龍頭の水や水琴窟
12.定刻に集へる笑顔初句会
13.初乗車若葉マークの子の運転
14.一望す阿蘇の山々冬の空
15.門松が二つ迎える別府の宿
16.背を起こし睫毛に眩し初日影
17.初笑い静かな男のヘルパーと
18.豚汁のレシピ書き足し初雪に
19.霜溶けてゆく陽の当たるところより
20.日差し明るし寒風の強けれど

21.中天に三日月浮かべ寒茜
22.鴨の声水にひびきてほのかなり
23.水鳥の流れその影流れける
24.オオバンの群れて黒々冬萌に
24.酢飯切る甘き桶音冬の夜
26.七種の粥のほのかなうす緑
27.蝋梅の活けられ花屋の大き甕
28.家族増え動画見ながらお正月
29.屠蘇器しまう丁寧に包み込み
30.久々に大根の葉を刻む音

31.解体さる鮪取り合う尾の部分
32,新年の部屋に朝日と篳篥の音
33.四分の三世紀生く寒の入り
34.冬銀河ピアノの音色の軽くなる
35.七草の緑鮮やか巡る日々
36.マフラーを幾度も試す誕生日
37.真新しきマフラー巻いて参拝す
38.数の子を噛む音やめば静かな夜
39.味染みた煮大根のやわらかき

※互選をはじめてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。

1月14日(日)

晴れ
●1月月例ネット句会
●正子投句
オオバンの群れて黒々冬萌に 正子
鴨流る映れる影も流れけり  正子
鴨の声水にひびきてほのかなり 正子
●暮れからこの正月明けにかけて、鶴見川に3度出かけた。はじめは矢上川に鴨を見に行くだけのつもりが、ついに矢上川と鶴見川の出合まで川沿いに歩いて面白かったので、3度来ることとなった。多分、こんどは河口のほうへ行くと思うが。
合同句集を送って、そのお礼状にいろいろな励ましの言葉をいただいた。これに応えなくてはと思い、鶴見川が面白いし、「鶴見川雑記」を書こうと言う気になった。しかし、夜になり冷え込んで、この意気込みは失せた。
最近、何を読むにも、読み込みに集中力を欠いているのは確か。ついつい読み流す。お礼状も一度はさっと読んでしまうが、文面が目に残っているので、二日後ぐらいに、はっと言葉の本意は違うところだったと気づく。申し訳なくもお礼を書く方向を間違えたという自己嫌悪に陥る。

1月13日(土)

晴れ
●12時45分の、この前と同じバスで鶴見川へ出かける。バス停を降りて歩く道も、綱島北ポンプ場の手前を右に折れて鶴見川の土手に上るのも同じ。送水管のある人道橋があるところから、右手の土手を芭蕉の句碑がある方へ歩く。川にはオオバンもヒドリ鴨もいない。矢上川のほうに行っているのかとも思ったが、今日は芭蕉の句碑まで歩くのが目的なので、そのまま1キロほどあるくと陸にオオバンの群れが餌を啄んでいる。そばを通り過ぎるときよく見ると、ヒドリ鴨が混じって餌を食べている。川の浅瀬らしいところに、その姿が鵜に見える黒い鳥が四羽。四羽そろって川向こうに首を向けている。ハクセキレイも、カモメも飛んでくる。さらに歩くとこの地点は河口から8kmだという鉄の立杭がある。新幹線の鉄橋は土手を横切り、そこより先に行くには土手を下らないといけない。
ここまで来て、空が曇ってきた。天気予報を思い出したが、午後は雨か、雪かと。リュックから傘を取り出す。傘に雨が当たる音がぱらぱらとするが、アスファルトを舗装した土手下の道はそれほども濡れない。
新横浜駅からの新幹線が鉄橋をひっきりなしに通る。新幹線が通るたび見送るが、郷愁のようなさびしさが湧く。遠くへ連れて行ったもらいたいような気持になる。向こうの鉄橋を東横線や相鉄線がことこと渡るのはただそのままの眺めであるのに、新幹線の起こす風の音はなんだというのか。
 新幹線の過ぎし音さえ冬深む  正子
 鴨の声水にびびきてこちらまで 正子
 鷭の群黒ぞろぞろと冬萌に   正子
2キロほど川上へのぼったところに変電所がある。変電所をすぎると、新綱島駅に近い感じだったので、土手を下り、芭蕉句碑を探す。旧家の近くにあると地図で見たが、句碑のありそうなあたりは、道路や調整池の工事中で旧家の近くへはいけない。工事柵から旧家の方を見ると、旧家の門から入ってすぐのところに句碑らしい石碑があり、板の看板がある。遠くからスマホに写真をとって後で拡大して句を読むつもりであったが、読めなかった。これが地図の芭蕉句碑なのだろうと思う。このお屋敷のすぐ近くが新綱島ビルだった。このビルに上がり、下を見ると東急バスが止まっている。すぐ下りて行って乗ったが、発車間際だった。行く先はほとんどが、日吉駅東口。このバスもそうだった。バスは、はじめての通りを通って東口まで。歩数計で歩いた距離をみると3.4キロ。
帰宅してオオバン、ヒドリガモ、鵜についてネットで検索。オオバンは水鶏の仲間で、季語「鷭」は夏。だたし、冬は群れをつくる、とある。この冬見たオオバンは、いつも群れをつくっていた。ならば、群れのオオバンは季感としては冬か。ヒドリガモはシベリアからの冬鳥。他の鳥に混じるらしい。この情報も目で確認している。鵜は河鵜らしく、鵜飼に使われるのは海鵜で、河鵜は数が少ないらしい。
思い出して、この前矢上川沿いの民家の雑木に来たジョウビタキについても調べた。一瞬山雀かと思った鳥だが、羽に白い班があるので、紋付鳥とも呼ばれるジョウビタキに違いない。このところのひとり歩きに、いろんな鳥が舞い込んで楽しみが増えた。

1月11日(木)

曇り
●家にいてばかりでは、いけないと思い、曇り空で寒そうではあるが、矢上川の放水門あたりの水はゆたかなプランクトンでなみなみとして、鴨やかもめも元気かもしれない、と出かけた。
昼前、寒空を見上げつつ鶴見川と矢上川の合流するあたりの鴨はどうなっているか見に行った。綱島街道の箕輪舟下のバス停までは家から3駅。ここまでバスで行き、そこから矢上川に向かって歩く。歩いているうち、この前来た街にきた。バス停前のたばこ屋に見覚えがある。となると、鶴見川はすぐそこになる。矢上川でなく、鶴見川にでる。川の土手に上る小さい階段にすぐ行きつくと川が見えた。オオバンが30羽以上いる。ヒドリ鴨も同じぐらいが混在して泳いで、陸にも上がって餌を食べている。土手を降りると鴨たちの黒い糞だらけ。よく見ると黒ではなく緑がかった黒。踏まないように気を付けて歩く。
アオサギ、ハクセキレイがいる。だれも来ないので、川風は寒いが座って、鴨やオオバンの様子を眺めた。オオバンが時々鳴く。鴨たちはこちらに気づいているようでもあるが、陸で餌を無心に漁っている。
しばらく座っていると向こうからリハビリで歩いているのか、老人がこちらに来た。近所の人らしいので、川の様子を聞きたいので「こんにちは。リハビリですか。」と挨拶をすると、返事を返してくれた。自分は板橋を自転車で渡っていて、橋がバウンドして自転車ごと転び、自転車にしがみついたばかりに、サドルに座ったままだったので、お尻の骨を骨折して3か月寝たきりだったと言う。「歩けるようになってよかったですね。この川、オオバンや鴨がいていいですね。」と言うと、「よく知ってるなあ。」と。「俳句を作っているので、少しは知ってますので。」「そうか。わしの家の近所に野鳥の会の会長がいるんで、オオバンだのコバンだの教えてくれる。いつも首にカメラを提げているがなあ。」もしや、その人は鶴見川近くで、チョウゲンボウや、オオタカ、ノスリがいると案内していた人ではと思った。
矢上川と鶴見川の合流地点まで老人と歩くと大きな裸木がある。「いい形の木ですが、なんの木ですか。」と聞くと「胡桃」だと言う。「じゃあ、秋になったら実がなるので来ますよ。」と言うと、いや「夏においでなさい。いい木陰ができるから。」と。行きどまりなので、土手から上がるところがないか見ていると、「あなたに、詩吟を一つ歌ってあげよう。」「ベンセイ シュクシュク ヨル カワヲ ワタル しか知りませんけど。」と言うと、しばらく川を見ていたが、「意味がわからんとなあ。」と言って「山川草木」をうたってくれると言う。寒風の中で歌う声に「山川草木」と「風なまぐさし」が耳に残った。年期を積んだ歌い方のように思えた。台湾で戦が終わって休むときにその隊に詩人がいて作った歌だという。
帰宅してネットでしらべたら、乃木希典の漢詩で、詩吟では知られているようだ。台湾の戦の話ではなく、大連の南山の日露激戦の地での話。
詩吟を行きずりに歌ってくれるとは、あまりにも不思議な体験。
金州城 乃木希典作
山川草木 転荒涼
十里風腥し 新戦場
征馬前まず 人語らず
金州城外 斜陽に立つ
きんしゅうじょう のぎまれすけ・さく
さんせんそうもく うたたこうりょう
じゅうりかぜなまくざし しんせんじょう
せいばすすまず ひとかたらず
きんしゅうじょうがい しゃようにたつ
詩の意味
 山も川も草も木も砲弾の跡が生々しく、見渡すかぎり荒れ果てた光景になっている。戦いがすんだ今もなお血生臭い風が吹いている。
 私が乗る軍馬は進もうとせず、兵士もまた黙して語らない。夕陽が傾く金州城外にしばらく茫然とたたずんでいた。
鑑賞
金州城外の無惨な戦場の跡
 本題は「金州城下の作」といいます。金州の南山は日露両軍が死闘をくりかえした激戦地で、山野は血で染まったのです。乃木将軍の長男勝典(かつすけ)もここで戦死する。将軍は南山に登り、山上より戦死兵の墓標が林立する地を望み、夕日をあびて万感の思いで茫然と立っていた。日本軍はここから南下して旅順を攻撃したのです。

1月10日(水)

晴れ
●「前書きのある俳句」について俳壇より原稿依頼。2月14日締め切り。
「前書き」について『俳句 現代俳句辞典』(角川書店/昭和52年9月16日発行・編集人鈴木豊一)で調べる。「前書き」の項は草間時彦が担当。必要なところ、ほとんどだが、ノートに抜き書きした。これを踏まえて俳句を作る。
この辞典はよくできていて、俳句の疑問によく答えてくれる。鈴木豊一氏が編集人。名編集長と言われた方なので、それだけの値打ちのあっていつもずいぶん助けられている。『俳句編集ノート』(鈴木豊一著/柘榴社刊2011年)はいつかどこかで読んで、非常にいい本だと驚いたことがある。これが欲しくてネットで探すが、品切れで見つからない。もう、手に入れるのは無理かもしれない。西垣脩のところを読んだのだと記憶しているが、実際生身の人物と会っているので、人物に肉薄していて、著書や資料だけでは、とても敵わないという思いがした。

1月9日(火)

晴れ
●朝、ラジオを聞いていると目白の田中邸が火事になったと言うニュースが入った。あの目白御殿が、と思ったが、真紀子氏が線香をあげて、そのあとガラスが割れる音に火事と気づいたと言っておられた。仏壇からの火事かもしれない。
毎日仏壇に火を灯しているが、気をつけなければいけない。蝋燭は線香をつけたらすぐ消してLEDの蝋燭にしているが、「線香をあげて」というのが、「仏壇にお参りをして」の意味なのかもしれないが、文字通り線香となると、線香もよほど気をつけないといけない。線香もLEDのがあるがそこまでしてとも思う。
●昭和の象徴でもあった、田中邸の焼失は、貴重なものもいろいろあったのだろうと思うが、時代の瓦解を目の当たりにしたような気持になった。

1月8日(月)成人の日

晴れ
●動く成人の日。以前は1月15日が成人の日だった。それからいろいろ変わったが、今年は今日が成人の日。
●夕方句美子が来る。友達から東大寺二月堂名物行法味噌をもらったと、持ってきた。東大寺に古くから伝わるおかず味噌とのこと。ごぼうや大豆などが入った赤みそ風の甘いもの。毎朝ご飯に載せて食べると一日の活力になるらしい。
友達と都庁に行ったので、地方のパンフレットをもらってきたと、『久万高原アソビ』と『とべ陶街道をゆく』を持ってきてくれた。どこも日常的によく行った場所なので、今、松山か砥部にいるような感覚になった。

1月7日(日)七草

曇り
●七草。七草粥はこれまで七草が揃わなくても芹だけの粥でも炊いてきたが、今年はパス。胃腸の調子がよくなくて、なにをする元気もない。薬を飲んで治った気がするが、なんとなく不調。
●2024年はAIによって世の中どう変わるか、と言う話を聞いた。AIが作ったものとそうでないかを判断するのもAIがするだろうという結論で終わった。
俳句の評価と添削をネット上で毎日毎日しているが、これこそ生成AIにやってもらいたい。ちなみに人間の先生が俳句を添削すると、一般には3句千円と言う相場が出ている。毎日3句なら、一日千円。一月3万円。一年36万円。AIに頼めば、おそらくこのくらいの額を要求されるであろうが、これに文句は言わないだろう。なぜなら、AIは人間ではないから、平等で、客観的で、多くの「場合」を持っているから。人間なら、東京大学を出て(京都大学には悪いが)、著名な賞を受け、ある程度の見目の良さを持ち合わせていなければ、なかなか人はお金は払わない。そういうステータスを求める人たちには、生成AIで十分だと思う。こうなれば、俳句もちょっと面白い。