■4月ネット句会■
■入賞発表/2014年4月7日■
【金賞】
★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
楓の花は、新緑の季節に先駆けて、暗紅色の花を開きかけた葉の先につける。遠目には、小さな丸い暗紅色の点に見え、かわいらしい。子どもたちは、子どもたちで、ようやく暖かくなったと思うと、はやも水を喜び、浅い池に入って、ザリガニや小さい魚など追いかけて遊ぶ。花楓も子どもたちの遊びも、季節を先駆けた新鮮さがある。(高橋正子)
【銀賞2句】
★花びらを透かして青き空仰ぐ/多田有花
この句は、桜の花びらを透かして仰ぐ特別な「青き空」がテーマである。桜あっての青空、青空あっての桜なのだ。(高橋正子)
★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
母の忌日が近付いた。燕がもう来るころだ。燕が来れば亡き母が記憶にありありと浮かんでくる。(高橋正子)
【銅賞3句】
★咲き満てる花に出会いし嬉しさよ/矢野文彦
「嬉しさよ」が、率直過ぎる感も否めないが、この句には、言葉を超えて、咲き満てる花に出会った一期一会の真実なる嬉しさがある。(高橋正子)
★山茱萸の雨の数ほど散りにけり/小口泰與
山茱萸の花は雨が降ると小さい花が無数に地面に落ちる。雨粒が一つ一つの花を打って散らした。それが「雨の数ほど」となる。春の雨の冷たさも、降り方も山茱萸の花によってよりよく知れる。(高橋正子)
★解け行く飛行機雲や花菜畑/古賀一弘
一線の飛行機雲が解けてゆく。解ける雲のやわらかさと、花菜畑の色合いがよくマッチして、抒情的な春らしい風景となっている。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★咲き満てる花に出会いし嬉しさよ/矢野文彦
満開の桜の花が、青空を埋め尽くすように咲いている光景は幻想的で美しかったことでしょう。そのような桜の花に出会った作者の感動が素直に伝わってきました。(井上治代)
★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
燕の来る頃に逝かれたお母様。毎年の燕の到来は、母の身代わりであるかのようで、力強い飛翔で元気づけてくれます。光に満ち溢れた季節の始まりとともに生前の母への想いを新たにします。 (柳原美知子)
★チューリップ剪り集めれば虹の色/高橋正子
色とりどりのチューリップ。咲いた花を剪ってひとところに集めれば、虹のように七色の花が集まり、にぎやかに感じられます。 (高橋秀之)
★横浜の小径まがれば花辛夷/川名ますみ
小径を曲がると、辛夷の花が目に飛び込んできました。思いもかけず出合った花は、青空に白く輝いて作者を歓迎してくれました。横浜という地名も洒落た感じがして花辛夷に合っていると思いました。(井上治代)
★解け行く飛行機雲や花菜畑/古賀一弘
飛行機雲が静かにゆっくりと解けて行く様子を見つめている作者を想像することができました。遠景には花菜畑が広がり、安らかで大きな光景です。(井上治代)
★子ら登るジャングルジムへ花の雲/小川和子
咲き連なっている桜、そのそばで遊具に夢中になっている元気な子供達。大人も子供も春を謳歌している楽しい風景です。 (佃 康水)
★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
【高橋正子特選/7句】
★高き木の高きにすもも花盛り/高橋信之
桃の花より少し遅れて咲くすももの花は二つ三つずつ素敵に咲きます。高きのりフレインがとっても素敵です。 (小口泰與)
★河原に飛ぶ影滑る初燕/古田敬二
野山に出かけたくなる春ですが河原にもさまざまな春を見つける事が出来ます。その河原へ立っているとふと一閃滑って行く影が有りました。初燕です。「影滑る」に初燕の勢いを感じます。 (佃 康水)
★山茱萸の雨の数ほど散りにけり/小口泰與
★青空を飛んで桜の散りゆけり/小西 宏
★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
★ごうごうと山の桜に吹く風よ/多田有花
★花びらを透かして青き空仰ぐ/多田有花
【入選/14句】
★大根の花に夕日や海の風/桑本栄太郎
平易な言葉で春爛漫の景が描かれている好きな句です。 (河野啓一)
★甦る兄の軍装紫木蓮/渋谷洋介
お兄様が出征なさったのは紫木蓮が咲く頃だったのでしょう。そして、もしかしたらそのまま戻られなかったのかもしれません。すでに遠い記憶、けれど紫木蓮の色を見ると、その日のことが鮮明によみがえります。(多田有花)
★花筏割りて浮き来る堀の鯉/柳原美知子
一瞬にして堀の水面にびっしり浮かぶ花筏を想いました。堀の水の中から鯉も下から青空が見えなくなり、驚いたことでしょう。移りゆく晩春の光景を趣豊かに詠われました。(桑本栄太郎)
暖かくなると堀の鯉の動きも活発になってきます。花筏を割って浮いてくる鯉に春本番を感じます。 (高橋秀之)
★植木鉢に春の花苗とり合わせ/河野啓一
春になると植木市や苗木市など盛んに行われたり、また家庭で育てた花苗を寄せ植えされているのを良く見かけます。自分で彩りよく花苗を植えながらまた咲いてくるのを見るにつけ春を実感し心癒されます。(佃 康水)
★花満ちる峰を通りぬ時雨雲/多田有花
登山の途中でしょうか、山は桜満開、時雨雲が雨を連れて通り過ぎて行った。空を見上げている詠者です。(祝恵子)
★淡き色いくつも滲む芽吹き山/古田敬二
かつて山間の道を通った頃、春を迎える度に、同様の景色を望みました。この季節、花であったり芽立ちであったり、山の合間にぽつぽつと「淡き色」が覗きます。それは輪郭を画せず、まさに「滲む」ようでした。記憶にあった景が確かな言葉で表される、その清々しさに感謝しながら、また、懐かしむ時を頂きました。(川名ますみ)
★桜満ち堀に枝垂るる風のまま/柳原美知子
お城を取り巻く堀。その堀に植えられた枝垂れ桜だろうか。まだ満開へは2,3日あるが、ゆっくり揺れてその時を待っている。(古田敬二)
★花満ちて瑞枝の揺るる糸桜/小川和子
満開の糸桜に圧倒されつつ、しなやかな緑の枝の揺れに目を魅かれる。その細やかな観察に、花満てる大きな風景が浮かび上がります。(小西 宏)
★奔放にあそべやあそべ春の鳥/井上治代
春になり暖かくなって鳥たちの動きも活発になってきます。奔放に遊ぶだけでなくあそべやあそべという言葉の重なりがその喜びを表しているようです。 (高橋秀之)
★目の前は桜遠くは瀬戸内海/高橋秀之
目の前には満開の桜。目を移し遠くを眺めるときらきらと輝く青い海。島国日本の春の典型的な景色を素直に詠まれていると思いました。(井上治代)
★森の辺を埋めて耀く桜花/河野啓一
桜の色は遠くから見てもそれとわかります。森は針葉樹か、広葉樹か、それによって雰囲気が変わりますが、いずれにしても桜色がそれを包んで柔らかです。(多田有花)
★供花添えて鶯音聞く心地よさ/祝恵子
お墓参りでしょうか。墓苑のまわりに鶯がいて囀っています。花筒を清めてお花を入れ、手を合わせられたらそれにあわせるように「ホーホケキョ」と澄んだ声が。心が洗われますね。(多田有花)
★人溢れとんび高舞う花の山/佃 康水
お花見の名所はこの週末いずこも大変な人出だったことでしょう。花の下で飲み、歌い、踊り、それをとんびが高みの見物です。(多田有花)
★水脈を曳きゆたりゆたりと春の航/下地鉄
春の航を遠くから見ていらっしゃるのでしょうか。「ゆたり ゆたり」と重なっている所から広く青い海、ゆったりとした海の情景が見えて参ります。「春の海ひねもすのたりのたりかな」の蕪村の句を思い出しました。 (佃 康水)
■選者詠/高橋信之
★高き木の高きにすもも花盛り
★道草咲く雄花雌花よ陽が西へ
★花好きの多き街よ山茱萸咲く
■選者詠/高橋正子
★車窓打つ雨が辛夷や桜打つ
★雨に花は花びら少しずつこぼす
★チューリップ剪り集めれば虹の色
■互選高点句
●最高点(6点/同点2句)
★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
★大根の花に夕日や海の風/桑本栄太郎
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)