■5月ネット句会■
■入賞発表/2014年5月11日■
【金賞】
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
実際、朴の花はこの通りである。高く聳える木に朴の花は上を向いて咲く。仰いでもその花は下から眺めるのみで、「青空の高きへ掲ぐ」は実直な見方。それが、堂々としてよい。(高橋正子)
【銀賞】
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
水槽の水を替えられたメダカは元気よく泳ぐ。差しこむ日光にメダカの影ができるが、その影が新鮮に思える。いきいきとして、透明感のある句だ。(高橋正子)
【銅賞2句】
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
吹かれてゆくしゃぼん玉を見ると、向こうの家の屋根に消えてしまった。屋根瓦は日本らしい風景を形作るもの。その屋根瓦に淡いしゃぼん玉が消える。これは日本的抒情。(高橋正子)
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘
みどりの日は5月4日。風薫る季節で、料理をするにも気持ちがさわやかである。包丁もリズムよく、軽やかに音を立てる。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★母の日の全方向に雲もなし/高橋正子
5月の第二日曜日で、母に感謝する日に空を見上げるとあらゆる方向に雲ひとつない素晴らしい日で空に向かって母を偲び感謝の気持ちを捧げている素敵な作者ですね。 (小口泰與)
★噴水の真ん中一本高く噴き/古田敬二
噴水のありのままの描写に、空へ垂直に立ち上がる噴水の勢いを感じます。水辺の清涼感、季節の明るさやみずみずしさが思われます。(藤田洋子)
★弁当をつくる幸せ風薫る/井上治代
お弁当を作るのは、元気にでかることができることの証で幸せなことです。風薫る季節のお弁当作りは、きっと楽しいひとときになったことでしょう。(高橋秀之)
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘
【高橋正子特選/7句】
★新緑の真っ只中を駆け抜ける/高橋秀之
厳しい冬が去り燃え上がる新緑の嬉しさに胸一杯青い空気を吸い駆け出したい気持ち 私にも判ります。真っ只中と言うのもいいですね。(迫田和代)
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
目高の水を取り替えて、目高の泳ぐ姿も生き生きとして見える。作者の愉快な気持ちが伝わってきて、初夏にふさわしいすっきりとした情景です、(河野啓一)
★アイリスの似合うしょう洒な夏館/小川和子
この夏館には菖蒲でもあやめでもなく、やはりアイリスが似合うのでしょう。アイリスやバラに囲まれた夏館が目に浮かびます。洒落た感じがする句だと思いました。 (井上治代)
涼やかな夏の装いの有るお家の庭にアイリスが咲いている。色は紫?白?と涼やかでしゃれた夏館の想像が膨らみます。夏の深まりにつれ更に涼やかさを工夫されることでしょう。(佃 康水)
★山藤や木にまきついて風まかせ/井上治代
この時期、車窓から或いは山辺に出掛けると全く同じ景色を見ることが出来ます。雑木山の大きな木々に巻き付いて垂れ下がり風の意のままに揺れています。四季の移ろいの風情を感じ取る事が出来ます。(佃 康水)
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘
【入選/13句】
★若竹にひかり透せる里の奥/小西 宏
立体感があって、広がりのある句だ。作者独自の視点がいい。(高橋信之)
★青柿よすくすく育て実りまで/河野啓一
作者の思いが直に伝わってくる。快い読後感がうれしい。いい心境の句。(高橋信之)
★窓若葉野鳥図鑑のページ繰る/藤田洋子
窓の若葉がアウトドアの世界に誘ってくれる。野鳥図鑑のページ繰れば、小鳥の囀りが聞こえてくる。楽しい世界だ。(高橋信之)
★麦秋の路線バスゆく田中かな/桑本栄太郎
麦の穂が熟れはじめたのですね。バスの窓から臨む麦畑の景が広々と思いうかびます。「路線バス」が良いです。(小川和子)
★風薫る三三五五に車椅子/矢野文彦
心地よい5月の空の散歩道、笑顔が目にうかぶようです。(渋谷洋介)
★蜘蛛の子のすでに意思持ち遁走す/小口泰與
「蜘蛛の子を散らすように」との言葉通り、生まれたばかりの蜘蛛の子はそれぞれ、彼方此方に向かって一気に走り出します。生まれたばかりの生命が元気よく動き回る、命が輝く今の季節を「遁走す」との措辞により、巧みに詠まれました。(桑本栄太郎)
★母の日の昼餉の支度娘と並び/藤田洋子
母の日に、我が娘と並んで食事の支度が出来るとは娘にとっても自分にとっても幸せを感じる一時です。今日は特別愛情溢れる美味しい母の日の御馳走が出来上がった事でしょう。そしてこうして母の味を受け継がれてゆくのでしょう。作者の和やかなご家庭を垣間見る思いがいたします。(佃 康水)
一緒にお住まいなのか、訪れられたのか、母の日のとても和気あいあいのいい関係の親娘ですね。(祝恵子)
★学び舎を越えて背山へ黒揚羽/佃 康水
学び舎とは、作者の母校でしょうか、それも幼い頃通った小学校。校舎の背後には見慣れた妹背の山が肩を並べ、故郷の思い出と一体になっています。黒揚羽は故郷を訪ねた今見る姿なのでしょうか、あるいは思い出の中の風景か? 黒揚羽の飛翔が印象鮮明です。(小西 宏)
★豆の花支柱の丈のまだ足らず/桑本栄太郎
支柱の丈より伸びようとする豌豆は今花盛り、収穫が楽しみですね。豆ごはんや卵とじなどまで想像がふくらみます。(黒谷光子)
★著莪の花愚直に生きし八十年/渋谷洋介
正直で勤勉に生きてきた八十年。その人生こそが宝だと思います。目立たないけれど存在感のある著莪の花との取り合わせがステキだと思いました。(井上治代)
★ルピナスや紫紺の妙義彫り深し/小口泰與
妙義彫りがどんなものか実際には知らないのですが、咲きはじめた新鮮なルピナスの花は細かく刻んだ彫刻のように見えなくもありませんね。雰囲気が出ていると思います。(河野啓一)
★急かさるる堰に崩れし花筏/渋谷洋介
水面に浮かぶ花びらが繋がり、堰へと流れてゆく花筏の美しさ。花の季節の終わりに、もうしばらくその美しさをとどめてほしい願い、花筏へのいとおしみがしみじみと伝わります。 (藤田洋子)
★いっときの声高らかに揚雲雀/黒谷光子
透きとおった美しい声で鳴く雲雀。鳴きながら空高く舞い上がった後の静寂も心地よく感じられる句だと思います。 (井上治代)
■選者詠/高橋信之
★昇る朝日が若葉に透けて若葉をくぐる
朝日は日の出とともに昇りはじめ、時間とともに昇ります。若葉に透けて若葉をくぐって朝日が昇るすがすがしい朝がそこにあります。(高橋秀之)
★朴の花咲きゆっくりとした時間
大きな白い方の花が咲いて初夏のひと時がゆっくりと過ぎて行きます。何かと世相騒がしい昨今、得難い貴重な時間と言えましょうか。こころ休まる詠みに惹かれます。 (河野啓一)
今まで、朴の花は飛騨路そして深山に咲いているものしか知りませんでした。また薫りや実物の全景も見た事がなく、只々仰ぐばかりです。大きな葉の上に高く咲く朴の花は散ることは無いと聞きますので、「ゆっくりとした時間」の措辞はゆっくりと仰いでいる作者、そして木の上にのみ過ごす朴の花だからこそ相通じる措辞の様に思います。(佃 康水)
★若葉道青空少し見え隠れる
■選者詠/高橋正子
★母の日の全方向に雲もなし
5月の第二日曜日で、母に感謝する日に空を見上げるとあらゆる方向に雲ひとつない素晴らしい日で空に向かって母を偲び感謝の気持ちを捧げている素敵な作者ですね。 (小口泰與)
★そよぐほかならず池畔の矢車草
可愛らしい矢車草が池の畔にひっそりと咲いている。時たまのそよ風に少し揺れるだけで、いかにも平穏で好もしい風情です。 (河野啓一)
★睡蓮の流れ来るも茎があり
■互選高点句
●最高点(9点)
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
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