■5月ネット句会入賞発表■

■5月ネット句会■
■入賞発表/2014年5月11日■

【金賞】
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
実際、朴の花はこの通りである。高く聳える木に朴の花は上を向いて咲く。仰いでもその花は下から眺めるのみで、「青空の高きへ掲ぐ」は実直な見方。それが、堂々としてよい。(高橋正子)

【銀賞】
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
水槽の水を替えられたメダカは元気よく泳ぐ。差しこむ日光にメダカの影ができるが、その影が新鮮に思える。いきいきとして、透明感のある句だ。(高橋正子)

【銅賞2句】
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
吹かれてゆくしゃぼん玉を見ると、向こうの家の屋根に消えてしまった。屋根瓦は日本らしい風景を形作るもの。その屋根瓦に淡いしゃぼん玉が消える。これは日本的抒情。(高橋正子)

★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘
みどりの日は5月4日。風薫る季節で、料理をするにも気持ちがさわやかである。包丁もリズムよく、軽やかに音を立てる。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★母の日の全方向に雲もなし/高橋正子
5月の第二日曜日で、母に感謝する日に空を見上げるとあらゆる方向に雲ひとつない素晴らしい日で空に向かって母を偲び感謝の気持ちを捧げている素敵な作者ですね。 (小口泰與)

★噴水の真ん中一本高く噴き/古田敬二
噴水のありのままの描写に、空へ垂直に立ち上がる噴水の勢いを感じます。水辺の清涼感、季節の明るさやみずみずしさが思われます。(藤田洋子)

★弁当をつくる幸せ風薫る/井上治代
お弁当を作るのは、元気にでかることができることの証で幸せなことです。風薫る季節のお弁当作りは、きっと楽しいひとときになったことでしょう。(高橋秀之)

★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘

【高橋正子特選/7句】
★新緑の真っ只中を駆け抜ける/高橋秀之
厳しい冬が去り燃え上がる新緑の嬉しさに胸一杯青い空気を吸い駆け出したい気持ち 私にも判ります。真っ只中と言うのもいいですね。(迫田和代)

★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
目高の水を取り替えて、目高の泳ぐ姿も生き生きとして見える。作者の愉快な気持ちが伝わってきて、初夏にふさわしいすっきりとした情景です、(河野啓一)

★アイリスの似合うしょう洒な夏館/小川和子
この夏館には菖蒲でもあやめでもなく、やはりアイリスが似合うのでしょう。アイリスやバラに囲まれた夏館が目に浮かびます。洒落た感じがする句だと思いました。 (井上治代)
涼やかな夏の装いの有るお家の庭にアイリスが咲いている。色は紫?白?と涼やかでしゃれた夏館の想像が膨らみます。夏の深まりにつれ更に涼やかさを工夫されることでしょう。(佃 康水)

★山藤や木にまきついて風まかせ/井上治代
この時期、車窓から或いは山辺に出掛けると全く同じ景色を見ることが出来ます。雑木山の大きな木々に巻き付いて垂れ下がり風の意のままに揺れています。四季の移ろいの風情を感じ取る事が出来ます。(佃 康水)

★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘

【入選/13句】
★若竹にひかり透せる里の奥/小西 宏
立体感があって、広がりのある句だ。作者独自の視点がいい。(高橋信之)

★青柿よすくすく育て実りまで/河野啓一
作者の思いが直に伝わってくる。快い読後感がうれしい。いい心境の句。(高橋信之)

★窓若葉野鳥図鑑のページ繰る/藤田洋子
窓の若葉がアウトドアの世界に誘ってくれる。野鳥図鑑のページ繰れば、小鳥の囀りが聞こえてくる。楽しい世界だ。(高橋信之)

★麦秋の路線バスゆく田中かな/桑本栄太郎
麦の穂が熟れはじめたのですね。バスの窓から臨む麦畑の景が広々と思いうかびます。「路線バス」が良いです。(小川和子)

★風薫る三三五五に車椅子/矢野文彦
心地よい5月の空の散歩道、笑顔が目にうかぶようです。(渋谷洋介)

★蜘蛛の子のすでに意思持ち遁走す/小口泰與
「蜘蛛の子を散らすように」との言葉通り、生まれたばかりの蜘蛛の子はそれぞれ、彼方此方に向かって一気に走り出します。生まれたばかりの生命が元気よく動き回る、命が輝く今の季節を「遁走す」との措辞により、巧みに詠まれました。(桑本栄太郎)

★母の日の昼餉の支度娘と並び/藤田洋子
母の日に、我が娘と並んで食事の支度が出来るとは娘にとっても自分にとっても幸せを感じる一時です。今日は特別愛情溢れる美味しい母の日の御馳走が出来上がった事でしょう。そしてこうして母の味を受け継がれてゆくのでしょう。作者の和やかなご家庭を垣間見る思いがいたします。(佃 康水)
一緒にお住まいなのか、訪れられたのか、母の日のとても和気あいあいのいい関係の親娘ですね。(祝恵子)

★学び舎を越えて背山へ黒揚羽/佃 康水
学び舎とは、作者の母校でしょうか、それも幼い頃通った小学校。校舎の背後には見慣れた妹背の山が肩を並べ、故郷の思い出と一体になっています。黒揚羽は故郷を訪ねた今見る姿なのでしょうか、あるいは思い出の中の風景か? 黒揚羽の飛翔が印象鮮明です。(小西 宏)

★豆の花支柱の丈のまだ足らず/桑本栄太郎
支柱の丈より伸びようとする豌豆は今花盛り、収穫が楽しみですね。豆ごはんや卵とじなどまで想像がふくらみます。(黒谷光子)

★著莪の花愚直に生きし八十年/渋谷洋介
正直で勤勉に生きてきた八十年。その人生こそが宝だと思います。目立たないけれど存在感のある著莪の花との取り合わせがステキだと思いました。(井上治代)

★ルピナスや紫紺の妙義彫り深し/小口泰與
妙義彫りがどんなものか実際には知らないのですが、咲きはじめた新鮮なルピナスの花は細かく刻んだ彫刻のように見えなくもありませんね。雰囲気が出ていると思います。(河野啓一)

★急かさるる堰に崩れし花筏/渋谷洋介
水面に浮かぶ花びらが繋がり、堰へと流れてゆく花筏の美しさ。花の季節の終わりに、もうしばらくその美しさをとどめてほしい願い、花筏へのいとおしみがしみじみと伝わります。 (藤田洋子)

★いっときの声高らかに揚雲雀/黒谷光子
透きとおった美しい声で鳴く雲雀。鳴きながら空高く舞い上がった後の静寂も心地よく感じられる句だと思います。 (井上治代)

■選者詠/高橋信之
★昇る朝日が若葉に透けて若葉をくぐる
朝日は日の出とともに昇りはじめ、時間とともに昇ります。若葉に透けて若葉をくぐって朝日が昇るすがすがしい朝がそこにあります。(高橋秀之)

★朴の花咲きゆっくりとした時間
大きな白い方の花が咲いて初夏のひと時がゆっくりと過ぎて行きます。何かと世相騒がしい昨今、得難い貴重な時間と言えましょうか。こころ休まる詠みに惹かれます。 (河野啓一)
今まで、朴の花は飛騨路そして深山に咲いているものしか知りませんでした。また薫りや実物の全景も見た事がなく、只々仰ぐばかりです。大きな葉の上に高く咲く朴の花は散ることは無いと聞きますので、「ゆっくりとした時間」の措辞はゆっくりと仰いでいる作者、そして木の上にのみ過ごす朴の花だからこそ相通じる措辞の様に思います。(佃 康水)

★若葉道青空少し見え隠れる

■選者詠/高橋正子
★母の日の全方向に雲もなし
5月の第二日曜日で、母に感謝する日に空を見上げるとあらゆる方向に雲ひとつない素晴らしい日で空に向かって母を偲び感謝の気持ちを捧げている素敵な作者ですね。 (小口泰與)

★そよぐほかならず池畔の矢車草
可愛らしい矢車草が池の畔にひっそりと咲いている。時たまのそよ風に少し揺れるだけで、いかにも平穏で好もしい風情です。 (河野啓一)

★睡蓮の流れ来るも茎があり

■互選高点句
●最高点(9点)
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

※コメントのない句にコメントをお願いいたします。

■5月ネット句会清記■

■5月ネット句会■
■清記/18名54句

01.緑濃き森となりたり今日立夏
02.噴水の真ん中一本高く噴き
03.葉桜の木漏れ日揺れるブロンズ像
04.麦秋の路線バスゆく田中かな
05.豆の花支柱の丈のまだ足らず
06.ひるがえる白き葉裏や青あらし
07.風薫る三三五五に車椅子
08.直立の茎に風好しえびね蘭
09.陽を待てば風も叶いぬ鯉幟
10.アイスティー湖畔に集うサイドカー

11.ルピナスや紫紺の妙義彫り深し
12.蜘蛛の子のすでに意思持ち遁走す
13.母の日の全方向に雲もなし
14.そよぐほかならず池畔の矢車草
15.睡蓮の流れ来るも茎があり
16.昇る朝日が若葉に透けて若葉をくぐる
17.若葉道青空少し見え隠れる
18.朴の花咲きゆっくりとした時間
19.水替えてメダカの影の新しき
20.ふかしいも夏の朝餉の具となりぬ

21.地に触れる藤花日に日に伸びてゆく
22.急かさるる堰に崩れし花筏
23.著莪の花愚直に生きし八十年
24.空を飛ぶ嬰の微睡春一日
25.しゃん玉向こうの家の屋根に消え
26.水と土遠い故郷の苗代を
27.瀬戸の夜浪間に揺れる春の月
28.さわやかに風吹きぬけて鯉幟
29.青柿よすくすく育て実りまで
30.海開き水冷たくて児らはしゃぐ

31.洗いたてのカーテンそよと五月光
32.窓若葉野鳥図鑑のページ繰る
33.母の日の昼餉の支度娘と並び
34.新緑の真っ只中を駆け抜ける
35.散水の飛沫にうっすら虹かかる
36.葉を揺らし木々を吹き抜く初夏の風
37.学び舎を越えて背山へ黒揚羽
38.青空の高きへ掲ぐ朴の花
39.遠足子ジャングルジムを取り合えり
40.世界遺産ことに五月の富士の山

41.弟の仇(あだ)に兄出る子供の日
42.包丁の音軽ろやかにみどりの日
43.実桜を葉陰に風の行き来する
44.アイリスの似合うしょう洒な夏館
45.さざなみの立ちて早苗田一面に
46.青空の点となりゆく揚雲雀
47.いっときの声高らかに揚雲雀
48.山峡の村の賑わう祭かな
49.野に遊び白詰草の花飾り
50.若竹にひかり透せる里の奥

51.泥水に耀き立てり葦の青
52.山藤や木にまきついて風まかせ
53.弁当をつくる幸せ風薫る
54.思い出は香りとともに豆の飯

※互選を開始してください。

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、5月11日(日)午後6時から始め、同日(5月11日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、5月12日(月)午前10時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、5月12日(月)午前10時~5月13日(火)午後6時です。

◆5月ネット句会案内◆

◆5月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(春か、夏)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2014年5月11日(日)午前0時~午後6時
④選句期間:5月11日(日)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:5月12日(月)午前10時

4月23日(水)

 隅田川
★都鳥春の空より羽音させ  正子
古典に知識がなくて恥ずかしいのですが、隅田川ではよくユリカモメの浮かぶ姿を目にします。それが空に羽音をさせているのは、北へ帰る旅支度なのでしょうか。人それぞれに故郷があり、春ともなれば望郷の想いを強く感じることが多いのでしょう。(小西 宏)

○今日の俳句
朝に座し浅利味噌汁白ご飯/小西 宏
浅利の味噌汁が美味しいのは、春の小寒い朝。それに湯気のたつ白いご飯があれば、申し分なし。そして、朝食に座るという行為。すっきりとした幸せな朝の食事だ。(高橋正子)

○黄菖蒲

[黄水仙/横浜市都筑区・山田富士公園(左:2012年5月5日・右:2012年5月1日)]

★片隅に菖蒲花咲く門田哉/正岡子規
★花菖蒲夕べの川のにごりけり/桂信子
★かへり来し命虔しめ白菖蒲/石田波郷
★黄菖蒲の 黄も生き生きと 川の原/遊雀
★黄菖蒲や小川の道を辿りきて/819maker

 黄菖蒲は日本のものかと思っていたが、帰化植物ということだ。生まれたときから、生家の裏の小さい池に黄菖蒲が咲いた。生家は明治時代に建て替えられて、裏庭の西に榎があり、その下に池があった。榎は大きくなりすぎたのであろう、枝や幹は大きく切られていたので、日は差し込んでいた。池の水が淀みがちで湿気が上がるので、かなり前に埋められ、榎も切り倒されている。子どものころは、雨の日などに、裏の縁側から黄菖蒲を眺めて、黄色い色に目を止めていた。

★黄菖蒲に薄き汗かくころとなり/高橋正子

 黄菖蒲(帰化)と似たものに菖蒲、花菖蒲(栽培) 、それにアヤメ、カキツバタ、シャガ、イチハツ(帰化、栽培)アイリス、ジャーマンアイリス等があるが、見分けるのが難しい。菖蒲を除き、これらのすべては、黄菖蒲と同じアヤメ科アヤメ属の植物だが、菖蒲だけは、ショウブ科(サトイモ科に分類する体系がある)のショウブ属に属する。
 黄菖蒲(学名: Iris pseudacorus )は、アヤメ科アヤメ属の多年草。帰化植物。花茎の高さは60-100cmになる。葉は幅2-3cm、長さ60-100cm、剣形で中脈が隆起し明瞭で、縁は全縁。花期は5-6月で、アヤメやノハナショウブと同じ、外花被片が大型の広卵形で先が下に垂れ、内花被片が小型で直立した、黄色の花を咲かせる。外花被片の中央に茶色がかった模様がある。西アジアからヨーロッパ原産の植物で、明治頃から栽培されていたものが日本全国の水辺や湿地、水田脇に野生化している。観賞用に栽培されているハナショウブには黄色系の花がないため、その貴重性から重宝されたが、湖沼や河川などへの拡散が問題となっている。環境省は「要注意外来生物」の一種として警戒を呼びかけている。

◇生活する花たち「羅生門蔓・錨草・山吹草」(東京白金台・自然教育園)

■ご挨拶/4月ネット句会■


■4月ネット句会■
ご挨拶(高橋正子/主宰)
今年の花も散り始めました。昨日6日は冷え込んで、急用で出かけた電車もしっかり暖房されておりました。今朝も冷え込みは残っておりますが、横浜は暖かい日となりそうです。今月はちょうど桜の季節の句会となり、桜がさまざまに詠まれておりました。ご病気が快癒されたり、旅行を楽しまれたかたもいらっしゃるようです。桜が散り始めれば、もう花楓の季節。金賞には小西宏さんの「花楓」の句が選ばれ、新しい季節の新鮮さを思いました。入賞の皆さま、おめでとうございます。投句に始まり、選とコメントをありがとうございました。互選開始にあたり、清記の発表が遅れましたことをお詫びいたします。句会の管理運営は信之先生にお願いいたしました。お世話にありがとうございました。まもなく新緑の美しい季節となることでしょう。来月の句会を楽しみにお待ちください。これで4月ネット句会を終わります。

◆4月ネット句会入賞発表◆

■4月ネット句会■
■入賞発表/2014年4月7日■

【金賞】
★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
楓の花は、新緑の季節に先駆けて、暗紅色の花を開きかけた葉の先につける。遠目には、小さな丸い暗紅色の点に見え、かわいらしい。子どもたちは、子どもたちで、ようやく暖かくなったと思うと、はやも水を喜び、浅い池に入って、ザリガニや小さい魚など追いかけて遊ぶ。花楓も子どもたちの遊びも、季節を先駆けた新鮮さがある。(高橋正子)

【銀賞2句】
★花びらを透かして青き空仰ぐ/多田有花
この句は、桜の花びらを透かして仰ぐ特別な「青き空」がテーマである。桜あっての青空、青空あっての桜なのだ。(高橋正子)

★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
母の忌日が近付いた。燕がもう来るころだ。燕が来れば亡き母が記憶にありありと浮かんでくる。(高橋正子)

【銅賞3句】
★咲き満てる花に出会いし嬉しさよ/矢野文彦
「嬉しさよ」が、率直過ぎる感も否めないが、この句には、言葉を超えて、咲き満てる花に出会った一期一会の真実なる嬉しさがある。(高橋正子)

★山茱萸の雨の数ほど散りにけり/小口泰與
山茱萸の花は雨が降ると小さい花が無数に地面に落ちる。雨粒が一つ一つの花を打って散らした。それが「雨の数ほど」となる。春の雨の冷たさも、降り方も山茱萸の花によってよりよく知れる。(高橋正子)

★解け行く飛行機雲や花菜畑/古賀一弘
一線の飛行機雲が解けてゆく。解ける雲のやわらかさと、花菜畑の色合いがよくマッチして、抒情的な春らしい風景となっている。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★咲き満てる花に出会いし嬉しさよ/矢野文彦
満開の桜の花が、青空を埋め尽くすように咲いている光景は幻想的で美しかったことでしょう。そのような桜の花に出会った作者の感動が素直に伝わってきました。(井上治代)

★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
燕の来る頃に逝かれたお母様。毎年の燕の到来は、母の身代わりであるかのようで、力強い飛翔で元気づけてくれます。光に満ち溢れた季節の始まりとともに生前の母への想いを新たにします。 (柳原美知子)

★チューリップ剪り集めれば虹の色/高橋正子
色とりどりのチューリップ。咲いた花を剪ってひとところに集めれば、虹のように七色の花が集まり、にぎやかに感じられます。 (高橋秀之)

★横浜の小径まがれば花辛夷/川名ますみ
小径を曲がると、辛夷の花が目に飛び込んできました。思いもかけず出合った花は、青空に白く輝いて作者を歓迎してくれました。横浜という地名も洒落た感じがして花辛夷に合っていると思いました。(井上治代)

★解け行く飛行機雲や花菜畑/古賀一弘
飛行機雲が静かにゆっくりと解けて行く様子を見つめている作者を想像することができました。遠景には花菜畑が広がり、安らかで大きな光景です。(井上治代)

★子ら登るジャングルジムへ花の雲/小川和子
咲き連なっている桜、そのそばで遊具に夢中になっている元気な子供達。大人も子供も春を謳歌している楽しい風景です。 (佃 康水)

★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏

【高橋正子特選/7句】
★高き木の高きにすもも花盛り/高橋信之
桃の花より少し遅れて咲くすももの花は二つ三つずつ素敵に咲きます。高きのりフレインがとっても素敵です。 (小口泰與)

★河原に飛ぶ影滑る初燕/古田敬二
野山に出かけたくなる春ですが河原にもさまざまな春を見つける事が出来ます。その河原へ立っているとふと一閃滑って行く影が有りました。初燕です。「影滑る」に初燕の勢いを感じます。 (佃 康水)

★山茱萸の雨の数ほど散りにけり/小口泰與
★青空を飛んで桜の散りゆけり/小西 宏
★子ら池に足入れ遊び花楓/小西 宏
★ごうごうと山の桜に吹く風よ/多田有花
★花びらを透かして青き空仰ぐ/多田有花

【入選/14句】
★大根の花に夕日や海の風/桑本栄太郎
平易な言葉で春爛漫の景が描かれている好きな句です。 (河野啓一)

★甦る兄の軍装紫木蓮/渋谷洋介
お兄様が出征なさったのは紫木蓮が咲く頃だったのでしょう。そして、もしかしたらそのまま戻られなかったのかもしれません。すでに遠い記憶、けれど紫木蓮の色を見ると、その日のことが鮮明によみがえります。(多田有花)

★花筏割りて浮き来る堀の鯉/柳原美知子
一瞬にして堀の水面にびっしり浮かぶ花筏を想いました。堀の水の中から鯉も下から青空が見えなくなり、驚いたことでしょう。移りゆく晩春の光景を趣豊かに詠われました。(桑本栄太郎)
暖かくなると堀の鯉の動きも活発になってきます。花筏を割って浮いてくる鯉に春本番を感じます。 (高橋秀之)

★植木鉢に春の花苗とり合わせ/河野啓一
春になると植木市や苗木市など盛んに行われたり、また家庭で育てた花苗を寄せ植えされているのを良く見かけます。自分で彩りよく花苗を植えながらまた咲いてくるのを見るにつけ春を実感し心癒されます。(佃 康水)

★花満ちる峰を通りぬ時雨雲/多田有花
登山の途中でしょうか、山は桜満開、時雨雲が雨を連れて通り過ぎて行った。空を見上げている詠者です。(祝恵子)

★淡き色いくつも滲む芽吹き山/古田敬二
かつて山間の道を通った頃、春を迎える度に、同様の景色を望みました。この季節、花であったり芽立ちであったり、山の合間にぽつぽつと「淡き色」が覗きます。それは輪郭を画せず、まさに「滲む」ようでした。記憶にあった景が確かな言葉で表される、その清々しさに感謝しながら、また、懐かしむ時を頂きました。(川名ますみ)

★桜満ち堀に枝垂るる風のまま/柳原美知子
お城を取り巻く堀。その堀に植えられた枝垂れ桜だろうか。まだ満開へは2,3日あるが、ゆっくり揺れてその時を待っている。(古田敬二)

★花満ちて瑞枝の揺るる糸桜/小川和子
満開の糸桜に圧倒されつつ、しなやかな緑の枝の揺れに目を魅かれる。その細やかな観察に、花満てる大きな風景が浮かび上がります。(小西 宏)

★奔放にあそべやあそべ春の鳥/井上治代
春になり暖かくなって鳥たちの動きも活発になってきます。奔放に遊ぶだけでなくあそべやあそべという言葉の重なりがその喜びを表しているようです。 (高橋秀之)

★目の前は桜遠くは瀬戸内海/高橋秀之
目の前には満開の桜。目を移し遠くを眺めるときらきらと輝く青い海。島国日本の春の典型的な景色を素直に詠まれていると思いました。(井上治代)

★森の辺を埋めて耀く桜花/河野啓一
桜の色は遠くから見てもそれとわかります。森は針葉樹か、広葉樹か、それによって雰囲気が変わりますが、いずれにしても桜色がそれを包んで柔らかです。(多田有花)

★供花添えて鶯音聞く心地よさ/祝恵子
お墓参りでしょうか。墓苑のまわりに鶯がいて囀っています。花筒を清めてお花を入れ、手を合わせられたらそれにあわせるように「ホーホケキョ」と澄んだ声が。心が洗われますね。(多田有花)

★人溢れとんび高舞う花の山/佃 康水
お花見の名所はこの週末いずこも大変な人出だったことでしょう。花の下で飲み、歌い、踊り、それをとんびが高みの見物です。(多田有花)

★水脈を曳きゆたりゆたりと春の航/下地鉄
春の航を遠くから見ていらっしゃるのでしょうか。「ゆたり ゆたり」と重なっている所から広く青い海、ゆったりとした海の情景が見えて参ります。「春の海ひねもすのたりのたりかな」の蕪村の句を思い出しました。 (佃 康水)

■選者詠/高橋信之
★高き木の高きにすもも花盛り
★道草咲く雄花雌花よ陽が西へ
★花好きの多き街よ山茱萸咲く

■選者詠/高橋正子
★車窓打つ雨が辛夷や桜打つ
★雨に花は花びら少しずつこぼす
★チューリップ剪り集めれば虹の色

■互選高点句
●最高点(6点/同点2句)
★燕もう来る頃母の忌近づきぬ/小川和子
★大根の花に夕日や海の風/桑本栄太郎

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

■4月ネット句会清記■

■4月ネット句会■
■清記/19名57句

01.大根の花に夕日や海の風
02.選抜の野球果ており春惜しむ
03.青ざめて花の嵐に散りにけり
04.横浜の小径まがれば花辛夷
05.花の塵はなれし枝の影を載す
06.菜の花の向こうの富士を見降せり
07.砕けたる石を除けば蜥蜴出る
08.一握の砂読み終えて春かなし
09.奔放にあそべやあそべ春の鳥
10.咲きのぼる花色さやか塩ガ森

11.桜満ち堀に枝垂るる風のまま
12.花筏割りて浮き来る堀の鯉
13.斑なる浅間や佐久の花明かり
14.千本の桜わなわな雨の中
15.山茱萸の雨の数ほど散りにけり
16.花影や防犯カメラ校門に
17.風まとい頷き返す雪柳
18.甦る兄の軍装紫木蓮
19.森の辺を埋めて耀く桜花
20.はや芽吹き空に散るかな柿若葉

21.植木鉢に春の花苗とり合わせ
22.青空を飛んで桜の散りゆけり
23.コゲラ来て紅鮮やかに桃の花
24.子ら池に足入れ遊び花楓
25.本堂に甘茶零るる花祭り
26.淡き色いくつも滲む芽吹き山
27.河原に飛ぶ影滑る初燕
28.春の泥喜び跳ねる子の足裏
29.風光る女の揺らす耳飾
30.解け行く飛行機雲や花菜畑

31.供花添えて鶯音聞く心地よさ
32.ミモザ咲く寺門の紋に触れそうに
33.猫先へさきへと寺へ桜咲く
34.人溢れとんび高舞う花の山
35.枝移り鳥影忙し飛花落花
36.踏まぬよう見極む丘に初蕨
37.水脈を曳きゆたりゆたりと春の航
38.せっかくの嘘も言えずに萬愚節
39.捉えても逃げる記憶の春の月
40.ごうごうと山の桜に吹く風よ

41.花びらを透かして青き空仰ぐ
42.花満ちる峰を通りぬ時雨雲
43.咲き満てる花に出会いし嬉しさよ
44.咲く花も散る花も今ありてこそ
45.花冷えや三里をやいてあすを待つ
46.見上げれば桜と青空だけがある
47.花びらの途切れることなし大桜
48.目の前は桜遠くは瀬戸内海
49.花満ちて瑞枝の揺るる糸桜
50.子ら登るジャングルジムへ花の雲

51.燕もう来る頃母の忌近づきぬ
52.車窓打つ雨が辛夷や桜打つ
53.雨に花は花びら少しずつこぼす
54.チューリップ剪り集めれば虹の色
55.高き木の高きにすもも花盛り
56.道草咲く雄花雌花よ陽が西へ
57.花好きの多き街よ山茱萸咲く

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、4月6日(日)午後10時から始め、4月7日(月)午前9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。

◆4月ネット句会案内◆

◆4月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(春)計3句、桜の句などを下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2014年4月6日(日)午前0時~午後6時
④選句期間:4月6日(日)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:4月6日(日)午後10時

3月19日(水)

★つばき落ちる音の一会に朝厨   正子
艶麗な花を咲かせる椿は花全体が音を立てて地面に落ちる。その長閑な音を朝餉の用意をしながら聞いている。素晴らしい朝ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
初蝶のゆったり超ゆる大伽藍/小口泰與
大伽藍と小さな初蝶の対比、初蝶のういういしさ、可憐さ、うららかさをよく表すことになった。(高橋正子)

○昨日は関東地方に春一番が吹いた。今朝は晴れていたが、昼前から曇りがちの空になるが、白金台の自然教育園に信之先生と出かけた。園は、野焼きをする代わりに、すっかり枯れ草が刈りとられていたが、そろそろ草が萌え始めた。今日見た花は、片栗の花、甘菜の花、雪割り一華、モクレイシ、ウグイスカグラ、馬酔木の花、ミヤマカンスゲ、春蘭、紅白の藪椿、白山吹、福寿草。それに接骨木の蕾やがまずみの新芽などを見た。一番すばらしいのは、やはり、片栗の花。教育園のそばの公園には、山桜と寒緋桜が満開。沈丁花の紅白がよく匂っていた。

花びらを反らして凛と片栗は 正子
接骨木の芽ぐみし緑はやも濃し  正子
山桜若き緑の葉も出でし  正子
 里山
源流の泉の窪や山桜 正子

教育園で接骨木の細く短い枯れ枝を拾ったが、西洋では、接骨木は、魔法の杖といわれるだけあって、手にやわらかい。ハンの落ちた実も一つ拾った。ヤシャブシの実と似ている。ヤシャブシの実で、髪を梳かして遊んだ記憶がある。

○桜開花

[桜開花/横浜日吉本町(2013年3月18日)]

★さまざまの事おもひ出す桜かな/松尾芭蕉
★寐て聞けば上野は花のさわぎ哉 子規
★雀来て障子にうごく花の影 漱石
★朝日さす杉間の花を数えけり 碧梧桐
★一片の落花見送る静かな 虚子
★花散るや耳ふつて馬のおとなしき 鬼城
★闇の空よりちらちらと花散り来たり 亞浪
★一めんの落花の水に蛙の眼 風生
★西方に没る日は古風花堤 蛇笏

★さくらさくらさくらさくらてのひらに/高橋信之
★花淡し寺の甍がかがやけば/高橋正子
★多摩川の奥へと桜咲き連らぬ/高橋正子
★子らあそばす丘の平地の桃さくら/高橋正子
★煽られて花のゆるるは大いなる/高橋正子
★浅間山真向いにして花を待つ/小口泰與
★店先の竹筒に挿し早桜/祝恵子
★朝日はや照らして峰の山桜/多田有花
★朝桜ふれたき空はうすき青/川名ますみ

 サクラ(桜)は、バラ科サクラ属サクラ亜属 Prunus subg. Cerasus (またはサクラ属 Cerasus に分類)の樹木の総称である。日本においてはサクラは開花が話題となる点において、他の植物とは一線を画す存在である。現在ではメディアなどで俗に、単に「桜」と言うと、桜の中で極端に多く植えられている品種のソメイヨシノの事を指すことも多い。
 さくら開花予想2013【3月16日更新】
 今年の桜は、『早く』咲く所が多くなるでしょう。全体的に開花が平年より遅れた『去年よりは大幅に早く咲く』見込みです。13日には九州で開花が始まり、宮崎・大分・鹿児島など各地で過去最早記録となっています。東京でも16日に過去最早タイで開花しました。
 この冬は寒さが続いたため、桜の花芽がスムーズに休眠から覚めた地域が多いと考えられます。
3月初めまでは気温が低く出遅れていたものの、3月6日ごろからは平年を大幅に上回る気温の日が続き、この先も寒の戻りは少ないとみられます。このため、桜の開花は早めの所が多くなりそうです。(ウェザーマップ「さくら開花予想2013」より)

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

■ご挨拶/雛祭ネット句会■

 ご挨拶(高橋正子/主宰)
 花桃の花が明るく咲き、暖かい日差しが時折届くようになりました。今年は大雪に見舞われたり、寒さも尋常ではなかったように思いますが、雛祭、桃の節句などと聞きますと、気持ちが華やいで、いち度に春が来たと感じます。その雛祭の句会に明るい早春の句をご投句いただき、ありがとうございました。入賞の皆様おめでとうございます。皆様のご投句から、日々の生活がこれほどまでに変化し、一日として同じ日はないのだと気づかされました。我が家は例年松山での雛祭と同じように月遅れで雛様を飾っています。3月3日は雛こそ飾っていませんが、部屋の灯りも春のあかりとなって、句会のおかげで雛祭の気分を楽しみました。選とコメントをありがとうございました。どの句にもコメントがつけられて、一つ一つの句が大事にされているのは、他の句会ではあまりないのでは思います。互選の集計は藤田洋子さんに、句会の管理運営は信之先生がされました。いつもありがとうございます。これで雛祭ネット句会を終わります。では、次回の句会を楽しみにお待ちください。

 ご挨拶(高橋信之/管理)
 雛祭ネット句会が多くの参加者を得て、今年も楽しく終えた。雛祭は美しく優しい。そして、句会に寄せられた句がまた美しく優しい。昨年、花冠30周年を迎え、今年の花冠31年のネット句会が新年、立春、雛祭と続いた。振り返って、花冠の俳句が「美しく優しい」ということに気付いた。花冠の仲間たちが俳句と出会って、美しく優しいのだ。花冠創刊者として、これらの俳句を残し得たことが何よりも嬉しい。そして、参加者21名の皆さんに感謝している。皆さん、ありがとうございました。

ご挨拶(藤田洋子/スタッフ)
雛祭ネット句会ご参加の皆様、お世話になりありがとうございました。三月となり、少しずつ寒さも和らいで、あきらかに春の気配が漂います。季節の明るさを皆さんのご投句に実感いたします。また、雛祭へ込められた皆さんそれぞれの思いにふれ、心あたたかく和やかな気持ちになれました。折しも、信之先生、正子先生のご長女、句美子さんのご結婚と重なり、嬉しいご慶事に、いっそう明るく華やいだ句会となりました。句美子さんのお幸せを心からお祈りしております。ご多忙の中、信之先生、正子先生には句会の開催をしていただき、心から感謝申し上げます。選句やコメントを寄せていただいた皆様、ありがとうございました。