★ゆうすげに月まだ淡くありにけり 正子
暮れかかった空に燈をともしたように咲くゆうすげをまだ淡い月の光が柔らかに包んでくれます。朝には短い花の命を閉じるゆうすげですが、刻々と月に照らされて咲くゆうすげの美しく可憐な花の命が思われます。(藤田洋子)
○今日の俳句
青田から青田をつなぐ水の音/藤田洋子
青田に流れ込む水は、水源から小川へ、そして、それぞれの田へ分けれた水。「つなぐ」が的確で、どの田も青々と育っている。(高橋正子)
○蒲の花(蒲の穂)

[蒲の花(穂の下部は雌花、穂の上部は雄花)/日吉本町]
★蒲の穂は剪るべくなりぬ盆の前/水原秋桜子
★蒲の穂に緋の絨緞の見ゆる家/飯田蛇笏
★蒲の穂やはだしのままに子の育つ/池内たけし
★蒲の穂を捧げ自転車向うから/中 ひろし
蒲の穂に初めて接したのはお花を習っていたとき。はたしてそれが栽培されているものか、水辺に生えているものかあまり考えたこともなかった。面白い形状の花材ではあるが。松山城より西にある衣山に住んだときに蒲が生い茂る湿地があった。近くにある考古館の傍の池にも蒲があった。身近にあることに驚いたが、こどものころは一度も見たことがなく、因幡の白さぎの話で知って、どんなものかと思っていた。
赤茶色の雌蕊の部分とその上に突き出た細い棒状の雄蕊の部分が蒲の特徴であろう。秋になると穂絮が風に千切れて吹かれているのを見るが、国生みのころを想像して、淋しさを感じる。横浜では、四季の森公園の池の辺にある。写真に撮ればそれなりに雰囲気のある写真になるがやはり暗さと淋しさがある。
★蒲の花遊ぶ子どもを透かしたり/高橋正子
ガマ(蒲、香蒲、学名:Typha latifolia L.)は、ガマ科ガマ属の多年草の抽水植物である。北半球の温暖な地域やオーストラリアと日本の北海道から九州の広範囲に分布する。池や沼などの水辺に生える。葉は高さ1-2 mで、水中の泥の中に地下茎をのばす。夏に茎を伸ばし、円柱形の穂をつける。穂の下部は赤褐色で太く、雌花の集まりでありソーセージに似た形状である。穂の上半分は細く、雄花が集まり、開花時には黄色い葯が一面に出る。風媒花である。雄花も雌花も花びらなどはなく、ごく単純な構造になっている。雌花は結実後は、綿クズのような冠毛を持つ微小な果実になる。この果実は風によって飛散し、水面に落ちると速やかに種子が実から放出されて水底に沈み、そこで発芽する。 また、強い衝撃によって、種が飛び散ることもある。花粉は生薬としては「蒲黄」(ほおう)と呼ばれる。雌花の熟したものは綿状(毛の密生した棒様のブラシ状)になり、これを穂綿と呼ぶ。日本神話の因幡の白兎の説話では、毛をむしり取られた兎に対して大国主は蒲黄を体につけるように助言している。しかし、唱歌の「大黒さま」の中ではそれが「がまのほわた」となっており、両者は混同されていたことがわかる(もっとも、摘みたての「がまのほ」に触ると大量の黄色い花粉がつく)。
◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

★睡蓮の花のひとつが離れ浮き 正子
睡蓮の花は固まっていくつか咲いているのであろうが、一つだけ離れて浮いている。どことなく落ち着いた風景が浮かんできます。(高橋秀之)
○今日の俳句
早朝の池に蓮見の来訪者/高橋秀之
早朝、作者はジョギングか散歩で蓮池を訪ねたのだろう。そのとき、蓮見の来訪者が意外と大勢いるのに驚いた。蓮は早朝に開花するので、この開花の時間を狙っての蓮見客。(高橋正子)
○カサブランカ

[カサブランカ/横浜日吉本町]
★カサブランカ咲き特別な日々となる/山崎 杏
★今年またカサブランカの紅の蕊/稲森如風
★風そよぎカサブランカの薫りあり/中居秀童
★カサブランカに風あり白いと思う朝/高橋信之
カサブランカがブームになって、田舎都市の松山でも愛好者が増えた。大変美しく豪華な百合であると知ったし、花屋でもまず目についた。それを自分で咲かせてみようと思ったのは、加入しているコープのパンフレットでカサブランカの球根の案内があったから。試しに注文して球根が届いた。秋に鉢植えにして花を楽しみにしていた。普通の百合のように芽がでるものとおもっていたが、筍ようような切っ先が伸びてきて驚いた。なんの手入れもなく、カサブランカの花を楽しんだ。翌年は咲かせようとはおもわなかったので、私が咲かせたカサブランカはこのときだけになっている。
横浜・四季の森公園で山百合を見て、カサブランカほどの大きさだと思ったが、カサブランカのもとは日本の山百合であることを後で知った。私の大きさの認識については間違っていなかったということだろう。
松山・衣山
★カサブランカ海をうしろに咲く今朝よ/高橋正子
カサブランカの原産地は北半球の日本を含む亜熱帯~亜寒帯である。ユリ属のうちヤマユリ、タモトユリなどを原種とするオリエンタルハイブリッドの一品種。開花時期は7~8月。1970年代にオランダで作出され、世界的なブームを呼んだ。純白の大輪の花を咲かせ「ユリの女王」と言われる。結婚式の際のブーケをはじめ、主に贈り物の花束として喜ばれる花である。オリエンタル・ハイブリッドは、ヤマユリやカノコユリ、タモトユリなど森林のユリを交配して作られた品種群で、その中の「カサブランカ」が有名であるが、カサブランカを生み出す交配で主要な役割を果たしたトカラ列島口之島原産のタモトユリは、皮肉なことに自然状態ではほぼ絶滅してしまっている。なおカサブランカはモロッコの都市の一つ。なお、映画『カサブランカ(英語: Casablanca)』は、第二次世界大戦にアメリカが参戦した1942年に製作が開始され、同年11月26日に公開されたアメリカ映画で、フランス領モロッコのカサブランカを舞台にした。ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが出演しており、映画スターベスト100(1999年)の男性1位にハンフリー・ボガート、女性4位にイングリッド・バーグマンが選ばれている。
◇生活する花たち「月見草・大賀蓮・のうぜんかずら」(横浜・四季の森公園)

★うっすらと平らに緋鯉の浮いて来し 正子
人が池に近づきますと、馴れた鯉は餌を貰えるものとどこからともなく集まって来ます。その集い来る鯉の中でも、緋鯉はとても存在感があり愛おしく思えます。その集い来る情景は確かに「うっすらと平らに」ですね。「緋鯉」が夏の季語と知り、とても良い勉強となりました。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
そびえ立つ青嶺青嶺の熱海かな/桑本栄太郎
熱海というと海に目が向くが、青嶺も続くのである。その新鮮さも旅の目を楽しませてくれる。(高橋正子)
○凌霄葛(のうぜんかずら)

[凌霄の花/横浜市港北区箕輪町] [凌霄の花/横浜・四季の森公園]
★家毎に凌霄咲ける温泉(いでゆ)かな/正岡子規
★のうぜんの花を数へて幾日影/夏目漱石
★凌霄や長者のあとのやれ築土/芥川龍之介
★のうぜんの暮れて色なし山の家/臼田亞浪
★噴井あり凌霄これを暗くせり/富安風生
★凌霄花落ちてかかるや松の上/山口青邨
★凌霄のかづらをかむり咲きにけり/後藤夜半
★凌霄花や子は道の上に絵をかける/星野立子
★のうぜんや海近ければ手狭でも/阿部みどり女
★凌霄花の朱に散り浮く草むらに/杉田久女
★塵とりて凌霄の花と塵すこし/高野素十
★凌霄に井戸替すみし夕日影/西島麦南
★松高き限りを凌霄咲きのぼる/橋本多佳子
★凌霄花や問ふべくもなき門つづき/中村汀女
★今日の日の凌霄花にまで傾きし/中村汀女
★凌霄は妻恋ふ真昼のシヤンデリヤ/中村草田男
★のうぜんや眞白き函の地震計/日野草城
★凌霄花に沈みて上るはね釣瓶/星野立子
★凌霄花の咲き垂れし門父母います/加藤楸邨
のうぜんかずらを初めて知ったのは、大学2年生の夏。島根県へ注ぐ江川が流れる広島県三次盆地の高台のお寺に咲いていた。当時所属していた松山の俳句結社の吟行に参加させてもらったときのこと。真夏の煙るような空に曙色の大ぶりな花が魅力的だった。
砥部の家にも植木屋さんが持ってきてくれたが、できつつある庭の雰囲気にあわなかったので、お隣にあげたら見事に花を咲かせて、それを楽しませてもらっていた。その花を向かいの方が植えたがり、隣の方が分けてあげて、向かいの家にもそののうぜんかずらが玄関脇を覆うほど花を咲かせた。夏が来ると、隣と向かいののうぜんの花を我が家の花のごとく楽しんだものである。
★凌霄花の朝(あした)の花と目が合いぬ/高橋正子
ノウゼンカズラ(凌霄花、紫葳、Campsis grandiflora)はノウゼンカズラ科のつる性木本。夏から秋にかけ橙色あるいは赤色の大きな美しい花をつけ、るつる性の落葉樹。気根を出して樹木や壁などの他物に付着してつるを延ばす。花冠は漏斗状。結実はまれである。日本で栽培されるノウゼンカズラは中国原産で平安時代に渡来したといわれる。ノウゼンというのは凌霄の字音によるといわれる。古くはノウセウカズラと読まれ、これがなまってノウゼンカズラとなった。霄は「空」「雲」の意味があり、空に向かって高く咲く花の姿を表している。夏の暑い時期は花木が少なく、枝を延ばした樹木全体に、ハッとするような鮮やかな色の花を付け、日に日に咲き変るので、よく目立つ。茎の先に房状花序をつける。花冠はラッパ型で先が5片に裂けて開く。葉は奇数羽状複葉。つるは気根を出し固着すしながら伸びる。幹はフジと同じように太くなる。樹勢が非常に強く丈夫な花木であり、地下茎を延ばしひこばえを周囲に芽生えさせ、繁殖する。落花すると、蜜がたれ周りを湿らすほど。その蜜に、メジロが目ざとく感知して集まってくる。蜂も姿を現す。その蜜は毒性があるといわれるが、根拠のない俗説・風評である。花や樹皮は漢方薬では利尿や通経に使われる。園芸品種が複数存在し、ピンクや黄色などの花色もある。新梢に房となって花が枝元から次々に咲き、花は毎日のようにすぐに散る。花が終わった新梢をそのままにしておくと、樹の姿が乱れ、樹勢が衰えるので適切な剪定が必要。ノウゼンカズラ属はノウゼンカズラと、アメリカ合衆国南東部原産のアメリカノウゼンカズラ(C. radicans)、およびこれらの雑種C. x tagliabuana からなる。アメリカノウゼンカズラの花は中国系ノウゼンカズラより小ぶりで細長く、濃い赤橙色。送粉の仕方に特色があり、世界でもっとも小さい鳥といわれるハチドリが空中をホバリングしながら嘴を花の中にさし込んで蜜を吸う。花の形がラッパに似ていることから英語では「トランペット・フラワー」、「トランペット・ヴァイン」あるいは「トランペット・クリーパー」と呼ばれる。
◇生活する花たち「あさざ・野萱草(のかんぞう)・山百合」(東京白金台・自然教育園)

★泳ぎ子の母呼び父と沖にいる 正子
広い海で「お母さん」と呼ぶ声が青い空に吸い込まれていくようです。優しい父母のもとで育てられている子どもの姿が輝き、楽しい夏の思い出の1ページが甦るようです。(井上治代)
○今日の俳句
たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
夏は水が気持ちがよい。野菜を洗うにも手に水を楽しみながら洗う。夏野菜もいろいろとあって、新鮮そのもの。それが涼感を句にもたらしている。(高橋正子)
○山百合

[山百合/横浜・四季の森公園(2012年7月19日)]_[山百合/東京白金台・自然教育園(2013年7月9日)]
★山百合を捧げて泳ぎ来る子あり/富安風生
★山百合の木蔭孤高を守り咲く/宮崎正
★山百合や幾曲りして通夜の家/石田邦子
★山百合のいつせいに咲く坂の町/庄中健吉
★山百合を剪るや五輪の花おもく/瀧春一
★夜を徹す百合の香にあり書き継げり/岡本眸
★一月の百合を捧げて祈りけり/稲畑汀子
★いよよ咲く百合よ歓喜の蘂放ち/林翔
★百合といふ百合が鉄砲百合の島/宮津昭彦
子どものころは、百合と言えば梅雨の走りのころから咲く白い鉄砲百合と夏休みに咲く赤い鬼百合の二つであった。今はカサブランカのような豪華な百合やさまざまな色のすかし百合の仲間がたくさんあるようである。昭和30年代だったと思う。父が前の畑に百合の花を売るために植えた。そのころは売る花は菊に限って農家が栽培していたようだが、父は鉄砲百合に挑戦して、うまく咲かせた。蕾のときに切り取られるが、白がかった緑色の蕾と鋏で切り取る音が目に耳に残っている。咲いてしまった花は学校に持っていった。鉄砲百合の花は生活の花となっていた。
もう7,8年前になるだろうか。瀬戸内海が遠くみえる松山のマンションのベランダでカサブランカを育てた。その芽は、筍ほどで、百合の芽とは思えなかった。たしかにカサブランカの花であった。
夏休みのころ咲く赤い百合は、すぐ前の伯父の家にあって、垂らした簾に似合っていた。冷房もない時代、それも涼しい景色だった。旅をすれば、切通しのがけなどに白い百合が咲いている。白百合は、清純さの代表ともなって、祈りの花としても欠かせない。
今年7月19日、四季の森公園へ行った。この日は大賀蓮を見るのが主な目的であったが、里山の林縁を歩くうちに、山百合に出会った。花の重みで茎が倒れている。細い竹を支柱に立ててあったが、ヘクソカズラの蔓が山百合に巻きついて支柱も用をなさないところもあった。数花咲かせているのも、一輪のもあったが、その大きさと蕊の朱色の強烈さに驚いた。今年は四季の森公園の山百合が例年になくよく咲いているとのことであったが、私が山百合を見たのは初めてである。神奈川県の県花に指定されていて、北陸地方を除く、近畿地方以北の山の林縁や叢に生えていると知った。
★雲行かす山百合朱き蕊を立て/高橋正子
富士登山のとき・河口湖
★松林に白百合のまばら富士裾野/高橋正子
百合は、ユリ目ユリ科のうち主としてユリ属(学名:Lilium)の多年草の総称である。属名の Lilium はラテン語でユリの意。アジアを中心にヨーロッパ、北アメリカなどの亜熱帯から温帯、亜寒帯にかけて広く分布しており、原種は100種以上を数える。代表的な種に、ヤマユリ、オニユリ、カノコユリ、ササユリ、テッポウユリ、オトメユリなどがある。ヤマユリ(山ユリ、学名:Lilium auratum)とはユリ科ユリ属の球根植物。日本特産のユリ。北海道と関東地方や北陸地方を除く近畿地方以北の山地の林縁や草地に分布する。和名は、山中に生えることからつけられた。草丈は1~1.5m。花期は7~8月頃。花は、花弁が外に弧を描きながら広がって、1~10個程度を咲かせる。その大きさは直径20cm以上でユリ科の中でも最大級であり、その重みで全体が傾くほどである。花の色は白色で花弁の内側中心には黄色の筋、紅色の斑点がある。花の香りは日本自生の花の中では例外的ともいえるほど、甘く濃厚でとても強い。発芽から開花までには少なくとも5年以上かかり、また株が古いほど多くの花をつける。風貌が豪華で華麗であることから、『ユリの王様』と呼ばれる。1873年、ウィーン万博で日本の他のユリと共に紹介され、ヨーロッパで注目を浴びる。それ以来、ユリの球根は大正時代まで主要な輸出品のひとつであった。西洋では栽培品種の母株として重用された。カサブランカ(Casa blanca)は、日本に自生する山百合と鹿の子百合等を交配して育種された。 ヤマユリは神奈川県の県の花に指定されている。
◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

★松林に白百合まばら富士裾野 正子
雄大な富士の裾野に松林があり、白い百合が咲いているのが見えます。その裾野に佇み富士山も眺めていられるのでしょうか。(祝恵子)
○今日の俳句
あるだけの夕餉は採りたて夏野菜/祝恵子
「あるだけの夕餉」は、いい生活だ。「採りたて夏野菜」は、家庭菜園だろうか。身近なところで栽培された新鮮な食材は、美味しい。これもいい生活なのだ。(高橋信之)
○大賀蓮

[大賀蓮/横浜・四季の森公園]
★大沼も冬の構図や大賀蓮/青木牧風
★大賀蓮咲けりと書院開けらるる/赤間智子
★おほらかにおほきく古代蓮咲けり/加藤暢一
★しこり持つ左の乳房古代蓮/田中雅秀
★惜し気なく花弁散らすや古代蓮/鈴木壮治
★古代蓮明るし楽し朝の日に/高橋信之
★朝日白し古代蓮の花の上に/高橋正子
大賀ハス(オオガハス、おおがはす)は、1951年(昭和26年)、千葉県千葉市検見川(現・千葉市花見川区朝日ケ丘町)にある東京大学検見川厚生農場(現・東京大学検見川総合運動場)の落合遺跡で発掘された、今から2000年以上前の古代のハスの実から発芽・開花したハス(古代ハス)のこと。戦時中に東京都は燃料不足を補うため、花見川下流の湿地帯に豊富な草炭が埋蔵されていることに着目し、東京大学検見川厚生農場の一部を借り受け草炭を採掘していた。採掘は戦後も継続して行われていたが、1947年(昭和22年)7月28日に作業員が採掘現場でたまたま1隻の丸木舟と6本の櫂を掘り出した。このことから慶應義塾大学による調査が始められ、その後東洋大学と日本考古学研究所が加わり1949年(昭和24年)にかけて共同で発掘調査が行われた。その調査により、もう2隻の丸木舟とハスの果托などが発掘され、「縄文時代の船だまり」であったと推測され落合遺跡と呼ばれた。
そして、植物学者でハスの権威者でもある大賀一郎博士(当時・関東学院大学非常勤講師)が発掘品の中にハスの果托があることを知り、1951年(昭和26年)3月3日から地元の小・中学生や一般市民などのボランティアの協力を得てこの遺跡の発掘調査を行った。調査は困難をきわめめぼしい成果はなかなか挙げられなかったが、翌日で打ち切りという30日の夕刻になって花園中学校の女子生徒により地下約6mの泥炭層からハスの実1粒が発掘され、予定を延長し4月6日に2粒、計3粒のハスの実が発掘された。
大賀博士は5月上旬から発掘された3粒のハスの実の発芽育成を、東京都府中市の自宅で試みた。2粒は失敗に終わったが3月30日に出土した1粒は育ち、翌年の1952年(昭和27年)7月18日にピンク色の大輪の花を咲かせた。このニュースは国内外に報道され、同年11月17日付米国ライフ誌に「世界最古の花・生命の復活」として掲載され、博士の姓を採って「大賀ハス」と命名された。また大賀博士は、年代を明確にするため、ハスの実の上方層で発掘された丸木舟のカヤの木の破片をシカゴ大学原子核研究所へ送り年代測定を依頼した。シカゴ大学のリピー博士らによって放射性炭素年代測定が行われ、ハスの実は今から2000年前の弥生時代以前のものであると推定された。自宅近く、博士の銅像が建てられている府中市郷土の森公園修景池には、この二千年ハスが育てられており、鑑賞会が催されている。
この古代ハスは、1954年(昭和29年)6月8日に「検見川の大賀蓮」として千葉県の天然記念物に指定された[3]。また1993年(平成5年)4月29日には千葉市の花として制定され、現在千葉公園(中央区)ハス池で6月下旬から7月に開花が見られる。日本各地は元より世界各国へ根分けされ、友好親善と平和のシンボルとしてその一端を担っている。(フリー百科事典「ウィキペディア」より)
○一昨年の日記より:
四季の森公園/大賀蓮と合歓とやまゆり
昨日午前、横浜市緑区にある四季の森公園に信之先生と出掛けた。自宅から100mほどの横浜市営地下鉄日吉本町駅で乗車し、30分して終点の中山駅で下車し、15分ほど歩くと四季の森公園がある。大賀蓮を目当て園内に入った。園内のワークセンター脇の池にある。残念なことに蓮は池の遠くに植えてあって、遠く朝日を反射して光輝いている。きれいなのだけれど、写真に撮るには技術がいる。遠くて、反射しているものを撮るにはどうしたらよいか勉強しなければいけない事態になった。がとにかく撮った。期待しなかったけれど、山沿いの道にはやまゆりが盛りで、例年になくよく咲いているとのことであった。花がカサブランカほどもある。白い花に斑点もはっきりして、蕊は朱色である。一茎に3,4輪咲いているのも、一つだけ咲いているのもある。やまゆりは群生しているのではなく、下草のなかにぽつぽつと咲いている。今日が見ごろの感じがした。宵待草も黄色い蕾を付けていた。合歓はこれまでこの公園内で最も美しく咲いていた。合歓の花も今日が見ごろかと思う。バックに山木々を入れて、合歓の花をくっきりさせた。背景の山の木々が暗すぎたのが残念。午前の合歓の花は朝日を受け、光が満ち溢れてすばらしかった。俳句日記のブログに載せる「生活する花たち」の写真を撮った。
◇生活する花たち「蛍袋・立葵・紅かんぞう」(横浜・四季の森公園)

★すずしさに星座の話読みつなぐ 正子
都会では、今ははもう星々を線でつなぎ星座の姿を思い浮かべることが難しくなってしまいました。昔はよく夕涼みなどに出て星空を見上げ、遠いメソポタミアの神話に思いを馳せたものでした。子供たちにとっては、それは時間的にも空間的にも思いの広がる楽しいひと時でした。 (小西 宏)
○今日の俳句
行き交える電車の過ぎて蔦の青/小西 宏
電車が行き交っている間は、向こうにあるものに目が届かないが、過ぎた向こうには蔦が青々と茂っているのが目に鮮やかに飛びこむ。行き交う電車にこの蔦は煽られ揺れていたであろうが。(高橋正子)
○朝顔

[朝顔/横浜日吉本町]
★あさがほに我は飯くふ男かな 芭蕉
★朝顔や其の日其の日の花の出来 杉風
★朝がほに釣瓶とられてもらひ水 千代女
★朝がほや一輪深き淵のいろ 蕪村
★朝がほや垣にしづまる犬の声 白雄
★あさがほの花はぢけたりはなひとつ 暁台
★雪国の大蕣の咲にけり 一茶
★朝顔のさまざま色を尽すかな/正岡子規
★朝顔の紺の彼方の月日かな/石田波郷
★堪ふることばかり朝顔日々に紺/橋本多佳子
★朝顔の濁り初めたる市の空/杉田久女
★朝顔むらさき海に裏側みせて棲む/桂 信子
朝顔は、鉢植えにして行燈作りにするか、四つ目に竹を組んで垣根を作って咲かせてきた。最近はネットに上らせているが、風情がなくていけない。四つ目の垣に咲き上ると、花はみんな表を向いて、裏側からは、葉ばかり眺めることになる。でも、外からみれば、すずしい花がいくつも咲いて、きれいなのだ。
桂信子の「海に裏側みせて」は、海の見えるベランダで咲かせたときは、まったくこの通り。久女の「濁り初めたる市の空」は、朝顔が涼しい時にさいているのは、ほんのひととき。すぐに市の空は煙ったように濁り初め、じりじりと暑くなる。朝の終わりを咲く朝顔か。
横浜に引っ越してから、朝顔の種をまく時期がいつも遅くなっている。今年も5月20日過ぎに蒔いた。ゴールデンウィークに種をまくことにしていたが、ついつい遅くなっている。遅くなっても必ず蒔く。遅くなりはしたが、2,3日前から咲き始めた。最初は錆朱、次は赤紫、その次も赤紫。毎朝、何色が咲いたか楽しみにみるのが夏の朝の日課となるが、青も白もはまだ咲いていない。。朝顔の色を一つと言われれば、青をあげたい。西洋朝顔は、青い花ではあるが、昼間も夜も花をたくさん咲かせて、涼しいそうに見えはしない。日本の朝顔の破れそうなロート型の花が日本の夏にはよく似合う。
◇生活する花たち「あさざ・野萱草(のかんぞう)・山百合」(東京白金台・自然教育園)

★しがみつくかなぶん捨てて衣を畳む 正子
かなぶんと取り込んだ干し物の情景がありありと目に浮かび、共感とともに、親しさと心楽しさを感じる日常の一場面です。かなぶんを捨てたあとの「衣を畳む」所作が、とりわけ美しく、整然とした日々のお暮らしまでも思われます。(藤田洋子)
○今日の俳句
雨雲の山を離れて合歓の花/藤田洋子
合歓の花を的確に捉えている。愛媛の久万高原などに出かけると、垂れていた雨雲が山を離れていって、合歓の花があきらかに浮かびあがってくるが、このようなところに合歓は自生する。(高橋正子)
○ブラックベリー

[ブラックベリー/横浜市港北区箕輪町]
★ブラックベリーの黒輝きて今朝の晴れ/高橋信之
★蓮寺の結界出ればブラックベリー/高橋正子
日吉本町の隣合わせの箕輪町にある大聖院の門前の家にブラックベリーがある。フェンスに絡ませて育てているが、驚くほど沢山実を付けている。自転車で通りすがりに見たときは、ラズベリーかと思った。それにしては、色が緑色がかりすぎている感じもした。何度かその前を通る内に実が黒く色づいてきたので、ブラックベリーと気付いた。ラズベリーに比べて実が少し長くて、つぶつぶがはっきりしているように思う。違う町にくれば、また違う植物を好んで植えるものだとつくづく思った。
ブラックベリー (Blackberry) は、バラ科キイチゴ属の一群の種または1種の低木およびその果実。広義には Rubus 亜属の総称として使う。ただし Rubus 亜属にはブラックベリーのほかにデューベリー (Dewberry) 類も含まれ、それらはブラックベリーから区別することもある。クロイチゴ(Rubus mesogaeus)、ブラックラズベリー (Rubus occidentalis) はいずれもラズベリーであり、(広義でも)ブラックベリーには含まれない。狭義には、 Rubus 亜属の栽培種セイヨウヤブイチゴ(西洋藪苺、学名 Rubus fruticosus)。ただし Rubus fruticosus をさらに多数の種に分割する説もあり、その場合は狭義のブラックベリーも多数の種の総称になる。米国中部原産で、落葉半つるである。開花期は5月下旬から6月で、 結実期は7月から8月上旬である。果実は生のまま食べることも出来るが、多少酸味があるためジャムにして食べることも多い。
◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

★夕焼けが海に分かたれ平らな沖 正子
日没により西の空を赤く染めると共に海もまた美しい夕焼けの色に染まっていきます。空から海へと夕焼けを分かたれ、更に平らな海が遥かな沖まで続いていると言う広大な美しい情景が見えて参ります。 (佃 康水)
○今日の俳句
草刈り機木魂し合える谷間かな/佃 康水
夏草が生い茂り、草刈りに忙しいときだ。谷間のあちこちで使う草刈り機の音が木魂する。谷間の村も生き生きとし、活動的な暮らしがうかがえる。(高橋正子)
○白粉花(おしろいばな)

◇白粉花/横浜日吉本町◇
★白粉の花ぬつてみる娘かな/小林一茶
★おしろいは妹のものよ俗な花/正岡子規
★道端に白粉花咲ぬ須磨の里/正岡子規
★白粉花妻が好みて子も好む/宮津昭彦
★白粉花の実をつぶす指若しとす/金子兜太
★おしろいや人は心の裏見せず/稲畑汀子
★おしろいの花のたそがれ白痴の子/成瀬櫻桃子
★路地狭むおしろい花や廓跡/水原春郎
おしろいばなは、白粉花と書く。秋の季語。熱帯アメリカ原産であるということだが、古くに渡来したせいか、夕涼みのころの日本的情緒のある花と思ってきた。それも昭和の白い割烹着の母を思わすような花と。
白粉花咲けり昭和の母の花/正子
暑さも収まる5時過ぎに日吉本町六丁目にある西量寺へ行った。目的は、白粉花の写真を撮るため。西量寺は、天台宗のこじんまりしたお寺で、石垣の上にある。近づけば、民家の屋根より少し大きいかなというぐらいの屋根がすぐ目に付く。
寺の屋根西は西日の色に照り/正子
お寺の石垣の裾を埋めて白粉花が咲いてほのかな香りが漂う。白粉花といえば、理科でならった遺伝の
法則を思いだすのだが、優性遺伝、劣性遺伝とあって、どちらかが遺伝する。普通は、赤い花と白い花を交配すると、白か赤かになる。ところが、白粉花は、ピンクになるというようなこと。西量寺の白粉花も長年同じ場所に種がこぼれて生えるのだろう、白に赤い斑があるものがたくさん見られた。純粋に白、純粋に赤というのが少ない。石垣の裾は夕方はちょうど日陰になって、日中の猛暑はどこへ去ったのかと思うほど、涼しい風が吹いていた。ほのかな香りがするのも、白粉花らしい。白粉花はまだ花が咲いているときから黒い種ができて、子どもがそれを割って中の白い粉を出し、白粉にして遊ぶ。子どもにも好まれる花と言えるのだろう。
子ども時代の戦後を思い出すが、妻も子も慎ましさがあった。貧しいときであったが、個々のことを言わなければ、暗い時代ではなかった。扇風機さえも無い家が多かったから、夕方には縁台を出して、夕涼みをした。西瓜を食べたり、花火をしたり、星を見たり。垣根の根元には、白粉花が咲いていた。白粉花は、ちゃんとした場所ではなく、垣根の下や、ごみなどを焼く畑の隅に咲いた。種がこぼれて年々そこに花を咲かせるようになるのが多いからだろう。
白粉花も朝顔も秋の花なのだと、この猛暑に思う。ずっと秋口まで咲いてくれる。朝咲く花と夕咲く花を夏の花にしておくには、慎ましすぎる。
◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

★さくらんぼみどりあかるき茎が縦横 正子
さくらんぼは桜桃とも言われ、夏の訪れとともに店頭にも出まわりますが、山形産がよく知られるところです。つやつやとしたさくらんぼは、その茎とともに目にも新鮮でおやつやデザートにうれしい一品です。(小川和子)
○今日の俳句
花鋏鳴らし涼しき庭飽かず/小川和子
「庭飽かず」に、作者の楽しさが読み取れて、それが読者を楽しませてくれる。たくさん咲いた花の中にいて、花鋏を軽く鳴らしながら涼しい庭を巡っている。花に囲まれたうれしさが涼やかに詠まれた。(高橋正子)
○百日紅(さるすべり)

[百日紅/横浜日吉本町]
★明日もあるに百日紅の暮れをしみ 千代女
★百日紅浮世は熱きものと知りぬ 漱石
★武家屋敷めきて宿屋や百日紅 虚子
★日除して百日紅を隠しけり 鬼城
★百日紅咲く世に朽ちし伽藍かな 蛇笏
★武者窓は簾下して百日紅 龍之介
★百日紅地より分れて二幹に 風生
★独り居れば昼餉ぬきもし百日紅 みどり女
★百日紅燃えよ水泳日本に かな女
★少女倚る幹かゞやかに百日紅 麦南
★真青な葉の花になり百日紅 立子
★百日紅乙女の一身またたく間に 草田男
★地福寺は山を負ふ寺さるすべり 万太郎
★朝雲の故なくかなし百日紅 秋櫻子
★百日紅われら初老のさわやかに 鷹女
★いつの世も祷りは切や百日紅 汀女
★百日紅出征の花火突と鳴り 不死男
★乳子ほのと立ちて新し百日紅 不死男
★夕栄にこぼるる花やさるすべり 草城
★百日紅この叔父死せば来ぬ家か 林火
★百日紅片手頬にあて妻睡る 楸邨
★女来と帯纏き出づる百日紅 波郷
さるすべりには、白、赤、ピンクの花がある。赤とピンクの色は、微妙に違った花が見られる。夏の間、夾竹桃と並んで咲き継ぐのが「さるすべり」。幹がつるつるして木登り上手な猿が滑り落ちるから、こんな名がついたのか。四国松山に住んでいた頃、わが家の庭の真ん中にあったのが、薄紫に近いピンク。風が吹けばフリルのような花がこぼれる。真っ青な空も、炎昼の煙るような空にも似合う。さるすべりには、古木も多く、日吉の金蔵寺には、幹の半分以上がなくなっているが、残った幹がよく水を通わせるのか花を相次いで咲かせている。県の名木に指定されている。
◇生活する花たち「蛍袋・立葵・紅かんぞう」(横浜・四季の森公園)
