■9月ネット句会■
■清記/20名60句
01.十五夜のまだ空蒼き嶺の奥
02.彼岸花大地の憤怒やも知れず
03.秋澄むや肺の奥まで丘の風
04.福耳でおはす観音照紅葉
05.声出して論語読む人月今宵
06.暫くと書きて筆措く紅葉宿
07.道々に城見える町子規忌来る
08.えのころを手に夕風の川に沿い
09.新米研ぐ水さらさらと指伝う
10.田一枚伸ばす散歩やきりぎりす
11.秋風や暗記せしこと早忘る
12.芝刈り機小石とばすや鉦叩
13.神殿に波打つ音や大満月
14.十六夜の海に種牡蠣沈められ
15.筏曳き漁船沖ゆく鰯雲
16.ドングリの朝の輝き拾いけり
17.陽を受けてどんぐり朝の輝きを
18.我が街も今朝から椎の実零れ初む
19.少年の無口に答う葛の花
20.見渡して花ひとつなき葛ケ原
21.秋の野に遊びて夜の薬風呂
22.本堂を抜ける風あり秋澄めり
23.ぶどう棚路地の店舗の京人形
24.子に約束ふうせんかずらのハートの種
25.群青の空の真中に名月あり
26.忙しや花粉だんごの秋の蜂
27.新さんまどの海見つめていたのやら
28.ちちろ鳴く狭庭の隅に木漏れ日が
29.稲の秋遍路道にも香り立ち
30.鄙の里鐘の音遠く秋澄める
31.大雨に洗われしドームと赤とんぼ
32.山近く明るく揺れる芒原
33.肩の冷え名月後に車椅子
34.笙の音の秋風にのり献花式
35.新豆腐水に放てば水はじく
36.羽音たて花から花へ秋の蝶
37.秋天のただ一枚のああ青よ
38.秋天の隠すもの無しあっけらかん
39.バス降りてここより歩く秋高し
40.赤とんぼの群れに飛び込む河川敷
41.秋まつり奉納花火の大きな輪
42.秋風に速き流れの雲ひとつ
43.隙間なく里芋積まれ届きたり
44.灯にひかる茄子それぞれの姿して
45.枝豆のポタージュスープ青さらり
46.語らいの窓にさし込む満月光
47.宿半天羽織りて友と花野ゆく
48.身にしむやコスモスかくも愛らしく
49.窓に響く祭太鼓のリズム聴く
50.秋の風ふわりと流れ高き雲
51.秋晴れて紅白トランプに拍手湧く
52.疲れた体にすかっと爽快ソーダ水
53.雨上がり西瓜が涼しく並んでる
54.天然のうれしなつかし鮎の味
55.どんぐりの緑ころがる風の朝
56.風清き小さな庭に秋のバラ
57.敬老の日の絵手紙の幼き字
58.満月光稲田の水を煌めかす
59.高原の空へ手を伸べ林檎もぐ
60.稲穂そよぐ稔りの音を風に乗せ
◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、9月14日(日)午後6時から始め、同日(9月14日)午後9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、9月15日(月)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、9月15日(月)正午~9月16日(火)午後6時です。
★葛の花匂わすほどの風が起き 正子
葛の花は秋の七草の一つで、何処までも蔓が伸びゆくほど繁殖力が旺盛です。葉が大きく茂り、葉裏には紅紫の可愛い花を咲かせており、微かでも風が起こると葉裏の花のほのかな香りが漂いほっとこころ癒されます。(佃 康水)
○今日の俳句
韮の花浸す野川の音澄むへ/佃 康水
韮の花は新涼の季節に先駆けて咲く。摘んだ韮の花は野川に浸すと涼やかな花となる。「清ら」は主情が強いが、「澄む」は写生であっても作者の深い内面が出る。(高橋正子)
○唐辛子

[唐辛子/横浜日吉本町]
★唐辛子男児(おのこご)の傷結ひて放つ 草田男
男の児は、手足に傷などよく負うものだ。 膝でも擦りむいたのだろうか、包帯をして、また遊びに行かせた。唐辛子が熟れるころは、「天高し」ころ。気候もよく、男児はことに日暮れ際までよく遊ぶ。ぴりっとした唐辛子の可愛さは、また男児の元気な可愛さに通じる。(高橋正子)
★青くても有べき物を唐辛子 芭蕉
★鬼灯を妻にもちてや唐がらし 也有
★うつくしや野分のあとのとうがらし 蕪村
★寒いぞよ軒の蜩唐がらし 一茶
★雨風にますます赤し唐辛子 子規
★赤き物少しは参れ蕃椒 漱石
★一莚唐辛子干す戸口かな 碧梧桐
★辛辣の質にて好む唐辛子 虚子
★誰も来ないとうがらし赤うなる 山頭火
★唐がらし熟れにぞ熟れし畠かな 蛇笏
★秋晴れやむらさきしたる唐辛子 夜半
★戸袋の筋にかけあり唐辛 石鼎
★庭園に不向きな赤い唐辛子 鷹女
★唐辛子干して道塞く飛鳥びと 秋櫻子
★秋の日の弱りし壁に唐辛子 みどり女
★炎ゆる間がいのち女と唐辛子 鷹女
★てのひらに時は過ぎゆく唐辛子 不死男
★唐辛子わすれてゐたるひとつかな 楸邨
熟れた唐辛子は可愛い。店で唐辛子の実を束ねて売っているので、それを買い、しばらく台所に飾って楽しんでそれから使う。信之先生は、うどんには、七味唐辛子でなく、この赤い唐辛子を細く輪切りにしたのを入れるのが習慣だ。きんぴらには、辛いというくらい入れたい。すでに輪切りにした唐辛子を売っているが、それではなく、丸のままのを買って、鋏で丹念に切る。
農家には、どこの家の畑の隅に唐辛子を植えていた。熟れると茎ごと抜いて束ね。家の軒下など日陰に吊るして乾燥させた。沢山採れる家は、筵に広げて乾燥させたのだろうが、これは、見たことがない。父も、うどんにはこの唐辛子をたっぷりと入れて食べていた。七味ではない。
唐辛子のなかでも辛くない唐辛子がある。ピーマンも、ししとうも唐辛子の仲間である。父がまだ中年のころ、辛くない唐辛子といって、近所でははじめてピーマンを植えた。子どもにも食べれた。刻んで、油炒めで醤油の味付けだったと思う。唐辛子が食べれたと子どもながら自慢であった。そのせいか、いまでもシシトウや甘唐辛子が沢山手に入ると、油炒めで醤油、鰹節で佃煮のようにして食べる。これが、我が家では、娘にも人気でご飯がすすむ。
唐辛子のことで思い出したが、長野の小諸で花冠(水煙)大会をしたとき、伊那の河野斎さんが来られ、善光寺の名物の七味唐辛子をいただいた。そのとき、善光寺名物が七味唐辛子であることを知ったが、いい香りの七味唐辛子であった。河野さんは、伊那で歯科医院を営んでおられたが、偶然にも、三男のお嫁さんが、私の郷里の福山のご出身と聞いた。縁は異なもの不思議なもの、です。河野さんは急逝されたが、ご家族に林檎の木を残されて、その年の林檎の収穫のおすそわけをいただいた。お孫さんたちが俳句を作って花冠(水煙)に投句されていたので、お孫さんと、そのお母さんのお気持ちだと知った。唐辛子からひょんなところに話がずれたが、思い出したので、書き留めておいた。
★唐辛子真っ赤に熟れしをキッチンに/高橋正子
★唐辛子もう日暮だと子を呼びに/〃
唐辛子(とうがらし、唐芥子、蕃椒)は、中南米を原産とする、ナス科トウガラシ属 (Capsicum) の果実から得られる辛味のある香辛料。栽培種だけでなく、野生種から作られることもある。トウガラシ属の代表的な種であるトウガラシにはさまざまな品種があり、ピーマン、シシトウガラシ(シシトウ)、パプリカなど辛味がないかほとんどない甘味種(甘唐辛子・あまとうがらし)も含まれる。トウガラシ属は中南米が原産地であり、メキシコでの歴史は紀元前6000年に遡るほど非常に古い。しかし、世界各国へ広がるのは15世紀になってからである。
唐辛子が日本へ伝わったのは、16世紀後半のことで、南蛮船が運んで来たと言う説から南蛮胡椒、略して南蛮または胡椒とも言う。コロンブスは、唐辛子を胡椒と勘違いしたままだったので、これが後々まで、世界中で唐辛子(red pepper)と胡椒(pepper)の名称を混乱させる要因となった。現在世界中の国で多く使われているが、アメリカ大陸以外においては歴史的に新しい物である。クリストファー・コロンブスが1493年にスペインへ最初の唐辛子を持ち帰ったが忘れられ、ブラジルで再発見をしたポルトガル人によって伝播され、各地の食文化に大きな影響を与えた。ヨーロッパでは、純輸入品の胡椒に代わる自給可能な香辛料として南欧を中心に広まった。16世紀にはインドにも伝来し、様々な料理に香辛料として用いられるようになった。バルカン半島周辺やハンガリーには、オスマン帝国を経由して16世紀に伝播した。
日本で栽培されているのは主にトウガラシだが、沖縄や伊豆諸島ではキダチトウガラシの品種の島唐辛子が栽培されている。トウガラシ属が自生している南米では、ウルピカなどの野生種も香辛料として使われる。「唐辛子」の漢字は、「唐から伝わった辛子」の意味であるが、歴史的に、この「唐」は漠然と「外国」を指す語とされる。英語では「チリ(chili)」または「チリ・ペッパー (chili pepper)」と言う。胡椒とは関係が無いにも関わらず「ペッパー」と呼ばれている理由は、ヨーロッパに唐辛子を伝来させたクリストファー・コロンブスがインドと勘違いしてアメリカ大陸に到達した際、唐辛子をインドで栽培されている胡椒の一種と見なしたためである。それ以来、トウガラシ属の実は全て「ペッパー」と呼ばれるようになった。沖縄県では島唐辛子や、それを用いた調味料をコーレーグス(コーレーグース)と呼ぶが、これは高麗胡椒の沖縄方言読みとも、「高麗薬(コーレーグスイ)」が訛ったものだともされる。唐辛子の総称として鷹の爪を使う者もいるが、「鷹の爪」はトウガラシ種の1品種である。
◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

尾瀬
★山小屋の湯にいて秋の笹の音 正子
山小屋の湯に浸り、旅の疲れを癒す、心身ともに安らぐひととき。その快さの中で聞く笹の葉擦れの音に、いっそう澄んだ秋の夜が感じられ、尾瀬の秋に身を置く作者の喜びが伝わってまいります。(藤田洋子)
○今日の俳句
窓越しの鳴き澄む虫と夜を分つ/藤田洋子
「夜を分かつ」によって、窓の外の虫音と内とが繋がって、しっとりと落ち着いた虫の夜となっている。「鳴き澄む」虫の声が透徹している。(高橋正子)
○数珠玉

[数珠玉/横浜・四季の森公園]
★数珠玉や歩いて行けば日暮あり/森澄雄
★数珠玉や家のまはりに水消えて/岸田稚魚
★じゅず玉は今も星色農馬絶ゆ/北原志満子
★数珠玉や流れの速き濁り川/天野美登里
★数珠玉の数珠の数個をポケットに/山内四郎
数珠玉を見るようになったのは、愛媛に住むようになってからである。この、どこにでもある数珠玉を高校時代までは見たことがなかった。知らないかったと言えばそれまでだが、数珠玉があれば、子どもたちはそれを集めて糸を通して遊ぶはずだが、そんな遊びはしたことがなかった。秋の初め野川と呼ばれるような川縁にある。初めは緑で指で潰せば潰れそうな未熟な実も、熟れると、つやつやと固くなって黒っぽい灰色の独特の色になる。大人でも、数珠玉があれば、用もないのに採りたくなる。
★数珠玉よ川にも空が映るなり/高橋正子
★数珠玉を採ってしばらく手のうちに/〃
ジュズダマ(数珠玉、Coix lacryma-jobi)は、水辺に生育する大型のイネ科植物である。インドなどの熱帯アジア原産で、日本へは古い時代に入ったものと思われる。一年草で、背丈は1m程になる。根元で枝分かれした多数の茎が束になり、茎の先の方まで葉をつける。葉は幅が広い線形で、トウモロコシなどに似ている。花は茎の先の方の葉の付け根にそれぞれ多数つく。葉鞘から顔を出した花茎の先端に丸い雌花がつき、その先から雄花の束がのびる。雌花は熟すると、表面が非常に固くなり、黒くなって表面につやがある。熟した実は、根元から外れてそのまま落ちる。なお、ハトムギ(C. lacryma-jobi var. ma-yuen)は本種の栽培種である。全体がやや大柄であること、花序が垂れ下がること、実がそれほど固くならないことが相違点である。
脱落した実は、乾燥させれば長くその色と形を保つので、数珠を作るのに使われたことがある。中心に花軸が通る穴が空いているので、糸を通すのも簡単である。実際に仏事に用いる数珠として使われることはまずないが、子供のおもちゃのように扱われることは多い。古来より「じゅずだま」のほか「つしだま」とも呼ばれ、花環同様にネックレスや腕輪など簡易の装飾品として庶民の女の子の遊びの一環で作られてきた。秋から冬にかけて、水辺での自然観察や、子供の野外活動では、特に女の子に喜ばれる。
イネ科植物の花は、花序が短縮して重なり合った鱗片の間に花が収まる小穂という形になる。その構造はイネ科に含まれる属によって様々であり、同じような鱗片の列に同型の花が入るような単純なものから、花数が減少したり、花が退化して鱗片だけが残ったり、まれに雄花と雌花が分化したりと多様なものがあるが、ジュズダマの花序は、中でも特に変わったもののひとつである。まず、穂の先端に雄花、基部に雌花があるが、このように雄花と雌花に分化するのは、イネ科では例が少ない。細かいところを見ると、さらに興味深い特徴がある。実は、先に“実”と標記したものは、正しくは果実ではない。黒くてつやのある楕円形のものの表面は、実は苞葉の鞘が変化したものである。つまり、花序の基部についた雌花(雌小穂)をその基部にある苞葉の鞘が包むようになり、さらにそれが硬化したものである。この苞葉鞘の先端には穴が開いており、雌花から伸び出したひも状の柱頭がそこから顔を出す。雌花は受粉して果実になると、苞葉鞘の内で成熟し、苞葉鞘ごと脱落する。一般にイネ科の果実は鱗片に包まれて脱落するが、ジュズダマの場合、鱗片に包まれた果実が、さらに苞葉鞘に包まれて脱落するわけである。実際にはこの苞葉鞘の中には1個の雌小穂のほかに、2つの棒状のものが含まれ、苞葉鞘の口からはそれら2つが頭を覗かせている。これらは退化して花をつけなくなった小穂である。したがって、包葉鞘の中には、花をつける小穂(登実小穂)1つと、その両側にある不実の小穂2つが包まれていることになる。これら雌小穂と不実の小穂の間から伸びた花軸の先には、偏平な小判型の雄小穂が数個つく。1つの雄小穂にはそれぞれに2つの花を含む。開花時には鱗片のすき間が開いて、黄色い葯が垂れ下がる。
◇生活する花たち「露草・なんばんぎせる・玉珊瑚(たまさんご)」(東京白金台・自然教育園)

尾瀬
★山小屋の湯にいて秋の笹の音 正子
山小屋でお湯につかっておられると、戸外で笹が擦れ合う音が聞こえてきました。山小屋の秋の夜の静かさ、清澄な空気が伝わってきます。 (多田有花)
○今日の俳句
傷に刃を当て傷物の梨をむく/多田有花
傷物の梨を剥こうとすれば、まず傷をとってからが普通の行為だが、「傷に刃を当て」と言われると神経がピリッとする。リアルな句だ。(高橋正子)
○瓢箪
[瓢箪/東京・向島百花園] [瓢箪/横浜市緑区北八朔町]
★ありやうにすはりて青き瓢かな 涼菟
★花や葉に恥しいほど長瓢 千代女
★人の世に尻を居へたるふくべ哉 蕪村
★ひとりはえてひとつなりたる瓢かな 几董
★老たりな瓢と我影法師 一茶
★取付て松にも一つふくべかな 子規
★風ふけば糸瓜をなぐるふくべ哉 漱石
★吐せども酒まだ濁る瓢かな 碧梧桐
★露の蟻瓢の肩をのぼりけり 青畝
★あをあをとかたちきびしき瓢かな 蛇笏
★台風に傾くままや瓢垣 久女
私には弟がいて、男の子が喜ぶようなものとして、父が瓢箪と糸瓜を植えたことがあった。小型の瓢箪が沢山出来た。瓢箪の実から種を出さなければいけない。この種は水に瓢箪を付けて腐らせて出すのだと聞いたことがある。父がどのようにして種を抜いたか知らないが、いつの間にか、軽くなった瓢箪が家に転がっていた。おもちゃにした記憶はないが、なにかしら好ましい形で、我が家の瓢箪という感じだった。瓢箪は中にお酒を入れると艶よくなるそうである。瓢箪の好きなどこそこのご隠居さんは、お酒を含ませた布で毎日熱心に磨いているそうだと祖母が話していたこともある。最近は瓢箪集めという趣味も無くなってなっているのかもしれない、と思うと同時に、子供のころとは世の中が随分変わって来たのだと思う。昨年向島百花園に行ったときは、棚にうすみどり色のいい形の瓢箪が生っていた。
★瓢箪のさみどり色や向島/高橋正子
ヒョウタン(瓢箪、瓢簞、学名:Lagenaria siceraria var. gourda)は、ウリ科の植物。葫蘆(ころ)とも呼ぶ。なお、植物のヒョウタンの実を加工して作られる容器も「ひょうたん」と呼ばれる。最古の栽培植物のひとつで、原産地のアフリカから食用や加工材料として全世界に広まったと考えられている。乾燥した種子は耐久性が強く、海水にさらされた場合なども高い発芽率を示す。日本では、『日本書紀』(仁徳天皇11年=323年)の記述の中で瓢(ひさご)としてはじめて公式文書に登場する。茨田堤を築く際、水神へ人身御供として捧げられそうになった男が、ヒョウタンを使った頓智で難を逃れたという。狭義には上下が丸く真ん中がくびれた形の品種を呼ぶが、球状から楕円形、棒状や下端の膨らんだ形など品種によってさまざまな実の形がある。かつては、実を乾かして水筒や酒の貯蔵に利用されていた(微細な穴があるために水蒸気が漏れ出し、気化熱が奪われるため中身が気温より低く保たれる)。利便性の高さからか、縁起物とされ羽柴秀吉の千成瓢箪に代表されるように多くの武将の旗印や馬印などの意匠として用いられた。瓢箪は、三つで三拍(三瓢)子揃って縁起が良い、六つで無病(六瓢)息災などといわれ、掛け軸や器、染め物などにも多く見られる。ちなみに大阪府の府章は、千成瓢箪をイメージしている。
ヒョウタンは水筒、酒器、調味料入れなどの容器に加工されることが多い。乾燥したヒョウタンは、表面に柿渋やベンガラ、ニスを塗って仕上げる。水筒や食器など、飲食関係の容器に用いる場合は、酒や番茶を内部に満たして臭みを抜く。軽くて丈夫なヒョウタンは、世界各国でさまざまな用途に用いられてきた。朝鮮半島ではヒョウタンをふたつ割りにして作った柄杓(ひしゃく)や食器を「パガチ」と呼び、庶民の間で広く用いられてきた。また、アメリカインディアンはタバコのパイプに、南米のアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルではマテ茶の茶器、またインドネシア・イリアンジャヤやパプアニューギニアなどでは先住民によってペニスケースとして使われている。ヒョウタンには大小さまざまな品種があり、長さが5センチくらいの極小千成から、2メートルを越える大長、また胴回りが1メートルを超えるジャンボひょうたんなどがある。ヒョウタンと同種のユウガオは、苦みがなく実が食用になり、干瓢の原料となる。農産物としても重要であり、近年は中国からの加工品輸入も増加している。主として生または乾物を煮て食べる。また、強壮な草勢からスイカやカボチャの台木としても利用される。
◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

★さわやかに行きし燕の戻り来る 正子
もうそろそろ帰燕の時季のようですね?澄み切った空気をすいすい自由に飛翔し、行きつ戻りつの風景はその場所を惜しむかのようです。あるいは子育てのその場所を反復飛翔する事により、地形と場所を記憶しているのでしょうか?来年も元気に戻って来て欲しいものです。(桑本栄太郎 )
○今日の俳句
石段を下りて清流芋水車/桑本栄太郎
石段をおりれば清流がある風景が爽やかでよい。芋水車は、芋を洗うために小川に仕掛けられた小さい水車。昔ながらの清流が想像できる。(高橋正子)
○黄花コスモス

[黄花コスモス/横浜日吉本町]
★街角を曲がれば黄花コスモスに/山元重男
★茎細きキバナコスモス気は強し/稲森如風
★揺れ動く黄花コスモス風に色 芳吟
黄花コスモスを、初めは河原で見かけていた。当時住んでいた愛媛の松山平野を流れる重信川の河川敷。重信川は一級河川で河原もそこそこ広い。最近では、ちょっとした空き地や畑の隅でも見かける。好きかと問われれば、だれもそんな質問をした人はいないが、好きではないと答えるだろう。一般的なコスモスに似ているが、違うところがあまり好きではない理由かもしれない。花の形は可愛いのに、オレンジや黄色の花の色が強すぎて透明感に欠ける。葉が丈夫そうな切れ込み方で、緑色が暑苦しい。しかし、これは、近くから見ての話。河原が殺風景であれば、キバナコスモスも絵になる。広い空が見えて、風が渡り、雲が流れるところに置いて楽しみたい花だ。明るい野原が似合う花だ。
★銀輪を止めありキバナコスモスに/高橋正子
やキバナコスモス(黄花コスモス、学名:Cosmos sulphureus)は、キク科コスモス属の多年草または一年草。コスモスの名を冠するが、オオハルシャギクとは同属別種にあたり互いを交配する事は出来ない。現在では日本で広く園芸品種のひとつとして栽培されているが、一部は逸出して野生化している。原産地はメキシコで、標高1600m以下の地域に自生する。18世紀末にスペイン・マドリードの植物園に送られ、ヨーロッパに渡来した。日本には大正時代の初めに輸入された記録が残っている。高さは約30〜100cm。概ね60cm程度に成長するが、鉢植えやプランター向けの20cm程度に留まる矮性種も出回っている。オオハルシャギクと比べて葉が幅広く、切れ込みが深い。また夏場の暑さに強いため、オオハルシャギクよりも早い時期に花を咲かせる傾向にある。またオオハルシャギクよりも繁殖力が旺盛である為、こぼれ種で栽培していると数年後にはオオハルシャギクを席巻してしまう。花期は比較的長く、6月から11月にかけて直径3〜5cm程度の黄色、またはオレンジの花を咲かせる。改良種として濃い赤色の品種も作られている。花は一重咲きと八重咲きがあるが、園芸品種として市場に出回っているもののほとんどは八重咲き。病害虫による大きな被害を受けることは少なく、初夏から夏にかけて新芽の付近にアブラムシがつく程度である。痩せた土壌でも適度の水を与えていれば問題無く成長するため、頑強で育て易い植物といえる。ただし日陰での栽培には向かず、充分な日照が無い環境では葉などの形が崩れる場合があるため注意が必要。成長に伴って良く分岐する特性があり、咲き終えた花がらの摘み取りや、夏場に一旦切り戻しを行うなどの手入れを施すと長い期間花を楽しむ事が出来る。前述の通りオオハルシャギクとは交配出来ないが、チョコレートコスモスとは交配可能。このキバナコスモスとチョコレートコスモスの交配種は「ストロベリーチョコレート」と呼ばれる。
○オオハルシャギク Cosmos bipinnatus Cav. 一般的なコスモスといえばこれを指す。高さ1 – 2m、茎は太く、葉は細かく切れ込む。
○キバナコスモス Cosmos sulphureus Cav. 大正時代に渡来。オオハルシャギクに比べて暑さに強い。花は黄色・オレンジが中心。
○チョコレートコスモス Cosmos atrosanguineus (Hook.) Voss 大正時代に渡来。黒紫色の花を付け、チョコレートの香りがする。多年草で、耐寒性がある。
◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)

★虫籠に風入らせて子ら駈ける 正子
この虫籠は竹で作られたものだと思います。この句から子ども達が虫を捕まえた時の喜びや、会話の様子が分かり、清々しい感じのするいい句だと思いました。(井上治代)
○今日の俳句
早朝の山懐の霧深し/井上治代
大洲盆地らしい私の好きな風景だ。早朝でなくても、松山から峠を越えるあたりから、道は流れるような霧に包まれることもあった。(高橋正子)
○未草(ひつじぐさ)

[未草/国立公園尾瀬] [未草/ネットより]
★漣の吸ひ込まれゆく未草/西村和子
高校生のころだったろうか、睡蓮のことを、または未草というと思うようになっていた。そして、いつのころか、未草と睡蓮は違うものだと知った。未草は白い花で、睡蓮より花が小さく花の咲く時間も未の刻を中心に咲く。名前だけ知って実際に花を見たことはなかったが、一昨年8月27日と28日に尾瀬に行ったとき、池塘に未草が咲いていた。これは感激であったが、尾瀬に入ってビジターセンターや国民宿舎のある山の鼻から木道を歩いて行くと、ちょうど2時ごろであったので、未草の花を見ることができた。実際は午前11時ごろから午後4時ごろまで咲くそうだが、未の刻に合わせて咲いているようにしか思えなかった。
★湿原の日はやわらかし未草/高橋正子
未草(ヒツジグサ)は、スイレン科スイレン属の水生多年草で、学名は Nymphaea tetragona(Nymphae:スイレン属、tetragona:四角の)。Nymphaea は、水の女神であるところの「Nympha(ニンファー)」と命名された、古い植物名に由来するもの。夏、地下茎から茎を伸ばし、池や沼で水面スレスレに白い清楚な花を咲かせる。花の大きさは3~4cm、萼片が4枚、花弁が10枚ほど。花期は6月~11月。昔の時刻の数え方のひとつである、「未(ひつじ)の刻(14:00)」の頃に花が開くことからこの名前になった。実際には午前11時頃から咲き始め、夕方4時頃しぼんでいく。一つの花は3日、3回咲いたあと、水中に沈んで実をつける。未草はスイレンの原種の一つであり、日本唯一の在来種(尾瀬の未草が有名)で、日本全国の池や沼に広く分布している。寒さに強く、山地の沼や亜高山帯の高層湿原にも生えている。日本以外ではシベリア、欧州、中国及び朝鮮半島、インド北部、北アメリカに分布している。
◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

◆9月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(秋の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2014年9月8日(月)午前5時~9月14日(日)午後6時
④選句期間:9月14日(日)午後6時~9月14日(日)午後9時
⑤入賞発表:9月15日(月)正午
※投句を受け付けています。
★虫籠に風入らせて子ら駈ける 正子
夕べの原っぱを駆ける、子らの虫籠へ真っ先に入るのは、きっと澄んだ秋風でしょう。籠をからからと鳴らし吹き渡る風に、虫の音への想いも募ります。さあ、籠にはどんな虫が入ったのでしょうか。(川名ますみ)
○今日の俳句
秋風に洗濯物のやさしい色/川名ますみ
一読、「やさしい色」に納得した。秋風に吹かれる洗濯物が、やわらく、色もやさしい。秋の日差し、風の具合のせいもあるだろう。(高橋正子)
○曙草

[曙草/国立公園尾瀬] [曙草/ネットより]
★曙草日差せば水のほの匂ふ/小松崎爽
★曙草晩秋の虚追憶す/荒川じんぺい
一昨年8月27日と28日尾瀬に出かけた。暑い日差しにも関わらず、尾瀬は初秋を迎えていた。水芭蕉やゆうすげの季節は過ぎていたが、今思い返すと、咲き残る夏の花や初秋のさわやかな花々に多く出会えたのは随分幸運だった。曙草は、星形の五弁の白い2センチほどの花に、紫いろの斑点と黄緑色の丸い点がある。そういうのが曙草と知っていればすぐに見分けがつく。ところが私が見たのは、花弁が6弁。そのほかは曙草の特徴を持つ。これも、山小屋にある尾瀬の植物図鑑で調べたが、6弁あるものについては記述を見つけることができなかった。曙草の花は白とは言うが、丸い点のせいで、黄緑がかって見える。これを夜明けの星空と見たようだ。曙草は尾瀬ヶ原でも奥のほうにある赤代田へ辿る木道の脇で見つけた。夕方4時までには山小屋に着きたい一心で歩いていたのだが、「私はここよ」という感じで、足を引き留められ写真を撮った。山小屋で寝ながら思った。山の出立は早い。早朝4時に出発する人たちも中にはいる。そんな人たちは夜明けの星空を見るのだが、曙草はその人たちが名づけた名前かもしれないと。
★尾瀬に泊(は)つ曙草を見し日には/高橋正子
★目を落とす湿原帯の曙草/〃
アケボノソウ(曙草、Swertia bimaculata)は、リンドウ科センブリ属の多年草。北海道から九州の、比較的湿潤な山地に生育する。花期は9-10月。湿地や林床などの、比較的湿った場所に生える。2年草であり、発芽後1年目はロゼットのまま過ごす。2年目に抽苔し、高さ80cm程度まで茎を伸ばす。茎の断面は四角形で、葉は10cm程度の卵状で互生する。ロゼットの根生葉は柄があるが、茎生葉は柄がないことが特徴的である。9-10月の花期、分枝した茎の先端に径2cm程度の白い花をつける。花は5弁で星型。花弁には紫色の点と、黄緑色の特徴的な丸い模様がつく。和名アケボノソウの名前は、この模様を夜明けの星空に見立てた名前。別名キツネノササゲ。
◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

★揺れもせず夕日当れる青稲穂 正子
鮮やかに広がる稲田の緑。稔り近いことを暗示するように動きを控え、そこにまた濃厚な夕日を受けて重量感を湛える。心に補色の融け合いを感じさせる、重厚な景色です。(小西 宏)
○今日の俳句
露ころぶキャベツ外葉の濃き緑/小西 宏
キャベツの濃い緑の外葉にころがる露に、力がある。丸く、収れんした露の力と輝きは秋の朝のすがすがしさ。(高橋正子)
○あざみ
[野薊/横浜・四季の森公園] [野薊/群馬・尾瀬ヶ原]
★野薊の野に散らばりて自由得し/高橋信之
★野あざみの棘に刺さるは秋さびし/高橋正子
野あざみは、春の季語だが、まれに10月まで咲いているものもあり、この句は、そういった「野あざみ」を詠んだ。下五の「秋さびし」が効いた。作者の主情がいい。(高橋信之)
ノアザミ(野薊、学名: Cirsium japonicum)はキク科アザミ属の多年草。茎の高さは0.5-1mになる。葉は羽状に中裂し、縁にとげがある。茎葉の基部は茎を抱く。花期にも根生葉は残っている。花期は5-8月で、アザミ属の中では春咲きの特徴をもつが、まれに10月まで咲いているものも見られる。花(頭状花序)は筒状花のみで構成されており、直径は4-5cm。花の色は紫色であるが、まれに白色のものもある。花を刺激すると花粉が出てくる。総苞はよく粘る。アザミ属は、分布域が比較的広いものと極端に狭い地域固有種がある。ノアザミの分布域は広く、日本の本州、四国、九州の草原や河川敷に見られ、アジア大陸にも変種が分布する。
◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)

★娘の秋扇たたまれ青き色の見ゆ 正子
娘さんとご一緒にお出かけの光景でしょうか。何気なく使われていた閉じた扇子の青色が見えたとのこと、見守られている優しさが伺えます。(祝恵子)
○今日の俳句
畑の井戸囲んでおりぬ稲の花/祝恵子
畑の井戸は旱のときの灌漑用であろう。旱の続きの猛暑の夏も終わり、無事稲が花をつけている。いよいよ、稲は実をつけ、熟れよて実りのときを迎えるのだ。(高橋正子)
○烏瓜の花

[烏瓜の凋んだ花/横浜日吉本町] [烏瓜の花/ネットより]
★ふはふはと泡かと咲けり烏瓜/松本たかし
★烏瓜咲く一穢なき妖しさに/水原春郎
★烏瓜の花におどろく通夜帰り/松崎鉄之介
★烏瓜の花に逢はせむ話など/宮津昭彦
★去るものは去らして烏瓜の花/神蔵器
★雨音の明るし烏瓜の花/下田恭子
★青々と暮れて烏瓜の花/北畠明子
★烏瓜の花咲き誰もゐない駅/藤井英子
★夜の闇の深くてからすうりの花/中村洋子
★蔓切れてはね上りたる烏瓜/高浜虚子
烏瓜の朱色の実を見つけると、手繰り寄せて採りたくなる。蔓は雑木などに絡まっているので、蔓をひっぱっても、易々と手元には来ない。蔓が切れて、引っ張った力の反動で「はね上がる」。「はね上がる」が面白い。はね上がった実が揺れ、悔しがるものが居る。(高橋正子)
★烏瓜映る水あり藪の中/松本たかし
★をどりつつたぐられて来る烏瓜/下村梅子
烏瓜の花はレースのようであるとは、知っていた。朱色の実が思わぬところに熟れているのをよく見けるが、実の生る前に花があることを思うことはなかった。ところが、8月の終わりだったか、信之先生が早朝の散歩で、烏瓜の花の凋んだところを写真に撮ってきた。烏瓜の花とは思うが、確かとは言えないので、ネットで烏瓜の花の写真をいろいろと見て、間違いないだろうと結論づけた。烏瓜の花は夕方6時半ごろから2時間ほどかけて完全に咲くので、咲いたところを見たくなった。レースのような花なので見たくてたまらない。夜なので、一人は危ない。また危ないところに烏瓜がある。翌晩にでも行きたかったが、いろいろ用事があってすぐ行けない。5日ほどたって花があった場所に二人で懐中電灯をもって出かけた。それらしきを写したが、どうも新しい葉のようだった。昼間蕾を確かめておかねばならなかった。ここ日吉本町辺りは、今年は花の時期は過ぎたかもしれない。
★闇暑し烏瓜の花はどこ/高橋正子
★烏瓜の花の凋みしは悔し/〃
カラスウリ(烏瓜、Trichosanthes cucumeroides)はウリ科の植物で、つる性の多年草。朱色の果実と、夜間だけ開く花で知られる。 地下には塊根を有する。原産地は中国・日本で、日本では本州・四国・九州に自生する。林や藪の草木にからみついて成長する。葉はハート型で表面は短い毛で覆われる。雌雄異株で、ひとつの株には雄花か雌花かのいずれかのみがつく。別名:玉章(たまずさ)・ツチウリ・キツネノマクラ・ヤマウリ。
4月~6月にかけて塊根から発芽、あるいは実生する。花期は夏で、7月~9月にかけての日没後から開花する。雄花の花芽は一ヶ所から複数つき、数日間連続して開花する。対して雌花の花芽は、おおむね単独でつくが、固体によっては複数つく場合もある。花弁は白色で主に5弁(4弁、6弁もある)で、やや後部に反り返り、縁部が無数の白く細いひも状になって伸び、直径7~10cm程度の網あるいはレース状に広がる。花は翌朝、日の出前には萎む。 こうした目立つ花になった理由は、受粉のため夜行性のガを引き寄せるためであると考えられており、ポリネーターは大型のスズメガである。カラスウリの花筒は非常に長く、スズメガ級の長い口吻を持ったガでなければ花の奥の蜜には到達することはできず、結果として送粉できないためである。雌花の咲く雌株にのみ果実をつける。
果実は直径5~7cmの卵型形状で、形状は楕円形や丸いものなど様々。熟する前は縦の線が通った緑色をしており光沢がある。10月から11月末に熟し、オレンジ色ないし朱色になり、冬に枯れたつるにぶらさがった姿がポツンと目立つ。鮮やかな色の薄い果皮を破ると、内部には胎座由来の黄色の果肉にくるまれた、カマキリの頭部に似た特異な形状をした黒褐色の種子がある。この果肉はヒトの舌には舐めると一瞬甘みを感じるものの非常に苦く、人間の食用には適さない。鳥がこの果肉を摂食し、同時に種子を飲み込んで運ぶ場合もある。しかし名前と異なり、特にカラスの好物という観察例はほとんどない。地下にはデンプンやタンパク質をふんだんに含んだ芋状の塊根が発達しており、これで越冬する。夏の間に延びた地上の蔓は、秋になると地面に向かって延び、先端が地表に触れるとそこから根を出し、ここにも新しい塊根を形成して栄養繁殖を行う。
開花後落花した雄花にはミバエ科のハエであるミスジミバエ Zeugodacus scutellatus (Hendel, 1912) の雌が飛来し、産卵する。落花した雄花はミバエの幼虫1個体を養うだけの食物量でしかないが、ミスジミバエの1齢幼虫の口鉤(こうこう:ハエの幼虫独特の口器で、大顎の変化した1対の鉤状の器官)は非常に鋭く発達しており、他の雌が産みつけた卵から孵化した1齢幼虫と争って口鉤で刺し殺し、餌を独占する。
種子はその形から打ち出の小槌にも喩えられる。そのため財布に入れて携帯すると富みに通じる縁起物として扱われることもある。かつては、しもやけの薬として実から取れるエキスが使用された。 若い実は漬物にするほか、中身を取り出し穴をあけてランタンにする遊びに使われる。近年ではインテリアなどの用途として栽培もされており、一部ではカラスウリの雌雄両株を出荷する農園も存在する。
◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)
