■10月ネット句会■
■清記/18名54句
※午後6時になりましたら、選句を開始してください。
01.木犀や田川の瀬音身の内に
02.噴煙の果てて紅葉の日和かな
03.目覚めたる身の節々や豊の秋
04.虫の音を遠くに聞きてしまい風呂
05.秋暑し芋の葉陰で憩いたり
06.カタコトと夜なべのミシン軽やかに
07.嵐去り秋蝶つるみ青空へ
08.蔓引けば青き香いまだ溢れけり
09.ぷちぷちと足裏にひびき木の実踏む
10.月食の土手や細りし虫の闇
11.稲雀辺りの屋根を逃げ場とし
12.電線を撓わせ並ぶ秋燕
13.街角に神輿高々秋祭り
14.俎板に軽き音立て秋祭り
15.幟はためき刈りたての田が匂う
16.秋扇巻きし毛先を揺らすため
17.月食を同窓会に秋の暮
18.タブレット越しのお喋り赤き月
19.秋蝶の低きを飛んで優しかり
20.畝に座し句帳開けば百舌遠音
21.新しき畝を秋の天道虫
22.森近くあちらこちらに吾亦紅
23.澄んだ水川の流れを橋の上
24.秋晴れに島のまわりに釣りの舟
25.蔓細工の籠に重ねて青みかん
26.風澄みて濠の蓮の実飛ぶを見る
27.半世紀経て吾に褪せぬ林檎園
28.眈々と狙い定める野分かな
29.銀漢や灯台の下釣り師あり
30.静かなる野分の前の薄き空
31.青空に芙蓉の赤のふと揺れて
32.秋の蝶吾身に触れて離れゆく
33.赤とんぼスイッと追いこし戻りくる
34.団栗のポツと地を打つ森静か
35.妹も泥に網入れ蘆の花
36.あつあつの秋刀魚ふとぶと皿に余る
37.秋晴れや玉砂利踏んで二重橋
38.秋天へぐんぐん昇るエレベーター
39.爽やかに大東京を一望す
40.鳥が飛ぶ秋の瀬戸内海岸線
41.単線の線路の隙間に狗の子草
42.東へと帰る旅路は秋の夜
43.月ひとつ霧に滲んで高くあり
44.空耳と思えど里の祭笛
45.銀杏を割って永久のみどり色
46.台風の眼がある今日のパソコンに
47.手拭の小熊の笑みよ台風去る
48.台風去って街の明るい朝へ出る
49.濠の秋鯉群がりて綾をなし
50.破蓮の水面に届く日の光
51.乾杯のワインの美味さ赤き月
52.コスモスの色地に零しつつ剪れり
53.秋天へ甲羅干したる堀の亀
54.刈田吹く風を集めて夕焼雲
◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、10月13日(月)午後6時から始め、同日(10月13日)午後9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、10月14日(火)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、10月14日(火)正午~10月15月(水)午後6時です。
◆10月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(秋の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2014年10月8日(水)午後4時~10月13日(月)午後6時
④選句期間:10月13日(月)午後6時~10月13日(月)午後9時
⑤入賞発表:10月14日(火)正午
※投句を受け付けています。
★炊き上がる米の光りにぎんなん混ぜ 正子
炊きあがりたてのお米は、白くつややかでふっくらとしています。特にこの時期は光っているがごとく見るからにおいしそう。そんなお米にぎんなんを混ぜて、いよいよ食欲をそそる仕上がることでしょう。(高橋秀之)
○今日の俳句
鳥の群れ高く遠くへ秋の空/高橋秀之
「高く遠くへ」に、秋空の本質が詠まれている。群れて飛んでゆく鳥が静の中の動として印象的だ。(高橋正子)
○野竹(のだけ)
[野竹/東京白金台・自然教育園]
★野竹美し花後の実の膨らみつつ/高橋信之
★野竹野に美しき実を散らばせる/高橋信之
★九月の茂り野竹の花の色まぎる/高橋正子
野竹というのを、今年の九月に四季の森公園で見るまで、名前も、もちろん花も知らなかった。九月に里山の茂りの中に濃い赤紫色の複散形花序の花を咲かせているのを初めて見た。なぜ「竹」の字が入るのだろうと思い茎を見ると、確かに茎が竹の節のようになっている。それで、「野竹」なのだ。花の後は、子房がロココ調のような美しい薄青色になる。花よりも花の後が美しい。
ノダケ(野竹、学名:Angelica decursiva)はセリ科シシウド属の多年草。根は太く束状になる。茎は暗紫色を帯び、直立し、上部はわずかに分枝して、高さは80-150cmになる。葉は互生し、柄があり、ふつう3出羽状複葉または羽状複葉になり、小葉や裂片は長卵形、楕円形、長楕円形で、縁には軟骨質で硬い鋸歯があり、葉の裏側は白色を帯びる。頂小葉の基部は葉柄に流れて翼になり、葉柄の下部は袋状にふくらむ。花期は9-11月。茎頂か、分枝した先端に暗赤色の複散形花序をつける。花は5弁花で、花弁は暗紫色まれに白色で、萼歯片はない。 果実は長さ4-6mmの平たい広楕円形になる。分果の背隆条は脈状、側隆条は広い翼状になり、油管は表面側の各背溝下に1-4個、分果が接しあう合生面に4-6個ある。果実にはカレー粉に似た香りがある。日本では、本州、四国、九州に分布し、山野に生育する。世界では朝鮮、ウスリー、中国、インドシナに分布する。なお、多くの図鑑などでは、分布は「本州(関東地方以西)」とあるが、東北地方でも分布が確認されている。
◇生活する花たち「藻の花・萩・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)

★円盤の刃に秋草のきらきら散る 正子
円形をした草刈り機でしょうか。性能のよい円盤の刃で、秋の草がみるみる輝くように刈りとられ、散っていきます。刈りとられたあとは、草の香とともにさっぱりとした景が広がることでしょう。(小川和子)
○今日の俳句
とんぼうの入りくる画廊開かれて/小川和子
画廊にとんぼうは入ってくるのに意外性がある。窓を開け放った小さな画廊であろう。自然に開け放たれ、自然光を入れ、とんぼうも迷い込むようなところで画を鑑賞するのもよいものだ。(高橋正子)
○道草(あけび)

[道草の実/東京・向島百花園] [道草の花/横浜日吉本町]
★三つ葉あけび割れたり中に種あまた/高橋正子
アケビ(木通、通草)は、アケビ科の蔓性落葉低木の一種(学名: Akebia quinata)、あるいはアケビ属(学名: Akebia)に属する植物の総称である。茎は蔓になって他物に巻き付き、古くなると木質化する。葉は5つの楕円形の小葉が掌状につく複葉で、互生する。花は4 – 5月に咲き、木は雌雄同株であるが雌雄異花で淡紫色。花被は3枚で、雄花の中央部には6本の雄しべがミカンの房状に、雌花の中央部にはバナナの果実のような6 – 9本の雌しべが放射状につく。雌花の柱頭(先端部)には、甘みを持った粘着性の液体が付いており、花粉がここに付着することで受粉が成立する。雌雄異花で蜜も出さないので、受粉生態にはよくわかっていない点が多いが、雌花が雄花に擬態して、雄花の花粉を目当てに飛来する小型のハナバチ類を騙して受粉を成功させているのではないか、とする仮説がある。ハエ類が甘みを持った粘着質を舐めに来る際に受粉していると考えられる。受粉に成功した個々の雌しべは、成長して果実となり、10cm前後まで成長する。9 – 10月に熟して淡紫色に色づく。成熟した果実の果皮は心皮の合着線で裂開し、甘い胎座とそこに埋もれた多数の黒い種子を裸出する。この胎座の部分は様々な鳥類や哺乳類に食べられて、種子散布に寄与する。
種子を包む胎座が甘みを持つので、昔から山遊びする子供の絶好のおやつとして親しまれてきた。果皮はほろ苦く、内部にひき肉を詰めて油で揚げたり刻んで味噌炒めにするなど、こちらは山菜料理として親しまれている。主に山形県では、農家で栽培され、スーパーで購入することができる。また、東北地方などでは、新芽(山形県や新潟県などでは「木の芽」と呼ぶ)をやはり山菜として利用している。その他、成熟した蔓は、籠を編むなどして工芸品の素材として利用される。また、秋田県では、種を油の原料としている。江戸時代から明治時代にかけては高級品として珍重され、明治以降生産が途絶えていたが、近年復活した。
◇生活する花たち「いぬたで・金木犀・やぶまめの花」(四季の森公園)

★藤袴スカイツリーのいや真直ぐ 正子
古来より親しまれた秋の七草と、時代の最先端のタワーとの対照的な存在感ながら、秋空のもと美しく爽やかな景観です。淡紫色の小花の藤袴と空へ真っ直ぐ伸びる巨大なスカイツリーが新鮮に目に映り、風景の広がりを感じさせてくれます。(藤田洋子)
○今日の俳句
幾重にも石積みの畑秋高し/藤田洋子
段々畑は、石を積み上げて猫の額ほどの畑を山頂へと幾段も作った。作物にやる水も下から桶で運びあげねばならず、日本の零細農業の象徴のような存在だが、その景観は美しい。秋空を背にして山頂までの石垣がまぶしい。(高橋正子)
○木犀
[金木犀/横浜日吉本町] [銀木犀/横浜日吉本町]
★木犀の昼は醒めたる香炉かな 嵐雪
★木犀の香に染む雨の鴉かな/泉鏡花
★木犀に人を思ひて徘徊す/尾崎放哉
★木犀の弾けるごとく咲き出でぬ/宮津昭彦
★木犀やしづかに昼夜入れかはる/岡井省二
★大徳寺は塔頭多し夜の木犀/鈴鹿野風呂
★木犀や雨に籠れば男饐え/上田五千石
★いづこの木犀朝の鞄は飯の重さ/瀧春一
★托鉢や木犀の香のところどころ/中川宋淵
★銀木犀身じろげばまた香もゆらぐ/篠田悌二郎
★木犀の香に昇天の鷹ひとつ/飯田龍太
★木犀に土は色濃うして膨らめる/原月舟
★木犀や屋根にひろげしよき衾/石橋秀野
★遠き日のごと木犀は咲きにけり/岡輝好
金木犀の匂いが流れてくる。ある日その匂いに気付くと、すぐに在所の祭りが近づく。子供は秋の服装になり、毛糸のチョッキを着たりする。新米も炊き上がる。栗もまだまだある。蓮根もおいしくなる。魚はなんだろうか。酢〆にした鯖なんかもある。祭りのごちそうが揃ってくる。そんな季節の花なのだ。金木犀は。
★金木犀こぼれし花もあたたかな/高橋正子
★青空に銀木犀の銀確かむ/〃
モクセイ(木犀、学名: Osmanthus fragrans)は、モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。別名、ギンモクセイ(銀木犀)という。広義では、Osmanthus fragrans に属する変種、品種の総称。中国原産で、中国名は桂花 。ギンモクセイ(銀木犀、学名:Osmanthus fragrans Lour. var. fragrans)、キンモクセイ(金木犀、学名:Osmanthus fragrans Lour. var. aurantiacus Makino)、ウスギモクセイ(薄黄木犀、学名:Osmanthus fragrans Lour. var. thunbergii Makino)の総称であるが、単に「木犀」と言う場合は、ギンモクセイを指すことが多い。
ギンモクセイは、中国原産の常緑小高木で、樹高は3-6mになり、庭や公園などで栽培されている。花には香気があるがキンモクセイほどは強くない。幹は淡灰褐色で、樹皮は縦に裂け目ができる。葉は長さ7-15mmの葉柄をもって対生する。葉身は革質で、長さ8-15cm、幅3-5cmとキンモクセイより葉幅が広く、楕円形で先端は急にとがり、縁にはあらい細鋸歯があるが、鋸歯がなく全縁の場合もある。葉脈の主脈は表面でくぼみ、裏面で突出する。花期は9-10月。雌雄異株で、花は葉腋に束生する。花柄は長さ5-10mmになる。花冠は白色で4深裂し、径約4mmになる。雄蘂は2個。果実は核果で、長さ1-1.5cmの楕円形になり、翌年の春に黒褐色に熟す。
◇生活する花たち「茶の花・犬蓼・吾亦紅」(横浜下田町・松の川緑道)

★藤袴スカイツリーのいや真直ぐ 正子
スカイツリーは真っ直ぐすぎ、高すぎ、姿からすると東京タワーの方が人気があるとききました。藤袴との取り合わせが新鮮です。 (多田有花)
○今日の俳句
さわやかに心を決めていることも/多田有花
この句は、心にきめていることがあって、それはさわやかなものだ、というのみである。体内をさわやかに風が吹く感じだ。(高橋正子)
○白曼珠沙華
[白曼珠沙華/横浜日吉本町] [白曼珠沙華/横浜・四季の森公園]
★白曼珠沙華群れて池への斜面に立つ/高橋信之
★旅すれば棚田棚田の曼珠沙華/高橋正子
日本に自生している彼岸花類では、白い彼岸花 白花ヒガンバナ(アルビフロラ)、黄色い彼岸花 ショウキラン、赤い彼岸花 曼珠沙華、橙色の彼岸花 キツネノカミソリやオオキツネノカミソリ、などがよく知られています。
白花ヒガンバナあるいは白花まんじゅしゃげといわれるものには、花色、花形、葉色の異なるタイプがいくつかあります。花色は純な白というわけではではなく、クリームがかった白、うすいピンクがかった白、濃い目のピンク(アルビピンク、チェリーピンク)などいくつかの変異が見られます。花形は、花弁がやや幅広くてフリルの入るものや、細弁のものなどがあり、いずれも強く反転します。葉色にも濃淡の差があります。
白花ヒガンバナの中で、花弁が幅広くてフリルの入るタイプを「アルビフロラ」、細弁のタイプを「エルジアエ」と言うんだよ、と教えてくれた人があります。一般には、広弁のタイプも細弁のタイプも含めて、白花ヒガンバナ(アルビフロラ)で流通しているようです。「フォーン」は、アルビフロラに似ていますが、クリーム色の広い花弁が波を打ち、力強くてりっぱな花姿です。開花はアルビフロラとほぼ同じで、9月半ばごろになります。
白花ヒガンバナは、黄色のショウキランと彼岸花の雑種といわれています。そうなると、ショウキランの相方はよく実の着く中国産の彼岸花だったのでしょうか。それともショウキランが日本の彼岸花とたまたま巡り会って、白花ヒガンバナが生まれたのでしょうか。いろんなタイプの白花ヒガンバナがあるということは、いくつかの巡り会わせがあったのかもしれません。色彩の世界では、赤と黄色を混ぜ合わせたら、オレンジないしは柿色などを想像しますが、ショウキランの黄と彼岸花の赤とがかけ合わされた結果、白色の花ができるというのも、なんだか不思議な感じがします。
生活する花たち「野菊・藤袴・萩」(東京・向島百花園)

★虫籠に風入らせて子ら駈ける 正子
心地よい秋風が吹く野原で、虫取りに夢中なっている子供たちの生き生きした声と虫籠を通り抜ける風の音や虫の音が聞こえてきそうです。(柳原美知子)
○今日の俳句
稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子
熟れ稲の香が田に満ちて、刈るたびにその香が風に放たれてゆく。一株一株鎌で刈り取られているのだろう。爽やかな風の吹く晴れた日の稲刈りが想像できる。(高橋正子)
○稲穂

[稲穂/横浜市緑区北八朔]
★旅人の藪にはさみし稲穂哉 一茶
★草花と握り添へたる稲穂かな 一茶
★稲の穂の伏し重なりし夕日哉 子規
★稲の穂に湯の町低し二百軒 子規
★稲熟し人癒えて去るや温泉の村 漱石
★稲の穂の向き合ひ垂るる小畦かな 風生
★握り見て心に応ふ稲穂かな 虚子
★子を抱いて乳飲まし来る稲の道 虚子
★我が思ふ如く人行く稲田かな 汀女
★稲孕みつつあり夜間飛行の灯 三鬼
★中学生朝の眼鏡の稲に澄み 草田男
★稲負ふや左右にはしる山の翼 楸邨
★ゆふぐれの溝をつたへり稲の香は 静塔
★熟れ稲の香のそこはかと霧は濃き 亞浪
★小作争議にかかはりもなく稲となる しづの女
★わがこころ稲の穂波にただよへり 青邨
★稲の香におぼれてバスのかしぎ来る 秋櫻子
稲は、その伝播の経路や、日本文化の形成過程に寄与した点など、ほかの農作物とは比べ物にならないほど、重要な作物となっている。春の苗代作りから秋の収穫まで、天候を睨み、水を測り、労力と忍耐を惜しまず、手塩にかけて育てるのが稲だ。その稲が稔りのときを迎えると、何にも増して、喜びがわく。一年の食生活の基本が保障される。稲穂に実が入り熟れてくると、次第に垂れさがる。稔った穂が風にさらさら鳴る音は、心地よい。そうすると、日に暖められた稲穂が、ほんのりといい香を放つ。稲が熟れるころは、葉も透き通るように黄緑いろから黄色になってくる。神聖なまでの色合いだ。子供のころは、「稔るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」と、謙虚が大事いう意味でよく言われた。今はこんなことを言う時勢ではないようだ。日本も随分アメリカナイズされたと思う。
★通勤の道の左右に稲穂垂れ/高橋正子
★稲の穂に朝露白く置いてあり/〃
イネ(稲、稻、禾)は、イネ科 イネ属の植物である。稲禾(とうか)や禾稲(かとう)ともいう。 収穫物は米と呼ばれ、世界三大穀物の1つとなっている。本来は多年生植物であるが、食用作物化の過程で、一年生植物となったものがある。また、多年型でも2年目以降は収穫量が激減するので、年を越えての栽培は行わないのが普通である。よって栽培上は一年生植物として扱う。属名 Oryza は古代ギリシア語由来のラテン語で「米」または「イネ」の意。種小名 sativa は「栽培されている」といった意味。用水量が少ない土壌で栽培可能なイネを陸稲(りくとう、おかぼ)と呼ぶ。日本国内に稲の祖先型野生種が存在した形跡はなく、海外において栽培作物として確立してから、栽培技術や食文化、信仰などと共に伝播したものと考えられている。稲を異常なまでに神聖視してきたという歴史的な自覚から、しばしば稲作の伝播経路に日本民族の出自が重ねられ、重要な関心事となってきた。一般に日本列島への伝播は、概ね3つの経路によると考えられている。南方の照葉樹林文化圏から黒潮にのってやってきた「海上の道」、朝鮮半島経由の道、長江流域から直接の道である。3つの経路はそれぞれ日本文化形成に重層的に寄与していると考えられている。現在日本で栽培されるイネは、ほぼ全てが温帯ジャポニカに属する品種であるが、過去には熱帯ジャポニカ(ジャバニカ)も伝播し栽培されていた形跡がある。
稲の食用部分の主 成分であるでんぷんは、分子構造の違いからアミロースとアミロペクチンに別けられる。お米の食感は、両者の含有配分によって大きく異なる。すなわちアミロース含量が少ないお米は加熱時にやわらかくモチモチした食感になり、アミロース含量が多いとパサパサした食感になる。日本人の食文化では、低アミロースのお米を「美味しい」と感じる。この好みは、世界的には少数派となっている。通常の米は20%程度のアミロースを含んでいるが、遺伝的欠損によりアミロース含量が0%の品種もあり、これがモチ性品種で、モチ性品種が栽培されている地域は東南アジア山岳部の照葉樹林帯に限定されている。その特異性から、その地域を「モチ食文化圏」と呼称されることがある。日本列島自体が西半分を「モチ食文化圏」と同じ照葉樹林に覆われており、またハレの日にもち米を食べる習慣がある(オコワ、赤飯、お餅)ことから、日本文化のルーツの一つとして注目された。
◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

★萩のトンネル真上ぱらぱら空があり 正子
萩のトンネルにはところどころ隙間があるのでしょう。その隙間からぱらぱらと空が見えている。そこは、正に空があるという感じなのでしょう。 (高橋秀之)
○今日の俳句
涼新た一直線に船が出る/高橋秀之
新涼の季節。港を出てゆく船も、かろやかに一直線に航跡を残して出てゆく。新涼の気分に満ちた句。(高橋正子)
○9月17日、白金台の自然教育園へ行く。今日は目黒駅で下車。帰りは、白金台駅より乗車。秋草の小さい花がいろいろさいていた。
松風草、盗人萩、かりがね草、水引草、金水引、山ほととぎす、露草、彼岸花、芒、白花桜蓼、しらやまぎく、山萩、吾亦紅、長穂の白吾亦紅、蔓豆、野原薊、タイ薊、ツルボ、南蛮煙管、藤袴、未草、あさざ、など。今年は、郁子の実はなかった。
露草の青のいのちの正午まで 正子
露草の青の息づく池ほとり 〃
秋草の千草の花に金水引 正子
桜蓼の埋めし野原に露草も 〃
金水引露草桜蓼野が埋まり 〃
吾亦紅の紅の丸きが草に飛び 正子
吾亦紅千草に映えし紅の色 〃
空へ眼をやれば若き芒の穂 正子
南蛮煙管うすむらさきに水通う 正子
未草水面にひとしき花映り 正子
未草小さき花も傾きぬ 〃
未草九月の花は乳色に 〃
しらやまぎくそのしろがねを日に晒し 正子
うす曇る秋空淡し雁草 正子
雁草引けば揺れたり揺れやすき 〃
彼岸花つぼみの花が添い立てり 正子
彼岸花森のなかにも蘂を張り 〃
山萩の紅濃き枝のふさふさと 正子
山萩に黄蝶が止まりまた離れ 〃
道すがら山ほととぎす咲いており 正子
鉄風鈴つづれる虫に鳴りにけり 正子
鯛づくしの料理のなかの青酢橘 〃
虫の音も鉄風鈴も窓越しに 〃
○南蛮煙管(なんばんぎせる)
[南蛮煙管/東京白金台・国立自然教育園]
★芒の根方南蛮煙管のすくと伸ぶ/高橋正子
ナンバンギセル(南蛮煙管、Aeginetia indica)はハマウツボ科ナンバンギセル属の寄生植物。日本を含むアジア東部、アジア南部の温帯から熱帯にかけて生育する。
イネ科の単子葉植物(イネ、ススキ、サトウキビなど)の根に寄生する。寄主の根から吸収した栄養分に依存して生育するため、寄主の生長は阻害され、死に至ることもある。全長は15-50cm。葉は披卵形、長さ5-10mm、幅3-4mm[3]。花期は7-8月、赤紫色の花を1個つける。花冠は筒型で、唇形になる。花冠裂片の縁は全縁。果は球状で、種子の大きさは0.04mm。染色体数は2n=30。
同属のオオナンバンギセルに似るが、本種の方が小型である。また、本種の萼の先端は尖るが、オオナンバンギセルの先端は鈍くなるという点も異なる。ヒメナンバンギセル Aeginetia indica L. var. sekimotoana (Makino) Makino
ススキなどの雑草の生長を阻害するため、ナンバンギセルによる生物的除草効果の可能性が示されている。一方、陸稲にナンバンギセルが寄生することで、イネの収量が減少するという被害が報告されている。
◇生活する花たち「露草・なんばんぎせる・玉珊瑚(たまさんご)」(東京白金台・自然教育園)

◆9月ネット句会◆
ご挨拶(高橋正子/主宰)
厳しかった今年の暑さも去り、すっかり涼しくなりました。今月の句会は、9月8日の名月のあとの句会でした。月も半月となっておりましたが、ご投句には、期待した通り、仲秋の名月の句などを含めて、深まりゆく秋を詠んだ句に出会い、嬉しくなりました。入賞の皆さまおめでとうございます。ご参加の皆さまには、選とコメントをありがとうございました。私は、選に迷うことがよくありますが、今月は、多少表現に滑らかさを欠いても、表現したい内容の力強さを優先して選びました。私自身を含めてのことですが、表現の不十分さは、時間を置いたり、推敲したりして補うように努めないといけないと思います。コメントですが、選んだ句のコメントを書いていると、その句の良いところがますますはっきりしてくるように思います。悪いところに気づくこともありますが。句会がこうしたことのよい勉強の場であるよう願います。新しい人たちにも楽しんでいただけたことと思います。今月も句会の管理運営は信之先生に、集計は洋子さんにお世話いただきました。どうもありがとうございました。これで、9月ネット句会を終わります。
★青林檎ときに稲妻差しきたる 正子
酸味の残る青林檎の味、香り、ときおり遠くに細く走る稲光。まだ本当の稔りの秋にはなりきらない不安定な季節の、しかし瑞々しい情感に満ちた心象風景を思います。(小西 宏)
○今日の俳句
とんぼうの列なして行く空かろし/小西 宏
とんぼうが列を作って飛んでゆく楽しい空となった。すいすいと飛んでゆくとんぼうに空まで軽くなった感じだ。(高橋正子)
○毬栗(いがぐり)

[毬栗/横浜市緑区北八朔町]
★落栗やなにかと言へばすぐ谺/芝不器男
栗の木があるところは、山静かな里。落ちた栗も拾われずに転がっている。ちょっとした言葉も響いて谺となる。自分の発した声の谺は、もっとも自分の心がよく受け止めているのではないか。(高橋正子)
★毬栗に袋かぶせてありにけり/高橋将夫
★毬栗や身籠りし山羊つながるる/大串章
★毬栗や祖母に優しく叱られし/大串章
★毬栗を蹴つて日暮れの村となる/小澤克己
★毬栗の落ちてすとんと暗くなる/杉浦典子
★毬栗のやや枯れてゐる掌/田畑幸子
★毬栗を剥くに大事や鎌と足/田中英子
栗の季節になった。栗の季節は意外と早い。まだ残暑が残る中、店頭に栗が現れる。農村や山村では、家に栗の木をもっている家も多い。栗には虫がつきやすいので、昨年まで豊作で栗を送ってきてくれていたのに、今年は突然虫にやられて栗の木が枯れたと報告を受けることもある。送ってきた栗は毬が外してあるのだが、数個は毬栗のまま入っている。それをしばらく飾って楽しんだりするが、毬栗も生き物、次第に色艶が失われてくる。そうなると飾りとしてはおしまい。毬を外して食べることになる。毬栗のまだ青いのが、可愛い。まだ暑い中なのに、毬栗が青々と育っているのを見ると、もうすぐ涼しくなる、もうすぐ栗が食べれるとうれしくなる。愛媛の山村の内子町は蝋の生産で財をなした町で、いまでも古い町並みが残っている。ここは、栗の産地。栗の季節、車を運転してこの辺りを通ると、道にあふれるほど収穫した栗が山積みされている。いったいどの位の栗が収穫されているのか。我が家ではよく栗の渋皮煮を作った。好評であったが、これは土井勝著の「今日の料理」の教えの通りに作っていた。土井勝先生の料理の本にはに随分恩恵を受け、感謝もしている。
★毬栗の青々としてまん丸し/高橋正子
クリ(日本栗・学名Castanea crenata)とはブナ科クリ属の木の一種。日本と朝鮮半島南部原産。中華人民共和国東部と台湾でも栽培されている。クリのうち、各栽培品種の原種で山野に自生するものは、シバグリ(柴栗)またはヤマグリ(山栗)と呼ばれる、栽培品種はシバグリに比べて果実が大粒である。また、シバグリもごく一部では栽培される。落葉性高木で、高さ17m、幹の直径は80cm、あるいはそれ以上になる。樹皮は灰色で厚く、縦に深い裂け目を生じる。葉は長楕円形か長楕円状披針形、やや薄くてぱりぱりしている。表はつやがあり、裏はやや色が薄い。周囲には鋭く突き出した小さな鋸歯が並ぶ。雌雄異花で、いずれも5月から6月に開花する。雄花は穂状で斜めに立ち上がり、全体にクリーム色を帯びた白で、個々の花は小さいものの目を引く。一般に雌花は3個の子房を含み、受精した子房のみが肥大して果実となり、不受精のものはしいなとなる。9月から10月頃に実が成熟すると自然にいがのある殻斗が裂開して中から堅い果実(堅果であり種子ではない)が1 – 3個ずつ現れる。
果実は単にクリ(栗)、またはクリノミ(栗の実)と呼ばれ、普通は他のブナ科植物の果実であるドングリとは区別される(但し、ブナ科植物の果実の総称はドングリであり、広義にはドングリに含まれるとも言える)。また、毬状の殻斗に包まれていることからこの状態が毬果と呼ばれることもあるが、中にあるクリノミ自体が種子ではなく果実であるため誤りである。毬果とは、松かさのようなマツ綱植物の果実を指す。
日本のクリは縄文時代人の主食であり、青森県の三内丸山遺跡から出土したクリから、縄文時代にはすでに本種が栽培されていたことがわかっている。年間平均気温10 – 14℃、最低気温氷点下20℃をくだらない地方であれば、どこでも栽培が可能で、国内においてはほぼ全都道府県でみられ、生産量は、茨城、熊本、愛媛、岐阜、埼玉の順に多い。
◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)
