■10月ネット句会入賞発表■


■10月ネット句会■
■入賞発表/2014年10月13日■

【金賞】
★風澄みて濠の蓮の実飛ぶを見る/小川和子
蓮の花が終わると、蜂の巣状に穴の開いた花托(かたく)となって、中の実が熟すと穴から飛び出て水に落ちる。この句の蓮は濠に咲いていた蓮。「蓮の実飛ぶ」を眼のあたりにした驚きでもあるが、「風澄みて」によって、いっそうクリアに「蓮の実飛ぶ」を見たことになった。(高橋正子)

【銀賞2句】
★幟はためき刈りたての田が匂う/藤田洋子
幟は秋祭りの幟で、そもそも秋祭りは収穫に感謝する祭りだ。稲が刈られたばかりの田が匂い、墨痕鮮やかな幟がはためき、祭りの気分も盛り上がる。在所の秋祭りの雰囲気がよく出ている。(高橋正子)

★爽やかに大東京を一望す/多田有花
東京が一望できる超高層ビルやタワーに上ったのだろう。秋気が澄み、大東京が一望できることに、爽やかさを感じ取った。また、句意がはっきりしていることも、爽やかさの一つとしたい。(高橋正子)

【銅賞3句】
★ぷちぷちと足裏にひびき木の実踏む/桑本栄太郎
散歩などで森の道などを歩くと、おびただしい木の実が落ちているのに出会う。踏み歩くと足裏に「ぷちぷち」とひびく。木の実の形、木の実の硬さが足裏に伝わってくる確かな実感がある。(高橋正子)

★カタコトと夜なべのミシン軽やかに/井上治代
夜なべは、農家では冬物の繕いや藁仕事などしたが、今ではこうした夜なべは少ない。夜遅くまで起きている生活が普通になり、「夜なべ」にも、趣味的な楽しみの要素がが加わってきた。この句の夜なべに踏むミシンもカタコトと、軽やかで楽しそうだ。(高橋正子)

★コスモスの色地に零しつつ剪れり/柳原美知子
秋も半ば、コスモスが咲き誇っている。中にはすぐに散る花もある。剪りとろうとすると、花びらがこぼれ散る。その散り零れるいろいろの色が、咲く花よりも儚くて印象に残る。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】

★幟はためき刈りたての田が匂う/藤田洋子
秋祭りの風景なのであろうか。あるいは、稲刈りと合わせて田の傍に幟を立てるものなのだろうか。私は、実際にこうした風景を見たことはないのだが、収穫の喜びが晴れ晴れと祝われている情景を目の当たりにすることができます。「田が匂う」が力強く響きます。(小西 宏)
人を詠んだ句ではないのに、そこに暮らす人のぬくもりを感じる、好きな句です。路には行事の幟が立てられ、稲はまさに苅ったばかり、刈株が並んで、田ごと匂い立つよう。静かな景色に、確かな日々の営みがあります。(川名ますみ)
稲刈りを終えた里の秋祭りを迎える静かで喜びに満ちた人々の暮らしがうかがえる日本の原風景に、心安らぐ思いがします。(柳原美知子)

★蔓細工の籠に重ねて青みかん/小川和子
味わいのある籠に重ねられたみかん。つやつやと輝きおいしそうです。実りの秋に感謝したいと思います。 (井上治代)

★俎板に軽き音立て秋祭り/藤田洋子
そうですよね、お祭りの外の賑やかさを詠むことが多いですが、家内のご馳走づくりも祭りのものですね。力を入れずに「軽き」がとても素敵です。 (祝恵子)

★乾杯のワインの美味さ赤き月/内山富佐子
先日の皆既月食ですね。夕方から夜半前までの天体ショー。今回は約1時間かけて赤い月を眺める事が出来ました。その月を仰ぎながらご家族?お友達?とワインで乾杯!美味しい!至福の一時です。 (佃 康水)

★風澄みて濠の蓮の実飛ぶを見る/小川和子
蓮の実は実に奇妙な形をしている。実際に飛ぶ光景を見た事はないものの、秋晴れの爽やかな日にポンと音を立てて飛ぶと聞いた事がある。あの多連装の銃口のような形状から飛ぶ事を想えばさもありなんと想え、そこに秋の豊かな詩情が生まれた。 (桑本栄太郎)

★妹も泥に網入れ蘆の花/小西 宏
おそらく上のお子さんを真似ての姿でしょう。自然の中で遊ぶ子どもたちがありありと目に浮かび、心安らぐ水辺の秋の光景です。子どもたちを見守るあたたかな眼差しに、蘆の花穂がこよなく優しく感じられます。 (藤田洋子)

★ぷちぷちと足裏にひびき木の実踏む/桑本栄太郎
★爽やかに大東京を一望す/多田有花

【高橋正子特選/8句】

★幟はためき刈りたての田が匂う/藤田洋子
人を詠んだ句ではないのに、そこに暮らす人のぬくもりを感じる、好きな句です。路には行事の幟が立てられ、稲はまさに苅ったばかり、刈株が並んで、田ごと匂い立つよう。静かな景色に、確かな日々の営みがあります。(川名ますみ)
稲刈りを終えた里の秋祭りを迎える静かで喜びに満ちた人々の暮らしがうかがえる日本の原風景に、心安らぐ思いがします。(柳原美知子)

★風澄みて濠の蓮の実飛ぶを見る/小川和子
蓮の実は実に奇妙な形をしている。実際に飛ぶ光景を見た事はないものの、秋晴れの爽やかな日にポンと音を立てて飛ぶと聞いた事がある。あの多連装の銃口のような形状から飛ぶ事を想えばさもありなんと想え、そこに秋の豊かな詩情が生まれた。 (桑本栄太郎) 

★畝に座し句帳開けば百舌遠音/古田敬二
菜園作業を終えちょっと一休み。やれやれと畝に座し句帳を開くと何処からか百舌の声が聞こえてくる。そこで一句。日頃から菜園を楽しみつつ、またそれを余さず句財にされている作者が見えて参ります。空晴れて絶好の百舌日和、心身共に伸びやかです。 (佃 康水)

★稲雀辺りの屋根を逃げ場とし/佃 康水
辺りを賑わしている稲雀たち、敏感に反応しては近場の屋根に逃げてはまた下りる。その動きを楽しんでいる作者です。(祝恵子)
何に驚いたのか、そろって逃げ去り、近くの屋根に集まってようすを窺う姿をよく見かけます。そのくせ、すぐにまた刈り後の田んぼに舞い降りて来るのですね。微笑ましい秋の風景です。(小西 宏)

★東へと帰る旅路は秋の夜/高橋秀之
東へと向かっている、旅を終えての帰途の安堵感でしょうか。(祝恵子)

★カタコトと夜なべのミシン軽やかに/井上治代
★爽やかに大東京を一望す/多田有花
★コスモスの色地に零しつつ剪れり/柳原美知子

【入選/7句】
★秋の蝶吾身に触れて離れゆく/祝恵子
秋の蝶はどこか、はかなげ。ひらひらと近づいてきて、作者に触れ、どこへともなく去ってゆく。秋の日の蝶との又とない交流のひとときが思われます。(小川和子)

★あつあつの秋刀魚ふとぶと皿に余る/小西 宏
秋の味覚の王者、秋刀魚。皿をはみ出すほどの太った秋刀魚。焼き立てにカボスなどを絞って掛け、アツアツをほぐして、新米の飯を食う。どんなレストランの料理のも勝る夕餉である。 (古田敬二)

★鳥が飛ぶ秋の瀬戸内海岸線/高橋秀之
大きな景の句です。鳥の目になってどこまでも続く瀬戸内の海岸線を空から気持ちよく俯瞰しました。 (内山富佐子)

★噴煙の果てて紅葉の日和かな/小口泰與
噴煙は浅間山のものでしょうか。今日は噴煙が少なく穏やか、お天気も上々で色づき始めた紅葉が美しく山を彩っています。 (多田有花)

★月食を同窓会に秋の暮/川名ますみ
月食の夜に生まれる、旧友たちとの素敵な交流に心和みます。刻々と進む月食の感動を互いに共有しながら、深まる秋にいっそう心豊かなひとときが感じられます。 (藤田洋子)

★秋晴れに島のまわりに釣りの舟/迫田和代
瀬戸内の島でしょう。小舟が島のまわりに散らばっています。澄んだ秋空と穏やかな瀬戸の海、ほのぼのとした情景です。 (多田有花)

★銀漢や灯台の下釣り師あり/福田ひろし
雄大な景色です。天の川、灯台、釣り師と大きなところから小さなところへと視点を誘われます。 (多田有花)

■選者詠/高橋信之
★台風の眼がある今日のパソコンに
大型の台風19号は台湾と小笠原諸島との間を通過 する時には大きな台風の眼がレイダーにはっきり映りTVやPCで見ることが出来ます。今年最大の勢力で日本を縦断して大きな被害をもたらしました。(小口泰與)
先日、宇宙ステーションから撮影した台風19号の写真をネットで見ました。恐らく同じものをご覧になっての御句と思います。白い雲の中央に目がくっきりと見えていて、大型で強い台風の力を感じました。(多田有花)

★手拭の小熊の笑みよ台風去る
★台風去って街の明るい朝へ出る

■選者詠/高橋正子
★月ひとつ霧に滲んで高くあり
秋の月が、少し滲みながらも、毅然と空高く輝いている。ひとつ、高く、という言葉が厳かな雰囲気を見事に表現されているように思います。(福田ひろし)

★銀杏を割って永久のみどり色
お正月の祝い膳に翡翠色した銀杏を飾ったり、茶碗蒸しに入れたり、殻煎りしてぷちっと割って出てきた緑の実を美味しく戴くのがこれからの楽しみです。「永久のみどり色」の表現にとても新鮮な魅力を感じました。「永久の」とは「割った芯の何処までも澄んだみどり色」「何時も変わらぬ翡翠色」などの意味を表現されているのかなと透きとおる様な銀杏のみどりを思い浮かべています。(佃 康水)

★空耳と思えど里の祭笛
氏神様を祀る秋祭りは収穫の整う10月上旬に行われる事が多く、小生の田舎では10月10日に行われていた。三方に米、里芋、柿、人参ほか収穫物を乗せて供えていた。秋祭りは遷宮でもあれば露店も出て、それは大変な賑わいであった。風に乗って何処か遠くから祭笛の音が聞こえて来れば、空耳では?と思いながらも遠い懐かしい記憶が一瞬にして蘇えり、胸が躍るのである。(桑本栄太郎)

■互選高点句
●最高点(7点)
★幟はためき刈りたての田が匂う/藤田洋子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

◆10月ネット句会清記◆


■10月ネット句会■
■清記/18名54句
※午後6時になりましたら、選句を開始してください。

01.木犀や田川の瀬音身の内に
02.噴煙の果てて紅葉の日和かな
03.目覚めたる身の節々や豊の秋
04.虫の音を遠くに聞きてしまい風呂
05.秋暑し芋の葉陰で憩いたり
06.カタコトと夜なべのミシン軽やかに
07.嵐去り秋蝶つるみ青空へ
08.蔓引けば青き香いまだ溢れけり
09.ぷちぷちと足裏にひびき木の実踏む
10.月食の土手や細りし虫の闇

11.稲雀辺りの屋根を逃げ場とし
12.電線を撓わせ並ぶ秋燕
13.街角に神輿高々秋祭り
14.俎板に軽き音立て秋祭り
15.幟はためき刈りたての田が匂う
16.秋扇巻きし毛先を揺らすため
17.月食を同窓会に秋の暮
18.タブレット越しのお喋り赤き月
19.秋蝶の低きを飛んで優しかり
20.畝に座し句帳開けば百舌遠音

21.新しき畝を秋の天道虫
22.森近くあちらこちらに吾亦紅
23.澄んだ水川の流れを橋の上
24.秋晴れに島のまわりに釣りの舟
25.蔓細工の籠に重ねて青みかん
26.風澄みて濠の蓮の実飛ぶを見る
27.半世紀経て吾に褪せぬ林檎園
28.眈々と狙い定める野分かな
29.銀漢や灯台の下釣り師あり
30.静かなる野分の前の薄き空

31.青空に芙蓉の赤のふと揺れて
32.秋の蝶吾身に触れて離れゆく
33.赤とんぼスイッと追いこし戻りくる
34.団栗のポツと地を打つ森静か
35.妹も泥に網入れ蘆の花
36.あつあつの秋刀魚ふとぶと皿に余る
37.秋晴れや玉砂利踏んで二重橋
38.秋天へぐんぐん昇るエレベーター
39.爽やかに大東京を一望す
40.鳥が飛ぶ秋の瀬戸内海岸線

41.単線の線路の隙間に狗の子草
42.東へと帰る旅路は秋の夜
43.月ひとつ霧に滲んで高くあり
44.空耳と思えど里の祭笛
45.銀杏を割って永久のみどり色
46.台風の眼がある今日のパソコンに
47.手拭の小熊の笑みよ台風去る
48.台風去って街の明るい朝へ出る
49.濠の秋鯉群がりて綾をなし
50.破蓮の水面に届く日の光

51.乾杯のワインの美味さ赤き月
52.コスモスの色地に零しつつ剪れり
53.秋天へ甲羅干したる堀の亀
54.刈田吹く風を集めて夕焼雲

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、10月13日(月)午後6時から始め、同日(10月13日)午後9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、10月14日(火)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、10月14日(火)正午~10月15月(水)午後6時です。

10月ネット句会のご案内

◆10月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(秋の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2014年10月8日(水)午後4時~10月13日(月)午後6時
④選句期間:10月13日(月)午後6時~10月13日(月)午後9時
⑤入賞発表:10月14日(火)正午
※投句を受け付けています。

10月4日(土)

★炊き上がる米の光りにぎんなん混ぜ  正子
炊きあがりたてのお米は、白くつややかでふっくらとしています。特にこの時期は光っているがごとく見るからにおいしそう。そんなお米にぎんなんを混ぜて、いよいよ食欲をそそる仕上がることでしょう。(高橋秀之)

○今日の俳句
鳥の群れ高く遠くへ秋の空/高橋秀之
「高く遠くへ」に、秋空の本質が詠まれている。群れて飛んでゆく鳥が静の中の動として印象的だ。(高橋正子)

○野竹(のだけ)

[野竹/東京白金台・自然教育園]

★野竹美し花後の実の膨らみつつ/高橋信之
★野竹野に美しき実を散らばせる/高橋信之
★九月の茂り野竹の花の色まぎる/高橋正子

 野竹というのを、今年の九月に四季の森公園で見るまで、名前も、もちろん花も知らなかった。九月に里山の茂りの中に濃い赤紫色の複散形花序の花を咲かせているのを初めて見た。なぜ「竹」の字が入るのだろうと思い茎を見ると、確かに茎が竹の節のようになっている。それで、「野竹」なのだ。花の後は、子房がロココ調のような美しい薄青色になる。花よりも花の後が美しい。
 ノダケ(野竹、学名:Angelica decursiva)はセリ科シシウド属の多年草。根は太く束状になる。茎は暗紫色を帯び、直立し、上部はわずかに分枝して、高さは80-150cmになる。葉は互生し、柄があり、ふつう3出羽状複葉または羽状複葉になり、小葉や裂片は長卵形、楕円形、長楕円形で、縁には軟骨質で硬い鋸歯があり、葉の裏側は白色を帯びる。頂小葉の基部は葉柄に流れて翼になり、葉柄の下部は袋状にふくらむ。花期は9-11月。茎頂か、分枝した先端に暗赤色の複散形花序をつける。花は5弁花で、花弁は暗紫色まれに白色で、萼歯片はない。 果実は長さ4-6mmの平たい広楕円形になる。分果の背隆条は脈状、側隆条は広い翼状になり、油管は表面側の各背溝下に1-4個、分果が接しあう合生面に4-6個ある。果実にはカレー粉に似た香りがある。日本では、本州、四国、九州に分布し、山野に生育する。世界では朝鮮、ウスリー、中国、インドシナに分布する。なお、多くの図鑑などでは、分布は「本州(関東地方以西)」とあるが、東北地方でも分布が確認されている。

◇生活する花たち「藻の花・萩・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)

10月3日(金)

★円盤の刃に秋草のきらきら散る  正子
円形をした草刈り機でしょうか。性能のよい円盤の刃で、秋の草がみるみる輝くように刈りとられ、散っていきます。刈りとられたあとは、草の香とともにさっぱりとした景が広がることでしょう。(小川和子)

○今日の俳句
とんぼうの入りくる画廊開かれて/小川和子
画廊にとんぼうは入ってくるのに意外性がある。窓を開け放った小さな画廊であろう。自然に開け放たれ、自然光を入れ、とんぼうも迷い込むようなところで画を鑑賞するのもよいものだ。(高橋正子)

○道草(あけび)

[道草の実/東京・向島百花園]       [道草の花/横浜日吉本町]

★三つ葉あけび割れたり中に種あまた/高橋正子

 アケビ(木通、通草)は、アケビ科の蔓性落葉低木の一種(学名: Akebia quinata)、あるいはアケビ属(学名: Akebia)に属する植物の総称である。茎は蔓になって他物に巻き付き、古くなると木質化する。葉は5つの楕円形の小葉が掌状につく複葉で、互生する。花は4 – 5月に咲き、木は雌雄同株であるが雌雄異花で淡紫色。花被は3枚で、雄花の中央部には6本の雄しべがミカンの房状に、雌花の中央部にはバナナの果実のような6 – 9本の雌しべが放射状につく。雌花の柱頭(先端部)には、甘みを持った粘着性の液体が付いており、花粉がここに付着することで受粉が成立する。雌雄異花で蜜も出さないので、受粉生態にはよくわかっていない点が多いが、雌花が雄花に擬態して、雄花の花粉を目当てに飛来する小型のハナバチ類を騙して受粉を成功させているのではないか、とする仮説がある。ハエ類が甘みを持った粘着質を舐めに来る際に受粉していると考えられる。受粉に成功した個々の雌しべは、成長して果実となり、10cm前後まで成長する。9 – 10月に熟して淡紫色に色づく。成熟した果実の果皮は心皮の合着線で裂開し、甘い胎座とそこに埋もれた多数の黒い種子を裸出する。この胎座の部分は様々な鳥類や哺乳類に食べられて、種子散布に寄与する。
 種子を包む胎座が甘みを持つので、昔から山遊びする子供の絶好のおやつとして親しまれてきた。果皮はほろ苦く、内部にひき肉を詰めて油で揚げたり刻んで味噌炒めにするなど、こちらは山菜料理として親しまれている。主に山形県では、農家で栽培され、スーパーで購入することができる。また、東北地方などでは、新芽(山形県や新潟県などでは「木の芽」と呼ぶ)をやはり山菜として利用している。その他、成熟した蔓は、籠を編むなどして工芸品の素材として利用される。また、秋田県では、種を油の原料としている。江戸時代から明治時代にかけては高級品として珍重され、明治以降生産が途絶えていたが、近年復活した。

◇生活する花たち「いぬたで・金木犀・やぶまめの花」(四季の森公園)

10月1日(水)

★藤袴スカイツリーのいや真直ぐ  正子
古来より親しまれた秋の七草と、時代の最先端のタワーとの対照的な存在感ながら、秋空のもと美しく爽やかな景観です。淡紫色の小花の藤袴と空へ真っ直ぐ伸びる巨大なスカイツリーが新鮮に目に映り、風景の広がりを感じさせてくれます。(藤田洋子)

○今日の俳句
幾重にも石積みの畑秋高し/藤田洋子
段々畑は、石を積み上げて猫の額ほどの畑を山頂へと幾段も作った。作物にやる水も下から桶で運びあげねばならず、日本の零細農業の象徴のような存在だが、その景観は美しい。秋空を背にして山頂までの石垣がまぶしい。(高橋正子)

○木犀

[金木犀/横浜日吉本町]           [銀木犀/横浜日吉本町]

★木犀の昼は醒めたる香炉かな 嵐雪
★木犀の香に染む雨の鴉かな/泉鏡花
★木犀に人を思ひて徘徊す/尾崎放哉
★木犀の弾けるごとく咲き出でぬ/宮津昭彦
★木犀やしづかに昼夜入れかはる/岡井省二
★大徳寺は塔頭多し夜の木犀/鈴鹿野風呂
★木犀や雨に籠れば男饐え/上田五千石
★いづこの木犀朝の鞄は飯の重さ/瀧春一
★托鉢や木犀の香のところどころ/中川宋淵
★銀木犀身じろげばまた香もゆらぐ/篠田悌二郎
★木犀の香に昇天の鷹ひとつ/飯田龍太
★木犀に土は色濃うして膨らめる/原月舟
★木犀や屋根にひろげしよき衾/石橋秀野
★遠き日のごと木犀は咲きにけり/岡輝好

金木犀の匂いが流れてくる。ある日その匂いに気付くと、すぐに在所の祭りが近づく。子供は秋の服装になり、毛糸のチョッキを着たりする。新米も炊き上がる。栗もまだまだある。蓮根もおいしくなる。魚はなんだろうか。酢〆にした鯖なんかもある。祭りのごちそうが揃ってくる。そんな季節の花なのだ。金木犀は。

★金木犀こぼれし花もあたたかな/高橋正子
★青空に銀木犀の銀確かむ/〃

 モクセイ(木犀、学名: Osmanthus fragrans)は、モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。別名、ギンモクセイ(銀木犀)という。広義では、Osmanthus fragrans に属する変種、品種の総称。中国原産で、中国名は桂花 。ギンモクセイ(銀木犀、学名:Osmanthus fragrans Lour. var. fragrans)、キンモクセイ(金木犀、学名:Osmanthus fragrans Lour. var. aurantiacus Makino)、ウスギモクセイ(薄黄木犀、学名:Osmanthus fragrans Lour. var. thunbergii Makino)の総称であるが、単に「木犀」と言う場合は、ギンモクセイを指すことが多い。
 ギンモクセイは、中国原産の常緑小高木で、樹高は3-6mになり、庭や公園などで栽培されている。花には香気があるがキンモクセイほどは強くない。幹は淡灰褐色で、樹皮は縦に裂け目ができる。葉は長さ7-15mmの葉柄をもって対生する。葉身は革質で、長さ8-15cm、幅3-5cmとキンモクセイより葉幅が広く、楕円形で先端は急にとがり、縁にはあらい細鋸歯があるが、鋸歯がなく全縁の場合もある。葉脈の主脈は表面でくぼみ、裏面で突出する。花期は9-10月。雌雄異株で、花は葉腋に束生する。花柄は長さ5-10mmになる。花冠は白色で4深裂し、径約4mmになる。雄蘂は2個。果実は核果で、長さ1-1.5cmの楕円形になり、翌年の春に黒褐色に熟す。

◇生活する花たち「茶の花・犬蓼・吾亦紅」(横浜下田町・松の川緑道)

9月30日(火)

★藤袴スカイツリーのいや真直ぐ  正子
スカイツリーは真っ直ぐすぎ、高すぎ、姿からすると東京タワーの方が人気があるとききました。藤袴との取り合わせが新鮮です。 (多田有花)

○今日の俳句
さわやかに心を決めていることも/多田有花
この句は、心にきめていることがあって、それはさわやかなものだ、というのみである。体内をさわやかに風が吹く感じだ。(高橋正子)

○白曼珠沙華
 
[白曼珠沙華/横浜日吉本町]         [白曼珠沙華/横浜・四季の森公園]

 ★白曼珠沙華群れて池への斜面に立つ/高橋信之
 ★旅すれば棚田棚田の曼珠沙華/高橋正子

 日本に自生している彼岸花類では、白い彼岸花 白花ヒガンバナ(アルビフロラ)、黄色い彼岸花 ショウキラン、赤い彼岸花 曼珠沙華、橙色の彼岸花 キツネノカミソリやオオキツネノカミソリ、などがよく知られています。
 白花ヒガンバナあるいは白花まんじゅしゃげといわれるものには、花色、花形、葉色の異なるタイプがいくつかあります。花色は純な白というわけではではなく、クリームがかった白、うすいピンクがかった白、濃い目のピンク(アルビピンク、チェリーピンク)などいくつかの変異が見られます。花形は、花弁がやや幅広くてフリルの入るものや、細弁のものなどがあり、いずれも強く反転します。葉色にも濃淡の差があります。
 白花ヒガンバナの中で、花弁が幅広くてフリルの入るタイプを「アルビフロラ」、細弁のタイプを「エルジアエ」と言うんだよ、と教えてくれた人があります。一般には、広弁のタイプも細弁のタイプも含めて、白花ヒガンバナ(アルビフロラ)で流通しているようです。「フォーン」は、アルビフロラに似ていますが、クリーム色の広い花弁が波を打ち、力強くてりっぱな花姿です。開花はアルビフロラとほぼ同じで、9月半ばごろになります。
 白花ヒガンバナは、黄色のショウキランと彼岸花の雑種といわれています。そうなると、ショウキランの相方はよく実の着く中国産の彼岸花だったのでしょうか。それともショウキランが日本の彼岸花とたまたま巡り会って、白花ヒガンバナが生まれたのでしょうか。いろんなタイプの白花ヒガンバナがあるということは、いくつかの巡り会わせがあったのかもしれません。色彩の世界では、赤と黄色を混ぜ合わせたら、オレンジないしは柿色などを想像しますが、ショウキランの黄と彼岸花の赤とがかけ合わされた結果、白色の花ができるというのも、なんだか不思議な感じがします。

生活する花たち「野菊・藤袴・萩」(東京・向島百花園)

9月18日(木)

★虫籠に風入らせて子ら駈ける  正子
心地よい秋風が吹く野原で、虫取りに夢中なっている子供たちの生き生きした声と虫籠を通り抜ける風の音や虫の音が聞こえてきそうです。(柳原美知子)

○今日の俳句
稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子
熟れ稲の香が田に満ちて、刈るたびにその香が風に放たれてゆく。一株一株鎌で刈り取られているのだろう。爽やかな風の吹く晴れた日の稲刈りが想像できる。(高橋正子)

○稲穂

[稲穂/横浜市緑区北八朔]

★旅人の藪にはさみし稲穂哉 一茶
★草花と握り添へたる稲穂かな 一茶
★稲の穂の伏し重なりし夕日哉 子規
★稲の穂に湯の町低し二百軒 子規
★稲熟し人癒えて去るや温泉の村 漱石
★稲の穂の向き合ひ垂るる小畦かな 風生
★握り見て心に応ふ稲穂かな 虚子
★子を抱いて乳飲まし来る稲の道 虚子
★我が思ふ如く人行く稲田かな 汀女
★稲孕みつつあり夜間飛行の灯 三鬼
★中学生朝の眼鏡の稲に澄み 草田男
★稲負ふや左右にはしる山の翼 楸邨
★ゆふぐれの溝をつたへり稲の香は 静塔
★熟れ稲の香のそこはかと霧は濃き 亞浪
★小作争議にかかはりもなく稲となる しづの女
★わがこころ稲の穂波にただよへり 青邨
★稲の香におぼれてバスのかしぎ来る 秋櫻子

稲は、その伝播の経路や、日本文化の形成過程に寄与した点など、ほかの農作物とは比べ物にならないほど、重要な作物となっている。春の苗代作りから秋の収穫まで、天候を睨み、水を測り、労力と忍耐を惜しまず、手塩にかけて育てるのが稲だ。その稲が稔りのときを迎えると、何にも増して、喜びがわく。一年の食生活の基本が保障される。稲穂に実が入り熟れてくると、次第に垂れさがる。稔った穂が風にさらさら鳴る音は、心地よい。そうすると、日に暖められた稲穂が、ほんのりといい香を放つ。稲が熟れるころは、葉も透き通るように黄緑いろから黄色になってくる。神聖なまでの色合いだ。子供のころは、「稔るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」と、謙虚が大事いう意味でよく言われた。今はこんなことを言う時勢ではないようだ。日本も随分アメリカナイズされたと思う。

★通勤の道の左右に稲穂垂れ/高橋正子
★稲の穂に朝露白く置いてあり/〃

 イネ(稲、稻、禾)は、イネ科 イネ属の植物である。稲禾(とうか)や禾稲(かとう)ともいう。 収穫物は米と呼ばれ、世界三大穀物の1つとなっている。本来は多年生植物であるが、食用作物化の過程で、一年生植物となったものがある。また、多年型でも2年目以降は収穫量が激減するので、年を越えての栽培は行わないのが普通である。よって栽培上は一年生植物として扱う。属名 Oryza は古代ギリシア語由来のラテン語で「米」または「イネ」の意。種小名 sativa は「栽培されている」といった意味。用水量が少ない土壌で栽培可能なイネを陸稲(りくとう、おかぼ)と呼ぶ。日本国内に稲の祖先型野生種が存在した形跡はなく、海外において栽培作物として確立してから、栽培技術や食文化、信仰などと共に伝播したものと考えられている。稲を異常なまでに神聖視してきたという歴史的な自覚から、しばしば稲作の伝播経路に日本民族の出自が重ねられ、重要な関心事となってきた。一般に日本列島への伝播は、概ね3つの経路によると考えられている。南方の照葉樹林文化圏から黒潮にのってやってきた「海上の道」、朝鮮半島経由の道、長江流域から直接の道である。3つの経路はそれぞれ日本文化形成に重層的に寄与していると考えられている。現在日本で栽培されるイネは、ほぼ全てが温帯ジャポニカに属する品種であるが、過去には熱帯ジャポニカ(ジャバニカ)も伝播し栽培されていた形跡がある。
 稲の食用部分の主 成分であるでんぷんは、分子構造の違いからアミロースとアミロペクチンに別けられる。お米の食感は、両者の含有配分によって大きく異なる。すなわちアミロース含量が少ないお米は加熱時にやわらかくモチモチした食感になり、アミロース含量が多いとパサパサした食感になる。日本人の食文化では、低アミロースのお米を「美味しい」と感じる。この好みは、世界的には少数派となっている。通常の米は20%程度のアミロースを含んでいるが、遺伝的欠損によりアミロース含量が0%の品種もあり、これがモチ性品種で、モチ性品種が栽培されている地域は東南アジア山岳部の照葉樹林帯に限定されている。その特異性から、その地域を「モチ食文化圏」と呼称されることがある。日本列島自体が西半分を「モチ食文化圏」と同じ照葉樹林に覆われており、またハレの日にもち米を食べる習慣がある(オコワ、赤飯、お餅)ことから、日本文化のルーツの一つとして注目された。

◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

9月17日(水)

★萩のトンネル真上ぱらぱら空があり  正子
萩のトンネルにはところどころ隙間があるのでしょう。その隙間からぱらぱらと空が見えている。そこは、正に空があるという感じなのでしょう。 (高橋秀之)

○今日の俳句
涼新た一直線に船が出る/高橋秀之
新涼の季節。港を出てゆく船も、かろやかに一直線に航跡を残して出てゆく。新涼の気分に満ちた句。(高橋正子)

○9月17日、白金台の自然教育園へ行く。今日は目黒駅で下車。帰りは、白金台駅より乗車。秋草の小さい花がいろいろさいていた。
松風草、盗人萩、かりがね草、水引草、金水引、山ほととぎす、露草、彼岸花、芒、白花桜蓼、しらやまぎく、山萩、吾亦紅、長穂の白吾亦紅、蔓豆、野原薊、タイ薊、ツルボ、南蛮煙管、藤袴、未草、あさざ、など。今年は、郁子の実はなかった。

露草の青のいのちの正午まで   正子
露草の青の息づく池ほとり    〃
秋草の千草の花に金水引     正子
桜蓼の埋めし野原に露草も    〃
金水引露草桜蓼野が埋まり    〃
吾亦紅の紅の丸きが草に飛び   正子
吾亦紅千草に映えし紅の色    〃
空へ眼をやれば若き芒の穂    正子
南蛮煙管うすむらさきに水通う  正子
未草水面にひとしき花映り    正子
未草小さき花も傾きぬ      〃
未草九月の花は乳色に      〃
しらやまぎくそのしろがねを日に晒し 正子
うす曇る秋空淡し雁草      正子
雁草引けば揺れたり揺れやすき  〃
彼岸花つぼみの花が添い立てり  正子
彼岸花森のなかにも蘂を張り   〃
山萩の紅濃き枝のふさふさと   正子
山萩に黄蝶が止まりまた離れ   〃
道すがら山ほととぎす咲いており 正子

鉄風鈴つづれる虫に鳴りにけり 正子
鯛づくしの料理のなかの青酢橘 〃
虫の音も鉄風鈴も窓越しに   〃

○南蛮煙管(なんばんぎせる)

[南蛮煙管/東京白金台・国立自然教育園]

★芒の根方南蛮煙管のすくと伸ぶ/高橋正子

 ナンバンギセル(南蛮煙管、Aeginetia indica)はハマウツボ科ナンバンギセル属の寄生植物。日本を含むアジア東部、アジア南部の温帯から熱帯にかけて生育する。
 イネ科の単子葉植物(イネ、ススキ、サトウキビなど)の根に寄生する。寄主の根から吸収した栄養分に依存して生育するため、寄主の生長は阻害され、死に至ることもある。全長は15-50cm。葉は披卵形、長さ5-10mm、幅3-4mm[3]。花期は7-8月、赤紫色の花を1個つける。花冠は筒型で、唇形になる。花冠裂片の縁は全縁。果は球状で、種子の大きさは0.04mm。染色体数は2n=30。
 同属のオオナンバンギセルに似るが、本種の方が小型である。また、本種の萼の先端は尖るが、オオナンバンギセルの先端は鈍くなるという点も異なる。ヒメナンバンギセル Aeginetia indica L. var. sekimotoana (Makino) Makino
 ススキなどの雑草の生長を阻害するため、ナンバンギセルによる生物的除草効果の可能性が示されている。一方、陸稲にナンバンギセルが寄生することで、イネの収量が減少するという被害が報告されている。

◇生活する花たち「露草・なんばんぎせる・玉珊瑚(たまさんご)」(東京白金台・自然教育園)

◆ご挨拶/9月ネット句会◆

◆9月ネット句会◆
ご挨拶(高橋正子/主宰)
厳しかった今年の暑さも去り、すっかり涼しくなりました。今月の句会は、9月8日の名月のあとの句会でした。月も半月となっておりましたが、ご投句には、期待した通り、仲秋の名月の句などを含めて、深まりゆく秋を詠んだ句に出会い、嬉しくなりました。入賞の皆さまおめでとうございます。ご参加の皆さまには、選とコメントをありがとうございました。私は、選に迷うことがよくありますが、今月は、多少表現に滑らかさを欠いても、表現したい内容の力強さを優先して選びました。私自身を含めてのことですが、表現の不十分さは、時間を置いたり、推敲したりして補うように努めないといけないと思います。コメントですが、選んだ句のコメントを書いていると、その句の良いところがますますはっきりしてくるように思います。悪いところに気づくこともありますが。句会がこうしたことのよい勉強の場であるよう願います。新しい人たちにも楽しんでいただけたことと思います。今月も句会の管理運営は信之先生に、集計は洋子さんにお世話いただきました。どうもありがとうございました。これで、9月ネット句会を終わります。