★冬桜どれも高くて雲に見る/高橋正子
寒空に冬桜が咲いている。見上げれば、ほつほつと咲く花はどれも雲と同化しているようにみえ、心は温まります。 (祝恵子)
○今日の俳句
ラディッシュの水を通せばなお美し/祝恵子
ラディッシュの紅色はそれ自体で美しいが、水に放てば、さらに紅色がみずみずしく美しくなる。小さなことだが、これも生活の楽しさ。(高橋正子)
○辛夷の花芽

[辛夷の花芽/横浜日吉本町(2013年1月12日)][辛夷の花蕾/横浜日吉本町(2012年3月25日)]
★晴ればれと亡きひとはいま辛夷の芽/友岡子郷
★風の日の白の際立ち花辛夷/鷹羽狩行
★朝空のすでにおほぞら花辛夷/林誠司
★墓のみとなりしふるさと辛夷咲く/山田暢子
★夕空にさざなみたちぬ花こぶし/貞吉直子
★こぶし咲く坂登りゆくバスの数/辻のぶ子
★花辛夷やまびこゆきてかへるかな/坂田和嘉子
★花辛夷朝の光りにふるへ咲く/勝又寿ゞ子
★人を待つ辛夷の光見上げつつ/高橋正子
コブシ(辛夷)の花芽(広島市植物公園2月14日)
辛夷の花芽が柔らかくひかっていた。開花期は地域の気候に左右され3~5月と幅がある。自分の住む広島県西部の山に自生しているのは、「コブシ(辛夷)」ではなく「タムシバ(匂辛夷)」だから、これは植栽されたものである。両者にほとんど違いはないが、辛夷は花の付け根に小さな葉が一つついているのに対し、タムシバの場合は葉がつかない。この地方では4月上旬に開花することが多い。いっせいに咲いて咲き終わり、また山に紛れてしまう。(ブログ「山野草、植物めぐり」より)
コブシ(辛夷、学名:Magnolia kobus)は、モクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。別名「田打ち桜」。
◇生活する花たち「蝋梅・冬桜・さんしゅゆの実」(横横浜・四季の森公園)

早稲田大学
★学生喫茶ジャズと会話と暖房と 正子
最近の様子はよく知らないが、寒いこの季節暖房のよく聞いた喫茶店に学生たちが大勢やってきておしゃべりに興じている。店内に流れるジャズのりずむが若者たちの熱気を投影しているようだ。平易な詠みでこの季節の風物がたくみに表現されている。共感を呼ぶ御句と思います。 (河野啓一)
○今日の俳句
寒晴れの朝日に鵯のやって来て/河野啓一
「朝日に鵯がやって来る」というのがいい。力強く鳴く鵯の声と朝日の明るさが生気に満ちている。(高橋正子)
○寒林

[寒林/横浜・四季の森公園] [寒禽/横浜・四季の森公園]
★冬木立いかめしや山のたたずまひ 才磨
★斧入れて香におどろくや冬木立 蕪村
★郊外に酒屋の蔵や冬木だち 召波
★冬木だち月骨髄に入る夜かな 几董
★冬木立烏くひきるかづらかな 闌更
★寒林の日すぢ争ふ羽虫かな/杉田久女
★学園の寒林の中牧師棲む/松本たかし
★牛乳の噴きこぼれをり冬木立/長谷川櫂
★野の入日燃えて寒林の道をはる/水原秋桜子
★寒禽となり了んぬる鵙一羽/竹下しづの女
★寒禽の叫び古墳の揺るるほど/大串章
★寒禽の声の飛び交ふ雨の中/片山由美子
★寒禽の声はお隣かも知れぬ/稲畑汀子
★影と来て影一点となる寒禽/豊田都峰
★寒禽の嘴をひらきて声のなき/長谷川櫂
★寒林を行けばしんしん胸が充つ/高橋正子
★寒禽の止まりし枝の丸見えに/高橋正子
寒林とは、冬枯れの、寒々とした林。(デジタル大辞泉の解説)
「寒いですね」というと「寒中だから」という。そう云われれば、冬であり、寒中だから寒さも厳しくて当り前なのでしょう。これで気温が35℃もあったりしたら「どうなってっの」と気候変動を心配しなければなりません、寒くていいのでしょうね。寒林、冬木立が寒に入った状態だそうですが、あえて説明するならば「葉を落とし尽くしてしまった落葉樹の冬の林の蕭条(しょうじょう)したさま」ということになるようです。木だって寒いでしょうから(?)、寒くないように家の中に入れてあげました。すこしでも温かくなるようにというささやかな気持ちなのですが「小さな親切大きなお世話」なのかもしれませんね。やはり、冬木立、冬木群(ふゆこむれ)は自然のままがいいようです。(ブログ「as time goes by」より)
◇生活する花たち「獅子頭(寒椿)・藤冬芽・老鴉柿(ロウヤガキ)」(東京・小石川植物園)

★寒空の青に鳥らの飛ぶ自由 正子
寒空の広々とした澄んだ大空は鳥たちが自由に飛ぶに十分な雄大さです。(高橋秀之)
○今日の俳句
冬草に海の青さが押し寄せる/高橋秀之
海の岸辺近くの冬草。日にかがやく海の青が強くて、冬草にまでその光が及んでいる景。テーマは「冬草」。(高橋正子)
○桜冬芽

[桜冬芽/横浜市緑区北八朔(2013年1月9日)]_[桜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]
★蔵したる桜冬芽の守る句碑/稲畑汀子
★雨雫桜冬芽に小宇宙/堀佐夜子
★城跡へ桜冬芽の未だ固し 惟之
★尖りしは桜冬芽の力なり/高橋正子
★青空に桜冬芽の赤味帯ぶ/高橋正子
2月9日に海老谷桜の再生状況について、専門家や地元の皆さんと検討会を開催しました。その内容について報告します。
海老谷桜の状況は、各枝の色あいや艶(つや)も良く、新しい枝も延びてきていますし、枝には冬芽(とうが 花や葉のもとになる芽)もしっかりと付いて膨らみ、春に向けた準備が確認できます。全体的には、順調な回復をみせていると言えます。しかし、根や幹枝の状況や冬芽の付き方を細かく観察すると、現在の再生は、人間の助力によるところが大きく、今後も引き続き支えていかなければならない状況であると判断され、依然として、その再生には予断を許さない状況にあります。
開花のためのエネルギー消費は、大きなものがありますが、最も大量に消費するのが、開花後の「実」を付ける営みです。そのため、「実」を付けさせないように人間がコントロールすることが大切であるとの認識で一致しました。その方法としては、海老谷桜自身の力を引き出すために、自然な形で開花させた後、速やかに花を摘み取る方法と最初から人間がコントロールする形で花芽(はなめ)を摘み取り、花を咲かせない方法があります。この点について検討した結果、市としては、冬芽が成長して花芽と葉芽(はめ)に識別できる3月後半の段階で、花芽の量や付き方を調査し、最終的に判断することにしました。
多くの皆さんが花咲く海老谷桜の姿を思い、ご支援、ご心配をいただいておりますが、引き続き見守っていただきたいと思っております。(浜田市のホームページより)
◇生活する花たち「寒桜・房咲き水仙・鈴懸の実」(神奈川・大船植物園)

★正月の山の落葉のかく深し 正子
正月の山は既に木の葉もすっかり落葉してしまっていることでしょう。山路の落ち葉の嵩を見て「かく深し」と感嘆の声が聞こえてきそうです。里の暮らしとは少し離れた寒の季節の静寂な山中を思い起こします。(佃 康水)
○今日の俳句
牡蠣揚がる瀬戸の潮(うしお)を零しつつ/佃 康水
広島は牡蠣の産地として知られているが、牡蠣の水揚げを詠んだ句。潮を零しながら、しかも瀬戸の、と具体的な詠みに情景がくっきりと浮かび上がり、臨場感が出た。(高橋正子)
○神奈川・大船植物園
昨年(2014年)1月12日、大船植物園(フラワーセンター)を信之先生と訪ねた。水仙と寒椿がお目当ての吟行と写真撮影。
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f598/
○梅冬芽
[梅冬芽/横浜日吉本町(2013年1月6日)]_[梅の花蕾/大船植物園(2014年1月12日)]
★細幹の冬芽の滲み出す如し/行方克己
★冬芽粒々水より空の流れゐつ/野澤節子
★人眠る頃も一気の冬芽かな/阿部みどり女
★雪割れて朴の冬芽に日をこぼす/川端茅舎
★高空の風の冬芽となりにけり/川合憲子
★雲刷かれ梅の冬芽の枝真すぐ/高橋正子
★剪定の木口あたらし梅冬芽/多田有花
▼梅冬芽/2012年12月11日(多田有花)
寒波は和らいだようです。ここ数日で落葉が進みました。冬至まであと十日、まだ日は短くなっていきますが、日没が最も早いのはここ二三日ほどのことです。落葉樹が裸になってしまうと、あとは「春を待つ」という感覚になります。
増位山の梅林のまわりの木々も落葉しました。梅も11月の間はまだ葉を残していましたが、今日見ると、すっかり葉を落としつくしていました。早生から晩生までいろいろな種類の梅があります。葉を落とすのもやはり早生が先です。葉を落とした梅の間を歩いていると、もう花芽が準備を整えて整然と枝に並んでいました。
★散り終えし枝にはしかと梅冬芽/多田有花
▼梅冬芽/2009年1月9日(多田有花)
今日も穏かで風も無く日中は暖かな一日でした。早朝はそれなりに寒いのかもしれませんが、出勤しないので、その寒さも昔のことになりました。ペットボトルに入れたぬるま湯をフロントガラスにかけて、霜を溶かしたのもなつかしい思い出です。
増位山の梅林の梅が膨らんでいます。紅梅と白梅、それぞれに花の色がはっきりわかり、もう間もなく綻ぶというところまてきています。春の接近を告げてくれる花ですね。楽しみです。(多田有花)
★紅白を見せて膨らむ梅冬芽/多田有花
▼梅冬芽/2007年1月9日(gogogobar)
ちょっと遅い仕事始めの日。岐阜まで朝、往復しました。朝6時前はまだ夜。月と星が輝いていました。一宮あたりで日の出。名神から東海北陸自動車道に分かれると目の前には恵那山、ちょっと左手に御岳、乗鞍。白く大きな姿が遠望できる。岐阜の茜部では暖かい朝。恵那の雪景色とは全く別世界でした。私の家のまわりでは、杉も檜木も白砂糖をまぶしたお菓子のようにおいしそう。梅の木は冬芽を大事に春の準備をしているようだ。
◇生活する花たち「辛夷の花芽・水仙・千両」(横浜日吉本町)

★水仙を活けしところに香が動く 正子
水仙の活けられてある静かな座敷。人のよぎる度に、あるいはちょっとした風の気配に、甘い香りが揺れ動き届いてくる。水仙のもつ高雅で安らかな香気。 (小西 宏)
○今日の俳句
枯原を高さ自由に熱気球/小西 宏
広い枯原の上に熱気球が、さまざまに浮いている。「高さ自由に」はのどかな景色で、夢がある。(高橋正子)
○ネット短信No.275
■ネット短信No.275/2015年1月14日発信
□発信者:高橋正子
□電話・FAX:045−561−5878
■□新年オフ句会
日時:平成27年1月18日(日)午後1時から午後6時
場所:横浜日吉本町3丁目 花冠発行所(高橋信之方)
投句:当季雑詠7句(新年か冬の句)
会費:無料
■□新年ネット句会入賞発表!
【金賞】
★正月の山葵を納め灯を消しぬ/安藤智久
正月用の山葵を納品し、今年の仕事がすっかり終わった安堵と充足に灯を消した。働くことへの真摯な姿。(高橋正子)
※その他の入賞作品は、下記のブログでご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d
■□デイリー句会秀句
以下の方々の俳句が紹介されています。
小口泰與(1/13)桑本栄太郎(1/13)多田有花(1/13) 祝恵子(1/12)佃康水(1/12)
内山富佐子(1/11)迫田和代(1/11)小川和子(1/11)河野啓一(1/10)
http://blog.goo.ne.jp/kakan003
●俳句添削教室
http://www.21style.jp/bbs/kakan13/
●ウェブサイト/インターネット俳句センター
http://kakan.info/
●花冠伝言板
http://blog.goo.ne.jp/kakan2013d
○寒椿
[乙女椿(寒中に咲く椿)/横浜日吉本町] [寒椿(山茶花との交雑種)/ネットより]
★竪にする古きまくらや寒椿 野坡
★折り取つて日向に赤し寒椿 水巴
★瀞の岩重なり映り寒椿 石鼎
★寒椿少しく紅を吐きにけり 青邨
★寒椿咲きたることの終りけり 風生
★寒椿落ちたるほかに塵もなし 悌二郎
★寒椿月の照る夜は葉に隠る 貞
★寒椿線香の鞘はしりける 茅舎
★ことごとに人待つ心寒椿 汀女
★くれなゐのまつたき花の寒椿 草城
★何といふ赤さ小ささ寒椿 立子
★寒椿けふもの書けて命延ぶ 林火
★園丁の昼煙草寒椿かな/村山古郷
★寒椿落ちたるほかに塵もなし/篠田悌二郎
★寒椿というや雪の公園に/高橋正子
寒椿は、広辞苑によれば、(1)寒中に咲く椿と(2)ツバキ科の常緑中低木とに分けられている。(1)寒中に咲く椿は、乙女椿(おとめつばき)・大神楽(だいかぐら)・侘助(わびすけ)などであり、(2)ツバキ科の常緑中低木は、椿と山茶花の交雑種とされるツバキ目ツバキ科ツバキ属のひとつの「寒椿」である。ツバキ目ツバキ科ツバキ属の「寒椿」は、「山茶花」との区別が難しく、低木で枝と葉に毛がある。花は紅色の八重咲きで、やや小さく、11月~1月頃開花する。
◇生活する花たち「獅子頭(寒椿)・藤冬芽・老鴉柿(ロウヤガキ)」(東京・小石川植物園)

★正月の山の落葉のかく深し 正子
自然の移ろいは確かです。すっかり葉を落とした正月の山に足を踏み入れ、その落葉の嵩の深さにおどろかれたのでしょう。同時に新しい年への息吹も感じられたのではないでしょうか。(小川和子)
○今日の俳句
古里は雪に雪積む日々らしも/小川和子
和子さんの故郷は北国と聞いている。雪が積んだ上にさらに雪が降り積もる。そのことを知って、故郷で過ごした懐かしく思い起した。「らしも」にその気持ちがでている。(高橋正子)
○寒桜
[寒桜/神奈川・大原植物園]
★寒桜ほのかな紅があたたかし 正子
寒桜は、薔薇(ばら)科。学名Prunus × kanzakura、Prunus : サクラ属 kanzakura : カンザクラ Prunus(プラナス)は、ラテン古名の
「plum(すもも)」が語源。
・咲き始めるのは桜のなかでは早い方。1月頃から咲くものもある。大島桜と寒緋桜(かんひざくら)との雑種。ピンク色の花びらがいっぱい。
寒桜の仲間には「大寒桜(おおかんざくら)」や、伊豆半島に咲く、「修善寺桜(しゅぜんじざくら)」「河津桜(かわづざくら)」などがある。
◇生活する花たち「冬椿・冬の梨園・冬田」(横浜市緑区北八朔)
藤沢
★きらきらと靴かがやせ冬の坂 正子
藤沢は遊行寺坂を想い、拝読しました。冬の坂を往くのは、おそらくハイヒールでもブーツでもなく、正しく歩くためのスニーカーでしょう。斜めに指す冬の日が足もとを照らし、その健康的な歩みが「きらきらと」日を返しながら、進みます。洒落た景色の中に、強さがうかがえる、美しい御句と存じます。 (川名ますみ)
○今日の俳句
凧揚の空に続く多摩川の空/川名ますみ
多摩川の河原は、野球場やテニスコート、広場などがある。広場には風もあって、凧揚げには格好の場所。揚がる凧には、そこの空だけでなく、多摩川の空の続きがある。(高橋正子)
○檸檬(レモン)

[レモン/横浜日吉本町]
★檸檬青し海光秋の風に澄み/西島麦南
★冷蔵庫レモンスライス蔵ひ置く/宮津昭彦
★レモン切るより香ばしりて病よし/柴田白葉女
★嵐めく夜なり檸檬の黄が累々/楠本憲吉
★暗がりに檸檬泛かぶは死後の景/三谷昭
★舌平目半切檸檬絞りけり/能村研三
★恋ふたつレモンはうまくきれません/松本恭子
★レモンはいつも人を信じている彩だ/徳永操
レモン(檸檬、英語: lemon、学名: Citrus limon)は、ミカン科の1種で、柑橘類の1種の常緑低木。またはその果実のこと。原産地はインド北部(ヒマラヤ)。樹高は3mほどになる。枝には棘がある。葉には厚みがあり菱形、もしくは楕円形で縁は鋸歯状。紫色の蕾を付け、白ないしピンクで強い香りのする5花弁の花を咲かせる。果実はラグビーボール形(紡錘形)で、先端に乳頭と呼ばれる突起がある。最初は緑色をしているが、熟すと黄色になり、ライムにもよく似ている。
レモンは柑橘類の中では四季咲き性の強い品種である。鉢植え・露地植えのいずれでも栽培が可能であるが、早期の収穫を目指す場合は鉢植えの方が早く開花結実する。栽培品種の増殖は主に接木・挿し木で行なわれる。日本での栽培地は主に、蜜柑などの柑橘類の栽培地と同じである。
主に果汁を食用に利用する。非常に酸っぱく、pHは2を示す。レモンを絞るには専用のレモン絞り(スクイザー)が用いられることが多い。薄く輪切りにした果実は、紅茶の風味付けにしたり(レモンティー)、切り込みを入れてグラスの縁に差し、コーラなどの炭酸飲料やカクテルの飾りにされる。
レモンを題材とした作品に、梶井基次郎『檸檬』:主人公が檸檬を爆弾にみたて、丸善を爆破する幻想に駆られる物語、さだまさし『檸檬』:梶井の小説をヒントにしつつ、舞台を御茶ノ水に置換え、青春時代の恋愛の無常さを描いた楽曲、ヨハン・シュトラウス2世 『レモンの花咲くところ』(シトロンと訳す場合もあり)、高村光太郎 『レモン哀歌』妻智恵子との死別を書いた詩、などがある。
◇生活する花たち「冬桜・水仙・万両」(横浜日吉本町)

★寒林を行けばしんしん胸が充つ 正子
冬枯れた寒林のなかを歩きながら冬の気を胸一杯に満喫しておられる作者です。「しんしん」の表現がじつにぴったりと共感を以て読み手の胸に響いてきます。(河野啓一)
○今日の俳句
さわさわと光と影を水仙花/河野啓一
水仙に日の光りが当たると、花にも葉にも影ができる。日のあたるところはより輝いて、当たらないところは静かに深く影ができる。その光と影が「さわさわ」とした印象なのは、水仙の姿から受け取られるものであろう。(高橋正子)
○金柑

[金柑/横浜日吉本町] [金柑/東海道53次藤沢宿]
★金かんや南天もきる紙袋 一茶
★乳児泣きつつ金柑握り匂はしむ/加藤楸邨
★金柑を煮てぬくもりし妻の頬/小林康治
★金柑のありたけ点る観音堂/高澤良一
★金柑は黄に仏塔は金色に/佐野五水
★金柑のほほ笑みを掌につつむなり/田村 實
★金柑の一樹とありし少年期/宮地玲子
★金柑の甘煮に移る日ざしかな/井上 雪
キンカン(金柑)は、ミカン科キンカン属 (Fortunella) の常緑低木の総称。別名キンキツ(金橘)。中国の長江中流域原産で、英語などの「Kumquat」もしくは「Cumquat」は「金橘」の広東語読み「gam1gwat1 (カムクヮト)」に由来する。
果実は果皮ごとあるいは果皮だけ生食する。皮の中果皮、つまり柑橘類の皮の白い綿状の部分に相当する部分に苦味と共に甘味がある。果肉は酸味が強い。果皮のついたまま甘く煮て、砂糖漬け、蜂蜜漬け、甘露煮にする。甘く煮てから、砂糖に漬け、ドライフルーツにすることもある。果実は民間薬として咳や、のどの痛みに効果があるとされ、金橘(きんきつ)という生薬名でいうこともある。果皮にはヘスペリジン(ビタミンP)を多く含む。観賞用として庭木として植えられることも多い。剪定に強いので生垣や鉢植え、盆栽にもできる。広東省や香港では、旧正月を迎える際に柑橘類の鉢植えを飾ることが多く、キンカンも好まれる。
◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・さんしゅゆの実」(横浜・四季の森公園)

★初旅にみずほの山の青を飛び 正子
飛行機での新年の華やぎの有る今年初めての旅。日本の国の素晴らしい山。富士山でしょうか。その神々しい山を眼下にみて今年の素晴らしさひと時を感じている作者。素敵な句ですね。(小口 泰與)
○今日の俳句
冬落暉瞳に残し帰宅せり/小口 泰與
冬落暉のイメージとしてその荘厳さが目に浮かぶ。今日の無事を思い、明日もそうであることを願う落暉を自分の心に取り込んだ思いがよい。厳しい寒さの一日の終わりなればこそ。(高橋正子)
○葉牡丹

[葉牡丹/横浜日吉本町]
★葉牡丹のおごる葉のありしづむあり/吉岡禅寺洞
★葉牡丹にうすき日さして来ては消え/久保田万太郎
★葉牡丹やわが想ふ顔みな笑まふ/石田波郷
★葉牡丹の一枚いかる形かな/原石鼎
★二株の葉牡丹瑠璃の色違ひ/西山泊雲
★葉牡丹の深紫の寒の内/松本たかし
★紫も白も葉牡丹雪被り/高橋正子
ハボタン(葉牡丹 Brassica oleracea var. acephala f. tricolor)は、アブラナ科アブラナ属の多年草。園芸植物として鮮やかな葉を鑑賞するが、観葉植物より一年草の草花として扱われる事が多い。名前の由来は、葉を牡丹の花に見立てたもの。 耐寒性に優れ、冬の公園を彩るほか、門松の添え物にも利用されるが、暖地では色づかず、寒地では屋外越冬できない。様々に着色した葉が、サニーレタスのように同心円状に集積した形態のものを鑑賞する。大別して葉に葉緑体以外の色素を持たない品種と、赤キャベツ同様に色素(アントシアニン)を持つものがあり、一定以下の低温に晒されてから出葉すると葉緑素が抜け、白やクリーム色、または紫、赤、桃色等に色づく。 それまでに分化した葉が周縁部を緑色に縁どり、着色した中心部の葉とのコントラストが美しい。主に冬期の花壇やプランターなどで、屋外栽培される。花は黄色で4-5月に開花するが、観賞の対象とされず、薹が立つ前に処分されてしまうことが多い。 但し、近年は薹が立って(節が伸びて)葉の密集した形態が崩れた状態を愛でる人もある。 また、多年草として育てれば樹木のような枝を出し、それぞれの枝の先端にハボタンがついた姿(踊りハボタン)となる。
◇生活する花たち「椿・野葡萄・くこ」(横浜市都筑区東山田)


★蝋梅を透かせて空は大いなる 正子
蝋梅は寒い時期に咲きます。いい香りもします。我が家の蝋梅、庭師さんが入った時枝を切られましたが残っていたつぼみが正月に開きました。ご近所には何軒か大きな蝋梅があり間もなく咲きます。蝋梅の花弁は黄色い蝋のように透き通って咲きます。見上げる蝋梅の向こうの空は晴れあがって広がり、蝋梅の美しさをひきたててくれます。(古田敬二)
○今日の俳句
寒禽の影滑る野に鍬を振る/古田敬二
野に懸命に鍬を振っていると、寒禽の影が滑っていった。土と我との対話があって、寒禽がそれに色を点じて景がたのしくなった。添削は、「冬禽」を「寒禽」として、鳥のイメージを際立たせ句に緊張感をもたせた。(高橋正子)
○沈丁花の蕾

[沈丁花の蕾/横浜日吉本町(2013/01/06)]_[沈丁花の花/横浜日吉本町(2012/03/11)]
★沈丁花どこかでゆるむ夜の時間/能村登四郎
★疲れゐて沈丁の香をすぐまとふ/加倉井秋を
★沈丁花の赤き蕾や路地晴れて/廣瀬雅男
★沈丁の蕾びっしり立ち止る/芝尚子
★沈丁花香り待つ日の紅蕾/成木文作
★沈丁の蕾の明日を待つことも/高橋信之
★卒業のときが近づく沈丁花/高橋正子
沈丁花は、蕾を付けてから咲くまでが長い。紅色の蕾を見ると、いつ咲くかと待たれるが、咲いたことに気付くのはその匂いが漂って来てからである。子どものころ、生家には沈丁花がなかったが、すぐ前の家の上級生の家に沈丁花があった。一緒によく遊んだが、沈丁花が咲くころになると、呼び寄せて、沈丁花の花の匂いを嗅がせてくれた。紅色の内側に反る白い花弁が魅力で、この白いところが匂っているのだと子どものころは思っていた。はたしてどこが匂っているのであろう。その匂いは、卒業の季節の希望と不安の入り混じったおぼつかない感覚を象徴していると思える。
★沈丁花どこかでゆるむ夜の時間/能村登四郎
★疲れゐて沈丁の香をすぐまとふ/加倉井秋を
上の二句は、沈丁花の咲くころの人間の感覚をよく捉えた実感の句だと思う。「ゆるむ夜の時間」は、次第に暖かくなってくる三月のふっくらとした夜の時間、そして、「疲れゐて」は、春浅い頃のなんとなくの疲労感が詠まれていて、私も実感するところである。
ジンチョウゲ(沈丁花)は、ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木。チンチョウゲとも言われる。漢名:瑞香、別名:輪丁花。 原産地は中国南部で、日本では室町時代頃にはすでに栽培されていたとされる。日本にある木は、ほとんどが雄株で雌株はほとんど見られない。挿し木で増やす。赤く丸い果実をつけるが、有毒である。花の煎じ汁は、歯痛・口内炎などの民間薬として使われる。
2月末ないし3月に花を咲かせることから、春の季語としてよく歌われる。つぼみは濃紅色であるが、開いた花は淡紅色でおしべは黄色、強い芳香を放つ。枝の先に20ほどの小さな花が手毬状に固まってつく。花を囲むように葉が放射状につく。葉は月桂樹の葉に似ている。
沈丁花という名前は、香木の沈香のような良い匂いがあり、丁子(ちょうじ、クローブ)のような花をつける木、という意味でつけられた。2月23日の誕生花。学名の「Daphne odora」の「Daphne」はギリシア神話の女神ダフネにちなむ。「odora」は芳香があることを意味する。花言葉は「栄光」「不死」「不滅」「歓楽」「永遠」。
◇生活する花たち「茶の花・花八つ手・木瓜」(横浜下田町・松の川緑道)
