立春ネット句会清記
01. 米櫃のかろき音たて春迎ふ
02. 枝つたうように芽吹きやゆきやなぎ
03. 春北風やはるか鞍馬の峰白く
04. 立春の朝の玄関豆のあと
05. 立春の朝に新しい服おろす
06. 明るさを感じる朝に春立てり
07. 節分の豆香ばしや雀翔つ
08. 梅が香や朝日賜わる榛名富士
09. 噴煙の南へ流る余寒かな
10. 明日寒明け青空市に花並ぶ
11. 立春や求めし苗を朝植ゆる
12. 春に入る登校児童の列のゆく
13. 青空を映してつづく雪の道
14. 春なのに黄身盛り上がる卵かな
15. 川流れ何故か嬉しい春らしさ
16. 春立ちて明日香の里の鳥の声
17. 白梅のふくらみ嬉し空の青
18. 人やさし山河うるわし国建つ日
19. 厨房の隅まで磨き春迎ふ
20. 雪掘りて得し蕗の芽の青さかな
21. 寒明けの風鴨の首伸ばしけり
22. 寒明けの葉蘭青々朝の照り
23. 梅咲いて軽き会釈の行き交える
24. 青空に花芽広げて梅の畑
25. チチチチと朝の目ざまし春の鳥
26. 立春や子等のあいさつ歯切れよし
27. 節分や一人の豆撒き丁寧に
28. 立春の朝のしばしの二度寝かな
29. 靴紐を締めて春立つ山に入る
30. 梅が枝は陽のさす方へ伸びている
31. 夕べの月しろじろ年の豆を打つ
32. くらがりを戻りて暗きへ豆を打つ
33. 立春の窓から強き朝が来る
34. 冬芽空へ空へ確とした意思がある
35. 梅の香につつまれ歩く幸せに
36. 梅一輪の位置定まりて青空に
37. 臘梅の陽に白みいる昼下がり
38. しら梅の空をそよがし咲きそめり
39. 夕映えを梅の蕾も受けとめる
40.春立ちて鳥跳ねている塀の上
41.いつしかに花器の柳の枝芽吹き
42.里の湯屋手仕事豊かに吊るし雛
◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、2月4日(水)午後7時から始め、同日(2月4日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、2月5日(木)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、2月5日(木)正午~2月7日(土)午後6時です。
★立春のピアノの弦のすべてが鳴る/高橋正子
春を迎える日の窓に聞こえてくるピアノ曲の軽やかな旋律を想像いたします。音階を緩急自在に走りゆき、和音をのびやかに膨らませて、すべての弦がふるえ響き、春到来を喜んでいるようです。(小西 宏)
○今日の俳句
枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)
○立春
★立春の米こぼれをり葛西橋/石田波郷
★立春の海よりの風海見えず/桂 信子
★立春の夜道どこからか水の匂い/高橋信之(昭和四十八年作)
「立春」と聞くと、それだけで気持ちがほぐれる。厳しい冬の寒さと別れ、いよいよ春になる。夜道を歩けば、どこからか水の匂いがする。小川の流れか、水はいち早く温み始めたのだろう。夜道の暗さに水の匂いが春のはなやぎのように感じられる。(高橋正子)
陰暦では、1年360日を二十四気七十二候に分けたが、立春はその二十四気の一つで、陽暦では2月4日か5日、節分の翌日に当たる。節分は冬の季語となっている。節分を境に翌日は春となる。あくまでも暦の上だが、この切り替えがまた、人の心の切り替えにも役立って、立春と聞くと見るもの聞くものが艶めいて感じられる。冬木もいよいよ芽を動かすのだろうと思う。寒禽と呼ばれていた鳥も鳴き声がかわいらしく聞こえる。
★立春の朝は襖の白に明け/高橋正子
★立春の朝のデージー鉢いっぱい/高橋句美子
○梅
[白梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]_[紅梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]
★梅白しきのふや鶴をぬすまれし 芭蕉
★白雲の竜をつつむや梅の花 嵐雪
★とぼとぼと日は入切て梅の花 杉風
★からからと猫のあがるやむめの花 許六
★山里や井戸のはたなる梅の花 鬼貫
★手折らるる人に薫るや梅の花 千代女
★此村に一えだ咲きぬ梅の華 也有
★二もとの梅に遅速を愛す哉 蕪村
梅の開花前線
和歌山県南部に位置する月向農園では、1月下旬~2月に梅が開花します。南北になが~い日本列島!あなたの処ではいつ頃かな?梅は百花に先駆けて咲き、桜などに比べ休眠が浅いために開花時期が天候によって大きく左右されます。
高温・適湿・多照の年は開花時期が早まり、乾燥の激しい年や気温の低い年はやや遅くなります。また、品種によって多少差があります。寒い中、いち早く春の訪れを知らせる梅の花は、1月下旬~5月上旬まで、約3ヶ月間かけて、ゆっくりと日本列島を北上します。
◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

★節分寺裏山までも清められ 正子
季節の節目、特に冬を送って春を迎える節分は気分が新たになります。節分にあたり、寺域を清められたお寺の清々しいたたずまいが目に浮かびます。 (多田有花)
○今日の俳句
朝霜に木を切る音の響きおり/多田有花
朝の霜がまだあるうちから、木を切る仕事が始まっている。霜に響く木を切る音が力強い。(高橋正子)
○柊挿す(ひいらぎさす)・柊鰯

[柊/横浜日吉本町] [柊鰯/ネットより]
★かきけむりけり節分の櫟原/石田波郷
★節分の火の粉を散らす孤独の手/鈴木六林男
★節分の豆がひしめく子の拳/高橋信之
★柊さすはてしや外の浜びさし 蕪村
★柊をさすや築地の崩れまで 蝶夢
★猫の子のざれなくしけりさし柊 一茶
★古りし宿柊挿すをわすれざり/水原秋桜子
★烈風の戸に柊のさしてあり 石橋秀野
★宵闇のどこかが匂い豆を撒く/高橋正子
★節分寺五色の幕が風孕み/高橋正子
午後、スニーカーを買いに日吉駅あたりへ出かけた。スニーカーは、同じものばかり履くので、1年半ぐらいで破れてしまう。アーバントラッドという、オーソドックスなのを一足買った。日吉まで歩いて出かけたが、途中日吉2丁目の金蔵寺の境内を通り抜けていった。お寺には節分のためか、五色の幕が張り巡らされていた。豆撒きがあるにかなとも思ったがしずかだった。日吉からの帰り、また境内を通ったが、4時半ごろ、五色の幕は外されて、いつもの寺になっていた。豆撒きをした気配はなかった。
昔は四季の移り目をそれぞれ節分といったが、今は立春の前日だけが節分と呼ばれる。冬の節から春の節に移る分岐点。この夜。寺社では悪魔を追い払い、春を迎える意味で追儺が行われる。民間でも豆を撒いたり、鰯の頭や柊を戸口に飾ったりする。
節分の夜の豆まきは、特に幼い子どもたちにとっては楽しい行事。なんしろ、悪い鬼を豆をぶつけてやっつけるのだから。「福は内、鬼は外」の「鬼は外」は、大人には闇にひそむ姿の見えない鬼へ向かっての礫投げ。戸口に飾る鰯の頭、柊も庶民らしい追儺のしつらい。「鰯の頭も信心から」ということわざもあるが、これはどこから出てきたのか。
柊挿す(ひいらぎさす)は、節分の夜、魔除(まよ)けのために、焼いた鰯(いわし)の頭を付けたヒイラギの枝を門口に挿し、臭いものや鋭くとがったもので悪魔払いをする風習。この、焼いた鰯の魔除けを「やいかがし」と言い、「焼き嗅し」が語原と言われている。
◇生活する花たち「満作・立寒椿・蝋梅」(大船フラワーセンター)

★枯木立星のあおさに揺れもせず 正子
冬になって、葉がことごとく落ちつくした落葉樹の群落の枯木立は真冬の厳しい夜の寒さにも負けず凛として立ちつくしている。雄々しい素敵な景ですね。(小口泰與)
○今日の俳句
群れ起つや羽音厳しき寒雀/小口泰與
小さい雀だが、一斉に群れて飛び立つときは、体に似合わないほどの音を立てる。「羽音厳しき」は、厳しい寒さのときだけに、強い実感となって一句となった。(高橋正子)
○老鴉柿(ロウヤガキ)

[老鴉柿/東京・小石川植物園(2013年1月20日)]
小石川植物園(2013年1月20日)
★寒天に散らばり朱し老鴉柿/高橋信之
(2013年1月20日、大寒であったが、信之先生が小石川植物園に花を探しに出掛けた。梅はまだであるし、大方は芽である。土佐水木の冬芽の明るい茶色に、土佐水木の淡い黄色の花が思い浮かんだ。冬の植物園でいちいち芽を探すには広すぎるのではと思われた。2008年の4月19日の小石川植物園吟行は、桜が散って、一面に桜蕊が降り重なって、踏めばやわらかなクッションとなって、足裏に応えてくれた。その記憶が今蘇った。
小石川植物園(2008年4月19日)
★やわらかに足裏に踏んで桜蘂/高橋正子
ロウヤガキ(老鴉柿、学名:Diospyros rhombifolia)は、中国原産のカキノキ属の植物。ツクバネガキ(衝羽根柿)とも呼ばれる。葉は丸味を帯びた菱形で、3月から4月頃に花を着ける。液果は小さく尖った楕円形状で、熟すと橙に色付く。株は雌雄異株で、着果には雄株が必要である。渋柿で食用には向かないが、盆栽や庭木として広く用いられている。日本への導入は遅く、第二次世界大戦中に京都府立植物園初代園長である菊地秋雄が持ち帰ったとされる。
▼東京大学・小石川植物園:
http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/
◇生活する花たち「寒牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)
★大寒の真青な空の実栴檀 正子
空は青空、そこに栴檀の実が高く沢山の実を付け残っている。大寒の空にも栴檀の実をみつけた楽しさ。 (祝恵子)
○今日の俳句
賑わいの境内冬芽あちこちに/祝恵子
賑わいは、前掲句「境内に人の溢れて初弘法」から初弘法と知れるが、そうした境内の賑わいの中に、冬芽もあちこちの木に育っている。冬芽も賑わいのひとつである。(高橋正子)
○立寒椿

[立寒椿/大船フラワーセンター]
★立寒椿花の真中に日を受けし/高橋正子
★寒椿というや雪の公園に/高橋正子
寒椿(カンツバキ)は、ツバキ科ツバキ属の常緑低木で、山茶花(サザンカ)を母種としたカンツバキ群の園芸品種である。枝が横に広がる傾向がある。これに対して枝が上に伸びるものは、立寒椿(タチカンツバキ)といって区別をする。学名:Camellia x hiemalis cv. Tachikantsubaki(=Camellia sasanqua cv. Hiemalis)
サザンカとカンツバキの見分け方。(「ガーデニング – 教えて!goo」より):
どちらもかなりの近隣種ですので、これですという区別は難しいですね。というのも寒椿には二種類の系統があり、現在の主流は本来の寒椿(中国原産)とサザンカの交雑種である「寒椿群」という系統が一般に流通しています。交雑種ですのでどちらの血も流れていますのでますます見分けにくくなっているのは仕方がないことですね。さらに「寒椿群」はサザンカの一種として認知されています。 これはその学名からも理解できます。「Camellia sasanqua」です。この寒椿群はすべて立ち性(椿系)で通称はあなたがいうように立ち寒椿と言われています。 その品種の一つに「勘次郎」があります。一方、中国原産の「カンツバキ」は学名を「Camellia hiemalis」という冬咲きという名が学名についているとおり冬咲きで、その特徴は矮性であることです。種類は少なく、主に「獅子頭」というものが出回っているようです。 さらにこの「獅子頭」が前述した「寒椿群」のもとになったという複雑さがあります。つまりサザンカもカンツバキも同じ仲間と認識したほうが間違いありません。その違いはと言われれば、次のようにまとめることができます。<花の咲く時期>サザンカ→寒椿群(勘次郎)→カンツバキ(獅子頭)。*注意:サザンカにも春咲きが例外として存在します。<樹木の特徴>*サザンカ・寒椿群は、立ち性で、別名タチカンツバキ。*カンツバキは、矮性。サザンカと椿(春咲きの一般種)との顕著な違いは「毛の有無」です。 サザンカにのみ子房と新葉の葉と枝に微毛があります。これが見分け方ですね。
◇生活する花たち「寒牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)
鎌倉・報国寺
★竹林に踏み入るところ冬椿 正子
冬の竹林は冷え切っている。そんな中へ入った時見つけた椿の紅。そういえば田舎の竹やぶにもあった風景。なんだか近づいてくる春の足音を聴くような句である。(古田敬二)
○今日の俳句
やや白く割れて万朶の梅つぼみ/古田敬二
寒中の寒さに堪えて咲く梅であるが、咲く兆しが見えると非常に嬉しい。白梅の蕾に白が認められる。しかも万朶の蕾に。待春の気持ちが明るくてよい。(高橋正子)
○寒牡丹

[寒牡丹/鎌倉・鶴岡八幡宮]
藁傘の中なる陰り寒牡丹/高橋正子
雪よりもはるかに透けて白牡丹/高橋正子
寒牡丹匂うは花を平らかに/高橋正子
寒牡丹開きし花は風を受く/高橋正子
黄の牡丹ほどよく開き描かれいる/高橋正子
銀杏をカンカン炒って大鉄鍋/高橋正子
寒中も繭玉掛けて酒屋の柱/高橋正子
○2013年の<俳句日記>より:
1月31日はまだ寒中であるから、寒中の鎌倉へ出掛けたいと思っていた。鶴岡八幡の寒牡丹、竹の寺で知られる報国寺の冬桜と冬椿、北鎌倉の東慶寺の水仙などを計画した。しかし、句集の編集などで、疲れ気味なので、八幡様と東慶寺の二つに絞って出掛けた。朝、9時半前に家を出て鎌倉に向かった。駅に着き、先ず鶴岡八幡へ。段葛(参道が一段高くなっている)を通ってお参りをし、おみくじを引き、句美子に開運の桜のお守りを買った。参道では、名物の銀杏を鉄鍋でカンカンと炒りながら売っていた。受験の合格祈願か、高校生や中学生であふれていた。神苑内の牡丹園へは、鑑賞券一人五百円を払って入園。寒中の牡丹は、咲くのもままならないのではと思ったが、ちょうど、見ごろを迎え咲き揃っていた。藁傘や傘に守られて疵もなく見事に咲いている。色は、牡丹色、白、ピンク、黄色などで色どりも豊か。牡丹をカメラに撮ろうとするが、藁傘の下では陰りがあったり、傘がないところは、日が当たりすぎたりして、明るさの調節が難しい。オートにしてかなりの枚数を撮った。撮り終わり休憩所で甘酒を頼んで一服。今日は牡丹だけで東慶寺へ行くのはやめた。帰り、参道前の鎌倉彫の店に見物に寄ったが、鎌倉彫の小さな二段重があったので衝動買いをしてしまった。それから、小町通りの入口の長嶋家で切山椒を買う予定で寄るが、出来上がりを待たねばならず、昼食を先に摂った。銀座ルノアールという鎌倉駅前の喫茶店で昼食。「フォレ」の蜂蜜とマスカルボーネと付けて食べるフランスパンを食べたが、美味。喫茶店を出て、長嶋家に切山椒を買いに行き、豊島屋で鳩サブレなどを買って、帰りの電車に乗った。今日は、寒牡丹を見る吟行となった。
▽正月牡丹(鎌倉・鶴岡八幡宮神苑ぼたん庭園):
http://okadosblog.blogspot.jp/2011/01/blog-post_4600.html
◇生活する花たち「辛夷の花芽・水仙・千両」(横浜日吉本町)

★竹林に踏み入るところ冬椿 正子
鎌倉の竹寺ともいわれる報国寺。見事な孟宗竹の竹林に入ろうとした時、凛と咲く冬椿との嬉しい出会い。寺苑の澄んだ空気の中、竹林との対比も鮮やかに、心洗われるような美しさの冬椿です。思いがけない冬椿の彩りは、深閑とした竹林を前に、ふと心和らぐあたたかさも感じられます。(藤田洋子)
○今日の俳句
葦原の枯れ尽くしても水の上/藤田洋子
「枯れ尽くしても水の上」は、意表をついて、新しい発見。蓮や菖蒲などは、枯れると茎や葉が折れて水に浸かってしまう。葦原の葦は、枯れながらもまっすぐに立ち、水には影を落とすのみ。なるほど、枯れ尽くしても水の上ある。(高橋正子)
○飯桐の実(いいぎりの実)

[飯桐の実/東京白金台・国立自然教育園]
★いゝぎりの実もて真赤な空ありぬ/飴山 実
★飯桐の実やどこまでも青き空/819maker
イイギリ(飯桐、学名:Idesia polycarpa)は、ヤナギ科(Salicaceae)イイギリ属(Idesia)の落葉高木。和名の由来は、昔、葉で飯を包んだため飯桐といわれる。果実がナンテンに似るためナンテンギリ(南天桐)ともいう。イイギリ属の唯一の種。
日本(本州以南)、朝鮮、中国、台湾に分布する。秋から冬に熟す多数の赤い果実が美しいので、栽培もされ、生け花や装飾にも使われる。雌雄異株。高さは15-20m。葉は互生、枝先に束性し、キリやアカメガシワに似て幅広い。葉柄は長く、先の方に1対の蜜腺がある(アカメガシワもこの点似ているが、蜜腺は葉身の付け根にある)。雄花も雌花も同じように黄緑色で3-5月頃咲き、円錐花序となり垂れ下がる。花弁はなく、萼片の数は5枚前後で一定しない。雄花には多数の雄蕊がある。雌花にも退化した雄蕊があり、子房上位。果実はブドウの房のように垂れ下がる。液果で直径1cmほど。熟すと真っ赤になり、多数の細かい種子を含む。果実は落葉後も長く残り、遠目にも良く目立つ。白実の品種もある。
▼朝日カルチャーセンター「カフェきごさい」より:
明るい朱色の房になって垂れ下がるいいぎりの実は、ひときわ華やかな晩秋を演出します。いいぎり(飯桐)と呼ばれるのは、昔その大きめの葉にご飯を包んだり、盛ったりしたからといわれています。日本の中でも西では(いとぎり)ともよばれるそうです。
南天桐という別名は、艶やかな丸い実が南天の実の色と形に似ているからでしょう。この実をつけている季節は、木が10数メートルに達する高さであることもあって一段と目立つのですが、それは人間だけでなく鳥とて同じ。遠くから実をながめて楽しもうと思っていた矢先、そこにあったはずの実が下がっていない!
―――花材として綺麗なままをとろうとすれば、そりゃできる限りの高さに鳥よけの網をかけて、実を守るしかないからねーーーいけばなの枝をたくさん扱っている花屋さんの話です。長ければ20センチ近くの房になり、実は秋が深くなるまで枝に残っています。大きな葉がなくなってしまえば、元の枝から切り取って水につけなくても、実は急に落ちたり、表面の皮がすぐにはしおれる事は少ないでしょう。こんな理由もあって、この時期の花展には花材としてよく見かけられます。
木肌は確かに桐に似ています。桐から下駄やたんすが作られるのは他の木と比べると軽めだからといわれますが、この南天桐も実がついているわりに、持ってみると想像していたより軽く感じられます。実に充分に陽が当たるように、という植物本来の持っている知恵でしょうか、枝は真っ直ぐ羽を広げたように伸びています。そこに下がる房の間隔は隣の房にあまり邪魔にならないよう、絡む事のないよう、うまく配置されているかのように見えてくるのです。
夏も終りのころのいいぎりを見た事があります。その緑の実からは、秋も深まったころの豪華に垂れ下がった姿はあまり想像できません。熟していないため実の形もほっそりとしています。でもこれはこれで面白く、魅力があります。朱赤ではなく白い実をつけた(いいぎり)もあるということですが 私はまだ見たことはありません。もしもこの時期、いいぎり南天を幸運にも見かけることができたら色と形をじっくり観察してみてください。毎日の散歩の途中、すこし首を伸ばして上をみて探してみてください。都会の真ん中でもいいぎりは意外と回りに見つかるかもしれません。鳥たちに先を越されなければ、ですが。(光加)
◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・芽柳」(横浜・四季の森公園)
★あたらしき薪を傍積み暖炉燃ゆ 正子
暖炉の中の薪の炎がゆらゆらと燃え盛り、ほっこりとした優しい暖かさに包まれています。傍には新しく用意された薪も積まれ、一層何とも心豊かな安らぎを感じます。 (佃 康水)
○今日の俳句
満潮へ鴨の二陣の広く浮く/佃 康水
満ちて来る潮に向かって、二陣の鴨の群れが広がり浮かんでいる。豊かな潮と浮き広がる鴨の群れが色彩的にもよい風景である。(高橋正子)
○笑顔(はるさざんか)
[笑顔/大船フラワーセンター]
★山茶花のこゝを書斎と定めたり/正岡子規
★山茶花は咲く花よりも散つてゐる/細見綾子
★山茶花の明るき日和たまはりぬ/稲畑汀子
「笑顔」という名前に思わず頬が緩む。「春山茶花」と呼ばれるものだが、花弁がひらひら砕けて、いかにも山茶花に系を引く花らしい。ピンク色で幼子の笑顔のような花だ。言葉として「笑顔」はあまりに俗すぎるが、幼子の笑顔ならば、許されよう。
▼大人のためのツバキ情報とホームページの作り方 by SeiSuzuk「つばきノート」より:
昔は、冬になると園芸雑誌に冬のツバキの特集があったが、現在ではツバキの記事はほとんど雑誌からなくなった。しかし、冬に大型の花が咲く花木はほとんどないので、ツバキが冬に咲く貴重な花木であることは変わりがない筈である。恐らくは、ツバキ園芸関係のオピニオン・リーダーがそうした熱意を失ったのかもしれない。
冬のツバキといえば、カンツバキの勘次郎が有名であるが、勘次郎の花期は12月から1月初旬であり、1月下旬には終わってしまう。冬に一番花が長い品種は笑顔である。笑顔はハルサザンカである。ツバキ愛好家はサザンカをやや別種扱いするが、ハルサザンカは、サザンカとツバキの交雑種とされ、広い意味ではツバキの品種となる。ツバキの多くの品種を発表している米国のヌチオ社も、また多くのサザンカ品種を販売しており、ユーレタイドは有名な品種である。ユーレタイドは花も多く優れた品種であるが、サザンカであるので花期は初冬までである。
庭に早春咲の花は多くは必要がないので、1本か2本あれば、冬の庭はにぎわうのである。笑顔は1月初旬から3月まで咲く、優れた品種であり、お奨めの品種である。他のハルサザンカより多花性で、大輪のピンクの鮮やかな花色は見事である。寒さで花弁が痛むことも少なく、花は咲き終わると落花するので、咲き終わった花が茶色く残ることはない。
ハルサザンカ類は、冬季の花木として再認識されてよいと思われる品種である。
▼旅行のクチコミサイト フォートラベル「あんみつ姫さん」より:
大船フラワーセンターの椿園に行ってみました。たくさんの椿・サザンカが花開いている中、「笑顔」という名前の、可愛らしい花がたくさん咲いていました。はるさざんか「笑顔」 ピンク色した大輪の花。その名のとおり、笑顔いっぱいで迎えてくれた気がします。そのほか、藪椿・侘び助・大輪の椿など、いつもはひっそりとした椿のブースですが、この時期だけは、紅やピンク・白などの花々を咲かせ、園内を歩く人をここに招き入れているようでした。
◇生活する花たち「獅子頭(寒椿)・素心蝋梅・老鴉柿(ロウヤガキ)」(東京・小石川植物園)

★クロッカス塊り咲けば日が集う 正子
○今日の俳句
汽笛鳴るフェリーの後にゆりかもめ/高橋秀之
フェリーが汽笛を鳴らし港を出てゆく、その後を追って、真白なゆりかもめが飛んでゆく。ゆっくりとした明るい景色がよい。(高橋正子)
○楓の実(楓の種)

[楓の実(冬枯れ)/横浜・四季の森公園(2012年1月26日)]_[楓の花/横浜日吉(2011年4月13日)]
★花楓こまかこぼるる又こまか/皆吉爽雨
★苔あをし更に影置く若楓/水原秋櫻子
★沼楓色さす水の古りにけり/臼田亜浪
★花楓日の行く所はなやかに/小野房子
★通行手形持たずに通る花楓/御崎敏江
★池の面に梢ひろごる楓の実/加藤暢一
★楓の実みどりの風に乗る構へ/桐一葉
★楓の実寒禽の胸見えており/高橋正子
楓の実は、楓の花が咲くからこそ付けるものであるが、楓の花も、楓の実も見過ごされがちではないだろうか。若葉の色の中に紅暗色の小さな花をつける。若葉と花の色の対比が美しい。その実は、プロペラのようで、これもまた可愛らしい。落ちるときを目撃したことはないが、くるくる回りながら落ちるなら、まるで竹とんぼではないか。
カエデ(槭、槭樹、楓)とはカエデ科カエデ属 (Acer) の木の総称。モミジ(紅葉、椛)とも呼ばれるが、その場合は様々な樹木の紅葉を総称している場合もある。主に童、謡などで愛でられるものはそれである。赤・黄・緑など様々な色合いを持つ為、童謡では色を錦と表現している。日本のカエデとして代表されるのは、イロハモミジ (A. palmatum) である。福島県以南の山野に自生しているほか、古くから栽培も行われている。園芸種として複数の栽培品種があり、葉が緑色から赤に紅葉するものや最初から紫色に近い葉を持ったものもある。一般に高木になる。落葉樹が多く落葉広葉樹林の主要構成種であるが、沖縄に自生するクスノハカエデのように常緑樹もある。葉は対生し、葉の形は掌状に切れ込んだものが多く、カエデの名称もこれに由来する。しかし、三出複葉(メグスリノキ)や単葉(ヒトツバカエデ、チドリノキ、クスノハカエデ)のものもある。花は風媒花で、花弁は目立たなく小さい。果実は二つの種子が密着した姿で、それぞれから翼が伸びる翼果である。脱落するときは翼があるので、風に乗ってくるくる回って落ちる。
◇生活する花たち「寒牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)

早稲田大学
★枝打ちの銀杏冬芽が地に弾み 正子
一種の間引きなのでしょうか。春に備えて梢を揃え、強く育つようにと枝打ちするのでしょう。落とされた枝にも冬芽が並んでいます。みな将に春の芽に育たんと密かに力を溜めていました。そんな姿を「地に弾み」とあえて明るく詠われました。頭上には未来を託された芽が空に輝いています。(小西 宏)
○今日の俳句
波近き風自在なり冬鴎/小西 宏
鴎が波に低く飛ぶ。風は自在に波をあそばせ 鴎をあそばせている。こんな渚の風景は屈託がなく楽しい。(高橋正子)
○栴檀の実(せんだんのみ)

[栴檀の実/横浜日吉本町]
★海荒れに栴檀の実の落ちやまず 山口誓子
★橋白く栴檀の実の多きところ 中村草田男
★城址去る栴檀の実の坂下りて 星野立子
★栴檀の実を喰いこぼす鴉かな 河東碧梧桐
★栴檀の万の実揺るる戦没碑 大立しづ
センダン(栴檀、学名: Melia azedarach)は、センダン科センダン属の落葉高木。別名としてオウチ(楝)、アミノキなどがある。「栴檀は双葉より芳(かんば)し」のことわざでよく知られるが、これはセンダンではなくビャクダン(白檀)を指す。
樹高は5-15 mほどで、成長が早い。若い樹皮は紫褐色で楕円形の小さな横斑が点在するが、太い幹の樹皮は縦に裂け、顕著な凹凸ができる。夏の日の午後は梢にクマゼミが多数止まり、樹液を吸う様子が見られる。葉は奇数2-3回羽状複葉で互生し、一枚の葉全体の長さは50 cm以上ある。小葉は草質で薄い。楕円形で浅い鋸歯がある。5-6月頃に、若枝の葉腋に淡紫色の5弁の花を多数、円錐状につける。花にはアゲハチョウ類がよく訪れる。なお、南方熊楠が死の直前に「紫の花が見える」と言ったのはセンダンのことと言われている。
果実は長径1.5-2 cmほどの楕円形の核果で、10-12月頃に黄褐色に熟す。秋が深まり落葉してもしばらくは梢に果実が残る。果実は果肉が少なく核が大きい。たまにヒヨドリなどが食べに訪れる。しかしサポニンを多く含むため、人、犬が食べると中毒を起こし摂取量が多いと死に至る。
▼ヒヨドリとセンダン(栴檀)の実 (気楽に山歩き、バードウォチング[2009/12/11]より転載)
今年の1月10日に石神井公園にオオハクチョウが来ているという情報がTVで報道されていたので見てきました。
残念ながらその日はどこかにお出かけ中で出会ませんでしたが、ハシビロガモやゴイサギ等を見たので茶店でお茶を飲んでから帰ろうとした時ヒヨドリたちが賑やかに集まっている木がありました。それがセンダンの木でした。ヒヨドリたちが競うようにしてその実を食べたり、急いで嘴にくわえて飛び去ったりしていました。これはヒヨドリの大好物と思いました。
青空をバックにセンダンの実を食べようとヒヨドリたちがホバリングをしたり、イナバウアースタイルをしたり、パクついたりする姿は初めて見る楽しい光景でした。
この日の人出は多く、撮影を始めるとカメラをぶら下げた人たちが「何を撮影しているのですか?」と口々に聞いてきます。「センダンの実を食べるヒヨドリは見たことがなかったので撮影してます。」「珍しいのですか?」「そう思います。」「それじゃ。私も」と次々に集まってきて、10数人の撮影部隊が出来上がってしまいました。ヒヨドリもこれには驚いた様子ですっかり警戒しだし、どこかに姿を隠して、隙を見て飛んで来ては実を盗むようにして飛び去ります。後からの皆さんは一寸、タイミングを外してしまったようです。
◇生活する花たち「蝋梅・冬菊・さんしゅゆの実」(横横浜・四季の森公園)
