6月14日(日)

★朴の花栃の花見てゆたけしや  正子
朴の花を見、そして栃の花を見て、見た目の景色だけでなく気持ちもゆったりして、広々としているのだと感じます。(高橋秀之)

○今日の俳句
植田水夕暮れの陽は真ん丸く/高橋秀之
植田に映る「夕暮れの陽」が、「真ん丸く」、おだやかで、まだ明るい夕暮れの情感をよく詠んでいる。「夕暮れの陽」、「真ん丸く」は、言葉より心が優先されていてよい。(高橋正子)

○百合

[鉄砲百合/横浜日吉本町]

★山百合を捧げて泳ぎ来る子あり/富安風生
★夜を徹す百合の香にあり書き継げり/岡本眸
★一月の百合を捧げて祈りけり/稲畑汀子
★いよよ咲く百合よ歓喜の蘂放ち/林翔
★百合といふ百合が鉄砲百合の島/宮津昭彦

 百合は、ユリ目ユリ科のうち主としてユリ属(学名:Lilium)の多年草の総称である。属名の Lilium はラテン語でユリの意。アジアを中心にヨーロッパ、北アメリカなどの亜熱帯から温帯、亜寒帯にかけて広く分布しており、原種は100種以上を数える。 山岳地帯を含む森林や草原に自生することが多いが、数種は湿地に自生する。L. arboricolaは唯一の着生植物である。 一般的に、石灰質でない弱酸性の土壌を好む。代表的な種に、ヤマユリ、オニユリ、カノコユリ、ササユリ、テッポウユリ、オトメユリなどがある。鱗茎(球根)を有する。茎を高く伸ばし、夏に漏斗状の花を咲かせる。欧米ではユリの品種改良の歴史は新しく、19世紀に日本や中国からヤマユリやカノコユリなどの原種が紹介されてからである。日本では、江戸時代初期からスカシユリが栽培されてきた。現在ではさまざまな色や形の品種が作り出され、世界中で愛されている。
 子どものころは、百合と言えば梅雨の走りのころから咲く白い鉄砲百合と夏休みに咲く赤い鬼百合の二つであった。今はカサブランカのような豪華な百合やさまざまな色のすかし百合の仲間がたくさんあるようである。昭和30年代だったと思う。父が前の畑に百合の花を売るために植えた。そのころは売る花は菊に限って農家が栽培していたようだが、父は鉄砲百合に挑戦して、うまく咲かせた。蕾のときに切り取られるが、白がかった緑色の蕾と鋏で切り取る音が目に耳に残っている。咲いてしまった花は学校に持っていった。鉄砲百合の花は生活の花となっていた。
 もう7,8年前になるだろうか。瀬戸内海が遠くみえる松山のマンションのベランダでカサブランカを育てた。その芽は、筍ほどで、百合の芽とは思えなかった。たしかにカサブランカの花であった。
 夏休みのころ咲く赤い百合は、すぐ前の伯父の家にあって、垂らした簾に似合っていた。冷房もない時代、それも涼しい景色だった。旅をすれば、切通しのがけなどに白い百合が咲いている。白百合は、清純さの代表ともなって、祈りの花としても欠かせない。 
  富士登山のとき・河口湖
★白百合のまばらに咲いて富士裾野/高橋正子

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

6月13日(土)

★額あじさい雪崩れてついに水に触る   正子

○今日の俳句
緑陰の途切れるところ頂に/多田有花
山の登り始めは木々が茂りあう道から始まる。体も緑に染まりそうなくらいの緑陰となって、延々と道は続くのだが、その緑陰がとぎれるところに出た。そこが頂上だったわけで、頂上を目指すというのではなく、登り至れば頂上だった、というのがさっぱりしている。(高橋正子)

○かたばみ

[かたばみ/横浜日吉本町]_[芋かたばみ/横浜日吉本町]

カタバミ(酢漿草、片喰、学名: Oxalis corniculata)は、カタバミ科カタバミ属の多年草。花言葉は「輝く心」である。葉は、ハート型の3枚がとがった先端を寄せあわせた形。三出複葉だが、頂小葉と側小葉の区別はつきづらい。地下に球根を持ち、さらにその下に大根の様な根を下ろす。葉は球根の先端から束に出る。この他、匍匐茎をよく伸ばし、地表に広がる。このため、繁殖が早く、しかも根が深いので駆除に困る雑草である。春から秋にかけ黄色の花を咲かせる。花びらは5弁。果実は円柱状で先がとがり、真っ直ぐに上を向いてつく。成熟時には動物などが触れると、自ら赤い種子を勢いよく弾き出す。最大1m程度までの周囲に飛ばすことができることも繁殖に有利となっている。葉や茎は、シュウ酸水素ナトリウムなどの水溶性シュウ酸塩を含んでいるため、咬むと酸っぱい。シュウ酸は英語で oxalic acid というが、カタバミ属 (Oxalis) の葉から単離されたことに由来する。また、葉にはクエン酸、酒石酸も含まれる。カタバミ属の植物をヒツジが食べると腎臓障害を起こすとの報告がある。ヤマトシジミの幼虫が食草とする。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

6月11日(木)

★バスの後ろ揺らし入りゆく青山河  正子
九十九折の山道を懸命に登っていくバスの姿と青葉若葉が生い茂る初夏の素晴らしい山の景色との素晴らしい対比。上り詰めたバスも青葉若葉の中でほっと一息つけることでしょう。(小口泰與)

○今日の俳句
伽羅蕗や子供ら帰省する事稀に/小口泰與
子供たちもそれぞれ家庭をもって、日常に忙しく、帰省も稀になった。みんなで囲む色どり豊かな食卓から、夫婦二人の食卓に。質素で、味わい深い伽羅蕗がそんなことを思わせる。(高橋正子)

○青梅

[青梅/横浜緑区寺山町]_[青梅/横浜日吉本町]

★青梅に眉あつめたる美人哉/与謝野蕪村
★青梅に手をかけて寝る蛙かな/小林一茶
★溝またぎ飛び越えもして梅落とす/高浜虚子
★青梅をかむ時牙を感じけり/松根東洋城
★青梅や空しき籠に雨の糸/夏目漱石
★青梅や小房ながら清浄に/大谷句佛
★青梅を洗ひ上げたり何の安堵/細見綾子
★明け烏実梅ごろごろ落ちていて/寺井谷子
★青梅を齧る子に道たづねけり/大串章
★青梅の青の充実日が冥し/岡本眸
★庭師去りしあと青梅のころころと/林翔
★青梅の育ち盛りの児のごとし/村越化石

 店頭にも青梅が並ぶ季節になった。梅酒用の瓶と、氷砂糖と、ホワイトリカーと店頭に並べてあると、今年も梅酒を作りたくなる。毎年わが家では梅酒を作っている。多量に飲まないから、ひと瓶でいいのだが、一か月ほど前から去年のものを飲み始めた。青梅1キロに、ホワイトリカー一升(教わった時の習慣で一升と覚えている)、氷砂糖を800グラム入れている。甘いかなと思うが、普通氷砂糖は1キロなので、8割としている。私は風邪をひくと熱が下がるに従って咳が出始めなかなか止まらなくなる。最近、偶然なにかの本で読んで、梅酒は咳にも効くとあったので、寝る前薄めて飲んだら、たまたまなのか、咳き込むような咳が翌朝には止まった。本当に助かった。
 梅干しは紀州から取り寄せたものを毎年お中元、お歳暮と長らく頂いて過ごしていたので、作らなくなって、今は買うばかりである。私が作ったのはこれまでで一度だけ。生家では、梅干しを買うことなど考えられなかった。梅干し用に摘んだ梅が土間の籠に入れられて、昼夜いい香りを放って食べたいほどであったが、根拠は知らないが、これは、ひどい腹痛を起こすので食べてはいけないと言われていた。先日97歳で亡くなった母は結構大量に梅干しを甕につけていた。茶色い釉に、たらりと黒い釉を模様に垂らした例の甕である。だれがあれほどの梅干しを食べていたのかと今は思うのだが。梅雨が明けると、土用干しと言って梅干しを筵に広げて日に当てて、それから紫蘇と漬けこまれた。赤紫蘇ももちろん畑で育てていて、子どもは紫蘇の葉をむしる手伝いをした。赤紫蘇が出来るのを待って入れているような気もした。梅干し、味噌、たくあん作りは、年中行事のようでもあった。

★青梅の土間に昼夜を匂いけり/高橋正子
★青梅の瓶にしずまる夜の青さ/高橋正子
★青梅のなかの熟れたる梅匂う/高橋正子

 梅干し(うめぼし)とは、ウメの果実を塩漬けした後に日干しにしたもので、漬物の一種である。日本ではおにぎりや弁当に使われるなど身近な食品である。なお、梅干しがシソで赤く着色されるようになったのは江戸時代になってからとされる。梅干しは健康食品としても知られる。
 酒(うめしゅ)は、一般的に6月頃に収穫される青梅を、蒸留酒(ホワイトリカー、焼酎が一般的)に漬け込むことで作られる混成酒(アルコール飲料)である。家庭でも作れることから、古来より民間で健康に良い酒として親しまれており、近年では食前酒としても飲まれている。日本では、果実酒である事から酒税法によって、日本酒やみりんなどのアルコール度数が20度未満の酒で作る事は違法であり禁止されている。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

6月10日(水)

★祭笛山あじさいも街中に  正子

○今日の俳句
トマトの芽つんでは青き香を散らす/祝恵子
「散らす」がこの句を生きいきとさせ、実際に、「青き香」が読み手まで届くようだ。トマトの青き香に夏らしい清々しさがある。(高橋正子)

○とまとの花

[とまとの花/横浜・四季の森公園]____[とまとの花/横浜日吉本町]

 トマト(学名:Solanum lycopersicum)は、南アメリカのアンデス山脈高原地帯(ペルー、エクアドル)原産のナス科ナス属の植物。また、その果実のこと。多年生植物で、果実は食用として利用される。緑黄色野菜の一種である。日本語では唐柿(とうし)、赤茄子(あかなす)、蕃茄(ばんか)、小金瓜(こがねうり)などの異称もある。
 トマトは長らく独自の属(トマト属 Lycopersicon)に分類されてきたが、1990年代ごろからの様々な系統解析の結果、最近の分類ではナス属 (Solanum) に戻すようになってきている。元々リンネはトマトをナス属に含めてlycopersicum(ギリシャ語lycos ‘狼’ + persicos ‘桃’)という種小名を与えたが、1768年にフィリップミラーがトマト属を設立して付けたLycopersicon esculentumが学名として広く用いられてきた。この学名は国際藻類・菌類・植物命名規約上不適切な(種小名を変えずにLycopersicon lycopersicumとすべき)ものであったが、広く普及していたため保存名とされてきた。しかし系統解析によりトマト属に分類されてきた植物がナス属の内部に含まれることが明らかとなったため、ナス属を分割するか、トマト属を解消してナス属に戻すかの処置が必要になった。したがってリンネのやり方に戻して、学名もSolanum lycopersicumとするようになっている。
 植物学において、近年トマトはナス科のモデル植物として注目されている。Micro Tom は矮性で実験室でも育成が可能な系統として利用されている。また、国際的なゲノムプロジェクトも行われ、ゲノム(約3万5千の位置・構造、7億8千万の塩基配列)を解読した。
 日本では冬に枯死するため一年生植物であるが、熱帯地方などでは多年生であり適切な環境の下では長年月にわたって生育し続け、延々と開花と結実を続けることができる。1本仕立てで1年間の長期栽培を行うとその生長量は8m〜10mにも達する。
 トマトの花の形状は外観的には、がく(トマトのヘタになる部分)と、花びらと、筒状のおしべから構成されている。中央にある筒状のもの(雄しべが合着して筒になったもの)を半分に割ってみると、筒の中には雌しべが1本入っていて、この雌しべの元の部分に子房と呼ばれるトマトの実になる部分がついている。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

6月9日(火)

★蛍ぶくろ霧濃きときは詩を生むや  正子
蛍袋は白や紫の釣鐘状の花が下向きに咲き、その奥ゆかしい姿はとても美しく山野草としても愛される花です。また名前から来るイメージ、まして濃き霧の中にうっすらと咲いていれば尚更に詩を生む情景が整い、御句に豊かな詩情を感じます。 (佃 康水)

○今日の俳句
早苗田に母屋どっしり映さるる/佃 康水
母屋の傍から田が広がる。田植えが済んだ田には、早苗の影ばかりではなく、母屋のどっしりと建物が映っている。田植えの後の安堵と、秋の実りが約束されている明るさがある。(高橋正子)

○花菖蒲

[花菖蒲/横浜・四季の森公園]

★何某の院のあととや花菖蒲/高浜虚子
★日の出前にぬれしや菖蒲花ゆたか/渡辺水巴
★菖蒲園かがむうしろも花昏れて/橋本多佳子
★風吹きゆかす花びら薄き花菖蒲/高橋信之
★菖蒲田の中へ木道まっすぐに/高橋信之

 こどもの頃、菖蒲と言えば、生家の裏の池の黄菖蒲しか知らなかった。端午の節供には父がどこからか菖蒲を刈ってきて、いつも花がないなあと思った記憶がある。花菖蒲と菖蒲湯に使う菖蒲は違うものということだ。花菖蒲をよく知るようになったのは、嵯峨御流のお花を習ってからである。葉の特徴、花の向き、葉の組み方など手にとって良く見た。生花として活けるときは、水から出たばかりの葉もそれらしく、葉もきれいに組みなおして、花も尖った方を前にして活けるなどした。昭和40年代から50年代にかけて、松山近郊に菖蒲園があちこちできた。道後温泉から奥道後へゆく途中の山手に広い菖蒲園が開園となって見に出かけたことがある。もとは田圃であったのであろう。満目の菖蒲の花が風に翻るさまは、静かながらも華やかな世界である。足元を気にしながら、たいていは傘をさして、菖蒲園を巡る。近くでは、横浜の四季の森公園にも小規模ながら菖蒲園がある。菖蒲園というより菖蒲田という感じだ。山の水を引き込んである。ほとりの小川には蛍が飛び交うということだ。昨日6月11日、信之先生が、写真を撮りに出かけたら、ちょうど花菖蒲が咲き始め、それもかなり咲いていた。我が家のあたりは曇りであったし、天気予報も穏やかな曇りとあるので、傘を持たずに出かけたが、やはり山である四季の森公園は雨で、雨滴のついた花菖蒲の写真が出来上がった。色も紫、白、うすいピンク、それらの絞りなど、多彩。梅雨を迎えて花菖蒲、紫陽花と花が溢れている日本である。
 
★菖蒲田に山から水を引き入れし/高橋正子

花菖蒲(ハナショウブ、Iris ensata var. ensata)はアヤメ科アヤメ属の多年草である。 ハナショウブはノハナショウブ(学名I. ensata var. spontanea)の園芸種である。6月ごろに花を咲かせる。花の色は、白、ピンク、紫、青、黄など多数あり、絞りや覆輪などとの組み合わせを含めると5,000種類あるといわれている。大別すると、江戸系、伊勢系、肥後系の3系統に分類でき、古典園芸植物でもあるが、昨今の改良で系統色が薄まっている。他にも原種の特徴を強く残す山形県長井市で伝えられてきた長井古種や、海外、特にアメリカでも育種が進んでいる外国系がある。近年の考察では、おそらく東北地方でノハナショウブの色変わり種が選抜され、戦国時代か江戸時代はじめまでに栽培品種化したものとされている。これが江戸に持ち込まれ、後の三系統につながった。長井古種は、江戸に持ち込まれる以前の原形を留めたものと考えられている。一般的にショウブというと、ハナショウブを指すことが多い。しかし、菖蒲湯に使われるショウブは、ショウブ科またはサトイモ科に分類される別種の植物である。(フリー百科事典「ウィキペディア」より)

◇生活する花たち「紫陽花・立葵・百日草」(横浜・四季の森公園)

6月8日(月)

★祭笛山あじさいも街中に  正子
6月に入り、早いところでは夏祭りの準備も始まり笛の音が風に乗って聞こえてくるようになりました。おりしも街では山アジサイの花がちらほらみられるようになってきました。薄紫や薄水色に、門ごとにそれぞれのいろあいをきそっています。この時季の季節感に溢れた嬉しい景が目に浮かびます。(河野啓一)

○今日の俳句
射干の咲いて空には雲もなし/河野啓一
射干(ひおうぎ)は、葉が檜扇に似て、橙色に斑のあるこじんまりと品のある六弁花を開く。雲もない夏空に、日本的な射干の花の色が印象的である。(高橋正子)

○ブルーベリー

[ブルーベリー/横浜日吉本町自宅]

★ブルーベリー食べし瞳や雲の峰/けい
★ブルーベリー摘む指細し半夏生/けい

ブルーベリー(英: blueberry)は、ツツジ科スノキ属シアノコカス節に分類される北アメリカ原産の落葉低木果樹の総称である。栽培品種の成木の樹高は1.5-3m。春に白色の釣鐘状の花を咲かせ、花後に0.5-1.5cmほどの青紫色の小果実が生る。北米大陸でのみ栽培される野生種に近い品種は数十cm程度の低木である。果実は北アメリカでは古くから食用とされてきたが、20世紀に入り果樹としての品種改良が進み、ハイブッシュ系、ラビットアイ系、ハーフハイブッシュ系、ローブッシュ系の交配により多くの品種が作出された。
果実ブルーベリーは大まかに分けると2品種になる。栽培ブルーベリーと野生ブルーベリーとなる。(野生ブルーベリーがローブッシュブル-ベリーの事)ハイブッシュブルーベリー を品種改良して栽培ブルーベリーとしている。北(ノーザン)南(サザン)ハーフハイブッシュ(半分くらいの高い藪と言う意味)    ノーザンハイブッシュブルーベリー系  サザンハイブッシュブルーベリー系  ハーフハイブッシュブルーベリー系  ラビットアイブルーベリー(ウサギの赤い目)系  となる。多品種あり育て方などに違いがある。

 [2012年5月31日の日記より] 今朝ブルーベリーを初収穫。たったの三粒で、一人ひとつぶずつ。市販のものに比べ、すっぱくて、噛めば実が弾ける。このすっぱさが野生味があって、おいしい。すっぱい蜜柑がおいしいように。順次熟れ次第いただく。ただいまフェイスブック紫陽花句会中だが、ベランダに息抜きに出て実をもいだ。

★六月に入りたる朝摘むブルーベリー/高橋正子
★六月の葉末に熟るるブルーベリー/高橋正子
★ブルーベリー新樹の冷えにすっぱかり/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)

6月7日(日)

 鎌倉街道
★昼顔を眸に映し旅ひとり  正子

○今日の俳句
郭公や頂上まではあとわずか/多田有花‏
登ってきて、あとわずかとなったところで、郭公の声を聞いた。山の緑にこだまする郭公の声に励まされ、自然を満喫する作者の姿が涼しげだ。(高橋正子)

○雛罌粟(ひなげし)・ポピー

[ひなげし/横浜日吉本町]

★我心或時軽し罌粟の花/高浜虚子
★咲きやんで雛罌粟雨に打たれ居り/前田普羅
★ひなげしの花びらを吹きかむりたる/高野素十
★ひなげしや妻ともつかで美しき/日野草城
★遅れ苗もうひなげしの花となる/阿波野青畝
★陽に倦みて雛罌粟いよよくれなゐに/木下夕爾
★ひなげしの揺れて風あることを知る/高橋信之

 雛芥子(ヒナゲシ、学名:Papaver rhoeas)は、ヨーロッパ原産のケシ科の一年草。グビジンソウ(虞美人草)、シャーレイポピー (Shirley poppy) とも呼ばれる。耐寒性の一年草で、草丈50cm~1m位になる。葉は根生葉で、羽状の切れ込みがあり無毛である。初夏に花茎を出し、上の方でよく分枝し、茎の先に直径5~10cmの赤・白・ピンクなどの4弁花を開く。現在タネとして売られているものには、八重咲きの品種が多い。ケシやオニゲシに比べるとずっと華奢で、薄い紙で作った造花のようにも見える。移植を嫌うので、9月下旬から10月中旬頃に、花壇に直まきする。覆土はタネが見え隠れする程度でよい。かなり細かいタネなので、重ならないように丁寧に蒔き、発芽してきたら間引いて、株間が30cmくらいになるようにする。
 
 「ひなげし」と言えば、ずいぶん昔から付き合ってきた。呼び方も自分でも「ひなげし」から「ポピー」に変わった。漱石にも『虞美人草』という小説があるが、この呼び方もいい。紙のように薄い花びらと、少し湾曲した茎と愛らしい花の形が絵になる。ひなげしを始めて育てたのは、愛媛の砥部に住んでいたとき。土地が100坪少しあったので、花は種から蒔いて、野菜は西瓜やトマトじゃが芋まで育てたころだ。二人の子供が小学生と幼稚園のときに花壇を作って、ポピーの種を蒔いた。土がよくなかったのか、苗はひ弱だったが、葉が育ち茎が伸び、いろんな色の花をつけた。八重より一重が好みだが、切り花にしてガラスの細口の花瓶に生けると絵のように様になる。ひなげしで思い出すのは、テレビで見た映画「ラストエンペラー」。なぜがひなげしの花と重なる。

★ラストエンペラーポピーの花は紙みたい/高橋正子

◇生活する花たち「立葵・梔子(くちなし)・枇杷」(横浜日吉本町)

6月6日(土)

★緑陰に水湧きこぼる音尽きず   正子
日に日に日差しが強くなり、緑がまぶしい。その木陰に入ると、傍らに湧水が静かに溢れこぼれ、涼しげな水音は絶えることがない。ひんやりとした空気に触れ、静かに汗が引いていく思いだ。(小西 宏)

○今日の俳句
草原を母さんと行く藁帽子/小西 宏
広く、青い草原を麦わら帽子を冠った母と子が行く。草原と母と子のみ。ことさらに何もない世界がいい。(高橋正子)

○沙羅(しゃら)の花(夏椿)

[沙羅/横浜日吉本町]

★沙羅の花捨身の落花惜しみなし/石田波郷
★咲くよりも落花の多し夏椿/松崎鉄之介
★夏椿思へばそんなやうなひと/行方克巳
★亡き母のものに着替へん沙羅の花/斉藤志野

 夏椿(ナツツバキ、学名:Stewartia pseudocamellia)は、ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。別名はシャラノキ
(娑羅樹)。仏教の聖樹、フタバガキ科の娑羅双樹(さらそうじゅ)に擬せられ、この名がついたといわれる。原産地は日本から朝鮮半島南部にかけてであり、日本では宮城県以西の本州、四国、九州に自生し、よく栽培もされる。樹高は10m程度になる。樹皮は帯紅色でツルツルしており「サルスベリ」の別名もある(石川県など)。葉は楕円形で、長さ10cm程度。ツバキのように肉厚の光沢のある葉ではなく、秋には落葉する。花期は6月~7月初旬である。花の大きさは直径5cm程度で、花びらは5枚で白く雄しべの花糸が黄色い。朝に開花し、夕方には落花する一日花である。ナツツバキより花の小さいヒメシャラ(Stewartia monadelpha)も山地に自生し、栽培もされる。 ナツツバキ属(Stewartia)は東アジアと北アメリカに8種ほど分布する。
 これが夏椿だと最初に意識して見たのは、愛媛県の砥部動物園へ通じる道に植樹されたものであった。砥部動物園は初代園長の奇抜なアイデアが盛り込まれて、動物たちにも楽しむ我々にものびのびとした動物園であった。小高い山を切り開いて県立総合運動公園に隣接して造られているので、自然の地形や樹木が残されたところが多く、一日をゆっくり楽しめた。自宅からは15分ぐらい歩いての距離だったので、子どもたちも小さいときからよく連れて行った。その道すがら、汗ばんだ顔で見上げると、夏椿が咲いて、その出会いが大変嬉しかった。このとき、連れて行った句美子が「すいとうがおもいなあせをかいちゃった」というので、私の俳句ノートに書き留めた記憶がある。緑濃い葉に、白い小ぶりの花は、つつましく、奥深い花に思えた。
 今住んでいる日吉本町では、姫しゃらや夏椿を庭に植えている家が多い。都会風な家にも緑の葉と小ぶりの白い花が良く似合っている。
 植物とは全く違う話だが、まだ夏椿の花を見たことがないとき、かぎ針編みの模様に「夏椿」というのがあって、自分に似合うと思ったのだろう、この模様で製図までしてベストを編んでしばらく着た。

★夏椿葉かげ葉かげの白い花/高橋正子

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

6月5日(金)

★石楠花のうすくれないも昼下がり  正子

○今日の俳句
青芒ひかり合いつつ野を充たす/小川和子
野一面の青芒を「ひかり合いつつ」「野を充たす」と、動きをもって、いきいきと詠んだ。積極的な視線がいい。(高橋正子)

○昼咲月見草

[昼咲月見草/横浜日吉本町]

★眠られず眠たし昼咲き月見草/佳世子★

ヒルザキツキミソウ(昼咲月見草、学名:Oenothera speciosa)は、アカバナ科マツヨイグサ属の多年生植物。観賞用として栽培されている。草丈は30-60cmくらい。葉は披針形で互生する。5-7月頃に、4-5cmくらいの大きさの、白または薄いピンク色の花を付ける。花弁の数は4枚で、8本の雄蕊と、先端が十字型をした雌蕊がある。北米原産の帰化植物であり、観賞用として輸入・栽培されていたものが野生化している。名称の由来は、宵に咲くツキミソウと違って、昼間にも開花していることによる。

◇生活する花たち「花菖蒲・紫陽花・キスゲ」(横浜・四季の森公園)

6月4日(木)

★明易し畳に二つ旅かばん  正子
夜明けも早くなった夏の朝、部屋の中に二つの旅かばんがある。きっと、これから旅行に行くのであろう、そのうきうきとした楽しさが伝わってきます。(高橋秀之)

○今日の俳句
新緑の重なる先に飛行雲/高橋秀之
新緑のつややかな緑と、空に真っ白に描かれた飛行機雲の色彩的な対比がみずみずしい。(高橋正子)

○今朝、6時過ぎに家を出て信之先生と四季の森公園へ出かけた。紅茶だけ飲んで、中山駅のコンビニでおにぎりを買った。四季の森に着くと、例にもれず翡翠を撮るカメラマンが並んでいる。すぐに翡翠が飛んで来て待たずして、写真が撮れた。こちらを見ていたがすぐに飛び立ったので思わずシャッターを押したら、飛んでいる姿が撮れた。飛ぶ軌跡が写真に残っているではないか。翡翠の表情は自分に似ている気がした。そんな顔をしていた。

菖蒲田へ行くともう、菖蒲が咲き始めていたが、まだまだ蕾が多い。蛍の泡が蓮池の周囲の草の茎にたくさん付いていた。帰宅後、写真の整理を手伝って、「俳壇」からの依頼原稿を書く。600字のエッセイ。締め切りは6月20日。みんなの俳句が10句要る。

○紫陽花

[紫陽花/横浜日吉本町]_小紫陽花(コアジサイ)/東京白金台・自然教育園]

★紫陽花や藪を小庭の別座敷/松尾芭蕉
★紫陽花の末一色となりにけり/小林一茶
★紫陽花の花に日を経る湯治かな/高浜虚子
★紫陽花や水辺の夕餉早きかな/水原秋櫻子
★紫陽花や白よりいでし浅みどり/渡辺水巴
★紫陽花の醸せる暗さよりの雨/桂信子
★大輪の紫陽花に葉の大きさよ/稲畑汀子
★里山の結界なせる濃紫陽花/宮津昭彦
★あじさゐや生き残るもの喪に服し/鈴木真砂女
★誓子旧居紺あぢさゐに迎へられ/品川鈴子
★紫陽花の花あるうちを刈られけり/島谷征良
★あぢさゐに触れて鋏のくもりけり/高田正子

紫陽花(アジサイ、学名: Hydrangea、アジサイ科アジサイ属の植物の総称である。学名は「水の容器」という意味で、そのまま「ヒドランジア」あるいは「ハイドランジア」ということもある。また、英語では「ハイドレインジア」と呼ぶ。開花時期は、 6月から7月15日頃。ちょうど梅雨時期と重なる。日本原産。色がついているのは「萼(がく)」で、花はその中の小さな点のような部分。しかしやはり萼が目立つ。紫、ピンク、青、白などいろいろあり。花の色は土が酸性かアルカリ性かによっても。また、花の色は、土によるのではなく遺伝的に決まっている、という説もある。

★妻の浴衣あじさい白く染め抜かれ/高橋信之
★あじさいに七曜またも巡りくる/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花・昼咲月見草・立葵」(横浜日吉本町)