★学生食堂ひとりの顔に夏日あり 正子
前途洋々たる若者達の集まる学生食堂はリラックスして楽しめる場の一つかも知れません。食事を楽しみ会話も弾んでいる事でしょう。その中にひとり日焼けしている人が?。スポーツをする人か?旅行でもした人か?何れにしても夏日を感じさせる健康的な若者の暮らし振りを想像させる頼もしい御句です。(佃 康水)
○今日の俳句
糸蜻蛉水の光りへ紛れけり/佃 康水
糸蜻蛉の体の細さは、注意していなければ、すぐ見失う。ましてや水の光りが輝く中では、蜻蛉か、光か、と見まがうようにも。「水の光り」が涼やかだ。(高橋正子)
○半夏生(はんげしょう)

[半夏生/横浜日吉本町]
★湯沸かしてつかはずにゐる半夏生/能村登四郎
★鯉の口朝から強し半夏生/藤田湘子
★半夏生咲けばひろびろ空がある/高橋信之
俳句を始めてしばらくしたころ、「半夏生」という植物があると聞いた。句会では、その半夏生がどこにあるとか、見に行ったとか、見に行こうとかいう話で持ちきりだった。いったいどんな植物なのか、耳には「半化粧」と聞こえる。白粉の半分落ちたお化けでもあるまいが、ちょっと怖いもの見たさの気持ちを起こさせる植物であった。半夏に咲く植物から命名されたと聞いた。
日吉本町に引っ越して、近所を歩いているとき、ちらっと庭を見て、「もしや半夏生」と思った植物があった。帰って、ネットで検索して半夏生に間違いないと確信をもったが、都市の住宅の庭にも植えられている。日吉本町の古刹金蔵寺にも、半夏生がある。下の方の葉は緑だが、上の方の数枚は白い。そこにひも状の花がつく。花より、葉が白いところが面白い。6月24日に訪ねた大船植物園にも半夏生が群生していた。アマチュアカメラマンが半夏生の前に大勢たむろしていた。花菖蒲によりも、睡蓮によりも沢山カメラマンが集まっていた。いったいどんな写真を撮りたいのか、興味があるところだ。幻想的な写真か。
★睡蓮の池をかくして半夏生/高橋正子
半夏生(学名:Saururus chinensis)は、ドクダミ科ハンゲショウ属。 開花時期は、7/1頃~7/20頃。上の方の葉っぱが、ペンキをべったり塗ったように白くなるのがおもしろい。「半化粧」「半夏生」、両方の名前で呼ばれる。葉の半分ほどが白くなることからの別名「片白草」(かたしろぐさ)。「半夏生」の名前の由来は、夏至から数えて11日目頃の日を「半夏生」と呼ぶが、その頃に、花が咲くことからという。 花期に葉が白くなるのは、虫媒花であるために虫を誘う必要から、このように進化したのではないか、といわれている。花は葉と同じく白で、紐状。花が咲き終わって夏の盛りの頃になると、白い葉の白い部分は色落ちして、ふつうの緑色っぽくなる。山の水辺に群生することが多いが、都会でもときどき植えられてるのを見かける。
◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)

★青田みな青嶺へ靡き吹かれける 正子
風になびく、山に向かう青々とした植田の静かな田園景色が浮かびます。(祝恵子)
○今日の俳句
ピーマンの分厚く光るを収穫す/祝恵子
よくそだったピーマンの質感をよく捉えている。「分厚く」に納得。(高橋正子)
○夕菅(ゆうすげ)

[夕菅/大船植物園]
★天が下万のきすげは我をつつむ/阿波野青畝
★夕菅は胸の高さに遠き日も/川崎展宏
★厩までユフスゲの黄のとびとびに/大野林火
★遠きほど夕菅の黄の満つる色/広瀬直人
★夕菅は實になってゐし花野かな/上野一考
★坪庭の暮れのはじめを花黄菅/本田日出登
★ゆうすげに月まだ淡くありにけり/高橋正子
「ゆうすげ」という名前に惹かれる人も多い。夏のまだ明るい夕方の空を背景に開花する黄色いの花は、人を少なからずロマンティックな想いにさせる。花の姿が野かんぞうにも似ているが、野かんぞうの赤みがかった黄色ではなく、レモンに近い黄色である。遠くまで、はかなげなレモン色のゆうすげが咲く高原は、乙女でなくとも魅惑的な風景と思う。
夕菅(ゆうすげ)は、ユリ科ワスレグサ属の種の一つ。山野などに生える。夏の夕方に開花し、翌朝にしぼむ。くっきりしたきれいなレモン色の花。香りあり。別名、黄菅(きすげ)。学名(Hemerocallis citrina var. vespertina)の由来は、Hemerocallisは、ワスレグサ属(ヘメロカリス属)、citrinaは、レモン色、vespertinaは、夕方の、西の、Hemerocallis(ヘメロカリス)は、ギリシャ語の「hemera(一日)+ callos(美)」が語源で、美しい花が一日でしぼむところから、といわれる。
◇生活する花たち「睡蓮・すかし百合・すかし百合」(フラワーセンター大船植物園)

◆7月ネット句会のご案内◆
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(夏の句)計3句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2015年7月17日(金)午後6時~7月20日(月)午後6時
④選句期間:7月20日(月)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:7月21日(火)午前10時
※予定が多少ずれましたが、ご了解ください。
★蜜豆に夜の会話の間がありぬ 正子
密豆を前にして会話のひととき、ご家族でしょうか、それともお友達同士?いずれにしてもくつろいだ楽しい雰囲気だったことでしょう。(多田有花)
○今日の俳句
★子を抱いて浴衣の父の祭かな/多田有花(姫路ゆかたまつり)
男の祭でも、村の祭でもない「父の祭」がいい。子を抱き、浴衣に寛いでささやかな祭を楽しんでいる父の姿さっぱりとして、涼しそうだ。(高橋正子)
○笹百合

[笹百合/神奈川県箱根町・箱根湿性花園]
★笹百合を愛でつつ登る頂へ/多田有花
★笹百合の倒れがちなり匂いつつ/高橋正子
ササユリ(笹百合、学名:Lilium japonicum)は、ユリ科ユリ属の球根植物。日本特産で日本を代表するユリである。地域によっては、ヤマユリと呼ぶこともある。本州中部地方以西から四国・九州に分布する。成株の茎は立ち上がり、葉は互生する。葉はやや厚く、披針形で長さは8-15cmである。5月-7月頃に淡いピンク色の花を咲かせる。花被片の長さは10-15cm位で漏斗状に反り返る。雄しべは6本で芳香がある。花粉の色は赤褐色であり、オトメユリと区別するポイントになる(ただし花粉の色が黄色のササユりも存在する)。希に花が純白のアルビノのものもある。葉や茎が笹に似ていることからこの名がある。10-11月頃に朔果が熟し、種子は風に乗って広がる。初めて地上発芽するのは通常翌々年の春である(地下遅発芽様式)。初花を咲かせるまでに種子から約7年以上(野生の場合)の歳月がかかる。(ウィキペディア)
○箱根湿性花園
6月29日日曜日、句美子と箱根湿性花園へ出かけた。湿性花園は、6月は150種ほどの花が咲き、一年で一番たくさんの花が見られるそうであった。
ニッコウキスゲ、エゾキスゲ、シモツケ、シモツケソウ、ノリウグギ、ノハナショウブ、ササユリ、コウホネ、未草、睡蓮、ハマナス、クガイソウ。エゾミゾハギ、ウツギ、コマクサ、リシリヒナゲシ、ヤマボウシ、オオバギボウシ、オカトラノオ、マツモトセンノウ、センジュセンノウ、ヤナギラン、ヤマホタルブクロ、ヤマアジサイ、ユウガギク、キツリフネ、イワシャジン、シャジクソウなど。この日の湿性花園で特に目立ったのは、ニッコウキスゲとノハナショウブ。案内書には一巡するのに、40分とあったが、巡ると2時間ほどかかっていた。
◇生活する花たち「白槿・朝顔・青葡萄」(横浜日吉本町)

★長き柄に団扇の風のぱっさぱっさ 正子
うちわは柄も長く、扇の面積も広いので風もよく来ます。自分だけでなく寝る児など傍にいる人にも風を送って風情があります。それにしても、「ぱっさぱっさ」とは豪快で小気味よい扇ぎぶり、それを座五に置かれて大らかです。(小西 宏)
○今日の俳句
模様替えし部屋に藺草の匂い立つ/小西 宏
住まいは夏を旨とすべし、と言われるように、夏はことに部屋を夏向きに模様替えする。新しい花茣蓙を敷くと、藺草のいい匂いがする。開けた窓からの涼風とともに寛いだ気持ちになれる。(高橋正子)
○松葉牡丹

[松葉牡丹/大船植物園]
★おのずから松葉牡丹に道はあり/高浜虚子
★松葉牡丹玄関勉強腹這ひに/中村草田男
松葉牡丹は、夏にはどこの家にも植えてあった。朝顔、向日葵と並んで家庭に植える夏の花の定番だった。一重が多かったが、そのうちに八重の花も見られるようになった。花色も白、赤、黄色、ピンクなどはっきりしていて明るさを振りまいてくれる。茎を摘んで土に挿しておくと根が出て増やすことができるのも楽しみの一つだ。
松葉牡丹で思い出すのは、句美子が2歳ぐらいのときの話である。そのころは、前庭裏庭とあっって、裏庭では鶏や兎を飼ったりり、野菜畑にトマトを作ったり、夏になるとにビニールプールを置いて子どもたちを遊ばせた。花壇も少々作って松葉牡丹を植えた。裏庭で句美子を遊ばせながら洗濯物を干し、おとなしく遊んでいるので大丈夫と思って前庭の植木に水遣りをしてもどってみると、花壇ンの松葉牡丹をひとつのこらず丹念に摘んで大喜びしていた。あたりは松葉牡丹の花が一面に。一つ一つの花を摘む根気強さにおどろいて、呆れてしまった、とこういう話である。
★松葉牡丹その色明るく子が摘みぬ/高橋正子
マツバボタン(松葉牡丹、学名Portulaca grandiflora)とはスベリヒユ科の植物の一種。ヒメマツバボタン(P. pilosa)の亜種(P. pilosa subsp. grandiflora)とされることもある。学名のポルチュラーカはラテン語で門を意味するポルチュラに由来する。花が昼に開き、夜に閉じる様が門を彷彿とさせることからこの名がついたと解釈されている。日本ではホロビンソウ(不亡草)とも呼ばれ、年々種が零れて新たな花が生えだしてくるのでこう呼ばれている。南アメリカ原産の一年草。アルゼンチン、ブラジル南部、ウルグアイに自然分布する。葉は多肉で、高温と乾燥に対して非常に強い。世話のほとんど不要なくらい丈夫である。種子は非常に細かく、こぼれ種でもよく繁殖する。開花期は6~9月頃。美しい花を観賞するためによく栽培される。花弁の色は白、黄、赤、オレンジ、ピンクなどで、八重咲きの品種も作出されている。
◇生活する花たち「コムラサキ・白槿・カンナ」(横浜日吉本町)

★鎌倉へ合歓の一樹の花盛り 正子
合歓の木は随所に見られますが、普段はほとんど目につかず、花が咲いて初めて「ああこんなところに合歓が!」と嬉しくなることが多いかと思います。鎌倉へ行かれるご用事の道すがら、一樹の花盛りを見つけられた作者の気持ちが読者にも浮き浮きと伝わってきます。(河野啓一)
○今日の俳句
紫陽花の軒端に雨水たっぷりと/河野啓一
紫陽花が咲く軒端に雨水がたっぷりと溜まっている。たっぷり溜まった雨水がゆたかで涼しい。(高橋正子)
○月見草(待宵草)

[待宵草/横浜日吉本町]
★月見草灯よりも白し蛾をさそふ/竹下しづの女
★待宵草の黄花を空へくっきりと/高橋信之
★月見草の大きな花にさよならを/高橋正子
「月見草」と「待宵草」は、本来違うものであるが、俳句では、いずれも季語「月見草」として詠まれてきた。最近の歳時記では、季語「月見草」の傍題に「待宵草」を取り上げている。「月見草」は、3、4歳上の上級生からその名をよく聞いた。上級生は小学校の高学年から中学1,2年生だったから、竹下夢二のような少女らしいものに憧れる年齢だったのだろうと今思う。しかし、「待宵草」や「宵待草」は上級生の口からは聞かなかったと思う。そして上級生から「月見草」と教えてもらったものは、「大待宵草」ではなかったかと思う。もともとの月見草が白い花であるということは、調べて知った。植物学上の名前と、俳句の季語とは同じではない。俳句の季語にはこうしたものが結構ある。竹下夢二の「宵待草」は、「待宵草」のこと。
マツヨイグサ属には黄色以外の白、紫、ピンク、赤といった花を咲かせる種もある。標準和名では、黄花を咲かせる系統は「マツヨイグサ」(待宵草)、白花を咲かせる系統は「ツキミソウ」(月見草)と呼び、赤花を咲かせる系統は「ユウゲショウ」(夕化粧)などと呼んで区別しているが、一般にはあまり浸透しておらず、黄花系統種もよくツキミソウと呼ばれる。しかし黄花以外の系統がマツヨイグサの名で呼ばれることはまずない。なお黄花以外の種は園芸植物として栽培されているものが多い。開花時間帯についても、ヒルザキツキミソウなどはその名のとおり昼間に咲く。英語では夜咲き種は evening primerose、昼咲き種を sundrops と呼び区別している。黄花系統種のうち、マツヨイグサ O. stricta やコマツヨイグサは、花が萎むと赤く変色するが、オオマツヨイグサやメマツヨイグサはそれほど赤くはならないので、こういった点でも種を区別できる。
ツキミソウ(月見草、Oenothera tetraptera、つきみぐさ)は、アカバナ科マツヨイグサ属に属する多年草である。メキシコ原産で江戸時代に鑑賞用として渡来した。花期は6 – 9月ごろで、花は夕方の咲き始めは白色であるが、翌朝のしぼむ頃には薄いピンク色となる。同属種であるオオマツヨイグサ、マツヨイグサ、メマツヨイグサなどのことを「月見草」と呼ぶこともある。また、「月見草油」というサプリメントが流通しているが、ほとんどの場合、本種ではなくマツヨイグサかメマツヨイグサ由来である。
マツヨイグサ(待宵草)は、アカバナ科マツヨイグサ属の一年生または多年生草本植物で、この語は主にマツヨイグサ属に含まれる植物について種を特定しないで呼ぶ場合に使用される。標準和名マツヨイグサは学名 Oenothera odorata で呼ばれる種を指すが、こうした用法では滅多に使用されない。マツヨイグサ属にはおよそ125の種が含まれており、14節が構成される。どの種も南北アメリカ大陸原産であり他地域には産しない。日本も例外ではなく、野生のものは帰化植物か、逸出した園芸植物のいずれかである。原産地では種により海辺や平野から高山に至るまで幅広く分布するが、パイオニア植物なので、自然状態では平地では河原、砂浜や砂漠、山ではガレ場や、山火事の跡などの荒地や痩せ地に、人為的にかく乱された環境下では鉄道路線沿いや路肩、耕作放棄された畑や休耕田のような場所に生え、他の植物が成長してくると姿を消す。日本では造成中の土地や未舗装の駐車場でもよく見かける。本属植物は、メキシコ北東部からアメリカ合衆国のテキサス州にかけての地域が発祥の地と考えられている。
種としてのマツヨイグサ O. stricta も、原産地はチリやアルゼンチンといった南米で、嘉永年間(1848年〜1853年)に日本にもたらされ、当初観賞用として植えられていたものが逸出し、昭和30年代に同属のオオマツヨイグサ O. erythrosepala とともに空き地などに大群落を形成した。しかし近年はこれも同属のメマツヨイグサ O. biennis に押され、姿を見る機会は減った。草丈は種により異なり、チャボツキミソウのような高山植物では高さ10cm程度、低地産の O. stubbei では3mにまで成長する。葉は開花軸に対して螺旋形に付き、鋸歯を持つか、または深く裂ける(羽状中裂)。花は多くの種において黄色い四弁花で、どの種も雌しべの先端が4つに割れる特徴を有する。一日花であり、多くの種が夕刻に開花し夜間咲きつづけ、翌朝には萎む。これが「月見草」や「待宵草」の名の由来である。
◇生活する花たち「紅かんぞう・オカトラノイ・立葵」(横浜・四季の森公園)

★松林に白百合まばら富士裾野 正子
富士の裾野なので、松林も広々としたところなのでしょう。その広々としたところにまばらに咲く白百合。大きな自然と小さな自然の共生がそこにあると感じます。(高橋秀之)
○今日の俳句
せせらぎの木陰のめだか動かずに/高橋秀之
せせらぎの木陰はすずしそうだ。涼しさを喜んで、目高が活発に泳ぐかと思えばそうではない。じっとして、木陰の水の涼しさを体で享受しているようだ。(高橋正子)
○横浜・箕輪町の大聖院へ雨の中、蓮を見にゆく。今年は花が早いような気がする。花が散って花托だけになっているものもある。花弁の先だけが薄紅の蓮があるが、初めて見た気がした。(2015.7.2)
○夾竹桃

[夾竹桃/横浜日吉本町] [夾竹桃/大船植物園]
★引き寄せし記憶夾竹桃咲きぬ/稲畑汀子
★安房の海夾竹桃の燃ゆる上に/瀧春一
★何か炒める音して夾竹桃咲けり/岡本眸
★夾竹桃散る三叉路に雀の子/松崎鉄之介
★夾竹桃爆風めける風受けて/片山由美子
★持ち前の強さ明るさ夾竹桃/小澤克己
★夾竹桃高きに白し仰ぎ見る/高橋信之
じりじりとした暑さがやってくる。海を見ればどぼんと飛び込んで泳ぎたくなる。ちりんちりんと鐘を鳴らしてアイスキャンデー売りが自転車にアイスボックスを載せてやってくる。ボンネットバスが埃を巻きあげて通る。夏休みに精一杯遊んでいると、夾竹桃が校庭の隅で赤い花を咲かせる。ブランコの鎖の鉄の匂いが汗ばんだ手に移る。そうこうするうちに原爆忌やお盆が来る。戦没兵士の慰霊祭が校庭でとり行われる。夾竹桃はそのころ必ず咲いている。6月ごろからぽつぽつ咲き始め、9月、夏休みの宿題を抱えて登校するころまで咲く。 その葉で笹舟のように舟をつくったこともあるが、水に浮くわけではない。一花一花は可愛いが、強靭な花である。夾竹桃と言えば、暑さときらめく海と戦死者たちを思うのが私の常だ。
★わたくしのぶらんこ夾竹桃にふれ/高橋正子
キョウチクトウ(夾竹桃、学名: Nerium oleander var. indicum)とは、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木もしくは常緑小高木である。和名は、葉がタケに似ていること、花がモモに似ていることから。インド原産。日本へは、中国を経て江戸時代中期に伝来したという。葉は長楕円形で、両端がとがった形。やや薄くて固い。葉の裏面には細かいくぼみがあり、気孔はその内側に開く。花は、およそ6月より残暑の頃である9月まで開花する。花弁は基部が筒状、その先端で平らに開いて五弁に分かれ、それぞれがややプロペラ状に曲がる。ピンク、黄色、白など多数の園芸品種があり、八重咲き種もある。日本では適切な花粉媒介者がいなかったり、挿し木で繁殖したクローンばかりということもあって、受粉に成功して果実が実ることはあまりないが、ごくまれに果実が実る。果実は細長いツノ状で、熟すると縦に割れ、中からは長い褐色の綿毛を持った種子が出てくる。
◇生活する花たち「のうぜんかづら・月見草・百日紅」(横浜・四季の森公園)

箱根湿性花園
★雲はれて日光黄菅の野にひかる 正子
フェイスブック画面にて正子先生撮影のお写真も見せて頂きました。野に咲く日光黄菅にはっとさせられます。「雲はれて」が一句をつらぬいていて野の風情も大らかに伝わってくるようです。(小川和子)
○今日の俳句
声透る夏うぐいすに森深し/小川和子
森深く入ると、夏うぐいすも、森の深さに比例するかのように声が澄んでくる。鶯の声のよさは、夏うぐいすが一番であろう。(高橋正子)
○布袋草(布袋葵)

[布袋草/フラワーセンター大船植物園]
★布袋草美ししばし舟とめよ/富安風生
★旅果てを土佐の津にあり布袋草/鍵和田秞子
★汐入の水門しまり布袋草/田川夏帆
★たらちねの母の乳房や布袋草/加藤雅兄
ホテイアオイは、南アメリカ原産ということだが、ずっと昔から身近で見たきた。たとえば、瀬戸内は雨が少ないので、田圃の隅に野井戸がある。野井戸は子どもにとっては、危険だが、そこにもびっしりと浮いていたし、大きな池にも浮いて薄紫の涼しそうな花をつけていた。ぷくっと膨れた葉柄が面白い。ぷちっと押しつぶしたりして遊んだが、ホテイアオイが水に浮くのは、このぷくっと膨らんだ葉柄のせいだと思っていたが、そういう訳でもないだろう。
松山市内のマンションで暮らしたとき、目の前に池が見えた。ポプラの木立がまばらにあって、その向こう側が池になっていたが、ここにホテイアオイが浮いていた。住み始めたころは、わずかだったが、4,5年経つと、池を覆うほど広がった。我が家を訪ねる人の中には、そのホテイアオイを池からとって家に持ち帰るという人も現れた。一つ水に浮かべれば、すずしい景色になる。
★水遣りの水がかかりし布袋草/高橋正子
ホテイアオイ(布袋葵、学名 Eichhornia crassipes (Martius) Solms-Laubach)は、単子葉植物ミズアオイ科に属する水草である。南アメリカ原産で、水面に浮かんで生育する。花が青く美しいので観賞用に栽培される。別名ホテイソウ、ウォーターヒヤシンス。池などの流れの少ない水面に浮かんで生育する水草。葉は水面から立ち上がる。葉そのものは丸っぽく、艶がある。変わった特徴は、葉柄が膨らんで浮き袋のようになることで、浮き袋の半ばまでが水の中にある。茎はごく短く、葉はロゼット状につく。つまり、タンポポのような草が根元まで水に浸かっている形である。水中には根が伸びる。根はひげ根状のものがバラバラと水中に広がり、それぞれの根からはたくさんの根毛が出るので、試験管洗いのブラシのようである。これは重りとして機能して、浮袋状の葉柄など空隙に富んだ水上部とバランスを取って水面での姿勢を保っている。夏に花が咲く。花茎が葉の間から高く伸び、大きな花を数個~十数個つける。花は青紫で、花びらは六枚、上に向いた花びらが幅広く、真ん中に黄色の斑紋があり、周りを紫の模様が囲んでいる。花が咲き終わると花茎は曲がって先端を水中につっこむ形となり、果実は水中で成長する。熟した果実は水中で裂開し、水中に種子をばら撒く。種子から発芽した実生は最初から浮き草状の生活型をとるのではなく、浅い水中や水辺の泥の上で土中に根を下ろして成長し、株が大きくなると葉柄に浮袋を生じて水面に生活の場を広げていく。また、茎から水平に枝を伸ばし、その先端に芽が生じて新しい株を作る。これによって素早く数を増やし、大きな集団になる。集団がさらに大きくなり、水面を埋め尽くすようになると、互いにより掛かり合って背が高くなり、分厚い緑の絨毯を水面に作り上げる。
◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

★蛍ぶくろ霧濃きときは詩を生むや 正子
白や紫色した蛍袋が下向きに咲き、中はがらんどう。蛍袋の咲く梅雨の頃には霧の発生も良く見られ、濃い霧にぼやけて見える花は一際風情を感じます。また、この花筒の中にほたるを入れて遊んだという説にはますますメルヘンの世界に誘われると共にこの様なところから詩が生まれて来そうな予感が致します。御句こそが美しい一行詩です。(佃 康水)
○今日の俳句
清らかや飛騨路に出合う朴の花/佃 康水
朴の花は、大ぶりな白い花でよい香りがする。山深い飛騨路に出合えば、「清らかさ」が印象的。(高橋正子)
○コムラサキとムラサキシキブの二つが違うものであることを知らないときは、その花の付き方、実の付き方を細かく書いた文を丁寧によくよく読んで判別していたが、コムラサキとムラサキシキブを見ただけで分かるようになると、そんなことをしていたことが、なんだか、余計なことのように思われる。区別できるようになったのも、説明のおかげなのだが。
自宅から10分ほどの小高い公園の山にムラサキシキブがあったが、去年ばっさり切られてしまったのを発見。自生なんだから大切にしなければならないのに。近所を見る限り、大体にして、すぐに木を切ってしまう。なんのために切るのかよくわからないが。それに、庭木の剪定さえも下手に思う。(2015.6.30)
○コムラサキの花

[コムラサキの花/横浜日吉本町]
★慈雨来る紫式部の花にかな/山内八千代
★紫式部添木に添わぬ花あまた/神部 翠
★光悦垣色あはあはと花式部/高瀬亭子
★紫式部咳くやうに咲き初めし/河野絇子
★夢辿る紫式部の花の香に/石地まゆみ
★花式部見つけたり日の輝きに/高橋信之
紫式部の実は、熟れると美しい紫色となる。しだれるような枝に小さな紫色の実がつき、小鳥が好んで食べる。一度私も食べてみたが、棗に似た味がする。この美しい実がつく前には花が咲くのはとうぜんだが、6月、今ちょうどその紫式部の花が咲いている。実より少し淡い紫色である。その花の通りに実がつく。山野に自生したのを見るが、庭木に植えているものと見かけが多少ちがうように思う。私が見た限りでは、庭木に植えているもは、葉が黄緑がかっているが、自生種は葉が大ぶりで、緑色が濃い。花よりも実が美しい木の一つである。
★登り来てふと見し花は花式部/高橋正子
ムラサキシキブ(紫式部、Callicarpa japonica)はクマツヅラ科の落葉低木で、日本各地の林などに自生し、また果実が紫色で美しいので観賞用に栽培される。高さ3m程度に成長する。小枝はやや水平に伸び、葉を対生する。葉は長楕円形、鋭尖頭(先端が少し突き出すこと)、長さ6-13cm。細かい鋸歯がある。葉は黄緑で洋紙質、薄くて表面につやはない。初めは表側に細かい毛があることもある。花は淡紫色の小花が散房花序をつくり葉腋から対になって出て、6月頃咲く。秋に果実が熟すと紫色になる。果実は直径3mmで球形。栽培品種には白実のものもある。名前の由来は平安時代の女性作家「紫式部」だが、この植物にこの名が付けられたのはもともと「ムラサキシキミ」と呼ばれていたためと思われる。「シキミ」とは重る実=実がたくさんなるという意味。スウェーデンの植物学者のカール・ツンベルクが学名を命名した。北海道から九州、琉球列島まで広く見られ、国外では朝鮮半島と台湾に分布する。低山の森林にごく普通に見られ、特に崩壊地などにはよく育っている。ムラサキシキブ(コムラサキ、シロシキブ)の名所として、京都・嵯峨野の正覚寺が有名である。
コムラサキ(C. dichotoma)も、全体に小型だが果実の数が多くて美しいのでよく栽培される。別名コシキブ。ムラサキシキブとは別種であるが混同されやすく、コムラサキをムラサキシキブといって栽培していることが大半である。全体によく似ているが、コムラサキの方がこじんまりとしている。個々の特徴では、葉はコムラサキは葉の先端半分にだけ鋸歯があるが、ムラサキシキブは葉全体に鋸歯があることで区別できる。また、花序ではムラサキシキブのそれが腋生であるのに対して、コムラサキは腋上生で、葉の付け根から数mm離れた上につく。岩手県で絶滅、その他多数の都道府県でレッドリストの絶滅寸前・絶滅危惧種・危急種・準絶滅危惧の種に指定されている。
◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

★紫陽花を剪るに真青き匂いたち 正子
梅雨の頃、小さい多数の四片の花を、毬状に群がり咲かせ、花弁と見えるものは萼で、花期が長く白、淡緑、碧、紫、淡紅と日を経るに従って花の色が変化する美しい花を剪って花瓶にさした紫陽花の素晴らしい景ですね。(小口泰與)
○今日の俳句
蛍飛ぶ後ろ大きな山の闇/藤田洋子
大きな山を後ろに闇を乱舞する蛍の火。山間の清流を舞う蛍火の見事さを「山の闇」で的確に表現した。(高橋正子) じゃがいもの花や赤城は靄の中/小口泰與
雄々しい赤城の山も靄の中に消え、薄紫のじゃがいもの花が優しく咲く。じゃがいもの花が咲く頃は、雨の後など靄がかかりやすい。季節がよく捉えられている。(高橋正子)
○夏萩

[夏萩/東京・関口芭蕉庵(2011年6月12日)]_[夏萩/北鎌倉・円覚寺(2013年6月16日)]
★夏萩の咲きひろがりぬ影の上/谷野予志
★夏萩や山越ゆる雲かろやかに/石原絹江
東京・関口芭蕉庵
★芭蕉居しと夏萩の紅明らかに/高橋信之
★夏萩にもっとも似合うのシャツ白/高橋正子
萩と言えば、秋の七草のひとつで、多くの方がご存じ。万葉集に詠まれ、日本画、着物などの柄、日常の種々のものにも描かれて、馴染み深い花となっている。秋が来るのを待たず咲いているのに出会うと、「もう萩が。」と汗が引く思いで足を止めて見る。夏萩は、夏の終わりから秋の初めにさく南天萩、四業萩、猫萩、夏開花する野萩、めどはぎ、犬萩、藪萩などを指すしている。六月に関口芭蕉庵を訪ねたことがあったが、瓢箪池のふちに夏萩が枝をのばして紅紫の可憐な花を付けていた。「古池や」の句碑も立っているが、池水のにごりに映えて静かな雰囲気を醸していた。関口芭蕉庵から椿山荘へ場所を移すと、椿山荘にも露を置く草の中に数本の枝が倒れて紅紫の花をほちほちと草に散るように咲いていた。一足はやい秋の訪れを垣間見る思いだ。
俳人・正岡子規も愛した“萩の寺”、大阪府豊中市の曹洞宗東光院(村山廣甫住職)で、ナツハギが6月初旬~中旬くらいまでが見頃で、かれんな花が参拝客らの目を楽しませている。参道には、秋に見頃を迎えるマルバハギなど約10種3千株にまじり、ナツハギ約30株が植えられており、今年は例年より早く赤紫の花が房状に咲き始めたという。東光院は、奈良時代の天平7(735)年に僧の行基(668~749年)が現在の大阪市北区に薬師如来像を自作し、薬師堂を建立したのが始まりとされる。行基が死者の霊を慰めるために当時、淀川に群生していたハギを供えたことから境内にもハギが植えられ、「萩の寺」として親しまれるようになった。子規や高浜虚子ら多くの俳人が好んで訪れ、子規はハギが咲き誇る風情を「ほろほろと石にこぼれぬ萩の露」と詠んだという。同院は「ハギの群生美は、日本らしい『和』の民族性を表しているよう。1度花を咲かせたあと、さらに茎を伸ばし花を咲かせる姿は、私たちに希望を与えてくれる」と話している。
ハギ(萩)とは、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。秋ハギと牡鹿のペアの歌が多い。別名:芽子・生芽(ハギ)。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。
◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)
