5月2日

★八十八夜のポプラに雀鳴きあそぶ  正子
八十八夜と言えば童謡「茶摘み」を思い起こします。この頃は柔らかな日差しと眼にも優しい若葉がそよぎ爽やかな風を心地よく感じられる季節です。また雀たちは日脚の伸びた明るいポプラに何時までもその喜びに囀っていたのでしょう。若葉と囀り、明るさに満ち溢れた夏の近づく音を感じます。また、「鳴きあそぶ」に可愛い雀に対して作者の優しい眼差しをも思われます。 (佃 康水)

○今日の俳句
筍を茹でつつ糠を噴き零す/佃 康水
筍を茹でるとき油断すると灰汁を抜き、柔らかくするために加えた糠が吹きこぼれる。鍋や釜の縁に吹きこぼれた糠がこびりつくこともある。しかし、こういう事に季節の暮らしがある。(高橋正子)

○八十八夜

★磧湯(かわらゆ)の八十八夜星くらし/水原秋桜子
★きらきらと八十八夜の雨墓に/石田波郷
★逢ひにゆく八十八夜の雨の坂/藤田湘子
★旅にて今日八十八夜と言はれけり/及川 貞
★八十八夜都にこころやすからず/鈴木六林男

 八十八夜(はちじゅうはちや)は、雑節のひとつで、立春を起算日(第1日目)として88日目、つまり、立春の87日後の日である。21世紀初頭の現在は平年なら5月2日、閏年なら5月1日である。数十年以上のスパンでは、立春の変動により5月3日の年もある。
 あと3日ほどで立夏だが、「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の泣き霜」などといわれるように、遅霜が発生する時期である。一般に霜は八十八夜ごろまでといわれているが、「九十九夜の泣き霜」という言葉もあり、5月半ばごろまで泣いても泣ききれない程の大きな遅霜の被害が発生する地方もある。そのため、農家に対して特に注意を喚起するためにこの雑節が作られた。八十八夜は日本独自の雑節である。
 この日に摘んだ茶は上等なものとされ、この日にお茶を飲むと長生きするともいわれている。茶の産地である埼玉県入間市狭山市・静岡県・京都府宇治市では、新茶のサービス以外に手もみ茶の実演や茶摘みの実演など、一般の人々も参加するイベントが行われる。
 「♪夏も近づく八十八夜…」と茶摘みの様子が文部省唱歌『茶摘み』に歌われている。
昭和7年(1932年)『新訂尋常小学唱歌 第三学年用』

茶摘/文部省唱歌
一、
  夏も近づく八十八夜、
  野にも山にも若葉が茂る。
  「あれに見えるは
  茶摘ぢやないか。
  あかねだすきに菅の笠。」
二、
  日和つづきの今日此の頃を、
  心のどかに摘みつつ歌ふ。
  「摘めよ、摘め摘め、
  摘まねばならぬ、
  摘まにや日本の茶にならぬ。」

○花蘇芳(はなずおう)

[花蘇芳/横浜日吉本町]

★いとしめば紅よどむ蘇芳かな/松根東洋城
★風の日や煤ふりおとす花蘇芳/滝井孝作
★花よりも蘇芳に降りて濃ゆき雨/後藤比奈夫
★街中の水に空ある花すおう/和知喜八
★花すおういつも縁側より見えて/高橋正子

 ハナズオウ(花蘇芳、Cercis chinensis)は中国原産のマメ科ジャケツイバラ亜科の落葉低木で、春に咲く花が美しいためよく栽培される。高さは2-3mになり、葉はハート形でつやがあり、葉柄の両端は少し膨らむ。早春に枝に花芽を多数つけ、3-4月頃葉に先立って開花する。花には花柄がなく、枝から直接に花がついている。花は紅色から赤紫(白花品種もある)で長さ1cmほどの蝶形花。開花後、長さ数cmの豆果をつけ、秋から冬に黒褐色に熟す。和名紫荊はその花の紅紫色が、あたかもスオウ染め汁の色に似ているからである。
 花蘇芳の紅紫色は古典的。よい色である。ハート型の葉も魅力。空の青色に似合う。生家には土塀のそばに一本の蘇芳が咲いた。子どもの目にはその花は少し暗く思えたが、つやつやとした絹地のように映った。
 ハナズオウ属は北半球温帯に数種が分布する。地中海付近原産のセイヨウハナズオウ (C. siliquastrum) は落葉高木で高さ10mほどになり、イスカリオテのユダがこの木で首を吊ったという伝説からユダの木とも呼ばれる。このほかアメリカハナズオウ (C. canadensis) などが栽培される。

◇生活する花たち「三葉躑躅(みつばつつじ)・葱坊主・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)

●端午の節句(5月5日、こどもの日・立夏)ネット句会のご案内●


●端午の節句(5月5日、こどもの日・立夏)ネット句会のご案内●

①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠発行所にお申し込みください。
②当季雑詠(端午・夏の句)計3句、端午・こどもの日などの句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
③投句期間:2016年5月3日(火)午前0時~5月5日(木)午後6時
④選句期間:5月5日(木)午後6時~午後9時
⑤入賞発表:5月6日(金)午前10時
⑥伝言・お礼等の投稿は、5月6日(金)午前10時~5月7(土)午前10時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

5月1日

★豆の花宙に雀が鳴いており  正子
春の到来を告げる豆の花が畑一面にに咲き乱れ、空には賑やかな雀たちの鳴き声が響いています。おおらかなこの季節の賛歌です。(河野啓一)

○今日の俳句
春深し小枝に小鳥来てとまる/河野啓一
「春」のただなかに身を置いている自分と、小枝に飛んできた小鳥に自分を重ねているような、静かな楽しさがある。「春深し」の実感。(高橋正子)

○錦木の花

[錦木の花/東京深川・芭蕉記念館]

★錦木の花や籬にもたれ見る/高浜虚子
★苔の香や錦木の花散り溜まる/織田烏不関
★川風に錦木の花うすみどり/高橋正子
★新緑の中なる花もうすみどり/高橋正子

 ニシキギ(錦木、学名:Euonymus alatus)とはニシキギ科ニシキギ属の落葉低木。庭木や生垣、盆栽にされることが多い。日本、中国に自生する。紅葉が見事で、モミジ・スズランノキと共に世界三大紅葉樹に数えられる。若い枝では表皮を突き破ってコルク質の2~4枚の翼(ヨク)が伸長するので識別しやすい。なお、翼が出ないもの品種もあり、コマユミ(E. alatus f. ciliatodentatus、シノニムE. alatus f. striatus他)と呼ばれる。
 葉は対生で細かい鋸歯があり、マユミやツリバナよりも小さい。枝葉は密に茂る。 初夏に、緑色で小さな四弁の花が多数つく。あまり目立たない。 果実は楕円形で、熟すと果皮が割れて、中から赤い仮種皮に覆われた小さい種子が露出する。これを果実食の鳥が摂食し、仮種皮を消化吸収したあと、種子を糞として排泄し、種子散布が行われる。紅葉を美しくするために西日を避けた日当たりの良い場所に植える。 剪定は落葉中に行う。よく芽をつける性質なので、生垣の場合は強く剪定してもよい。 栽培は容易。名前の由来は紅葉を錦に例えたことによる。別名ヤハズニシキギ。

○生活する花たち「苧環(おだまき)・カラー・クレマチス」(横浜日吉本町)

4月30日

★石菖に沢水つねに流れ来る  正子
石菖とはショウブ科ショウブに属する多年生植物。根茎は薬草として用いられるとのこと。菖蒲の一種でしょうか。絶えずさらさらと流れる水を受けて、いきいきと群れる石菖が思われます。(小川和子)

○今日の俳句
青紫蘇を水に放ちてより刻む/小川和子
青紫蘇をしゃっきりと香りよく、細く切るためには、水に放して、いきいきとさせて刻む水と紫蘇の出会いが涼しさを呼び起こしてくれる。(高橋正子)

○白牡丹

[白牡丹/神奈川県立大船植物園(2014年4月27日)]

 牡丹6句/高橋正子
★白牡丹吹かるるときはいきいきと
★風止んで牡丹のかたち整いぬ
★牡丹の丈にかがめば牡丹の香
★牡丹園日表の花日裏の花
★くれいないの牡丹はつやを重ねたり
★古き家に牡丹の咲いてぼたん色

ボタン(牡丹、学名:Paeonia suffruticosa)は、ボタン科ボタン属の落葉小低木。 または、ボタン属(Paeonia)の総称。 別名は「富貴草」「富貴花」「百花王」「花王」「花神」「花中の王」「百花の王」「天香国色」 「名取草」「深見草」「二十日草(廿日草)」「忘れ草」「鎧草」「ぼうたん」「ぼうたんぐさ」など多数。 以前はキンポウゲ科に分類されていたが、おしべ・花床の形状の違いからクロンキスト体系ではシャクヤクとともにビワモドキ目に編入され、独立のボタン科とされた。 (ウィキペディア)

○神奈川県立フラワーセンター大船植物園(2014)
4月27日昼前から信之先生と大船植物園に出かけた。見ごろは牡丹。藤。そのほか、ハンカチの木の花、睡蓮、もっこう薔薇、いちはつ、あやめ、西洋おだまき、おおでまり、矢車草、えびねなど。石楠花は終わって、残っている花はわずかだが、天城石楠花を見た。五月十日ごろには芍薬園の芍薬が咲き揃い、二十日ごろには、薔薇園の薔薇が見ごろとなるだろう。桜が終わり、晩春から初夏への花が咲きだす。花を見逃せない季節だ。

◇生活する花たち「藤①・藤②・石楠花」(横浜箕輪町・大聖院)

4月29日

★牡丹の百花に寺の午(ひる)しじま  正子
この句からは、寺の本堂にでも腰を下ろし、咲き乱れる牡丹の花を眺めている作者。にぎわった寺も昼ともなれば人が去り、静かで物音一つしない。風に揺れる牡丹の薄い花びらを眺めて静けさを楽しんでいる作者を想像します。(古田敬二)

○今日の俳句
水底へその影伸ばし葦芽吹く/古田敬二
葦の芽吹きは、その水と芽の緑との出会いが美しい。早春の芽吹きの中でも、水からの芽吹きはまた一味違って、きらめくものがある。水底へ影が伸びるのを確認できるほど澄んでいる水もよい。(高橋正子)

○空木(うつぎ・卯の花)

[空木(卯の花)/東京深川・芭蕉記念館前]

★押しあうて又卯の花の咲きこぼれ/正岡子規
★卯の花の夕べの道の谷へ落つ/臼田亜浪
★卯の花や流るるものに花明り/松本たかし
★卯の花曇り定年へあと四年/能村研三
★卯の花のつぼみもありぬつぼみも白/高橋信之
★卯の花の盛りや雷雨呼びそうに/高橋正子

★卯の花の白きを門に置きし家/河野啓一
卯の花の白さを門に配しているのがいい感覚だ。「置きし」は、画を描いているような、絵具を置くような、詠み方で、光景を絵画的にしている。(高橋正子)

 ウツギ(空木、学名:Deutzia crenata)はユキノシタ科の落葉低木で、ウノハナ(卯の花)とも呼ばれる。樹高は2-4mになり、よく分枝する。樹皮は灰褐色で、新しい枝は赤褐色を帯び、星状毛が生える。葉の形は変化が多く、卵形、楕円形、卵状被針形になり、葉柄をもって対生する。花期は5-7月。枝先に円錐花序をつけ、多くの白い花を咲かせる。普通、花弁は5枚で細長いが、八重咲きなどもある。茎が中空のため空木(うつぎ)と呼ばれる。「卯の花」の名は空木の花の意、または卯月(旧暦4月)に咲く花の意ともいう。北海道南部、本州、四国、九州に広く分布し、山野の路傍、崖地など日当たりの良い場所にふつうに生育するほか、畑の生け垣にしたり観賞用に植えたりする。

○生活する花たち
◇生活する花たち「牡丹・白藤①・白藤②」(鎌倉・鶴岡八幡宮)

4月28日

★若きらへ菜の花サラダ色淡し  正子
若い人たちへの菜の花サラダのおもてなし。春先の淡き季節のサラダです。(祝恵子)

○今日の俳句
溢れる花溢れる花人通り抜け/祝恵子
「通り抜け」は、大阪造幣局前の桜並木の通り抜けで、桜が咲くころは花見の人で溢れる。花見の人はみんな「花人」。「溢れる花人」がいい。(高橋正子)

○とべらの花

[とべら/東京深川・芭蕉記念館裏の隅田川土手]

★沖晴れてとべらの花を叩く雨/藤田あけ烏
★海桐咲く甘き香放つ凪の浜/hanazuki1119
★奄美季語とつとつ知るや花とべら  綾子 
★塩炊きし時代もありき花とべら   凡太
★花とべら海人は半日野良にあり   克彦
★山羊飼女とべらの香り切り落とす  和江
★波立つは海豚のしぶき海桐咲く   末雄
★切崖を生き抜く子山羊花海桐    ゆうと 
★釣り糸の絡みつきたる花海桐    ゆうと
★釣人の分け入る路に花海桐     ゆうと
★川風にとべらの花の匂うなり/高橋正子

 トベラ(扉、海桐、Pittosporum tobira)はトベラ科トベラ属の常緑低木。東北地方南部以南、韓国、台湾、中国南部までの海岸に自生する。主に枝の先に葉が集まって着く。葉は倒卵形、互生、主脈は白っぽく、葉全体はつやのある緑色で、周辺部がやや内に巻くように、葉全体が反っている。5月頃芳香のある白い5弁の花をつける。果実は熟すと3裂し、赤い粘液が付着した種子を多数露出し、これが鳥のくちばしなどに粘着して運ばれるといわれる。
 海岸では海浜植物などの草本につづく海岸性森林の最前線に位置し、低くて密な群集を形成する他、海岸林の中では高木層を形成する場合もある。また、潮風や乾燥に強く、つやのある葉を密生することなどから観賞用あるいは街路樹として道路の分離帯などに栽培される。雌雄異株。
 野生状態ではあまりトベラを食樹とする昆虫は大量発生しないが、都市に植樹されたトベラには、新芽に虫えいをつくるトベラキジラミというキジラミ科の昆虫がしばしば大量発生して、排泄物の甘露にすす病菌が発生しているのを見ることが多い。
 枝葉は切ると悪臭を発するため、節分にイワシの頭などとともに魔よけとして戸口に掲げられた。そのため扉の木と呼ばれ、これがなまってトベラとなった(学名もこれによる)。属名のピットスポルムはPitta(樹脂)とSporos(種子)に由来し、これは上記のように熟した果実から粘液が付着した種子が露出するのが特徴的なことから付けられたものである。

○生活する花たち
「母子草・とべらの花①・とべらの花②」(東京・深川芭蕉記念館裏の隅田川土手)

4月27日

★いちはつの花の豊かに学問す  正子
学問とは何か、学問に携わる心構えは確かか。年度を新たにするこの季節、いちはつの花に自問させられます。茅葺屋根の天辺に植えられたから、或いは、一番先に咲くアヤメだから、という謂われの「一初(イチハツ)」の名。その「豊か」な姿、そして「学問す」に、身の引き締まる心地がいたします(川名ますみ)

○今日の俳句
花ふぶき車に触るる音うれし/川名ますみ
花ふぶきが車に、走っている車にだろうが、触れるとき音がする。その音が聞こえるほど敏感な作者でもあるし、すざましい花ふぶきであることが知れる。そういった花ふぶきに出会った嬉しさは一入だろう。(高橋正子)

○神奈川県立フラワーセンター大船植物園(2014)
昼前から信之先生と大船植物園に出かけた。見ごろは牡丹。藤。そのほか、ハンカチの木の花、睡蓮、もっこう薔薇、いちはつ、あやめ、西洋おだまき、おおでまり、矢車草、えびねなど。石楠花は終わって、残っている花はわずかだが、天城石楠花を見た。五月十日ごろには芍薬園の芍薬が咲き揃い、二十日ごろには、薔薇園の薔薇が見ごろとなるだろう。桜が終わり、晩春から初夏への花が咲きだす。花を見逃せない季節だ。

 大船植物園10句
白牡丹吹かるるときはいきいきと
牡丹の丈にかがめば牡丹の香
いちはつのみずみずしきときを共にあり
蔓ばらの空に咲きたる聖五月
ふり仰ぐハンカチの木の白き花
芍薬の蕾を日焼けというなるほど
矢車草の青に憩いて独りならず
風ふいと睡蓮の花流れたり
牡丹園日表の花日裏の花
くれいないの牡丹はつやを重ねたり

○母子草(ははこぐさ)

[母子草/東京・深川芭蕉記念館裏の隅田川土手] 

★老いて尚なつかしき名の母子草/高浜虚子
★語らいは遠き日のこと母子草/古市あさ子
★拔け道にしつかり根付く母子草/植木里水
★ほんわりと子を抱くかたち母子草/高橋正子
★ほうこ草ほうこ草と呼びし祖母/高橋正子

 ハハコグサ(母子草、学名: Gnaphalium affine)は、キク科ハハコグサ属の越年草である。春の七草の1つ、「御形(ごぎょう、おぎょう)」でもあり、茎葉の若いものを食用にする。冬は根出葉がややロゼットの状態で育ち、春になると茎を伸ばして花をつける。成長した際の高さは10〜30cm。葉と茎には白い綿毛を生やす。花期は4〜6月で、茎の先端に頭状花序の黄色の花を多数つける。
 中国からインドシナ、マレーシア、インドにまで分布する。日本では全国に見られるが、古い時代に朝鮮半島から伝わったものとも言われる。人里の道端などに普通に見られ、冬の水田にもよく出現する。
 かつては草餅に用いられていた草であった。しかし、「母と子を臼と杵でつくのは縁起が良くない」として、平安時代ごろから蓬に代わったともされているが、実際には、出羽国秋田や丹後国峯山など、地方によっては19世紀でも草餅の材料として用いられている。もっとも、古名はオギョウ、またはホウコである。新芽がやや這うことから「這う子」からなまったのではとの説もある。ハハコグサの全草を採取し細かく裁断して日干しし、お茶にする。咳止めや内臓などに良い健康茶ができる。これには鼠麹草(そきくそう)という生薬名があるが、伝統的な漢方方剤では使わない。

○生活する花たち(新緑の東京隅田川)
「スカイツリー(浅草水上バス乗り場より)・日本橋(水上バス船上より)・清洲橋(水上バス船上より)」

4月26日

★囀りに子の片言の鳥を呼び  正子
鳥たちの明るい囀りのもと、何とも愛らしいお子様の姿に、母としての幸せを感じます。心あたたまる和やかな光景に、春の喜びがあふれます。(藤田洋子)

○今日の俳句
春光につつまれし身のときめきよ/藤田洋子
この句を読むと、もの静かで明るい若い母親の姿が浮かぶ。うす紫の丸いヨークのセーターが、春光の中で、肩までの黒髪に映えていた。(高橋正子)

横浜箕輪・大聖院三句
お寺にも男の子ありたり鯉のぼり/正子
金魚池おたまじゃくしが活発に/正子
放生池金魚とおたまじゃくしおり/正子
芥子の花水透明はコップの中/正子

○石楠花(しゃくなげ)

[石楠花/横浜日吉本町・金蔵寺]      [石楠花/横浜箕輪町・大聖院]

★石楠花や朝の大気は高嶺より/渡辺水巴
★空の深ささびし石楠花咲きそめぬ/角川源義
★石南花や水櫛あてて髪しなふ/野沢節子
★ほぐれんとして石南花の大蕾/岡田日郎
★石楠花の頃は過ぎたり咲き残り/清崎敏郎
★石楠花の色濃くなりぬ朝の雨/緒方 輝

 シャクナゲ (石楠花、石南花) は、ツツジ科ツツジ属 (Rhododendron) 無鱗片シャクナゲ亜属、無鱗片シャクナゲ節の総称である。主に低木だが、高木になるものもある。また、日本ではその多くのものがツツジと称される有鱗片シャクナゲ亜属のものを欧米では Rhododendron と呼んでいるので注意が必要である。ただし、有鱗片シャクナゲのなかでも、ビレア(マレーシアシャクナゲ)の仲間は、カワカミシャクナゲのように、日本でもシャクナゲと呼んでいる。
 Rhododendron としては主として北半球の亜寒帯から熱帯山地までのきわめて広い範囲に分布し、南限は赤道を越えて南半球のニューギニア・オーストラリアに達する。特にヒマラヤ周辺には非常に多くの種が分布する。いずれも派手で大きな花に特徴がある。花の色は白あるいは赤系統が多いが、黄色の場合もある。
 シャクナゲは葉にロードトキシンことグラヤノトキシンなどのケイレン毒を含む有毒植物である。摂取すると吐き気や下痢、呼吸困難を引き起こすことがある。葉に利尿・強壮の効果があるとして茶の代わりに飲む習慣を持つ人が多く存在するが、これはシャクナゲに「石南花」という字が当てられているため、これを漢方薬の「石南(オオカナメモチ)」と同一のもの(この2つに関連性はない)と勘違いしたためであり、シャクナゲにこのような薬効は存在しない。シャクナゲは常緑広葉樹にもかかわらず寒冷地にまで分布している。寒冷地に分布する種類のなかには、葉の裏側を中にした筒状にして越冬するハクサンシャクナゲなどがある。日本にも数多くの種類のシャクナゲが自生しているが、その多くは変種であり、種のレベルでは4種または6種に集約される。このほか、園芸用品種として数多くの外国産のシャクナゲが日本に導入されており、各地で植栽されている。

○生活する花たち「都忘れ・おだまき・卯の花」(東京浅草)

4月25日

 小石川植物園
★たんぽぽの草の平らに散らばりぬ  正子
春の野を代表するたんぽぽは日が出ると開き、曇りの日や夜になると閉じる。そのたんぽぽが沢山野に咲いている素敵な景ですね。有難う御座いました。(小口泰與)

○今日の俳句
あえかなるばらの新芽や風の中/小口泰與
ばらの新芽に「あえか」な表情を見た。かわいらしく、やわらかく、傷つきそうな新芽が風の中に伸びてきた。(高橋正子)

○木香薔薇(もっこうばら)

[もっこうばら/横浜日吉本町]

★夕風や白薔薇の花皆動く/正岡子規
★薔薇深く ぴあの聞ゆる 薄月夜/正岡子規
★朝晴れて木香薔薇に滴あり/819maker
★木香バラ気高く庭を囲いをり/819maker
★黄モッコウお印の所以悟りけり/光賢
★近づいて 木香薔薇の 薫り嗅ぐ/isamu
★棘なしの蔓薔薇咲いて溢るる日/ROSE・MARRY
★手折りしは刺なき薔薇の黄木香/senior21

 モッコウバラ(木香茨、木香薔薇、学名:Rosa banksiae)は、中国原産のバラ。黄モッコウ(ロサ・バンクシア・ルテア)は秋篠宮家第一女子・眞子内親王のお印である。
学名は植物学者ジョゼフ・バンクスの夫人にちなむ(命名はウィリアム・エイトン)。
 常緑つる性低木。枝には棘がないため扱いやすい。花は白か淡い黄色で、それぞれ一重咲と八重咲があり、直径2-3cmの小さな花を咲かせる。開花期は初夏で一期性。黄花の一重や白花には芳香はある。一般的にモッコウバラといった場合には、黄色の八重咲を指す。性質は強健で、病気も普通のバラと比べると少ない。成長も早く、けっこう大きくなるので地植えにはそれなりのスペースが必要とされる。野生種の起源は不明である。ノイバラの台木に接ぎ木してもよいが、挿し芽でも簡単に増やすことができる。花芽の形成時期が8月末までに行われるため、それ以降に剪定をすると、翌年の開花数が少なくなってしまう。基本的には剪定はしない。行灯仕立てで販売されることがあるが、上述のように成長は極めて速く大きくなるので栽培は難しい。また、白花は黄花より開花が若干遅く、芳香性を持ってはいるが黄花ほど多花性は無い、成長も黄花に比べるとやや遅い。
 庭園などで、アーチやフェンスなどに用いる。生育が早く、大量に花をつけるため、大きなモッコウバラの開花時は圧巻である。バラの短所である棘がなく、病気、害虫にも強くバラとして理想的な性質を持っているが、一方、一期咲であること、黄花の八重咲に芳香がないこと、白と黄色しか花色がない事などの短所もある。

◇生活する花たち「藤①・藤②・石楠花」(横浜箕輪町・大聖院)

4月24日

 小石川植物園
★やわらかに足裏に踏んで桜蘂  正子
あれほど心待ちにしていた桜の花もすっかり散り終り、今では葉も伸び、桜蘂がしきりに降っている・・・。移りゆく時の流れを足裏の感覚に惜しみ、葉桜の新緑となった木蔭の心地よさも愛でている作者の心情が垣間見えます。(桑本栄太郎)

○花水木

[花水木/横浜日吉本町(左:2010年4月27日・右:2012年4月29日)]

★一つづつ花の夜明けの花みづき/加藤楸邨
★アパートは新装アメリカ花水木/林翔
★松屋通りアメリカ花水木の盛り/宮津昭彦
★花水木街へ海光真直に/有馬朗人
★三郎の忌日埋めゐし花水木/高島茂
★女子寮に皿洗ふ音花水木/皆川盤水
★花水木手を空へ向け深呼吸/中村忠男
★独り居に慣れて明るき花水木/広木婦美
★定年はやがてくるもの花みづき/日下部宵三
★待ち合わす銀座の角の花水木/高橋正子

 ハナミズキ(花水木、学名:Benthamidia florida)はミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。北アメリカ原産。別名、アメリカヤマボウシ。ハナミズキの名はミズキの仲間で花が目立つことに由来する。また、アメリカヤマボウシの名はアメリカ原産で日本の近縁種のヤマボウシに似ていることから。
 ミズキ科の落葉小高木。樹皮は灰黒色で、葉は楕円形となっている。北アメリカ原産。花期は4月下旬から5月上旬で白や薄いピンクの花をつける。秋につける果実は複合果で赤い。庭木のほか街路樹として利用される。栽培する際には、うどんこ病などに注意する。またアメリカシロヒトリの食害にも遭いやすい。
 日本における植栽は、1912年に当時の東京市長であった尾崎行雄が、アメリカワシントンD.C.へ桜(ソメイヨシノ)を贈った際、1915年にその返礼として贈られたのが始まり。この話は、1981年海底版の日本の中学生向け教科書「NEW PRINCE」中3版でもエピソード的に取り上げられた。なお、2012年に桜の寄贈100周年を記念して、再びハナミズキを日本に送る計画が持ち上がっている。
 ハナミズキの深刻な病害であるハナミズキ炭疽病の感染地域では、感染によってハナミズキの街路樹が枯死すると、ハナミズキ炭疽病に抵抗性があるヤマボウシまたはハナミズキのヤマボウシ交配品種に植え替える病害対策が行われることがある。

◇生活する花たち「いちはつ・藤・梨の花」(横浜市緑区北八朔町)