5月9日

★新緑の翳るときあり水があり  正子
今当に新緑の季節を迎えています。公園や広場の木々は初夏の艶やかな葉を茂らせ段々と緑も増し、その木々が重なり合って心地よい翳りを作ってくれています。辺りには噴水、池 水飲み場などが有り、目にしたもの全てが清々しく、そんな中で寛ぎの一時を過ごしていらっしゃる様子が見えて参ります。(佃 康水)

○今日の俳句
筍を茹でつつ糠を噴き零す/佃 康水
筍を茹でるとき油断すると灰汁を抜き、柔らかくするために加えた糠が吹きこぼれる。鍋や釜の縁に吹きこぼれた糠がこびりつくこともある。しかし、こういう事に季節の暮らしがある。(高橋正子)

○芍薬

[芍薬/横浜日吉本町]

★芍薬を画く牡丹に似も似ずも/正岡子規
★蕾日に焦げんとしては芍薬咲く/中村草田男
★芍薬の一ト夜のつぼみほぐれけり/久保田万太郎
★嫁ぎゆき芍薬の花咲きつづく/和知喜八
★そろひ咲く白芍薬よ朝の庭/阿部ひろし
★芍薬のピンクが白に近い色/高橋信之
★芍薬の白はふっくら日の溶けし/高橋正子

 (2012年の日記より)今日、5月28日は信之先生の81歳の誕生日。家族の都合で、昨日の日曜日に誕生祝いをした。四角な大きなケーキを句美子が作り、わたしは、たけのこ寿司を作った。ただそれだけの簡素なお祝い。芍薬の花を昼過ぎに買って花瓶に生けておいたら、夜には、蕾まで開きはじめて、開いていた花は、これ以上咲けないというほど開いた。花もちをよくする薬を入れたせいと、水切りがうまくいったのかもしれない。誕生日にふさわしく豪華に咲いた。砥部の庭には、臥風先生のお宅から移した芍薬があった。来年は、芍薬の根っこを買って鉢で育てようという話になった。
 花冠同人で今日の俳句に挙げた黒谷光子さんも、facebookで拝見すると、28日がお誕生日とのこと。光子さん、おめでとうございます。
 芍薬は牡丹が終わったころに咲く。牡丹ほど気取っていないので、砥部の庭にもあって、咲けば切って花瓶に挿して楽しんだ。小学生のころから芍薬は変わらずある。今はどうか知らないが、教室には教卓の近くに花瓶があって花が活けてあった。家に咲いた花を切って子どもたちが持ってきていたが、芍薬の咲く時期には、花瓶に挿しきれないほど芍薬が集まる。すると先生がバケツを用意してバケツに入れてくれる。このころは、芍薬だけでなく、あやめやいちはつなども次々に誰かがもって来ていた。

◇生活する花たち「黄菖蒲・睡蓮・芹の花」」(横浜都筑・ふじやとのみち)

5月8日

★野ばら咲く愛のはじめのそのように  正子
野ばらを見ると、愛が始まる時のような可憐な思いが湧いてきたのでしょうか。素敵な句です。(祝恵子)

○今日の俳句
チューリップ小雨は森に去りました/祝恵子
森の近くのチューリップ畑。あまりにもかわいらしいチューリップに雨は少しだけ降って森へ去っていった。ここにメルヘンが生まれた。(高橋正子)

○野茨(花いばら・野ばら)

[野茨/東京白金台・自然教育園]

★花いばら故郷の路に似たる哉/与謝蕪村
★愁ひつつ岡にのぼれば花いばら/与謝蕪村
★咲きはじむ野ばらの白よ旅衣を解く/高橋信之
★野ばら咲く愛のはじめのそのように/高橋正子

野茨(バラ目バラ科バラ属学名:Rosa multiflora)は、バラ科の落葉性のつる性低木。日本のノバラの代表的な種。沖縄以外の日本各地の山野に多く自生する。ノバラ(野薔薇)ともいう。高さは2mぐらいになる。葉は奇数羽状複葉で、小葉数は7-9、長さは10cmほど。小葉は楕円形、細かい鋸歯があり、表面に艶がない。花期は5~6月。枝の端に白色または淡紅色の花を散房状につける。個々の花は白く丸い花びらが5弁あり、径2cm程度。雄しべは黄色、香りがある。秋に果実が赤く熟す。野原や草原、道端などに生え、森林に出ることはあまり見ない。河川敷など、攪乱の多い場所によく生え、刈り込まれてもよく萌芽する、雑草的な性格が強い。古くはうまらと呼ばれ万葉集にも歌われている。

★道の辺の うまらの末(うれ)に 這(は)ほ豆の からまる君を はなれか行かむ/丈部鳥(はせつかべのとり)万葉集巻二十 4352

野薔薇は、シューベルトの歌曲で知られているが、与謝蕪村が好んで俳句に詠んでいる。蕪村の句は読んで非常に新しい感じがした。山裾の崖、河原の藪に絡むように育っているが、花は、一面に白い花が咲いて、可憐である。

◇生活する花たち「野茨・ひとりしずか・ふたりしずか」(東京白金台・自然教育園)

5月7日

★白ばらの空気を巻いていて崩る  正子
白ばらの正に絢爛と盛りある咲きよう。空気の中に広がり、否、大きく巻き込んで濃密な一体となって在り、この期を逃せばあとはただ崩れ去るのみ。(小西 宏)

○今日の俳句
蒲公英の花せめぎあい光りあい/小西 宏
蒲公英が明るい日差しの中に、びっしりの咲いている様子。一つ一つの花は可憐でありながら、せめぎあうほどの花の力。せめぐだけでなく、また、互いに光りあっている。確かな目である。(高橋正子)

○ジャーマンアイリス(ドイツアヤメ)

[ジャーマンアイリス/横浜市都筑区ふじやとの道] 

★ドイツアヤメ咲く青年のジョギング/高橋信之
★学ぶ卓ドイツあやめの香が届き/仙石君子

ドイツアヤメ (Iris germanica) はアヤメ科アヤメ属の植物の一種。別名のジャーマンアイリスで呼ばれることが多い。本種は、アヤメ属の植物を交雑して作出されたもので野生のものはない。1800年代の初期にドイツ、フランスで品種改良され、その後、アメリカが多数の品種を出している。花期は5 – 6月ごろである。

◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

5月6日

★明け初めし空の丸さよ柿若葉  正子
煌々と明るくなる前の夜明けの空なので、丸く感じたのでしょう。柿若葉が春のやわらかで丸さを感じる空を引き立てて感じせてくれます。 (高橋秀之)

○今日の俳句
ヨットの帆きらめく海に高々と/高橋秀之
「きらめく」、「高々」の言葉が、ヨットの浮かぶ海の光景に高揚する気持ちをよく述べている。(高橋正子)

○芹の花

[芹の花/横浜市都筑区緑道ふじやとの道(左:2012年5月1日・右:2014年4月15日)] 

◆ご挨拶/端午ネット句会(句会主宰:高橋正子)◆


端午ネット句会にご参加いただき、ありがとうございました。参加者は14名で42句の投句が揃いました。入賞のみなさまおめでとうございます。また、いつもながら、選とコメントをありがとうございました。コメントをいただけると、大変うれしいもので、励みになります。
今年は、閏月のせいで、5月5日が立夏となりました。鯉のぼりが泳ぎ、菖蒲湯につかり、日中は汗ばむほどの天気でした。投句にもありましたように、まさに、「夏は来ぬ」です。どの季節も新しい季節の到来は新鮮でいいものですが、特に今は花もたくさん咲き、天気もさわやかで、素晴らしい季節だと思います。この季節を祝福したくなります。
管理運営は信之先生にお世話になりました。また、今回は、わたくしの目が少し不調(ドライアイとアレルギー)で、挨拶に至るまで、いつもより時間がかかってしまいました。これで、端午ネット句会を終わります。次回の月例ネット句会を楽しみに、ご健吟ください。

(金銀銅賞の皆様には、ささやかながら、わたくしの俳句はがきと上島祥子さん寄贈の和紙のシールをお送りしたいと思っています。)

◆入賞発表/端午ネット句会◆


■2016年端午ネット句会■
■入賞発表/2016年5月5日

【金賞】
★パレードの青き空飛ぶ夏つばめ/佃 康水
青空の下をにパレードの行進がほがらに進む。夏が来たばかりの青い空をつばめがパレードをかすめるように飛ぶ。浮き浮きする光景だ。(高橋正子)

【銀賞2句】
★大空に雲なき朝の鯉のぼり/高橋秀之
朝の大空には雲が一つもなく、鯉のぼりがさわやかに泳いでいる。おおらかで、さっぱりとした句だ。その句意は、そのまま男の子にも望みたい精神だ。(高橋正子)

★菖蒲の葉八百屋のバケツに青々と/高橋句美子
八百屋に、端午の節句用の菖蒲が青々と売られている。菖蒲を売るための入れ物は、バケツで間に合わせているが、菖蒲とバケツの取り合わせが庶民的で、誰もが、邪気を払い健康を願うにふさわしい。(高橋正子)

【銅賞3句】
★盛り上がりもりあがり咲くモッコウバラ/祝恵子
モッコウバラは、棘がなく、小さな可憐なクリーム色の花を咲かせる優しい花だ。白い花もあるが、どちらの花も旺盛に蔓をのばし、花を「もりあがる」ようにつけて美しい。旺盛な花の生命力は、やはり、夏のものだ。(高橋正子)

★鯉幟尾をつかまんと子ら跳ねる/廣田洋一
鯉幟を立ててもらった子らは、風に泳ぐ鯉幟の尾を捕まえようと、飛び跳ねる。吹かれれば吹かれるほど、しっぽを掴みたくなるのだ、子供だ。鯉幟に無邪気に遊ぶ子らが健やかだ。(高橋正子)

★ポケットに豌豆ずっしり持ち帰る/井上治代
畑に植えた豌豆が収穫できるようになった。少し摘むつもりだったのだろうが、たくさん莢を付けた豌豆をついつい摘んで、エプロンのポケットだろうか、「ずっしり」となるほど摘んで持ち帰った。うれしい収穫だ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★せせらぎにカエル探して子らの声/河野啓一
一昔前は普通の光景だったですが、今は珍しい光景となりました。自然の風情を思い出しました。(高橋秀之)
さらさらと流れる川で遊んでいる子ども達。「カエル見ーつけた」と言っている明るい声が青空へ響いています。この子ども達の未来が明るく輝いてほしいと思いました。(井上治代)

★鯉幟尾をつかまんと子ら跳ねる/廣田洋一
幼稚園か保育園でしょうか。節句の行事でのほほえましい光景が目に浮かぶようです。 (河野啓一)

★盛り上がりもりあがり咲くモッコウバラ/祝恵子
★綱張って吹かれ吹かれる鯉のぼり/高橋正子
★大空に雲なき朝の鯉のぼり/高橋秀之
★菖蒲の葉八百屋のバケツに青々と/高橋句美子
★ポケットに豌豆ずっしり持ち帰る/井上治代

【高橋正子特選/7句】
★菖蒲の葉八百屋のバケツに青々と/高橋句美子
つんと伸びた青々とした菖蒲の葉、店先で私も見かけました。 (祝恵子)

★雨粒を抱きてばらの咲きはじむ/祝恵子
ばらの種類は様々で色彩的にも豪華なものが多いですね。雨粒を抱けばそのばらの色を透かせて、瑞々しくまた美しく真珠の様に光っています。これからがばらの最盛期となり楽しみですね。(佃 康水)
薔薇に限らず、花は咲く前に大きく膨らむ。その時に降った雨粒を抱いて弾きながら開花する瞬間を切り取った美しい句です。 (廣田洋一)

★あやめ直立して遠からず近からず/高橋信之
あやめは緑色の剣状の葉の間から40~50センチの茎を伸ばして紫や白の花を咲かせますが、花茎が長いので直立している様にも見えます。恐らく手入れが行き届いた場所と思われますので、むやみに近づくことも出来ない。しかし鑑賞するには程ほどの距離に有って、さぞ美しいあやめをご覧になられたことでしょう。(佃 康水)

★玉ねぎの香りとともに掘り起こす/古田敬二
新玉ねぎの収穫の時期になって参りました。掘り起こすと玉ねぎ独特の香りがして、元気になる様な気が致します。私たちにとっても玉ねぎは貯蔵も効くので年間を通しての貴重な食品です。掘り起こす玉ねぎの香りに収穫の喜びが伝わって参ります。(佃 康水)

★大空に雲なき朝の鯉のぼり/高橋秀之
★パレードの青き空飛ぶ夏つばめ/佃 康水
★ポケットに豌豆ずっしり持ち帰る/井上治代

【入選/8句】
★あちこちにゆったり泳ぐ鯉のぼり/迫田和代
あちらこちらに鯉のぼりがゆったりと泳ぎ、さわかかな天気がつづく。日本な日本に子供たちがすくすく育つことを願う。(高橋正子)
俳句のお蔭であちこちの鯉のぼりがゆったりと泳いでいるのが目に入り嬉しくなりますね。子供たちの元気な成長を願うばかりです。作者の平穏な温かい眼差しが見えて参ります。(佃 康水)

★夏は来ぬ瀬戸に白帆のつぎつぎと/河野啓一
新緑の心地よい季節に南風が緑の上、水の上を渡って匂うような爽やかな瀬戸の海を白い帆に風をいっぱいに含んだヨットが次々に走っている素敵な景ですね。(小口泰與)
丘から見下ろす瀬戸内海。どこからともなくヨットが次々に増えて浮かぶ。青空と紺碧の瀬戸内海の初夏の風景が鮮やか。 (古田敬二)

★筍の柔らかさ噛み母の味/高橋句美子
昨日我が家は筍ごはんだったが旬を味わいました。お母さんの炊かれた筍の味をなつかしく思い出されているのだろう。初夏の季語に筍が効いていると思いました。(満天星)

★つる薔薇の翳なす庭に茶の用意/高橋正子
手入れの行き届いたつる薔薇でしょうか?フェンスに這わせ,可愛い花のアーチ等もよく見かけます。沢山の花で翳をなしている庭に、「どうぞゆっくり観て下さい」とおもてなしのお茶まで用意して有るのでしょうか?花を大事にされる心豊かな住人に、見せて頂く側の人達も心が温まります。(佃 康水)

★眠き児へ父膝枕こどもの日/ 佃 康水
こどもの日の家族そろってお出掛けの光景であろうか?電車、バスの中でも子供は眠たくなり、父親がそっと膝枕のようである。子供にとってお父さんの優しい想い出となる事でしょう。 (桑本栄太郎)

★菖蒲葺く軒の低さよ藁の屋根/ 桑本栄太郎
端午の節句に、屋根に菖蒲の葉をたばねて載せて厄除け祈念すると聞いたことがありますが、藁葺きの低い屋根であってこそなのですね。古来の風習の由来を有り難く納得できました。(河野啓一)

★はこべらに子山羊の瞳めんこいよ/小口泰與
春から初夏にかけて野山でスキップでもしている気分にさせられます。童謡を歌っているような愉しい一句です。(河野啓一)

★ブラシの花が赤く咲き夏は来ぬ/谷口博望(満天星)
ブラシの花は、目にしたことのない方が多いかもしれないが、試験管ブラシのような形状の赤い花で、南国の雰囲気が漂う。青空にこの花が揺れるとと「夏は来ぬ」という思いになる。(高橋雅子)

■選者詠/高橋信之
★水芭蕉の白の世界へためらい入る
昔、北海道網走湖畔で野道を歩いていて水芭蕉の群落に出合いました。その時の詩情と感激を想い出しました。まさに「ためらい入る」という気持ちで、自然の素晴らしさと秘やかさに畏敬の念を抱きます。(河野啓一)

★あやめ直立して遠からず近からず
あやめは緑色の剣状の葉の間から40~50センチの茎を伸ばして紫や白の花を咲かせますが、花茎が長いので直立している様にも見えます。恐らく手入れが行き届いた場所と思われますので、むやみに近づくことも出来ない。しかし鑑賞するには程ほどの距離に有って、さぞ美しいあやめをご覧になられたことでしょう。(佃 康水)

★寺苑に咲いているあやめの縞模様

■選者詠/高橋正子
★つる薔薇の翳なす庭に茶の用意
手入れの行き届いたつる薔薇でしょうか?フェンスに這わせ,可愛い花のアーチ等もよく見かけます。沢山の花で翳をなしている庭に、「どうぞゆっくり観て下さい」とおもてなしのお茶まで用意して有るのでしょうか?花を大事にされる心豊かな住人に、見せて頂く側の人達も心が温まります。(佃 康水)

★薔薇垣の二軒に早き朝が来る
★綱張って吹かれ吹かれる鯉のぼり

■互選高点句
●最高点句(6点)
★09. 夏は来ぬ瀬戸に白帆のつぎつぎと/河野啓一

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

5月5日

★葉桜の蔭は家居のごと安し  正子

○今日の俳句
鯉のぼり仲良く泳ぐ水鏡/上島祥子
田水が張られ、その近くに民家があるのか。ま鯉、ひ鯉、子供の鯉とそろって吹かれている様が水に映って気持ちよさそうだ。(高橋正子)

○今日はこどもの日。小学校2,3年生のときのこどもの日、を思い出した。

こどもの日

山へのぼろう
こどもの日に
山つつじが赤く咲く岬の山へ
かあさんたちが
つくってくれた
ばらずしをもって

山から海を見ようよ
少女たち
子もりのふうちゃんが
炭鉱のある九州へひっこっして行った海を
赤い髪の小さいけんちゃんが
手をふってブラジルへ行った海を

そうして
海のむこうから来る船が
正午に鳴らす汽笛を聞こうよ
目をこらせば
きっとわかるんだよ

○薔薇(ばら)

[薔薇/横浜日吉本町(2012年5月18日)] [薔薇/横浜・港の見える丘公園(2010年5月17日)] 

◆端午ネット句会清記◆

2016年5月5日
■■端午ネット句会清記
14名42句

01. 父が居て母が居てこそこどもの日
02. 菖蒲葺く軒の低さよ藁の屋根
03. 八幡太郎義家風に旗めき幟立つ
04. こどもの日似顔絵飾る爺と婆
05. 九条は日本の宝こどもの日
06. ブラシの花が赤く咲き夏は来ぬ
07. せせらぎにカエル探して子らの声
08. まほろばの大和三山五月晴
09. 夏は来ぬ瀬戸に白帆のつぎつぎと
10. はこべらに子山羊の瞳めんこいよ

11. 絵本開け文字無き余白しゃぼん玉
12. 藤房や滂沱の雨のくさり樋
13. 盛り上がりもりあがり咲くモッコウバラ
14. 雨粒を抱きてばらの咲きはじむ
15. くじ引きの三等賞は朱のメダカ
16. 綱張って吹かれ吹かれる鯉のぼり
17. つる薔薇の翳なす庭に茶の用意
18. 薔薇垣の二軒に早き朝が来る
19. 水芭蕉の白の世界へためらい入る
20. あやめ直立して遠からず近からず

21. 寺苑に咲いているあやめの縞模様
22. 目の前をすっと飛び抜く初燕
23. 大空に雲なき朝の鯉のぼり
24. 葉桜の作る木陰で立ち話
25. まっすぐに伸びるを見てよと今年竹
26. 玉ねぎの香りとともに掘り起こす
27. 膨らめり鮮やか蔓にさやえんどう
28. 菖蒲の葉八百屋のバケツに青々と
29. 初夏の夕風に向かって散歩する
30. 筍の柔らかさ噛み母の味

31. 鯉幟尾をつかまんと子ら跳ねる
32. 子らの声久しく聞かぬ子供の日
33. 夏空に真白き壁の小田原城
34. パレードの青き空飛ぶ夏つばめ
35. ボート乗せ瀬戸ゆく船や夏来る
36. 眠き児へ父膝枕こどもの日
37. あちこちにゆったり泳ぐ鯉のぼり
38. 目も痛い鮮やかな新緑の中を行く
39. 雨もやみ朝日にひかる山笑う
40. 肱川の流れ豊かに夏は来ぬ
41. 子どもの日明るき声が木霊する
42. ポケットに豌豆ずっしり持ち帰る

※互選を開始してください。
①選句期間:5月5日(木)午後6時~午後9時
②入賞発表:5月6日(金)午前10時
③伝言・お礼等の投稿は、5月6日(金)午前10時~5月7(土)午前10時

5月4日

★天城越ゆ春の夕日の杉間より   正子
春の夕べ、天城峠を越えて旅をされたのでしょう。日が長くなりゆったりとした気持ちでもしかしたらトンネルを歩かれたのかもしれません。「天城」という地名が生きて、想像力をかきたててくれます。(多田有花)

○今日の俳句
山の名を呼びけり春の頂に/多田有花
春山の山頂から、あの山の名は何々、この山の名は何々と指さし呼んでみる。春山の頂からの眺めに心も柔らかに開放されたからだろうが、山への親しみがあって楽しいことだ。(高橋正子)

○山躑躅(やまつつじ)

[山躑躅/東京白金台・自然教育園] 

★つつじいけて其陰に干鱈さく女/松尾芭蕉
★百両の石にもまけぬつつじ哉/小林一茶
★近道へ出てうれし野の躑躅かな/与謝蕪村
★つつじ野やあらぬ所に麦畑/与謝蕪村
★死ぬものは死にゆく躑躅燃えてをり/臼田亜浪
★山つつじ照る只中に田を墾く/飯田龍太
★山躑躅そこを明るく道ありぬ/稲畑汀子
★けもの道明るく照らす山躑躅/minmin4221
★山の子となって遊べば山躑躅/高橋正子
★新緑をすずしくさせて山躑躅/高橋正子

 ヤマツツジ(山躑躅、学名:Rhododendron kaempferi)はツツジ科ツツジ属の半落葉低木。高さは1-5mになり、若い枝には淡褐色の伏した剛毛が密生する。葉は互生し、葉柄は長さ1-3mmになる。春葉と夏葉の別があり、春葉は春に出て秋に落葉し、夏葉は夏から秋に出て一部は越冬する。春葉は長さ2-5cm、幅0.7-3cmになり、卵形、楕円形、長楕円形、卵状長楕円形など形状や大きさに変化が多く、先は短くとがり先端に腺状突起があり、基部は鋭形、葉の両面、特に裏面の脈上に長毛が生える。夏葉は春葉より小型で、長さ1-2cm、幅0.4-1cmになり、倒披針形、倒披針状長楕円形で、先は丸く先端に腺状突起があり、基部はくさび形、葉の両面に毛が生える。
 花期は4-6月。枝先の1個の花芽に1-3個の花をつける。花柄は長さ3-4mmになり、花冠の筒はやや太く、色は朱色、まれに紅紫色、白色があり、径3-4cmの漏斗形で5中裂する。花冠の上側内面に濃色の斑点があり、内面に短毛が散生する。雄蘂は5本。花柱は長さ3-4cmになり無毛。果実は果で長さ6-8mmの長卵形で、8-10月に熟し裂開する。
 北海道南部、本州、四国、九州に分布し、低山地の疎林内、林縁、日当たりのよい尾根筋、草原などに生育する。日本の野生ツツジの代表種で、日本の野生ツツジでは分布域がもっとも広い。

◇生活する花たち「かきつばた・踊子草・おへびいちご」(東京白金台・自然教育園)

5月3日

★森奥のたんぽぽ大方は絮に  正子
春も深まる森奥の静けさの中、白い絮となるたんぽぽの群落がほっと心灯されるように目に浮かびます。やがて、か細いたんぽぽの絮も空中に飛び立ち、若葉萌えだす森の、新たな季節の訪れも感じさせてくれます。(藤田洋子)

○今日の俳句
真っ直ぐな銀杏並木のみな若葉/藤田洋子
真っ直ぐな銀杏並木の整然とした若葉に、気持ちが爽やかになる。「真っ直ぐな」に読み手の背筋も伸びる思いだ。整然としたなかにも「みな」という柔らかな音の語があって、若葉の柔らかさを感じさせてくれる。(高橋正子)

○花にら

[花にら/横浜日吉本町]

★足許にゆふぐれながき韮の花/大野林火
★おもてより裏口親し韮の花/水野節子
★花にらはいつも樹のそば垣のそば/高橋正子

 花にらは、春の季節感があるが、俳句の季語ではない。夏の季語の「韮の花」とは違う。ハナニラ(花韮、学名:Ipheion uniflorum (Lindl.) Raf.)は、APG植物分類体系第3版でヒガンバナ科(APG植物分類体系第2版ではネギ科古い分類のクロンキスト体系ではユリ科)に属するハナニラ属の多年草。イフェイオン、ベツレヘムの星とも呼ばれる。原産地はアルゼンチン。日本では、明治時代に園芸植物(観賞用)に導入され、逸出し帰化している。葉にはニラやネギのような匂いがあり、このことからハナニラの名がある。野菜のニラ(学名Allium tuberosum)とは同じ科の植物であるが、属が違うのであまり近縁とは言えない。球根植物であるが、繁殖が旺盛で植えたままでも広がる。鱗茎から10-25cmのニラに似た葉を数枚出し、さらに数本の花茎を出す。開花期は春で、花径約3cmの白から淡紫色の6弁の花を花茎の頂上に1つ付ける。地上部が見られるのは開花期を含め春だけである。 
 

◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)