★朴落葉空より吹かれ来て臥しぬ 正子
朴の木は高木で森や山路に見る事が出来ますが、恥ずかしながら朴落葉を今年初めて見ました。他の落葉の枯れ色に紛れず、その大きさが目立ちます。「空より吹かれて来て臥す」は高い木であること、また臥す(横たわる)と言えるほどに大きな葉で有る事が想像出来て朴落葉の詩情ある初冬の風景です。(佃 康水)
○今日の俳句
霜降の日松の菰巻き
菰巻きや縄目きりりと立ち揃い/佃 康水
新しい菰で幹を蒔かれ、縄をきりりと結んだ木は、風格が一段と増して見える。冬越しの準備が整い、気持ちが引き締まる思いだ。(高橋正子)
○山鳥兜(ヤマトリカブト、鳥兜・鳥頭・かぶと花)

[ヤマトリカブト/横浜・四季の森公園] [オクトリカブト/尾瀬ヶ原]
★今生は病む生なりき鳥頭(トリカブト)/石田波郷
★かぶと花手折りて何を恋ひゆくや/石原君代
★鳥兜毒持つことは静かなり/東金夢明
★オキシドール泡立ちており鳥兜/河村まさあき
★国境へ鳥兜の原広がりぬ/久保田慶子
横浜・四季の森公園
★鳥兜のむらさき優しこの森は/高橋信之
★鳥兜斜めがちにて色淡し/高橋正子
ヤマトリカブト(山鳥兜、学名:Aconitum japonicum)は、 キンポウゲ科トリカブト属の多年草。トリカブト属の中には、オクトリカブト、ミヤマトリカブト、ハコネトリカブトなどがあり、ヤマトリカブトは、オクトリカブトの変種で、中国原産。花の形が、舞楽のときにかぶる、鳳凰(ほうおう)の頭をかたどった兜に似ていることから「鳥兜」。また、山地に生える鳥兜なので「山~」となった。ふつう、「鳥兜」と呼ぶ場合は、この「山鳥兜」を指すようで、単なる「鳥兜」という名前の花はない。英名の”monkshood”は「僧侶のフード(かぶりもの)」の意。
トリカブト(鳥兜)の仲間は日本には約30種自生している。沢筋などの比較的湿気の多い場所を好む。花時には草丈90~130cmほどになる。茎は斜上することが多く、稀に直立する。 秋に、花茎の上部にいくつかの青紫色の長さ4cmほどの兜(かぶと)型の花をつける。花の色は紫色の他、白、黄色、ピンク色など。葉は大きさはいろいろあり、径7~12cmほどの偏円形ですが、3~5深裂(葉の基部近くまで裂けている)し、裂片はさらに細かく中~深裂(欠刻状の鋸歯)しているのが特徴で、見た目では全体に細かく裂けているように見える。
塊根を乾燥させたものは漢方薬や毒として用いられ、烏頭(うず)または附子(生薬名は「ぶし」、毒に使うときは「ぶす」)と呼ばれる。本来「附子」は、球根の周り着いている「子ども」のぶぶん、中央部の「親」の部分は「烏頭(うず)」、子球のないものを「天雄(てんゆう)」と呼んでいたが、現在は附子以外のことばはほとんど用いられていない。ドクウツギ、ドクゼリと並んで日本三大有毒植物の一つとされる。ヨーロッパでは、魔術の女神ヘカテーを司る花とされ、庭に埋めてはならないとされる。ギリシア神話では、地獄の番犬といわれるケルベロスのよだれから生まれたともされている。狼男伝説とも関連づけられている。富士山の名の由来には複数の説があり、山麓に多く自生しているトリカブト(附子)からとする説もある。また俗に不美人のことを「ブス」と言うが、これはトリカブトの中毒で神経に障害が起き、顔の表情がおかしくなったのを指すという説もある。10月13日の誕生花(鳥兜)、花言葉は「騎士道、栄光」(鳥兜)。
◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)

★秋海は青より銀に由比ヶ浜 正子
○今日の俳句
秋天に伸びゆくものの数多あり/多田有花
秋の天に高く伸びてゆくものを読み手はいろいろ想像する。鉄塔であったり、高層ビルであったり、聳える木であったり。秋天にある飛行機雲も。秋麗の日差し、空気、まさに「秋」がよく表現されている。(高橋正子)
○がまずみ

[がまずみの実/東京白金台・自然教育園]_[がまずみの花/東京白金台・自然教育園]
★がまずみや蓑虫切に糸縮め/殿村菟絲子
★がまずみの実を噛み捨てて語を継がず/瀬知和子
★がまずみを含みて道の遠きかな/斎藤玲子
★がまずみの白き花冴ゆ梅雨の入り/那須亀洞
★そぞのみの思い出多し山学校/大柳雄彦(宮城環境保全研究所)
11月に入っても、まだ十分に秋の気配が残り、過ごし易い日が続いている。そんなある日、近くにある国見峠の道ばたで、赤く熟したガマズミの実を啄ばむジョウビタキの姿が見られた。
遠い昔を思い起こし、その場で綴った駄作である。私が小学校に通っていたのは、昭和10年代の後半、つまり、太平洋戦争の真っ只中のこと。今とは違って塾などあるはずはなく、学校からの宿題もほとんどなかった時代である。当然ながら下校後の山学校は日課になっていて、気の合った者同志で色んな場所に出かけていった。とりわけ、晴天の日が続く晩秋の山学校は楽しく、かなり奥地の山林まで足を延ばし、クリを拾い、アケビやサルナシをもぎ取り、ガマズミやナツハゼの実をしゃぶるなどして、夢中になって過ごしたものである。しかし、つるべ落としのこの時期は、日の暮れるのが滅法早く、あわてて家路につくのは毎度のことで、時には、山の中にランドセルを忘れてきた苦い思い出もある。
「そぞのみ」は、本県で使われているガマズミの方言で、「よっずみ」と呼ぶ地方もある。里山地帯の至るところに生えている潅木で、紅葉も美しい。初夏に赤い実を枝一杯につけ、はじめは酸っぱいが、徐々に甘みを増していく。山林内での、賦存量はかなり多く、しかも手の届く高さで採取できるので、農村部の子供たちにとっては人気のある野生の食品である。(宮城環境保全研究所/仙台市青葉区八幡のホームページより)
ガマズミ(莢?、学名:Viburnum dilatatum)は、山地や丘陵地の明るい林や草原に生える落葉低木。樹高2-3m程度となる。若い枝は星状毛や腺点があってざらざらで、灰緑色。古くなると、灰黒色になる。葉は対生し、細かい鋸歯がある卵型から広卵形で10cm程度。表面には羽状の葉脈がわずかに出っ張り、凹凸がある。表面は脈上にだけ毛があるが、裏面では腺点や星状毛などが多い。花期は5-6月。白い小さい花の花序を作る。晩夏から秋にかけて3-5mm程度の果実をつけ、食用となる。果実は赤く熟し、最終的に晩秋の頃に表面に白っぽい粉をふき、この時期がもっとも美味になる。焼酎に漬けて果実酒にも利用する。また、丈夫でよく分枝するため、庭木として観賞用に植樹されることもある。
★がまずみの実赤し鳥の眼に吾に/高橋信之
がまずみの赤い実が楽しい。初夏に咲く白い花を、秋になっての青い実を思えばなお楽しい。(高橋信之)
◇生活する花たち「茶の花・柚香菊・実蔓(さねかずら)」(東京白金台・国立自然教育園)

★冷たさも露けさもスライスオニオン 正子
「スライスオニオン」に露けさをお感じになり、またそこに冷たさも味わわれて、晩秋の白さのようなものを造形なさいました。その澄明さに見とれ、句のリズムに聞き惚れます。(小西 宏)
○今日の俳句
蟷螂の路上を這える青きまま/小西 宏
秋になると蟷螂も枯れ色をしたのが眼に付く。ところが、路上に出てきた蟷螂がゆっくりとした動きだが、青きまま。「青きまま」が却ってあわれを誘う。(高橋正子)
○泡黄金菊(あわこがねぎく)

[泡黄金菊/東京白金台・国立自然教育園]
泡黄金菊(アワコガネギク)はキク科キク属の多年草である。本州の岩手県から九州の北部にかけて分布し、やや乾いた山麓や手などに生える。海外では、朝鮮半島や中国大陸にも分布している。和名の由来は、密集している花が泡のように見えることからきている。命名者は牧野富太郎博士である。
環境省のレッドリスト(2007)では、「現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては『絶滅危惧』に移行する可能性のある種」である準絶滅危惧(NT)に登録されている。レッドリストでは別名の菊谷菊(キクタニギク)が用いられている。これは、自生地(京都府菊谷)からきている名前である。
草丈は100センチから150センチくらいである。茎はよく枝分かれをする。葉の形は栽培菊に似ていて深い切れ込みがあり、裂片は尖らない。葉は互い違いに生える(互生)。開花時期は10月から11月である。頭花は舌状花も筒状花も黄色で、ひしめき合うように密につく。花径は15ミリから18ミリくらいと小さい。学名:Chrysanthemum boreale(=Dendranthema boreale)
◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

★金木犀こぼれし花もあたたかな 正子
小さな星のような花を枝に密集させている金木犀。そこからこぼれ落ちた花もまだ生き生きとしていて、明るさとあたたかさを持って地面で咲いているようです。(安藤智久)
○今日の俳句
花束を花瓶にほどく秋の夜半/安藤智久
花束をいただいた。帰り着いたのが夜となったのだろう。落ち着いてから、夜半に花束を花瓶に入れた。しっとりとした秋の夜半である。(高橋正子)
○泡黄金菊(あわこがねぎく)

[泡黄金菊/東京白金台・国立自然教育園]
泡黄金菊(アワコガネギク)はキク科キク属の多年草である。本州の岩手県から九州の北部にかけて分布し、やや乾いた山麓や手などに生える。海外では、朝鮮半島や中国大陸にも分布している。和名の由来は、密集している花が泡のように見えることからきている。命名者は牧野富太郎博士である。
環境省のレッドリスト(2007)では、「現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては『絶滅危惧』に移行する可能性のある種」である準絶滅危惧(NT)に登録されている。レッドリストでは別名の菊谷菊(キクタニギク)が用いられている。これは、自生地(京都府菊谷)からきている名前である。
草丈は100センチから150センチくらいである。茎はよく枝分かれをする。葉の形は栽培菊に似ていて深い切れ込みがあり、裂片は尖らない。葉は互い違いに生える(互生)。開花時期は10月から11月である。頭花は舌状花も筒状花も黄色で、ひしめき合うように密につく。花径は15ミリから18ミリくらいと小さい。学名:Chrysanthemum boreale(=Dendranthema boreale)
◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

★秋水湧く波紋をそのまま手にすくう 正子
秋の澄みきった湧き水、その清らかな波紋をそっと手にすくってみる。冷たい水に心洗われる心地である。 (祝恵子)
○今日の俳句
しりとりをしつつ帰る子秋の暮/祝恵子
女の子たちであろうか。秋の暮をきりもないしりとり遊びをしながら帰る子どもたちが、かわいらしく、ほほえましい。作者の子らへの眼差しがやさしい。(高橋正子)
○夕顔と夜顔について
今年は、朝は朝顔を夕べには夕顔を楽しもうと、「夕顔の種」と「朝顔の種」をコープに注文していた届いたのが、4月の終わりだった。朝顔は5月の連休に種を播くのを毎年の行事のようにしているが、今年はそれに、夕顔の種を何十年かぶりにそれに加えた。連休が来るのを待って、朝顔の種と夕顔の種を水に浸す。朝顔の茶褐色か黒かの種は早々に芽が出そうになった。夕顔は種に傷を入れて播くとよいらしいが、それをしなかったために、灰色の小粒の石のようなまま芽生える気配もない。朝顔はなんなく芽生えたが夕顔が芽生えたのはそれから2週間以上も経ってからではなかったか。夕顔の芽生えを心待ちにしている間、朝顔の本葉が4、5枚になったので、鉢とプランターに移植。朝顔はぐんぐんと生長し、予定通り、6月の終わりには蕾を付けた。
ところが、そのころ、ベランダに植えたもののいろいろと葉が枯れ始めた。紫蘇、バジル、ブルーベリー、ミニ薔薇、ベチュニア、シクラメンなど、何か病気の蔓延かもしれないと、もう、忘れるほどの数抜き捨てた。ミニ薔薇はテディベアという名で、何年も育てたのだが。ちょうど、息子が来たので話すと、それは水のやりすぎではないかという。小さい庭があるので、少々は植物の勉強をしているようだ。朝顔も例外ではなく、枯れかけたが、抜かずに水やりをセーブした。夕顔はそのうちに芽生えたが、芽生えるなり、葉が枯れかけている。種まき用ポットで枯れた葉を捨てつつ、大して伸びもしないが、伸びるままにしておいた。ベランダには、白妙菊と、なでしこ、ほととぎす、ゆきのした、アイビーセラニューム、ラベンダー、それにえんじ色の赤いボンボンのような花だけが残った。植木鉢は洗って臥せ、プランターは土を入れたまま、さっぱりとして夏が終わった。
以下続き。
○柚香菊(ゆうがぎく)

[柚香菊/東京小金台・国立自然教育園]
★花開ききったり柚香菊そこに/高橋信之
★花びらの欠けるかに咲き柚香菊/高橋正子
★やや寒し柚香菊の白を帯ぶ/〃
★茎すっと伸びて岐れて柚香菊/〃
★湖の縁にならんで柚香菊/高橋句美子
ユウガギク(柚香菊、学名:Kalimelis pinnatifida) は、キク科ヨメナ属の多年草で、やや湿性の高い場所に自生し、いわゆる「野菊」の仲間である。草丈50cmほどで、しばしば1mを越える。上部で花茎を分け、花期は6月下旬~11月、茎頂に径3cm前後の白から淡紫色の典型的なキク型の花をつける。葉は、幅3cmほど、長さ8cm前後の卵状長楕円形で、通常、葉縁に鋭く浅い切れ込みか、または羽状の中裂が入る。本州の近畿地方以北に分布し、関東地方以北に分布するカントウヨメナにとてもよく似ている。近年、シロヨメナをヤマシロギクの別名としたり、その逆としたり、シロヨメナとヤマシロギクを混同する記載が結構目立つ。シロヨメナとヤマシロギクはともにノコンギクの亜種だが、別種である。ヤマシロギクは東海地方以西に分布し、シロヨメナの分布は本州~九州・台湾である。シロヨメナはしばしばヤマシロギクとの間に雑種を作るのでこのような混同がおきているのかもしれない。「柚香菊」は、ユズの香りがするとの命名だが、葉を揉んでもユズの香りは確認できていない。
◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

★金木犀こぼれし花もあたたかな 正子
木の周りを取り囲み散り敷いている金木犀の花。咲いているときも引き寄せられるような温かさが、散った花にもおなじく幸せな色である。(祝恵子)
○今日の俳句
しりとりをしつつ帰る子秋の暮/祝恵子
女の子たちであろうか。秋の暮をきりもないしりとり遊びをしながら帰る子どもたちが、かわいらしく、ほほえましい。作者の子らへの眼差しがやさしい。(高橋正子)
○薬師草(やくしそう)

[薬師草/横浜・四季の森公園]
★森に咲く薬師という名の菊凛と/高橋信之
ヤクシソウ(薬師草、学名:Youngia denticulata)は、キク科オニタビラコ属の二年草。高さは30-120 cm。初期には根出葉があるが、花時にはほとんどなくなり、茎葉だけになる。茎葉は基部が張り出して茎を抱く。葉は互生し、長さ5-10 cm、幅2-5 cmの長楕円形-倒卵形。茎や葉を折ると苦味のある白い乳液を出す。花期は9-11月で枝の上部に直径1.5 cmほどの黄色い花を固まって咲かせる。花は上向きに開くが、花が終わると下向きになる。 和名の由来は不明であるとする説や、葉の形が薬師如来の光背に似ているとする説、かつて薬草(民間薬として皮膚の腫れものに外用)に使われたことによるとする説がある。中国名は「苦菜」。学名の「denticulata」は、「細歯のある」の意味である。
朝鮮半島・中国・台湾・インドネシア・ベトナム・インドなどと日本の北海道・本州・四国・九州・屋久島の日当たりのよい乾いた山野に生える。奥秩父や四国山地などの石灰岩、蛇紋岩地帯の岩壁にも分布する。新しく林道をつけた斜面の裸地に真っ先に侵入するパイオニア植物である。花の外観は同科のアキノノゲシやハナニガナなどに似ている。
◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)

★秋水湧く波紋をそのまま手にすくう 正子
静かに砂を動かしながら湧き出てくる泉。水面には柔らかな丸い波紋を作っている。その泉を静かに掬う。波紋を掬うという表現にユニークさを感じました。(古田敬二)
○今日の俳句
落日に白く光れる芒原/古田敬二
いよいよ日が落ちようとすると、芒原が一面に白く輝く。やわらかい、白い光の美しさが侘しさを伴って広がる景色がよい。(高橋正子)
○花蓼(ハナタデ)

[花蓼/東京小金台・国立自然教育園]_[犬蓼/横浜市港北区松の川緑道]
★犬蓼の花くふ馬や茶の煙 子規
★赤のまま摘めるうまごに随へり 亞浪
★山水のどこも泌み出る赤のまま 汀女
★われ黙り人話しかくあかのまま 立子
★水際の赤のまんまの赤つぶら/高橋正子
★白花の蓼が群れ咲く水ほとり/高橋信之
★それぞれが群れ赤い蓼白い蓼/高橋正子
タデ(蓼、英語: water pepper)は、タデ科イヌタデ属の1年草。単にタデと言う場合は、ヤナギタデ(柳蓼、学名: Persicaria hydropiper)を指す。「蓼食う虫」の蓼もヤナギタデである。和名は、葉がヤナギに似ていることから。特有の香りと辛味を持ち、香辛料として薬味や刺身のつまなどに用いられる。野生の紅タデがもっとも辛く、栽培種の青タデは辛さが少ない。辛味成分はポリゴジアール。タデの葉をすりつぶして酢でのばしたものはタデ酢と呼ばれ、アユの塩焼きに添えられる。品種としては、柳タデ(本タデ)、紅タデ、青タデ、細葉タデなどがある。食用タデについては、福岡県朝倉市で日本国内生産の約7割を占める。ベトナムでは付け合わせとしてよく食べられている。
イヌタデ(犬蓼、Polygonum longisetum あるいは Persicaria longiseta)は、タデ科の一年草。道ばたに普通に見られる雑草である。茎の基部は横に這い、多く枝分かれして小さな集団を作る。茎の先はやや立ち、高さは20-50cm。葉は楕円形。秋に茎の先端から穂を出し、花を密につける。花よりも、その後に見られる真っ赤な果実が目立つ。果実そのものは黒っぽい色であるが、その外側に赤い萼をかぶっているので、このように見えるものである。赤い小さな果実を赤飯に見立て、アカマンマとも呼ばれる。雑草ではあるが、非常に美しく、画材などとして使われることもある。名前はヤナギタデに対し、葉に辛味がなくて役に立たないために「イヌタデ」と名付けられた。
シロバナサクラタデ(白花桜蓼、学名:Persicaria japonica)は、タデ科イヌタデ属の多年草。北海道~九州の湿地に生え、根茎は地中で長くのび、枝を分けてふえる。茎は直立し、高さは30~100cmになり、紅色を帯びる節がある。葉は披針形。鞘状の托葉は長さ1~2.5cmで、粗い伏毛があり、縁には長毛が生える。枝先に花序を1~5本出し、花を多数つける。花被は白色で腺点があり、長さ3~4mm。雄しべは普通8個、雌しべは1個で花柱は2~3岐。花には長花柱花と短花柱花との2型がある。そう果は3稜形またはレンズ状で黒色で光沢がある。花期は8~10月。よく似たサクラタデは花被が長さ5~6mmと大きい。
◇生活する花たち「茶の花・柚香菊・実蔓(さねかずら)」(東京白金台・国立自然教育園)

★炊きあげし飯盒をすぐ露の土へ 正子
高原の飯盒炊爨でしょうか。炊き上がった飯盒を火から下して土の上に置き蒸らす。地にはまだ朝露が乾かずにいる。明るい光と爽やかな空気と薪の煙の臭いを思い浮かべます。(小西 宏)
○今日の俳句
月昇る遥かに海を広げつつ/小西 宏
「海を広げつつ」に、新鮮な驚きがあり、臨場感がでた。月が昇るにしたがって、遥かの海を照らしていく。海の波がはっきり見てくる。少し寂しい月の夜である。(高橋正子)
○実蔓(さねかずら)

[実蔓/東京白金台・国立自然教育園]
★葉隠れに赤き鹿の子の実蔓/かるがも
★葉隠れに息飲む色の実蔓/かるがも
サネカズラ(実葛、学名: Kadsura japonica)はマツブサ科サネカズラ属の常緑つる性木本。ビナンカズラ(美男葛)ともいうが、これは昔、つるから粘液をとって整髪料に使ったためである。葉は長さ数cmでつやがあり、互生する。ふつう雌雄異株で、8月頃開く花は径1cmほど、10枚前後の白い花被に包まれ、中央におしべ、めしべがそれぞれ多数らせん状に集まる。雌花の花床は結実とともにふくらみ、キイチゴを大きくしたような真っ赤な丸い集合果をつくる。花は葉の陰に咲くが、果実の柄は伸びて7cmになることもあり、より目につくようになる。単果は径1cmほどで、全体では5cmほどになる。果実は個々に落ちて、あとにはやはり真っ赤なふくらんだ花床が残り、冬までよく目立つ。
関東地方以西、西日本から中国南部までの照葉樹林によく見られる。庭園に植えることもある。盆栽として栽培もされる。果実を漢方薬の五味子(チョウセンゴミシ)の代わりに使うこともある。古歌にもしばしば「さねかづら」「さなかづら」として詠まれ、「さ寝」の掛詞として使われる。
名にし負はば 逢坂山のさねかづら 人に知られで くるよしもがな(藤原定方、百人一首25/後撰和歌集)
◇生活する花たち「秋の野芥子・銀木犀・金木犀」(横浜日吉本町)

グレコ展
★秋光あおあおと浴び「水浴の女」 正子
秋の日射しが燦々とそそぐ野外の木洩れ日の中の光景でしょうか?エル・グレコの洋画に特有である、日射しの色を青を基調とした濃淡による表現の格調の高さが想われます。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
鈴懸けの実の青空へ野分過ぐ/桑本栄太郎
鈴懸と野分のとりあわせに意外性があるが、それは今年の季節の意外性といってよい。今年は十月になっても大型台風が来た。野分が過ぎた後、鈴懸の葉が落とされ、実が明らかになる。青空の中の鈴懸のかわいらしい実が印象的だ。(高橋正子)
○柘榴(ざくろ)
[柘榴/横浜日吉本町][柘榴の花/横浜日吉本町]
★石榴赤しふるさとびとの心はも 虚子
★柘榴の実一つ一つに枝垂れて 石鼎
★なまなまと枝もがれたる柘榴かな 蛇笏
★かたくなに開かぬ小さき柘榴かな 淡路女
★光こめて深くも裂けし柘榴かな 水巴
★熟れざくろ濃き朝霧を噛んでゐし 鷹女
★花散りて甕太りゆく柘榴かな 久女
★熟れそめて細枝のしなふ柘榴かな 麦南
★一粒一粒柘榴の赤い実をたべる 亞浪
★身辺に割けざる石榴置きて愛づ 誓子
★ぼんやりと出で行く石榴割れしした 三鬼
★号令の無き世柘榴のただ裂けて 草田男
★柘榴の実弾け夕日を宿したる/高橋正子
「柘榴の実」を詠んで、「夕日を宿したる」と観た。観照がよく、実感のある句だ。(高橋信之)
ザクロ(石榴、柘榴、若榴、学名: Punica granatum)とは、ザクロ科ザクロ属の落葉小高木、また、その果実のこと。庭木などの観賞用に栽培されるほか、食用としても利用される。ザクロ科(学名: Punicaceae)は、ザクロ属(学名: Punica)のみからなる。また、ザクロ科の植物は、ザクロとイエメン領ソコトラ島産のソコトラザクロ(Punica protopunica)の2種のみである。葉は対生で楕円形、なめらかでつやがある。初夏に鮮紅色の花をつける。花は子房下位で、蕚と花弁は6枚、雄蕊は多数ある。果実は花托の発達したもので、球状を呈し、秋に熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が無数に現れる。果肉一粒ずつの中心に種子が存在する。ザクロの食用部分である種衣は種子を覆う形で発達する。
ザクロには多くの品種、変種があり一般的な赤身ザクロのほかに、白い水晶ザクロや果肉が黒いザクロなどがあり、アメリカ合衆国ではワンダフル、ルビーレッドなど、中国では水晶石榴、剛石榴、大紅石榴などの品種が多く栽培されている。日本に輸入され店頭にしばしば並ぶのはイラン産、カリフォルニア州産が多く、輸入品は日本産の果実より大きい。原産地については、トルコあるいはイランから北インドのヒマラヤ山地にいたる西南アジアとする説、南ヨーロッパ原産とする説およびカルタゴなど北アフリカ原産とする説などがある。世界各地で栽培されており、日本における植栽範囲は東北地方南部から沖縄までである。日当たりが良い場所を好む。若木は、果実がつくまでに10年程度要する場合もある。病虫害には強いがカイガラムシがつくとスス病を併発する場合がある。
新王国時代にエジプトに伝わり、ギリシア時代にはヨーロッパに広く伝わったとされる。東方への伝来は、前漢の武帝の命を受けた張騫が西域から帰国した際に、パルティアからザクロ(安石榴あるいは塗林)を持ち帰ったとする記述が『証類本草』(1091年-1093年)以降の書物に見られるため、紀元前2世紀の伝来であるとの説があるが、今日では3世紀頃の伝来であると考えられている。日本には923年(延長元年)に中国から渡来した(9世紀の伝来説、朝鮮半島経由の伝来説もある)。
◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

★足先がふっと蹴りたる青どんぐり 正子
熟したどんぐりは弾んだり転がったりと元気が良い。しかし風の強い日などに落ちてきたのだろうか、まだ未熟な「青どんぐり」にもこころ惹かれる。その青どんぐりを見てふっと足先が蹴ったと言うその動きそのものに若さをそして深まりゆく秋を楽しんで居られる作者が見えて参ります。(佃 康水)
○今日の俳句
ゆきあいの空へコスモス揺れどうし/佃 康水
「ゆきあいの空」がなんともよい。夏から秋へと移りゆく空にコスモスゆれどおしている。そんな空に明るさと夢がある。(高橋正子)
○白嫁菜(しろよめな)
[白嫁菜/東京白金台・国立自然教育園]_[野菊(嫁菜)/横浜市港北区松の川緑道]
★撫子の暑さ忘るる野菊かな 芭蕉
★頂上や殊に野菊の吹かれをり 原石鼎
横浜日吉・慶大グランド
★サッカーの練習熱帯ぶ野菊咲き/高橋正子
いわゆる「野菊」の仲間です。主として林縁などの半日陰になるような場所に自生する多年草です。 草丈50cm前後、しばしば1m近くになります。上部で花茎を分け、初秋から秋の初めまで、茎頂で花茎を分けて径1.5~2cm前後のやや小さい白色のキク型の花を皿型(散房状)につけます。葉は、長さ10cmほどの長楕円形で葉先は鋭三角形です。葉には粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。名は「ヨメナ」ですが「ヨメナ属」ではなく「シオン属」です。ノコンギク(Aster ageratoides)の亜種(subsp. leiophyllus)とされています。ヨメナを小型にしたような草姿で、花色が白いので「シロヨメナ」となったようです。
野菊といえば伊藤左千夫の小説「野菊の墓」を想いだす方が多いと思います。政夫と民子の悲恋を描いたこの小説には「政夫さん……私野菊の様だってどうしてですか」「さぁどうしてということはないけど、民さんは何がなし野菊の様な風だからさ」
「それで政夫さんは野菊が好きだって……」「僕大好きさ」といった場面があります。この野菊は、小説の舞台が現在の千葉県松戸市あたりであったことからカントウヨメナ、ユウガギク、ノコンギク、リュウノウギクあるいはシラヤマギクなどであったと思われます。不幸なめぐり合わせの末に世を去った民子の墓のまわり一面に植えられたことを思うと、心情的にはノコンギクがふさわしいのでは、と勝手に思っています。 ただ、現在は、民雄が野菊を摘んだのが小川のそばであったことから、やや湿性の高い場所に自生するカントウヨメナあるいはユウガギクであるとする説が有力です。
万葉集では、「うはぎ」の名で2首が「ヨメナ」を詠っているとされています。そのひとつに、「春日野に 煙立つ見ゆ 娘子(おとめ)らし 青野のうはぎ 摘みて煮らしも」と詠われています。ただし、この2首では「春の若菜摘み」の対象であって、花を愛でたものではないようです。ただ、カントウヨメナ、ユウガギク、ノコンギク、シラヤマギクやシロヨメナなどよく似た野菊の仲間が万葉当時に明確に区別されていたとは言えないという説もあり、広く野菊の仲間を詠ったものであるという考え方もあります。
なお、一般に「菊」と呼ばれる種類は奈良時代に中国から薬用に渡来したとされ、現代でも多くの品種が栽培されています。「野菊」の総称は、花が大きく彩りも多様な「菊」に対して、日本の山野に自生するキクの仲間を「野にある菊」としたもののようです。また「菊」は、「古今和歌集」の「菊の露」や「紫式部日記」の「菊の着せ綿」など、キクを災除けや不老長寿にかかわる行事に用いたという記述があります。なお、江戸時代には「菊」の品種改良が盛んになり、数多くの品種が作出されています。
シロヨメナ、シラヤマギクやノコンギクはシオン属で、カントウヨメナやユウガギクはヨメナ属で別属ですが、これらの属は種子の冠毛の長さで区別するので、専門家でないと区別は困難です。ヨメナ属では冠毛は0.5mm前後ですが、シオン属では冠毛は5mm前後です。
◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)
