3月25日(土)

font size=”3″>★春の蕗提げしわれにも風が付く  正子
蕗は手折る時から或いは提げた時から香しい匂が漂ってきます。蕗を手にされた作者は主婦として色々なお料理を思い浮かべ「何を作ろうか?」などと楽しんで居られる姿を思い浮かべます。蕗のあの独特な風味、食感が味わえる美味しいお料理が食卓に並ぶ事でしょう。(佃 康水)

○今日の俳句
チェロの夕果てて仰げば春の月/佃 康水
チェロの演奏会が果て、余韻を引いて外に出れば春の月が出ている。「秋の月はさやけさを賞で、春の月は朧なるを賞づ」と言われるが、「澄んであたたかい感じ」の春月もよい。チェロの余韻が広がる。(高橋正子)

○蘆の芽・蘆の角・葦牙(アシカビ)

[蘆の芽/横浜・四季の森公園(2013年3月21日)]

★日の当る水底にして蘆の角/高浜虚子
★曳船やすり切つて行く蘆の角/夏目漱石
★舟軽し水皺よつて蘆の角/夏目漱石
★ややありて汽艇の波や蘆の角/水原秋櫻子
★さざ波の来るたび消ゆる蘆の角/上村占魚
★水にうく日輪めぐり葦のつの/皆吉爽雨
★蘆の芽や志賀のさざなみやむときなし/伊藤疇坪
★捨舟の水漬く纜葦の角/中村みづ穂

★葦の角水面かがやき通しけり/高橋正子
★葦芽ぐみ寂しさこれで終わりけり/高橋正子
★ふるさとに芦の川あり葦角ぐむ/高橋正子

日本のことを、「豊葦原瑞穂の国」といい、葦は国生みのころの日本の国土を象徴するような植物だったのだろう。

 ヨシまたはアシ(葦、芦、蘆、葭、学名: Phragmites australis)は、イネ科ヨシ属の多年草。「ヨシ」という和名は、「アシ」が「悪し」に通じるのを忌んで(忌み言葉)逆の意味の「良し」と言い替えたのが定着したものであるが、関東では「アシ」、関西では「ヨシ」が一般的である。標準和名としては、ヨシが用いられる。これらの名はよく似た姿のイネ科にも流用され、クサヨシ、アイアシなど和名にも使われている。3 – 4の種に分ける場合があるが、一般的にはヨシ属に属する唯一の種とみなされている。日本ではセイコノヨシ(P. karka (Retz.) Trin.)およびツルヨシ(P. japonica Steud.)を別種とする扱いが主流である。
 条件さえよければ、地下茎は一年に約5m伸び、適当な間隔で根を下ろす。垂直になった茎は2 – 6mの高さになり、暑い夏ほどよく生長する。葉は茎から直接伸びており、高さ20 – 50cm、幅2 – 3cmで、細長い。花は暗紫色の長さ20- 50cmの円錐花序に密集している。
 古事記の天地のはじめには最初の二柱の神が生まれる様子を「葦牙のごと萌えあがる物に因りて」と書き表した。葦牙とは、葦の芽のことをいう。その二柱の神がつくった島々は「豊葦原の千秋の長五百秋の水穂の国」といわれた。これにより、日本の古名は豊葦原瑞穂の国という。更級日記では関東平野の光景を「武蔵野の名花と聞くムラサキも咲いておらず、アシやオギが馬上の人が隠れるほどに生い茂っている」と書き残し、江戸幕府の命で遊郭が一か所に集められた場所もアシの茂る湿地だったため葭原(よしはら)と名づけられ、後に縁起を担いで吉原と改められた。

◇生活する花たち「山桜・やまるりそう・すみれ」(東京白金台・自然教育園)

3月24日(金)

font size=”3″>★片栗の花と光とせめぎあう  正子
片栗の花は日中に花に日が当たると、花被片が開き反り返り、日差しがない日は終日花が閉じたままであるそうです。まさに花と光がせめぎあい、春の日差しのありがたさを感じさせてもらえるようです。 (高橋秀之)

○今日の俳句
左胸に花を挿したる卒業生/高橋秀之
卒業生の左胸を飾る花。卒業を祝う花を一人一人が付けてもらって、誇らしく卒業してゆく。皆の祝意の籠った花だ。(高橋正子)

○連翹(れんぎょう)

[連翹/横浜日吉本町] 

★連翹や真間の里びと垣を結はず/水原秋桜子
★連翹の一枝づつの花ざかり/星野立子
★連翹のこぼれもあへぬ別れかな/中川宋淵
★連翹の黄が咲き誇るアジアの端/高橋正子

  レンギョウ(連翹)とは、広義にはモクセイ科レンギョウ属(学名: Forsythia)の総称(それらから品種改良で作られた園芸品種をも含める)。狭義には、レンギョウ属の種の一つ、学名 Forsythia suspensa の和名を指す。一般には広義の意味で称されることが多い。
 狭義のレンギョウ(連翹、学名: Forsythia suspensa (Thunb.) Vahl)は、モクセイ科レンギョウ属の落葉性低木広葉樹。別名、レンギョウウツギ(連翹空木)。古名は、いたちはぜ、いたちぐさ。中国名は黄寿丹。英名はゴールデンベル (golden bells, golden bell flower)。種小名の suspensa は、枝が“垂れる”意味である。雌雄異株。
 繁殖力が旺盛で、よく繁る。樹高は1 – 3mまで育ち、半つる性の枝は湾曲して伸び下に垂れ、地面に接触すると、そこからも根を出し新しい株ができる。枝は竹のような節を持つ。また、枝の髄が早期に消失するため、節の部分を除いて中空になる(このことから“空の木”、レンギョウウツギ(連翹空木)という別名が付いた。この呼称は最初、本来の連翹(トモエソウ)との誤用に気付いた時、区別するために使われた)。まだ葉が芽吹く前の早春(3 – 4月頃)、2 – 3cmの黄色い4弁の花が、細い枝に密に多数開く。その花が咲き終わる頃、入れ違うかのように今度は、緑色の葉(長さ3 – 10cm、幅2 – 5cmの長卵型。葉先は鋭尖で、葉縁にまばらな鋸歯がある)が対生に芽吹き、それが秋になると濃緑色、概憤色(くすんだ黄緑色)、紫色と順に変色し、最後に落葉する。付いた果実は漢方薬として用いられる。中国原産。日本への渡来は古く、『出雲風土記』や『延喜式』にもレンギョウの名前が見られる(薬用として平安時代初期に渡来したといわれているが、実際に渡来した時期は定かではなく、江戸時代前期に栽培の記録があることから、江戸時代だという説もある)。
 4月2日は彫刻家・詩人の高村光太郎(1883年 – 1956年)の命日で、これを連翹忌とも呼ぶ。これは、高村が生前好んだ花がレンギョウであり、彼の告別式で棺の上にその一枝が置かれていたことに由来する。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)

3月23日(木)

★雪割草のひらく時きて日があふる  正子
日が当たり、 小さな花の雪割草が咲きだしました。可憐な花の誕生です。(祝恵子)

○今日の俳句
少年の釣りし春鯉リリースす/祝恵子
少年の初々しさが「春鯉」とよくマッチしている。釣った鯉をリリースするのも少年らしいことと思った。(高橋正子)

○きのう句美子が持って来てくれたイベリスの花と、名前を知らない黄色い花を鉢に寄せ植えにした。古い球根をどれでも構わず植えたプランターに、ムスカリやチューリップが咲きだした。(2015/3/23)

○木五倍子(キブシ)の花

[木五倍子の花/横浜・四季の森公園(2013年3月21日)]

★谷かけて木五倍子の花の擦れ咲/飯島晴子
★山淋し木五倍子がいくら咲いたとて/後藤比奈夫
★雨ながら十々里が原の花きぶし/古館曹人
★源流はもとより一縷木五倍子咲く/大岳水一路
★身心を山に置いたる花木五倍子/各務耐子
★木五倍子咲く地図には載らぬ道祖神/北澤瑞史

★木五倍子の花風あるかぎり揺れており/高橋正子
★里山の目を遣るところ木五倍子咲く/高橋正子

キブシ(木五倍子、学名:Stachyurus praecox)は、キブシ科キブシ属に属する雌雄異株の落葉低木。別名、キフジともいう。樹高は3m、ときに7mに達するものもある。3-5月の葉が伸びる前に淡黄色の花を総状花序につける。長さ3-10cmになる花茎は前年枝の葉腋から出て垂れ下がり、それに一面に花がつくので、まだ花の少ない時期だけによく目立つ。花には長さ0.5mmの短い花柄があり、花は長さ7-9mmの鐘形になる。萼片は4個で内側の2個は大きく花弁状、花弁は4個で花時にも開出せず直立する。雄花は淡黄色、雌花はやや緑色を帯びる。雌花、雄花とも雄蕊は8個、雌蕊は1個あるが、雌花の雄蕊は小さく退化している。葉には長さ1-3cmの葉柄があり、互生する。葉は長さ6-12cm、幅3-5cm、葉身は楕円形または卵形で、先端は鋭形または鋭尖形、基部は円形、切形または浅心形になり、縁には鋸歯がある。果実は径7-12mmになる広楕円形、卵形または球形で、緑色から熟すと黄褐色になる。和名は、果実を染料の原料である五倍子(ふし)の代用として使ったことによる。
 日本固有種で、北海道(西南部)、本州、四国、九州、小笠原に分布し、山地の明るい場所に生える。成長が早く、一年で2mくらいは伸びる。先駆植物的な木本で、荒れ地にもよく出現する。生育環境は幅広く、海岸線から内陸の川沿いまで見られる。

◇生活する花たち「辛夷(こぶし)・木瓜・ミツバツツジ」(横浜日吉本町)

3月22日(水)

★水菜洗う長い時間を水流し  正子
春野菜の水菜は漬物にしたり煮物にしたりして食するがサラダ風にして食べてもおいしい。その水菜をぬるんできた水で時間をかけてあらう。冬の間の冷たい水と違って手先に気持ちの良い水で
時間を掛けて洗う。春到来を喜ぶ主婦の気持ちを表している句である。(古田敬二)

○今日の俳句
いぬふぐり咲きそろいけり陽は十時/古田敬二
春の日の、午前十時の陽はうらうらと輝き、新鮮である。その陽に照らされて、いぬふぐりの青い小花が咲きそろう。なんとうららかな春の景色だろう。(高橋正子)

○片栗の花

[片栗の花/横浜・四季の森公園(2013年3月21日)]

◇生活する花たち「山桜・やまるりそう・すみれ」(東京白金台・自然教育園)

3月21日(火)

★はつらつとまたかがやかにヒアシンス   正子
わが家の長男と次男は1月生まれですが、嘗てその頃二人とも、産まれる頃に合わせてヒアシンスの水耕栽培のものを購入し、玄関の日当たりの良い場所に置いて眺めていました。秋に芽が出、白い根が水の中に生える様子を眺めては、お腹の中の赤ちゃんの様子に重ねていました。花が咲く頃には、子供も生まれると想うと大変心が弾みました。そのように特別の想いのあるヒアシンスの花は、「はつらつ、かがやか」との表現がぴったりです。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
水底の透けて煌めき蘆の角/桑本栄太郎
湿地の水が日差しに澄んで、蘆の緑の角が伸び始めた。枯から再生する緑の新芽が力強く美しい。(高橋正子)

○春分
★春分の日をやはらかくひとりかな/山田みづえ
★春分の日切株が野に光る/安養白翠
★春分の田の涯にある雪の寺/皆川盤水

 春分(しゅんぶん)は、二十四節気の第4。二月中(旧暦2月内)。現在広まっている定気法では、太陽が春分点を通過した瞬間、すなわち太陽黄経が0度となったときで、3月21日ごろになる。昨年は3月20日で、今年は3月21日。暦ではそれが起こる日だが、天文学ではその瞬間とする。
 春分の日(しゅんぶんのひ)は、春分が起こる日である。しばしば、「昼と夜の長さが同じになる。」といわれるが、実際は昼の方が長い。春分の日は、日本の国民の祝日の一つである。祝日法第2条では「自然をたたえ、生物をいつくしむ」ことを趣旨としている。仏教各派ではこの日「春季彼岸会」が行われ、宗派問わず墓参りをする人も多い。

★春分の日といい空に飛行機音 正子

○ゆすら(桜桃)の花

[ゆすらの花/横浜日吉本町]

3月20(月)

★流れ寄りまた離れゆき春の鴨   正子
河口近くのゆったりとした流れのなか、鴨たちが浮かんでいます。
あるときは寄り、あるときは離れる鴨の群れにすっかり明るくなった春の日差しが降り注ぎます。
穏やかな時間が流れるひとときです。(多田有花)

○今日の俳句
梅が香の真ん中にいて風を聞く/多田有花
梅の香の漂うところに立てば、風が吹いている。目に触れる梅の花、鼻に嗅ぐ梅の香り、耳に聞く風の音。それ頬には早春の風も触れてゆくことだろう。感覚の大いに働いた句である。(高橋正子)

○ミツバツツジ

[ミツバツツジ/横浜日吉本町]

3月19(日)

★つばき落ちる音の一会に朝厨   正子
艶麗な花を咲かせる椿は花全体が音を立てて地面に落ちる。その長閑な音を朝餉の用意をしながら聞いている。素晴らしい朝ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
初蝶のゆったり超ゆる大伽藍/小口泰與
大伽藍と小さな初蝶の対比、初蝶のういういしさ、可憐さ、うららかさをよく表すことになった。(高橋正子)

2015年
○昨日は関東地方に春一番が吹いた。今朝は晴れていたが、昼前から曇りがちの空になるが、白金台の自然教育園に信之先生と出かけた。園は、野焼きをする代わりに、すっかり枯れ草が刈りとられていたが、そろそろ草が萌え始めた。今日見た花は、片栗の花、甘菜の花、雪割り一華、モクレイシ、ウグイスカグラ、馬酔木の花、ミヤマカンスゲ、春蘭、紅白の藪椿、白山吹、福寿草。それに接骨木の蕾やがまずみの新芽などを見た。一番すばらしいのは、やはり、片栗の花。教育園のそばの公園には、山桜と寒緋桜が満開。沈丁花の紅白がよく匂っていた。

花びらを反らして凛と片栗は 正子
接骨木の芽ぐみし緑はやも濃し  正子
山桜若き緑の葉も出でし  正子
 里山
源流の泉の窪や山桜 正子

教育園で接骨木の細く短い枯れ枝を拾ったが、西洋では、接骨木は、魔法の杖といわれるだけあって、手にやわらかい。ハンの落ちた実も一つ拾った。ヤシャブシの実と似ている。ヤシャブシの実で、髪を梳かして遊んだ記憶がある。

○桜開花

[桜開花/横浜日吉本町(2013年3月18日)]

3月18(土)

★囀りの抜け来る空の半円球   正子
遮るものもない、丸く大きな青空から囀りが聞こえてくる。何処からだろうか。声だけで姿は見えない。まるで遥か高みから空を通り抜けてくるようだ。・・・静かで揺るぎない春のひと日を感じることが出来ます。(小西 宏)

○今日の俳句
ひとつずつ地に触れ消える春の雪/小西 宏
春の雪の降る行方を見ていると、雪片は一つずつ地に触れて消えてゆく。水分を多く含んだ春の雪の美しくも儚い様子。(高橋正子)

○菫(すみれ)

[菫/横浜日吉本町]

3月17(金)

★花すもも散るや夜道の片側に   正子
夜の静けさに、らんまんと咲いたすももの花の、雪のようにはらはらと散るさまが美しいかぎりです。夜道の片側にこぼれる、花すもものひそやかな情景に、春の夜の淡く柔らかな空気感も伝わってまいります。(藤田洋子)

○今日の俳句
桃の花馴染みの声の店先に/藤田洋子
桃の花が店に活けてある。店先に馴染みの声が聞こえて、「あら」と思う。桃の花には、気取らない、明るい雰囲気があるので、「馴染みの声の店先に」言ってみるのだ。日常の一こま。(高橋正子)

○辛夷(こぶし)

[辛夷/横浜都筑区緑道ふじやとの道]

3月16日(木)

★花すもも散るや夜道の片側に   正子
夜の静けさに、らんまんと咲いたすももの花の、雪のようにはらはらと散るさまが美しいかぎりです。夜道の片側にこぼれる、花すもものひそやかな情景に、春の夜の淡く柔らかな空気感も伝わってまいります。(藤田洋子)

○今日の俳句
桃の花馴染みの声の店先に/藤田洋子
桃の花が店に活けてある。店先に馴染みの声が聞こえて、「あら」と思う。桃の花には、気取らない、明るい雰囲気があるので、「馴染みの声の店先に」言ってみるのだ。日常の一こま。(高橋正子)

○辛夷(こぶし)

[辛夷/横浜都筑区緑道ふじやとの道]