5月16日(火)

 横浜動物園
★真鶴に夏来し水辺用意され   正子
動物園と前書きにありますので、冬鳥である真鶴に暑さに気を使い、新しい水辺を用意された園の優しさが、また詠者の優しさも伺えます。(祝恵子)

○今日の俳句
水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
水槽の水を替えられたメダカは元気よく泳ぐ。差しこむ日光にメダカの影ができるが、その影が新鮮に思える。いきいきとして、透明感のある句だ。(高橋正子)

○山吹草

[山吹草/東京白金台・自然教育園/左:2012年5月10日・右:2013年4月10日撮影]

★昏れかぬる箱根うら道山吹草/金子波龍
★林間へ野生の犬や山吹草/大介

 山吹草(やまぶきそう、学名:Chelidonium japonicum)は、罌粟(芥子:けし)科の多年草。半日陰になる林縁や疎林内に生育する。「ヤマブキ」の名はあるが、バラ科のヤマブキとは全く別種である。草丈30~40cmほどので、茎を立てて上部の葉腋に1~2個の花をつける。花は春に咲き、径4~5cmほどの比較的大きな鮮黄色の4弁花をつける。花弁は卵型。葉は、長さ10~15cmほどの羽状複葉で、小葉は5~7個。小葉は大きさに変異が大きく、長さ2~5cm、幅2cm前後の広卵型で、葉先は三角形状である。葉の縁には浅い欠刻と鋸歯(ギザギザ)があう。
本州以西から中国大陸に分布している。多摩丘陵では、一部に保護植栽されている場所を除き、1980年頃以降では自生は確認できておらず、地域絶滅が危惧される。
 花の様子や鮮黄色の花色が、バラ科のヤマブキに似ているという命名です。ただし、ヤマブキは5弁花であるのに対してヤマブキソウは4弁花です。
 ケシ科の植物はほとんどそうだが、全草にアルカロイド系の有毒成分を含み、誤って食べると嘔吐や麻痺などを惹き起す。仲間(同属)のクサノオウは薬用に利用されるが、ヤマブキソウは利用されない。この仲間(クサノオウ属)を代表するクサノオウ(瘡の王)では、花は似ているが、葉はヤマブキソウのような羽状複葉ではなく、羽状の切れ込みがある単葉で裂片の先は円形状である。 別名「草山吹(くさやまぶき)」。

◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

5月15日(月)

★茄子胡瓜つゆけく漬かり飯は白  正子
茄子も胡瓜もしっとりと色鮮やかに漬かり上がり、純白のご飯の艶まで想像できて食欲を誘う。夏の食卓の彩が涼しげに詠われて明るく清々しい。(小西 宏)

○今日の俳句
水に立つ緑明るし黄の菖蒲/小西 宏
黄菖蒲は花菖蒲とはまた別のもので、水から抜け出て立つ葉は、一段と明るい緑だ。そこに単純に黄色の花が咲く。涼しい感じの句だ。(高橋正子)

○山吹

[山吹/東京白金台/自然教育園]

★雨脚の舞ってゐるなり山吹に/清崎敏郎
★西側の垣の山吹黄が明るし/高橋信之
★降りかかる雨の山吹窓越しに/高橋正子

山吹の花が咲くころは、降るともなく、降らぬともなく、雨が細い雨脚を見せて降ることが多い。山吹の花の記憶はいつも雨とある。一重ではなく、記憶の山吹は八重だ。「七重八重・・」の大田道灌の古歌も今では言う人もいないだろうが、雨降りの記憶とともに脳裏にある。
白山吹という白い花を咲かせる山吹もあって、これは一重で黒い実を結ぶ。我が家では、白山吹は、高い曇り空の下に咲いて表の庭にあった。日吉には、見事に垣根をなして白い花咲かせている家があって、しゃれているので、山吹とも思えない感じだ。

山吹は、低山の明るい林の木陰などに群生する。樹木ではあるが、茎は細く、柔らかい。背丈は1mから、せいぜい2m、立ち上がるが、先端はやや傾き、往々にして山腹では麓側に垂れる。地下に茎を横に伸ばし、群生する。葉は鋸歯がはっきりしていて、薄い。晩春に明るい黄色の花を多数つける。多数の雄蕊と5~8個の離生心皮がある。心皮は熟して分果になる。北海道から九州まで分布し、国外では中国に産する。古くから親しまれた花で、庭に栽培される。花は一重のものと八重のものがあり、特に八重咲き品種(K. japonica f. plena)が好まれ、よく栽培される。一重のものは花弁は5枚。白山吹もあるが別属である。日本では岡山県にのみ自生しているが、花木として庭で栽培される事が珍しくない。こちらは花弁は4枚。

◇生活する花たち「かきつばた・さぎごけ・やまつつじ」(東京白金台・自然教育園)

■5月月例ネット句会/入賞発表■


■2017年5月月例ネット句会■
■入賞発表/2017年5月15日

【金賞】
★舟べりを叩きはまちの追込み漁/桑本栄太郎
この句には季語はないが、季節感がある。春は新しいブリ・ハマチの子供をつかまえる時期なので、春の季節感がある。ハマチの稚魚の採捕は、春先(4月中旬頃)から初夏(7月下旬頃)にかけて行われる、養殖業界の春を告げる風物詩なのだ。(高橋信之)

【銀賞/2句】
★歌声の「原爆の子」へ銀杏咲く/谷口博望(満天星)
「原爆の子」の歌は、反戦歌。銀杏は毅然とした姿をした木だが、銀杏の花は地味で目立たない。秘めた力が原爆許すまじの反戦歌「原爆の子」の歌と響きあっている。(高橋正子)

★校庭の若葉へ運ぶパン・珈琲/柳原美知子
広々とした校庭を縁取る若葉。その木陰へパンと珈琲を運んで戸外での軽食を楽しむ。学校行事の一環か。明るい気分になれる句だ。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★朝の鐘五月の空へ鳴り渡る/多田有花
清々しい五月の朝、鐘が空へと鳴り渡る。何も無いような空気感がある。(高橋正子)

★小さいといえども我が家に鯉のぼり/高橋秀之
住宅事情もあって、一般の家庭では、大きな鯉のぼりは揚げにくい。小さいけれど、元気な鯉のぼりがあって、男の子たすこやかに育っている。
それこそが大事だ。(高橋正子)

★早起きに洗濯をする初夏の朝/高橋句美子
初夏の朝、「明け易し」ころ。目覚めも自然に早くなり、早く起きた時間を洗濯する。さっぱりと、さわやかである。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★朝の鐘五月の空へ鳴り渡る/多田有花
澄んだ鐘の音が薫風に乗り朝空に響き渡る。清々しい五月の一日の始まりに心も晴れ晴れとしてきます。 (柳原美知子)

★校庭の若葉へ運ぶパン・珈琲/柳原美知子
校庭での楽しい昼食の風景を思いだします。「若葉へ運ぶ」に共感します。 (古田敬二)

★夏鶯谷の空間ひろびろと/高橋正子
山へ行くと新緑のなかにウグイスの声が絶え間なく聞こえます。谷に響くウグイスの澄んだ囀りは空間を広げる心地がします。(多田有花)

★舟べりを叩きはまちの追込み漁/桑本栄太郎
勢いを感じる句です。はまちのはねる音、漁師たちの声、水の音などが浮かんできます。(多田有花)

★歩くほど若葉の匂い濃くなれり/高橋正子
様々な木々の若葉が匂う山道。澄みきった空気を吸い、奥へと歩くほどに、感覚も研ぎ澄まされ、新鮮な心持ちになってくるようです。(柳原美知子)

★歌声の「原爆の子」へ銀杏咲く/谷口博望(満天星)
★小さいといえども我が家に鯉のぼり/高橋秀之
★早起きに洗濯をする初夏の朝/高橋句美子

【高橋正子特選/8句】
★暮れ残る代田を囲む水の音/柳原美知子
代掻きが終わり、田に水を入れている夕ぐれの情景が目に見えるようだ。 (満天星)

★新しい制服着こなし初夏の朝/高橋秀之
配属場所が変わり、四月から制服が代わったのでしょうか。その制服がそろそろ肌になじんでくるころです。(多田有花)

★街路樹の若葉青々晴れわたる/高橋句美子
街路樹の若葉のみずみずしい緑が目にうれしいころです。その上に広がる明るい晴天、心浮き立ちますね。(多田有花)

★わが誕生の空の明るい五月来る/高橋信之
明るい空から自然界のものみな光を受け、生命感あふれる五月。その五月に誕生され、今年もまた無事その時を迎えられるお喜びは一入のことでしょう。お祝い申しあげます。(柳原美知子)

★トマト苗植えれば直ぐに脇芽のぶ/祝恵子
トマト苗を植え毎朝水やりの度に成長が楽しみですね。充実した日常がうかがえます。(柳原美知子)

★校庭の若葉へ運ぶパン・珈琲/柳原美知子
★朝の鐘五月の空へ鳴り渡る/多田有花
★舟べりを叩きはまちの追込み漁/桑本栄太郎

【入選/6句】
★沖や今島影見ゆる卯波かな/桑本栄太郎
視界が広がり、卯波から島影が見えだし、海の風を受けながら、楽しまれているのでしょうか。 (祝恵子)

★ハンモック揺する風あり夏来たる/祝恵子
春の終りまだ強い風の日もありハンモックを揺らす風が吹いています。明日から立夏を迎える新しい暦によって夏に入る感情が整えられる。 (小口泰與)

★背伸びして今日が立夏と言ってみる/古田敬二
とても清々しい気持ちにしてくれます。理屈抜きで今回の投句の中で大好きな句です。(高橋秀之)

★エンドウ採る昼餉のパスタに足りるだけ/古田敬二
自家製のエンドウを収穫し、その新鮮なエンドウでパスタを料理する。なによりのごちそうですね。みどりも鮮やかな季節感あふれる一皿が目に浮かびます。(柳原美知子)

★湖の面へ木立を映し影涼し/小口泰與
★新緑の枝から枝へ揚羽蝶/廣田洋一

■選者詠/高橋信之
★矢車菊よわが誕生の五月来る
★わが誕生の空の明るい五月来る
★空晴れて矢車菊の花の青

■選者詠/高橋正子
★夏鶯谷の空間ひろびろと
★歩くほど若葉の匂い濃くなれり
★母の日の紫陽花ピンク娘は若し

■互選高点句
●最高点(5点)
★舟べりを叩きはまちの追込み漁/桑本栄太郎
●次点(4点/同点3句)
★朝の鐘五月の空へ鳴り渡る/多田有花
★暮れ残る代田を囲む水の音/柳原美知子
★校庭の若葉へ運ぶパン・珈琲/柳原美知子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

5月月例ネット句会清記


■5月月例ネット句会清記
2017年5月14日
12名36句

01.湖の面へ木立を映し影涼し
02.川狩や浅間の風のそよと吹き
03.飲みごろよ読書疲れの一夜酒
04.朝の鐘五月の空へ鳴り渡る
05.新緑のなかの三等三角点
06.筍の掘られし後の虚空かな
07.尖塔の中腹にあり聖五月
08.沖や今島影見ゆる卯波かな
09.舟べりを叩きはまちの追込み漁
10.歌声の「原爆の子」へ銀杏咲く

11.夏帽子平和の鐘へ黙祷す
12.ひーふーみーG線上の松の花
13.新緑の枝から枝へ揚羽蝶
14.紫は高貴な色ぞ鉄線花
15.群れごとに傘を差したる牡丹かな
16.エンドウ採る昼餉のパスタに足りるだけ
17.背伸びして今日が立夏と言ってみる
18.野に来たりこれぞ薫風と独り言
19.新しい制服着こなし初夏の朝
20.新緑が眩しき朝に日が昇る

21.小さいといえども我が家に鯉のぼり
22.若葉陰一息入れる歩き会
23.トマト苗植えれば直ぐに脇芽のぶ
24.ハンモック揺する風あり夏来たる
25.校庭の若葉へ運ぶパン・珈琲
26.夏つばめ鳴いて空切り夕日へと
27.暮れ残る代田を囲む水の音
28.夏鶯谷の空間ひろびろと
29.歩くほど若葉の匂い濃くなれり
30.母の日の紫陽花ピンク娘は若し

31.街路樹の若葉青々晴れわたる
32.早起きに洗濯をする初夏の朝
33.菖蒲持つ人が街を行き来する
34.矢車菊よわが誕生の五月来る
35.わが誕生の空の明るい五月来る
36.空晴れて矢車菊の花の青

※1)選句を始めてください。5句選をし、そのなかの一句にコメントを書いてください。
※2)互選期間:5月14日(日)午後6時~午後10時

●5月月例ネット句会ご案内●


●5月月例ネット句会投句案内●
①投句:当季雑詠(夏の句)3句
②投句期間:2017年5月8日(月)午後1時~2017年5月14日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:5月14日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:5月15日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、5月15日(月)正午~5月17日(水)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

5月14日(日)

★竹皮を脱ぐ孟宗の節短し  正子

○今日の俳句
釣竿を持つ少年の夏近し/多田有花
釣竿を持っている少年を見ると、夏が来たことを実感させられる。少年の釣りは水遊びの気持ちがある。(高橋正子)

○卯の花

[卯の花/横浜日吉本町]

★押しあうて又卯の花の咲きこぼれ/正岡子規
★卯の花の夕べの道の谷へ落つ/臼田亜浪
★卯の花や流るるものに花明り/松本たかし
★卯の花曇り定年へあと四年/能村研三
★卯の花のつぼみもありぬつぼみも白/高橋信之
★卯の花の盛りや雷雨呼びそうに/高橋正子

卯の花は、空木(ウツギ)といい、バラ目アジサイ科ウツギ属の落葉低木で、樹高は2-4mになり、よく分枝する。樹皮は灰褐色で、新しい枝は赤褐色を帯び、星状毛が生える。葉の形は変化が多く、卵形、楕円形、卵状被針形になり、葉柄をもって対生する。花期は5-7月。枝先に円錐花序をつけ、多くの白い花を咲かせる。普通、花弁は5枚で細長いが、八重咲きなどもある。茎が中空のため空木(うつぎ)と呼ばれる。「卯の花」の名は空木の花の意、または卯月(旧暦4月)に咲く花の意ともいう。北海道南部、本州、四国、九州に広く分布し、山野の路傍、崖地など日当たりの良い場所にふつうに生育するほか、畑の生け垣にしたり観賞用に植えたりする。

★卯の花の白きを門に置きし家/河野啓一
卯の花の白さを門に配しているのがいい感覚だ。「置きし」は、画を描いているような、絵具を置くような、詠み方で、光景を絵画的にしている。(高橋正子)

◇生活する花たち「芍薬の花蕾・薔薇・卯の花」(横浜日吉本町)

5月13日(土)

★豆の花宙に雀が鳴いており  正子
晩春から初夏にかけて咲く豆の花は、少しづつ莢を太らせながら、次々に花を咲かせます。菜園に咲く豆科、果菜類の花は大変美しく、花の後の収穫の期待がふくらみます。空には雀が鳴き、穏やかで長閑な日常が想われ和みます。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
朴の花見上げ葉影に憩いけり/桑本栄太郎
朴の花は高いところに咲くので、下からは見上げるだけ。しかし、その大いなる葉影で憩うときの心静かに涼しいこと。(高橋正子)

○郁子(むべ)の花

[郁子の花/東京白金台/自然教育園(左:2012年5月10日・右:2014年5月3日)]

★現なく日輪しろき郁子咲けり/角川原義
★井の上の雑木にからみ郁子の花/須和田潮光
★郁子咲くを森の高きに写し撮る/高橋信之

ムベ(郁子、野木瓜、学名:Stauntonia hexaphylla)は、アケビ科ムベ属の常緑つる性木本植物。別名、トキワアケビ(常葉通草)。方言名はグベ(長崎県諫早地方)、フユビ(島根県隠岐郡)、イノチナガ、コッコなど。日本の本州関東以西、台湾、中国に生える。柄のある3~7枚の小葉からなる掌状複葉。小葉の葉身は厚い革質で、深緑で艶があり、裏側はやや色が薄い。裏面には、特徴的な網状の葉脈を見ることが出来る。花期は5月。花には雌雄があり、芳香を発し、花冠は薄い黄色で細長く、剥いたバナナの皮のようでアケビの花とは趣が異なる。10月に5~7cmの果実が赤紫に熟す。この果実は同じ科のアケビに似ているが、果皮はアケビに比べると薄く柔らかく、心皮の縫合線に沿って裂けることはない。果皮の内側には、乳白色の非常に固い層がある。その内側に、胎座に由来する半透明の果肉をまとった小さな黒い種子が多数あり、その間には甘い果汁が満たされている。果肉も甘いが種にしっかり着いており、種子をより分けて食べるのは難しい。自然状態ではニホンザルが好んで食べ、種子散布に寄与しているようである。主に盆栽や日陰棚にしたてる。食用となる。日本では伝統的に果樹として重んじられ、宮中に献上する習慣もあった。 しかしアケビ等に比較して果実が小さく、果肉も甘いが食べにくいので、商業的価値はほとんどない。

「むべ」で思い出すのは、「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐というらむ/文屋康秀」の百人一首にある「むべ」。もちろん、この歌の「むべ(宜)」は、「なるほど」の意味だが、この歌に、いつも、「むべの実」を想像してしまう。

★郁子の花引けば絡みし木がざわと/高橋正子

◇生活する花たち「かきつばた・さぎごけ・やまつつじ」(東京白金台・自然教育園)

5月12日(金)

★ビルの窓全てで五月の空なせり  正子
五月は新緑の快い季節で、風も南風で、水の上、緑の上を渡って匂うような爽やかさで、高層ビルの窓という窓も初夏の気持ちのよい風を受けて喜んでいます。 (小口泰與)

○今日の俳句
麦秋や暮れても青き赤城山/小口泰與
暮れても戸外が心地よい麦秋の季節。暮れのこる青い赤城山を見つつ、麦秋の心地よさを心身に感じる作者がいる。(高橋正子)

○踊子草

[踊子草/東京白金台/自然教育園]

★み吉野の踊子草の白がちに/稲畑汀子
★淡きあはき紅粧ふも踊子草/大橋敦子
★夜すがらに奔る水音踊子草/田千鶴子
★踊子草ときをり風は囃子方/豊田都峰
★雨垂れのまた揺らしたる踊子草/川合万里子

 オドリコソウ(踊子草、学名:Lamium album L. var. barbatum (Siebold et Zucc.) Franch. et Sav.[1][2])は、シソ科オドリコソウ属の多年草 。北海道、本州、四国、九州(及び韓半島、中国)に分布し、野山や野原、半日陰になるような道路法面に群生する。
 高さは30~50cmくらいになる。葉は対生し、その形は卵状3角形から広卵形で上部の葉は卵形で先がとがり、縁は粗い鋸歯状になり、基部は浅心形で葉柄がある。花期は4~6月で、唇形の白色またはピンク色の花を、数個輪生状態になって茎の上部の葉腋に数段につける。花のつき方が、笠をかぶった踊り子達が並んだ姿に似る。花の基部に蜜があり、観察実験の材料ともなる。
 近縁種:ヒメオドリコソウ(姫踊子草、学名:Lamium purpureum L.)、ホトケノザ(仏の座、学名:Lamium amplexicaule L.)。

 
◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

5月11日(木)

★薔薇垣と薔薇のアーチに人の住む  正子
丹精込めて手入れされた薔薇垣と薔薇のアーチなのでしょう。薔薇をこよなく愛する住人はどのような方でしょう。お住まいの方はもちろんのこと、通りすがりの人々にも、季節の豊かな彩りと喜びを分け与えてくれる薔薇の美しさ、芳しさを思います。(藤田洋子)

○今日の俳句
若葉風自転車きらり輪が廻る/藤田洋子
若葉風に吹かれ、自転車の銀輪がきらりと輝いて廻る。初夏の解放感と若々しさの溢れた句。(高橋正子)

○2014年5月11日
句美子と大船フラワーセンターへ吟行に行った。日吉駅で10時半に待ち合わせ。句美子はフラワーセンターは初めてなので、私が案内。園内は薔薇としゃくやくが咲き誇り、馥郁たる香り。この二つに加え、睡蓮、黄菖蒲がよく咲いていた。ルピナス、矢車草、おだまきなど百花繚乱。アカシヤの花、石楠花、藤がすでに終わっていた。句美子が温室を見たいというので温室に入った。思いがけず、睡蓮の花がとりどり咲いて、ロンドンのキューガーデンを句美子と見学したことを思い出した。睡蓮が咲いていたこと、オーストラリアやその他熱帯の植物があったことなど。赤バナナが成熟中であった。キューガーデンとは、もちろん、規模が全然違うのだけれど、フラワーセンターの意気込みも感じられた。 昼食は持参の助六すしと柏餅などで済ませた。帰りは、大船駅のドトールでアイスティーとミルフィーユで小憩。句美子は翌日、28句作ってメールで送ってくれた。

○睡蓮

[睡蓮/神奈川県立大船植物園]      [睡蓮/横浜都筑・ふじやとのみち]

★睡蓮の花沈み今日のこと終へず/臼田亜浪
★睡蓮に日影とて見ぬ尼一人/飯田蛇笏
★睡蓮や鬢に手をあてて水鏡/杉田久女
★睡蓮の明暗たつきのピアノ打つ/中村草田男
★睡蓮に雨意あり胸の釦嵌む/中村草田男
★睡蓮の汀に睫長き子よ/星野立子
★睡蓮やまづ暮のいろ石にあり/加藤楸邨
★睡蓮のひかりを絵の具盛り描く/宮津昭彦

睡蓮(学名:Nymphaea)は、スイレン目スイレン属の植物の一つで、水生多年草。単にスイレン(睡蓮)と呼ぶことが多い。日本にはヒツジグサ(未草)の1種類のみ自生する。日本全国の池や沼に広く分布している。白い花を午後、未の刻ごろに咲かせる事からその名が付いたと言われる。水位が安定している池などに生息し、地下茎から長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべる。葉は円形から広楕円形で円の中心付近に葉柄が着き、その部分に深い切れ込みが入る。葉の表面に強い撥水性はない。多くの植物では気孔は葉の裏側にあるが、スイレンでは葉の表側に分布する。根茎から直接伸びる花柄の先端に直径5-10cmほどの花をつける。産地で大まかに分けると、熱帯産と温帯産に分けられる。温帯産は水面のすぐ上に花を付けるが、熱帯産は水面から高く突き出た茎の先端に花をつけるので、区別は容易である。また、熱帯産には夜や早朝にしか花を咲かせない種もある。

○生活する花たち「西洋おだまき・卯の花・錦木の花」(東京深川・芭蕉記念館とその近辺)

5月10日(水)

★初夏の夜の電車傾きつつ曲がる  正子

○今日の俳句
蒲公英の種ふと浮び空の詩/河野啓一
野原の蒲公英の絮が、風が来て、ふっと空に浮かんだ。これから広い空を飛んでゆく、蒲公英の種子の旅がはじまる。その心は、「詩」と言える。蒲公英の種子の飛行は、「空の詩」であり、「空の歌」なのだ。(高橋正子)

○杜若(かきつばた)

[かきつばた/東京白金台・自然教育園(左:2013年5月2日・右:2012年5月10日)] 

★宵々の雨に音なし杜若/与謝蕪村
★杜若けふふる雨に莟見ゆ/山口青屯
★森に池あり杜若濃き青に/高橋信之

カキツバタ(燕子花、杜若、Iris laevigata)はアヤメ科アヤメ属の植物で、湿地に群生し、5月から6月にかけて紫色の花を付ける。内花被片が細く直立し,外花被片(前面に垂れ下がった花びら)の中央部に白ないし淡黄色の斑紋があることなどを特徴とする。愛知県の県花でもあり、三河国八橋(現在の知立市八橋)が『伊勢物語』で在原業平がカキツバタの歌を詠った場所とされることに由来している。在原業平が詠んだ歌は「から衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる たびをしぞ思ふ」江戸時代の前半にはすでに多くの品種が成立しており、古典園芸植物の一つでもあるが、江戸時代後半には花菖蒲が非常に発展して、杜若はあまり注目されなかった。現代では再び品種改良が進められている。日本三大カキツバタ自生地は、愛知県刈谷市井ヶ谷町にある「小堤西池」、京都府京都市北区にある「大田の沢」、鳥取県岩美町唐川にある「唐川湿原」で、カキツバタの自生地として有名である。なお、「いずれがアヤメかカキツバタ」という慣用句がある。どれも素晴らしく優劣は付け難いという意味であるが、見分けがつきがたいという意味にも用いられる。

◇生活する花たち「芍薬・しゃが・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)