■7月月例ネット句清記


■7月月例ネット句清記
2017年7月9日
14名42句

01.地に倒れ伏して真白きグラジオラス
02.七月や水の匂いに沿い歩く
03.大橋を渡り淡路へ梅雨曇
04.静けさの水の余白や花菖蒲
05.玉虫や母の遺せし桐箪笥
06.木洩れ日の染み入る峠時鳥
07.降り立てば祇園囃子や河原町
08.巣立ち終え軒の静寂や夏つばめ
09.夢途切れ音に目覚めりよだち来ぬ
10.朝顔の初めての朝を咲きにけり

11.木漏れ日も森の風受け七変化
12.試食して荷台の枇杷を買い求む
13.箕面山深緑抜けて能勢の里
14.緑なす万博公園日曜日
15.恵まれて曾孫誕生天の川
16.不条理に怒りて紫蘇をもむ真昼
17.紫蘇色の重石の縁まで上がり来る
18.ミニトマト採り来て昼餉の皿豊か
19.日の変わる直前の空に天の川
20.大輪のハイビスカス見て出勤す

21.早朝の日差しとともに夏の風
22.青き海静まる先に雲の峰
23.変革の二文字祈れる七夕かな
24.スー女の声盛り上がる名古屋場所
25.鮎酢や故郷の川まなうらに
26.露草を閉じ込めたくて押花に
27.同窓の団扇の傷や本棚に
28.雨後の空広げし杜の夏祓
29.梔子の白まっさらに山雨過ぐ
30.梅雨晴れの靴を鳴らして一歳児

31.あした咲く鉢の朝顔ベランダに
32.扇風機の風に吹かれる背を向けて
33.朝蝉のしきりに鳴きて今朝の晴れ
34.傾く日に七色失せず虹の橋
35.源流の泉もて田植機洗いあぐ
36.耳そばだて聴く源流の時鳥
36.耳そばだて聴く源流の時鳥
37.七夕の夕風「ムーンリバー」奏で
38.星空へ植田の蛙声極め
39.花胡瓜咲いては青き実を伸ばす
40.街にチラシ次々貼られ盆踊り

41.風が凪ぎ夏満月が輝ける
42.髪なびかす団扇の風に夕涼み

※互選を開始してください。一人5句選をし、その中の一句にコメントをつけてください。選句は、この下のコメント欄にお書きください。

7月9日(日)

 愛媛・久万中学校
★教室の窓に夏嶺の高々と  正子

○今日の俳句
赤味さす眉月七月の街に/川名ますみ
赤味を帯びた眉月はやはり夏の月である。街の灯の上に、広い夜空にはかなく、神秘的だ。(高橋正子)

○合歓の花(ねむのはな)

[合歓の花/横浜・四季の森公園]

★そのすがた人にうつすやねぶの花/加賀千代女
★雨の日やまだきにくれてねむの花/与謝野蕪村
★山風の暁落ちよ合歓の花/芥川龍之介
★花合歓や凪とは横に走る瑠璃/中村草田男
★旅多くなりし合歓咲きそめし頃/稲畑汀子
★雲運び合歓の花吹き風飽きず/宮津昭彦
★合歓の花南瓜の花と呼び交す/大串章
★川の辺に潮上りくる合歓の花/能村研三
★花合歓の光あふるる下に居る/高橋信之
★梅雨出水しぶくをねむの木ねむの花/高橋正子

ネムノキ(合歓木、Albizia julibrissin)はネムノキ科(広い意味でマメ科)の落葉高木。別名、ネム、ネブ。葉は2回偶数羽状複葉。花は頭状花序的に枝先に集まって夏に咲く。淡紅色のおしべが長く美しい。香りは桃のように甘い。果実は細長く扁平な豆果。マメ科に属するが、他のマメ科の植物とは花の形が大きく異なる。イラン、アフガニスタン、中国南部、朝鮮半島、日本の本州・四国・九州に自生する。陽樹であり、荒れ地に最初に侵入するパイオニア的樹木である。河原や雑木林に生え、高さは10mにもなる。芽吹くのは遅いが、成長は他の木と比較すると迅速である。ネムノキ属は主として熱帯に150種ほどが分布するが、その中でネムノキは飛び抜けて耐寒性が強く高緯度まで分布する。温帯で広く栽培され、一部で野生化している。和名のネム、ネブは、夜になると葉が閉じること(就眠運動)に由来する。漢字名の「合歓木」は、中国においてネムノキが夫婦円満の象徴とされていることから付けられたものである。花言葉は「歓喜」。夏の季語であり、万葉集や松尾芭蕉、与謝蕪村の句に登場する。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

●7月月例ネット句会投句案内●


●7月月例ネット句会投句案内●
①投句:当季雑詠(夏の句)3句
②投句期間:2017年7月3日(月)午後1時~2017年7月9日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:7月9日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:7月10日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、7月10日(月)正午~7月12日(水)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

7月8日(土)

 箱根湿性花園
★雲はれて日光黄菅の野にひかる  正子
梅雨最中、雲が払われ野に鮮やかな日光黄管の彩りが、いっそう明るく心奪われます。箱根の広々とした植物園での、嬉しく晴れやかな日光黄管との出会いを感じさせていただきました。(藤田洋子)

○今日の俳句
雨雲の山を離れて合歓の花/藤田洋子
合歓の花を的確に捉えている。愛媛の久万高原などに出かけると、垂れていた雨雲が山を離れていって、合歓の花があきらかに浮かびあがってくるが、このようなところに合歓は自生する。(高橋正子)

●北九州で梅雨の豪雨。今朝から横浜はかんかん照り。斜め向かいの某製菓会社の社宅2棟が解体中である。
解体作業は、建物全体をパネルで覆ってから解体をはじめた。電線を外し、マンションの鉄柵や窓を外し、
何か粛々と行われている。ショベルカー3台がコンクリートを壊す音は一日しているが。

●昨日は東の空に黒雲を背景に薄い虹がかかった。ここずっと、十年以上も虹を見ていなかった。
●7月2日(日)には、多摩川の向こうに沈むメタリックに赤く燃える夕日を見た。目が痛いほどの赤さ。この赤さも、生まれて初めての赤。
●明日は月例ネット句会。ネット句会を第2日曜と決めて、投句数が少し増えた。
●朝顔の蕾が一つ大きくなる。

○ピーマンの花

[ピーマンの花/横浜市緑区北八朔]
 
ウィキペディアより:
 ピーマンはナス科の一年草、およびその果実。学名はCapsicum annuum L. ‘grossum’ であり、トウガラシの栽培品種に分類される(’ ‘は栽培品種を表す)。果肉は種子以外ほとんど空洞である。日本の店頭で食用として販売されるものは、明治初頭にアメリカから伝わったイスパニア種を品種改良した中形で緑色のものが多いが、近年はカラーピーマンも出回っている。緑色は未成熟の果実のためであり、成熟すると一般的なものは赤色のほか黄色、橙色に変わるものもある。北米では大形の成熟した様々な色のものが流通する。その他に、未成熟で白色や、黒色(濃い紫色)、紫色のものもある。加熱すると緑色に変化し、熟すると橙色、赤色に変わる。英語では「Green pepper」、「Red pepper」、「Yellow pepper」などと呼ばれる。
 日本語における「ピーマン」の由来は、フランス語の「piment」あるいはスペイン語の「pimiento」とされ、いずれも狭義のトウガラシを指す[要出典]。なお、ピーマンを意味するフランス語は「poivrons」である。

◇生活する花たち「白槿・朝顔・青葡萄」(横浜日吉本町)

7月7日(金)

★学生食堂ひとりの顔に夏日あり  正子
前途洋々たる若者達の集まる学生食堂はリラックスして楽しめる場の一つかも知れません。食事を楽しみ会話も弾んでいる事でしょう。その中にひとり日焼けしている人が?。スポーツをする人か?旅行でもした人か?何れにしても夏日を感じさせる健康的な若者の暮らし振りを想像させる頼もしい御句です。(佃 康水)

○今日の俳句
糸蜻蛉水の光りへ紛れけり/佃 康水
糸蜻蛉の体の細さは、注意していなければ、すぐ見失う。ましてや水の光りが輝く中では、蜻蛉か、光か、と見まがうようにも。「水の光り」が涼やかだ。(高橋正子)

○半夏生(はんげしょう)

[半夏生/横浜日吉本町]

★湯沸かしてつかはずにゐる半夏生/能村登四郎
★鯉の口朝から強し半夏生/藤田湘子
★半夏生咲けばひろびろ空がある/高橋信之

 俳句を始めてしばらくしたころ、「半夏生」という植物があると聞いた。句会では、その半夏生がどこにあるとか、見に行ったとか、見に行こうとかいう話で持ちきりだった。いったいどんな植物なのか、耳には「半化粧」と聞こえる。白粉の半分落ちたお化けでもあるまいが、ちょっと怖いもの見たさの気持ちを起こさせる植物であった。半夏に咲く植物から命名されたと聞いた。
 日吉本町に引っ越して、近所を歩いているとき、ちらっと庭を見て、「もしや半夏生」と思った植物があった。帰って、ネットで検索して半夏生に間違いないと確信をもったが、都市の住宅の庭にも植えられている。日吉本町の古刹金蔵寺にも、半夏生がある。下の方の葉は緑だが、上の方の数枚は白い。そこにひも状の花がつく。花より、葉が白いところが面白い。6月24日に訪ねた大船植物園にも半夏生が群生していた。アマチュアカメラマンが半夏生の前に大勢たむろしていた。花菖蒲によりも、睡蓮によりも沢山カメラマンが集まっていた。いったいどんな写真を撮りたいのか、興味があるところだ。幻想的な写真か。

★睡蓮の池をかくして半夏生/高橋正子

 半夏生(学名:Saururus chinensis)は、ドクダミ科ハンゲショウ属。 開花時期は、7/1頃~7/20頃。上の方の葉っぱが、ペンキをべったり塗ったように白くなるのがおもしろい。「半化粧」「半夏生」、両方の名前で呼ばれる。葉の半分ほどが白くなることからの別名「片白草」(かたしろぐさ)。「半夏生」の名前の由来は、夏至から数えて11日目頃の日を「半夏生」と呼ぶが、その頃に、花が咲くことからという。 花期に葉が白くなるのは、虫媒花であるために虫を誘う必要から、このように進化したのではないか、といわれている。花は葉と同じく白で、紐状。花が咲き終わって夏の盛りの頃になると、白い葉の白い部分は色落ちして、ふつうの緑色っぽくなる。山の水辺に群生することが多いが、都会でもときどき植えられてるのを見かける。

◇生活する花たち「岩タバコ・雪ノ下・夏萩」(北鎌倉/東慶寺・円覚寺)

7月6日(木)

★青田みな青嶺へ靡き吹かれける  正子
風になびく、山に向かう青々とした植田の静かな田園景色が浮かびます。(祝恵子)

○今日の俳句
ピーマンの分厚く光るを収穫す/祝恵子
よくそだったピーマンの質感をよく捉えている。「分厚く」に納得。(高橋正子)

○夕菅(ゆうすげ)

[夕菅/大船植物園]

7月5日(水)

★蜜豆に夜の会話の間がありぬ  正子
密豆を前にして会話のひととき、ご家族でしょうか、それともお友達同士?いずれにしてもくつろいだ楽しい雰囲気だったことでしょう。(多田有花)

○今日の俳句
★子を抱いて浴衣の父の祭かな/多田有花(姫路ゆかたまつり)
男の祭でも、村の祭でもない「父の祭」がいい。子を抱き、浴衣に寛いでささやかな祭を楽しんでいる父の姿さっぱりとして、涼しそうだ。(高橋正子)

○笹百合

[笹百合/神奈川県箱根町・箱根湿性花園]

7月4日(火)

★長き柄に団扇の風のぱっさぱっさ  正子
うちわは柄も長く、扇の面積も広いので風もよく来ます。自分だけでなく寝る児など傍にいる人にも風を送って風情があります。それにしても、「ぱっさぱっさ」とは豪快で小気味よい扇ぎぶり、それを座五に置かれて大らかです。(小西 宏)

○今日の俳句
模様替えし部屋に藺草の匂い立つ/小西 宏
住まいは夏を旨とすべし、と言われるように、夏はことに部屋を夏向きに模様替えする。新しい花茣蓙を敷くと、藺草のいい匂いがする。開けた窓からの涼風とともに寛いだ気持ちになれる。(高橋正子)

○松葉牡丹

[松葉牡丹/大船植物園]

7月3日(月)

★鎌倉へ合歓の一樹の花盛り  正子
合歓の木は随所に見られますが、普段はほとんど目につかず、花が咲いて初めて「ああこんなところに合歓が!」と嬉しくなることが多いかと思います。鎌倉へ行かれるご用事の道すがら、一樹の花盛りを見つけられた作者の気持ちが読者にも浮き浮きと伝わってきます。(河野啓一)

○今日の俳句
紫陽花の軒端に雨水たっぷりと/河野啓一
紫陽花が咲く軒端に雨水がたっぷりと溜まっている。たっぷり溜まった雨水がゆたかで涼しい。(高橋正子)

○月見草(待宵草)

[待宵草/横浜日吉本町]

★月見草灯よりも白し蛾をさそふ/竹下しづの女
★待宵草の黄花を空へくっきりと/高橋信之
★月見草の大きな花にさよならを/高橋正子

「月見草」と「待宵草」は、本来違うものであるが、俳句では、いずれも季語「月見草」として詠まれてきた。最近の歳時記では、季語「月見草」の傍題に「待宵草」を取り上げている。「月見草」は、3、4歳上の上級生からその名をよく聞いた。上級生は小学校の高学年から中学1,2年生だったから、竹下夢二のような少女らしいものに憧れる年齢だったのだろうと今思う。しかし、「待宵草」や「宵待草」は上級生の口からは聞かなかったと思う。そして上級生から「月見草」と教えてもらったものは、「大待宵草」ではなかったかと思う。もともとの月見草が白い花であるということは、調べて知った。植物学上の名前と、俳句の季語とは同じではない。俳句の季語にはこうしたものが結構ある。竹下夢二の「宵待草」は、「待宵草」のこと。

 マツヨイグサ属には黄色以外の白、紫、ピンク、赤といった花を咲かせる種もある。標準和名では、黄花を咲かせる系統は「マツヨイグサ」(待宵草)、白花を咲かせる系統は「ツキミソウ」(月見草)と呼び、赤花を咲かせる系統は「ユウゲショウ」(夕化粧)などと呼んで区別しているが、一般にはあまり浸透しておらず、黄花系統種もよくツキミソウと呼ばれる。しかし黄花以外の系統がマツヨイグサの名で呼ばれることはまずない。なお黄花以外の種は園芸植物として栽培されているものが多い。開花時間帯についても、ヒルザキツキミソウなどはその名のとおり昼間に咲く。英語では夜咲き種は evening primerose、昼咲き種を sundrops と呼び区別している。黄花系統種のうち、マツヨイグサ O. stricta やコマツヨイグサは、花が萎むと赤く変色するが、オオマツヨイグサやメマツヨイグサはそれほど赤くはならないので、こういった点でも種を区別できる。
 ツキミソウ(月見草、Oenothera tetraptera、つきみぐさ)は、アカバナ科マツヨイグサ属に属する多年草である。メキシコ原産で江戸時代に鑑賞用として渡来した。花期は6 – 9月ごろで、花は夕方の咲き始めは白色であるが、翌朝のしぼむ頃には薄いピンク色となる。同属種であるオオマツヨイグサ、マツヨイグサ、メマツヨイグサなどのことを「月見草」と呼ぶこともある。また、「月見草油」というサプリメントが流通しているが、ほとんどの場合、本種ではなくマツヨイグサかメマツヨイグサ由来である。
 マツヨイグサ(待宵草)は、アカバナ科マツヨイグサ属の一年生または多年生草本植物で、この語は主にマツヨイグサ属に含まれる植物について種を特定しないで呼ぶ場合に使用される。標準和名マツヨイグサは学名 Oenothera odorata で呼ばれる種を指すが、こうした用法では滅多に使用されない。マツヨイグサ属にはおよそ125の種が含まれており、14節が構成される。どの種も南北アメリカ大陸原産であり他地域には産しない。日本も例外ではなく、野生のものは帰化植物か、逸出した園芸植物のいずれかである。原産地では種により海辺や平野から高山に至るまで幅広く分布するが、パイオニア植物なので、自然状態では平地では河原、砂浜や砂漠、山ではガレ場や、山火事の跡などの荒地や痩せ地に、人為的にかく乱された環境下では鉄道路線沿いや路肩、耕作放棄された畑や休耕田のような場所に生え、他の植物が成長してくると姿を消す。日本では造成中の土地や未舗装の駐車場でもよく見かける。本属植物は、メキシコ北東部からアメリカ合衆国のテキサス州にかけての地域が発祥の地と考えられている。
 種としてのマツヨイグサ O. stricta も、原産地はチリやアルゼンチンといった南米で、嘉永年間(1848年?1853年)に日本にもたらされ、当初観賞用として植えられていたものが逸出し、昭和30年代に同属のオオマツヨイグサ O. erythrosepala とともに空き地などに大群落を形成した。しかし近年はこれも同属のメマツヨイグサ O. biennis に押され、姿を見る機会は減った。草丈は種により異なり、チャボツキミソウのような高山植物では高さ10cm程度、低地産の O. stubbei では3mにまで成長する。葉は開花軸に対して螺旋形に付き、鋸歯を持つか、または深く裂ける(羽状中裂)。花は多くの種において黄色い四弁花で、どの種も雌しべの先端が4つに割れる特徴を有する。一日花であり、多くの種が夕刻に開花し夜間咲きつづけ、翌朝には萎む。これが「月見草」や「待宵草」の名の由来である。

◇生活する花たち「紅かんぞう・オカトラノイ・立葵」(横浜・四季の森公園)

7月1日(土)

 箱根湿性花園
★雲はれて日光黄菅の野にひかる  正子
フェイスブック画面にて正子先生撮影のお写真も見せて頂きました。野に咲く日光黄菅にはっとさせられます。「雲はれて」が一句をつらぬいていて野の風情も大らかに伝わってくるようです。(小川和子)

○今日の俳句
声透る夏うぐいすに森深し/小川和子
森深く入ると、夏うぐいすも、森の深さに比例するかのように声が澄んでくる。鶯の声のよさは、夏うぐいすが一番であろう。(高橋正子)

○布袋草(布袋葵)

[布袋草/フラワーセンター大船植物園]

★布袋草美ししばし舟とめよ/富安風生
★旅果てを土佐の津にあり布袋草/鍵和田?子
★汐入の水門しまり布袋草/田川夏帆
★たらちねの母の乳房や布袋草/加藤雅兄

 ホテイアオイは、南アメリカ原産ということだが、ずっと昔から身近で見たきた。たとえば、瀬戸内は雨が少ないので、田圃の隅に野井戸がある。野井戸は子どもにとっては、危険だが、そこにもびっしりと浮いていたし、大きな池にも浮いて薄紫の涼しそうな花をつけていた。ぷくっと膨れた葉柄が面白い。ぷちっと押しつぶしたりして遊んだが、ホテイアオイが水に浮くのは、このぷくっと膨らんだ葉柄のせいだと思っていたが、そういう訳でもないだろう。
松山市内のマンションで暮らしたとき、目の前に池が見えた。ポプラの木立がまばらにあって、その向こう側が池になっていたが、ここにホテイアオイが浮いていた。住み始めたころは、わずかだったが、4,5年経つと、池を覆うほど広がった。我が家を訪ねる人の中には、そのホテイアオイを池からとって家に持ち帰るという人も現れた。一つ水に浮かべれば、すずしい景色になる。

★水遣りの水がかかりし布袋草/高橋正子

 ホテイアオイ(布袋葵、学名 Eichhornia crassipes (Martius) Solms-Laubach)は、単子葉植物ミズアオイ科に属する水草である。南アメリカ原産で、水面に浮かんで生育する。花が青く美しいので観賞用に栽培される。別名ホテイソウ、ウォーターヒヤシンス。池などの流れの少ない水面に浮かんで生育する水草。葉は水面から立ち上がる。葉そのものは丸っぽく、艶がある。変わった特徴は、葉柄が膨らんで浮き袋のようになることで、浮き袋の半ばまでが水の中にある。茎はごく短く、葉はロゼット状につく。つまり、タンポポのような草が根元まで水に浸かっている形である。水中には根が伸びる。根はひげ根状のものがバラバラと水中に広がり、それぞれの根からはたくさんの根毛が出るので、試験管洗いのブラシのようである。これは重りとして機能して、浮袋状の葉柄など空隙に富んだ水上部とバランスを取って水面での姿勢を保っている。夏に花が咲く。花茎が葉の間から高く伸び、大きな花を数個~十数個つける。花は青紫で、花びらは六枚、上に向いた花びらが幅広く、真ん中に黄色の斑紋があり、周りを紫の模様が囲んでいる。花が咲き終わると花茎は曲がって先端を水中につっこむ形となり、果実は水中で成長する。熟した果実は水中で裂開し、水中に種子をばら撒く。種子から発芽した実生は最初から浮き草状の生活型をとるのではなく、浅い水中や水辺の泥の上で土中に根を下ろして成長し、株が大きくなると葉柄に浮袋を生じて水面に生活の場を広げていく。また、茎から水平に枝を伸ばし、その先端に芽が生じて新しい株を作る。これによって素早く数を増やし、大きな集団になる。集団がさらに大きくなり、水面を埋め尽くすようになると、互いにより掛かり合って背が高くなり、分厚い緑の絨毯を水面に作り上げる。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)