10月17日(火)

★林檎手に送られ来しが赤ほのと  正子
送り届けられた林檎を手にして、胸の内までがぽっと明るく灯されたような、「赤ほのと」のあたたかさです。新鮮な季節の実りをいただく喜び、送り手への感謝の気持ちが感じとれます。 (藤田洋子)

○今日の俳句
真珠筏浸し秋の海澄めり/藤田洋子
「浸し」が秋海の澄んだ水をよく感じさせてくれる。秋海の澄んだ水に浸され殻を育てている真珠は、美しく輝く珠となることであろう。(高橋正子)

○孔雀草(くじゃくそう)

[孔雀草/横浜日吉本町]

★開ききり咲き重なって孔雀草/高橋正子
 
 孔雀草(くじゃくそう、学名:Aster hybridus 英名:Frost aster)は、キク科シオン属の多年草。Aster : シオン属、hybridus : 雑種の、Aster(アスター)は、ギリシャ語の「aster(星)」から。花のつき方のようすに由来。北アメリカ原産で、わが国には昭和30年代に導入された。花壇や切り花によく用いられている。よく分枝して株立ちし、高さは40~120センチになる。葉は披針形から倒披針形で互生し、7月から9月ごろ、白色から淡紫色の花をいっぱい咲かす。別名で孔雀アスター、キダチコンギク(木立紺菊とも呼ばれます。9月5日、11月23日の誕生花(孔雀草)。花言葉は 「いつも愉快、ひとめぼれ」。似ている花は、都忘れ、紫苑、紺菊、関東嫁菜。

◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

10月16日(月)

★色ようやく見えてくれない菊蕾   正子
 垣根や畑の隅に乱れ咲くものをはじめ、菊作りに栽培された豊麗な大輪の花など、その種類は数千、色も形もさまざまだが、ようやく菊のつぼみがふふみて紅色の菊が咲く予感を感じさせてくれる。楽しみな時期です。(小口泰與)

○今日の俳句
★直立の日矢や藁塚一列に/小口泰與
朝早くだろう。山里などでは日が高く昇り、日矢は真上近くから差し込んでくる。それを「直立の日矢」といった。その日矢が一列に並ぶ藁塚に差し、山里は神々しいまでの朝だ。(高橋正子)

●アミノインデックスの検査予約をする。10月23日(月)午前中。血液5mlで、十数種類の癌の罹患が予想できる。

○零余子(むかご)

[零余子/横浜日吉本町]           [零余子/ネットより]

むかご(零余子,珠芽[1])とは植物の栄養繁殖器官のひとつ。主として地上部に生じるものをいい、葉腋や花序に形成され、離脱後に新たな植物体となる。葉が肉質となることにより形成される鱗芽と、茎が肥大化して形成された肉芽とに分けられ、前者はオニユリなど、後者はヤマノイモ科などに見られる。両者の働きは似ているが、形態的には大きく異なり、前者は小さな球根のような形、後者は芋の形になる。いずれにせよ根茎の形になる。ヤマノイモなどで栽培に利用される。
食材として単に「むかご」と呼ぶ場合、一般にはヤマノイモ・ナガイモなど山芋類のむかごを指す。灰色で球形から楕円形、表面に少数の突起があり、葉腋につく。塩ゆでする、煎る、米と一緒に炊き込むなどの調理法がある。また零余子飯(むかごめし)は晩秋・生活の季語である。

◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

ご挨拶/10月例ネット句会


ご挨拶
10月月例句会にご参加ありがとうございました。入賞の皆様おめでとうございます。コメントもそれぞれに句にいただき、句を別の角度から、あるいは、深く読むことができ、よい勉強になりました。10月の6日(スエーデンでは5日)には、ノーベル文学賞が長崎生まれのカズオ・イシグロさんだったこともあり、文学への関心も高まり、内へ内へとなりがちな俳句に明るい見通しができた感じがしました。来月は11月第2日曜日の12日に開催します。ご健吟ください。
今月は、添削教室の案内を見て投句された方がお二人おられ、ご参加ありがとうございました。これで、10月月例ネット句会を終わります。(主宰/高橋正子)

10月15日(日)

  横浜北八朔・梨園
★梨の実に白雲の空広がれる   正子
梨は春に白い桐か雲のように見える白い花を咲かせ、秋に結実します。今頃果樹園には、秋空の下、二十世紀、長十郎、豊水、幸水など、濃淡いろいろな大きな果実が実っている頃でしょう。季節の移り変わりと、実りの豊かさを実感させられる伸びやかな詠みが素敵です。(河野啓一)

○今日の俳句
苅田広き明日香村なる棚田かな/河野啓一
奈良、明日香村も稲刈りがほとんど済んで刈田が広がっている。棚田のある村に古代より繋いできた人々のゆかしい暮らしが見える。(高橋正子)

●朝からしとしと雨。炬燵に電気を入れる。信之先生の寝室にデロンギを出す。夕方句美子の家に行くのに電車に乗るとがらがら。一人知人を見かけたが、目もくれず読書に没頭。

句美子は、パイ生地が出来る前の古風なアップルパイをお菓子教室で焼いたと食べさせてくれる。生地は中力粉とサラダ油を捏ね、薄くのばしたものに、林檎の砂糖煮にパン粉を加えた具を2回巻にして焼いている。見た目は中世風の画のようだ。味は、パイ生地のほうが美味しい。お菓子教室には6年ぐらい通っているので、時々ヨーロッパの古いお菓子を作るようだ。

  多摩川
遠き灯も橋の秋の灯鉄橋鳴り    正子
秋霖の湿りフリージャよく芽生え  正子
クロッカス植えたる鉢の土こぼれ  正子

○烏瓜

[烏瓜の実/横浜日吉本町]      [烏瓜の花/ネットより]

◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

10月14日(土)

★秋宵宮星に声あぐ子の行列  正子
秋宵宮の祭りは全国の神社で行われる祭りで、神楽の奉納など神社によって違いはあるようです。法被を着た子供たちも行列をになって参加、夜空の星を見上げて、美しい星に声をあげている。都市部の宵宮でなく祭りの提灯の灯と小さな街灯しかない美しい星空の見える山間部の宵宮を想像しました。(古田敬二)

○今日の俳句
ひそと鳴る秋播き種はポケットに/古田敬二
秋播きの種をポケットに入れて、これから畑に出かけるのか。「ひそと鳴る」には、種の小ささもあるが、その音を一人聴きとめた作者の種への愛おしみがある。軽やかながら味わいがある句。(高橋正子)

●コープに「サンタクロース」の手紙を頼む。いよいよそんな季節。12月1日まで必要事項を書いて投函すれば、スエーデンのサンタワールドへ送ってくれるとのこと。4歳の元希は郵便屋さんと宅急便の車が来るのが大好きらしい。たしかに、いいことだけを運んで来ている。

雨は降ったり止んだり。信之先生が炬燵が欲しいのいうので出す。出すといっても、炬燵は年中机として使って、パソコンを載せている。それに炬燵布団を掛けるだけだが、本など色々載っているので一仕事。

○力芝(チカラシバ)

[力芝/横浜・横浜市港北区松の川緑道] [力芝/横浜・四季の森公園]

★力芝ひかりまみれの昼下がり/高橋正子
★畦道の力づよさに力芝/高橋正子
★理科教師力芝をまず教え/高橋正子

 チカラシバ(力芝、学名:Pennisetum alopecuroides)は、単子葉植物イネ科チカラシバ属の多年草。道端によく見かける雑草のひとつで、ブラシのような穂が特徴的である。地下茎はごく短く、大きな株を作る、根元から多数の葉を出す。葉は細長く、根元から立ち上がる。葉はやや丸まる。花茎は夏以降に出て、真っすぐに立つ。花軸は枝分かれせず、先端近くの軸に多数の針状の毛に包まれた小穂がつく。小穂は最初は軸から斜め上に向けて出るが、果実が熟するにつれて軸から大きい角度をもつようになり、つまり開出して、全体としてビン洗いのブラシや、試験管洗いのような姿になる。果実が熟してしまうと、果実は小穂の柄の部分から外れるので、あとには軸だけが残る。小穂は短い軸の先に一つだけつく。小穂の基部の軸から針状の毛が多数伸びる。小穂は披針形で長さ7mmほど、二つの小花を含むが、一つ目は果実をつけず、雄花となることも多い。第一護頴はほとんど退化、第二護頴は小穂の長さの半分。果実は先端の毛と共に外れ、これが引っ掛かりとなって大型動物の毛皮に引っ掛かるようになっている。いわゆるひっつき虫で、毛糸などの目の粗い衣服によく引っ掛かる。果実の先端から潜り込むようにして引っ掛かることが多い。
 日本、朝鮮半島、中国からフィリピン、マレー半島からインドまで分布する。日本国内では北海道南西部以南のほとんど全土で見られる。道端にはえる雑草で、大きな株になる。非常にしっかりした草で、引き抜くにも刈り取るにもやっかいである。和名の「力芝」もひきちぎるのに力がいることに由来する。穂から多数の毛が伸びてブラシ状になるものとしては、他にエノコログサ類があるが、たいていは穂の先がたれる。また、他にも穂に多数の毛や芒を出すものはあるが、このようなブラシ状のものはあまりない。

◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

10月13日(金)

★パソコンを消して露散る夜となりぬ  正子
パソコンを消すのは、夜も更けた時刻なのでしょう。気が付けば露散る夜となっているほど、真剣になっていたと思われます。(高橋秀之)

○今日の俳句
朝霧が包む港に汽笛鳴る/高橋秀之
素直な句で、朝霧に鳴る汽笛がのびやかに聞こえる。朝霧に包まれた港がこれから動き出そうとしているのであろう。(高橋正子)

●今朝起きると物干し竿に雨粒。昨日と打って変わって、11月の気温になるという。16度が最高気温らしい。
俳壇から、昨日送った原稿が届いたと、葉書。著者校正はないとのこと。

○葛の実

[葛の実/横浜・四季の森公園(2011年10月20日)]_[葛の花/横浜日吉本町(2012年8月9日)]

★葛の実の鈴なりなれど軽きかな/高橋正子
★葛の実の茶毛いかにも野草らし/高橋正子

葛の花はその濃紫の色もさることながら、芳香が楽しめる。葛の根は、葛粉となって高価なもの。本物の葛粉で作った葛餅は、喉越しがまるで違う。すっきりとした水を味わうような感じだ。葛は日本中に蔓延っている。葛の実を意識して見ることは私自身ほとんどないが、秋風が葛の葉を白く裏返して吹くときなど、枝豆のような莢が目に入る。葛は豆科かなと思う。それにしては、莢が枯れそうになっても実が充実しないなと思うような具合だ。莢を割って見ようなど思ったこともないが、ゴマ粒ほどの小さな豆が入っているようだ。

 クズ (Pueraria lobata) は、マメ科のつる性の多年草。根を用食品の葛粉や漢方薬が作られ、花は、万葉の昔から秋の七草の一つに数えられる。漢字は葛を当てる。
 葉は三出複葉、小葉は草質で幅広く、とても大きい。葉の裏面は白い毛を密生して白色を帯びている。地面を這うつるは他のものに巻きついて10メートル以上にも伸び、全体に褐色の細かい毛が生えている。根もとは木質化し、地下では肥大した長芋状の塊根となり、長さは1.5メートル、径は20センチにも達する。花は8-9月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、濃紺紫色の甘い芳香を発する花を咲かせる。花後に剛毛に被われた枝豆に似ている扁平な果実を結ぶ。花色には変異がみられ、白いものをシロバナクズ、淡桃色のものをトキイロクズと呼ぶ。和名は、かつて大和国(現:奈良県)の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。
 葛の実は、8月から9月にかけて咲く花の後、すぐに緑の豆の莢となって鈴生りにぶら下がる。その後に時間をかけて成熟してきた実は、くすんだ焦げ茶色に変色し、枯れた葉と共に舞い落ちる。落ちてくるときは、たいてい一莢ずつになっているが、たまにはいくつかつながったままのこともある。莢の幅は1cm弱ほど、長さは3~6cmほど、厚みも重さもほとんど感じられない。莢の表面は茶色の毛で覆われている。莢を開いてみると、莢の内側は光沢があり、そして、長さ2mm、幅1mm強ほどの小さな豆が出てくる。

◇生活する花たち「秋海棠・銀木犀・金木犀」(横浜日吉本町)

10月12日(木)

★りんどうに日矢が斜めに差し来たり  正子
お日さまがりんどうに当たりだし、濃青色の花を周囲に見せてくれだしました。(祝恵子)

○今日の俳句
秋夕焼け飛行機雲も包まれて/祝恵子
夕焼けの中に延びる飛行機雲。その飛行機雲までも夕焼けにすっぽり包まれて茜色に染まっている。秋夕焼けに染まる空を見れば、温かい思いになる。(高橋正子)

●俳句界12月号の結社広告の原稿をメールで送る。ついつい遅くなるが、メールのお陰で間に合う。
今日は暑くで29度あったようだ。

○柚子(ゆず)

[本柚子/横浜・四季の森公園]            [鬼柚子/横浜日吉本町]

★子籠の柚の葉にのりし匂ひ哉 其角
★柚の色に心もとりぬ魚の店 多代女
★精進日や厨きよらに柚の匂ひ 梧堂
★荒壁や柚子に梯子す武者屋敷/正岡子規
★鬼柚子をもらひそこねし手ぶらかな/川崎展宏
★柚子打の出てゐる愛宕日和かな/長谷川櫂
★柚子ジャムの煮ゆる日風の窓打つ日/川上久美
★青柚子の香りの中の夕餉かな/加藤みき
★柚子黄なり峡に朝日の射しわたり/阿部ひろし

 柚子の果汁を薄めて飲むジュースが流行った。高知発のものらしく、我が家でも高知から送られてきたことがある。デパートでも試飲を勧められた。お盆のお客と、開け広げた夏座敷で氷を入れて飲むのも映画のシーンのようでいいものだろうと、想像した。レモンに比べると、絶対、日本の香り、日本の味であると思う。日本料理には、欠かせない。愛媛の砥部焼の町の山里に、峠の途中から脇道に逸れ、別の谷に入るところがある。ちょっとしたレンガの隧道があって、すすきの穂を掻き分けてゆくと、柚子の熟れる谷がある。民家は一軒もなく、ただ柚子が熟れているだけの谷。昔話の時代に戻ったような錯覚が起きる谷だ。谷間にはあたたかい日差しが溜まる。曇れば、柚子の黄色がさびしい色あいになる。柚子の木は、田舎にゆけば家庭の庭に植えられている。夕飯の支度をしながら、必要ならばもいでくる。柚子の香りに、また果汁に、主婦は料理の腕前が少し上がったような気になるのだ。

★俎板に切り置く柚子の黄のかけら/高橋正子

 ユズ(柚子、学名:Citrus junos)は、ミカン科の常緑小高木。柑橘類の1つ。ホンユズとも呼ばれ、果実は比較的大きく、果皮の表面はでこぼこしている。果実が小形で早熟性のハナユズ(ハナユ、一才ユズ、Citrus hanayu)とは別種である。日本では両方をユズと言い、混同している場合が多い。タネの多いものが多い。また獅子柚子(鬼柚子)は果実の形状からユズの仲間として扱われることがあるが分類上はザボンや文旦の仲間であり別品種である。
 消費・生産ともに日本が最大である。柑橘類の中では耐寒性が強く、極東でも自生出来る数少ない種である。酸味は強く香りもある。日本では東北以南で広く栽培されている常緑小高木である。花言葉は”健康美”と言われる。また、柑橘類に多いそうか病、かいよう病への耐久があるためほとんど消毒の必要がなく、他の柑橘類より手が掛からない事、無農薬栽培が比較的簡単にできる事も特徴のひとつである。なお、収穫時にその実をすべて収穫しないカキノキの「木守柿」の風習と同様に、ユズにも「木守柚」という風習がある地方もある。成長が遅いことでも知られ、「ユズの大馬鹿18年」などと呼ばれることがある。このため、栽培に当たっては種から育てる実生栽培では結実まで10数年掛かってしまうため、結実までの期間を短縮する為、カラタチに接木することにより数年で収穫可能にすることが多い。
 本ユズは、中華人民共和国中央および西域、揚子江上流の原産であると言われる。日本への伝播については直接ないし朝鮮半島を経由してきたと言われるが、どちらであるかは定かではない。日本の歴史書に飛鳥時代・奈良時代に栽培していたという記載があるのみである。花ユズは日本原産とも言われるが、詳しいことは判らない。柚子の語源は中国語の「柚(you)」である。しかしながら、現代中国語ではこの言葉は「文旦」を指してしまう。現在は「香橙(xi?ngcheng)」が柚子を指す言葉であり、なぜその語彙が変化したのかは不明である。日本で「柚」が「柚子」になったのは、古来の食酢としての利用によるところが大きいといわれる。「柚酢」が「柚子」になったと言われているが、確かなことは不明である。韓国語でも漢字表記をする場合は「柚子(yuja)」と書くが、その語源については正確な記録が一切無いため全くの不明である。
 日本国内産地としては、京都市右京区の水尾、高知県馬路村や北川村など高知県東部地方の山間部が有名である他、山梨県富士川町や栃木県茂木町、最も古い産地の埼玉県毛呂山町等、全国各地に産地がある。海外では、韓国最南部の済州島や全羅南道高興郡など、中華人民共和国の一部地域で栽培されている。

◇生活する花たち「いぬたで・金木犀・やぶまめの花」(四季の森公園)

10月11日(火)

★鵙の声青空あればどこからも  正子
深まりゆく秋を象徴するかのような鵙の鳴き声は、キチキチとも、又、チュンチュンとも鳴き、見上げる青空の深さを一層覚えます。まさに青空の何処からも聞こえてくるようです。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
青空のあおに木魂す鵙の声/桑本栄太郎
「キチキチキチ」と鋭い鵙が声がするが、その正体はどこかと思うことがある。青空のあおに抜けて行く声であるが、よく聞けば「木魂」している。その声がはね返って、また耳に入るような。(高橋正子)

●『俳壇』12月号の女性主宰特集の原稿を送る。締め切りは明日。女性主宰は全国で150人いるとのこと。9月号が第1回、12月号が第2回。一人1ページ宛で、当季(冬)新作5句とアンケート。アンケートの質問は、的を得ていると思う。この特集のため特に吟行したわけではない。

○榠?(カリン)・木瓜(ぼけ)

[榠?の実/横浜日吉本町]           [木瓜の花/横浜日吉本町]

★くらがりに傷つき匂ふかりんの実/橋本多佳子
★かりんの実しばらくかぎて手に返す/細見綾子
★にこにことかりん甲乙つけがたし/堀米秋良
★枝撓むほどになりたる花梨かな/瀬島洒望
★売り家の庭に花梨が熟れている/川上杜平
★花梨の実たわわ果実酒思いたつ/島崎冨志子

 かりんのを手にすると、いい匂いと表皮のねっとりした感触が伝わる。色合いも形も文人好みである。一つ二つのかりんをもらっても、何にしてよいのかわからないまま、テーブルなどに飾りのように置く。そして、その傍でものを書いたりしていると、その匂いに倦んでくる。そしてついに捨てられる。かりん酒などは、たとえ思いついても、作りはしない。かりんの実が熟れるころ、在所の祭りがある。墨痕鮮やか祭りの幟をはためかす風に、かりんは黄色く色づくのだ。

★テーブルに置いて花梨の実が匂う/高橋正子
★花梨の実祭り幟がはためくに/高橋正子

 カリン(榠?、学名:Chaenomeles sinensis)は、バラ科ボケ属の落葉高木である。その果実はカリン酒などの原料になる。マメ科のカリン(花梨)とは全くの別種である。ボケ属(Chaenomeles)としての表記が多いが,C. K. Schneider はカリン属(Pseudocydonia)として一属一種説を発表している。マルメロ属(Cydonia)の果実も「かりん」と称されることがあるが,正しくはマルメロである。別名、安蘭樹(アンランジュ)。中国では「木瓜」と書く。ボケ属の学名は,ギリシャ語の「chaino(開ける)+melon(リンゴ)」が語源で、「裂けたリンゴ」の意味。果実は生薬名を和木瓜(わもっか)という(但し和木瓜をボケやクサボケとする人もあるし、カリンを木瓜(もっか)とする人もいる。これらカリン、ボケ、クサボケは互いに近縁の植物である)。 なお,日本薬局方外生薬規格においてカリンの果実を木瓜として規定していることから,日本の市場で木瓜として流通しているのは実はカリン(榠?)である。
 原産は中国東部で、日本への伝来時期は不明。花期は3月?5月頃で、5枚の花弁からなる白やピンク色の花を咲かせる。葉は互生し倒卵形ないし楕円状卵形、長さ3?8cm、先は尖り基部は円く、縁に細鋸歯がある。未熟な実は表面に褐色の綿状の毛が密生する。成熟した果実は楕円形をしており黄色で大型、トリテルペン化合物による芳しい香りがする。10?11月に収穫される。実には果糖、ビタミンC、リンゴ酸、クエン酸、タンニン、アミグダリンなどを含む。適湿地でよく育ち、耐寒性がある。
 花・果実とも楽しめ、さらに新緑・紅葉が非常に美しいため家庭果樹として最適である。語呂合わせで「金は貸すが借りない」の縁起を担ぎ庭の表にカリンを植え、裏にカシノキを植えると商売繁盛に良いとも言われる。カリンの果実に含まれる成分は咳や痰など喉の炎症に効くとされ、のど飴に配合されていることが多い。渋く石細胞が多く堅いため生食には適さず、砂糖漬けや果実酒に加工される。加熱すると渋みは消える。

◇生活する花たち「ノダケ・シロバナサクラタデ・ユウガギク」(東京白金台・国立自然教育園)

10月10日(月)

★辻に出て通う秋風身にまとう  正子
十字形に交わった道路に出ると四方よりの秋風が爽やかに通り抜けている。その風を総身にまとった一時の心地よさと「もう秋も深まって来たな」との季節の移ろいに寂しさをも感じられる御句です。(佃 康水)

○今日の俳句
満月や瀬戸の潮騒高まりぬ/佃 康水
月に左右される潮の干満。満月が昇ると、おだやかな瀬戸もざわざわと潮騒が高まる。潮騒の高まりに、ますます輝く満月となって、臨場感のある句となった。(高橋正子)

●俳句界に来年の結社広告料を収める。四分の一ページ。81000円。本日が締め切り。事は約束期限を遅れずに進んでいる。

○犬升麻(イヌショウマ)

[犬升麻/横浜・四季の森公園]

★秋の野の不思議の花にイヌショウマ/高橋正子
★釣舟草の隣に咲いてイヌショウマ/高橋正子

イヌショウマ(学名:Cimicifuga japonica)は、キンポウゲ科サラシナショウマ属のひとつで、山地の林内に生える高さ60~80センチの多年草。地下茎が発達し横にのびる。根生葉は1~2回3出複葉。小葉はやや硬く掌状に裂け、裂片のふちに不ぞろいのするどい鋸歯がある。葉の両面とも脈に短毛がある。つぼみは紅梅色のような色で、花は白色で穂状に多数つく。つぼみが開くと花弁と萼は落ちてしまい、白色の雄しべが花のように見える。よく似た種類にサラシナショウマがあるが、サラシナショウマは花柄(有柄の白い花)が、はっきりとわかるが、イヌショウマは花に柄がないので違いがよく分かる。花期は7~9月。名前のイヌショウマは、サラシナショウマが薬用(茎葉が枯れてから根を日干しにして用いる。)として用いられるのに対し、薬用にならないためつけられている。分布は、本州(関東から近畿地方)

◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

■10月月例ネット句会/入賞発表■


■2017年10月月例ネット句会■
■入賞発表/2017年10月9日

【金賞】
★いのこづち籾殻着けて猫帰る/柳原美知子
飼っている猫が、いのこづち、籾殻をつけて帰ってきた。草むらを踏んだり、田圃で転がったり、一日楽しく遊んだのだろう。猫の楽しい野の一日は作者の楽しさにもなっている。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★月昇り母の背眠る法被の子/藤田洋子
月が昇り、祭りの賑わいの疲れか、法被の子はすやすやと母の背に眠っている。夢見るような母子像だ。(高橋正子)

★輝ける銀杏黄葉の樹下に入る/谷口博望(満天星)
銀杏黄葉の金色の輝きが作る樹下。その輝きに入ると、神々しいような日常とは違う世界だ。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★酔芙蓉二階から鳴るジャズピアノ/古田敬二
酔芙蓉の古風さと色香。二階から聞こえるジャズピアノ。ロマンスグレーの住人か、その息子が弾いているのか、と思ったりする。(高橋正子)

★秋空のなかで建設作業中/多田有花
高層の建物が建てられる昨今は、建設作業は空の中ということが多い。秋晴れの空のなかで、建設作業が見事に進む。これも人間の技。(高橋正子)

★ホームから残業帰りの十三夜/高橋秀之
残業帰り、駅のホームから十三夜の月が見えた。十三夜のまだ満ちぬみずみずしい月にほっとするひととき。よい時間。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★輝ける銀杏黄葉の樹下に入る/谷口博望(満天星)
早くも黄金色に色付く嬉しい秋の彩り。鮮やかに輝く黄葉の樹下に入り、自然との一体感の中、明るく華やいだ気持ちを抱かせてくれます。 (藤田洋子)

★いのこづち籾殻着けて猫帰る/柳原美知子
家猫のあちこちと動き回っている姿が浮かび、楽しい句ですね。 (祝恵子)

★名月がやがて出る空仰ぎけり/多田有花
晴天の十五夜となり、空は紺色を深め、いよいよ雲の中から名月が光を放ってきそうだ。名月を心待ちにする臨場感が表れています。(柳原美知子)

★オランダの孫にメールを十三夜/河野啓一
遠くオランダに住むお孫さんにも十三夜の月は見えるのか、メールでの楽しいやりとりと充実したお暮しぶりが伺えます。(柳原美知子)

★特攻も飛びし空なり赤とんぼ/タイチ
戦争の体験から、特攻と赤とんぼが繋がったと思う。特攻の悲しみ、赤とんぼの郷愁。平和の空があるからこその俳句。(高橋正子)

★秋空のなかで建設作業中/多田有花
★月上り母の背眠る法被の子/藤田洋子
★コスモスに雲がゆたかに寄り集う/高橋正子

【高橋正子特選/8句】
★ホームから残業帰りの十三夜/高橋秀之
残業で疲れて帰りの電車を待つ間、プラットホームから仰ぐ澄み切った十三夜の月に心もなごみ、ほっと一息つくことができたことでしょう。(柳原美知子)

★酔芙蓉二階から鳴るジャズピアノ/古田敬二
夕方の光景と思われますが、美しい秋のたそがれ時に二階よりジャズピアノが聞こえ、通りがかりに聞いている作者自身も酔芙蓉の花も、酔い痴れているようである。 (桑本栄太郎)

★独り居て夜気爽やかに今日終える/高橋信之
過ごしやすいころになりました。何かをやりおえて一日を終え、それをひとり振り返る夜のひとときです。充実した日々を感じる爽やかな句です。(多田有花)

★雲きれて名月すっきり山の端に/多田有花
雲で見えないと思っていたら、切れ間に山の端にすっきりとした月が見えました。何もない時と違いそのひとこまの光景に感動が伺えます。 (高橋秀之)

★秋空のなかで建設作業中/多田有花
★輝ける銀杏黄葉の樹下に入る/谷口博望(満天星)
★月昇り母の背眠る法被の子/藤田洋子
★いのこづち籾殻着けて猫帰る/柳原美知子

【入選/15句】
★木道の野末や尾瀬の秋の雲/小口泰與
尾瀬の湿原に設置されている木道を通り抜けてゆく。すると晴天だろうか、雲がぽっかりと浮かんでいる。たまには、そのような散策に行ってみたいと思う。 (むつ)

★夜明け前ひと雨過ぎて秋祭り/藤田洋子
雨でお祭りが流れるかどうか気を揉んでいたら、夜明け前に一雨通りすぎて楽しみにしていたであろう秋祭りに気を馳せる朝の目覚めを感じます。 (高橋秀之)

★伸ばす手の反りの美しきや風の盆/廣田洋一
富山県八尾町で、9月1日?3日の3日間「越中おわら節」を歌い、踊り明かす踊り手の素敵な手の所作に魅せられている作者。素晴らしい風の盆の景ですね。 (小口泰與)
越中八尾の風の盆。編み笠を深くかぶり、顔を隠して静かな坂の街を踊る。カメラの焦点は女性の踊り手の指に合わせられる。細い白い指がきれいに反る.その情景が浮かぶ句である。 (古田敬二)

★中天に雲伴わず望の月/古田敬二
今年の15夜は、月がでたと思ったら、雲に隠れてしまい、中天に上る頃になって雲から離れて丸い月を観ることができた。それを雲伴わず望の月と表現したのが上手い。 (廣田洋一)

★冬瓜の艶めく色も転がされ/祝恵子
冬瓜のずどんとした形、その形が転がされた面白さ。色も深い緑がいきいきとして艶めいていいる。愛すべき冬瓜である。(高橋正子)

★雲走るままに照らさる月今宵/桑本栄太郎
名月の前をときおり雲が走ります。そこに月光があたり美しく輝きます。月を仰ぎ、雲も月光も楽しんでおられる様子が浮かびます。 (多田有花)

★ビル影の高きにありぬ望の月/桑本栄太郎
ビル影という都会から見える月は、高く見上げる位置にあります。ビル影という響きと望の月に対称を感じました。 (高橋秀之)

★秋晴れやどこかで山羊が鳴いている/柳原美知子
秋晴れのひととき。山羊の声は聞こえるが、どこにいるのか分からない。のどかな秋のひとときです。 (高橋秀之)

★間引菜の土とかがやき抱え来る/柳原美知子
間引菜を手にたずねてくださった方がありました。間引菜そのものもうれしいですし、訪問もうれしい。お互いににこにこ。「かがやき」にそれが見て取れます。 (多田有花)

★通天閣の先に大きく鰯雲/高橋秀之
見上げる通天閣の上に広がる一面の美しい鰯雲、心晴々と広やかな光景です。お暮らしの中で実感された心地よい季節の喜びが伝わります。(藤田洋子)

★握りたる手の暖かき良夜かな/廣田洋一
月の明るい美しい夜をいっそう感じさせてくれる手の温もり。良夜の優しい光に包まれて、ほのぼのとした幸福感が漂います。(藤田洋子)

★流星やメモせぬ俳句消えやすし/小口泰與
メモをしていない俳句は、覚えているつもりでも、消えている。流星のようだと思う。印象深い驚きがあるが、消えてしまえば、何もないように。(高橋正子)

★明け方の枯野の色の散歩道/むつ
散歩道は気づけば枯野の色となっている。いつの間にか、季節が進んで、明け方の冷え込みも増してくる頃だ。(高橋正子)

★秋行くやトランペットの「千の風」/谷口博望(満天星)
「千の風」の歌をトランペットで演奏するとどんな感じか。華やかなはずのトランペットの音色が哀愁を帯びている。(高橋正子)

★秋の夜自販機明るく道しるべ/高橋秀之
暮れるのが早い秋。夜となれば、すっかり暗くて、自動販売機が赤々と灯り、、安心の気持ちが湧く。道しるべなのでだ。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★独り居て夜気爽やかに今日終える
過ごしやすいころになりました。何かをやりおえて一日を終え、それをひとり振り返る夜のひとときです。充実した日々を感じる爽やかな句です。 (多田有花)

★秋冷の闇の奥から少しの風
★さわやかに朝日射しくるパソコンに

■選者詠/高橋正子
★窓を開け月光少し入らしめぬ/高橋正子
まるで月光がたずねたきた大事なお客様であるかのようです。「いらっしゃいませ」と少し窓を開け、月の光を入れます。名月ならではで、その夜を楽しんでおられます。 (多田有花)

★コスモスに雲がゆたかに寄り集う/高橋正子
青空に色とりどりのコスモスが揺れる中、白雲が次々と湧き、秋の風と光が感じられる美しい情景です。(柳原美知子)

★上りつめ坂の上なる金木犀/高橋正子

■互選高点句
●最高点(5点/同点2句)
★酔芙蓉二階から鳴るジャズピアノ/古田敬二
★独り居て夜気爽やかに今日終える/高橋信之

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)