■4月月例ネット句会入賞発表


■2018年4月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年4月8日

【金賞】
★一本のチューリップいま切りしもの/ 祝恵子
直截な俳句の良さが生かされた句。チューリップの瑞々しく、生き生きとした花が、たった今、一本だけ、切られることによって、明らかになった。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★青空へ二階の子が吹くシャボン玉/古田敬二
シャボン玉が青空へ吹かれる。二階の子が吹くと、より青空に近く吹かれる。「二階」という階は、地上から少し離れた生活圏。シャボン玉を吹く楽しさが伝わってくる。(高橋正子)

★花の間に稜線青き皿ケ嶺/柳原美知子
花と花の間に、稜線が青い皿ケ嶺を描き出している。花の色と青い嶺とういう色彩的に鮮やかな景色が清々しい。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★花の雲利根へ利根へと急(せ)く支流/小口泰與
利根川の支流は山間を流れる。雪解け水に、ますます急く川となって花の雲の下を流れる。山間の冷や冷やとした空気が感じられる。(高橋正子)

★うきうきとと夕日の中に散るさくら/河野啓一
散る桜は美しくも哀しさがあるものだが、夕日を受けた桜は、うきうきとして、まるで極楽に咲く桜のようである。作者の心がこのようであるのだろう。(高橋正子)

★花蘇枋雨の上がりし窓を拭く/藤田洋子
蘇芳の花の色は、そのまま「蘇芳」と呼ばれる日本の美しい色。雨上がりに、窓を拭くのは窓に湿りがあって、汚れが落ちやすいので、合理的なこと。地味な句だが、生活をじっくりと捉えて詠んだ佳句だ。(高橋正子)

【高橋信之特選/9句】 
★初燕池は青空映しおり/古田敬二
快晴の青空のもと、池の上を初燕が飛んでいったのでしょう。春の爽快さを感じます。 (高橋秀之)

★一本のチューリップいま切りしもの/ 祝恵子
庭に咲くチューリップを切り、花瓶に生ける。冬の寒さを耐えて土を破り茎をのばし花を咲かせる。精魂込めて咲かせた一本のチューリップに寄せる思いが感じられる。 (古田敬二)

★リハビリ終え花満つ土手を送らるる/柳原美知子
リハビリを終えた充足感に満開の花の美しさ。明るく前向きなお姿に、花の季節の喜びがいっそう感じられます。 (藤田洋子)

★木の枝の芽吹く先には大空が/高橋秀之
芽吹く木々の枝先に、見上げる空の広やかさ。春を迎えた伸びやかな光景に、新たな季節の明るい希望が感じとれます。 (藤田洋子)

★花の間に稜線青き皿ケ嶺/柳原美知子
四国は中央に山脈がとおり、その山が意外に険しいところです。満開の桜、そのむこうに郷土の山が青く見えます。 (多田有花)

★初蛙棚田の泥に声転がし/高橋正子
今年初めての蛙の声に耳を澄ますと、棚田の泥の中で体中から声を出して懸命にないているようです。泥の中の蛙はユーモラスでもあり、生き物への温かい視線が感じられる楽しい句ですね。 (柳原美知子)

★名を呼んで駆け寄りし子と花の昼/藤田洋子
桜も咲きほころぶ中、可愛い盛りのお孫さんとの至福のひとときに安らぎと希望が感じられます。 (柳原美知子)

★青空へ二階の子が吹くシャボン玉/古田敬二
★花蘇枋雨の上がりし窓を拭く/藤田洋子

【高橋正子特選/9句】
★うきうきとと夕日の中に散るさくら/河野啓一
さくら見物は気持ちがうき浮きとします。やがて夕日が出て、さくらも散りだし、夕日に映えてさらに気持ちも高揚してきます。 (祝恵子)

★桜散り芽生える緑に見える夏/高橋成哉
桜が散ったかと思うとすぐに同じ木に芽生える緑、季節の移り変わりを前向きに捉え実感する若さが感じられます。 (柳原美知子)

★甍の波桜の波と重なりて/多田有花
日本の甍と桜の花の色は、品よく似合う。甍の波、桜の波に動きが見えて、爛漫の景色が詠まれている。(高橋正子)

★道の端小さき菫の幸あれと/廣田洋一
道端に菫が踏まれはしないかと咲いている。「菫ほどの小さき人に生まれたし/夏目漱石」と詠まれた菫だが、可憐な花に応援をしたくなる。「幸あれ」と願いたい。(高橋正子)

★蛙鳴く道よわが家が見えてくる/高橋信之
蛙が鳴く道。家路に田んぼがずっと広がっていて、道すがら蛙の鳴く声を聞く。家路につく安堵感。(高橋正子)

★花の雲利根へ利根へと急(せ)く支流/小口泰與
★青空へ二階の子が吹くシャボン玉/古田敬二
★一本のチューリップいま切りしもの/ 祝恵子
★花の間に稜線青き皿ケ嶺/柳原美知子

【入選/18句】
★ミモザ咲く麒麟の首の長いこと/古田敬二
フランスの文学や映画によく出てくる花で、黄色の小さいパフのような花が一杯咲き香りが高い。キリンの長い首との二物衝撃が素晴らしいです。(小口泰與)

★掘りたての初筍の皮開く/藤田洋子
春のやわらかな筍、掘りたてのものの皮をはいでいきます。筍の色、皮の色、手触り、匂い、そうしたものが感じられます。(多田有花)

★たんぽぽや地の太陽と黄に染まる/廣田洋一
野山に様々な花が咲き、生きとし生けるものに春の喜びが感じられる季節。とりわけたんぽぽのびっしりと咲く地の黄の輝きは、ほのぼのと生命力にあふれ、明るい太陽の日差しに包まれる思いがします。 (柳原美知子)

★山桜左右に山の懐へ/多田有花
春山に広がる桜の光景が思い浮かびます。(高橋成哉)

★ばめ来る完成間近の物産館/柳原美知子
つばめが建築中の物産館に巣をかけに来のでしょうか。オープン間近の物産館を楽しみに日々観察している作者を想像します。(高橋句美子)

★花御堂杓持つ子らに囲まるる/藤田洋子
子どもたちが沢山来ているのでしょう。柄杓を持つ子に囲まれるという賑やかさが花御堂を引き立てます。
(高橋秀之)

★春野菜甘い香りの爽やかさ/高橋句美子
春野菜だからこその甘い香りが気持ちを爽やかしてくれる。気持ちのよい春のひとこまです。(高橋秀之)

★柔らかな風が西から春の海/高橋秀之
海を渡る風にふとやわらかさを感じられました。こういう瞬間に、季節の進みをはっきり感じます。 (多田有花)

★吹きあぐる花の吹雪よケーブルカー/祝恵子
どこの山でしょう。ケーブルカーで登っていかれるとそこへ花吹雪がどっと風にあおられてきました。華やかな一瞬の美しさを見事にとらえておられます。 (多田有花)56.山雨過ぎ朝の光りの花御堂/藤田洋子

★葉桜が一直線に目黒川/高橋句美子
つい先日まで花見客で賑わい、両岸に桜で染まる美しさの目黒川を思い浮かべます。花の時季を終え、すっかり葉桜となる並木の「一直線」が、清々しく爽やかな季節の訪れを感じさせてくれます。 (藤田洋子)

★揺れるとも一花も放たず咲き満てり/多田有花
桜が咲ききった、その時は、風が吹くとも雨が降るとも「一花も放たず」という信じられないほどの力強さを見せる。満開の桜の力強さ。(高橋正子)

★快晴の花にやや吹く風のあり/多田有花
快晴の空。桜の花をすこし揺らす風が吹く。この微妙な動きに、晴れやかで、優しい景色が見える。(高橋正子)

★今年また此処の櫻とあいにけり/小口泰與
桜が咲くのは毎年のことである。今年また、此処の桜と会った感慨。(高橋正子)

★オランダの土産や赤いチューリップ/河野啓一
オランダのチューリップは有名である。オランダ土産が赤いチューリップだった。おやゆび姫の童話を思い起こさせるような、チューリップを代表する赤い色のチューリップだ。(高橋正子)

★花吹雪夕焼け後ろに染まる道/高橋成哉
夕焼けが染める花吹雪の美しい光景。その桜吹雪の道を歩いているのだ。晴れやかな心がさわやかだ。(高橋正子)

★知恩院抜けた先に山桜/高橋成哉
知恩院は京都東山の麓にある。山桜が咲いて知恩院とよく馴染んでいる。「山桜」がいい。(高橋正子)

★花屑を分けて色鯉近づきぬ/祝恵子
花屑が一面に浮かぶ水面。その花屑を分けて、いろんな色の鯉が近寄ってくる。なんときれいな。鯉に親しさが湧く。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★春の日のりんごジュースを飲み干しぬ
リンゴジュースは、前年の林檎から作られる。それを飲んで、春を実感する。 (廣田洋一)

★蛙鳴く道よわが家が見えてくる
★つとめ終えし帰宅の吾に鳴く蛙
★菜の花を咲かせて谷戸を流れる川
★天晴れて地に低く咲く菜の花は

■選者詠/高橋正子
★初蛙くりりくりりと谷戸の田に
春がきて、可愛い初ガエルの鳴き声きが懐かしく響きます。オノマトペが嬉しい。 (河野啓一)

★初蛙棚田の泥に声転がし
今年初めての蛙の声に耳を澄ますと、棚田の泥の中で体中から声を出して懸命にないているようです。泥の中の蛙はユーモラスでもあり、生き物への温かい視線が感じられる楽しい句ですね。 (柳原美知子)

★谷戸の田は貧し菖蒲芽をそろえ
★春嵐彩なす丘陵大花壇
★菜の花に残れる淡き遠き花

■互選高点句
●最高点(5点)
★花の雲利根へ利根へと急(せ)く支流/小口泰與
●次点(4点/同点2句)
★一本のチューリップいま切りしもの/祝恵子
★吹きあぐる花の吹雪よケーブルカー/祝恵子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)

■4月月例句会清記


■4月月例ネット句清記
2018年4月8日
13名65句 

01.揺れるとも一花も放たず咲き満てり
02.快晴の花にやや吹く風のあり
03.甍の波桜の波と重なりて
04.角ひとつ曲がれば花に出会う頃
05.山桜左右に山の懐へ
06.忘れめや空の鈍色花の冷
07.今年また此処の櫻とあいにけり
08.花の雲利根へ利根へと急(せ)く支流
09.千本の櫻阿修羅や風嵐
10.斑をみせし雪代山女岩の黙

11.春の水しぶきを上げてバタフライ
12.花の丘裾を取り巻く雪柳
13.うきうきとと夕日の中に散るさくら
14.オランダの土産や赤いチューリップ
15.藻か草か目高何処に隠れしや
16.春眠のコアラの耳のぴくぴくと
17.初燕池は青空映しおり
18.道戻り色濃き菫愛でにけり
19.青空へ二階の子が吹くシャボン玉
20.ミモザ咲く麒麟の首の長いこと

21.新入生より広いエリアの保護者席
22.ボート漕ぐ桜が写る池に波
23.持ち寄りの弁当広げて花見酒
24.柔らかな風が西から春の海
25.木の枝の芽吹く先には大空が
26.桜散り芽生える緑に見える夏
27.花吹雪夕焼け後ろに染まる道
28.輝く目先に夢見る新入生
29.知恩院抜けた先に山桜
30.真夜中に見上げる街灯春の星

31.一本のチューリップいま切りしもの
32.花屑を分けて色鯉近づきぬ
33.吹きあぐる花の吹雪よケーブルカー
34.参道の山椿の花切り株に
35.数匹の猫遊ぶ寺花の咲く
36.道の端小さき菫の幸あれと
37.白き雲千切りて飛ばす柳絮かな
38.花疲れ居眠り多しバスの中
39.清明や名を知らぬ花咲きてをり
40.たんぽぽや地の太陽と黄に染まる

41.青麦のさざめく畝を猫が行く
42.つばめ来る完成間近の物産館
43.風鐸に枝垂るる花のひかり揺れ
44.リハビリ終え花満つ土手を送らるる
45.花の間に稜線青き皿ケ嶺
46.蛙鳴く道よわが家が見えてくる
47.つとめ終えし帰宅の吾に鳴く蛙
48.春の日のりんごジュースを飲み干しぬ
49.菜の花を咲かせて谷戸を流れる川
50.天晴れて地に低く咲く菜の花は

51.初蛙くりりくりりと谷戸の田に
52.初蛙棚田の泥に声転がし
53.谷戸の田は貧し菖蒲芽をそろえ
54.春嵐彩なす丘陵大花壇
55.菜の花に残れる淡き遠き花
56.山雨過ぎ朝の光りの花御堂
57.花御堂杓持つ子らに囲まるる
58.花蘇枋雨の上がりし窓を拭く
59.名を呼んで駆け寄りし子と花の昼
60.掘りたての初筍の皮開く

61.葉桜が一直線に目黒川
62.山吹の花は薄墨夜になりて
63.花冷えの風が上着をひためくる
64.玄関にチューリップの鉢花盛り
65.春野菜甘い香りの爽やかさ

※互選を始めてください。7句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。選句は<コメント欄>にお書きください。選句締め切りは、今日の午後9時です。

●4月月例ネット句会投句案内●


●4月月例ネット句会投句案内●
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(春の句)計5句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
※5句投句といたしますのでお間違いのないようにお願いします。

③投句期間:2018年4月1日(日)午前0時~4月8日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。

▼互選・入賞・伝言
①選句期間:4月8(日)午後6時~4月8日(日)午後9時
②入賞発表:4月9日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、月12日(月)正午~3月14日(水)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

4月6日(金)

font size=”3″>★多摩川の奥へと桜咲き連らぬ  正子
多摩川にかかる橋から川の堤に咲く桜を眺められたものでしょうか。あるいは高い位置から流れる川をごらんになったのか。桜が流れ来る川に沿って咲き誇っています。春のクライマックスです。
(多田有花)

○今日の俳句
朝の陽がまず差すところ桜花/多田有花
陽が昇り、まず差すところが桜の花。清楚でありながら桜花が華やかに浮き立つときだ。(高橋正子)

●曇りのち雨。風強し。
アルパという楽器の演奏をラジオで聞いた。アルパはスペイン語でハープの意味だそうだ。小型のハープ。ラテンアメリカで盛んな様子。外国の民族楽器を演奏する人は、その楽器が心底好きで、演奏を続けていく内に楽器に成りきってきたと思える。俳句なら、俳句になりきる、ってことか。

鉢の土がよく乾く。今朝は早く起きて、一番にベランダに出て、フリージアを切った。今日は白がよく咲いた。今日は白が一番。全部切って部屋に活けた。

清明のフリージア白の花多し   正子
知覧茶を深く淹れたり花は葉に  正子

○勿忘草(わすれなぐさ)

[勿忘草/横浜日吉本町]

★小さう咲いて勿忘草や妹が許/村上鬼城
★まさに瑠璃富士を前なる勿忘草/中村草田男
★奏でる海へ音なく大河勿忘草/中村草田男
★勿忘草わかものの墓標ばかりなり/石田波郷
★勿忘草光りて呼ぶはちさき水面/香西照雄
★勿忘草蒔けり女子寮に吾子を入れ/堀口星眠

ヨーロッパ原産の伝説とロマンに富む多年草。高さ30センチくらいで、春から初夏にかけて咲き、梢頭にかれんな藍色の花をつける。白、桃色等もある。「forget-me-not」と英語で言う。勿忘草は、英語からの翻訳。高校生ぐらいになると、教科書にこういう単語が例語として出てくる。実際の花は知らず、先にこの英語を知って、いろいろと想像を巡らせ、ヨーロッパの風景に憧れもしたものだ。花の藍色も花の形も、まさにヨーロッパ色と形という感じがする。
★植えつけて勿忘草に空映る/高橋正子

 勿忘草(ワスレナグサ)は、広義には、ムラサキ科ワスレナグサ属の種の総称。狭義には、ワスレナグサ属の一種、シンワスレナグサ(学名:Myosotis scorpioides)の和名。ただし、園芸業界でワスレナグサとして流通しているのは、ノハラワスレナグサ (M. alpestris)、エゾムラサキ (M. sylvatica)、あるいはそれらの種間交配種である。一般には、広義の意味で称される。季語は春である。
 ヨーロッパ原産で、北半球の温帯から亜寒帯(ユーラシア大陸・アフリカ大陸・オセアニア)に約50種が分布している。日本に渡来したのは、明治時代に園芸業者がノハラワスレナグサ (M. alpestris) を輸入したのが最初と言われている。しかしワスレナグサ属ということでは、日本には元来、エゾムラサキ (M. sylvatica) 一種が自生分布している。
 野生化して各地に群生しており、日本全国(北海道・本州・四国)に分布している。一般に日当たりと水はけのよい湿性地を好み、耐寒性に優れているが、暑さには弱い。二年生もしくは多年生植物の宿根草であるが、日本で栽培すると夏の暑さに当てられて枯れてしまうことから、園芸上は秋まきの一年生植物として扱われる(北海道や長野県の高地など冷涼地では夏を越すことが可能である)。
 花期は3 – 5月(冷涼地では4月 – 7月)。春から夏にかけて薄青(紫)色・鮮青(紫)色(園芸種はさらに白色・ピンク色など)をした6?9ミリ径の小さい5弁の花を咲かせ、花冠の喉に黄色・白色の目(小斑点)をもつ。花は多数でさそり型花序をなし、開花とともにサソリの尾のような巻きは解けて真っ直ぐになる。高さは20?50センチになり、葉が互生に付く。葉は細長く平らで、長楕円形(葉の中央付近が最も葉の幅が広い)、もしくは倒披針形(葉先近くが最も葉の幅が広い)である。葉から茎まで軟毛に覆われており、属名の Myosotis は、そうした葉の様子(細長く多毛で柔らかい)が、ネズミの耳に似ていることに由来している(ギリシャ語の「二十日鼠 (myos) +耳 (otis)」が語源)。
 別名「フォーゲットミーノット、forget-me-not」は、本来の名前。和名はこれの和訳。”私を忘れないでください”ドイツの伝説で、ドナウ川の岸に咲くこの花を恋人ベルタに贈ろうとして、誤って川に落ちて死んでしまった騎士ルドルフの物語からきている。その後ベルタはその言葉を忘れず、この花を一生髪に飾り続けた。

◇生活する花たち「草苺の花・著莪(しゃが)・姫林檎の花」(横浜日吉本町)

4月5日(木)

★子らあそばす丘の平地の桃さくら  正子
春の草が萌え出た広い平らな丘に子供たちが駆け回り、ボールを蹴ったり投げっこをしたりと楽しく遊んでいる。丘の周りには桜や桃の花が咲き競い穏やかな春の素晴らしい気候ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
花冷や長き裾野の赤城山/小口泰與
「長き裾野」は、季節によってさまざまな感じをわれわれに与える。花冷えには花冷えの裾野の引く線の緊張感がある。(高橋正子)

●昨日は初夏のようだった。今日は17度。
カサブランカの芽がぐんぐん伸びる。篠竹そっくり。現代俳句4月号が届いている。ぱらっと見る。
ロシヤのスパイの殺人未遂事件。ロシア外交官を追放する欧米。改ざん文書。隠ぺい文書。映画「ぺンタゴン・ペーパーズ」の人気。

桜切られ春の大空突然に     正子
大空は桜切られし団地跡     正子
桜ちる宇宙身近になりてきし   正子
桜ちる空に衛星周りいて     正子
フリージャ赤が開きて旅を欲る  正子

○三葉躑躅(みつばつつじ)

[三葉躑躅/横浜日吉本町]

★つゝじいけて其陰に干鱈さく女/松尾芭蕉
★大原や躑躅の中に蔵たてて/与謝野蕪村
★庭芝に小みちはありぬ花つつじ/芥川龍之介
★築地あり小さきつつじを植ゑ並べ/松本たかし

★日は白し三葉躑躅の塊りに/高橋正子
★咲き固まる三葉躑躅が門の内/高橋正子

 ゴールデンウィークごろ、西日本最高峰の石鎚山に登ると、曙躑躅が満開となっている。芽吹き始めた木々の間に鮮やかなピンク色を見せる。山に登った甲斐があるというもの。この曙躑躅とイメージが似ているのが三葉躑躅。日吉に住むようになって、この三葉躑躅をはじめて知った。はじめ見たときは、曙躑躅だと思っていた。私にとっては新しい花である。
 ミツバツツジ(三葉躑躅 Rhododendron dilatatum)はツツジ科ツツジ属の落葉低木。また、近縁のミツバツツジ類の総称でもある。 関東地方から近畿地方東部の太平洋側に分布し、主にやせた尾根や岩場、里山の雑木林などに生育する。古くから庭木としても植えられるが、盗掘の影響もあるせいか野生の個体数は決して多くない。ミツバツツジ類は、4-5月頃に咲く紅紫色の花が美しい。花が終わってから葉が出てくる。枝先に三枚の葉がつくことからこの名がついた。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)

4月4日(水)

★春水の流るる音をパソコンに  正子
毎日パソコンを開くと、そこに春の軽やかな水の流れや、光や、せせらぎを見たり耳にしたりすることができるようになればいいなあと思う。そんな思いで壁紙に春水の画像と音を取り込んでみたのでしょうか。無機質に見えるパソコンにも春の香りが満ちてきて、楽しくなります。 (小西 宏)

○今日の俳句
菜の花の香の中を行く一筋に/小西 宏
菜の花の香りの柔らかさを、突き切って一筋に行く。突き切って行くことに人は何か爽快なものを感じる。(高橋正子)

●山鳩が鳴く。フリージャが思い切り咲く。白、黄、赤。咲いているのを全部切って花瓶に。
結社広告6月号の原稿を俳句界へ送信。

きらきらと桜散るなり寺の道  正子
父母は散る花びらの向こう側  正子
山鳩の声するほうの春朝日   正子
山鳩の声に夏来る少年期    正子

○木苺の花

[木苺の花/横浜日吉本町]

 キイチゴは木苺のことで、苺が草になるのに対し、木になるのでこう呼ばれる。仲間が非常に多いので、キイチゴ類と表現するのが正しい。分類上は、バラ科キイチゴ属(Rubus)の植物で、わが国には基本種だけで約40種が自生する。
 キイチゴ属の地上部は、1年で枯れるものから数年生きるものまであるが、大半は2年を寿命とする。つまり、1年目は枝を伸ばして葉を展開し、2年目に開花、結実して枯れる型が多い。花が咲いて茎が枯れるのは、草の特徴であり、茎は木質化してはいるものの、キイチゴ属は基本的には、草本の性質を持っているわけである。「竹は木か草か」の命題は、今でも我々を悩ませているが、キイチゴに関しては、草ということで解決済みということになる。
 「木苺」は初夏の季題である。俳句では果実の成熟する時期に視点を合わせている。ただし、近代に入ってから使われた季語のようで、江戸期の句は見つかっていない。
 木苺は前にも述べたように40種にも及ぶキイチゴ属の総称である。しかし、仙台市周辺で人気のあるのは、モミジイチゴで、他のキイチゴ類には、あまり興味がないようである。葉の形がモミジに似るのでこの名があり、果実は文字通り黄苺で、わずかな酸味と十分な甘味があって、そのみずみずしさはキイチゴ属では最上である。林縁部や林道の沿線に生え、手ごろな高さに実るので、里山の子供たちにとっても重要なおやつになっている。

     山路行くや木苺取って食ひながら         村上 鬼城
     木苺を摘みもて辿る塩の道             石井 桐陰
     木苺のしたたるばかり熟れにけり         布施 大望
     木苺に滝なす瀬あり峡の奥            水原 秋桜子
     書庫までの小径木苺熟れてゐる          山口 青邨

 「木苺の花」は初春の季語。モミジイチゴの花は、純白5弁で野生の清々しさがあり美しい。

     よく見れば木苺の花よかりけり          高浜 虚子
     燈台にはや木苺の花白し             山口 青邨

                        (宮城環境保全研究所のホームページより)

★木苺の花が小声に語り合う/高橋正子
★木苺の花が咲くなり森といい/高橋正子

木苺の実が生るところを知っている。そこに行けば毎年木苺が熟れているはずだが、たくさん実が熟れているのに出会うのは稀だ。そういうときは大変うれしい。ほとんどは、実が落ちたのか、だれか採ったのか、たった一個が残っているようなことが多い。熟れた実を宝石のように大事に持ち帰って、家人に見せる。

◇生活する花たち「草苺の花・著莪(しゃが)・姫林檎の花」(横浜日吉本町)

4月3日(火)

★鈍行の列車に剥ける春卵  正子
鈍行の列車に揺られつるりと剥く春卵、おのずと春の明るく軽やかな旅心が伝わります。急ぐ旅ではないだけに、ゆったりと長閑な旅の一時がいっそう楽しく感じられます。(藤田洋子)

○今日の俳句
山辛夷一気に空の青へ咲く/藤田洋子
「一気に」が野生である山の辛夷らしい。待ちこがれたように噴き出して咲く。辛夷の見方に元気があり新しい。(高橋正子)

2015
●箱根湿性花園に水芭蕉を見に行く予定。湿性花園は3月20日開園。入園料700円。小田原駅までJRで。小田原駅東口4番バス乗り場から箱根登山バスで仙石案内所前まで。そこから徒歩8分で至る。
○信之先生と娘の句美子との三人で箱根湿性花園に出掛ける。
高原に白き花咲き水芭蕉/高橋信之

○花楓

[花楓/横浜日吉本町(左:2013年4月1日・右:2011年4月13日)] 

★楓咲きまだこぼれねば石すがし/水原秋櫻子
★花楓こまかこぼるる又こまか/皆吉爽雨
★花楓数へて小さき旅にあり/岡本眸
★花嫁にそそぐ日と風花楓/西宮舞
★日ごと読む詩の一書あり花楓/永見嘉敏
★境内に少女の合唱花楓/大信田梢月
★花楓昼間静かに学生寮/高橋正子
★凝らし見て色はくれない花楓/高橋正子

楓の若葉が開くころ、 すでに深紅の楓の花がちらちらと咲いているのに気づく。若緑と深紅が空にそよぐとなかなかいい風情。日吉本町2丁目の丘に慶応大学のゲストハウスか、あるいは中高校生の寮らしい建物がある。その庭に大きな楓があり、四月の新学期を迎えて、辺りはフレッシュな空気が漂う。反対側の民家にも楓があり、ちょうどトンネルのようになって潜り抜けると気分爽快。メイン道路なんてものもなく、気ままに歩くと出くわす花楓である。

 カエデ(槭、槭樹、楓)とはカエデ科(APG植物分類体系ではムクロジ科に含める)カエデ属 (Acer) の木の総称。モミジ(紅葉、椛)とも呼ばれるが、その場合は様々な樹木の紅葉を総称している場合もある。主に童謡などで愛でられるものはそれである。赤・黄・緑など様々な色合いを持つ為、童謡では色を錦と表現している。
 日本のカエデとして代表されるのは、イロハモミジ (A. palmatum) である。福島県以南の山野に自生しているほか、古くから栽培も行われている。園芸種として複数の栽培品種があり、葉が緑色から赤に紅葉するものや最初から紫色に近い葉を持ったものもある。一般に高木になる。落葉樹が多く落葉広葉樹林の主要構成種であるが、沖縄に自生するクスノハカエデのように常緑樹もある。葉は対生し、葉の形は掌状に切れ込んだものが多く、カエデの名称もこれに由来する(下記参照)。しかし、三出複葉(メグスリノキ)や単葉(ヒトツバカエデ、チドリノキ、クスノハカエデ)のものもある。花は風媒花で、花弁は目立たなく小さい。果実は二つの種子が密着した姿で、それぞれから翼が伸びる翼果である。脱落するときは翼があるので、風に乗ってくるくる回って落ちる。
 日本では鮮やかな紅葉が観賞の対象とされ、庭木、盆栽に利用するために種の選抜および、品種改良が行われた。諸外国では木材や砂糖の採取、薬用に利用されるのみであったが、明治時代以後に西洋に日本のカエデが紹介されると、ガーデニング素材として人気を博し、西洋の美意識による品種も作られ、日本に「西洋カエデ」として逆輸入されている。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)

4月2日(月)

★来るまでを辛夷のひかり見て待てる  正子
中七の「辛夷のひかり」がいい。待ち合わせの少しの緊張と無聊をうまく捉えた。理屈ではなく、詩心で捉えたのである。(高橋信之)

○今日の俳句
窓越しに明日行く丘の花明り/川名ますみ
丘にのぼる楽しさを思う気持ちがあふれている句。明日上る丘は窓越しに見ても花明りがしている。(高橋正子)

●4月が2日となった。昨日、ネット短信No.346を出した。4月月例ネット句会の案内。今年は第2日曜が8日なので、危ないところだった。マーラーのアダージェットを昨夜遅くまで聞きながらパソコンをした。

入学は記憶の果てとなりにけり 正子
春の川黒き一羽は鵜であらむ  正子

○鈴蘭水仙(すずらんずいせん)

[鈴蘭水仙/横浜日吉本町・金蔵寺] 

★花散る大待雪のつれもつれ/秋村
★夜静寂スズラン水仙の仄灯り/かずえ
★まだ寒し鈴蘭水仙うつむき咲き/高橋正子

 鈴蘭水仙(すずらんずいせん、学名:Leucojum aestivum)は、ヒガンバナ科スノーフレーク属の植物の1つ。クロンキスト体系ではユリ科。和名はオオマツユキソウ(大待雪草)、別名はスノーフレーク。
 ヨーロッバ中南部原産。多年草。花期は春で白いスズランのような花が咲く。花弁の先端には緑の斑点がある。秋植の球根草であるが、数年くらいは植えたままでも差し支えない。本種と名前の似たスノードロップ(マツユキソウ) (Galanthus nivalis) という球根草もあり、これと混同しないよう注意が必要である。
 開花時期は、 3/ 5 ~ 4/末頃。地中海沿岸原産。垂れ下がったようすがおもしろい。鈴蘭のようで、水仙のようなので、うまいネーミングといえる。3月28日の誕生花。花言葉は「皆をひきつける魅力」。

◇生活する花たち「花桃・通草の雄花・桜」(横浜日吉本町)

4月1日(日)②


俳句界(文學の森2018年3月号掲載作品)
作品二十一句

春の水   
          
高橋(たかはし)正子(まさこ)

末黒の葦まばゆき水に取り巻かれ
水破りみどり無数の葦の角
葦芽ぐみさざ波すぐに生まれける
葦芽ぐみ早やも若葉を掲ぐあり
まんさくの咲くや翡翠池に来て
翡翠の餌時まんさく開くなり
まんさくの花の縮れに風荒ぶ
まんさくや雑木林は透きとおり
春の水水車が汲みて流れ出づ
三椏の花へ水車の水急ぐ
猫柳池面の水のうすみどり
水の中の水輪連れゆく春の鴨
先行ける夫が見上ぐる花辛夷
山がかる空半分に咲く辛夷
雨よりも風の辛夷の多かりぬ
遠山に桜・辛夷と咲いており
花辛夷夜はしずまりて灯がもるる
星空の冷えを纏えり沈丁花
沈丁花門扉閉づれば濃く匂い
椿活けもっとも冷えし花鋏
さんしゅゆの花澄む角よ朝の家

自己紹介
一九四七年広島県生まれ。一八歳より作句。「花冠」主宰。
句集に『月の樫』『花冠』。『現代俳句一日一句鑑賞』。

◆◇◆◇◆◇

■皆さんからの感想■
拙句を読んでいただき、感想をありがとうございました。大変励まされました。

●柳原美知子さん(3月10日/葉書)
日差しはすっかり春となりましたが、寒い日が続いています。
先日は久しぶりにお電話でお話しができてよかったです。
「水の俳句」はリハビリ仲間にも見せ、喜んでいただきました。
「俳句界」もお贈りいただき、ありがとうございました。
正子先生の21句、浅春の風と光と水のゆらぎが感じられ、素
敵ですね。感動しました。(後略)

●河野啓一さん(3月6日)
珠玉の御句21句を乗せた俳句界3月号只今拝受いたしました。
ありがとうございました。迷ったのですが、好きな句は、
「まんさくの咲くや翡翠池に来て」です。他に「葦芽ぐむ」
もすばらしいと思いました。(後略)

●藤田洋子さん(3月5日)
正子先生へ
いつもお世話になります。
本日、「俳句界3月号」受領しました。
先月に引き続き、わざわざお送りいただきありがとうございました。
<春の水>掲載の21句、どれもみずみずしく素敵な御句ばかりで
すが、

末黒の葦まばゆき水に取り巻かれ
葦芽ぐみさざ波すぐに生まれける
まんさくの咲くや翡翠池に来て
まんさくの花の縮れに風荒ぶ
春の水水車が汲みて流れ出づ
水の中の水輪連れゆく春の鴨
先行ける夫が見上ぐる花辛夷
星空の冷えを纏えり沈丁花

特に好きな句です。益々のご活躍をお祈りしております。 
(後略)

●高橋秀之さん(3月5日)
高橋正子先生
おはようございます。
「俳句界3月号(文學の森)」拝受いたしました。
好きな句については、また、改めて返信いたします。
取り急ぎ。

●川名ますみさん(3月4日)
高橋信之先生
高橋正子先生
いつもご懇切なご指導を賜りまして、ありがとうございます。
この度は、俳句界3月号「特別作品21句ー春の水」ご掲載、
おめでとうございます。有難く嬉しく、拝受しました。

静かに見える早春の、強さと勢いを知り、勇気が湧きました。

一読で惹かれましたのは、「春の水水車が汲みて流れ出づ」。
水車の動きが、これほど的確な言葉で、表されることに驚きました。
おそらく、実際に自分でぼんやり眺めるよりも、御句の言葉の方が、
ずっとはっきり、動きが心に残ったことでしょう。
その動きは、春の水ゆえの動き。大きな春の動きを見ました。
朝の家、角にさんしゅゆの花が「澄む」という捉え方も、
想い浮かべますと、ぴたりと景が浮かび、すぐに共感しましたものの、
これは、とても簡単に出てくる表現ではない、と気付きました。
大仰な言葉ではない、馴染みあるやさしい言葉が、
芯を捉えた時の力を、読むほどに強く感じております。
ありがとうございます。勉強させて頂きます。
(後略)

●古田敬二さん(3月4日)
正子先生、こんばんは
俳句界3月号ありがとうございました。
3/3、配達されました。
特別作品21句掲載おめでとうございました。
好きな句5句選ばせていただきました。

・葦芽ぐみさざ波すぐに生まれける
・まんさくの花の縮れに風荒ぶ
・先行ける夫が見上ぐる花辛夷
・花辛夷夜はしずまりて灯がもるる
・沈丁花門扉閉づれば濃く匂い
(後略)

●祝 恵子さん(3月3日)
高橋信之先生、正子先生
何時もお世話になりありがとうございます。
正子先生、月刊俳句界3月号贈呈頂きまして
ありがとうございます。21句の正子先生の掲載
おめでとうございます。

春の水水車が汲みて流れ出づ 
少し水温む春となり水車が水を汲みながらうごいています。
コトコト音が聞こえるような長閑な空間が見えるようです。
                
●小口泰與さん(3月3日)
高橋信之先生、正子先生
本日は月刊俳句界3月号を御贈呈いただき大変にうれしく感謝申し上げます。
正子先生の「特別作品21句」を拝読させて頂きます。
                         
●廣田洋一さん(3月3日)
高橋信之先生
  正子先生
いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
この度は、「俳句界」3月号をお送り頂き、誠に有難う御座います。
正子先生の「春の水」21句をじっくり鑑賞させて頂きます。

●林誠司さん(俳句界編集長)
好きな句です。
水破りみどり無数の葦の角
まんさくや雑木林の透きとおる
さんしゅゆの花澄む角よ朝まだき

3月31日(土)

★花にらはいつも樹のそば垣のそば   正子
花にらは葉に韮や葱の匂いがあり、繁殖が旺盛で植えたままで樹の下や垣根の下にも広がっていく。淡紫色の6弁の花を頂上に一つつける可憐な花ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
あけぼのや日ののびていてつくつくし/小口泰與
「日ののびていて」が野原の草の萌え出た緑のやわらかさを想像させる。その中に土筆がのびて、あけぼのの冷たさのなかにすっくと立ちみずみずしい。(高橋正子)

●これまでの美容院を変更。ネットで探して、新しい美容院で髪を切ってもらった。ごく近所にあった。広尾で働いていた美人スタイリストで、もう19年日吉本町で店を開いて居るとのこと。店はよく知っていたのだが、開いているのかどうかよく分からない感じの美容院。ネットで検索しなけば、行かなかっただろう。母と娘の美容院。言葉遣いが自然。

信之先生が福田医院に薬をもらいに行った帰り、近くの八百半商店で、筍を一つ買って帰る。せっかくゆでるのだから、もう一本買い足しに。糠を買おうとすると、土の中から掘り出したものなので、糠はいらないという。茹でて柔らかくなったら、お湯が冷めるまでそのままにしておくとよいとのこと。初筍。蕗も追加して買う。栽培蕗なのがかなしい。
ここのところ、何かしら神経をつかって疲れてしまった。夕食は握り鮨。こちらの鮨は鮪だらけで、いつも残念。

筍のまだ小さきがまるまると  正子
筍の皮の土色生え来し土    正子 
花の雲寺の甍のなかに浮き   正子
あかあかと林檎売りけり花の影 正子
病院も花に包まれて淡し    正子

○たらの芽

[たらの芽/横浜日吉本町(左:2014年3月22日・右:2014年3月26日)]

★たらの芽のとげだららけでも喰ひけり/小林一茶
★たらの芽や結城のたより聞えざる/正岡子規
★たらの芽やからびしをれて籠の目に/飯田蛇笏
★たらの芽はつんざくごとし言貧し/加藤楸邨
★みつめゐてまぶしきたらの芽を摘みぬ/加藤知世子
★たらの芽の仏に似たる瀬のひかり/角川源儀
★貨車にあけぼの丘上のたらの芽も/飯田龍太
★たらの芽へ開くトンネル煙まみれ/宮津昭彦

 タラノキ(?木、?木、学名、Aralia elata)はウコギ科の落葉低木。新芽を「たらのめ(?芽)」「タランボ」などと呼び、スプラウトとして食用に販売もされている。テンプラ等に調理される。
 高さは2-4m程度、あまり枝分かれせずにまっすぐに立ち、葉は先端だけに集中する。樹皮には幹から垂直に伸びる棘が多くある。葉は奇数二回羽状複葉で、全長が50-100cmにも達する大きなものである。全体に草質でつやはない。葉柄は長さ15-30cmで基部がふくらむ。小葉は卵形~楕円形で長さ5-12cmで裏は白を帯びる。は全体に毛が多いが、次第に少なくなり、柄と脈状に粗い毛が残る。夏に小さな白い花を複総状につける花序を一つの枝先に複数つける。秋には黒い実がなる。分類上は幹に棘が少なく、葉裏に毛が多くて白くないものをメダラ var. cansecens (Fr. et Sav.) Nakai といい、むしろこちらの方が普通とのことである。現実的には両者混同されていると見るのが妥当であろう。
 タラノキは成長が早いので、地中から新しい枝を生やした時にその先端近くについた芽を採取するのが楽。若い枝はとげがあり直線的にのびるので目に付きやすい。農家で栽培される場合には枝にとげのない種(メタラ)も用いる。新芽の採取時期は桜の8分咲きころに同期しており、里の桜がタラの芽の採取時期でもある。採取は先端から上に向いた1番の芽と、その脇から斜めに伸びる2番程度までとする。
 テンプラにするのが一般的で、口いっぱいにひろがる独特の芳香が特徴的である。単にゆがいておひたしや和え物にしたり、油で炒めて食べてもよい。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)