5月20日(日)

★竹藪にあまりに明るししゃがの花  正子
しゃがの花は少し日蔭となる場所を好み、鄙びてあまり目立つ花ではないものの、群生となれば別ですね。群生するほどの沢山のしゃがの花に出会われ、その時の驚きが想われます。鄙びた花姿の中に、趣きのある素敵な一句です。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
竹皮を脱ぐや常なる一幹に/桑本栄太郎
下五の「一幹に」がいい。今年の竹の誕生と成長を言葉の意味でも、また「イッカン」という音の響きでも。(高橋信之)

●晴れ。夕方から冷える。青葉冷えというのか。
愛媛の櫟俳句会から『百』(石田節著)という句集を恵送いただいた。江崎紀和子主宰、櫛部天思氏の句集も前にいただいていたので、今回は礼状を書かねばと好きな句を三句を挙げて手紙を出した。句集を見知らぬ方からずいぶんいただき(どういう経緯で私に届いたのかわからないのだけれど)、すぐに拝読はするものの、失礼とは思いながら、礼状を出さずそのまま。考えが逡巡して、ずいぶん考えて、それきりになっている。

ラジオ深夜便で国木田独歩の「忘れ得ぬ人々」の朗読があった。途中から聞いたが、そのなかに「三津ヶ浜の琵琶法師」の話があった。漱石でも有名な松山の三津浜のことだが、どうして琵琶法師がいたのだろうと、不思議の思った。

同じく深夜便で、今月のおすすめ本の紹介があった。岩波書店刊の和菓子の事典が面白そう。解説者がお面白い話をした。彼が京都の祇園寺にいったとき、彼岸のお寺でお供えするあられ(もち米からつくったのをあられという。うるち米は、せんべい)をこの寺では「おしゃかさんの鼻くそ」というと。これは、私の家の檀家寺でもそう呼んでいた。「はなくそ」ではなく、「はなくぼ」とかが変わったものらしいが、古いものの縁を感じだ。近くの鞆の浦にも祇園寺があって、ぎょんさんと地域の人は呼んでいて、鞍馬の火祭に似た祭りがある。

○朴の花

[朴の花/横浜都筑区ふじやとの道]

★朴散華すなはち知れぬ行方かな/川端茅舎
★朴咲く山家ラヂオ平地の声をして/中村草田男

ホオノキ(朴の木、Magnolia obovata、シノニム:M. hypoleuca)はモクレン科の落葉高木。
大きくなる木で、樹高30m、直径1m以上になるものもある。樹皮は灰白色、きめが細かく、裂け目を生じない。葉は大きく、長さ20cm以上、時に40cmにもなり、葉の大きさではトチノキに並ぶ。葉柄は3-4cmと短い。葉の形は倒卵状楕円形、やや白っぽい明るい緑で、裏面は白い粉を吹く。互生するが、枝先に束生し、輪生状に見える。花も大型で大人の掌に余る白い花が輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かって開花する。白色または淡黄色、6月ごろ咲き芳香がある。ホオノキは花びらの数が多くらせん状に配列し、がく片と花弁の区別が明瞭ではないなど、モクレン科の植物の比較的原始的な特徴を受け継いでいる。果実は袋果で、たくさんの袋がついており、各袋に0 -2個の種子が入っている。葉は芳香があり、殺菌作用があるため食材を包んで、朴葉寿司、朴葉餅などに使われる。また、落ち葉となった後も、比較的火に強いため味噌や他の食材をのせて焼く朴葉味噌、朴葉焼きといった郷土料理の材料として利用される。葉が大きいので古くから食器代わりに食物を盛るのに用いられてきた。6世紀の王塚古墳の発掘時には、玄室の杯にホオノキの葉が敷かれていたのが見つかった。材は堅いので下駄の歯(朴歯下駄)などの細工物に使う。また、水に強く手触りが良いため、和包丁の柄やまな板に利用されたり、ヤニが少なく加工しやすい為、日本刀の鞘にも用いられる。樹皮は厚朴または和厚朴といい、生薬にする。

朴の花を見たのは、一昨年が初めて。横浜市営地下鉄北山田駅を出ると、「ふじやとの道」という緑道がある。行きあたりに池のある徳生公園があり、その公園の小高い丘にある。5月16日には、白い朴の花が咲いていた。花は真っすぐを向いて咲くので、しかも高木なので、梯子をかけてでもないと真上からの花は見えない。ところが運よく、朴の木よりも高く丘に道が付いている。その道を上り、朴の花を見ることができた。花の良い香りもする。これほどまでに匂うとは思わなかった。朴葉寿司、朴葉焼きなど山国の郷土料理であろう。朴のまな板は、台所にあったし、朴の高下駄は、兄なども新制高校だったが、戦後まもないときだったので通学に履いていた。
下駄で思い出すのだが、下駄の生産では日本一とう松永という町が、生家からバス三十分ほど行ったところにあった。塩田は廃止されたが、塩田と下駄で有名で、小さな松永湾には下駄に使う松の木を沢山浮かばせてあった。今でもそうだろう。お盆が来ると田舎の子どもたちは下駄を新調してもらった。下駄の歯がすり減ってなくなるまで履いた。大人になっても、サンダルではなく下駄を愛用したときもあった。日本の夏は、素足に履けば心地よいのは下駄である。

★朴の花栃の花見てゆたけしや/高橋正子
★朴の花わが身清めて芳しき/高橋正子
★花の香をたより登れば朴の花/高橋正子(2015.5.17)

◇生活する花たち「釣鐘草・薔薇・卯の花」(横浜日吉本町)

5月19日(土)

★新緑の翳るときあり水があり  正子
日にきらめく新緑も曇り空の下では翳る時もあり、雨のあとなどでは水を含んでいる時もあるが、却ってそれが煌めきを助長して見える、と解釈しました。表面的な理解かもしれませんが、軽やかで印象に残る御句です。(河野啓一)

○今日の俳句
伊予水軍夏潮分けしその昔/河野啓一
夏潮の流れるさまを見れば、その昔、この夏潮を分けて伊予水軍が活躍したことが偲ばれる。とうとうとした夏潮の流れである。(高橋正子)

●テレビは普段全く見ないが、広島のうまいものを見ていたら、夜9時過ぎから、ハリー王子のウィンザー城での結婚式の中継に変わった。イギリス旅行をしたとき、ウィンザー城見学か、キューガーデンを見学するかの選択があった。ウィンザー城はガイド付き。キューガーデンは自由。結局キューガーデンを選んだが、ウィンザー城はロンドンから、35キロメートルぐらいのところにある。バスの窓からよく見えた。女王がおられるときは王室旗が掲げらる。遠目に見たウィンザー城のラウンドタワーの壁の色が印象に残っている。中継で礼拝堂の内部が見れたが、白と黒のチェッカー模様は、イギリス的だと思えた。参列者の夫人の帽子やドレス。アスコット競馬でもそうだが、結構楽しめる。

結婚式での聖書のことばの誓い。はじめハリー王子、次、メーガン妃。イギリス英語とアメリカ英語の違いが明らかだった。これも興味深い。イギリス英語とアメリカ英語の違いは?と聞かれたら、これを聞いてくださいという示すのが速いのではないかとも思った。

○蜜柑の花

[蜜柑の花/横浜日吉本町]

★花蜜柑の匂い池への斜面を流れ/高橋信之
★人の住む町に蜜柑の花香る/高橋正子(2015.5.15)

蜜柑の花の匂う季節となった。蜜柑の匂いは、やはり蜜柑どころが圧巻。蜜柑生産量日本一を愛媛が誇っているかどうか知らないが、愛媛に住んだころは、蜜柑畑の蜜柑の花の匂いに一日中包まれて暮らした。買い物に通る道も、子どもたちの通学路も蜜柑の花の匂いが漂う。家に居ても窓を開けていれば、蜜柑の花の匂いが流れてくる。夜、眠るころになるとさらに高く匂う。その匂いを惜しんで窓を閉めた。
「みかんの花咲く丘」の歌詞は、私にはまるで瀬戸内海の風景として見えるが、実際は静岡県ということだ。

◇生活する花たち「ネーブルの花・八朔の花・すだちの花」(横浜日吉本町)

5月18日(金)

★豆飯の飯の白さに風抜ける  正子
豆ごはんの緑が鮮やかに仕上って、ごはんの白さがより際立ち美味しそうに炊き上がりました。ご飯の白さに一瞬初夏の風が抜ける様な爽やかさを感じ取られ「風抜ける」と表現されたのでしょう。少し塩味の聞いた初夏ならではの豆ごはんが食卓に上っています。(佃 康水)

○今日の俳句
船窓に見え来る全山島若葉/佃 康水
船窓から島の全山が見え始め、さらに近付くと島を覆い尽くす若葉の鮮やかさに、息をのむような感動を覚える。(高橋正子)

○木苺

[木苺/横浜日吉本町]

★木苺に滝なす瀬あり峡の奥/水原秋桜子
★裾重く聖尼ばかりの木苺摘み/草間時彦

 木苺(キイチゴ・学名:Rubus palmatus・バラ科キイチゴ属)は、原産地が西アジア、アフリカ、欧州、アメリカで、ラズベリーやブラックベリー、デューベリー等、木になるイチゴ(苺)の総称。 春に、苺の花に似た5弁の白花を咲かせる半落葉低木で、葉はヤツデのような掌に似た形(深裂)をしている。初夏に橙色の小さな粒々が多数集まり、食用となる球状の果実を付ける。果実は、果汁が多く、爽やかな酸味と仄かな甘味がある。木苺の葉は、秋に綺麗に紅葉するので、別名をモミジイチゴ(紅葉苺)とも呼ばれる。
 5月白い花が咲き、青い実を結ぶ。野生でよく見るのは、オレンジがかった黄色に熟れるものだ。山道を車で通るときにもところどころに見つかる。里山を歩いても道沿いに見つかる。たくさん摘んだことはなく、一粒二粒熟れているのを採って食べた程度だ。わが家の近くでは、日吉本町の鯛ケ崎公園と、駒林神社の下手あたりで見つけている。なんでもそうだが、熟れる時期をはずすと、せっかく木苺摘みにでかけても蔕だけになっていることがあって、すごく残念な思いをする。

★木苺を摘みにそこまでブラウス着て/高橋正子
★木苺の実が消えたりしころの山/高橋正子(2015.5.10)

◇生活する花たち「クサイチゴ・イキシャ・山あじさい」(横浜日吉本町)

5月16日(水)

 横浜動物園
★真鶴に夏来し水辺用意され   正子
動物園と前書きにありますので、冬鳥である真鶴に暑さに気を使い、新しい水辺を用意された園の優しさが、また詠者の優しさも伺えます。(祝恵子)

○今日の俳句
水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
水槽の水を替えられたメダカは元気よく泳ぐ。差しこむ日光にメダカの影ができるが、その影が新鮮に思える。いきいきとして、透明感のある句だ。(高橋正子)

○山吹草

[山吹草/東京白金台・自然教育園/左:2012年5月10日・右:2013年4月10日撮影]

★昏れかぬる箱根うら道山吹草/金子波龍
★林間へ野生の犬や山吹草/大介

 山吹草(やまぶきそう、学名:Chelidonium japonicum)は、罌粟(芥子:けし)科の多年草。半日陰になる林縁や疎林内に生育する。「ヤマブキ」の名はあるが、バラ科のヤマブキとは全く別種である。草丈30~40cmほどので、茎を立てて上部の葉腋に1~2個の花をつける。花は春に咲き、径4~5cmほどの比較的大きな鮮黄色の4弁花をつける。花弁は卵型。葉は、長さ10~15cmほどの羽状複葉で、小葉は5~7個。小葉は大きさに変異が大きく、長さ2~5cm、幅2cm前後の広卵型で、葉先は三角形状である。葉の縁には浅い欠刻と鋸歯(ギザギザ)があう。
本州以西から中国大陸に分布している。多摩丘陵では、一部に保護植栽されている場所を除き、1980年頃以降では自生は確認できておらず、地域絶滅が危惧される。
 花の様子や鮮黄色の花色が、バラ科のヤマブキに似ているという命名です。ただし、ヤマブキは5弁花であるのに対してヤマブキソウは4弁花です。
 ケシ科の植物はほとんどそうだが、全草にアルカロイド系の有毒成分を含み、誤って食べると嘔吐や麻痺などを惹き起す。仲間(同属)のクサノオウは薬用に利用されるが、ヤマブキソウは利用されない。この仲間(クサノオウ属)を代表するクサノオウ(瘡の王)では、花は似ているが、葉はヤマブキソウのような羽状複葉ではなく、羽状の切れ込みがある単葉で裂片の先は円形状である。 別名「草山吹(くさやまぶき)」。

◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)

5月14日(月)

★竹皮を脱ぐ孟宗の節短し  正子

○今日の俳句
釣竿を持つ少年の夏近し/多田有花
釣竿を持っている少年を見ると、夏が来たことを実感させられる。少年の釣りは水遊びの気持ちがある。(高橋正子)

●晴れ。文學の森の創立15周年記念の祝賀会が京王プラザホテルであって、出席の予定だったが、やむを得ず、欠席。いい天気で盛会のことだったでしょう。

外出の途中、武蔵小杉駅で下車。駅ビル傍の東急ビル5Fに川崎市立図書館があるのに気づいた。入口だけざっと見学。絵本コーナーには大人用の絵本があった。韓国語、中国語、英語など。三井ビルのモンベルに寄ろうとしたのだが、入り口を間違えてしまった。ま、怪我の功名。我が家の近くの図書館は、慶大図書館しかないので、困っていたのだが、ここならこれそう。

○卯の花

[卯の花/横浜日吉本町]

★押しあうて又卯の花の咲きこぼれ/正岡子規
★卯の花の夕べの道の谷へ落つ/臼田亜浪
★卯の花や流るるものに花明り/松本たかし
★卯の花曇り定年へあと四年/能村研三
★卯の花のつぼみもありぬつぼみも白/高橋信之
★卯の花の盛りや雷雨呼びそうに/高橋正子

卯の花は、空木(ウツギ)といい、バラ目アジサイ科ウツギ属の落葉低木で、樹高は2-4mになり、よく分枝する。樹皮は灰褐色で、新しい枝は赤褐色を帯び、星状毛が生える。葉の形は変化が多く、卵形、楕円形、卵状被針形になり、葉柄をもって対生する。花期は5-7月。枝先に円錐花序をつけ、多くの白い花を咲かせる。普通、花弁は5枚で細長いが、八重咲きなどもある。茎が中空のため空木(うつぎ)と呼ばれる。「卯の花」の名は空木の花の意、または卯月(旧暦4月)に咲く花の意ともいう。北海道南部、本州、四国、九州に広く分布し、山野の路傍、崖地など日当たりの良い場所にふつうに生育するほか、畑の生け垣にしたり観賞用に植えたりする。

★卯の花の白きを門に置きし家/河野啓一
卯の花の白さを門に配しているのがいい感覚だ。「置きし」は、画を描いているような、絵具を置くような、詠み方で、光景を絵画的にしている。(高橋正子)

◇生活する花たち「芍薬の花蕾・薔薇・卯の花」(横浜日吉本町)

■5月月例ネット句会入賞発表


■2018年5月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年5月13日

【金賞】
★湖へ差す強き朝日や更衣/小口泰與
湖へ差す朝日の変化。湖の波をきらめかす今朝の朝日は強いのだ。更衣の季節だ。朝日の強さ、更衣の身軽さが夏が来たことを実感させてくれる。泰與さんは取り合わせの句と得意とされるが、不即不離の関係が上手くいっている。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★新緑に手を伸ばしつつ児の歩む/河野啓一
幼い児も新緑の季節は嬉しいのだろう。新緑に触れようとしてか、手を伸ばしながら歩く。かわいらしく、のびのびとした新緑のような児の姿が微笑ましい。(高橋正子)

★草笛の真直ぐ届く空の青/柳原美知子
草笛を巧みに鳴らす人にたまに出会うことがある。その音色が、真直ぐに青空へ響いていけよ、と願いたくなる。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★もてなしの砥部の大皿初鰹/藤田洋子
砥部焼は、全くの白磁ではなく、やや乳白色で厚手の民芸磁器。それに藍色を大胆に染め出した模様が特徴。もてなされる人たちの真ん中にでんと出された砥部焼の大皿の初鰹。初夏の爽やかさに、遠慮なくいただけそうだ。(高橋正子)

★ふくらみを確かめ葉陰の豌豆採る/古田敬二
豌豆は、莢も葉も緑。葉陰の莢も見落とさないように、ふくらみ具合を確かめて収穫する。熟れすぎず、よく実の入った豌豆こそが美味しいのだ。そこは経験がものを言う。(高橋正子)

★束の間の甘き香りやパイナップル/廣田洋一
夏らしい色と匂いが思い浮かぶ句。パイナップルの甘酸っぱい匂いが一瞬ぷんとたつ。そのことで夏の明るさが出た。(高橋正子)

【高橋信之特選/9句】
★草笛の真直ぐ届く空の青/柳原美知子
子供の頃を思い出して鳴らす高音の草笛。鋭く鳴った。青空へ届くようだ。 (古田敬二)

★鮓飯をひろげ冷ましつ母思う/柳原美知子
鮓飯をひろげ、鮓の香りの清々しい初夏です。懐かしく優しい母の味はきっと受け継がれるのでしょう。お母様への思いがしみじみと温かく伝わります。(藤田洋子)

★児の帽子シロツメクサの花輪つけ/祝恵子
野で摘んだシロツメクサの花輪をつけた清楚でかわいらしい帽子に、夏野の日の匂うような少女の笑顔が目に浮かびます。 (柳原美知子)

★新緑に手を伸ばしつつ児の歩む/河野啓一
★湖へ差す強き朝日や更衣/小口泰與 
★登校の児童賑わうえごの花/桑本栄太郎
★ふくらみを確かめ葉陰の豌豆採る/古田敬二
★豆ご飯つやつや子らと卓囲む/藤田洋子
★茅花吹く風を荒しと見ていたり/高橋正子

【高橋正子特選/9句】
★もてなしの砥部の大皿初鰹/藤田洋子
砥部焼の大皿に盛った初鰹で客人をもてなそうとする方も、ご馳走になる方も、季節感に話が弾みます。窓の外は青葉がきらきらと輝いて見えるし、嬉しい鳥声が聞こえるかもしれません。(河野啓一)

★蹲に滴る山の丸く映ゆ/古田敬二
新緑の明るさがうれしいころです。ふと気がつくと蹲に山の姿が映っていました。清々しい五月の朝を感じます。(多田有花)

★一時を椅子に座しおりバラ香る/祝恵子
バラ園なのか、それともご自宅なのか、庭なのか、いずれにせよ、ひとときの寛ぎの感覚が新鮮です。(多田有花)

★窓越しの空の明るさ五月来る/高橋信之
★野に出でてわが誕生の月五月/高橋信之
★束の間の甘き香りやパイナップル/廣田洋一
★草笛の真直ぐ届く空の青/柳原美知子
★新緑に手を伸ばしつつ児の歩む/河野啓一
★湖へ差す強き朝日や更衣/小口泰與

【入選/16句】
★夏来たるを振る影畝に濃し/古田敬二
光の変化が最も確実に季節の変化を教えてくれます。ほどよい気温の立夏のあたり。しかし、日差しは確実に夏の強さになっています。農作業に勤しむなかでそれを感じられました。 (多田有花)

★鞘豌豆実りて陽に透く玉の列/古田敬二
蔓に生る鞘豌豆が陽に透けてみずみずしい限りです。収穫の時を迎えての実りの喜び、初夏の明るい季節感が感じ取れます。(藤田洋子)

★新緑や陰で足湯を待つ時間/祝 恵子
新緑のまぶしき季節。日差しもきつくなってきました。
そんな日差しを陰でかわしつつ、足湯の順番を待つ。初夏の季節感をあふれて感じます。 (高橋秀之)

★窓若葉娘の滞在のピアノ鳴る/藤田洋子
いつもは学校生活等であろうか?不在勝ちの娘がゴールデンウイークに帰宅していて、ピアノを奏でています。大きく開けた窓より、新緑の若葉が目に沁みるように心地良く、久しぶりに帰宅した娘のピアノの音を通して、懐かしくそして嬉しく想う親の心が良く出ている。 (桑本栄太郎)

★ふと母に問いかけしことカーネーション/藤田洋子
母は娘にとって常に道標であるような気がします。母の日のカーネーションを前に亡き母への敬慕の念が溢れてきます。 (柳原美知子)

★青き目の遍路姿や様になり/廣田洋一
異人さんもお遍路されているのですね。ご無事で旅を続けられますように。(祝恵子)

★たんぽぽの絮の揃いて夕茜/柳原美知子
入日のあかあかとした中たんぽぽの絮が入日を一杯に受けてどこまでも飛んで行く素晴らしい景ですね。 (小口泰與)

★青梅が木々の葉裏に育ちおり/多田有花
木々の葉裏に実を結ぶ青梅のみずみずしさがありありと目に浮かびます。これからも丸く育ちゆく梅の実に季節の喜びを感じます。(藤田洋子)

★新幹線トンネル抜ければ緑濃き/高橋秀之
トンネルを抜けて、いっそう鮮やかな木々の緑が目に入ります。新幹線の爽快さに、より緑美しい季節の旅の心地よさを思います。(藤田洋子)

★友送り悼むこの日や花は葉に/桑本栄太郎
長くお付き合いが続いていたご友人が亡くなられました。花が咲いて散り、葉桜となり、巡る季節にさまざまな思いが去来したことでしょう。(多田有花)

★雲の峰飯盒飯の炊きあがり/小口泰與
炊きあがった飯盒飯に歓声が聞こえ、青葉の向こうに
早くも立ち上がる雲の峰に解放感あふれる夏のキャンプ場の様子が目に浮かびます。(柳原美知子)

★D51の鋭き汽笛夏の河/小口泰與
★鍵ひとつ加え五月のキーホルダー/多田有花
★植えし苗確と根付きて夏に入る/古田敬二
★戯れる二頭の蝶は青空へ/高橋秀之
★幼子の声響く居間夏に入る/藤田洋子

■選者詠/高橋信之
★野に出でてわが誕生の月五月
明るい野の日差しの中で、心地よい風に吹かれ、真っ青な空を仰げば、今年もまた誕生の月、五月の到来が喜びをもって実感されます。28日にはお誕生日、おめでとうございます。 (柳原美知子)

★窓越しの空の明るさ五月来る
★無事大事卓上の皿のそら豆よ
★食卓のそら豆に亡き母を思う
★生きていることを喜びそら豆食う

■選者詠/高橋正子
★茅花吹く風を荒しと見ていたり
茅花の白い穂を大きく揺らす荒々しい風に驚き、しなやかに吹かれる野花の力強い生命力に夏の季節の到来が実感されます。 (柳原美知子)

★バスを降り眼前大きな竹の秋
★夏鶯憩えば天辺より鳴きぬ
★空へ空へポピーは赤き花を立て
★若竹の伸びたる宙の橋渡る

■互選高点句
●最高点(6点)
★もてなしの砥部の大皿初鰹/藤田洋子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

■5月月例ネット句会清記


■5月月例ネット句清記
2018年5月13日
12名60句 

01.親兄弟揃い賑やか鯉のぼり
02.人の世の常やさまざま花の色
03.新緑に手を伸ばしつつ児の歩む
04.柿古木なお芽吹きつつ柿若葉
05.古池や色冴え来る花菖蒲
06.湖へ差す強き朝日や更衣
07.雲の峰飯盒飯の炊きあがり
08.D51の鋭き汽笛夏の河
09.あの頃のメトロの出口ソーダ水
10.大利根の水の流転や七変化

11.青梅が木々の葉裏に育ちおり
12.鍵ひとつ加え五月のキーホルダー
13.陽を受けし角度に開き若楓
14.はつなつの山路彩り餅躑躅
15.青鷺の孤影を映す山の池
16.登校の児童賑わうえごの花
17.教会の道のすがらや薔薇の垣
18.若楓かさね雨降るトンネルに
19.鼓打つ音の団地にたかしの忌
20.友送り悼むこの日や花は葉に

21.植えし苗確と根付きて夏に入る
22.夏来たる鍬を振る影畝に濃し
23.鞘豌豆実りて陽に透く玉の列
24.ふくらみを確かめ葉陰の豌豆採る
25.蹲に滴る山の丸く映ゆ
26.右に海左に新緑呉の旅
27.新幹線トンネル抜ければ緑濃き
28.延々と茂る葉桜河川敷
29.戯れる二頭の蝶は青空へ
30.軒下にかわいく泳ぐ鯉のぼり

31.児の帽子シロツメクサの花輪つけ
32.雨蛙ひやっと触れて他の鉢へ
33.一時を椅子に座しおりバラ香る
34.苦瓜の棚は脚立の助け借り
35.新緑や陰で足湯を待つ時間
36.幼子の声響く居間夏に入る
37.窓若葉娘の滞在のピアノ鳴る
38.もてなしの砥部の大皿初鰹
39.豆ご飯つやつや子らと卓囲む
40.ふと母に問いかけしことカーネーション

41.窓越しの空の明るさ五月来る
42.無事大事卓上の皿のそら豆よ
43.食卓のそら豆に亡き母を思う
44.生きていることを喜びそら豆食う
45.野に出でてわが誕生の月五月
46.赤と白一輪ずつの皐月かな
47.束の間の甘き香りやパイナップル
48.新緑や玄関の壁塗り直す
49.薊咲く休耕田の畔の道
50.青き目の遍路姿や様になり

51.矢車草初花ましろ一輪挿す
52.たんぽぽの絮の揃いて夕茜
53.草笛の真直ぐ届く空の青
54.鮓飯をひろげ冷ましつ母思う
55.初夏の丘に歓声ゴールする
56.バスを降り眼前大きな竹の秋
57.夏鶯憩えば天辺より鳴きぬ
58.茅花吹く風を荒しと見ていたり
59.空へ空へポピーは赤き花を立て
60.若竹の伸びたる宙の橋渡る

※互選を始めてください。7句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

5月13日(日)

★豆の花宙に雀が鳴いており  正子
晩春から初夏にかけて咲く豆の花は、少しづつ莢を太らせながら、次々に花を咲かせます。菜園に咲く豆科、果菜類の花は大変美しく、花の後の収穫の期待がふくらみます。空には雀が鳴き、穏やかで長閑な日常が想われ和みます。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
朴の花見上げ葉影に憩いけり/桑本栄太郎
朴の花は高いところに咲くので、下からは見上げるだけ。しかし、その大いなる葉影で憩うときの心静かに涼しいこと。(高橋正子)

●5月月例ネット句会12名参加。夜中12時前、入賞発表。ドライアイで目が疲れてしょうがないがこぎつけて入賞発表。
お昼1時ごろから雨。かなり本降り。
横浜から東京へかけて、白雲木がよく見られる。四国では見たことがなかったが、今、ちょうど蕾に白い色が見え始めている。スモークツリーを初めて見た。紫がかったうすい赤。曖昧な色。遠くから花を見て煙みたいと思い近づくと、名札に「スモークツリー」。なんだか、笑い出しそうになった。

○郁子(むべ)の花

[郁子の花/東京白金台/自然教育園(左:2012年5月10日・右:2014年5月3日)]

★現なく日輪しろき郁子咲けり/角川原義
★井の上の雑木にからみ郁子の花/須和田潮光
★郁子咲くを森の高きに写し撮る/高橋信之

ムベ(郁子、野木瓜、学名:Stauntonia hexaphylla)は、アケビ科ムベ属の常緑つる性木本植物。別名、トキワアケビ(常葉通草)。方言名はグベ(長崎県諫早地方)、フユビ(島根県隠岐郡)、イノチナガ、コッコなど。日本の本州関東以西、台湾、中国に生える。柄のある3~7枚の小葉からなる掌状複葉。小葉の葉身は厚い革質で、深緑で艶があり、裏側はやや色が薄い。裏面には、特徴的な網状の葉脈を見ることが出来る。花期は5月。花には雌雄があり、芳香を発し、花冠は薄い黄色で細長く、剥いたバナナの皮のようでアケビの花とは趣が異なる。10月に5~7cmの果実が赤紫に熟す。この果実は同じ科のアケビに似ているが、果皮はアケビに比べると薄く柔らかく、心皮の縫合線に沿って裂けることはない。果皮の内側には、乳白色の非常に固い層がある。その内側に、胎座に由来する半透明の果肉をまとった小さな黒い種子が多数あり、その間には甘い果汁が満たされている。果肉も甘いが種にしっかり着いており、種子をより分けて食べるのは難しい。自然状態ではニホンザルが好んで食べ、種子散布に寄与しているようである。主に盆栽や日陰棚にしたてる。食用となる。日本では伝統的に果樹として重んじられ、宮中に献上する習慣もあった。 しかしアケビ等に比較して果実が小さく、果肉も甘いが食べにくいので、商業的価値はほとんどない。

「むべ」で思い出すのは、「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐というらむ/文屋康秀」の百人一首にある「むべ」。もちろん、この歌の「むべ(宜)」は、「なるほど」の意味だが、この歌に、いつも、「むべの実」を想像してしまう。

★郁子の花引けば絡みし木がざわと/高橋正子

◇生活する花たち「かきつばた・さぎごけ・やまつつじ」(東京白金台・自然教育園)

●5月月例ネット句会投句案内●


●5月月例ネット句会投句案内●
①花冠会員・同人であれば、どなたでも投句が許されます。花冠会員・同人以外の方は花冠IDをお申し込みの上、取得してください。
②当季雑詠(春の句・夏の句)計5句を下の<コメント欄>にお書き込みください。
※5句投句といたしますのでお間違いのないようにお願いします。

③投句期間:2018年5月6日(日)午前0時~5月13日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。

▼互選・入賞・伝言
①選句期間:5月13日(日)午後6時~5月13日(日)午後9時
②入賞発表:5月14日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、5月14日(月)正午~5月16日(水)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

5月12日(土)

★ビルの窓全てで五月の空なせり  正子
五月は新緑の快い季節で、風も南風で、水の上、緑の上を渡って匂うような爽やかさで、高層ビルの窓という窓も初夏の気持ちのよい風を受けて喜んでいます。 (小口泰與)

○今日の俳句
麦秋や暮れても青き赤城山/小口泰與
暮れても戸外が心地よい麦秋の季節。暮れのこる青い赤城山を見つつ、麦秋の心地よさを心身に感じる作者がいる。(高橋正子)

●午後2時ごろ、鯛ヶ崎公園から日吉台西中学校の前の貸し農園を見学して、下田町あたりまで、信之先生と吟行兼散歩。信之先生の携帯電話の歩数計では、5269歩。歩幅48センチで設定したので、計算すると約2.5km。歩幅がもっと少なければ、2キロぐらい。少し疲れた感じだが、ちょうどいい疲労感。帰り、2年前にできた豆遊房というコーヒー豆専門店によってコロンビアの中炒りをペーパードリップ用に引いてもらって買う。店の名前を何と読むんだろう。2時に家を出たのはちょっとまずかった。これからは午前中にしよう。日差しがきつくなってきている。

伽羅蕗を作る。皮が意外と柔らかくて、拍子抜け。美味しくはできた。この前、ぜんまい、細竹、蕗を炊き合わせたが、少し飽きた。

○踊子草

[踊子草/東京白金台/自然教育園]

★み吉野の踊子草の白がちに/稲畑汀子
★淡きあはき紅粧ふも踊子草/大橋敦子
★夜すがらに奔る水音踊子草/田千鶴子
★踊子草ときをり風は囃子方/豊田都峰
★雨垂れのまた揺らしたる踊子草/川合万里子

 オドリコソウ(踊子草、学名:Lamium album L. var. barbatum (Siebold et Zucc.) Franch. et Sav.[1][2])は、シソ科オドリコソウ属の多年草 。北海道、本州、四国、九州(及び韓半島、中国)に分布し、野山や野原、半日陰になるような道路法面に群生する。
 高さは30~50cmくらいになる。葉は対生し、その形は卵状3角形から広卵形で上部の葉は卵形で先がとがり、縁は粗い鋸歯状になり、基部は浅心形で葉柄がある。花期は4~6月で、唇形の白色またはピンク色の花を、数個輪生状態になって茎の上部の葉腋に数段につける。花のつき方が、笠をかぶった踊り子達が並んだ姿に似る。花の基部に蜜があり、観察実験の材料ともなる。
 近縁種:ヒメオドリコソウ(姫踊子草、学名:Lamium purpureum L.)、ホトケノザ(仏の座、学名:Lamium amplexicaule L.)。

 
◇生活する花たち「山躑躅・武蔵野きすげ・あやめ」(東京白金台・自然教育園)