6月月例ネット句会清記


■6月月例ネット句清記
2018年6月10日
14名42句 

01.医科大の古ぶ煉瓦や蔦茂る
02.娶らざる吾子の四十路や浮いて来い
03.うつすらと田圃アートの植田かな
04.朝刊のことりと音す五月晴
05.牧水の名付けし峠緑雨かな
06.ぬか雨の上がりし薔薇の美しく
07.新緑が映る水面の鮮やかさ
08.紫陽花を左右に眺め山門へ
09.折り畳み傘をかばんへ梅雨に入る
10.友と来て列待つ子らのかき氷

11.百合色の互いに光らせあう朝
12.揚羽きて小花に止まる瞬間
13.夏の草寝そべり思う遠い過去
14.暗がりに吹き込む夏風のばす足
15.遠雷に重なり響く泣き声よ
16.幼子の指の彼方に小鳥来る
17.雨を得て白く輝く七変化
18.夏の潮豊かなるかな河内灘
19.水満ちて山と玉苗写す今朝
20.植田村明けゆく月のみずみずし

21.田の植わりはるか石鎚青澄める
22.揚羽飛ぶ自由よ庭の出入りに
23.今日晴れて空の自由を得し揚羽
24.万両の花びらを反らして白し
25.雲厚き空なり栗の花匂う
26.稜線の高さを飛びぬ夏燕
27.果実酒の焼酎を買う梅雨曇
28.茎水漬くほど水あって菖蒲園
29.菖蒲田の遠目の花は明るかり
30.青草に水音立ちて蛍棲む

31.トマト苗葉にも花にも今朝の風
32.脇芽摘む朝のトマトの青匂う
33.オクラの実小さく尖り節もとに
34.水一面のまるい葉にあさざの黄
35.晴れの日は背を伸ばし咲く花菖蒲
36.どくだみの花の白さが山のよう
37.夕暮にやさしく留まるしおからとんぼ
38.燦々と陽に佇んでやまぼうし
39.あめんぼが元気に跳ねる昼の池
40.積み上げし本を抜き取り梅雨最中
41.短夜や夢の妻すぐ消え去りぬ
42.石段を登りて涼し大山寺

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。選句は<コメント欄>にお書きください。

6月9日(土)

★つまみ菜を洗えば濁る水の色  正子
小さいつまみ菜には土も付いていない程でしょうが、それでも僅かに濁る水の色。小さく弱いつまみ菜を大切に洗っておられるのでしょう。湯掻けばほんの一握りですが、おいしいお浸しが食卓を賑わします。(黒谷光子)

○今日の俳句
どの道を行くも稲の香漂いて/黒谷光子
どの道を行っても稲の香がしている、静かであかるい村。稲の熟れるころを自然体で詠んでいて、いつまでも残したい日本の風景。(高橋正子)

○過去(2011年) 向島百花園
 昨日、墨田区の向島百花園へ花の写真を撮りに出掛ける。午前9時、信之先生と自宅を出て、帰宅は、午後3時であった。東急東横線の日吉駅から日比谷線に乗って終点の南千住、北千住で乗り換え、東武伊勢崎線を乗り継いで東向島駅で降りる。徒歩10分ほどで向島百花園に着いた。園内は、萩、女郎花、藤袴、葛など秋の七草の盛りであったが、樹が茂って、写真撮影には、光が不足していた。 園内には、庭造りに力を合わせた文人墨客たちの足跡もたくさんあり、芭蕉の句碑を含め、合計29の句碑が随所に立っていた。
 江戸の町人文化が花開いた文化・文政期に造られた百花園は、花の咲く草花鑑賞を中心とした「民営の花園」であった。当時の一流文化人達の手で造られ、庶民的で、文人趣味豊かな庭として、小石川後楽園や六義園などの大名庭園とは異なった美しさをもっていた。民営としての百花園の歴史は昭和13年まで続いたが、東京市に寄付された。昭和53年10月に文化財保護法により国の名勝及び史跡の指定を受けた。
[過去]
○米国のプロバイダーからのアクセスがあって、ためしに そこの検索に、<masako takahashi>
を入れてみたら、以下のように、私の記事が10番目くらいに出てきた。この記事がインターネット上に残っていることは、大変ありがたい。[POETRY ON THE PEAKS

○キフネツリソウ(尾瀬ヶ原)

◇生活する花たち「白むくげ・ひおうぎ・女郎花」(東京・向島百花園)

6月6日(水)

★夜空あり虚々実々の心太  正子

○今日の俳句
翡翠色潰さず盛りて豆の飯/佃 康水
豆飯の緑は、「翡翠色」というほどきれいだ。その色を保って炊き上げるのも難しく、きれいに炊き上がったときは、大変うれしいものだ。まん丸い翡翠色をつぶさないように、茶碗に装う。目をも楽しませる豆飯は、季節感あふれる食だ。(高橋正子)

○沙羅(しゃら)の花(夏椿)

[沙羅/横浜日吉本町]

★沙羅の花捨身の落花惜しみなし/石田波郷
★咲くよりも落花の多し夏椿/松崎鉄之介
★夏椿思へばそんなやうなひと/行方克巳
★亡き母のものに着替へん沙羅の花/斉藤志野

 夏椿(ナツツバキ、学名:Stewartia pseudocamellia)は、ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。別名はシャラノキ
(娑羅樹)。仏教の聖樹、フタバガキ科の娑羅双樹(さらそうじゅ)に擬せられ、この名がついたといわれる。原産地は日本から朝鮮半島南部にかけてであり、日本では宮城県以西の本州、四国、九州に自生し、よく栽培もされる。樹高は10m程度になる。樹皮は帯紅色でツルツルしており「サルスベリ」の別名もある(石川県など)。葉は楕円形で、長さ10cm程度。ツバキのように肉厚の光沢のある葉ではなく、秋には落葉する。花期は6月~7月初旬である。花の大きさは直径5cm程度で、花びらは5枚で白く雄しべの花糸が黄色い。朝に開花し、夕方には落花する一日花である。ナツツバキより花の小さいヒメシャラ(Stewartia monadelpha)も山地に自生し、栽培もされる。 ナツツバキ属(Stewartia)は東アジアと北アメリカに8種ほど分布する。
 これが夏椿だと最初に意識して見たのは、愛媛県の砥部動物園へ通じる道に植樹されたものであった。砥部動物園は初代園長の奇抜なアイデアが盛り込まれて、動物たちにも楽しむ我々にものびのびとした動物園であった。小高い山を切り開いて県立総合運動公園に隣接して造られているので、自然の地形や樹木が残されたところが多く、一日をゆっくり楽しめた。自宅からは15分ぐらい歩いての距離だったので、子どもたちも小さいときからよく連れて行った。その道すがら、汗ばんだ顔で見上げると、夏椿が咲いて、その出会いが大変嬉しかった。このとき、連れて行った句美子が「すいとうがおもいなあせをかいちゃった」というので、私の俳句ノートに書き留めた記憶がある。緑濃い葉に、白い小ぶりの花は、つつましく、奥深い花に思えた。
 今住んでいる日吉本町では、姫しゃらや夏椿を庭に植えている家が多い。都会風な家にも緑の葉と小ぶりの白い花が良く似合っている。
 植物とは全く違う話だが、まだ夏椿の花を見たことがないとき、かぎ針編みの模様に「夏椿」というのがあって、自分に似合うと思ったのだろう、この模様で製図までしてベストを編んでしばらく着た。

★夏椿葉かげ葉かげの白い花/高橋正子

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

6月5日(火)

★石楠花のうすくれないも昼下がり  正子
「石楠花」を詠んで、初夏の風景をうまく捉えた。下五に置いた「昼下がり」がいい。その言葉に、作者の個性を読み取ることができる。(高橋信之)

○今日の俳句
青芒ひかり合いつつ野を充たす/小川和子
野一面の青芒を「ひかり合いつつ」「野を充たす」と、動きをもって、いきいきと詠んだ。積極的な視線がいい。(高橋正子)

●「繪硝子」(和田順子主宰・横浜市)の6月号に俳句界3月号に掲載された正子の句21句のから「まんさくや雑木林はすきとおり」を選んで鑑賞掲載いただいた。今日、御礼状を出した。
「沖」・「氷室」・「繪硝子」、俳句界6月号に酒井佐忠氏に3句句評をいただいた。まとめて、記録しておかないと、散逸しそう。今夜、纏めよう。

梅雨入りしそうでしない。きのうも、今日も暑そうだ。

○昼咲月見草

[昼咲月見草/横浜日吉本町]

★眠られず眠たし昼咲き月見草/佳世子★

ヒルザキツキミソウ(昼咲月見草、学名:Oenothera speciosa)は、アカバナ科マツヨイグサ属の多年生植物。観賞用として栽培されている。草丈は30-60cmくらい。葉は披針形で互生する。5-7月頃に、4-5cmくらいの大きさの、白または薄いピンク色の花を付ける。花弁の数は4枚で、8本の雄蕊と、先端が十字型をした雌蕊がある。北米原産の帰化植物であり、観賞用として輸入・栽培されていたものが野生化している。名称の由来は、宵に咲くツキミソウと違って、昼間にも開花していることによる。

◇生活する花たち「花菖蒲・紫陽花・キスゲ」(横浜・四季の森公園)

6月4日(月)

★明易し畳に二つ旅かばん  正子
夜明けも早くなった夏の朝、部屋の中に二つの旅かばんがある。きっと、これから旅行に行くのであろう、そのうきうきとした楽しさが伝わってきます。(高橋秀之)

○今日の俳句
新緑の重なる先に飛行雲/高橋秀之
新緑のつややかな緑と、空に真っ白に描かれた飛行機雲の色彩的な対比がみずみずしい。(高橋正子)

●土曜日に、日吉東急で、りんごジュースとモロゾフのジェリーを買って元の家に送った。ついでに、天一書房によって、子どもの本を買った。『はじめてであうすうがくのほん2・3』(福音館)『男の子に贈りたい名作』(PHP)計6千円少々。プレゼント用に包装してもらう。面白そうだったので、帰ってからこっそり包装をはがして、送る前に中身を読む。『はじめてであうすうがくのほん 1 』は、それほど考えないで読めたが、2.3はちょっと意図を考えさせる。『男の子に贈る・・』は、読み聞かせ用なので、漢字の多いものもあれば、ひらがなだけのもある。錚々たる児童文学者の翻訳や再話をそのまま載せて、古いことばづかいもある。一番おどろいたのは、「ハーメルンの笛ふき」。ドイツの伝説なので、ドイツ人が書いたものかと思ったら、イギリスの詩人R・ブラウニングの作で、詩なのだ。訳は早乙女忠で、詩の訳。

ハーメルンは ドイツの町
ブランズウィック州 ハノーバーの近く
水もゆたかに ウィーザー川が
町の南を 流れるところ
楽しい 陽気な町だった。
でも聞いておくれ この歌物語
五百年もの 遠いむかし
何百何千 ねずみのむれが
ハーメルンの町を おそったことを
・・・
に始まる。「歌物語」なのだ。吟遊詩人が歌った叙事詩にも似ている。

その他、どれも有名な話で、男の子だけでなく、今でも読みたい本である。スリルがあるのが、なかなかだ。子どもだといって、易しい言葉ばかりではない。児童文学者の言葉に対する矜持が見える。「はだかのおうさま」では、「洋服の裾」と言ってもよいところを、「裳裾」というなど。まあ、面白かった。

○紫陽花

[紫陽花/横浜日吉本町]_小紫陽花(コアジサイ)/東京白金台・自然教育園]

★紫陽花や藪を小庭の別座敷/松尾芭蕉
★紫陽花の末一色となりにけり/小林一茶
★紫陽花の花に日を経る湯治かな/高浜虚子
★紫陽花や水辺の夕餉早きかな/水原秋櫻子
★紫陽花や白よりいでし浅みどり/渡辺水巴
★紫陽花の醸せる暗さよりの雨/桂信子
★大輪の紫陽花に葉の大きさよ/稲畑汀子
★里山の結界なせる濃紫陽花/宮津昭彦
★あじさゐや生き残るもの喪に服し/鈴木真砂女
★誓子旧居紺あぢさゐに迎へられ/品川鈴子
★紫陽花の花あるうちを刈られけり/島谷征良
★あぢさゐに触れて鋏のくもりけり/高田正子

紫陽花(アジサイ、学名: Hydrangea、アジサイ科アジサイ属の植物の総称である。学名は「水の容器」という意味で、そのまま「ヒドランジア」あるいは「ハイドランジア」ということもある。また、英語では「ハイドレインジア」と呼ぶ。開花時期は、 6月から7月15日頃。ちょうど梅雨時期と重なる。日本原産。色がついているのは「萼(がく)」で、花はその中の小さな点のような部分。しかしやはり萼が目立つ。紫、ピンク、青、白などいろいろあり。花の色は土が酸性かアルカリ性かによっても。また、花の色は、土によるのではなく遺伝的に決まっている、という説もある。

★妻の浴衣あじさい白く染め抜かれ/高橋信之
★あじさいに七曜またも巡りくる/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花・昼咲月見草・立葵」(横浜日吉本町)

6月3日(日)

★緑陰に水湧きこぼる音尽きず   正子
安らぎを求めて立ち寄られたのでしょうか。湧水が絶え間なくこぼれている、何だかホットする句です。(祝恵子)

○今日の俳句
噴水のしぶき花にも吾らにも/祝恵子
噴水のしぶきが辺りに散るほど吹き上がり、そばに花が咲き、吾らがいる。楽しげで、涼しげな光景に気持ちが和む。(高橋正子)

●句美子から土曜日、自然教育園に行ったよ、とメールが入る。なんの花が咲いていたのかと返信を打つと、
あさざ、菖蒲、紫陽花、とらのお、くさふじ、くがいそう、どくだみ でした、と返事。暑くて疲れたらしい。

○立葵

[立葵/横浜日吉本町(2014年6月2日)]_[銭葵/横浜日吉本町(2013年5月19日)]

★日の道や葵傾くさ月あめ 芭蕉
★鶏の塀にのぼりし葵哉 子規
★鴨の子を盥(たらい)に飼ふや銭葵 子規
★ひとり咲いて朝日に匂ふ葵哉 漱石
★鵜の宿の庭ひろびろと葵かな 虚子
★白葵大雨に咲きそめにけり 普羅
★花葵貧しくすみて青簾吊る 蛇笏
★立葵咲き上りたる櫺子かな 風生
★つき上げし日覆の下や鉢葵 みどり女
★蝶低し葵の花の低ければ 風生
★またけふも隣は留守や立葵 万太郎
★うらかなし葵が天へ咲きのぼる 鷹女
★葵とその周りの空間葵が占む 耕衣
★三方に蝶のわかれし立葵 汀女
★立葵夜を紅白に町に坂 汀女
★立葵憚るのみに人の門 汀女
★花葵仔犬の小屋をここに置く 立子
★花あふい子を負へる子はみな男 立子

★立葵空へ空へと咲きのぼる/高橋信之
★丘に咲き風吹く中の立葵/高橋信之

 立葵は、フリルのような花が女の子向きかもしれない。梅雨のころから咲き始め、真夏の青空は背に咲き上る。一番好きな立葵の景色は、ぽっかりと白い雲を浮かべた青空に立ち上って咲いているところだ。踏切が開くのを待っている間、いつこぼれた種から育ったのか、咲いているのを眺めることがある。かんかんかんかんとなる踏切の音と、やわらかな立葵の花は、昭和時代への郷愁を誘う。
 ゼニアオイというのがある。立葵に比べると、地味だが、眺めていると歴史をさかのぼっているような味わいがある。こう、言ってもよくわからないだろうが、京都の簾、江戸風鈴、枕草子など、取り留めもなく思いが湧いてくる。庭や畑の隅に、咲くのが当たり前のように、夏になると咲いた花だ。

 アオイ科(Malvaceae)は双子葉植物の科のひとつで、従来の分類では約75属、1500種からなる。美しい花をつけるものが多く、観賞用のハイビスカス、ムクゲ、フヨウ、タチアオイなどのほか、食用のオクラ、またワタやケナフなど繊維として利用されるものもある。草本または木本。花は両性花で、5枚の花弁と雄蕊が基部で合生し、雄蕊どうし合着して筒状になる。熱帯地方に多く、日本の本土に本来自生するものは数種(三浦半島以南の海岸に生えるハマボウのほか、南西諸島にさらに数種)で、そのほか帰化植物が数種ある。アオイ(葵)という名は、元はフユアオイなどを指し、「仰(あおぐ)日(ひ)」の意味で、葉に向日性があるためという。家紋に使われる葵(徳川家の「三つ葉葵」、下鴨神社の「双葉葵」など)は別科であるウマノスズクサ科のフタバアオイの葉をデザインしたものである。
 立葵(タチアオイ、学名:Althaea rosea、シノニム:Alcea rosea)は、アオイ科の多年草。以前、中国原産と考えられていたが、現在はビロードアオイ属(Althaea)のトルコ原産種と東ヨーロッパ原産種との雑種(Althaea setosa ×Althaea pallida)とする説が有力である。日本には、古くから薬用として渡来したといわれている。花がきれいなので、園芸用に様々な品種改良がなされた。草丈は1~3mで茎は直立する。 花期は、6~8月。花は一重や八重のもあり、色は赤、ピンク、白、紫、黄色など多彩である。花の直径は品種によるが大きなものでは10cmくらいである。本来は宿根性の多年草であるが、品種によっては一年草でもある。
 ゼニアオイは地中海沿岸原産の帰化植物。河川敷や線路脇の空き地、高架橋の下などの荒地に生育する強健な越年性の2年生草本。劣悪な環境にも生育ができるのは地中海気候にも適応した種であることも関係あろう。草丈は1.5mほどになり、株元から分かれて直立する。葉は円形から浅く5裂あるいは7裂する。花は6月から10月にかけて次々と咲き、直径3cmほど。花弁は淡紫紅色で濃色の筋がある。基本種のウスベニアオイは茎に開出毛がある点と葉が中~深裂する点が異なる。

◇生活する花たち「姫沙羅・百合・スイートピー」(横浜日吉本町)

6月1日(金)

★山あじさい辿れる道をふさぎ咲く  正子

○今日の俳句
早苗積み軽トラックゆく真昼かな/多田有花
田に早苗を運んでゆくのだが、「真昼」の出来事として、しらしらと、うすうすと、光に満ちたさわやかな印象を受ける。(高橋正子)

○植田

[植田/横浜緑区北八朔町(2012年5月30日)]_[植田/横浜緑区北八朔町(2013年5月24日)]

★いとけなく植田となりてなびきをり/橋本多佳子
★鶏鳴のあとのしづけさ植田村/鷹羽狩行
★夕明りして千枚の植田寒/岡本眸
★たつぷりと水面の光る植田かな/辺見狐音
★裏は植田前は大きな日本海/坂上香菜
★通勤の今日より植田道となり/村田文一
★合鴨の入りし植田の賑へり/松元末則
★お札所の森の浮べる植田かな/上崎暮潮
★近江には近江の植田水ひかり/高橋正子
★植田道子が落ちないように連れ通る/高橋正子

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

5月31日(木)

★木にひたとこげら飛び来て森五月  正子
初夏の森です。こげら(キツツキの一種)が飛んできて、森の木にひたと取りつきました。五月の賑やかな森の作業が始まるのです。愉しい気分に溢れています。(河野啓一)

○今日の俳句
夏潮の青く広きや船の旅/河野啓一
「夏潮」は青さを特徴とするものであるが、「広き」が加わり、船旅の開放感を詠み手にも味あわせてくれる。(高橋正子)

○茄子の花

[茄子の花/横浜日吉本町(2010年6月3日)]_[茄子の花/横浜市都筑区川和町(2013年5月21日)]

★この辺でかみ合ふ話茄子の花/稲畑汀子
★ふだん着の俳句大好き茄子の花/上田五千石
★雨あとの土息づくや茄子の花/松本一枝
★茄子の花茄子に映つてをりにけり/木暮陶句郎

 茄子(なす)は、ナス科ナス属の植物。また、その果実のこと。原産地はインドの東部が有力である。その後、ビルマを経由して中国へ渡ったと考えられている。中国では広く栽培され、日本でも1000年以上に渡り栽培されている。温帯では一年生植物であるが、熱帯では多年生植物となる。日本には奈良時代に、奈須比(なすび)として伝わった。土地によっては現在もそう呼ばれることがある。女房言葉により茄子となった。以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となった。葉とヘタには棘があり、葉には毛が生えている。世界の各地で独自の品種が育てられている。加賀茄子などの一部例外もあるが日本においては南方ほど長実または大長実で、北方ほど小実品種となる。本州の中間地では中間的な中長品種が栽培されてきた。これは寒い地域では栽培期間が短く大きな実を収穫する事が難しい上に、冬季の保存食として小さい実のほうが漬物に加工しやすいからである。しかし食文化の均一化などにより野菜炒めや焼き茄子など、さまざまな料理に利用しやすい中長品種が全国的に流通している。日本で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色又は黒紫色である。しかしヨーロッパやアメリカ等では白・黄緑色・明るい紫、さらに縞模様の品種も広く栽培される。果肉は密度が低くスポンジ状である。ヘタの部分には鋭いトゲが生えている場合がある。新鮮な物ほど鋭く、鮮度を見分ける方法の一つとなるが、触った際にトゲが刺さり怪我をすることがある。収穫の作業性向上や実に傷がつくという理由から棘の無い品種も開発されている。品種によってさまざまな食べ方がある。小実品種は漬物、長実品種は焼き茄子、米茄子はソテー。栄養的にはさほど見るべきものはないが、東洋医学では体温を下げる効果があるとされている。また皮の色素ナスニンは抗酸化作用があるアントシアニンの一種である。なかには、「赤ナス」のような観賞用として生け花などにも利用されているもの(熊本県などで「赤ナス」の商品名で栽培されている食用の品種とは別物)もある。赤ナスは食用のナスの台木としても用いられる(観賞用の赤ナスは味などにおいて食用には適さないとされる)。

 茄子の花は野菜の花のなかでも、句に詠まれることが多い。茄子は、濃い紫の茎、紫の色を残した緑の葉、うす紫の花、そして紫の実とその色合いが少しずつ違って一本となっている。その中で茄子の花の芯は一つ黄色で、そのおかげで花が生きている。夕方、野菜畑に水をやるときには、もっとも涼しそうな花である。

★茄子の花葉かげもっとも涼しかり/高橋正子
★茄子の木にもっとも淡し茄子の花/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花・カルミア・卯の花」(横浜日吉本町)

5月30日(水)

 港の見える丘公園
★薔薇を見しその目に遠き氷川丸  正子
横浜港にほど近い薔薇園のようですね?色とりどりの薔薇の花を愛でた後遠くに目を向ければ、青い海の彼方に氷川丸の白い船体が望まれる・・・。如何にも爽やかな初夏の光景が想起され、好きな句です。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
かしましき程の田道や揚ひばり/桑本栄太郎
田道は しずかに明るく、雲雀を邪魔するものもない。雲雀が野の明るさを謳歌している。(高橋正子)

○茄子の花

[茄子の花/横浜日吉本町(2010年6月3日)]_[茄子の花/横浜市都筑区川和町(2013年5月21日)]

★この辺でかみ合ふ話茄子の花/稲畑汀子
★ふだん着の俳句大好き茄子の花/上田五千石
★雨あとの土息づくや茄子の花/松本一枝
★茄子の花茄子に映つてをりにけり/木暮陶句郎

 茄子(なす)は、ナス科ナス属の植物。また、その果実のこと。原産地はインドの東部が有力である。その後、ビルマを経由して中国へ渡ったと考えられている。中国では広く栽培され、日本でも1000年以上に渡り栽培されている。温帯では一年生植物であるが、熱帯では多年生植物となる。日本には奈良時代に、奈須比(なすび)として伝わった。土地によっては現在もそう呼ばれることがある。女房言葉により茄子となった。以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となった。葉とヘタには棘があり、葉には毛が生えている。世界の各地で独自の品種が育てられている。加賀茄子などの一部例外もあるが日本においては南方ほど長実または大長実で、北方ほど小実品種となる。本州の中間地では中間的な中長品種が栽培されてきた。これは寒い地域では栽培期間が短く大きな実を収穫する事が難しい上に、冬季の保存食として小さい実のほうが漬物に加工しやすいからである。しかし食文化の均一化などにより野菜炒めや焼き茄子など、さまざまな料理に利用しやすい中長品種が全国的に流通している。日本で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色又は黒紫色である。しかしヨーロッパやアメリカ等では白・黄緑色・明るい紫、さらに縞模様の品種も広く栽培される。果肉は密度が低くスポンジ状である。ヘタの部分には鋭いトゲが生えている場合がある。新鮮な物ほど鋭く、鮮度を見分ける方法の一つとなるが、触った際にトゲが刺さり怪我をすることがある。収穫の作業性向上や実に傷がつくという理由から棘の無い品種も開発されている。品種によってさまざまな食べ方がある。小実品種は漬物、長実品種は焼き茄子、米茄子はソテー。栄養的にはさほど見るべきものはないが、東洋医学では体温を下げる効果があるとされている。また皮の色素ナスニンは抗酸化作用があるアントシアニンの一種である。なかには、「赤ナス」のような観賞用として生け花などにも利用されているもの(熊本県などで「赤ナス」の商品名で栽培されている食用の品種とは別物)もある。赤ナスは食用のナスの台木としても用いられる(観賞用の赤ナスは味などにおいて食用には適さないとされる)。

 茄子の花は野菜の花のなかでも、句に詠まれることが多い。茄子は、濃い紫の茎、紫の色を残した緑の葉、うす紫の花、そして紫の実とその色合いが少しずつ違って一本となっている。その中で茄子の花の芯は一つ黄色で、そのおかげで花が生きている。夕方、野菜畑に水をやるときには、もっとも涼しそうな花である。

★茄子の花葉かげもっとも涼しかり/高橋正子
★茄子の木にもっとも淡し茄子の花/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花・カルミア・卯の花」(横浜日吉本町)

5月28日(月)

★竹落葉わが胸中を降るごとし  正子
竹は初夏に新葉が生じると古い葉を落とす。作者も初夏の気持ちの良い新緑の中で新しい勇気が湧き上がってくる。素敵ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
郭公や牧草ロールおちこちに/小口泰與
心地よい夏の牧場の風景。郭公が鳴き、牧草ロールが遠く、近くに点在する。よい時間が流れている。(高橋正子)

○信之先生誕生日。87歳。
芍薬の花の咲くとき誕生日/正子

○信之から
ネット上で多くの方々からお祝いの言葉をいただいた。嬉しく、また有り難い。

○未央柳(びようやなぎ)

[びようやなぎ/横浜日吉本町]

★彼女眉目よし未央柳をむざと折る/高浜虚子
★水辺の未央柳は揺れ易し/清崎敏郎
★傘ひらく未央柳の明るさに/浜田菊代
★モンローの忘れ睫の美女柳/杉本京子
★胡姫の舞おもはす未央柳かな/富岡桐人

 未央柳は、キンシバイと同じ時期に咲くから、どちらも知らない人には同じ花と目に映るかもしれない。キンシバイは、花が梅の様だし、蕊が長くない。未央柳は、蕊が金色の糸のように長い。絵に描いた美人の長い睫毛とも見える。私が身近で未央柳を見かけるようになったのは、昭和40年代も終わりのころ。日本の景気が上向いて新興住宅団地が開拓され、庭つきの家が売り出された。庭も簡単に設計されて、樫などの裾を隠すために未央柳が植えられているのをよく目にした。住人が好んで植えたようでもない。日吉本町では、公園や公団、小さいビルの根方に植えられている。低木で花が沢山つくので、設計した庭の植え込みには便利がよいのだろう。水と合わせて植えれば、もっと風情がよくなるだろうといつも思う。

★夕映えは未央柳の蕊にあり/高橋正子

 未央柳(ビヨウヤナギ、学名:Hypericum monogynum)はオトギリソウ科の半落葉低木。別名「美女柳(びじょやな)」、「美容柳(びようやなぎ)」、「金線海棠(きんせんかいどう)」。中国原産。唐の長安の宮殿「未央宮」にかかわる名前で、柳の葉に似ていることからだが、これは日本名。中国では金糸桃と呼び、おしべがまさに金の糸。 半常緑性の小低木で、よく栽培されている。花期は6-7月頃で、黄色の5枚の花弁のある花を咲かせる。キンシバイにも似るが、特に雄蕊が長く多数あり、よく目立つ。雄蕊の基部は5つの束になっている。葉は十字対生する。7月14日の誕生花(未央柳、花言葉は「幸い」(未央柳)。

◇生活する花たち「山紫陽花・あさざ・がまずみ」(東京白金台・自然教育園)