6月3日(日)

★緑陰に水湧きこぼる音尽きず   正子
安らぎを求めて立ち寄られたのでしょうか。湧水が絶え間なくこぼれている、何だかホットする句です。(祝恵子)

○今日の俳句
噴水のしぶき花にも吾らにも/祝恵子
噴水のしぶきが辺りに散るほど吹き上がり、そばに花が咲き、吾らがいる。楽しげで、涼しげな光景に気持ちが和む。(高橋正子)

●句美子から土曜日、自然教育園に行ったよ、とメールが入る。なんの花が咲いていたのかと返信を打つと、
あさざ、菖蒲、紫陽花、とらのお、くさふじ、くがいそう、どくだみ でした、と返事。暑くて疲れたらしい。

○立葵

[立葵/横浜日吉本町(2014年6月2日)]_[銭葵/横浜日吉本町(2013年5月19日)]

★日の道や葵傾くさ月あめ 芭蕉
★鶏の塀にのぼりし葵哉 子規
★鴨の子を盥(たらい)に飼ふや銭葵 子規
★ひとり咲いて朝日に匂ふ葵哉 漱石
★鵜の宿の庭ひろびろと葵かな 虚子
★白葵大雨に咲きそめにけり 普羅
★花葵貧しくすみて青簾吊る 蛇笏
★立葵咲き上りたる櫺子かな 風生
★つき上げし日覆の下や鉢葵 みどり女
★蝶低し葵の花の低ければ 風生
★またけふも隣は留守や立葵 万太郎
★うらかなし葵が天へ咲きのぼる 鷹女
★葵とその周りの空間葵が占む 耕衣
★三方に蝶のわかれし立葵 汀女
★立葵夜を紅白に町に坂 汀女
★立葵憚るのみに人の門 汀女
★花葵仔犬の小屋をここに置く 立子
★花あふい子を負へる子はみな男 立子

★立葵空へ空へと咲きのぼる/高橋信之
★丘に咲き風吹く中の立葵/高橋信之

 立葵は、フリルのような花が女の子向きかもしれない。梅雨のころから咲き始め、真夏の青空は背に咲き上る。一番好きな立葵の景色は、ぽっかりと白い雲を浮かべた青空に立ち上って咲いているところだ。踏切が開くのを待っている間、いつこぼれた種から育ったのか、咲いているのを眺めることがある。かんかんかんかんとなる踏切の音と、やわらかな立葵の花は、昭和時代への郷愁を誘う。
 ゼニアオイというのがある。立葵に比べると、地味だが、眺めていると歴史をさかのぼっているような味わいがある。こう、言ってもよくわからないだろうが、京都の簾、江戸風鈴、枕草子など、取り留めもなく思いが湧いてくる。庭や畑の隅に、咲くのが当たり前のように、夏になると咲いた花だ。

 アオイ科(Malvaceae)は双子葉植物の科のひとつで、従来の分類では約75属、1500種からなる。美しい花をつけるものが多く、観賞用のハイビスカス、ムクゲ、フヨウ、タチアオイなどのほか、食用のオクラ、またワタやケナフなど繊維として利用されるものもある。草本または木本。花は両性花で、5枚の花弁と雄蕊が基部で合生し、雄蕊どうし合着して筒状になる。熱帯地方に多く、日本の本土に本来自生するものは数種(三浦半島以南の海岸に生えるハマボウのほか、南西諸島にさらに数種)で、そのほか帰化植物が数種ある。アオイ(葵)という名は、元はフユアオイなどを指し、「仰(あおぐ)日(ひ)」の意味で、葉に向日性があるためという。家紋に使われる葵(徳川家の「三つ葉葵」、下鴨神社の「双葉葵」など)は別科であるウマノスズクサ科のフタバアオイの葉をデザインしたものである。
 立葵(タチアオイ、学名:Althaea rosea、シノニム:Alcea rosea)は、アオイ科の多年草。以前、中国原産と考えられていたが、現在はビロードアオイ属(Althaea)のトルコ原産種と東ヨーロッパ原産種との雑種(Althaea setosa ×Althaea pallida)とする説が有力である。日本には、古くから薬用として渡来したといわれている。花がきれいなので、園芸用に様々な品種改良がなされた。草丈は1~3mで茎は直立する。 花期は、6~8月。花は一重や八重のもあり、色は赤、ピンク、白、紫、黄色など多彩である。花の直径は品種によるが大きなものでは10cmくらいである。本来は宿根性の多年草であるが、品種によっては一年草でもある。
 ゼニアオイは地中海沿岸原産の帰化植物。河川敷や線路脇の空き地、高架橋の下などの荒地に生育する強健な越年性の2年生草本。劣悪な環境にも生育ができるのは地中海気候にも適応した種であることも関係あろう。草丈は1.5mほどになり、株元から分かれて直立する。葉は円形から浅く5裂あるいは7裂する。花は6月から10月にかけて次々と咲き、直径3cmほど。花弁は淡紫紅色で濃色の筋がある。基本種のウスベニアオイは茎に開出毛がある点と葉が中~深裂する点が異なる。

◇生活する花たち「姫沙羅・百合・スイートピー」(横浜日吉本町)

6月1日(金)

★山あじさい辿れる道をふさぎ咲く  正子

○今日の俳句
早苗積み軽トラックゆく真昼かな/多田有花
田に早苗を運んでゆくのだが、「真昼」の出来事として、しらしらと、うすうすと、光に満ちたさわやかな印象を受ける。(高橋正子)

○植田

[植田/横浜緑区北八朔町(2012年5月30日)]_[植田/横浜緑区北八朔町(2013年5月24日)]

★いとけなく植田となりてなびきをり/橋本多佳子
★鶏鳴のあとのしづけさ植田村/鷹羽狩行
★夕明りして千枚の植田寒/岡本眸
★たつぷりと水面の光る植田かな/辺見狐音
★裏は植田前は大きな日本海/坂上香菜
★通勤の今日より植田道となり/村田文一
★合鴨の入りし植田の賑へり/松元末則
★お札所の森の浮べる植田かな/上崎暮潮
★近江には近江の植田水ひかり/高橋正子
★植田道子が落ちないように連れ通る/高橋正子

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

5月31日(木)

★木にひたとこげら飛び来て森五月  正子
初夏の森です。こげら(キツツキの一種)が飛んできて、森の木にひたと取りつきました。五月の賑やかな森の作業が始まるのです。愉しい気分に溢れています。(河野啓一)

○今日の俳句
夏潮の青く広きや船の旅/河野啓一
「夏潮」は青さを特徴とするものであるが、「広き」が加わり、船旅の開放感を詠み手にも味あわせてくれる。(高橋正子)

○茄子の花

[茄子の花/横浜日吉本町(2010年6月3日)]_[茄子の花/横浜市都筑区川和町(2013年5月21日)]

★この辺でかみ合ふ話茄子の花/稲畑汀子
★ふだん着の俳句大好き茄子の花/上田五千石
★雨あとの土息づくや茄子の花/松本一枝
★茄子の花茄子に映つてをりにけり/木暮陶句郎

 茄子(なす)は、ナス科ナス属の植物。また、その果実のこと。原産地はインドの東部が有力である。その後、ビルマを経由して中国へ渡ったと考えられている。中国では広く栽培され、日本でも1000年以上に渡り栽培されている。温帯では一年生植物であるが、熱帯では多年生植物となる。日本には奈良時代に、奈須比(なすび)として伝わった。土地によっては現在もそう呼ばれることがある。女房言葉により茄子となった。以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となった。葉とヘタには棘があり、葉には毛が生えている。世界の各地で独自の品種が育てられている。加賀茄子などの一部例外もあるが日本においては南方ほど長実または大長実で、北方ほど小実品種となる。本州の中間地では中間的な中長品種が栽培されてきた。これは寒い地域では栽培期間が短く大きな実を収穫する事が難しい上に、冬季の保存食として小さい実のほうが漬物に加工しやすいからである。しかし食文化の均一化などにより野菜炒めや焼き茄子など、さまざまな料理に利用しやすい中長品種が全国的に流通している。日本で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色又は黒紫色である。しかしヨーロッパやアメリカ等では白・黄緑色・明るい紫、さらに縞模様の品種も広く栽培される。果肉は密度が低くスポンジ状である。ヘタの部分には鋭いトゲが生えている場合がある。新鮮な物ほど鋭く、鮮度を見分ける方法の一つとなるが、触った際にトゲが刺さり怪我をすることがある。収穫の作業性向上や実に傷がつくという理由から棘の無い品種も開発されている。品種によってさまざまな食べ方がある。小実品種は漬物、長実品種は焼き茄子、米茄子はソテー。栄養的にはさほど見るべきものはないが、東洋医学では体温を下げる効果があるとされている。また皮の色素ナスニンは抗酸化作用があるアントシアニンの一種である。なかには、「赤ナス」のような観賞用として生け花などにも利用されているもの(熊本県などで「赤ナス」の商品名で栽培されている食用の品種とは別物)もある。赤ナスは食用のナスの台木としても用いられる(観賞用の赤ナスは味などにおいて食用には適さないとされる)。

 茄子の花は野菜の花のなかでも、句に詠まれることが多い。茄子は、濃い紫の茎、紫の色を残した緑の葉、うす紫の花、そして紫の実とその色合いが少しずつ違って一本となっている。その中で茄子の花の芯は一つ黄色で、そのおかげで花が生きている。夕方、野菜畑に水をやるときには、もっとも涼しそうな花である。

★茄子の花葉かげもっとも涼しかり/高橋正子
★茄子の木にもっとも淡し茄子の花/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花・カルミア・卯の花」(横浜日吉本町)

5月30日(水)

 港の見える丘公園
★薔薇を見しその目に遠き氷川丸  正子
横浜港にほど近い薔薇園のようですね?色とりどりの薔薇の花を愛でた後遠くに目を向ければ、青い海の彼方に氷川丸の白い船体が望まれる・・・。如何にも爽やかな初夏の光景が想起され、好きな句です。 (桑本栄太郎)

○今日の俳句
かしましき程の田道や揚ひばり/桑本栄太郎
田道は しずかに明るく、雲雀を邪魔するものもない。雲雀が野の明るさを謳歌している。(高橋正子)

○茄子の花

[茄子の花/横浜日吉本町(2010年6月3日)]_[茄子の花/横浜市都筑区川和町(2013年5月21日)]

★この辺でかみ合ふ話茄子の花/稲畑汀子
★ふだん着の俳句大好き茄子の花/上田五千石
★雨あとの土息づくや茄子の花/松本一枝
★茄子の花茄子に映つてをりにけり/木暮陶句郎

 茄子(なす)は、ナス科ナス属の植物。また、その果実のこと。原産地はインドの東部が有力である。その後、ビルマを経由して中国へ渡ったと考えられている。中国では広く栽培され、日本でも1000年以上に渡り栽培されている。温帯では一年生植物であるが、熱帯では多年生植物となる。日本には奈良時代に、奈須比(なすび)として伝わった。土地によっては現在もそう呼ばれることがある。女房言葉により茄子となった。以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となった。葉とヘタには棘があり、葉には毛が生えている。世界の各地で独自の品種が育てられている。加賀茄子などの一部例外もあるが日本においては南方ほど長実または大長実で、北方ほど小実品種となる。本州の中間地では中間的な中長品種が栽培されてきた。これは寒い地域では栽培期間が短く大きな実を収穫する事が難しい上に、冬季の保存食として小さい実のほうが漬物に加工しやすいからである。しかし食文化の均一化などにより野菜炒めや焼き茄子など、さまざまな料理に利用しやすい中長品種が全国的に流通している。日本で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色又は黒紫色である。しかしヨーロッパやアメリカ等では白・黄緑色・明るい紫、さらに縞模様の品種も広く栽培される。果肉は密度が低くスポンジ状である。ヘタの部分には鋭いトゲが生えている場合がある。新鮮な物ほど鋭く、鮮度を見分ける方法の一つとなるが、触った際にトゲが刺さり怪我をすることがある。収穫の作業性向上や実に傷がつくという理由から棘の無い品種も開発されている。品種によってさまざまな食べ方がある。小実品種は漬物、長実品種は焼き茄子、米茄子はソテー。栄養的にはさほど見るべきものはないが、東洋医学では体温を下げる効果があるとされている。また皮の色素ナスニンは抗酸化作用があるアントシアニンの一種である。なかには、「赤ナス」のような観賞用として生け花などにも利用されているもの(熊本県などで「赤ナス」の商品名で栽培されている食用の品種とは別物)もある。赤ナスは食用のナスの台木としても用いられる(観賞用の赤ナスは味などにおいて食用には適さないとされる)。

 茄子の花は野菜の花のなかでも、句に詠まれることが多い。茄子は、濃い紫の茎、紫の色を残した緑の葉、うす紫の花、そして紫の実とその色合いが少しずつ違って一本となっている。その中で茄子の花の芯は一つ黄色で、そのおかげで花が生きている。夕方、野菜畑に水をやるときには、もっとも涼しそうな花である。

★茄子の花葉かげもっとも涼しかり/高橋正子
★茄子の木にもっとも淡し茄子の花/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花・カルミア・卯の花」(横浜日吉本町)

5月28日(月)

★竹落葉わが胸中を降るごとし  正子
竹は初夏に新葉が生じると古い葉を落とす。作者も初夏の気持ちの良い新緑の中で新しい勇気が湧き上がってくる。素敵ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
郭公や牧草ロールおちこちに/小口泰與
心地よい夏の牧場の風景。郭公が鳴き、牧草ロールが遠く、近くに点在する。よい時間が流れている。(高橋正子)

○信之先生誕生日。87歳。
芍薬の花の咲くとき誕生日/正子

○信之から
ネット上で多くの方々からお祝いの言葉をいただいた。嬉しく、また有り難い。

○未央柳(びようやなぎ)

[びようやなぎ/横浜日吉本町]

★彼女眉目よし未央柳をむざと折る/高浜虚子
★水辺の未央柳は揺れ易し/清崎敏郎
★傘ひらく未央柳の明るさに/浜田菊代
★モンローの忘れ睫の美女柳/杉本京子
★胡姫の舞おもはす未央柳かな/富岡桐人

 未央柳は、キンシバイと同じ時期に咲くから、どちらも知らない人には同じ花と目に映るかもしれない。キンシバイは、花が梅の様だし、蕊が長くない。未央柳は、蕊が金色の糸のように長い。絵に描いた美人の長い睫毛とも見える。私が身近で未央柳を見かけるようになったのは、昭和40年代も終わりのころ。日本の景気が上向いて新興住宅団地が開拓され、庭つきの家が売り出された。庭も簡単に設計されて、樫などの裾を隠すために未央柳が植えられているのをよく目にした。住人が好んで植えたようでもない。日吉本町では、公園や公団、小さいビルの根方に植えられている。低木で花が沢山つくので、設計した庭の植え込みには便利がよいのだろう。水と合わせて植えれば、もっと風情がよくなるだろうといつも思う。

★夕映えは未央柳の蕊にあり/高橋正子

 未央柳(ビヨウヤナギ、学名:Hypericum monogynum)はオトギリソウ科の半落葉低木。別名「美女柳(びじょやな)」、「美容柳(びようやなぎ)」、「金線海棠(きんせんかいどう)」。中国原産。唐の長安の宮殿「未央宮」にかかわる名前で、柳の葉に似ていることからだが、これは日本名。中国では金糸桃と呼び、おしべがまさに金の糸。 半常緑性の小低木で、よく栽培されている。花期は6-7月頃で、黄色の5枚の花弁のある花を咲かせる。キンシバイにも似るが、特に雄蕊が長く多数あり、よく目立つ。雄蕊の基部は5つの束になっている。葉は十字対生する。7月14日の誕生花(未央柳、花言葉は「幸い」(未央柳)。

◇生活する花たち「山紫陽花・あさざ・がまずみ」(東京白金台・自然教育園)

5月27日(日)

★浜名湖の水の五月を新幹線  正子

○今日の俳句
晴れて今日裸足の季節始まりぬ/多田有花
裸足が気持ちがよいのは少し暑さが加わった晴れた日。今日はちょうどそんな日なので、裸足ですごすことに。「晴れて」裸足の季節が始まるという当たり前のようだが、そこに意外性がある。(高橋正子)

○未央柳(びようやなぎ)

[びようやなぎ/横浜日吉本町]

★彼女眉目よし未央柳をむざと折る/高浜虚子
★水辺の未央柳は揺れ易し/清崎敏郎
★傘ひらく未央柳の明るさに/浜田菊代
★モンローの忘れ睫の美女柳/杉本京子
★胡姫の舞おもはす未央柳かな/富岡桐人

 未央柳は、キンシバイと同じ時期に咲くから、どちらも知らない人には同じ花と目に映るかもしれない。キンシバイは、花が梅の様だし、蕊が長くない。未央柳は、蕊が金色の糸のように長い。絵に描いた美人の長い睫毛とも見える。私が身近で未央柳を見かけるようになったのは、昭和40年代も終わりのころ。日本の景気が上向いて新興住宅団地が開拓され、庭つきの家が売り出された。庭も簡単に設計されて、樫などの裾を隠すために未央柳が植えられているのをよく目にした。住人が好んで植えたようでもない。日吉本町では、公園や公団、小さいビルの根方に植えられている。低木で花が沢山つくので、設計した庭の植え込みには便利がよいのだろう。水と合わせて植えれば、もっと風情がよくなるだろうといつも思う。

★夕映えは未央柳の蕊にあり/高橋正子

 未央柳(ビヨウヤナギ、学名:Hypericum monogynum)はオトギリソウ科の半落葉低木。別名「美女柳(びじょやな)」、「美容柳(びようやなぎ)」、「金線海棠(きんせんかいどう)」。中国原産。唐の長安の宮殿「未央宮」にかかわる名前で、柳の葉に似ていることからだが、これは日本名。中国では金糸桃と呼び、おしべがまさに金の糸。 半常緑性の小低木で、よく栽培されている。花期は6-7月頃で、黄色の5枚の花弁のある花を咲かせる。キンシバイにも似るが、特に雄蕊が長く多数あり、よく目立つ。雄蕊の基部は5つの束になっている。葉は十字対生する。7月14日の誕生花(未央柳、花言葉は「幸い」(未央柳)。

◇生活する花たち「山紫陽花・あさざ・がまずみ」(東京白金台・自然教育園)

5月24日(木)

★卯の花の盛りや雷雨呼びそうに  正子
卯の花と言えば昔歌った童謡「夏は来ぬ」を思い出します。真っ白い花は清々しく夏の訪れを感じさせますが、またこの頃には田植えの時期と同時に梅雨の時期でも有ります。「卯の花の盛りや」に対し梅雨よりももっと強い「雷雨呼びそうに」と詠われ、真っ盛りの卯の花がより印象深く思われます。(佃 康水)

○今日の俳句
青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
実際、朴の花はこの通りである。高く聳える木に朴の花は上を向いて咲く。仰いでもその花は下から眺めるのみで、「青空の高きへ掲ぐ」は実直な見方。それが、堂々としてよい。(高橋正子)

○蛍袋

[蛍袋/横浜日吉本町]_[蛍袋/横浜・四季の森公園]

★宵月を蛍袋の花で指す/中村草田男
★子を思へば蛍袋が目を掠む/佐野良太

 蛍袋は、釣鐘型の形がかわいい。ちょうど蛍が飛ぶときに咲くので、蛍を入れるには恰好の入れ物。朝霧の中でうつむいて咲いている姿から、何を考えているのだろうかと思うときもある。関西には白い蛍袋が多くて、関東には紫がかったものが多いと聞く。事実、横浜あたりで見たのは紫がかったものばかり。たまには白いのも見てみたい。山路へ踏み込んだところや、山を切り開いて作られた新興住宅地など、思わぬところに咲いている。学名は「カンパニュラ・・」と呼ばれる。「カンパネルラ」と間違えそうになる。こちらは、宮沢賢治の銀河鉄道の夜に出てくる少年の名前だが。子どもの絵本に「十四匹のあさごはん」というのがあって、その絵本には、夏の朝の森が涼しそうに描かれていた。そういう時、蛍袋は主役の花である。

★蛍袋霧濃きときは詩を生むや/高橋正子

 ホタルブクロ(蛍袋、Campanula punctata Lam.)とは、キキョウ科の多年草。初夏に大きな釣り鐘状の花を咲かせる。開けたやや乾燥した草原や道ばたなどによく見られる草本で、全体に毛が生えている。根出葉は長い柄があり、葉身はハート形。匍匐枝を横に出して増殖する。初夏に花茎を延ばす。高さは、最大80cmくらいにまでなり、数個の釣り鐘型の花を穂状につける。花は柄があって、うつむいて咲く。山間部では人里にも出現する野生植物であるが、美しいので山野草として栽培されることも多い。花色には赤紫のものと白とがあり、関東では赤紫が、関西では白が多い。ヤマホタルブクロ(学名、Campanula punctata Lam. var. hondoensis (Kitam.) Ohwi)は、ホタルブクロの変種で、山地に多く生育する。ほとんど外見は変わらないが、萼片の間が盛り上がっている。一方、ホタルブクロは萼片の間に反り返る付属片がある。園芸植物として親しまれているカンパニュラ(つりがねそう)は、同属植物で、主に地中海沿岸地方原産の植物を改良したものである。

◇生活する花たち「未央柳(びようやなぎ)・釣鐘草・卯の花」(横浜日吉本町)

5月23日(水)

★燕子花を抱え一束の湿り  正子
燕子花は湿地に群生します。そのの花束を抱えて、感じられる花の湿り。燕子花らしさが御句に漂っています。(多田有花)

○今日の俳句
若葉山抜けて琵琶湖の真青なる/多田有花
若葉の山を越えて見えるもは、真っ青に水を湛えた琵琶湖である。初夏の琵琶湖の真青さは、爽快に目に映るだろう。また、若葉の色と湖の青とが美しい色合いである。(高橋正子)

●曇り。昼頃から雨。
フランネルフラワーを植える。天使の花とも言うらしい。
朝曇りフランネルの花白き 正子
昼顔に空はあまりにも高き  正子
夕月の金を目に入れメロン食ぶ  正子
切られたる西瓜が並ぶショーケース 正子   

○釣鐘草

[釣鐘草/横浜日吉本町]

★釣鐘草道をなじみし土着の子/貞弘 衛
★どの花も青い光よ釣鐘草/高橋正子
★畳屋が育てて愛す釣鐘草/高橋正子

○フェアリーのベルを鳴らせよ釣鐘草(ブログ「二〇世紀ひみつ基地」より)
 盛夏から晩夏にかけて、釣鐘形で薄青紫の可憐な花をつける、キキョウ科の多年草・ツリガネニンジン(釣鐘人参)、別名・ツリガネソウ(釣鐘草)。春先の若葉は山菜として、ゴマ和えや天ぷらで食され、細いニンジン状の根も食用にするほか、漢方では咳止め・去痰薬として使われる。ツリガネニンジンをトトキともいい、長野県の俗謡に「山でうまいはオケラにトトキ 里でうまいはウリナスビ 嫁に食わすも惜しゅうござる」とうたわれるほど珍重された山菜だった。オケラはキク科の多年草でこれも若葉を食べる。秋田県内での呼び名(方言)は、トドキ、トットキ、ヤマダイコン、ヌノバなど。
 妖精が宿るかのような愛らしいその花は詩人たちに愛され、宮沢賢治は「ブリューベル」青いベルと呼んだ。

あやしい鉄の隈取りや
数の苔から彩られ
また捕虜岩(ゼノリス)の浮彫と
石絨の神経を懸ける
この山巓の岩組を
雲がきれぎれ叫んで飛べば
露はひかってこぼれ
釣鐘人参(ブリューベル)のいちいちの鐘もふるえる
‥‥後略‥‥
           宮沢賢治『早池峰山嶺』より

風が吹いて草の露がバラバラとこぼれます。つりがねそうが朝の鐘を、
「カン、カン、カンカエコ、カンコカンコカン」と鳴らしています。
                    宮沢賢治『貝の火』より

釣鐘草 野口雨情

小さい蜂が 来てたたく
釣鐘草の 釣鐘よ
子供が見てても 来てたたく
大人が見てても 来てたたく
釣鐘草の 釣鐘よ
静かに咲いてる 釣鐘よ

   『青い眼の人形』より

風の子供 竹久夢二

風の子供が 山へ出て
釣鐘草をふきました
釣鐘草は目をさまし
ちんから ころりと 鳴きだすと
薄(すすき)も桔梗も刈萱(かるかや)も
みんな夢からさめました
‥‥後略‥‥
      『日本童謡集』より

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

5月22日(火)

★葉桜に夜も残れる空の紺  正子
見事で、賑わった桜も葉桜となりました、夜はまだ空色が残っている。静かになった夜景です。
(祝恵子)

○今日の俳句
若葉光手つなぎ歩くいとこ達/祝恵子
若葉の輝く季節、小学生ぐらいのいとこ達であろうか、集まって、行楽にでかけるのであろう。「手つなぎ歩く」には、兄弟姉妹だけよりも、広がりのある身内のたのしさが、若葉の季節を得て、かろやかに詠まれた。(高橋正子)

○十薬(ドクダミ)

[十薬/横浜日吉本町]

★どくだみや真昼の闇に白十字/川端茅舎
★十薬や四つの花びらよごれざる/池内友次郎
★叢に十薬花を沈め咲き/星野立子
★十薬の根の長々と瓦礫より/細見綾子
★測量の人十薬に踏み込みぬ/稲畑汀子
★十薬や夜へ突立つ坂がかり/鷲谷七菜子
★花言葉なき十薬は十字切る/上田五千石
★毒だみや十文字白き夕まぐれ/石橋秀野

十薬は、生薬名の十薬(じゅうやく、重薬とも書く)で、ドクダミ(?草、学名:Houttuynia cordata)ともいわれ、ドクダミ科ドクダミ属の多年草。 住宅周辺や道ばたなどに自生し、特に半日陰地を好む。全草に悪臭がある。開花期は5~7月頃。茎頂に、4枚の白色の総苞(花弁に見える部分)のある棒状の花序に淡黄色の小花を密生させる。本来の花には花弁も、がくもなく、雌しべと雄しべのみからなる。加熱することで臭気が和らぐことから、日本では山菜として天ぷらなどにして賞味されることがある。他の香草と共に食されるドクダミ(ベトナム)、また、ベトナム料理ではザウゾプカー(rau gi?p ca)またはザウジエプカー(rau di?p ca)と称し、主要な香草として重視されている。ただし、日本に自生している個体群ほど臭気はきつくないとも言われている。中国西南部では「折耳根(ジョーアルゲン ?音: zhe?rg?n )」と称し、四川省や雲南省では主に葉や茎を、貴州省では主に根を野菜として用いる。根は少し水で晒して、トウガラシなどで辛い味付けの和え物にする。生薬として、開花期の地上部を乾燥させたものは生薬名十薬(じゅうやく、重薬とも書く)とされ、日本薬局方にも収録されている。十薬の煎液には利尿作用、動脈硬化の予防作用などがある。なお臭気はほとんど無い。 また、湿疹、かぶれなどには、生葉をすり潰したものを貼り付けるとよい。

◇生活する花たち「ネーブルの花・八朔の花・すだちの花」(横浜日吉本町)

5月21日(月)

★アカシヤの花に青空寄りかかる  正子
青空が寄りかかるというのが、アカシアが視点の中心の大きなところを占めていることがよくわかって、初夏の清々しさを醸し出しています。(高橋秀之)

○今日の俳句
木漏れ日の眩しさの中蝶々舞う/高橋秀之
木漏れ日のちらちらする中にまぎれるように飛ぶ蝶々。すずやかな光景だ。(高橋正子)

●晴れ。明治製菓寮のあとの更地が野になり、昼顔の花が咲きだした。ハルジオンはすっかり消え、近所のバラも終わり。

○山ぼうしの花

[山ぼうし/横浜日吉本町]

★鳥寄せや夜眼ほのかなる山法師/水原秋櫻子
★山法師咲けば記憶のある山路/稲畑汀子
★その上の雲より白く山法師/林翔
★遥か見るとき遥かなる山法師/篠崎圭介
 京都
★早起きの眼に満開の山ぼうし/高橋信之

 ヤマボウシ(山法師、山帽子、学名 Benthamidia japonica )はミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。高さ5~10メートル。幹は灰褐色。葉は対生し、楕円(だえん)形または卵円形で長さ4~12センチ、全縁でやや波打つ。花は6~7月に開き、淡黄色で小さく、多数が球状に集合し、その外側に大形白色の総包片が4枚あり、花弁のように見える。山地に普通に生え、本州から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。街路樹・庭園樹・公園樹としても用いられる。材は器具材として用いられる。近縁にハナミズキ(アメリカヤマボウシ)があるが、こちらの果実は集合果にならず、個々の果実が分離している。
 山法師は、ずっと以前はなじみがなかった。花みずき(アメリカヤマボウシ)が住宅地や並木に植えられるようになって(今や銀座の通りを飾るようになって)、山法師を知ったといってもいい。その名前が愉快ではないか。松山に住んでいたころは、近くの総合公園に山法師があった。階段となった坂道なので、花を間近に真上から見ることができた。そういえば、似たような花に、小石川植物園のハンカチの木がある。そろそろ白い包片をひらつかせているころか。

★山に入り身近な花の山法師/高橋正子

◇生活する花たち「未央柳(びようやなぎ)・釣鐘草・卯の花」(横浜日吉本町)