■8月月例ネット句会/入賞発表


■2018年8月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年8月13日

【金賞】
28.列車窓大暑の海をひき寄せて/柳原美知子
「海をひき寄せて」が圧倒的だ。海岸線を走る列車の窓に、大暑の海が引き寄せられる。暑さの中の涼しい海。作者の存在感が強い。(高橋正子)

【銀賞/2句】
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
水茄子は泉州の名産。柔らかで瑞々しい水茄子は、漬け上がりの色も美しい。硝子の皿に盛られ、食卓を涼やかにしている。(高橋正子)

32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
月影の露天風呂。月夜の露天風呂の静けさ。そこをあえて乱して入るのだ。「乱して」がいい。(高橋正子)

【銅賞/3句】
02.香り立つうすき白さや稲の花/桑本栄太郎
稲の花は、白くちらちらとして、儚げである。それを「うすき白さ」といった。「香り立つ」が、稔りの秋を予感させる。(高橋正子)

08.立秋の朝日が差しぬ前山に/多田有花
さっぱりとくっきりとした句だ。いつも見る前の山に朝日が差した。立秋となって、朝日が爽やかなった。一日のことで変わる。(高橋正子)

33.病窓の青深々と秋の空/廣田洋一
病窓から見えるものは空。今日の空は深々と青く、秋の空である。心境が思える句だ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
水茄子だけでも、みずみずしく感じるが、更にガラスの皿の冷たさが伝わってくる。(髙橋句美子)

28.列車窓大暑の海をひき寄せて/柳原美知子
列車窓大暑の海をひき寄せて海岸線を走る列車の窓いっぱいに7月23日頃の赤々とした夏の暑さの頂上にある太陽をひき寄せている、真夏の景が素晴らしいですね。(小口泰與)

32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
旅先のくつろぎのひとときでしょうか。 空の月と地の湯。そこはかとない旅情を感じます。(河野啓一)

33.病窓の青深々と秋の空/廣田洋一
立秋の日。病院の窓から見上げた空は良く晴れ上がり、秋の到来を告げていた。快癒に向かう気配も感じられ心軽やかな気分にさせてくる青空だった。 (古田敬二)

35.蓮の花抽き出て風に吹かるるよ/高橋正子
咲いたばかりの清楚な蓮の花が仄かに香り、薄緑の茎とともに風に吹かれている水辺。一陣の涼風が心身を吹き抜けるようです。(柳原美知子)

02.香り立つうすき白さや稲の花/桑本栄太郎
08.立秋の朝日が差しぬ前山に/多田有花 

【高橋正子特選/7句】
24.新涼と思えば故郷山と川/古田敬二
暑さの中にふと涼しさが混じり始めるころです。季節の変化を受けて、幼い頃に駆け回られた山や川の情景が浮かんできます。 (多田有花)

08.立秋の朝日が差しぬ前山に/多田有花 
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
20.夏休み目の中輝く小学生/高橋成哉
28.列車窓大暑の海をひき寄せて/柳原美知子
32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
33.病窓の青深々と秋の空/廣田洋一

【入選/15句】
01.祈る事数多ありたる八月に/桑本栄太郎
8月は、原爆忌、お盆、日航機墜落忌と冥福を祈る日が多い。その事を、数多ありたる、と簡潔に詠んだのが上手い。 (廣田洋一)
同感です。広島と長崎の原爆忌、今日は日航機墜落事故から33年。お盆に終戦記念日、偶然とはいえ、慰霊と鎮魂の月です。(多田有花)

15.秋立ちて幼子庭を二歩三歩/河野啓一
今年は連日全国的な猛暑日が続き、熱中症の危険より命を守る為、不要不急の外出は避けてるよう言われて殆どの老人子供達は家で過ごす事が多かったようである。そのような状況下、立秋を迎え急激に涼しくなり、幼子も戸外を歩き始めました。猛暑の間でも成長を続ける命があり、涼しくなった喜びも溢れている。 (桑本栄太郎)

17.畑より前籠に西瓜押してくる/祝 恵子
畑から取りたての西瓜を自転車の前籠に入れ、傷つけないように汗をかきながらゆっくりと押して持ってきてくれた友。瑞々しい西瓜の輝きと温かい絆に、元気をいただきます。 (柳原美知子)

22.供花ならむ右手に鬼灯左杖/古田敬二
情景が見えてきます。傍にはお孫さんがご一緒かも。(祝恵子)

04.一瞬の黙や花火の打ち上がり/小口泰與
夏祭りにつき物の華やかな大輪の打ち上げ花火。その中に一瞬の黙を聞かれたところが素敵です。 (多田有花)

05.とんぼうや乱れて薄き山の雲/小口泰與
蜻蛉の飛ぶ空となり、山の雲にも秋の到来が実感されます。しんとした山の空気まで感じられるようです。(柳原美知子)

18.立秋や島へと土産大空へ/祝 恵子
ご主人がたしか離島のご出身とうかがっています。その島へお土産をたくさん持って帰郷されるところ。飛行機が離陸した瞬間を詠まれていますね。 (多田有花)

37.交差点浴衣の人人すれ違う/髙橋句美子
夏祭り、夜店など浴衣の人々がすれ違う交差点は、非日常の華やいだ雰囲気です。ひとときの日本の夏の風物詩に心やすらぐ思いです。(柳原美知子)

03.長子とう吾に家なき草田男忌/桑本栄太郎
09.秋立つ日燕の姿探しけり/多田有花
10.不揃いの合奏鈴虫鳴き始め/高橋秀之
21.ビジネス街隙間に見える夏夜空/高橋成哉
30.五穀米炊いて仏に秋暑し/柳原美知子
31.秋立ちぬ靴音高く追ひ抜かれ/廣田洋一
39.夏晴れて紅茶を淹れる昼下がり/髙橋句美子

■選者詠/高橋信之
27.日が昇る妻が育てし帚木に
奥様が育てられた帚木、こんもりと生長した帚木に日が昇り、柔らかい緑に染まると、一日の始まりが喜びをもって感じられます。共に歩まれた日々が思われます。(柳原美知子)

25.日が昇る今日の始り帚木に
26.帚木をやさしく包む朝の陽よ

■選者詠/高橋正子
34.蓮は実に金魚ついっと泳ぎ出づ
35.蓮の花抽き出て風に吹かるるよ
36.寺の道青いちぢくの青匂い

■互選高点句
●最高点(5点/同点2句)
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

■8月月例ネット句会清記


■8月月例ネット句会清記
2018年8月12日
13名39句 

01.祈る事数多ありたる八月に
02.香り立つうすき白さや稲の花
03.長子とう吾に家なき草田男忌
04.一瞬の黙や花火の打ち上がり
05.とんぼうや乱れて薄き山の雲
06.初秋やうす紫の暁の山
07.今日からは秋蝉となり鳴きにけり
08.立秋の朝日が差しぬ前山に
09.秋立つ日燕の姿探しけり
10.不揃いの合奏鈴虫鳴き始め

11.ちょんちょんと雀の足音秋の朝
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け
13.万緑や太陽の塔と吾(あ)と二人 
14.新涼の風や紅白夾竹桃
15.秋立ちて幼子庭を二歩三歩
16.貼り紙は八日間です夏季休診
17.畑より前籠に西瓜押してくる
18.立秋や島へと土産大空へ
19.河川敷水面輝き花火散る
20.夏休み目の中輝く小学生

21.ビジネス街隙間に見える夏夜空
22.供花ならむ右手に鬼灯左杖
23.原爆忌絵に多き色赤と黒
24.新涼と思えば故郷山と川
25.日が昇る今日の始り帚木に
26.帚木をやさしく包む朝の陽よ
27.日が昇る妻が育てし帚木に
28.列車窓大暑の海をひき寄せて
29.大小の太陽の色トマト洗う
30.五穀米炊いて仏に秋暑し

31.秋立ちぬ靴音高く追ひ抜かれ
32.月影を乱して入れり露天風呂
33.病窓の青深々と秋の空
34.蓮は実に金魚ついっと泳ぎ出づ
35.蓮の花抽き出て風に吹かるるよ
36.寺の道青いちぢくの青匂い
37.交差点浴衣の人人すれ違う
38.百日紅桃色一本咲く夜道
39.夏晴れて紅茶を淹れる昼下がり

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。選句は<コメント欄>にお書きください。

8月12日(日)

★西瓜切ってみなの心に故郷(くに)ありぬ  正子
私の家では、お盆で親戚が集まった時たいてい西瓜が切られる。伯父や伯母が集まると、今は亡き祖父母のことや、故郷の思い出話がつきない。そうした賑やかなお盆のひとときは、みずみずしい西瓜の色や食感と重なって思い出される。(安藤智久)

○今日の俳句
鬼やんま飛びゆく路地の風軽し/安藤智久
「やんま」は秋の季語。鬼やんまが路地をすいっと飛んで行く路地は、風が軽やかに感じられる。風が軽いのは、路地のある暮らしが穏やかでからっとしているからであろう。(高橋正子)

●8月月例ネット句会開催。
お盆で、忙しい方もおられるが、第2日曜なので、開催。細く長く続けるにはこれしかない。

○撫子

[撫子/横浜日吉本町]           [河原撫子/横浜日吉本町]

★秋霧や河原なでしこりんとして/小林一茶
★撫子や海の夜明の草の原/河東碧梧桐
★航海日誌に我もかきそへた瓶の撫子/河東碧梧桐
★撫子や堤ともなく草の原/高浜虚子
★撫子や濡れて小さき墓の膝/中村草田男
★岬角や撫子は風強ひられて/秋元不死男
★四五本の撫子植ゑてながめかな/原石鼎
★我が摘みて撫子既に無き堤/永田耕衣
★撫子や腹をいためて胤をつぎ/平畑静塔 
★台風裡河原撫子折れもせず 高橋正子

 ナデシコ(なでしこ、撫子、瞿麦)はナデシコ科ナデシコ属の植物、カワラナデシコ(学名:Dianthus superbus L. var. longicalycinus)の異名。またナデシコ属の植物の総称。?麦(きょばく)。 秋の七草の一つである。歌などで、「撫でし子」を掛詞にすることが多い。ナデシコ属 (Dianthus) は、北半球の温帯域を中心に約300種が分布する。このうち、ヒメハマナデシコとシナノナデシコは日本固有種(日本にのみ自生)であり、他に日本にはカワラナデシコとハマナデシコが分布する。
 カワラナデシコ (D. superbus L. var. longicalycinus (Maxim.) Williams)には、ナデシコ、ヤマトナデシコの異名もある。これはセキチク (D. chinensis L.) を古くは唐撫子(カラナデシコ)といったことに対する。ナデシコは古くは常夏(とこなつ)ともいった。これは花期が夏から秋に渡ることにちなむ。花の色は紅から淡いピンク色が多いが、園芸品種などでは白色や紅白に咲き分けるものなどもある。ナデシコ属の園芸品種をダイアンサス (Dianthus) ということがあるが、本来はナデシコ属の学名である。また、カーネーション (D. caryophyllus L.) もナデシコ属である。
 「撫でし子」と語意が通じることから、しばしば子どもや女性にたとえられ、和歌などに多く参照される。古く『万葉集』から詠まれる。季の景物としては秋に取り扱う。『枕草子』では、「草の花はなでしこ、唐のはさらなり やまともめでたし」とあり、当時の貴族に愛玩されたことがうかがえる。また異名である常夏は『源氏物語』の巻名のひとつとなっており、前栽に色とりどりのトコナツを彩りよく植えていた様子が描かれている。ナデシコ属は古くから園芸品種として栽培され、また種間交雑による園芸種が多く作られている。中国では早くからセキチクが園芸化され、平安時代の日本に渡来し、四季咲きの性格を持つことから「常夏」と呼ばれた。ナデシコの花言葉は純愛・無邪気・純粋な愛・いつも愛して・思慕・貞節・お見舞・女性の美・など女性的なイメージが強いが、才能・大胆・快活なども。ヤマトナデシコ(カワラナデシコ)の花言葉は、可憐・貞節である。

◇生活する花たち「朝顔・芙蓉・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

8月11日

★ひとつぶのつめたさうましぶどう食ぶ  正子
店頭にぶどうが並んでいます。よく冷えた一粒を口に入れ噛んだ瞬間がとらえられ、美味しさが伝わります。 (祝恵子)

○今日の俳句
樹にもたれ絵描く数人夏帽子/祝恵子
絵を描くのに、必ずしも座って描くとは限らない。木陰を作る木の幹に持たれ、夏帽子を冠り、スケッチをしているグループなのであろう。暑苦しくなく、軽やかな光景だ。(高橋正子)

●「花冠創立35周年」の原稿は600字だったが(あるいは、600字だったから)大変苦労した。それに花冠メンバーの25人の代表句を選ぶ。思い出の写真5,6枚を選ぶ。これらも大変だった。原稿依頼を受けて、一か月悩まされ続けた。思い出の写真は明日郵送。朝から、眠くてしょうがなかった。

35周年の原稿を完成させ、他の結社はできなかった、独自の活動をしてきたと自負するに至る。俳句・外国語(英語・ドイツ語)・コンピューターの三つのどれが欠けてもできなかった。

○桔梗

[桔梗/横浜北八朔町]             [桔梗/横浜日吉本町]

★桔梗の花咲時ポンと言そうな 千代女
★きちかうも見ゆる花屋が持仏堂 蕪村
★きりきりしやんとしてさく桔梗哉 一茶
★桔梗活けてしばらく仮の書斎哉 子規
★佛性は白き桔梗にこそあらめ 漱石
★人遠し明る間早き山桔梗 龍之介
★芝青き中に咲き立つ桔梗かな 碧梧桐
★桔梗の紫めきし思ひかな 虚子
★桔梗や一群過ぎし手長蝦 普羅
★桔梗を咲かしむるまで熔岩老いぬ 風生
★桔梗や雨またかへす峠口 蛇笏
★桔梗や忌日忘れず妹の来る 月二郎
★大江山降り出す雨に桔梗濃し 青邨
★みちのくの雨そそぎゐる桔梗かな 秋櫻子
★桔梗の花の中よりくもの絲 素十
★桔梗の露きびきびとありにけり 茅舎
★旅の子の第一信や花桔梗 汀女
★露晒し日晒しの石桔梗咲く 多佳子
★莟より花の桔梗はさびしけれ 鷹女
★桔梗を引き寄せて体空しけれ 耕衣
★桔梗や褥干すまの日南ぼこ 不器男
★白桔梗売るわらんべの一位笠 林火
★乳の如き白き池あり山桔梗 たかし

桔梗は秋の七草のひとつであるが、私は野山に自生している桔梗をみたことがない。ほどんど庭に植えられたものである。切り花用に6,70センチのものと、矮性と思える鉢植えの桔梗だけれど、一度自生の桔梗を見てみたいと思う。絶滅危惧種とのこと。風船のような蕾が緑色から、徐々に青紫色に染まって、やがて開いてくる。咲きかけの桔梗というのも見たことがない。身近だけれど、そんな具合だ。小さいころに桔梗の形の小鉢があって、それには金時豆を甘く煮たのがいつも入れらえていた。

キキョウ(桔梗、Platycodon grandiflorus)はキキョウ科の多年性草本植物。山野の日当たりの良い所に育つ。日本全土、朝鮮半島、中国、東シベリアに分布する。万葉集のなかで秋の七草と歌われている「朝貌の花」は本種であると言われている。絶滅危惧種である。根は太く、黄白色。高さは40-100cm程度。葉は互生で長卵形、ふちには鋸歯がある。下面はやや白みがかっている。つぼみの状態では花びら同士が風船のようにぴたりとつながっている。そのため “balloon flower” という英名を持つ。つぼみが徐々に緑から青紫にかわり裂けて6-9月に星型の花を咲かせる。雌雄同花だが雄性先熟で、雄しべから花粉が出ているが雌しべの柱頭が閉じた雄花期、花粉が失活して柱頭が開き他の花の花粉を待ち受ける雌花期がある。花冠は広鐘形で五裂、径4-5cm、雄しべ・雌しべ・花びらはそれぞれ5本である。なお、園芸品種には白や桃色の花をつけるものや、鉢植え向きの草丈が低いもの、二重咲きになる品種やつぼみの状態のままほとんど開かないものなどがある。

◇生活する花たち「山萩・鬼灯・蓮の花托」(横浜・四季の森公園)

8月10日

★淀川の上に集まる初秋の雲  正子
川風に誘われきらきらと雲がながれる。水に映る秋の気配に安堵します。立秋を待っていたかのように、高知でも昨日から高く透明な雲が流れています。数日間「よさこい祭」で街は喧騒につつまれますが、今朝の雲間の青はひときわ澄んでいます。日本各地、台風の影響もなく爽やかな秋に向かえたらと念じています。 (宮地祐子)

○今日の俳句
★ピーマンの輝き詰めて朝市に/宮地祐子
ピーマンのぴんと張った緑色の輝きが、朝市でひときわ新鮮な輝きを放って、袋詰めのピーマンのイメージがクリアである。(高橋正子)

●俳句四季10月号の原稿「花冠創刊35周年」をメールで送る。写真を添付したが、サイズが小さすぎるというので、写真は写真スタジオから直接送ってもらった。写真スタジオからは、4MBあると聞いたが、実際メールで受けたのは576KB。よくわからない。

○葛の花

[葛の花/横浜・四季の森公園]

★葛の葉の吹きしづまりて葛の花 子規
★むづかしき禅門でれば葛の花 虚子
★葛の花が落ち出して土掻く箒持つ 碧梧桐
★山桑をきりきり纏きて葛咲けり 風生
★車窓ふと暗きは葛の花垂るる 風生
★葛の花見て深吉野もしのばゆれ 石鼎
★花葛の谿より走る筧かな 久女
★這ひかかる温泉けむり濃さや葛の花 久女
★葛の花こぼれて石にとどまれり 青邨
★奥つ瀬のこだまかよふや葛の花 秋櫻子
★朝霧浄土夕霧浄土葛咲ける 秋櫻子
★わが行けば露とびかかる葛の花 多佳子
★花葛の濃きむらさきも簾をへだつ 多佳子
★いちりんの花葛影を見失ふ 鷹女
★白露にないがしろなり葛の花 青畝
★葛の花流人時忠ただ哀れ 誓子
★今落ちしばかりの葛は赤きかな 立子
★細道は鬼より伝受葛の花 静塔
★葛咲や嬬恋村字いくつ 波郷
★葛咲や父母は見ずて征果てむ 波郷
  
   久万・三坂峠
★わさわさと葛の垂れいる峠越え/高橋正子

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月7日

★胡麻の花稲の花咲くその続き  正子
優しく淡い色合いの可憐な胡麻の花と、小さいながらも白く清楚な稲の花。夏から秋へ向かう田の、清々しい季節感あふれる情景です。いずれも収穫の期待を高めてくれる胡麻の花と稲の花に、やがて訪れる実りの秋の喜びを感じさせていただきました。(藤田洋子)

○今日の俳句
新刊の一書机上に秋初め/藤田洋子
秋が来たと思う爽やかさに、さっぱりと片付いた机上に一冊の新刊書が読まれんとして置いてある。生活が新鮮に詠まれている。(高橋正子)

●立秋の朝日がビルの斜めより/正子
朝顔の蕾ゆるみて青見ゆる/正子

○女郎花(おみなえし)

[女郎花/横浜・四季の森公園]       [女郎花/横浜・都筑中央公園]

★ひよろひよろと猶露けしや女郎花/松尾芭蕉
★とかくして一把になりぬをみなへし/与謝野蕪村
★女郎花あつけらこんと立てりけり/小林一茶
★裾山や小松が中の女郎花/正岡子規
★遣水の音たのもしや女郎花/夏目漱石
★女郎花の中に休らふ峠かな/高浜虚子
★山蟻の雨にもゐるや女郎花 蛇笏
★女郎花ぬらす雨ふり来りけり 万太郎
★馬育つ日高の国のをみなへし 青邨
★波立てて霧来る湖や女郎花 秋櫻子
★杖となるやがて麓のをみなへし 鷹女
★をみなへし信濃青嶺をまのあたり 林火
★村の岐路又行けば岐路女郎花/網野茂子
★女郎花そこより消えてゐる径/稲畑汀子
★女郎花二の丸跡に群るるあり/阿部ひろし
★とおくからとおくへゆくと女郎花/阿部完市
★夜に入りて瀬音たかまる女郎花/小澤克己

 秋の七草のひとつに数えられる女郎花。萩、桔梗、葛、尾花、撫子、藤袴、女郎花とあげてくれば、どれも日本の文化と切り離すわけにはいかない草々だ。どれも風情がいいと思う。藤袴、女郎花については、名前にはよくなじんでいるものの、実物を見るようになったのは、20代を過ぎて、30代になってからと思う。藤袴、女郎花はどのあたりに生えているかも知らなかった。故郷の瀬戸内の低い山裾などでは見ることはなかった。女郎花は、生け花にも使われるが、粟粒状の澄んだ黄色い花が魅力だ。栽培しているものをよく見かけるようになったが、決してしなやかな花ではない。むしろ強靭な花の印象だ。葛だってそうだし。

★おみなえし雲を行かせたあと独り/高橋正子
★女郎花山の葛垂る庭先に/〃

 オミナエシ(女郎花 Patrinia scabiosifolia)は、合弁花類オミナエシ科オミナエシ属 の多年生植物。秋の七草の一つ。敗醤(はいしょう)ともいう。沖縄をのぞく日本全土および中国から東シベリアにかけて分布している。夏までは根出葉だけを伸ばし、その後花茎を立てる。葉はやや固くてしわがある。草の丈は60-100 cm程度で、8-10月に黄色い花を咲かせる。日当たりの良い草地に生える。手入れの行き届いたため池の土手などは好適な生育地であったが、現在では放棄された場所が多く、そのために自生地は非常に減少している。 日本では万葉の昔から愛されて、前栽、切花などに用いられてきた。漢方にも用いられる。全草を乾燥させて煎じたもの(敗醤)には、解熱・解毒作用があるとされる。また、花のみを集めたものを黄屈花(おうくつか)という。これらは生薬として単味で利用されることが多く、あまり漢方薬(漢方方剤)としては使われない(漢方薬としてはヨク苡仁、附子と共に調合したヨク苡附子敗醤散が知られる)。花言葉:約束を守る。名前の由来:異説有り。へしは(圧し)であり美女を圧倒するという説、へしは飯であり花が粟粒に見えるのが女の飯であるという説、など。

◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)

●8月月例ネット句会投句案内●


●8月月例ネット句会投句案内●
①投句:当季雑詠(夏の句・秋の句)3句
②投句期間:2018年8月4日(日)午前10時~2018年8月12日(日)午後5時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:8月12日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:8月13日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、8月13日(月)正午~8月16日(木)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

8月3日(金)

★夏蒲団糊の匂いて身に添えり  正子
寝苦しい夏の夜ですが、ほどよく糊のきいたシーツに包まれた夏蒲団に横たわれば、ほんのりと漂ってくる糊の匂いとともに、さっぱりとした肌触りが伝わり、静かに眠りを誘ってくれます。「身に添えり」に安らぎが感じられます。(小西 宏)

○今日の俳句
金蚊の仰向いて脚生きんとす/小西 宏
金蚊が何かにぶち当たってひっくり返った。起き上がろうとしてか、必死に脚を動かしている。作者はその様子を「生きんとす」と捉えた。金蚊の命を直視しているのがよい。(高橋正子)

○ささげの花

[ささげ花/横浜市緑区北八朔町]

★アフリカの太古の色やささげ咲く/照れまん
★紫にささげの花や土用東風/憧里夢
★高架駅下りればすぐに花ささげ/高橋正子
★大畑を区切って三筋の花ささげ/高橋正子

 ササゲ(?豆、大角豆、学名 Vigna unguiculata)はマメ科の一年草。つる性の種類とつるなしの種類とがある。アフリカ原産。主に旧世界の温暖な地方で栽培される。南米では繁栄と幸運を呼ぶ食物と考えられ、正月に食べる風習がある。樹木の形状は低木であり、直立ないし匍匐する。枝を張ったり、からみついたりと、成育の特性は多彩。語源は、莢が上を向いてつき物をささげる手つきに似ているからという説[1]、莢を牙に見立てて「細々牙」と言ったという説、豆の端が少々角張っていることからついたという説など諸説ある。藤色、紫、ピンクなど様々な色の花をつける。花の形は蝶形花である。穀物用種は、さやが10-30cmで固く、豆は1cm程度の腎臓形で、白・黒・赤褐色・紫色など様々な色の斑紋をもつ。白い豆には一部に色素が集中して黒い目のような姿になるため、ブラック・アイ・ピー(黒いあざのある目を持つ豆)と呼ばれる。つる性種は草丈が2mから4mになるのにたいし、つるなし種の草丈は30cmから40cm。ナガササゲと呼ばれる品種は100cmに達する。耐寒性は低いが、反面暑さには非常に強い。日本では、平安時代に「大角豆」として記録が残されている。江戸時代の『農業全書』には「?豆」という名前で多くの品種や栽培法の記述がある。また、アズキは煮ると皮が破れやすい(腹が切れる=切腹に通じる)のに対し、ササゲは煮ても皮が破れないことから、江戸(東京)の武士の間では赤飯にアズキの代わりに使われるようになった。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月2日(木)

★這いはじめし子に展げ敷く花茣蓙  正子
子が成長していくのは親の喜びです。這い這いしはじめの子へ花茣蓙を敷き見守られている姿が、喜びが、伝わってまいります。(祝恵子)

○今日の俳句
家裏に立てかけられてゴムプール/祝恵子
カラフルなゴムプールが、ひっそりとした家裏に立てかけられて、目に楽しく映る。家裏が涼しそうである。(高橋正子)

●トップの写真は、7月31日21時40分ごろに撮影した火星。(デジカメ)。

表参道の伊藤病院に甲状腺がんの定期健診に。超音波と血液検査。少し貧血気味の検査結果だが、問題なし。私の前の患者さん3人続けて複雑な事情のようで3人で45分ぐらいかかった。待ち時間は4時間ぐらい。受付番号は午前の872番。872番目ということ。

待ち時間中にお店をあちこち。山陽堂書店によるつもりが、暑くて忘れた。帰り、表参道の新潟物産館で氷梅というのを買った。凍らせてシャーベット状になったら梅ごと砕いて食べる。美味しかったけど、袋を切るとき砂糖水が手についてしまう。袋に余裕を。それと牛めしのわっぱ弁当一人前を土産に。ボリュームたっぷりで、二人で分けてちょうどよい。

夏夕べ昼間の街のはや懐かし  正子
夏木立合間に病舎のビルの壁   正子
夏木立ファッション街に水流し  正子

○落花生の花

[落花生の花/横浜市緑区北八朔町]

落花生がさやに入ったマメであることは、ご存じですよね。
マメなら、枝かに実っているかと思っている方がいるかと思いますが、実はちがうのです。
では、どこにできるかというと、土の中にできるのです

1.落花生の花は、早朝に咲いて、昼にはしぼんでしまいます。
受粉は、自分の花粉がめしべについて自家受粉をおこないます。
2.受粉したあと、花のもとにある子房で受精します。
3.受精して一週間もすると子房の元が伸び出して、根のように下を向きます。
この伸びた部分を子房柄(しぼうへい)といます。
4.子房柄は、土に向かってどんどん伸び、やがて土にささります。
5.土の中3~5センチのところにささった子房柄の先が水平にな
ってふくらみ、さやができはじめます。そのさやの中でマメが育つ
のです。
6. ”花が落ちたところにさやが生まれる”だから、”落花生”
といいます。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月1日(水)

★撒き水の虹を生みつつ樫ぬらす  正子
散水の水しぶきが小さな虹を生んでいるのでしょう。そしてその水が樫をぬらしていく。何気ない日常ながら、ほっとするひと時をそこに感じます。(高橋秀之)

○今日の俳句
子らに買うバナナを袋いっぱいに/高橋秀之
袋の詰められたバナナの黄色に元気がある。子供たちへの格好の土産となったバナナであるが、夏にあって楽しい。(高橋正子)

●今日から8月。晴れ。朝から暑い。
トップの写真はNASAが提供している火星の写真。

○紫式部の花

[ムラサキシキブ/横浜・四季の森公園]   [コムラサキ/東京・新宿御苑園]

★慈雨来る紫式部の花にかな/山内八千代
★紫式部添木に添わぬ花あまた/神部 翠
★光悦垣色あはあはと花式部/高瀬亭子
★紫式部咳くやうに咲き初めし/河野?子
★夢辿る紫式部の花の香に/石地まゆみ
★花式部見つけたり日の輝きに/高橋信之
★登り来てふと見し花は花式部/高橋正子

 ムラサキシキブ(紫式部、Callicarpa japonica)はクマツヅラ科の落葉低木で、日本各地の林などに自生し、また果実が紫色で美しいので観賞用に栽培される。高さ3m程度に成長する。小枝はやや水平に伸び、葉を対生する。葉は長楕円形、鋭尖頭(先端が少し突き出すこと)、長さ6-13cm。細かい鋸歯がある。葉は黄緑で洋紙質、薄くて表面につやはない。初めは表側に細かい毛があることもある。花は淡紫色の小花が散房花序をつくり葉腋から対になって出て、6月頃咲く。秋に果実が熟すと紫色になる。果実は直径3mmで球形。栽培品種には白実のものもある。名前の由来は平安時代の女性作家「紫式部」だが、この植物にこの名が付けられたのはもともと「ムラサキシキミ」と呼ばれていたためと思われる。「シキミ」とは重る実=実がたくさんなるという意味。スウェーデンの植物学者のカール・ツンベルクが学名を命名した。北海道から九州、琉球列島まで広く見られ、国外では朝鮮半島と台湾に分布する。低山の森林にごく普通に見られ、特に崩壊地などにはよく育っている。ムラサキシキブ(コムラサキ、シロシキブ)の名所として、京都・嵯峨野の正覚寺が有名である。
 コムラサキ(C. dichotoma)も、全体に小型だが果実の数が多くて美しいのでよく栽培される。別名コシキブ。ムラサキシキブとは別種であるが混同されやすく、コムラサキをムラサキシキブといって栽培していることが大半である。全体によく似ているが、コムラサキの方がこじんまりとしている。個々の特徴では、葉はコムラサキは葉の先端半分にだけ鋸歯があるが、ムラサキシキブは葉全体に鋸歯があることで区別できる。また、花序ではムラサキシキブのそれが腋生であるのに対して、コムラサキは腋上生で、葉の付け根から数mm離れた上につく。岩手県で絶滅、その他多数の都道府県でレッドリストの絶滅寸前・絶滅危惧種・危急種・準絶滅危惧の種に指定されている。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)