★夏蒲団糊の匂いて身に添えり 正子
寝苦しい夏の夜ですが、ほどよく糊のきいたシーツに包まれた夏蒲団に横たわれば、ほんのりと漂ってくる糊の匂いとともに、さっぱりとした肌触りが伝わり、静かに眠りを誘ってくれます。「身に添えり」に安らぎが感じられます。(小西 宏)
○今日の俳句
金蚊の仰向いて脚生きんとす/小西 宏
金蚊が何かにぶち当たってひっくり返った。起き上がろうとしてか、必死に脚を動かしている。作者はその様子を「生きんとす」と捉えた。金蚊の命を直視しているのがよい。(高橋正子)
●今朝、角川俳句年鑑2019年版の原稿をe-メールで送った。ついでに、封書でも送る。
【思うのだが】花冠会員のみんなの句を1年分読んで、その中から、8名分の一句だけ選び出すのは悩ましく、大変な労力。花冠は人数を絞っているからいいようなものの。
それで、思うのだが、どんなに粗末な見かけであっても、句集にまとめなければ、俳句を作ったことにならない。散らばっていては、読みようがない。
今信之先生の全句集の出版を準備中で、出版社に依頼している。経費もかかるが、読者が一人としていなくても、出すべきだと、私は主張している。
今日は句美子の誕生日。昨日、水彩画となる色鉛筆をあげたが、すぐに手近のぬいぐるみを描いてメールで送って来た。簡単に描けて、楽しいよ、と言ってきた。
今日は、誕生日の休暇をもらって、昭島の森にある昭和ホテルに一泊するそうだ。武蔵野の雰囲気があるらしい。誕生日のケーキと花束がもらえると言っていた。スケッチブックを持っていくみたい。
根岸の子規庵から特別展の招待状。子規庵へは、JR鶯谷駅から。句美子に見せると、行くと言う。そうだ、「子規はあなたの高校の大先輩だからね。」と言っておいた。「根岸には、言問い団子があるよ」、というと、知らなかった、と。
○ささげの花

[ささげ花/横浜市緑区北八朔町]
★アフリカの太古の色やささげ咲く/照れまん
★紫にささげの花や土用東風/憧里夢
★高架駅下りればすぐに花ささげ/高橋正子
★大畑を区切って三筋の花ささげ/高橋正子
ササゲ(?豆、大角豆、学名 Vigna unguiculata)はマメ科の一年草。つる性の種類とつるなしの種類とがある。アフリカ原産。主に旧世界の温暖な地方で栽培される。南米では繁栄と幸運を呼ぶ食物と考えられ、正月に食べる風習がある。樹木の形状は低木であり、直立ないし匍匐する。枝を張ったり、からみついたりと、成育の特性は多彩。語源は、莢が上を向いてつき物をささげる手つきに似ているからという説[1]、莢を牙に見立てて「細々牙」と言ったという説、豆の端が少々角張っていることからついたという説など諸説ある。藤色、紫、ピンクなど様々な色の花をつける。花の形は蝶形花である。穀物用種は、さやが10-30cmで固く、豆は1cm程度の腎臓形で、白・黒・赤褐色・紫色など様々な色の斑紋をもつ。白い豆には一部に色素が集中して黒い目のような姿になるため、ブラック・アイ・ピー(黒いあざのある目を持つ豆)と呼ばれる。つる性種は草丈が2mから4mになるのにたいし、つるなし種の草丈は30cmから40cm。ナガササゲと呼ばれる品種は100cmに達する。耐寒性は低いが、反面暑さには非常に強い。日本では、平安時代に「大角豆」として記録が残されている。江戸時代の『農業全書』には「?豆」という名前で多くの品種や栽培法の記述がある。また、アズキは煮ると皮が破れやすい(腹が切れる=切腹に通じる)のに対し、ササゲは煮ても皮が破れないことから、江戸(東京)の武士の間では赤飯にアズキの代わりに使われるようになった。
◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

★水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ 正子
秋の景色が進むにつれ空気が澄み渡り、色々な蜻蛉の飛び交う光景が増えて来ました。どんな蜻蛉でも水辺を好むようですが、時折水に触れ、またその姿が水に映り爽やかな秋のひとこまです。「水に触れ水に映る」との繰り返しが清澄なる効果をあげ、秀逸な一句です。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
新駅の高架工事や稲の花/桑本栄太郎
新駅は田園の中に建てられ、高架工事が進んでいる。おりしも田んぼには稲の花が咲き、暑さのなかにも秋の気配が漂う。開発が自然を押しやって進んでいるのも現代の景色だ。(高橋正子)
●<涼しい。近所のマンション3棟が解体され更地になっているので、秋風が見えるよう。>これは、去年の9月2日。新しくマンションの建設が始まってい入る。
きのう、日吉東急のFORMAで、ドイツの水彩画となる色鉛筆を句美子の誕生日のプレゼントに買った。去年は、元希にシュトックマイヤーの絵の具を買っている。毎年同じようなことをしているではないか。秋風が立つと絵心が動く。でも、私は、描かない。することが無くなったら絵と音楽を楽しもう。以前、美大を卒業された方から、画に詳しいですね、というメールをいただいた。これは、嬉しい。ごく最近は、シューベルトがいいと思う。音楽に詳しいとは絶対言われないだろうけれど。
夕べ、信之先生の角川年鑑「諸家自選5句」投稿用に、句を整理した。今朝、自選5句を投函。「諸家」は640人ほどおられるが、選ぶ基準がなんなのかな。
昨日の続きで角川年鑑の結社動向の原稿を執筆中。一人一句9名の句を選ぶのが、結構な作業で能率があがらない。それぞれの1年分の発表句から選ぶ。閉め切りは9月4日。
釣舟草(ツリフネソウ)

[釣舟草/東京白金台・国立自然教育園] [黄釣舟(キツリフネ)/横浜・四季の森公園]
★日おもてに釣船草の帆の静か/上田日差子
★無事祈る小さき岬宮釣舟草 千恵子
★釣舟草琵琶湖の風の吹くままに 善清
★川せせらぐに黄釣舟草の黄がまぶし/高橋信之
★釣船草秋風吹けば走るかに/高橋正子
ツリフネソウ(釣船草、吊舟草、学名: Impatiens textori)は、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草である。ムラサキツリフネ(紫釣船)とも呼ばれる[3]。
東アジア(日本、朝鮮半島、中国、ロシア東南部)に分布する。日本では北海道・本州・四国・九州の低山から山地にかけて分布し、水辺などのやや湿った薄暗い場所に自生する。キツリフネとともに群生していることも多い。日本には同属では、ハガクレツリフネも生育している。草丈は、40-80 cmほどに生長する。葉は鋸歯(縁がギザギザになる)で、楕円形から広披針形、キツリフネより広披針形に近い傾向がある。花期は夏から秋(山地では 8月頃から、低地では 9-10月)。茎の先端部から細長い花序が伸び、そこに赤紫色で3-4 cmほどの横長の花が釣り下がるように多数咲く。稀に白い色の花がある。花弁状の3個の萼と唇形の3個の花弁をもち、距が長く筒状になっている。下の花弁の2個が大きく、雄しべが5個。その花が帆掛け船を釣り下げたような形をしていることや花器の釣舟に似ていることが名前の由来と考えられている。花の形はキツリフネに似るが、色が赤紫色であることと、花の後ろに伸びる距の先端が渦巻き状に巻くこと本種の特徴である。なお一般にツリフネソウ属の花は葉の下に咲くが、本種はその例外である。大きく深い花がたくさん咲き距の部分に蜜がたまり、主にマルハナバチなど大型のハナバチや、ツリアブ類などが好んで集まり、花粉を媒介する。
種子が熟すと、ホウセンカなどと同様に弾けて飛び散るように拡がる。
キツリフネ(黄釣船、学名: Impatiens noli-tangere)は、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草である。その黄色い花と、後ろに伸びる距の先が巻かずに垂れることが、ツリフネソウとの明確な相違点である。
◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

今年の8月は台風が9個も発生し、7月に災害を受けた地方台風が来襲したり、その上の猛暑。この暑さも災害と呼ばれるほどで、大変な夏でした。そのなか、月例句会にご参加いただきありがとうございました。
入賞の皆様おめでとうございます。
ネット句会も今年は22年目となっており、どこよりも長く続いているのではないかと思います。それだけ、私たちも年齢を重ねたわけですが、ネットで顔が見えないとは言え、花冠フェスティバルなどでお会いしたことのある方がほとんどです。句会の選では、お顔を思い浮かべながら、選をされているのではと思います。今後ともよろしくお願いいたします。これで8月月例句会を終わります。
高橋正子(主宰)
★つまみ菜を洗えば濁る水の色 正子
○今日の俳句
秋風に速き流れの雲ひとつ/高橋秀之
空を眺めていると、ひとつだけ速く流れている雲に気づく。そこにだけ風が強く吹いているのだろうか。秋の空を見に行ってみたいものだ。(高橋正子)
●今日から9月。
【最近思うのだが】著名俳人による俳句の添削は行き過ぎではないかと思う。元の俳句を改竄してしまっていて、その人らしさがなくなっている。間違いを訂正するのが、添削の意味。俳句のリズムにこそ、その人らしさがある。文体ではないにしても、その人の呼吸スタイルがある。これを壊している。外国の詩でこのようなことをしている場合はあるのだろうか。
○韮の花
[韮の花/ネットより] [韮の花/横浜日吉本町]
★韮の花坂としもなく息あへぐ/石田波郷
★足許にゆふぐれながき韮の花/大野林火
★おもてより裏口親し韮の花/水野節子
★天日を豊かに受けて韮の花/久我達子
★韮の花秩父は土の匂いして/城内明子
★一面に韮の花咲く里暮れし/阿部スミエ
★いつ見ても韮の花に蝶せせり/高橋正子
ニラ(韮)は、百合(ゆり)科ネギ属の多年草緑黄色野菜である。学名はAllium tuberosum。Allium:ネギ属、tuberosum:塊茎のある、塊茎状の。Allium(アリウム)は「ニンニク」の古いラテン名で、「匂い」という意味が語源。夏には葉の間から30 – 40cmほどの花茎を伸ばす。花期は8 – 10月頃。花は半球形の散形花序で白い小さな花を20 – 40個もつける。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっている。子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布する。中国西部が原産。日本では本州から九州に野生し、これを自生とする向きもあるが、疑わしい。株分けまたは種によって増やす。独特の臭気があることから「においきらう」(香嫌)、これが「にら」に変化したともいわれ、また、美味であることから「みら」(美辣)が「にら」に変化したともいわれる。この匂いのため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。匂いの原因物質は硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物である。
◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

★白萩の奥なる門の半開き 正子
白萩に、その家に住まわれる人の清楚な暮らしぶりが思われます。半開きには住人の動きが見えるようです。(黒谷光子)
○今日の俳句
萩咲くを乱して山に供花を切る/黒谷光子
仏様へお花をお供えするのも作者のお勤め。山に花を取りにでかけることもある。心ならずも美しく咲いている萩の姿をみだすこともある。萩の花を含めて季節の花を用意される暮らしがゆかしい。(高橋正子)
●年のせいか、暑さのせいか、気がかりなことのせいか、ことが全く捗らない。
◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)・「キツネノカミソリ」(横浜四季の森公園)

★雲が来て風のそよげる花芙蓉 正子
たおやかな芙蓉の花が風にやさしくそよぐ姿が、やわらかな雲の流れくる背景によく調和し、秋の涼しさを明るく静かに感じさせてくれます。(小西 宏)
○今日の俳句
海近くトンボ集える墓参り/小西 宏
それぞれの家の墓地は、山裾にあったり、市街地を眺める丘にあったりする。宏さんの墓参は海の近くのお墓。見晴らしのよい墓地には、トンボが集い爽やかである。(高橋正子)syl
●「俳句添削教室」用の掲示板style21の使用料を支払う。1年分。
○薮蘭(やぶらん)

[薮蘭/鎌倉・宝戒寺] [薮蘭/ネットより]
★藪蘭は大樹の下にのびのびと/高橋信之
★藪蘭や涼しくなると思うころ/高橋正子
薮蘭(やぶらん、学名:Liriope muscari)は、スズラン亜科(Nolinoideae)ヤブラン属(Liriope)のる多年草。Liriope(リリオーペ)は、ギリシャ神話の女神の名前に由来。 東アジアに分布する。開花期は夏から秋。花は紫色の小さいもので、穂状に咲く。葉は細長く、先は垂れる。日陰に生える。日本庭園の木々の根元などにアクセントとして植えられることが多い。葉が斑入り(ふいり)のものもある。実(タネ)は黒い丸形。別名は「山菅」(やますげ)。ちなみに、万葉集で「山菅」として歌われたのは竜の髭(りゅうのひげ)のこと。万葉集では薮蘭は登場しないようだ。10月26日の誕生花。花言葉は「謙遜」。
◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)・「キツネノカミソリ」(横浜四季の森公園)

★剥く梨にわが顔映りいたるかも 正子
○今日の俳句
箱の荷の泥付き芋は地方紙に/祝恵子
届いた箱の荷を開けると、地方紙にくるまれた畑から掘り起こしたばかりの泥つきの芋が入っている。地方の便りも、合わせて届き、懐かしい思いだ。(高橋正子)
●福田病院へ、信之先生の付き添い。昨日のCT検査の画像を病院に渡す。医者の心配した癌ではなかった。
肺にはそれまでの病気の履歴がみな残るそうだ。投薬で、1週間様子をみるとのこと。
2日続けて病院の付き添いの病院疲れ。家事、いろいろ滞る。
○芙蓉

雲が来て風のそよげる花芙蓉 正子
秋めいてきた。きのう、色づき始めたむらさきしきぶの向こうにピンクの芙蓉が咲いているのは知っていた。今朝、それを写しにゆくと、頭をタオルで包んだ男の人がカメラを覗いている。その傍に草取りをしている女の人がいて、「おはようございます。花を撮らせてください。」と頼んで芙蓉を撮らせてもらった。
ご夫婦で趣味が写真のようだ。朝八時過ぎでまだ陰っているので、芙蓉を撮るとフラッシュが焚かれた。奥さんが、「今フラッシュが焚かれましたよ。」という。そのあと、ご指南があった。花を撮るときは、フラッシュは焚かないほうがいい。近くで撮りすぎるとピンぼけになる。オートをはずしなさい。カメラを覗いているご主人は、ちょっとカメラを見せてごらん、と。しかし、カメラもいろいろでよくわからんなあ、と。この芙蓉の花がいいですよと、奥さんが指す。言われるとおりにその花を撮って家で落ち着いて見てみると、はっきりとして、幾分情緒に欠けているように思うが、写真家好みになっている。家の錆びたトタンの壁までくっきりと写っている。芙蓉はそんなところにも似合う。
松山の郊外に一時住んでいたときは、玄関に芙蓉があり、花に隠れて水道があった。そこでは、盥で洗濯をしたが、花の傍で水をいっぱい使って洗濯をすると、気分もさわやかだった。
◇生活する花たち「桔梗・落花生の花・青栗」(横浜市緑区北八朔)

★朝顔の紺一輪を水に挿し 正子
朝、切り取られた紺の朝顔をすぐに水に挿された。朝顔の紺色の一輪で有るからこその涼やかさと清楚さが美しく浮かび上がって参ります。活けられているお部屋全体まで清々しさを感じます。(佃 康水)
○今日の俳句
潮の香の港にたてば銀河濃し/佃 康水
漁港を詠んで、句材が整っています。潮の香がする夜の港は、港の明かりも家々の明かりも落されて、銀河の限りない星がはっきりと見えます。無窮の空の銀河なのです。(高橋正子)
●午後、予約していたCT検査のため、関東労災病院へ信之先生の付き添いで出かける。元住吉駅から徒歩7分ほどだが、残暑が厳しい。病院では簡単な問診のあとCT検査。検査は10分もかからなかった。画像をもらうため、50分ほど待つ。ドトールが病院のホールにあり、珈琲とホットドッグで昼食。若い男の子が親の付き添いで来ているのが2,3人いて目についた。昔なら、男の子には頼めなかっただろう。
病院の帰り、日吉の東急で買い物。信之先生は久しぶりの東急で、目に入るものをいろいろ買った。賀茂鶴のゴールドと八海山の小瓶も買う。賀茂鶴のゴールドが美味しいので、また買うとのこと。
○葛の花
クズは、マメ科のつる性の多年草。根を用いて食品の葛粉や漢方薬が作られる。万葉の昔から秋の七草の一つに数えられる。漢字は葛を当てる。葉は3出複葉、小葉は草質で幅広く、とても大きい。葉の裏面は白い毛を密生して白色を帯びている。地面を這うつるは他のものに巻きついて10メートル以上にも伸び、全体に褐色の細かい毛が生えている。根もとは木質化し、地下では肥大した長芋状の塊根となり、長さは1.5メートル、径は20センチにも達する。花は8~9月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、濃紺紫色の甘い芳香を発する花を咲かせる。花後に剛毛に被われた枝豆に似ている扁平な果実を結ぶ。花色には変異がみられ、白いものをシロバナクズ、淡桃色のものをトキイロクズと呼ぶ。和名は、かつて大和国(現:奈良県)の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。温帯および暖帯に分布し、北海道~九州までの日本各地のほか、中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに分布している。
クズは、荒れ地に多く、人手の入った薮によく繁茂する。雑草としては、これほどやっかいなものはない。蔓性で草地を這い回り、あちこちで根を下ろす。地上部の蔓を刈り取っても、地下に栄養を蓄えた太い根が残り、すぐに蔓が再生するので、駆除するのはほとんど不可能に近い。世界の侵略的外来種ワースト100選定種の一つである。他方で、その蔓は有用であった。かつての農村では、田畑周辺の薮に育つクズのつるを作業に用いた。そのため、クズは定期的に切り取られ、それほど繁茂しなかった。しかし、刈り取りを行わない場合、クズの生長はすさまじいものがあり、ちょっとした低木林ならば、その上を覆い尽くす。木から新しい枝が上に伸びると、それに巻き付いてねじ曲げてしまうこともある。そのため、人工林に於いては、若木の生長を妨げる有害植物と見なされている。クズは根茎により増殖するため根絶やしにすることが困難である。
北アメリカでは1876年にフィラデルフィアの独立百年祭博覧会の際に日本から運ばれて飼料作物および庭園装飾用として展示されたのがきっかけとして、東屋やポーチの飾りとして使われるようになった。さらに緑化・土壌流失防止用として政府によって推奨され、20世紀前半は持てはやされたが、原産地の中国や日本以上に北アメリカの南部は生育に適していたためか、あるいは天敵の欠如から想像以上の繁茂・拡散をとげた。そのため有害植物及びに侵略的外来種として指定されたが、駆除ははかどっていない。現在ではクズの成育する面積は3万km2と推定されている。近年ではアメリカ南部の象徴的存在にまでなっている。クズの英語名は日本語からkudzu(「クズー」あるいは「カァズー」と発音される)である。
葛の葉は、初夏をすぎるころから生い茂る。大きな木を覆いつくし、山を行くバスの窓からは、山肌の崖に垂れ下がる。至るところに茂っているが、花は、と思って見ても花が見つからないことが多い。花がつくものには、たくさん葛の花が咲き、地面に紫の花が落ちこぼれて、道の埃を冠っていることもある。八月二十八日、中山の四季の森公園に出かけた。朝のうちは、公園は新涼の風が吹き抜け、水引草、萩、ヤブランな
どが咲き始めていた。コスモス畑には、準備中の立て札が立っている。四季の森公園の北口から入り、紅葉谷を南口へと抜け、公園を出て、中山中学校へ通日広い道路を下った。この道は街中と違って、野の風情があって好きな道だ。葛の蕾を見つける。花は一週間ぐらい先かと下ると、花盛りの葛に出会った。花房も長く、野生の力を発揮している。芳香がする。写真に撮って歩き始めたが、引き返して句美子へのお土産と、私が匂いを忘れないようにするために一花摘んだ。葛の反対側のガードレールには、芒が穂を開いている。また少し下ると、酔芙蓉がわずかにピンクに変わり始めていた。丘の家に庭におみなえしがある。見上げて、そらの白雲を入れて写真を撮った。葛が咲けば、おみなえしも、芒も、酔芙蓉も咲くのである。
★葛の葉の吹きしづまりて葛の花 子規
★むづかしき禅門でれば葛の花 虚子
★葛の花が落ち出して土掻く箒持つ 碧梧桐
★山桑をきりきり纏きて葛咲けり 風生
★車窓ふと暗きは葛の花垂るる 風生
★葛の花見て深吉野もしのばゆれ 石鼎
★花葛の谿より走る筧かな 久女
★這ひかかる温泉けむり濃さや葛の花 久女
★葛の花こぼれて石にとどまれり 青邨
★奥つ瀬のこだまかよふや葛の花 秋櫻子
★朝霧浄土夕霧浄土葛咲ける 秋櫻子
★わが行けば露とびかかる葛の花 多佳子
★花葛の濃きむらさきも簾をへだつ 多佳子
★いちりんの花葛影を見失ふ 鷹女
★白露にないがしろなり葛の花 青畝
★葛の花流人時忠ただ哀れ 誓子
★今落ちしばかりの葛は赤きかな 立子
★細道は鬼より伝受葛の花 静塔
★葛咲や嬬恋村字いくつ 波郷
★葛咲や父母は見ずて征果てむ 波郷
★葛咲けり一つの花のその奥にも/高橋正子
久万・三坂峠
★わさわさと葛の垂れいる峠越え/高橋正子
◇生活する花たち「百合・女郎花・睡蓮」(横浜・都筑中央公園)

★りんりんと虫音に力のありて闇 正子
残暑厳しい中にも夜に入ると、虫の音が聞こえ、確かな秋を感じるころです。あの小さな身体であれだけ響く音色を出す、「力のありて闇」に共感いたします。 (多田有花)
○今日の俳句
秋茄子の不ぞろいなるも強靭に/多田有花
真夏の暑さが去り、朝夕が涼しくなってくると、茄子が生き生きとして美味しい実をつけるが、皮が傷んだようなのも、曲ったのも様々。「不ぞろいなるも強靭」なのである。(高橋正子)
過去
●元家族がお昼に来る。Nゲージの鉄道模型を持って帰る。元が小学生の時のものだから、20数年経っている。元希はおばあさん、つまり私が大きな口を開けて笑っている絵とお菓子を送ったお礼の手紙を書いて持ってきてくれた。絵もてがみも自分でかくというらしい。
身長は107センチ。柱には、わが家に来た時の身長の印があるが、それより、2センチほど伸びたか。嫁の奈津子さんが岐阜のお菓子の「お初尾」という鮎のお菓子などお土産に。
暑いけど、冷房を入れて、ビーフシチュー(デミグラスソースは買ったけど、赤ワインを入れて3時間ほど煮込んだ。)とエビフライ。サラダは、ポテトとグリーンサラダ。グリーンサラダは、私のレシピで、レタス、キュウリ、カイワレ、茗荷、青じそ、鶏ささみの酒蒸し裂きに昆布ポン酢をかける。このサラダ、中国人やドイツ人、若い人にも好評。パンは、クロワッサン型のシリアルロール。あっさりして食べやすい。当分ははまりそう。
夕方、句美子のところへ、同じものを持ってゆく。夕食なので、パンではなくご飯。グリーンサラダがもっと欲しかったという。
◯尾瀬初秋/高橋正子([過去]8月27日金曜日)
尾瀬行きのバスの秋日のあたたかし
みなかみの稲穂熟れそむ日和なり
胡麻の花山の青さをきわだてり
八月は水芭蕉の葉のおおいなる
ハンゴンソウの黄花真盛り触れもして
木道に沿えば風吹き吾亦紅
イワショウブ
みはるかす湿原白き花が立ち
湿原に日はかたむかず未草
弥太郎清水
差し入れし泉の水に手を切られ
山小屋の湯にいて秋の笹の音
◇生活する花たち「藻の花・萩・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)

★葛咲けり一つの花のその奥にも 正子
○今日の俳句
青柿の並びさわさわ風に揺れ/河野啓一
青い柿の葉のなかにある青い柿の実。風が吹くと青柿がさわさわ揺れ、新涼のさわやかさを目にみせてくれる。(高橋正子)
●夕べ9時ごろ洗面所の天井から水が漏れた。管理会社が来て写真を撮る。あと給水業者が来て点検する。2階の排水管が詰まって水漏れしたとという。洗濯機を使い風呂の水を同時抜いてに流したため、流れきれない水が溢れたとのこと。管理会社の怠慢。排水管を掃除すべき。この騒ぎで一日つぶれる。
公司さんの奥さんに電話。いつもどおり明るい声だが、やはり8月16日に亡くなって19日葬式だったとのこと。
○小豆の花
[小豆の花/ネットより] [野小豆の花/ネットより]