■10月月例ネット句会清記■


■10月月例ネット句会清記■
2020年10月11日
14名(42句)

01.望郷のつのる想いや秋黴雨
02.酔うほどにやおら唄出で秋収め
03.雨ながらもみづる庭となりしかな
04.コスモスや空青青と山聳(そそ)る
05.螻蛄鳴くや土木工事の進ざる
06.夕映えの火の山を見て熟柿みて
07.人の輪に笑顔の連鎖長き夜
08.一匹の秋刀魚をきれいに食べ尽くす
09.静けさやひとり歩きの星月夜
10.新米炊く届きしばかりの炊飯器

11.彼岸花手折る人あり雨あがる
12.ひとりごと言っては笑いいわし雲
13.路地ゆけば白萩咲かせる家に着き
14.宝石の如き青さよ臭木の実
15.軒下に日差し呼び込みつるし柿
16.山の水たっぷり流し甘藷洗う
17.間引菜の緑とりどり今朝の皿
18.刈田道幟も神輿もなく風に
19.霧深し車は車庫に留まれり
20.ワイン片手ファドに聞き入る夜長かな

21.庭の隅群れて明るき小菊かな
22.電線に雀が並ぶ秋高し
23.秋風に襟を正して出勤す
24.ひっそりと店畳みけり秋の雨
25.切り株に刈穂寝かせて刈り進む
26.秋雨に濡れて鉄路の長き野に
27.小鰯の干されて蒼き秋の浜
28.コスモスの丈を掬いて大きな風
29.ぎす鳴けり草の平らを踏みおれば
30.赤ままを摘みて何せむ瓶に挿す

31.銀杏の落ちしを避けてバスを待つ
32.萩の花明るい紅を道かげ に
33.毬栗の香りを甘く夕食前
34.高きにも地にも満開萩の花
35.塀を超え地まで満開萩の花
36.マスクばかりCOVID19秋の雨
37.硝子器に挿せし木犀玄関へ
38.木犀を挿してやさしい家になる
39.木犀の薫りは花器の一枝から
40.卓上に落ち来し光秋夕べ

41.陽が沈む秋の野の遠くに沈む
42.夕食を終えてじみじみ秋灯し

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

10月11日(日)

曇り。
●10月月例ネット句会。
正子投句3句
28.コスモスの丈を掬いて大きな風
丈も伸び、ようやく咲きそろったとりどりの色のコスモスを吹く台風の風の吹きようが「丈を掬いて」によく表されています。横倒しになりそうでも折れないコスモスのしなやかさも感じられます。(柳原美知子)
29.ぎす鳴けり草の平らを踏みおれば
30.赤ままを摘みて何せむ瓶に挿す
●『光年の星』の礼状を出す。
●『宇宙の音符』(豊里友行著/沖縄書房/2020年9月23日発行)より15句。あとがきの「私の俳句は想像力の翼を広げて地球を駆け巡る。」を鑑賞の基準として読む。
のあのはこぶねのはしごは揚雲雀
平凡な一日はずむポエムの卵
青空の画鋲のような戦闘機
こおろぎの投網の星のさざなみ
うみなりは心音の闇対馬丸
モノイワヌタミハホロビルヒキガエル
終戦はまだよさざなみのまらそん
翅も絮も奪って瓦礫のランドセル
軍港のいそぎんちゃくを内蔵し
かんからさんしんのねいろ天の川
参観日花火のような手があがる
枯れ向日葵のさみしくなんかない
りんりんと月を身籠る花月桃
みんな武器すて鉄砲百合が痛快
ホームラン虹の根ぐいぐい伸ばしてく

10月10日(土)

雨。
●台風14号が、伊豆諸島の方へ。直撃は免れたが、一日雨。
●明日は10月月例句会。自由な投句箱に案内を出し忘れたので、栄太郎さんより確認の電話がある。
●句集『光年の星』(川原正著)より好きな句10句
ノーサイド湯気の背中がたたえ合ふ
若葉風風邪の子ひとり保健室
?ぎたての野菜はじける夏カレー
青葉若葉奈良井の宿は木と生きる
胡桃和信濃育ちの妣の味
初任地は海と畑と揚雲雀
白き帆は夏の色なり滑走す
鷹の眼に深き野性の潜みけり
冬めくや一人で使ふ八畳間
光年の星と歩みしかたつむり
(著者の川原正さんは、現在は高校の体育教師を退職され、現在も箱根駅伝にかかわっておられるとのこと。勘どころ良い方ではないかと思った。)
●多蔵得三郎氏(「燎」編集長)に出した礼状が返送されてきた。虫メガネで確かめて書いた住所だったが、17番地を7番地と書いていた。書き直す。このごろ、確かに目がよくない。
●『Doctor Dolittle's Garden』(Red Fox Book)が本棚から見つかる。朝、冬みたいに冷え込んでいたので、布団ではじめの方をパラパラ読む。こんなに面白かったかと、思った。挿絵も可愛い。

10月9日(金)

雨。
暗がりの大樹となって金木犀    正子
金木犀散りては水漬く花十字    正子
ずぶ濡れてコスモスの色みな淡し  正子
●台風14号が明日接近。
●忘れ忘れになっていたが、チューリップと、カサブランカの球根を注文。ターシャ・チューダーさんは、花の球根や種を買うために絵を描いているんだとどこかに書いていた。いい色合いの花はそれなりの値段だけど、咲いた時がうれしい。
●『光年の星』が見つかる。雨で暗いので、部屋を一番明るくして、ガラス扉のある本棚を指呼確認のごとくにして探した。句集を入れてあるところに、一冊抜いてぽっかりと暗くなっているその隣、扉の枠で見えなくなったところにあった。部屋を明るくして、扉を全開して探したら、あるべきところにあった。目が悪く、勘が鈍くなったものだ。句美子が来たら、探してもらおうかとも思っていた。
●句集が見つかりほっとして、お茶の葉が少し古くなったのでほうじ茶にした。焙じたては、香ばしくて、おいしい。

10月8日(木)

小雨。台風14号くる。
●『浮世の画家』をおととい読み終わったのだが、小津映画の影響、日本の祖父母の家のイメージがあってか、戦後まもなくの日本家屋やそこに住む人たちの様子はこまかに描写されている。けれど、それは物語のなかのようで、靄っている。「ためらい橋」とか「みぎひだり」というバーの名前は日本人ならつけないだろう。原文を知らないが、「リラクタント ブリッジ」とか、「ライト アンド レフト」とかでも言うのだろうか。
『日の名残り』も確かにイングランドの風景が描かれている。地図にあたり、ネットで写真を見たり、思い出す限りのイギリス旅行のときの風景を目に浮かべながら読んだが、なんだか、景色が靄っている。
前、「嵐が丘」の舞台となったハワースへ観光ツアーでいったが、『嵐が丘』に書かれた風景は、ハワースに立って見ると実態としてなんとなく想像できる。イシグロは、5歳のときにイギリスに移住したという体験がその後のイシグロの故郷形成に大きく作用しているのではないかと思えた。故郷喪失という解説者もある。故郷を喪失した人へのいとおしみというものが湧いてくる感じだ。
ノーベル賞作家には、故郷というものが非常に大きな役割を果たしていると聞いている。イシグロの場合の故郷はなんだろうと、思う。故郷を喪失した人は、アイデンティティーを模索し続けなければならないのだろうかとも。
松山から横浜に引っ越して15年になるが、周りの景色、いうなれば風土が自分の体にようやく定着してきつつあるように思える。まだ、血肉となったとは言えない。引っ越し当初より、俳句が作りやすくなったという気がする。

10月7日(水)

曇、夕方から小雨。
野牡丹を花屋二軒が並べ売り 正子
椎茸の香りよきこと鍋にして 正子
金木犀雨糸とおる大樹なり  正子
●学術会議のメンバーに、拒否された6人の1人に東大の加藤陽子先生がおられて、びっくり。どこがどうなの? これじゃ普通にものが言えないじゃない。なにがどうなってどうなのか。
●『光年の星』を家探しするが、見つからない。これに一日大方の時間を費やす。とんでもないところにあるんだろう。まったく、見当がつかない。お風呂の棚とか、タンスの中とかを探す。
「 ANN OF GREENGABLES 」の読んでなさそうなのが出てきた。いつ買ったのだか。この前、紀伊国屋で買いたいな、と思ったけど買わないでよかった。英訳サザエさんも出てくる。

10月6日(火)

晴れ。
●今日は、病院の梯子。午前ハート内科、午後整形外科のリハビリ。
●句集『光年の星』のお礼を書こうと思うが、忽然と紛失。信之先生が読んでいたと思うが。家中探すが見つからない。非常に憂鬱。
●月刊誌「燎」10月号「現代俳句展望」に「俳壇8月号」に掲載の私の句の句評を頂く。すっ飛ばされそうな私の句ながら、目に留めていただいた。「燎」は、師系角川源義。
その記事
「燎/10月号」
★ 田溝のぞく子らに吾子いて夏休み 高橋正子
「俳壇」8月号「プレミアシート『夏休み』」より
 たんぼの用水を覗いている子供たちがいる。何気なしに目をやると、その中に我が子もいた、と言うだけの句。そのことに意表を突かれたような思いでいる作者。それが「夏休み」ということなのだ。(蔵多得三郎)
「麻/9月号」
★三つ編みも腕も日焼け宿題す 正子
『俳壇』八月号「夏休み」より。
 この子供もやはり、私と同じように夏休みの宿題は、無計画で、最終日に終わらせるタイプの子どもだろう。髪の毛が邪魔にならないようにきりっと三つ編みにして、よく日に焼けた腕で、宿題をこなすのだ。今年は夏休みが短かったようだが、どうか間に合うように泣かずに頑張ってほしいものだ。(「麻9月号」田中幸雪)

10月5日(月)

晴れ。
●花屋に野牡丹の鉢植えを見る。
●井口文華堂で、鳩居堂の葉書と便箋を買う。葉書は7行の罫が書きやすい。便箋もたしかにペンに馴染みがよく、書きやすい。紙質がどこか違うのだろう。
シルクスクリーンの絵葉書3種も。絵は、栗、柿、銀杏黄葉。

10月4日(日)

曇り。
●『光年の星』(川原正著・くぢら同人/ふらんす堂発行/2020年9月)を贈呈される。
●名残りの花を楽しむ。朝顔は、まだ咲かせている。金魚草は、夏よく咲いた後切り詰めておいたのが、花を咲かせる。ミニバラは、四季咲きと見えて、色が澄んでいる。オフホワイトにオレンジのフリル。言うなれば、「エリーゼのために」みたい。春には見せなかったオレンジの色。ポーチュラカは、さし芽したのもが育ち、それを切り詰めたのが、これも澄んだ色で咲く。バジル、ほどんど根元から切ったが、また葉が出てきた。
●栗を茹でる。タイマーを30分、20分、10分とかけて鍋を焦がさないため、水加減を見ながらゆでる。黒々とした利平栗を横目で見ながらも、普通のを買ったが、ほどよい大きさだったので、味がよくてお得。
●角川武蔵野ミュージアム(所沢市)の写真を朝日の朝刊で見る。隈研吾の設計。8月にプレオープンしているらしい。大きな岩石のよう。武蔵野台地だからだそうだ。ここに角川出版も入っている模様。
♪交響曲2番/ベートーベン/ヤルヴィ指揮・DKB(2007年)
♪交響曲3番/ベートーベン/フィリップ・ヘレヴェッツ/オランダ放送室内フィルハーモニー

10月3日(土)

晴れ。
●句集『宇宙の音符』(豊里友行著/松本太郎英訳/沖縄書房発行 2020/9月23日)を贈呈される。
豊里さんは、沖縄の基地の状況を写真に撮り続けている写真家で、俳人。
英訳は、著者以外からの俳句理解、俳句解釈として読むと面白いと思えた。
俳句は、写真家の技法として、言葉によるイメージのコラージュと捉えれば読み易い。つまり聴覚を消して目で感じる。言葉のイメージを相互交換しながら読む。これは、私の今回の発見。沖縄の平和な状態が垣間見れるきれいな句もある。
夢を漕ぐ
おおばこのあしおとより銀河の線路
青空の画鋲のような戦闘機
月も踊れ(モーレ)/花も踊れ(モーレ)/日も踊れ(モーレ)/宇宙の音符よ
わが湖底の咆哮は一滴の虎
こおろぎの投網の星のさざなみ
りんりんと月を身籠る花月桃 
終戦はまだよさざなみのまらそん
ホームラン虹の根ぐいぐい伸ばしてく
●『浮世の画家』、三分の二ほど読んだが、場所はどこかを想定しているようでもあるし、架空の場所とも思えて、見当が付かない。5歳からイギリスにいて、日本家屋や庭の陰影、日本人らしい心情の動きがよくわかるなあと思いつつ。「両親に」献呈されている。それがこの小説のキーかも。彼はいったい日本人なのであろうか、イギリス人なのであろうかと思いつつ。不思議な感覚である。安易にグローバルな人とも言いにくい。