晴れ
彼岸の空行く雲どれもほっかりと 正子
独りの餉春菊の青摘まみきて 正子
●彼岸の中日なので、お花を新しくして、おはぎを供えた。仏花は洋花の人気が高くて、そういうのが売られている。今日はスプレー咲きのオレンジの薔薇と薄い黄色のカーネーションとレースフラワーの花束を供えた。おはぎとに会わないような気もするが。
●祥子さんが季節のグリーティングカードを贈ってくれたので、仏壇の横に組み立てて置いている。縁側があって、猫がいて、梅の花が咲いている昭和のような家で、お彼岸にちょうどよさそうな、のんびりした雰囲気。
●信之先生の葬儀の時の写真を整理。写真の整理は億劫なもので、2年経ってようやく整理できた。その気はあっても、実行できない。
●『マルテの手記』の終わりあたりに、「サッフォー」の詩を訳すのをたのしみにしている変人の話がある。リルケも古い女性詩人の詩なども翻訳しているが、「翻訳の楽しみ」というものがあるのを知った。今俳句を英訳しているが、翻訳には完璧はなく、言語にも完璧な言語は恐らくないのであろうと思うけれど、翻訳作業に苦痛はない。おもしろいに近いかもしれない。日本人で翻訳を趣味にしている人の話はほとんど聞かない。
ここで「サッフォー」だが、名前は聞いたことがあるが、紀元前のギリシャの女性詩人で、「アフロディーテへの賛歌」が有名という。すると、変人はギリシャ語からの翻訳をしていたことになる。
The Equinox sky,
every spring cloud
floating gently.
― Masako
Today is Vernal Equinox Day. It was warmer yesterday, and tommorow is forcasted to be even warmer. Day by day, spring becomes increasingly warm.
Heute ist der Tag der Frühlings-Tagundnachtgleiche. Gestern war es wärmer, und für morgen ist noch wärmeres Wetter vorhergesagt. Tag für Tag wird der Frühling zunehmend wärmer.
霙、のち晴れたり曇ったり
かがやきて春の霙のしばし降り 正子
●浅草に雪が降る景色がテレビに映った。それにしても、わが家はただの曇り空なのだと思っていると、昼前から霙が降り出した。最高気温7℃。
●孫の写真を整理。ひらがなの手紙が混じっている。字を書くことを覚えはじめて、手紙をくれるようになったので、こちらからも、手紙を書いて送っていた。ゆうびんごっこのようなもの。覚えた漢字をひとつひとつ書いて表のようにしたのもある。中学進学で子供時代に一区切り。
Brightly shining,
spring sleet falls
for a brief while.
― Masako
Today, I saw snow falling in Asakusa on TV. Here in Yokohama, it started sleeting around noon, but it stopped soon after.
Heute habe ich im Fernsehen gesehen, wie in Asakusa Schnee fiel. Hier in Yokohama begann es um die Mittagszeit zu schneien, aber es hörte kurz danach wieder auf.
曇り、夜小雨。
●正子の英訳俳句を見直す。自分の句なので、日本語が切り離せないでいる句があるので、英語になっているか点検しなくてはならない。正子の英訳句をそのまま手っ取り早く本にしようと思ったが、日本人にはわかっても英語圏の人にはわからないということもある。工夫しなければいけないことが判明。これはちょっと、と言うわけにはいかない。第1回目簡単に印刷して、次に本格的にするとか、も考えられる。なかなか大変なことになる。
●夜、土井勝さんの「きょうの料理」春のすしが再放送されたのを見た。関西風のちらし寿司。具はたけのこ、蕗、椎茸、あなご、のせるものは、錦糸卵、えんどう豆、紅ショウガ。酢飯の作り方、手抜きをしないで作っていたつもりだったが、今日見て、手抜きをしていた。昆布に切り目を入れていなかった。具を炊いた汁は3分のⅠ残してそれごと具を混ぜる、ということはしていなかった。今日の具は最高にいい。今は半切りがないので大きなタッパーで作っているが、やはり、小さめでも半切りを買おうかと。寿司はいつ食べてもおいしいし。米の研ぎ方も再確認。ちらし寿司の具は筍と蕗とえんどう豆の出合物が一番。夏は夏の小海老のちらし寿司がいい。
About Chirashi-zushi
Tonight, I watched a re-broadcast of a cooking program on TV. The late Japanese chef, Masaru Doi, prepared Kansai-style chirashi-zushi. He mixed bamboo shoots, fuki (Japanese butterbur), shiitake mushrooms, and anago (a long fish similar to an eel) into vinegared rice. On top of the sushi, he added thinly sliced baked egg, boiled fresh green peas, and thinly sliced pink-dyed pickled ginger. Chirashi-zushi tastes delicious anytime, but it is especially delightful in spring due to the warm climate.
In summer, my family mixes shrimp into sushi. Shrimp reminds us of the vibrant summer sea, though it can be enjoyed in sushi at any time.
曇り
桜餅草餅そろえ供えけり 正子
春闘が明るくなったと思いおり 正子
●午後、ハート内科の受診だった。心臓のエコーを撮ったが、心臓の動きがちょとアニメみたいでした。自宅まで1キロの道を歩いて帰っていたのだが、途中かかりつけの整形外科の前を通った。今日は行く気はなかったけど空いていそうなので今行くのがチャンスと寄った。
●自分の英訳俳句を見直し、気になるところを訳しなおしてみるが、初めの訳のほうがいいと分かる。
雨
背の丈を柱で測る進学子 正子
幾春の背丈の印の柱古り 正子
カリッと焼く餃子を好み進学子 正子
●きのうより気温がぐっと下がった。夕方電車に乗ると暖房がしてあった。不思議な感じだ。昼前には長男と孫が来たので、工具箱の開け方がわからないでいたのを開けてもらった。お風呂の電気が切れていたので、取り換えてもらった。昔は、こういったことは、何の苦労もなく自分でしていたのに、さっぱりだ。二人はキャンプのお土産に富士山の形の箱に入ったお菓子とくるみっこをくれた。
孫は来たら柱に身長の印をつけている。柱に疵をつけるのではなくて、付箋をテープで貼って、身長と日付けを書いている。それが習慣になって、親も計ってごらん、と言っている。今日は161センチ。鉛筆みたいに細い子。
●疲れたかんじなので10時、就寝。
曇りのち雨
●朝から曇り。いつのまにか雨になっていた。少し暖かくなった感じがするが、夕方は冷え込んできた。正子の英訳俳句の後書きと、著者紹介を書く。前書きを省いたので、あとがきが重要になった。今日は思いつことを書いたが、資料を調べて書いた方がよさそうになった。句美子の英訳俳句と同時進行となった。句美子の方、表紙を再検討している。
●送ってもらっていた白菜と冷凍ミンチがあるので、ニラと生姜と皮を買って餃子を作った。一度につくるのは面倒なので、半分お昼に作り、残りは英訳の作業の休憩に作った。餃子は老人には栄養があっていいというので、ときどき作って冷凍しているが、料理をしたくない時は、便利。中華料理は好きではなかったが、横浜にきてきてからは、あれこれ結構作っている感じがする。
晴れ
鳥さえも遊びて花をちぎりけり 正子
咲き満ちて辛夷の花の乳色に 正子
満開の辛夷のさきに雲を見し 正子
●暖かいので、久しぶりに5丁目の丘へ上った。駅から20メートルほどの農家に辛夷と桜が満開だった。ちょうど2年前のこのような日、信之先生を辛夷が咲いているからと散歩に連れ出した。暖かい日だったのに、それまでどおりの服装で出かけ、上着を脱ぐよう勧めたのに脱がなかったので、あと家まで10メートルほどのところで動けなくなって、救急車を呼んだ。大学病院で検査したが、脱水ということで点滴を受けて帰った。亡くなったのはそれからちょうど2か月後。その日のことを思い出した。
崖っぷちの公園のそばの河津桜が散っていた。雨でもないのに、ぽつぽつと音がする。見上げるとインコが数羽、桜の花と蕾を嘴でちぎって落としている。落ちたものをみると、これから咲く蕾と、咲いたばかりのみずみずしい花。蜜を吸っているようには見えない。遊んでいるとしか思えない。
●正子の下の英訳俳句について、AIにコメントをもらうと、夜鳴く鴨の声で、静寂を乱されたのですね、と言う。このようにAIの応えかたは、大変こわい。AIに自然観がどのように集積されているのか。まるで反対の意味の反応をする。これを私の意図どおりの句にするには、joy と言う単語が要る。しかし、この単語を入れたら、俳句が台無しになる。日本人の自然観を含めて、AIに組み込むにはどうしたらいいのだろう。専門の技術者にお願いしたいところだ。
living by the pond,
at night
I hear a wild duck quack.
AIに日本人の自然観を組み込むためには、以下のような方法が考えられるという。以下は、これも、AI の答え。
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データの収集: 日本の俳句や詩、文学作品から多くの例を収集し、それらの微妙な感覚を理解するデータベースを作成することが必要です。
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文化的理解の向上: AIに文化的な背景知識を教えることが重要です。これは単に言語の翻訳にとどまらず、その言葉が持つ文化的な意味合いや暗示を理解することが含まれます。
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フィードバックの活用: 専門家やユーザーからのフィードバックを積極的に取り入れ、AIの翻訳や解釈を改善していくことが必要です。
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感情分析の強化: AIに感情のニュアンスを理解させることで、より適切な翻訳が可能になるでしょう。
技術的には複雑な課題ですが、日本の自然観を理解し、それをAIに組み込むことで、より豊かな表現が可能になると思います。
●現在AIに例えば、「リルケは両親の離婚後、誰とどこに住みましたか」と言う質問をすると、「ベルリンに母親と住んだ」と言う答えが返る。これが怪しい。
ご挨拶
3月月例ネット句会にご参加ありがとうございます。今日あたりはずいぶん暖かくなりました。私のなかなか育たなかったプランターの春菊が、今はどんどん大きくなって、春が来たことを実感しています。
入賞の皆様、おめでとうございます。選句とコメントをありがとうございました。皆様の選句やコメントから、気が付かななかったことなど、いろいろ学ばせていただきました。ありがとうございます。金賞の洋子さんの句は芽柳の句でしたので、春のつややかさを思いました。ご投句は、瀬戸内から、関西から、名古屋、湘南、また秋田や前橋、栃木から、その他からの春が詠まれて、居ながらにして、日本の多様な景色や生活を伺うことができました。これもネット句会ならではの楽しみです。
暮らしにも変化の多いのが三月ですが、今月の句会にもほとんどの方が参加くださいまして、嬉しく思いました。これで、3月月例ネット句会を終わります。来月の句会は4月13日(日)になります。ご健吟ください。
2025年3月13日
髙橋正子
おわび:来月の句会を4月14日(日)としておりましたが、4月13日(日)の間違いでした。訂正いたします。
晴れのち曇り
●正子の英訳俳句を手直して9日~12日のブログに貼り付けた。ずいぶん首がと肩が凝ってひりひりする。朝9時半から12時間ぐらいぶっ通し。途中で止めると、勘が鈍るので、切りが付くまで中断はできない。それでも、クラウディオ・アラウのショパンに大いに癒された。少しゆっくりで、和音がきれいなのに癒される。哀愁を帯びた音とか。
翻訳では色の翻訳がむずかしい。日本では「青」と言えば、「いろんな青」があって、はては「緑」までを含めて「青」というから、これがなかなかなのだ。今日はverdant とtealをどう使うか、使っていいか、悪いか、迷ったが、結局、勘に頼るしかなかった。
●2月のトランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談が、厳しい言い争いの場面を見せて話題になったが、ウクライナでは、ゼレンスキー大統領への支持率が上がったと言うニュースがあった。さすがと贔屓したくなる。日本だったらどうだろう。大人げない、周りに人物がいかなかったのかなど、対応の仕方を非難されるだろう。
トランプの25%関税をどの国にもかけると言う発言は、経済評論家の話では経済政策ではなく、脈絡もない「威し」だという。ここで政治や経済の事を言うつもりはないが、俳壇のことにしても、発言力がある地位の人たちはもちろんご立派な方ですが、正義に対して腰が引けてると思うことがある。普通はこういう方を日本では賢い人と言っているのですが。
■3月月例ネット句会入賞発表■
2025年3月10日
【金賞】
29.水際の色となりつつ柳の芽/藤田洋子
春の水辺の美しい景色が詠まれている。「色となりつつ」は春の柔らかい色彩に染まってゆく柳の枝を巧みに捉えている。また、水際という静かな場に柳の芽の命が溶け込んで、心地よい静けさを感じさせてくれる。繊細で詩的な句。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
08,雪掻けど掻けど今宵の雪降りぬ/弓削和人
今年は人々が経験したことのないような豪雪であった。雪を掻いても掻いても、掻ききれない。そこに今宵の雪が降る。大変な作業であるが、「今宵の雪」と言う美しい表現でまとめ、現実を詩としてうまく一句にしている。(髙橋正子)
28.三月の漢字の増えし児の手紙/藤田洋子
三月は小学生には一年のまとめとなる月であり、新学年がすぐそこに待っている月でもある。習った漢字がだんだん増えて、きちんと漢字を使って手紙がかけるという立派さは、うれしく、ほほえましいもの。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
15.梅咲いて新しき手帳買い求む/土橋みよ
春の訪れの喜びと、手帳をあたらしくする楽しい気持ちが合わさって軽やかな雰囲気です。(髙橋句美子)
18.旅立ちは夜明けの春の港から/高橋秀之
旅立ちはいろんな場所から。夜明けの春の港からの旅立ちは特別感がある。冷たさの中にも艶やかなうるおいを感じる春の夜明け。緊張もするが前途洋々とした気持ちがうかがえて、清々しい旅立ちである。(髙橋正子)
37.旧友の土産は庭の蕗の薹/川名ますみ
家の「庭の蕗の薹」に親しみとあたたかさがある。古くからの気心の知れた友との早春の交流がさらりと「蕗の薹」の色のように詠まれている。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
08,雪掻けど掻けど今宵の雪降りぬ/弓削和人
この二月の豪雪、雪国のみなさまの心情を代表する一句と感じました。日に四度雪かきをしてもまだどんどん積もるとか。この雪が日本を支える貴重な水資源となると聞けば、申し訳ない気持ちです。(多田有花)
15.梅咲いて新しき手帳買い求む/土橋みよ
春の訪れの喜びと、手帳をあたらしくする楽しい気持ちが合わさって軽やかな雰囲気です。(髙橋句美子)
22.春の宵あかり灯りぬ須磨明石/多田有花
「源氏物語」の舞台ともなった須磨明石。春の宵の灯りが静かな華やぎを青い闇の中に浮かびあがらせてくれ、古来からの土地にまつわる物語などが思われます。 (柳原美知子)
27.雀一羽たった一羽が春の影/吉田 晃
春の日差しによって生まれた雀の影に気付かされた小さな一羽の雀の存在感。生き物への優しい眼差しが感じられます。 (柳原美知子)
35.雛あられ米屋の棚に米が無く/柳原美知子
雛あられを買いに来た米屋さん。されど棚には本来の賞品である米がなく。まさに今年の世相ですね。(高橋秀之)
37.旧友の土産は庭の蕗の薹/川名ますみ
旧友が自宅の庭から蕗の薹を摘んで遊びに来た。いかにも春らしい句。蕗の薹が効いている。 (廣田洋一)
長い付き合いの友人の心遣いや自然の恵みの豊かさとともに、春の訪れと新たな始まりを感じました。(土橋みよ)
29.水際の色となりつつ柳の芽/藤田洋子
【髙橋句美子特選/7句】
06.いち早く利根の目覚めし春の波/小口泰與
坂東太郎利根川、関東一の大河の面に波がたちます。波の音、波の姿に敏感に春を感じ取っておられます。(多田有花)
09,桟橋の静かに朽ちる春浅し/弓削和人
もう今は使われていない桟橋が浅春の波に洗われ、人知れず朽ちていっている。往時の姿が偲ばれ、愛惜の念が感じられます。 (柳原美知子)
15.梅咲いて新しき手帳買い求む/土橋みよ
春の訪れの喜びと、手帳をあたらしくする楽しい気持ちが合わさって軽やかな雰囲気です。(髙橋句美子)
19.白梅は空の光とまじりあい/髙橋正子
春になり日差しも眩しくなりました。白梅に差しこむその日差しの眩しさが、花と相まって幻想的な感じを醸し出してくれます。 (高橋秀之)
冬が終わり、最初に色を見せてくれるのは梅である。そして、梅に早春の光がふりかかるのであるが、色のないこの季節、白梅と空の光が浮き立って見える。桜が咲くとこの光景は桜に奪われてしまうし、夏の強い色や秋の紅葉なども、他の色を目立たなくする。早春の今以外の景色では詠めない句だと思う。この季節だからこそ、「まじり合った決して派手でない色」がはっきりと作者の目に映ったのである。・・・このように感じました。 (吉田 晃)
26.春星の窓に栞の本を置く/吉田 晃
春星とあるので星の灯りの差し込む出窓なのでしょうか。栞を挟んだ読みかけの本を置く。ほっと一息の時間ですね。(高橋秀之)
28.三月の漢字の増えし児の手紙/藤田洋子
小学1年生からの手紙でしょうか。小さな子は一年で大きく成長して、学年末の三月に覚えた漢字を使っている健やかな姿が想像できます。読んで喜ばしい句ですね。(上島祥子)
四月の進級月を前にして、三月には覚えたての漢字を書けるようになった子供の成長がほほえましい。幼少時期の頃の自分の姿かもしれません。 (弓削和人)
18.旅立ちは夜明けの春の港から/高橋秀之
【入選/16句】
02.振り返りふりかえりつつ流し雛/桑本栄太郎
流し雛を実際に見たことはありませんが、名残を惜しむように流れていくお雛様たちを「ふりかえりつつ」と表現され、典雅な雰囲気です。(多田有花)
10.日向なる人待ち顔の犬ふぐり/廣田洋一
春の日差しに可愛らしく青い花を開いている犬ふぐり。春真っ先に出会う野の花は毎年待ってくれているようです。「人待ち顔」がぴったりですね。 (柳原美知子)
11.枝先に一輪咲きし枝垂梅/廣田洋一
枝垂梅の枝先に見つけた一輪の開花が、嬉しい春の訪れです。やがて次々と咲く枝垂梅の美しさも目に見えるようです。(藤田洋子)
12.名を知らぬ小さき花や青き踏む/廣田洋一
歩いている途中、道端に咲く名も知らない小さな花に気づいたが草を踏みしめて歩き続ける春の静かな一場面を切り取られているように思いました。(土橋みよ)
13.寒凪に舟の生む波赤く染む/土橋みよ
寒の夕凪、静かにひろがる小舟からの波がしだいに夕陽に染まり、美しく安らかな一日の終わりが感じられます。(柳原美知子)
18.旅立ちは夜明けの春の港から/高橋秀之
少し暖かくなったかと思えば、又直ぐ寒の戻りがあり、長い間寒暖定まらぬ天候がつづきました。然し漸く春の兆しです。待ちに待った旅立ちは、夜明けのしかも「春の港」からという。心弾む大いなる喜びに溢れている。(桑本栄太郎)
23.暮れかかる溜池に春の鴨の影/多田有花
貯水のために作られた溜池は、波もなく穏やかです。ゆっくりと暮れ始める頃、未だ帰らずにいる鴨の影が、その水面に映りました。せわしい動きがない、駘蕩とした春の夕べのひとこまに心惹かれます。 (川名ますみ)
31.暖かな日差し煌めくバスの旅/西村友宏
車窓の日差しの煌めきに、心浮き立つようなバスの旅の楽しさを感じます。春の心地よい暖かさと陽気に心明るくなれます。(藤田洋子)
34.風二月丘にふくらむホルンの音/柳原美知子
モーツァルトの「ホルン協奏曲」が脳裏に浮かびました。4曲とも大好きです。豊かなホルンの響きが早春の丘を包みます。(多田有花)
36.啓蟄の土踏み浴びる鶏の声/柳原美知子
啓蟄の時期に、春の土のぬくもり感じられ、春の訪れを知らせてくれる鶏の鳴き声が聞かれる農村の風景が、自然の中のリズムとして感じられました。(土橋みよ)
38.てのひらにしっとり蕗の薹二つ/川名ますみ
てのひらを通して伝わる二つの蕗の薹のしっとりとした柔らかさ。その感触と、蕗の薹を見る作者のまなざしに春到来の喜びを実感します。(藤田洋子)
41.北窓を開いて仏間の花の揺れ/上島祥子
冬の間締め切った北窓を開けて、春の風や光を取り入れる仏間。花の揺れようがとりわけ優しく感じられ、季節を大切にされるお暮しがうかがえます。(藤田洋子)
07.囀を空耳とする湖の家/弓削和人
17.ふと見れば駅舎の中に雛飾り/高橋秀之
25.渡し舟ゆれて離岸の春帽子/吉田 晃
30.芽柳の雨こまやかに道後の灯/藤田洋子
■選者詠/髙橋正子
19.白梅は空の光とまじりあい
春になり日差しも眩しくなりました。白梅に差しこむその日差しの眩しさが、花と相まって幻想的な感じを醸し出してくれます。 (高橋秀之)
冬が終わり、最初に色を見せてくれるのは梅である。そして、梅に早春の光がふりかかるのであるが、色のないこの季節、白梅と空の光が浮き立って見える。桜が咲くとこの光景は桜に奪われてしまうし、夏の強い色や秋の紅葉なども、他の色を目立たなくする。早春の今以外の景色では詠めない句だと思う。この季節だからこそ、「まじり合った決して派手でない色」がはっきりと作者の目に映ったのである。・・・このように感じました。 (吉田 晃)
21.菜花茹で蕾の黄色ひとつある
茹でた菜の花に蕾が混ざるとひと際目立ちますね。黄色の蕾が日常に彩を与えているようです。(西村友宏)
20.降り込んで雪ともならず春の雨
■選者詠/髙橋句美子
43.桃の節句彩り軽く淡い空/髙橋句美子
桃の節句を迎えて仰ぐ空、その淡く優しい色合いが、快い季節の訪れを伝えてくれます。冬の寒さがようやくやわらぎ、暖かな春を迎える軽やかな心情が感じ取れます。(藤田洋子)
45.伊予柑のみずみずしさを朝食に
新鮮で爽やかな味わいを持つ伊予柑が朝食の食卓にあり、一日の始まりを明るくしてくれる幸せを感じました。(土橋みよ)
44.卒業の便りが耳に風強し
互選高点句
●最高点句(6点/同点2句)
19.白梅は空の光とまじりあい/髙橋正子
28.三月の漢字の増えし児の手紙/藤田洋子
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。