■□12月月例ネット句会/入賞発表■□

■12月月例ネット句会/入賞発表
■2021年12月月例ネット句会■
■入賞発表/2021年12月13日

【金賞】
10.花野枯れ薄き匂いの風の野へ/吉田 晃
いろんな草草がある野が枯れると、枯れの薄くあわい匂いが立つ。その匂いが風が吹くと野に広がり、野はせつなくも優しい野となる。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
07.路地が好き郵便ポスト曲がれば冬/祝 恵子
庶民の生活がたのしく詠まれている。日々暮らす路地。その路地を曲がると郵便ポストがある。ちょっと開けた空間なのだろう。「冬」がそこにあるのを感じた。(髙橋正子)

02.匂い立つ早や柊の蕾より/吉田 晃、
柊の白い花は、金木犀とはまた違って、つんとした清らかな匂いがする。花が咲けばもちろん匂いは流れてくるが、小さな蕾のうちからも、はや。匂っている。そこがいい。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
26.夫在りし日のごとたっぷりおでん煮る/柳原美知子
家族の一人がいなくなっても、毎日の食事の支度で身についていた量の感覚というのは、恐ろしいもので、なかなか按配できない。一人、二人になっても感覚的には三人なのである。(髙橋正子)

31.蜜柑買い二人で運ぶ空が晴れ/髙橋句美子
蜜柑を箱で買ったのか、重いので二人で協力して運ぶと、空が青々と晴れて、カラッとした空気が快い。明るい蜜柑の色、晴れた空の青が印象に残る。(髙橋正子)

09.足場組み巡らす網より冬夕焼け/祝 恵子
組まれた足場に巡らされる安全の網。その網から夕焼が見える。無味乾燥とも思える建築現場も、冬夕焼の一景に収まった。冬夕焼が効いている。(髙橋正子)

【髙橋信之特選/7句】
07.路地が好き郵便ポスト曲がれば冬/祝 恵子
日当たりのよい路地、生活の匂いがし、郵便ポストにも温かみが感じられる。そこを曲がれば吹きさらし。ドラマのワンシーンのようで、楽しく、若々しい句ですね。(柳原美知子)

05.明滅や冬の日差しの絶え間なく/桑本栄太郎
小さな冬雲が行き過ぎるたびに気温の違いを肌に感じる。冬の薄い日差しだからこその感覚であろう。作者はその薄い明滅を視覚のみならず、肌でも感じておられる。(吉田晃)

08.手渡しでハトに餌をやる冬の土手/祝 恵子
09.足場組み巡らす網より冬夕焼け/祝 恵子
10.花野枯れ薄き匂いの風の野へ/吉田 晃
12.匂い立つ早や柊の蕾より/吉田 晃
26.夫在りし日のごとたっぷりおでん煮る/柳原美知子

【髙橋正子特選/7句】
16.花屋には赤の溢れて十二月/廣田洋一
クリスマスの時期にはポインセチアなどの赤が目につきます。あの赤は十二月だな、と思わせてくれる赤ですね。(多田有花)

22.冬もみじ教室の朗読の声聞こえ/西村友宏
学校の横を通られたのでしょう。聞こえた朗読の声にふと顔を上げられたら冬紅葉が目につきました。朗読の聴覚、冬紅葉の視覚、その二つが出会った御句です。(多田有花)

31.蜜柑買い二人で運ぶ空が晴れ/髙橋句美子
蜜柑を箱で買われました。段ボールを両側から二人で持って運ばれたのでしょうか。箱買いの蜜柑はお正月が近いことを感じさせてくれます。(多田有花)

07.路地が好き郵便ポスト曲がれば冬/祝 恵子
12.匂い立つ早や柊の蕾より/吉田 晃
21.日を透かし軽くなりたる冬紅葉/髙橋信之
26.夫在りし日のごとたっぷりおでん煮る/柳原美知子

【入選/12句】
01.谷川の水は鋼や十二月/小口泰與
寒さの厳しいシーズンに入ってきました。川の水の冷たさも一段と増します。その冷たさ、厳しさを「鋼」という言葉で的確に表現されています。(多田有花)

03.麦の芽や我が産土は風の里/小口泰與
蒔かれた麦が風に吹かれている風景を目にすると、懐かしくふる里を思い起こされるのだろう。賑やかなものが一切ない、麦の芽と風だけの場所は詠者の大切な原風景になっているのでしょう。(吉田晃)

14.塩蒸しの冬の南瓜の甘きこと/多田有花
南瓜の甘さに嬉しくなった率直な気持ちが伝わってくる素敵な句と感じました。「の」が続くことでリズムも軽快です。 (西村友宏)

18.実千両垣をはみ出す古き家/廣田洋一
千両の実、垣根、古い家。これらが揃った風景は、懐かしさを思い起こしてくれます。冬の日差しが暖かいことを想像させてくれていいですね。 (吉田晃)

23.冬籠り下校のチャイムに夕支度/西村友宏
一日の日差しがすっかり短くなり、午後4時頃の下校時ともなれば薄暗くなります。我が家でも下校のチャイムの鳴る時間ともなれば夕餉の支度を行っています。小学校、中学校とも直ぐ近くあり、同じような冬の生活リズムにとても共感です。 (桑本栄太郎)

25.すっと開く小春の引き戸に猫の顔/柳原美知子
ふとした日常のゆったりとした光景が思い浮かびました。 (髙橋句美子)

27.窓暮れて山際淡き冬茜/柳原美知子
窓辺から見る夕焼け、今日も一日が暮れてゆく安堵感でもあります。 (祝恵子)

13.裏庭に小さき大根育ちおり/多田有花
冬の日差しを受けて、生き生きと育つ緑の大根葉。その下に小さいながらも大根のまっさらな白がみえてきたうれしさ。裏庭での日々の農作業の喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)

32.水仙の白を見つけて公園へ/髙橋句美子
樹々も落ち葉し、花も少なくなった散歩道。清々しい香りがほんのりと漂ってくる水仙の白さに、新たな季節を迎える喜びが感じられます。 (柳原美知子)

11.熱き湯に身を沈めれば神無月/吉田 晃
15.銀杏落葉表通りを一色に/多田有花
33.贈り物を待つ日々長くアドベント/髙橋句美子
26.夫在りし日のごとたっぷりおでん煮る/柳原美知子

■選者詠/髙橋信之
21.日を透かし軽くなりたる冬紅葉
冬に残り映える紅葉も日の経つうちに葉を落として梢も軽くなり、月が良く見えるようになった。寒い冬が来た景が良く見えてきます。 (小口泰與)

19.冬椿の白に解放され正午
20.?梅の花と香りと青空に

■選者詠/高橋正子
30.眠るまで聞けり冬の夜のラジオ
 あれこれと多忙だった一日が終わり、心身ともに寛げる時間を得た。床に就いたのであろうか。枕元に置かれたラジオの声が、心地よい冬の夜の眠りに誘ってくれる。豆電球の部屋に流れているラジオに向けられた意識がいいと感じた。 (吉田晃)

29.職辞してオリオン星座ひんがしに
最後のお勤めを終え、東の空に輝きはじめたオリオン座を仰ぎながら、安堵感と解放感、新たな季節への感慨を深められたことでしょう。お疲れ様でした。 (柳原美知子)

28.橋塔の灯の明滅を冬の霧

■互選高点句
●最高点(同点2句/5点)
16.花屋には赤の溢れて十二月/廣田洋一
26.夫在りし日のごとたっぷりおでん煮る/柳原美知子

※コメントの無い句にコメントをお願いいたします。

■12月月例ネット句会清記■

■12月月例ネット句会清記■
2021年12月12日
11名(33句)
01.谷川の水は鋼や十二月
02.寒菊や風の放埓今日もまた
03.麦の芽や我が産土は風の里
04.綿虫の記憶点ずる浮遊かな
05.明滅や冬の日差しの絶え間なく
06.吾輩の名前は要らず漱石忌
07.路地が好き郵便ポスト曲がれば冬
08.手渡しでハトに餌をやる冬の土手
09.足場組む巡らす網より冬夕焼け
10.花野枯れ薄き匂いの風の野へ

11.熱き湯に身を沈めれば神無月
12.匂い立つ早や柊の蕾より
13.裏庭に小さき大根育ちおり
14.塩蒸しの冬の南瓜の甘きこと
15.銀杏落葉表通りを一色に
16.花屋には赤の溢れて十二月
17.ブロッコリー球を開きて歌唱せり
18.実千両垣をはみ出す古き家
19.冬椿の白に解放され正午
20.?梅の花と香りと青空に

21.日を透かし軽くなりたる冬紅葉
22.冬もみじ教室の朗読の声聞こえ
23.冬籠り下校のチャイムに夕支度
24.歳末セールカード幾枚も備え
25.すっと開く小春の引き戸に猫の顔
26.夫在りし日のごとたっぷりおでん煮る
27.窓暮れて山際淡き冬茜
28.橋塔の灯の明滅を冬の霧
29.職辞してオリオン星座ひんがしに
30.眠るまで聞けり冬の夜のラジオ

31.蜜柑買い二人で運ぶ空が晴れ
32.水仙の白を見つけて公園へ
33.贈り物を待つ日々長くアドベント

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

12月12日(日)

快晴
職辞してよりのオリオン星座かな 正子
日短ネットに探す夫の古書    正子
眠るまでラジオを聞けり冬の夜  正子
●12月月例ネット句会
●12時31分ごろ地震。ちょうどネット句会の句を整理していたとき。震度3ぐらいの揺れ。揺れたのは2分ぐらいだが、長く感じた。茨城が震源とのこと。

12月10日(金)

枇杷の花街を見下ろす大木に 正子
冬霧に青き影とし浮かぶビル  正子
わが目にはみどり残して目白翔つ 正子
●高田第5公園まで散歩の足を延ばす。昼過ぎだったので、公園は明るくて、目を瞠った。黄葉に日が差して、周囲の民家の垣根も暮の掃除で刈りこまれていた。高田の街が見える。枇杷の大きな木があって、花が咲いていた。夏冬通して、こんなに明るい公園は初めてだ。ブランコに腰かけて数度揺れてみた。すぐ近くの日吉本町第1公園に寄った。深い谷が落ち込んだ、そのままの公園。鯛ケ崎公園にいた目白がいないと思ったら、この谷の山茶花にいた。
●児童絵本のThe Gruffalo's Child用のCDがイギリスから届いた。The GruffaloのCDは前にアマゾンから届いていたので、夜、2枚とも聞いてみる。歌がついている。The Gruffaloのほうは、本文と小さい違いだが違っている個所が10カ所ほどある。The Gruffalo’s Childの方は1、2か所。絵本を見ながら聞いていると、面白い。ひとり笑いをする。
「虎の威をかる狐」みたいな話で「グラファロ もりでいちばんつよいのは?」の久山太市の訳本もある。おちびの茶色のねずみが主人公。Gruffaloは子どもが恐ろしいと思う限りの想像を尽くしてイメージがつくられているが、脚が曲がっている(アウトトウ)の風体は同情すべきかも。恐ろしい生き物でありながら抜けている。韻が快く踏んであり、類義語が順次繰り出される。大人の言葉遣いあり、倒置あり、仮定法あり、不規則動詞多数ありで、変化に富んだ文章。幼児向けながら文章は洗練されて高い感じ。4歳から。Puffin books。

12月9日(木)

曇のち晴れ
●印刷所に印刷代金についてメールで問い合わせる。昨日のシュミレーションはまちがっていない自信があった。ところが、一つ勘違いをしていた。A5なのに、B5で試算していると印刷所から指摘を受けた。6か月前のことを勘違いするとは。
●ヤフオクで信之先生の句集『水煙』を見つける。1978年発行なので、見つかったのが、奇跡。シミや小口の焼けがあるが、見つかったのはこれ一冊。家に置いていた最後の一冊をアトラスに預けていて、手元には『水煙』がない。心許ない。松山の堀江の古書店「古珍堂」にあったので、メールをして直接送ってもらう手続きをした。これ以上は出てこないだろうな。『旧制松高と俳句』(大野岬歩・高橋信之著)は数冊あった。これは郷土史的なので、売れ筋だと古書店の人が言っていたが、実際まだ出回っている感じがした。
●予約していた角川の「俳句年鑑2022年版」、句美子に渡す1冊を天一書房に取りに行く。ついでに児童書ノンフィクション『カラスのいいぶん』(童心社・1320円)をポイントで買う。行きは徒歩。無意識に歩いていたら、赤門坂の道を選んでいた。

12月8日(水)

雨、夜上がる。
●開戦記念日。今年はなぜか、第2次世界大戦の開戦についてのテレビ放送、新聞報道がよくある。開戦80年になるからだろうか。戦争でもなんでも、日々の成り行きが重なって戦争になってしまう。さも原因があるかのように言われるが、ここから戦争というわけではないと思う。だから、日々の報道は恐ろしい。
●秀之さんのアンソロジーのエッセイを受け取る。エッセイと、100句の選の第1案を添付ファイルで送る。ちょっと肩の荷が下りる。
●花冠366号の編集を進める。印刷所のHPを見て、印刷代の試算をすると、100部で1万円ほど値上がっている。明日、もう一度よく見て試算しなくては。
●来年(令和4年)度会費、2名の振込があり、あわてて、年会費納入の案内を発行所ブログにする。12日のネット句会が終わってからネット短信で、振込案内をする予定。令和の4年になる。

12月7日(火)

曇、夜雨。大雪。
葉牡丹を植えて遣る水たっぷりと 正子
寒星の二つの光り恃みけり    正子
大根のあまりしものも瑞々し   正子
●今日は暦の上の大雪ながら、きのうよりは暖かいが、夕方から本降りに。
●秀之さんのアンソロジーの句、選をして、添削もして、一日置いた。『南港』以後の句は、もう少し自分を出した方がいいと思う。今日の朝日の折々のことばを読んでも、やはり自分の位置は大事。「私」というのは結局は、問題を孕んでいる。その問題の厳しさから出発しなければならない。忙しいと、なんとなく、「私」が薄れてしまうのは、たしか。
●大分の小野京子さんから封書。コスモスの花の絵の便箋数枚に丁寧な返礼。
こういう手紙をいただくと、誠実な句集であれば、どなたのでも、丁寧に読んで、自分の感想を添えて返事を書くのが、礼儀より勤めと思える。世の中には多くの俳句を詠む人がいて、作った句が通りいっぺんに読まれて、無名だからと無碍にされているのではないだろうかと、それを思うとわが身に返って悲しくなる。
●今日の朝日新聞コラム「折々のことば」より
「私」の世界に繋留点をもたない思想は、いかにはなばなしく権力にあらがっているようにみえても、しょせん一時の流行におわる(野田宜雄)(西洋史家)
解説:鷲田清一
・・自分ぬきで語らないこと。それは、自分がどのような場所から語りだしているかを強く意識することでもある。

12月6日(月)

鵯の声がさびしさ帯ぶ夕べ   正子
寒さ来て橋塔の灯の青かりき   正子
冬霧にランドマークのビルの影 正子
●今年一番の寒さらしい。確かに寒いが、丘を歩く。高田第五公園に寒椿、枇杷の花を見つける。ヒマラヤシーダのなかに、鴬がいるようだった。
●朝食がルーティーンのようになる。トースト、コーヒー、果物。タンパク質不足はわかっているが、これが結局落ち着いて、次の仕事にすぐ取り掛かれる。

12月5日(日)

●今朝のネットニュースFLASHに憲法学者の木村草太氏の天皇制の理解の仕方が大きく2つの場合について載っていて、非常によくわかる考え方だった。
●秀之さんのアンソロジーの句、『南港』から50句新しく50句句選んだが、もう少し、本人と話して検討の余地。
●花冠366号の編集を進める。