9月26日(5名)
上島祥子
禅院に風の生まるる百の萩★★★
秋の日の傾き隠す杉大樹★★★★
繰り返し風の生まるる萩の寺★★★
土橋みよ
出流原弁天池二句
秋水や樹影の我に届きたり★★★
水面の樹々を背にする秋の鯉★★★
とんぼ飛び花野めくかな出流原(原句)
とんぼ飛び花野に似たり出流原(正子添削)この句における「出流原」は、実際には花野ではない場所であるが、とんぼが飛ぶことで花野のような気配が立ち上がっている、という意味でしょうか。
とんぼが飛ぶことで、なぜ、「花野の雰囲気がたちあがるのか」読み手にはよくわからない問題点が残ります。「・・めく」は、「春めく」などに普通つかいます。詩的には「花野めく」も使えます。例えば、「夕暮れの土手に風が吹き、草むらが花野めく気配を帯びた。」など。この場合は「草むら」と「花野」には、文脈が通じていますが、「とんぼ」と「出流原」には通じる文脈が直接はありません。ただ、「とんぼ」と「出流原」との間に、詩的飛躍や気配の生成もありますが、この句の場合は、「・・めく」の使い方に無理があります。(髙橋正子)
小口泰與
飛び立ちて葦揺れている水辺かな★★★
釣上げし木の葉山女の錆の色★★★★
名月を愛でし女人のはなやかに★★★
桑本栄太郎
かえで葉の鳩吹く風に染まり来る★★★
橡の実を拾いつつ歩む散歩かな★★★★
身に入むや窓閉めかかる句の推敲★★★
多田 有花
青みかん豊後の風をまとい来る★★★
初鵙の今朝快晴と告げにけり★★★★
赤まんま後ろは刈られし田となりぬ★★★★
9月25日(3名)
桑本栄太郎
裏山の音のひびきや竹を伐る★★★★
廃校の掲示まだ有り秋深む★★★
秋の蚊の我に親しく寄り★★★
多田有花
曇天に鹿鳴く声の響き初む★★★★
大阪まで通院をする秋なかば★★★
尼崎城秋の駅のすぐそばに★★★
小口泰與
蝉声の途絶えて蟋蟀声高し★★★
梢より秋翡翠の水中へ★★★
はつはつに秋河骨の咲きにけり★★★
9月24日(2名)
小口泰與
舞来たる秋翡翠に魅せられし★★★
山の沼秋葦の葉に朝日かな★★★
蟋蟀の声高らかや沼岸辺★★★
廣田洋一
秋彼岸隣は墓を仕舞いけり★★★
とんぼうの出迎えくれし朝の径★★★★
味噌汁のとろりと甘き秋茄子★★★
9月23日(7名)
小口泰與
爽籟や我を包みし風うまし★★★★
秋風に咳く我や天蒼き★★★
秋晴れや長きすそ野に鳥の声★★★
桑本栄太郎
ふるさとへ向い祈りぬ秋彼岸★★★
土手道の中に白きや彼岸花★★★
えのころの姫と云うあり風の土手★★★
多田 有花
秋彼岸親族集う七回忌★★★
枝豆の塩加減よし七回忌★★★
敷き紙の秋桜に和す七回忌★★★
廣田洋一
秋彼岸義妹の墓に水をかけ★★★
秋晴れや黙々と草噛む乳牛★★★★
秋茄子の一夜漬けにて朝餉かな★★★
土橋みよ
出流原(いずるはら)夕霧巻の花野めき
夕霧巻は源氏物語の「夕霧」の巻のことなら、季語「花野」のイメージと少し違ってきます。夕霧巻では、夕霧が落葉の宮に思いを寄せ、彼女の住む六条院の荒れた様子や寂しさが描かれてます。この場面は季語「花野」の印象と対照的なので、解釈に迷います。手がかりとなる具体的な「もの」が欲しいですね。(髙橋正子)
渡良瀬の川原に咲ける女郎花(原句)
渡良瀬の川原に咲くや女郎花(正子添削)
切字「や」を用いることで、女郎花に対する詠嘆の情が加わり、句に情緒的な深みと余韻が生まれます。これは「や」が持つ切字としての一つの効果です。(髙橋正子)
穂紫蘇すく指に香の立つ台所★★★★
上島祥子
一番機秋雲に向け上昇す★★★★
秋澄めり空と山嶺分かつ朝★★★★
客車揺れ彼方に秋の御嶽山★★★
川名ますみ
蜻蛉浮く大病院の棟の間に★★★★
新米を荷台に自転車駈けあがる★★★★
えのころの細き葉を噛みしめる猫★★★
9月22日(2名)
多田 有花
地を覆い木をよじ登り葛の花★★★
遠き田の刈られて見える曼殊沙華★★★★
ひらひらとはぐろとんぼや秋彼岸★★★
桑本栄太郎
秋冷やテニスコートの音弾む★★★
きちきちを追い駆け走る地道かな★★★
カラコロと風に歌うよ竹の春★★★
9月21日(4名)
桑本栄太郎
草萩や背高き花の風誘う★★★★
底紅の愁いの色や靡き居り★★★
草萩の刈り残される道のへり★★★
小口泰與
はつはつに溝蕎麦咲けり川べりに★★★
黙黙と竿振る人や秋の沼★★★
秋の暮怪しきまでに猫の声★★★★
廣田洋一
鰯雲白くきらめく町の川★★★
秋刀魚焼く香り漂う赤提灯★★★
町内の男女集めて運動会★★★
多田 有花
夢うつつ秋の彼岸の驟雨かな★★★
今朝一歩秋は進みて快晴に★★★★
柘榴待つ不意に裂けたるそのときを★★★
正子先生
「八月尽風入る部屋で昼寝する」にご指導をいただきありがとうございます。
八月尽について、私が普段使っている「新日本大歳時記」(1999/講談社)には
八月尽が季語として載っております。
「八月尽の赤い夕日と白い月/中村草田男」が掲載されています。