1月21日~31日


1月30日(4名)

●小口泰與
白鳥や入日に沼の静まりぬ★★★
夕映えの沼や白鳥翔けにける★★★
白鳥の雲より忽と飛来せり★★★★
曇り空か。雲の色よりやや白い白鳥が雲の中から忽然と飛来する。何かの精であるかのように。(高橋正子)

●桑本栄太郎
二人目のうから誕生春を待つ★★★★
湯上りののんどに美味し寒の水★★★
夜に起き喉を潤す寒夜かな★★★

●川名ますみ
梅つぼみ明日ひらく夜の紅薄き★★★★
夜になって、ふと鉢植えの梅に目が行ったのであろう。今にも開きそうな梅の「紅薄き蕾」には、ときめくような春への期待が生まれる。(高橋正子)

さまざまに梅の花芽の莟みけり★★★
雪やみて雲の許多の隙から陽★★★

●高橋正子
節分の鬼面ひらひら紙作り★★★
花柚子に氷雨のかかる明るさよ★★★★
結わえられがんじがらめの薔薇冬芽★★★

1月29日(4名)

●谷口博望 (満天星)
五位鷺の孤影悄然冬の川★★★
紅梅を揺るがしながら目白かな★★★★
まん丸の河豚提灯や福来る★★★

●小口泰與
馴染みたる杖の軽さよ日脚伸ぶ★★★★
使い慣れた杖も軽く感じる嬉しさ。日脚が伸び外光が明るくなるうれしさは、心身にも及ぶ。軽さがいい。(高橋正子)

百千の雀の羽音冬の朝★★★
雀居り尾長飛来や枯木立★★★

●桑本栄太郎
うらうらとバスの車内の冬ぬくし★★★
日が射せばものの影濃き春隣★★★★
推敲の言葉に悩み凍つる指★★★

●高橋正子
夕飯の菜に花菜がありて足る★★★★
うっすらと氷雨に濡れし衣を乾せり★★★
新しき傘が氷雨を弾く音★★★

1月28日(5名)

●谷口博望 (満天星)
初場所や神風の吹く大和魂★★★
何思ふ鷺凝然と冬の川★★★
二の丸のふくら雀が屋根の上★★★★

●小口泰與
日脚伸ぶ道具の手入れ始めける★★★★
アイフォンを持ちて湖へと日脚伸ぶ★★★
冬木の芽赤城の襞のもっこりと★★★

●多田有花
ひと冬の寒さ固めし一週に★★★
冬の夜やテニスの後の肘冷す★★★

寒中の梅が枝担ぎし男かな★★★★
寒中の梅はまだ蕾も固いだろうが、それを男が担ぐ。「担ぐ」から推察できるのは、体躯頑丈な男。頑丈な男と寒中の梅は、風雅とは別のところで、通じ合うものがある気がする。「温かみ」だろうか。(高橋正子)

●桑本栄太郎
真夜に起き喉を潤す寒夜かな★★★
三寒の朝や耀よう四温の日★★★
寒晴や部活の子等のランニング★★★★

●高橋正子
鐘楼も夕日に染まり春隣★★★★
金色の夕日を正面春隣★★★
水栽培の水がきらめくヒアシンス★★★

1月27日(5名)

●谷口博望 (満天星)
春隣ゆつくり進む宇宙船★★★
瓢の実を吹けばヒョウヒョウ鳴りにけり★★★
産土の満州遠く紅冬至★★★★

●小口泰與
我が影の冬田を越えて何急ぐ★★★★
日の出受く飛行機雲よ冬雲雀★★★
虎落笛山より来れば山に聴く★★★

●河野啓一
日脚伸ぶ笑顔明るき送迎車★★★
溝掘って念を入れたる寒肥かな★★★

回り道気にかからずに日脚伸ぶ(信之添削)★★★★
寒い日であるにも拘わらず、日脚が伸びて外気は明るい。遠回りとなる道も意に解さず、日脚の伸びた明るさが嬉しくて楽しむ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
さるすべり枝の白きが寒空へ★★★★
子供等の雄叫び走り日脚伸ぶ★★★
<奈良の若草山の山焼き>
印画紙の心に秘めてお山焼き★★★

●高橋正子
寒満月仰ぎてつつ行く道一本★★★
寒牡丹敷き藁なおも緑がち★★★★
はなびらの先のみ震え寒牡丹★★★

1月26日(5名)

●河野啓一
春隣咲き続け来て寒椿★★★
春隣庭の照葉の輝ける★★★
春近し昇る朝日に力あり★★★★

●小口泰與
冬嶺や毎朝磨く古机★★★★
毎朝、仕事の前にであろうが、長年使い古した机を磨く。机を置いた窓からは凛然とした冬の嶺が見える。このささやかなことが、生活の張にもけじめにもなる。(高橋正子)

小白鳥沼へ一筋入日かな★★★
振り逃げの歓声あぐや冬菫★★★

●桑本栄太郎
白壁の民家軒端や蔦枯るる★★★
万歩計着けて散歩の日脚伸ぶ★★★★
サンルーム欲しき日射しや寒の風★★★

●古田敬二
葉隠れに赤き花びら春隣り★★★
ミツバチが遊ぶ菜花の香り摘む★★★
マフラーで襟元固め受験の子★★★★

●高橋正子
都鳥鴨と並びて波に浮き★★★
都鳥岸辺の石にぬくもれり★★★
青空は古都のものなり梅真白★★★★

1月25日(6名)

●小口泰與
鍬置くや山裾とおき冬ひばり★★★★
湯の街の長き階段寒椿★★★
どよめきの湧きて鮪の競り終わる★★★

●多田有花
厳寒やけれど光の明るさよ★★★
水道をわずかに開けて凍て防ぐ★★★
満月や凍てつく蛇口に湯をかける★★★★
中七から下五に作者の生活が詠まれているが、主題は、上五の「満月」で、それは、冬の「満月」であり、寒の「満月」である。秋の月は美しいとされているが、本当に美しいのは、冬の月ともいわれる。(高橋信之)

●桑本栄太郎
寒林の凛と続けりバス通り★★★★
いつものバス通りさえも凛と冬木の木立が続く。「凛と」となれば、寒も極まった木々だ。人も自然も寒さに凛と立ち向かう。(高橋正子)

終業のチャイム鳴り居り冬木の芽★★★
悴みて文字書き難き句帳かな★★★

●古田敬二
包丁の切れ味の良し大根切る★★★(正子添削)
潔く大根切られ水を噴く★★★★
句がリアルであり、美味しそうな「大根」だ。いい生活だ。(高橋信之)

切干を広げるベランダ風強し★★★

●谷口博望 (満天星)
二の丸のもののふの松雪化粧★★★★
白黒の鴨の艦隊接近中★★★
雪解けの黒鉄黐に目白来る★★★

●高橋正子
都鳥鳴かねば嘴と脚あかし★★★★
寒牡丹ほのかな紅の咲ききれず★★★
透明は白のうちなり葛湯吹く★★★

1月24日(8名)

●谷口博望(満天星)
冬空を鯨のごとく飛行船★★★
覗きたる土竜の鼻や福寿草★★★★
ひたむきに冬に咲きたるクレマチス★★★

●小口泰與
風垣の朽ちし隙間を落暉かな★★★
かんじきを解くや湯煙もうもうと★★★

麦の芽や犬と駆け来る都会の子★★★★
「麦の芽」に置かれた「都会の子」が新鮮。犬と駆け回れる自由さを得た「都会の子」にとっても麦の芽が揃い伸びる畑は新鮮であろう。(高橋正子)

●河野啓一
寒晴れの東天染めて日が昇る★★★★
寒天に鳥声待たる朝は来ぬ★★★
息来ると電話や春待つ日曜日★★★

●多田有花
はぐれたる人を探して雪催い★★★★
雪暗の空見上げては山下りる★★★
ゆっくりと来たり今年の冬将軍★★★

●桑本栄太郎
若枝の青く伸び居り冬木の芽★★★★
米擦りを想い出しけり日脚伸ぶ★★★
燦々と土手の日射しや野水仙★★★

●上島祥子
溶け残る氷入り日を跳ね返す★★★★
風を切る鷹の尾羽を見逃さず★★★
大寒の月の光は真正直★★★

●佃 康水
潮騒や社殿を洗う寒月下★★★
 男子駅伝 2句
雪空へ跳び発つ走者胸光る★★★★
駅伝はそれを応援する市民にとっても走者との一体感が生まれるスポーツ。襷を受けて雪空へ跳ねるように走り出た走者の胸が光る。走者を送り出す応援の気持ちが輝いている。(高橋正子)

駅伝や郷土支援の餅を搗き★★★

●高橋正子
寒牡丹菰をあふれて咲くもあり★★★
寒牡丹花弁の先の吹かるるよ★★★
白梅に鳶の声のゆるやかに★★★★

1月23日(4名)

●小口泰與
汽罐車の黒煙流れ冬の川★★★★
嬬恋の空の蒼さよ寒薔薇★★★
昼なかの膝の小犬や日脚伸ぶ★★★

●谷口博望(満天星)
満開の八重紅梅や鯉も来て★★★
金縷梅のちぢれ始めて春まぢか★★★
かくれんぼ真紅かはいや青木の実★★★★

●桑本栄太郎
窓枠の雨氷となりぬバス来たる★★★★
若枝の青く伸び居り冬木の芽★★★
燦々と土手の日射しや野水仙★★★

●古田敬二
花菜摘む二人の昼餉に足りるほど★★★★
花菜は、いかにも春らしいもの。二人の昼餉はささやかであろうが、足るだけの菜花にささやかな華やぎも。(高橋正子)

冬帽子目深にかぶれば我れ百姓★★★
霜解けの畦に長靴滑らせる★★★

●河野啓一
港江の岸辺に雪の鴎かな★★★★
薄雪の溶けて日差しや春待つ心★★★
鍋物の湯気に潤うデイの昼★★★

1月22日(5名)

●谷口博望(満天星)
多羅葉に縋る空蝉寒の中★★★
大寒の病院人の生き模様★★★

一月や格調高き龍太読む★★★★
一月は年の始めの月。心あたらに俳句に精進しようと思い立つ月でもあろう。そんな一月はやはり、飯田龍太の格調の高い句をしっかりと読んで姿勢を正す気持ちになる。「一月の川一月の谷の中/飯田龍太」を思い出す。(高橋正子)

●小口泰與
たなごころ込めし豆皿ごまめかな★★★
日脚伸ぶ羽根を広げし孔雀かな★★★★
春近し星何処かへ帰りける★★★

●多田有花
大寒の足裏ほかほかフットローラー★★★
日脚伸ぶ沖にくっきり小豆島★★★★
頂の寒林切り払われて晴れ★★★

●桑本栄太郎
竹林の大きく軋みしまき風★★★
初雪の雨に変化(へんげ)の日射しかな★★★★
黒瓦屋根に残りぬさざれ雪★★★

●高橋正子
大寒の豆餅紅餅子らに遣り
たのしみは夜更けて一人葛湯吹く
三界に家なきがよし葛湯吹く

1月21日(7名)

●小口泰與
伊那谷の井月の里や寒造★★★
松過ぎやあわれチワワの寸胴よ★★★
白鳥や暁の浅間は朱色に★★★★

●谷口博望(満天星)
大寒のエンゼルトランペット枯れ★★★
岩陰のクリスマスローズ俯く★★★
日の丸のはためく墓地や日脚伸ぶ★★★★

●古田敬二
午後十時練習疲れや根深汁★★★
切干の笊に縮まり集まれり★★★
登校児防寒着色色美しき★★★★

●多田有花
寒中の陽の明るさに風荒れる★★★
珍しや二日続きの雪の朝★★★
軽鴨のつがい凍れる池の隅★★★★
軽鴨のつがいの二羽が、薄氷の張った池の隅で凍りそうになって、寒さに耐えている。軽鴨の健気な姿が愛おしい。(高橋正子)

●河野啓一
大寒のストーブの火や赤々と★★★★(正子添削)
春待ちて落葉を貯めしコンポスト★★★
薄氷解けるを見れば春近し★★★

●桑本栄太郎
葉をつけしままに蝋梅咲きにけり★★★★
天空の雲奔り居り寒の風★★★
大寒の空眺めつつ飛出しぬ★★★

●高橋正子
大寒に入りていよいよ空深む★★★★
紅梅の蕊に陽当たる日でありき★★★
寺の梅本堂あたりが咲き始む★★★


コメント

  1. 桑本栄太郎
    2016年1月21日 20:26

    自由な投句箱
    ★葉をつけしままに蝋梅咲きにけり
    ★天空の雲奔り居り寒の風
    ★大寒の空眺めつつ飛出しぬ

  2. 多田有花
    2016年1月28日 17:50

    お礼
    信之先生
    「満月や凍てつく蛇口に湯をかける」にコメントをいただきありがとうございます。
    24日の寒波は近年珍しい厳しいものでした。
    蛇口にはタオルを巻いてそこに湯をかけました。
    余熱で氷が解けました。
    晴れて冷え込んだ空にくっきりと満月がありました。