12月6日(土)

★臥風忌の今日にわが句の刷り上がる  正子

○今日の俳句
冬紅葉向こうに大きな空がある/高橋秀之
冬紅葉の向こうに見えるものが「大きな空」である。「大きな」がこの句の内容の良さで、読み手にもその空を実感させてくれる。(高橋正子)

○辛夷の花芽

[辛夷の花芽(11月)/横浜日吉本町]    [辛夷の蕾(3月)/横浜日吉本町]

★かたくなに白を守りて辛夷咲く/能村登四郎
★黄昏の色濃き空に辛夷浮く/笠原美雪
★辛夷の芽ふくらみ見する夕日どき/宮津昭彦
★辛夷の芽をちこち水の韻きけり/石本百合子
★光背のうしろの辛夷冬芽立つ/山本耀子

★花芽数多付けて辛夷の大きな木/高橋信之

 コブシ(辛夷)の花芽(広島市植物公園 2月14日)/ブログ「山野草、植物めぐり」より
 辛夷の花芽が柔らかくひかっていた。開花期は地域の気候に左右され3~5月と幅がある。自分の住む広島県西部の山に自生しているのは、「コブシ(辛夷)」ではなく「タムシバ(匂辛夷)」だから、これは植栽されたものである。両者にほとんど違いはないが、辛夷は花の付け根に小さな葉が一つついているのに対し、タムシバの場合は葉がつかない。この地方では4月上旬に開花することが多い。いっせいに咲いて咲き終わり、また山に紛れてしまう。小野興二郎という歌人の若いころの歌に次の作品がある。2首をセットで読めばさらに味わい深い。
  梢(うれ)たかく辛夷の花芽ひかり放ちまだ見ぬ乳房われは恋ふるも
  妻となる日を待つ汝(なれ)かぬるみゆく水を言ふとき髪のひかりぬ

 コブシ(辛夷、学名:Magnolia kobus)はモクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。別名「田打ち桜」。果実は集合果であり、にぎりこぶし状のデコボコがある。この果実の形状がコブシの名前の由来である。高さは18m、幹の直径は概ね60cmに達する。3月から5月にかけて、枝先に直径6-10cmの花を咲かせる。花は純白で、基部は桃色を帯びる。花弁は6枚。花芽は、6月頃に付き、11月半ばに膨らみ始める。枝は太いが折れやすい。枝を折ると、 芳香が湧出する。九州、本州、北海道および済州島に分布。「コブシ」がそのまま英名・学名になっている。 日本では「辛夷」という漢字を当てて「コブシ」と読むが、中国ではこの言葉は木蓮を指す。

◇生活する花たち「柊・茶の花・錦木紅葉」(横浜日吉本町)

今日の秀句/12月1日~6日

[12月6日]
★晴るる日の新雪積みし山の襞/小口泰與★★★★(正子添削)
もとの句は、「小春日」と「新雪」と季語重なり。晴れた日の山を見渡せば、新雪を冠って、山襞がひときわ際やかだ。真新しい雪、真新しい季節が清々しい。(高橋正子)

 白内障手術で入院(3日間)
★病床に手術待つ間や虎落笛/佃 康水
手術を待つ前の緊張と不安が高まるなか、耳に虎落笛が聞こえ、不安が一層募る。しかし、そこは俳句を作る者。虎落笛を耳に聞き留めることで、手術への覚悟ができる。手術の成功をお祈りします。(高橋正子)

[12月5日]
★ゆらゆらと女人高野の冬黄蝶/古田敬二
女人高野の室生寺へ歩を進めると、寒さの中に生まれたばかりのように、ゆらゆらと飛ぶ黄蝶に出会った。
黄蝶の可憐な魂が思われる。(高橋正子)

★部活子の走り去りけり落葉道/桑本栄太郎
校外の道であろう。落葉の重なる道を部活の子らが走り去って行った。落葉道を駆け抜ける部活の子が自然の中に吸い込まれて行くような感じだ。(高橋正子)

[12月4日]
★磨がかれし楽器に映る冬紅葉/祝 恵子
ブラスバンドの金管楽器だろう。演奏に持ち出され、冬紅葉の近くに置くと、あるいは、演奏中かもしれないが、冬紅葉がきれいに映っている。意外なところに見つけた冬紅葉。磨かれた楽器と冬紅葉と取り合わせがいい。(高橋正子)

★焼べ足さる薪ストーブや食事処/黒谷光子
薪ストーブの燃える炎に温まりながら食事をするのは、心から豊かになれる至福の時。燃え尽きないよう、薪が焼べ足されて至福の時間は続く。(高橋正子)

★手袋の手で鹿を描く幼子ら/川名ますみ
動物園で鹿の絵を描いているのだろう。手が冷たいので、手袋をはめたまま絵を描く光景はほほえましい。幼い絵にも愛らしさが加わったことであろう。(高橋正子)

[12月3日]
★頂上へ霧昇り行く紅葉山/古田敬二
紅葉山を霧が覆うように、頂上へと昇ってゆく。ダイナミックな霧の動きだ。(高橋正子)

★綿虫の拠りどころなく浮かびけり/桑本栄太郎
綿虫はふわふわと浮かんでいるが、その浮かぶ様子が、「拠りどころなく」なのだ。綿虫の虫とは思えないような実態をうまく表現している。季節の空気の感触が感じられる。(高橋正子)

[12月2日]
★振り向けば枇榔葉騒ぐ里の秋/下地 鉄
ざわざわ騒ぐ音に振り向けば、枇榔の葉が秋風に吹かれている。枇榔が風に吹かれる音に沖縄の里の秋が感じられる。(高橋正子)

★遠くに見ゆ初冠雪の金剛山/高橋秀之
1日は今年一番の寒波がやってきて、近畿地方で親しまれている。金剛山も初冠雪の姿が遠くから眺められた。以外にも早い初冠雪に、寒い日が思われる。(高橋正子)

[12月1日]
 広島市久保アグリファーム(牛牧場)
★時雨るるや牧より仔山羊連れもどし/佃 康水
牧場も時雨れると寒々としてくる。濡れないよう、寒さにあわせないよう、仔山羊が連れ戻される。仔山羊は、牛に交じって飼われているものであろうが、飼い主の心優しさが伝わる。(高橋正子)

★冬日さす迷える我の影薄し/福田ひろし
「迷い」をテーマにした句で、難しい内容を実感を大切によく表現している。(高橋正子)

★青空の美しきこと初しぐれ/小西 宏
晴れていると思うと急にはらはらと雨が降る。時雨はそんな雨だ。「初しぐれ」なればこそ、青空から降ってくる。こういった美しさは日本独特と思える。(高橋正子)

12月1日-6日

12月6日(7名)

●小口泰與
冬紅葉天竜川の川面かな★★★
迫り来る北アルプスの根雪かな★★★

晴るる日の新雪積し山の襞★★★★(正子添削)
もとの句は、「小春日」と「新雪」と季語重なり。晴れた日の山を見渡せば、新雪を冠って、山襞がひときわ際やかだ。真新しい雪、真新しい季節が清々しい。(高橋正子)

●河野啓一
枯れ葦の水辺漕ぎゆく小舟かな★★★
湯けむりを透かし人影雪の宿★★★★
友来る寄せ鍋の湯気温かき★★★

●桑本栄太郎
<故郷鳥取の冬の日本海>
海鳴りの遠くに聞こえ榎枯る★★★
風垣の海鳴り聞ききつ薪積む★★★★
白波の怒涛となりぬ波の花★★★

●多田有花
窓の霜溶かして今朝は出発す★★★
霜柱崩しつ頂への道を★★★★
冬の山遠くに光る播磨灘★★★

●福田ひろし
群れ飛びてどこか隙あり冬鴉★★★★
冬の月胸の澱みも照らしけり★★★
牡蠣焼きの幟ばたばた横一列★★★

●佃 康水
 白内障手術で入院(3日間)
病床に手術待つ間や虎落笛★★★★
手術を待つ前の緊張と不安が高まるなか、耳に虎落笛が聞こえ、不安が一層募る。しかし、そこは俳句を作る者。虎落笛を耳に聞き留めることで、手術への覚悟ができる。手術の成功をお祈りします。(高橋正子)
   
今朝窓に初冠雪の連嶺かな★★★ 
冬ざれの海に燃え立つ日の出かな★★★

●小西 宏
落葉抱き逃げる子を追う鬼ごっこ★★★★
沈む陽が東の雲を染め寒し★★★
街の灯を別つ森影月冴ゆる★★★

12月5日(8名)
●古田敬二
ゆらゆらと女人高野の冬黄蝶★★★★
女人高野の室生寺へ歩を進めると、寒さの中に生まれたばかりのように、ゆらゆらと飛ぶ黄蝶に出会った。
黄蝶の可憐な魂が思われる。(高橋正子)

雨にぬれ女人高野に式部の実★★★
ローカル線行けば万葉で見し駅名★★★

●小口泰與
遠州の庭と御霊屋寒鴉★★★
小春日や八坂の塔の高々と★★★★
時雨るるや産寧坂の人の波★★★

●多田有花
出かけんとすればあがりし冬の雨★★★
干し物を冬の朝日の差す中へ★★★★
枝離れ落葉ひととき空を舞う★★★

●桑本栄太郎
冴え冴えと空の蒼さの小窓かな★★★
足裏の爆ぜて歩むや落葉道★★★
部活子の走り去りけり落葉道★★★★

●福田ひろし
若きとき訪ねし町は雪という★★★
しぐるるやバス待つ人の息白し★★★
夕時雨飛行機の灯の美しさ★★★★

●小西 宏
肩丸め日差し楽しき枯れ薄★★★
木の葉散り空に染みゆく欅かな★★★★
木枯らしや烏の声も愛おしく★★★

●下地鉄
手に余る薬の袋歳暮れる★★★
店々に赤の装飾クリスマス★★★
波頭現れて散り飛ぶ冬の海★★★★

●高橋秀之
冬の夜に一斉点灯光の道★★★★
自販機に入らぬ硬貨かじかむ手★★★
北風が選挙の幟をはためかす★★★

12月4日(10名)
●小口泰與
かの坂の七味と京の時雨かな★★★
片時雨産寧坂と二寧坂★★★
砂文字と傘の景色や寒雀★★★

●祝恵子
磨がかれし楽器に映る冬紅葉★★★★
ブラスバンドの金管楽器だろう。演奏に持ち出され、冬紅葉の近くに置くと、あるいは、演奏中かもしれないが、冬紅葉がきれいに映っている。意外なところに見つけた冬紅葉。磨かれた楽器と冬紅葉と取り合わせがいい。(高橋正子)

水鳥の水面の紅葉揺らしゆく★★★
インク字の友の絵手紙冬だより★★★

●桑本栄太郎
<大阪高槻~大山崎界隈>
真直ぐなる列のみどりや冬田晴れ★★★★
青空に残る紅葉や天王山★★★
<サントリー大山崎工場>
冬日さす光り輝く蒸留所★★★

●多田有花
初霜を残る紅葉の上に置く★★★
珍しき料理いろいろ小春かな★★★★
薄暗き中へ起きだす日短か★★★

●河野啓一
冬の雨水の面に揺れる梢かな★★★
散り終えて黄葉小さき丘となり★★★★
老妻と二人で見やる時雨かな★★★

●小西 宏
舞い募る木の葉に空の青遠し★★★★
池澄んで底に木の葉の色浮かぶ★★★
曲り行く欅落葉の濡れた道★★★

●黒谷光子
偶さかの出会いの湖辺冬温し★★★
旧交をあたたむ窓辺冬の湖★★★

焼べ足さる薪ストーブや食事処★★★★
薪ストーブの燃える炎に温まりながら食事をするのは、心から豊かになれる至福の時。燃え尽きないよう、薪が焼べ足されて至福の時間は続く。(高橋正子)

●高橋秀之
通り風が体にしみる冬の朝★★★
大空は冬色木の葉は風に舞う★★★★
冬の雨に濡れた靴下まず脱いで★★★

●古田敬二
小春日の香具山畝傍山旅にいる★★★★
かすかなる瀬音やもみじの谷深し★★★
停車ごと桜紅葉のローカル線★★★

●川名ますみ
紅葉散る小径の下に竹林★★★
手袋の手で鹿を描く幼子ら★★★★
動物園で鹿の絵を描いているのだろう。手が冷たいので、手袋をはめたまま絵を描く光景はほほえましい。幼い絵にも愛らしさが加わったことであろう。(高橋正子)

落葉はなやか篦鹿の去にし舎に★★★

12月3日(5名)

●小口泰與
御朱印の筆の走りや花八手★★★★
仏像の柔和なひとみ冬桜★★★
侘助やさざ波たてし池の鯉★★★

●古田敬二
鮮やかに紀伊の夕日に柿紅葉★★★
頂上へ霧昇り行く紅葉山★★★★
紅葉山を霧が覆うように、頂上へと昇ってゆく。ダイナミックな霧の動きだ。(高橋正子)

紀の川に鴨の陣見て旅を行く★★★

●河野啓一
四季移り早や霜月となりにけり★★★
青空に映えてくっきり冬紅葉★★★
冬帽子出して被って確かめる★★★★

●桑本栄太郎
朝日射す待降節の讃美かな★★★
綿虫の拠りどころなく浮かびけり★★★★
綿虫はふわふわと浮かんでいるが、その浮かぶ様子が、「拠りどころなく」なのだ。綿虫の虫とは思えないような実態をうまく表現している。季節の空気の感触が感じられる。(高橋正子)

門辺なる信楽たぬきや花八手★★★

●小西 宏
空青し池も明るし散紅葉★★★
北風に一人遊びの滑り台★★★
爺ちゃんのねんねこ退けて大きな目★★★★

12月2日(7名)

●小口泰與
寒雷や宝物殿の仏達★★★★
侘助や三千院の夕間暮れ★★★
あけぼのの秀つ枝に揺るる寒鴉★★★

●河野啓一
人の世はかくも早やきや十二月★★★
冬紅葉燃えて通りの名所かな★★★
球根を植えつけほっと師走来る★★★★

●多田有花
一夜にて銀杏黄葉の散り尽くし★★★
頂に立てば輝く冬の海★★★★
窓に差す午後の陽深く十二月★★★

●桑本栄太郎
冬紅葉直通電車の嵐山線★★★
ドア開きステップに銀杏落葉かな★★★
雨降れば室内(へや)の切干甘き香を★★★★

●下地鉄
負けて喫う紫煙に暮れる秋の空★★★
干し綱の揺れの寂しき秋の暮れ★★★

振り向けば枇榔葉騒ぐ里の秋★★★★
ざわざわ騒ぐ音に振り向けば、枇榔の葉が秋風に吹かれている。枇榔が風に吹かれる音に沖縄の里の秋が感じられる。(高橋正子)

●小西 宏
走る子も木の葉の音も初時雨★★★★
吹く風に落葉と遊ぶ保育園★★★
街飾る桜落葉の裏表★★★

●高橋秀之
冬空に太陽の光はおぼろげに★★★
遠くに見ゆ初冠雪の金剛山★★★★
1日は今年一番の寒波がやってきて、近畿地方で親しまれている。金剛山も初冠雪の姿が遠くから眺められた。以外にも早い初冠雪に、寒い日が思われる。(高橋正子)

目覚ましは北風が雨戸を叩く音★★★

12月1日(8名)

●小口泰與
白雲の淡海に定か冬の虹★★★
冬虹や景色ととのう鳰の海★★★★
辛崎を一閃せるや冬の虹★★★

●河野啓一
冬の滝流れて木の葉運びゆく★★★★
水仙のぐんと伸び出す庭の隅★★★
大小の落葉積むかな草多少★★★

●多田有花
冬紅葉里を包んで燃え立ちぬ★★★
山下りて炭火でいただく牡丹鍋★★★
木枯しに靴ひも結び歩き出す★★★★

●桑本栄太郎
哀しみの色となりけり冬紅葉★★★
枯芒ほほけ中洲の真白なる★★★★
早やばやと十一月の果てにけり★★★

●佃 康水
 広島市久保アグリファーム(牛牧場)
時雨るるや牧より仔山羊連れもどし★★★★
牧場も時雨れると寒々としてくる。濡れないよう、寒さにあわせないよう、仔山羊が連れ戻される。仔山羊は、牛に交じって飼われているものであろうが、飼い主の心優しさが伝わる。(高橋正子)

牧に積む飼葉豊かや冬半ば★★★
時雨来て牛の餌を食む鴉かな★★★

●高橋秀之
鉄塔を大きく跨ぎ冬の虹★★★★
冬の夜イルミネーションが煌々と★★★
葉が落ちて大きな幹が聳え立つ★★★

●福田ひろし
雨上がり桜落葉の赤きこと★★★
天国へ誘う如き冬日かな★★★

冬日さす迷える我の影薄し★★★★
「迷い」をテーマにした句で、難しい内容を実感を大切によく表現している。(高橋正子)

●小西 宏
落葉積む丘にビル街遥か見ゆ★★★
時雨来てリュックに小犬入れ帰る★★★
青空の美しきこと初しぐれ★★★★
晴れていると思うと急にはらはらと雨が降る。時雨はそんな雨だ。「初しぐれ」なればこそ、青空から降ってくる。こういった美しさは日本独特と思える。(高橋正子)