5月4日~6日

5月6日

●小口泰與
同胞としばらく会わず春の雷★★★★
春の暮榛名は紺をしぼりけり★★★
夕映えのしみ入る浅間雪消かな★★★

●小西 宏
新緑の欅並木の三車線★★★
地に青き葉の影の揺れ夏初め★★★★
池五月花くっきりと寒枯藺(かんがれい)★★★

●佃 康水
抜きん出て早や陽を弾く今年竹★★★★
  ひろしまフラワーフェスティバル2句
真っ直ぐな若葉の街を鼓笛隊★★★
新緑や流し踊りの連なりて★★★

●多田有花
釣竿を持つ少年の夏近し★★★★
釣竿を持っている少年を見ると、夏が来たことを実感させられる。少年の釣りは水遊びの気持ちがある。(高橋正子)

夏来る緑へ静かな雨連れて★★★
飛行機雲新緑の山の彼方より★★★

●河野啓一
初夏の朝陽さわやか晴れ渡る★★★
軽やかに鳥新緑をくぐり抜け★★★★
鳥もよほどうれしいのだろう。新緑をくぐるときの「軽やか」な身のこなし。新緑のやわらかさのが鳥喜ばせている。おりしも愛鳥週間。(高橋正子)

菊挿して鉢並べたる人の居て★★★

●桑本栄太郎
朴の花見上げ葉影に憩いけり★★★★
朴の花は高いところに咲くので、下からは見上げるだけ。しかし、その大いなる葉影で憩うときの心静かに涼しいこと。(高橋正子)

日を透けば崩れそうなるチューリップ★★★
漫々と日を集めたる浮葉かな★★★

●高橋秀之
新緑の隙間の向こうに大空が★★★
新緑と大空の色だけが見え★★★★
夏来るおはようの声も元気よく★★★

●古田敬二
風の道白くざわめく若葉山★★★
葉桜のざわめきの空明日は晴れ★★★
赤目樫夕日射し来て透き通る★★★★

5月5日

●小口泰與
行く春やしどろに作る小鳥小屋★★★
しなやかに風にしないし柳かな★★★
白波のしばしば起つや緑立つ★★★

●河野啓一
陽を受けて新樹は風にそよぎおり★★★★
蜂が飛び蝶もひらひら昼下がり★★★
鯛釣りの釣果ぞ白き刺身かな★★★

●祝恵子
土準備すれば増えおり春の苗★★★
ふっと揺れ団地に風抜け牡丹咲く★★★
鉄線花おしゃべりする児の愛らしさ★★★★

●小西 宏
子供らのままごと語りハナミズキ★★★
棘少し柵に覗かせ花蜜柑★★★★
蕗焚いて色やわらかき香り噛む★★★

●小川和子
無垢の児の日毎健やか菖蒲の日★★★★
卯の花の真白よ全き容以て★★★
夏近し百合の木新葉濃くなりぬ★★★

●桑本栄太郎
みどり濃き雨の山河や夏は来ぬ★★★
父母ありし頃の想い出こどもの日★★★
乙訓の山すそ火照り竹の秋★★★

●古田敬二
白皿に薄紅色もある春野菜★★★
風来れば葉に見え隠れ豆の花★★★★
忘れ鍬一本立てりネギ坊主★★★

●高橋秀之
銭湯の大きな湯船菖蒲の湯★★★★
銭湯の菖蒲湯はたっぷりとお湯があり、いい気分なものだ。この日は子どもたちもお湯をどぼどぼとかき混ぜたり、まさか泳ぐものはいないだろうか、賑やかであったことだろう。(高橋正子)

軒下の一竿小さな鯉のぼり★★★
葉をめくり手につく香り柏餅★★★

●川名ますみ
あす立夏山椒の苗を植え付ける★★★
汁椀にますます蒼し山椒の芽★★★★
山椒の芽、木の芽は香りがなんといってもよいが、その葉の緑も香りと合わせて楽しめる。汁椀に浮かぶと蒼さが引き立つ。(高橋正子)

青天に一条の影つばくらめ★★★

5月4日

●小口泰與
白藤や今朝の浅間は斑なり★★★★
里山の古木静けき落花かな★★★
山の日の定かに沈む桐の花★★★

●小西 宏
柔らかな五月の風に白躑躅★★★
葉擦れして風香しき薄暑かな★★★
水音の静かに聞こえ若楓★★★★

●多田有花
藤の花下がりし下を女学生★★★★
窓開けてお昼ごはんや夏隣★★★
オートバイ集団でゆく黄金週間★★★

●桑本栄太郎
木洩れ日の大き葉影や朴の花★★★★
降りつもるものの数多の暮春かな★★★
新月の朧となりて雲の影★★★

●高橋秀之
木漏れ日の眩しさの中蝶々舞う★★★★
木漏れ日のちらちらする中にまぎれるように飛ぶ蝶々。すずやかな光景だ。(高橋正子)

店先は花いっぱいの商店街★★★
散歩道葉桜の陰で一休み★★★

●黒谷光子
山峡の茶わん祭りにバスの列★★★
新緑を映す渓流光りつつ★★★★
一瞬の光り残して初燕★★★

●古田敬二
今年竹夕日が当たる高さまで★★★
俎板に新玉ねぎは水こぼす★★★★
ズミの花夕べの風に白く揺れ★★★

●佃 康水
摘みし葉の光り溢るる茶籠かな★★★★
茶籠いっぱいに摘まれた若いお茶の葉はつやつやとして、光を溢れるように反射させる。まぶしいばかりの茶葉の光に接すると気持ちが明るくなる。(高橋正子)

絣の子揉む新茶の香園に満ち★★★
お手植えの菩提樹放つ若葉光★★★

5月5日(月)/こどもの日・立夏

★葉桜の蔭は家居のごと安し  正子

○今日の俳句
鯉のぼり仲良く泳ぐ水鏡/上島祥子
田水が張られ、その近くに民家があるのか。ま鯉、ひ鯉、子供の鯉とそろって吹かれている様が水に映って気持ちよさそうだ。(高橋正子)

○午後長男家族が立ち寄った。明日地鎮祭をするとのこと。孫の元希は、5秒ぐらい両手を放して立てるようになった。自分でも自慢のようだ。

○詩人の瀬川さんがFBの友達承認してくださった。FBの西川仁さんも友達承認をしてくださった。

○今日はこどもの日。小学校2,3年生のときのこどもの日、を思い出した。

こどもの日

山へのぼろう
こどもの日に
山つつじが赤く咲く岬の山へ
かあさんたちが
つくってくれた
ばらずしをもって

山から海を見ようよ
少女たち
子もりのふうちゃんが
炭鉱のある九州へひっこっして行った海を
赤い髪の小さいけんちゃんが
手をふってブラジルへ行った海を

そうして
海のむこうから来る船が
正午に鳴らす汽笛を聞こうよ
目をこらせば
きっとわかるんだよ

○薔薇(ばら)

[薔薇/横浜日吉本町(2012年5月18日)] [薔薇/横浜・港の見える丘公園(2010年5月17日)] 

★夕風や白薔薇の花皆動く/正岡子規
★薔薇剪りに出る青空の谺/河東碧梧桐
★見るうちに薔薇たわたわと散り積る/高濱虚子
★薔薇むしる垣外の子らをとがめまじ/杉田久女
★咲き切つて薔薇の容(かたち)を越えけるも/中村草田男
★手の薔薇に蜂来れば我王の如し/中村草田男
★ばら薫るマーブルの碑に哀詩あり/杉田久女
★退院の抱へきれない薔薇匂ふ/はしもと風里
★白薔薇の含むほのかなベージュ色/高橋正子

 バラ(薔薇)は、バラ科バラ属の種(しゅ)の総称。バラ属の植物は、灌木、低木、または木本性のつる植物で、葉や茎に棘があるものが多い。葉は1回奇数羽状複葉。花は5枚の花びらと多数の雄蘂を持つ(ただし、園芸種では大部分が八重咲きである)。北半球の温帯域に広く自生しているが、チベット周辺、中国の雲南省からミャンマーにかけてが主産地でここから中近東、ヨーロッパへ、また極東から北アメリカへと伝播した。南半球にはバラは自生していない。世界に約120種がある。
 「ばら」の名は和語で、「いばら」の転訛したもの。漢語「薔薇」の字をあてるのが通常だが、この語はまた音読みで「そうび」「しょうび」とも読む。漢語には「玫瑰」(まいかい)の異称もある。 欧米ではラテン語: rosa に由来する名で呼ぶ言語が多く、また同じ語が別義として「ピンク色」の意味をもつことが多い。6月の誕生花である。季語は夏(「冬薔薇」「ふゆそうび」となると冬の季語になる)。
 バラが人類の歴史に登場するのは古代バビロニアの『ギルガメシュ叙事詩』である。この詩の中には、バラの棘について触れた箇所がある。古代ギリシア・ローマでは、バラは愛の女神アプロディテもしくはウェヌス(ヴィーナス)と関係づけられた。また香りを愛好され、香油も作られた。プトレマイオス朝エジプトの女王クレオパトラはバラを愛好し、ユリウス・カエサルを歓待したときもふんだんにバラの花や香油を使用したと伝えられている。ローマにおいてもバラの香油は愛好され、北アフリカや中近東の属州で盛んにバラの栽培が行われた。クレオパトラと同様にバラを愛した人物に、暴君として知られる第5代ローマ皇帝ネロがいる。彼がお気に入りの貴族たちを招いて開いた宴会では、庭園の池にバラが浮かべられ、バラ水が噴き出す噴水があり、部屋はもちろんバラで飾られ、皇帝が合図をすると天井からバラが降り注ぎ、料理にももちろんバラの花が使われていたと伝えられる。
 ナポレオン・ボナパルトの皇后ジョゼフィーヌはバラを愛好し、夫が戦争をしている間も、敵国とバラに関する情報交換や原種の蒐集をしていた。ヨーロッパのみならず日本や中国など、世界中からバラを取り寄せマルメゾン城に植栽させる一方、ルドゥーテに「バラ図譜」を描かせた。このころにはアンドレ・デュポンによる人為交配(人工授粉)による育種の技術が確立された。ナポレオン失脚後、またジョゼフィーヌ没後も彼女の造営したバラ園では原種の蒐集、品種改良が行われ、19世紀半ばにはバラの品種数は3,000を超え、これが観賞植物としての現在のバラの基礎となった。

◇生活する花たち「牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)

5月1日~3日

5月3日

●小口泰與
入口は連翹明かりの隧道ぞ★★★★
隧道を抜けると青葉若葉かな★★★
門前にしたたか散りし蘇芳かな★★★

●迫田和代
春日傘たたんで木陰の人となる★★★★
日傘がいるような春の日は、初夏のような陽気。木陰に入ればほっとする。一読、さわやかな風が吹く心地。(高橋正子)

目の前の光を裂いた初燕★★★
雨やんで新緑鮮やか森の道★★★

●佃 康水
リュック置き若葉の丘へ子ら散りぬ★★★★
遠足の子どもたちであろう。リュックを置き、一目散に若葉の丘へ散っている。子どもたちも自由で、若葉もまぶしい。(高橋正子)

螺旋坂彩とりどりに躑躅燃ゆ★★★
ハンカチの花や夕日へ揺れ止まず★★★

●黒谷光子
風の出て飛び立ちそうに花豌豆★★★
風の午後花豌豆の揺れどおし★★★
細き蔓宙に巻き上げ貝母百合★★★★

●多田有花
遠足の小学生に風光る★★★★
八十八夜大阪のビルの眩し★★★
急がずに行くことの良し春惜しむ★★★

●桑本栄太郎
木洩れ日の風のみどりや聖五月★★★
葉の裏の白き風ぬけ五月来る★★★
みどり為す山河憲法記念の日★★★★

●河野啓一
初夏のよき日生まれし法(のり)の日ぞ★★★★
日本国憲法が施行された日は5月3日の風薫る初夏のよき日。この日を憲法記念日として祝える日本国民は、幸せである。(高橋正子)

湯上りの団扇なつかし頃となる★★★
干し河豚をあぶり思うは旅のこと★★★

●小西 宏
艶やかに草匂いする薄暑かな★★★
ひとすじの青すがすがし韮の花★★★★
葉桜に一直線の空がある★★★

●古田敬二
アカシアの棘まだやわらかき若葉(信之添削)★★★★
ワサワサと枝ごと揺れる柿若葉★★★
夕暮れの低きに広がるウマゴヤシ★★★

5月2日

●小口泰與
花ふぶき天竜川の満々と★★★
諏訪湖より発する川や桜魚★★★★
鳥鳴くや水田にはゆる桃の花★★★

●河野啓一
茶畑も八十八夜青々と★★★★
八十八夜の茶摘みは唱歌にも歌われて、茶摘みの景色が思い浮かぶ。八十八夜の茶畑が青々として、いよいよ茶摘みのシーズンを迎えて、心地よい5月の風景だ。(高橋正子)

柿若葉透かしてそそぐ陽の光★★★
柿若葉カシューナッツもねじれおり★★★

●祝恵子
藤の花棚にまつわり空青し★★★
店舗みな藤鉢花を咲かせおり★★★
春深し土産に抹茶入りの酒★★★★

●川名ますみ
壕向こう白詰草にけぶる芝★★★★
次の角今年もきっと鯉幟★★★
青空に水木の花の白浮ける★★★

●桑本栄太郎
こでまりの花の小枝や丘の風★★★
見上げれば葉影となりぬ朴の花★★★
赤き穂の高く日当たる酸葉かな★★★★

●小西 宏
裏崖の茂みに明かし藤の花★★★
野良猫の首に躑躅の花飾り★★★

水に立つ緑明るし黄の菖蒲★★★★
黄菖蒲は花菖蒲とはまた別のもので、水から抜け出て立つ葉は、一段と明るい緑だ。そこに単純に黄色の花が咲く。涼しい感じの句だ。(高橋正子)

●古田敬二
半分に分ければ香る蓬餅★★★
ネギ坊主高低ありて風に揺れ★★★
蓬の香強き香りの餅を食う★★★★
蓬餅で一番うれしいのは、やはり蓬の香り。蓬のしっかりと匂う蓬餅は、季節の餅を味わったという満足感がある。その気持ちを正直に詠んでいる。(高橋正子)

5月1日

●小口泰與
あけぼのの野川に沿いし黄水仙★★★
笛の音やみつばつつじの池明かり★★★★
竹林に古木一本八重桜★★★

●多田有花
絵具箱に色のとりどり春深し★★★★
絵具箱にあるとりどりの色は、明るい日差しや光にその色が印象付けられる。「春深し」絵具箱が絵になった。(高橋正子)

空映す川は海へと春惜しむ★★★
パンケーキに蜂蜜とろり暮の春★★★

●桑本栄太郎
駅ごとにつつじ燃えおり阪急線★★★★
八重なれど溝に散り敷く花の屑★★★
軒端まで土堤の明かりの花菜かな★★★

●黒谷光子
青空の光り受け止め花水木★★★
花水木薄紅を刷き空へ向く★★★★
ながながと藤房土手の一木に★★★

●小西 宏
軒潜るツバメ円弧の雨上がり★★★
老農の結びたる棚豆の花★★★
新しき五月や白きハナミズキ★★★★
「新しき五月」が、いかにも新鮮。これは「聖五月」と表現される感覚かもしれないが、自分の感じ取った感覚を吟味している。白いミズキが、光を反射して、「新しき」を印象付けている。(高橋正子)