5月5日(日)/こどもの日、立夏

★葉桜の蔭は家居のごと安し  正子
満開だったころの桜と違い、葉桜となった家の傍の桜の木。その葉桜の作り出す陰は、家にいてもゆっくりと安らぐ場も作り出してくれているのでしょう。 (高橋秀之)

○今日の俳句
ヨットの帆きらめく海に高々と/高橋秀之
「きらめく」、「高々」の言葉が、ヨットの浮かぶ海の光景に高揚する気持ちをよく述べている。(高橋正子)

○薔薇(ばら)

[薔薇/横浜日吉本町(2012年5月18日)] [薔薇/横浜・港の見える丘公園(2010年5月17日)] 

★夕風や白薔薇の花皆動く/正岡子規
★薔薇剪りに出る青空の谺/河東碧梧桐
★見るうちに薔薇たわたわと散り積る/高濱虚子
★薔薇むしる垣外の子らをとがめまじ/杉田久女
★咲き切つて薔薇の容(かたち)を越えけるも/中村草田男
★手の薔薇に蜂来れば我王の如し/中村草田男
★ばら薫るマーブルの碑に哀詩あり/杉田久女
★退院の抱へきれない薔薇匂ふ/はしもと風里
★白薔薇の含むほのかなベージュ色/高橋正子

 バラ(薔薇)は、バラ科バラ属の種(しゅ)の総称。バラ属の植物は、灌木、低木、または木本性のつる植物で、葉や茎に棘があるものが多い。葉は1回奇数羽状複葉。花は5枚の花びらと多数の雄蘂を持つ(ただし、園芸種では大部分が八重咲きである)。北半球の温帯域に広く自生しているが、チベット周辺、中国の雲南省からミャンマーにかけてが主産地でここから中近東、ヨーロッパへ、また極東から北アメリカへと伝播した。南半球にはバラは自生していない。世界に約120種がある。
 「ばら」の名は和語で、「いばら」の転訛したもの。漢語「薔薇」の字をあてるのが通常だが、この語はまた音読みで「そうび」「しょうび」とも読む。漢語には「玫瑰」(まいかい)の異称もある。 欧米ではラテン語: rosa に由来する名で呼ぶ言語が多く、また同じ語が別義として「ピンク色」の意味をもつことが多い。6月の誕生花である。季語は夏(「冬薔薇」「ふゆそうび」となると冬の季語になる)。
 バラが人類の歴史に登場するのは古代バビロニアの『ギルガメシュ叙事詩』である。この詩の中には、バラの棘について触れた箇所がある。古代ギリシア・ローマでは、バラは愛の女神アプロディテもしくはウェヌス(ヴィーナス)と関係づけられた。また香りを愛好され、香油も作られた。プトレマイオス朝エジプトの女王クレオパトラはバラを愛好し、ユリウス・カエサルを歓待したときもふんだんにバラの花や香油を使用したと伝えられている。ローマにおいてもバラの香油は愛好され、北アフリカや中近東の属州で盛んにバラの栽培が行われた。クレオパトラと同様にバラを愛した人物に、暴君として知られる第5代ローマ皇帝ネロがいる。彼がお気に入りの貴族たちを招いて開いた宴会では、庭園の池にバラが浮かべられ、バラ水が噴き出す噴水があり、部屋はもちろんバラで飾られ、皇帝が合図をすると天井からバラが降り注ぎ、料理にももちろんバラの花が使われていたと伝えられる。
 ナポレオン・ボナパルトの皇后ジョゼフィーヌはバラを愛好し、夫が戦争をしている間も、敵国とバラに関する情報交換や原種の蒐集をしていた。ヨーロッパのみならず日本や中国など、世界中からバラを取り寄せマルメゾン城に植栽させる一方、ルドゥーテに「バラ図譜」を描かせた。このころにはアンドレ・デュポンによる人為交配(人工授粉)による育種の技術が確立された。ナポレオン失脚後、またジョゼフィーヌ没後も彼女の造営したバラ園では原種の蒐集、品種改良が行われ、19世紀半ばにはバラの品種数は3,000を超え、これが観賞植物としての現在のバラの基礎となった。

◇生活する花たち「牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)

5月5日(日)

●小口泰與
菜の花や渡し舟より声降ろす★★★
菜の花の中をゆったり渡し舟★★★
菜の花や千曲の水面耀いて★★★

●藤田洋子
麦の穂の揺れはそれぞれ風の中★★★★
それほど強くない風。麦畑の麦の穂は、それぞれに揺れる。穂が透けて緑の色が爽やか。(高橋正子)
見上げればシナミザクラの実のたわわ★★★
園の木々くぐり梅の実桜の実★★★

●河野啓一
庭先の木立の影や春夕べ★★★
パソコンを打つ手を止めて春惜しむ★★★
春は行く夕陽の影の長くして★★★

●黒谷光子
遠目にも薄紫に土手の藤★★★
牡丹の散り蹲踞に浮き沈み★★★
また伸びて見上げる背丈松の芯★★★

●多田有花
歓声が響く広場やこどもの日★★★
快晴の空に緑に夏来る★★★
【原句】水平線青く立夏の頂に
【添削】立夏の頂水平線は青し★★★★
立夏の頂から見える水平線は、くっきりと一本青い。海に夏来たり。(高橋正子)

●桑本栄太郎
<山口大神宮でのお宮参り>
孫と云う神秘なるもの若葉吹く★★★
<記念撮影終了後、菜香亭にて昼食>
風薫る庭の輝く菜香亭★★★
庭手入れの黒き背中や若葉吹く★★★

●川名ますみ
ともしびにそっと応えるさくらんぼ★★★
さくらんぼ摘んだ指先立てたまま★★★
さくらんぼ煮詰めラム酒を二三滴★★★

●佃 康水
開封の茶の粉飛び散る夏初め★★★
陽光の眩しき空へ花楝★★★
堂裏の小流れ澄みて水芭蕉★★★

●小西 宏
竹の子の皮脱ぎ高く青空へ★★★
黒々と鱗おどるや鯉幟★★★
妹もザリガニ探る子供の日★★★★
妹も兄たちに交じって、元気いっぱいザリガニ探し。男の子も女の子もなく、子どもは子ども。好奇心に満ち活発なのがよい。 (高橋正子)

●高橋秀之
葉に力あり粘りあり柏餅★★★
柏餅買い物帰りの妻の手に★★★
大きさにわずかの違い柏餅★★★

●古田敬二
今年竹と呼ばれる高さに尖り揺れ★★★
蒲公英の絮吹く森の静けさに★★★
鐘楼をまっすぐ抜け来る風五月★★★