8月4日(日)


★野に出でて日傘の内を風が吹き
影のない「野に出でて」日傘をかざします。夏野を吹く風は、むせかえるような青い匂い。けれど「日傘の内」では陽射しが遮られ、風もさわやかです。傘の下だからこそ知る、野原の静けさと涼しさ。野に在る女性の美しいシルエットが浮かびます。 (川名ますみ)

○今日の俳句
うす紅も編まれし母の夏帽子/川名ますみ
母にまだある若さと可愛さをほほえましく、ある意味母親的まなざしで思う娘である。明るいうす紅が涼しさを呼んでくれる。(高橋正子)

○稲の花咲く

[稲の花咲く/横浜市緑区北八朔町(2013年7月31日)]

★いくばくの人の油よ稲の花 一茶
★南無大師石手の寺よ稲の花 子規
★稲の花今出の海の光りけり 子規
★湯槽から四方を見るや稲の花 漱石
★雨に出しが行手の晴れて稲の花 碧梧桐
★軽き荷を酔うてかつぐや稲の花 虚子
★酒折の宮はかしこや稲の花 虚子
★八十路楽し稲の花ひろびろと見る/高橋信之
★稲の花見つつ電車の駅までを/高橋正子
★稲の花雲なく晴れし朝のこと/高橋正子

 イネ(稲、稻、禾)は、イネ科 イネ属の植物である。稲禾(とうか)や禾稲(かとう)ともいう。 収穫物は米と呼ばれ、世界三大穀物の1つとなっている。本来は多年生植物であるが、食用作物化の過程で、一年生植物となったものがある。また、多年型でも2年目以降は収穫量が激減するので、年を越えての栽培は行わないのが普通である。よって栽培上は一年生植物として扱う。属名 Oryza は古代ギリシア語由来のラテン語で「米」または「イネ」の意。種小名 sativa は「栽培されている」といった意味。用水量が少ない土壌で栽培可能なイネを陸稲(りくとう、おかぼ)と呼ぶ。日本国内に稲の祖先型野生種が存在した形跡はなく、海外において栽培作物として確立してから、栽培技術や食文化、信仰などと共に伝播したものと考えられている。稲を異常なまでに神聖視してきたという歴史的な自覚から、しばしば稲作の伝播経路に日本民族の出自が重ねられ、重要な関心事となってきた。一般に日本列島への伝播は、概ね3つの経路によると考えられている。南方の照葉樹林文化圏から黒潮にのってやってきた「海上の道」、朝鮮半島経由の道、長江流域から直接の道である。3つの経路はそれぞれ日本文化形成に重層的に寄与していると考えられている。現在日本で栽培されるイネは、ほぼ全てが温帯ジャポニカに属する品種であるが、過去には熱帯ジャポニカ(ジャバニカ)も伝播し栽培されていた形跡がある。

 多くの節をもつ管状の稈を多数分岐させ、節ごとに1枚の細長い肉薄の葉をもつ。稈は、生殖成長期になると徒長して穂を1つつける。他殖性の風媒花であるが、栽培稲では98%程度が自家受粉する。開花時間は午前中から昼ごろまでの2-3時間と短い。花は、頴花(えいか)と呼ばれ、開花前後の外観は緑色をした籾(もみ)そのものである。籾の先端には、しなやかな芒(ぼう)が発達する。芒は元々は種子を拡散するための器官であるが、栽培上不要なため近代品種では退化している。農業上、種子として使われる籾は、生物学上の果実である玄米を穎(=籾殻:もみがら)が包んでいるもの。白米は、玄米から糠(ぬか)層、胚など取り除いた、胚乳の一部である。生態型によるジャポニカ種 (日本型、島嶼型)とインディカ種 (インド型、大陸型)という分類が広く知られている。

 稲の食用部分の主 成分であるでんぷんは、分子構造の違いからアミロースとアミロペクチンに別けられる。お米の食感は、両者の含有配分によって大きく異なる。すなわちアミロース含量が少ないお米は加熱時にやわらかくモチモチした食感になり、アミロース含量が多いとパサパサした食感になる。日本人の食文化では、低アミロースのお米を「美味しい」と感じる。この好みは、世界的には少数派となっている。通常の米は20%程度のアミロースを含んでいるが、遺伝的欠損によりアミロース含量が0%の品種もあり、これがモチ性品種で、モチ性品種が栽培されている地域は東南アジア山岳部の照葉樹林帯に限定されている。その特異性から、その地域を「モチ食文化圏」と呼称されることがある。日本列島自体が西半分を「モチ食文化圏」と同じ照葉樹林に覆われており、またハレの日にもち米を食べる習慣がある(オコワ、赤飯、お餅)ことから、日本文化のルーツの一つとして注目された。

◇生活する花たち「蓮の花・のうぜんかずら・ブラックベリー」(横浜市港北区箕輪町)

◆8月ネ ット句会投句箱◆

▼8月ネット句会の投句案内
①投句:当季雑詠(夏の句)3句
②投句期間:2013年8月11日(日)午前0時~午後6時
※事前投句が許されますで、事前投句をご希望の方は、お申し込みください。
③投句は、下の<コメント欄>お書き込みください。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:8月11日(日)午後7時~午後10時
②入賞発表:8月12日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、8月12日(月)正午~7月16日(火)午後6時

▼スタッフ(12名):
①高橋正子(句会主宰)・②高橋信之(管理)・③藤田洋子(管理)・④藤田裕子・⑤井上治代・⑥高橋句美子・⑦祝恵子・⑧多田有花・⑨高橋秀之・⑩小西宏・11安藤智久・12佃康水
▼8月句会当番スタッフ:藤田洋子・高橋秀之

◆伝言◆

●俳句添削教室
以下の方の俳句添削を下記アドレスの<俳句添削教室>に書き込みましたので、
ご確認ください。
高橋秀之・祝恵子・多田有花
http://www.21style.jp/bbs/kakan13/

●高橋正子の俳句日記(ブログ)
以下の方の俳句をご紹介していますので、ご確認ください。
佃康水(8/18)藤田洋子(8/17)藤田裕子(8/16)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/

8月4日(日)


●小口泰與
赤城より矢庭にきたる夕立かな★★★
空蝉やはたとひざ打つ同窓会★★★
唐突に轟音生みしはたた神★★★

●小西 宏
老農の畑にトマトの群真っ赤★★★★
日焼けて深く刻まれた皺の農夫。それに真っ赤に熟れたトマト、トマト。この取り合わせが画になり、意味になっている。(高橋正子)

夏高くオオヤマトンボ巡航す★★★
病葉となりて桜の香の仄か★★★

●黒谷光子
木曽連山掲ぐ入道雲大き★★★★
青々と聳える木曽の山々。その山々が、また堂々と入道雲を掲げている。この連山にして、この入道雲。真夏の雄々しい姿がさわやかだ。(高橋正子)

山頂へ続く雪渓幾筋も★★★
立ち止まりまた立ち止まりお花畑★★★

●多田有花
山の水たっぷり汲んで墓洗う★★★★
墓地は山のふもとにある。冷たい山の水を汲んで、きれいさっぱりと墓を洗う。故人もさっぱりと涼しい思いになられたことであろう。(高橋正子)

暑き日につくつくぼうし鳴き初める★★★
朝の風窓より入りぬ秋近し★★★

●古田敬二
パナマ帽あれば炎暑へ出る勇気★★★
鍬の柄の真昼の極暑の熱のあり★★★
茄子を焼くちらりと母を思い出し★★★

●桑本栄太郎
夏草の午後ともなれば萎れけり★★★
枝先の微風逃さずさるすべり★★★
干上がりて小石の流れ旱川★★★

●高橋秀之
水平線から昇る夏の陽は眩し★★★★
夏は朝日にして、はや力強く眩しい。水平線から昇る朝日は、海を輝かせて特に眩しい。(高橋正子)

昇る日が夏の青海の揺れ照らす★★★
眼前にあるのは夏の空と海★★★