11月3日(日)

★霧に育ち大根くゆりと葉を反らす  正子
「霧に育ち」で霧の流れてくる山間の大地に活き活きと育っている大根畑が浮かびます。その大地には白い大根の肩が見え、くゆりと反らした葉っぱも青々としています。当に収穫の時期を迎えた証しでしょうか。「大根の白」「葉っぱの青」「冷やかな霧」に初冬の景色のイメージを強く致します。 (佃 康水)

○今日の俳句
 霜降の日松の菰巻き
菰巻きや縄目きりりと立ち揃い/佃 康水
新しい菰で幹を蒔かれ、縄をきりりと結んだ木は、風格が一段と増して見える。冬越しの準備が整い、気持ちが引き締まる思いだ。(高橋正子)

○山鳥兜(ヤマトリカブト、鳥兜・鳥頭・かぶと花)

[ヤマトリカブト/横浜・四季の森公園]    [オクトリカブト/尾瀬ヶ原]

★今生は病む生なりき鳥頭(トリカブト)/石田波郷
★かぶと花手折りて何を恋ひゆくや/石原君代
★鳥兜毒持つことは静かなり/東金夢明
★オキシドール泡立ちており鳥兜/河村まさあき
★国境へ鳥兜の原広がりぬ/久保田慶子
  横浜・四季の森公園
★鳥兜のむらさき優しこの森は/高橋信之
★鳥兜斜めがちにて色淡し/高橋正子

 ヤマトリカブト(山鳥兜、学名:Aconitum japonicum)は、 キンポウゲ科トリカブト属の多年草。トリカブト属の中には、オクトリカブト、ミヤマトリカブト、ハコネトリカブトなどがあり、ヤマトリカブトは、オクトリカブトの変種で、中国原産。花の形が、舞楽のときにかぶる、鳳凰(ほうおう)の頭をかたどった兜に似ていることから「鳥兜」。また、山地に生える鳥兜なので「山~」となった。ふつう、「鳥兜」と呼ぶ場合は、この「山鳥兜」を指すようで、単なる「鳥兜」という名前の花はない。英名の”monkshood”は「僧侶のフード(かぶりもの)」の意。
 トリカブト(鳥兜)の仲間は日本には約30種自生している。沢筋などの比較的湿気の多い場所を好む。花時には草丈90~130cmほどになる。茎は斜上することが多く、稀に直立する。 秋に、花茎の上部にいくつかの青紫色の長さ4cmほどの兜(かぶと)型の花をつける。花の色は紫色の他、白、黄色、ピンク色など。葉は大きさはいろいろあり、径7~12cmほどの偏円形ですが、3~5深裂(葉の基部近くまで裂けている)し、裂片はさらに細かく中~深裂(欠刻状の鋸歯)しているのが特徴で、見た目では全体に細かく裂けているように見える。
 塊根を乾燥させたものは漢方薬や毒として用いられ、烏頭(うず)または附子(生薬名は「ぶし」、毒に使うときは「ぶす」)と呼ばれる。本来「附子」は、球根の周り着いている「子ども」のぶぶん、中央部の「親」の部分は「烏頭(うず)」、子球のないものを「天雄(てんゆう)」と呼んでいたが、現在は附子以外のことばはほとんど用いられていない。ドクウツギ、ドクゼリと並んで日本三大有毒植物の一つとされる。ヨーロッパでは、魔術の女神ヘカテーを司る花とされ、庭に埋めてはならないとされる。ギリシア神話では、地獄の番犬といわれるケルベロスのよだれから生まれたともされている。狼男伝説とも関連づけられている。富士山の名の由来には複数の説があり、山麓に多く自生しているトリカブト(附子)からとする説もある。また俗に不美人のことを「ブス」と言うが、これはトリカブトの中毒で神経に障害が起き、顔の表情がおかしくなったのを指すという説もある。10月13日の誕生花(鳥兜)、花言葉は「騎士道、栄光」(鳥兜)。

◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)

11月3日

●小口泰與
山風にさざ波よする穭かな
秋ばらの雨に濡れたり和紙のよう★★★

上州の風硬き日の種なすび★★★★
「種なすび」の寂びた風格がいい。上州の風に揉まれた種茄子の一味ちがった味わい。(高橋正子)

●河野啓一
川沿いに飛び去る大き銀やんま★★★★
川水に沿い光りながら飛ぶ銀やんまのゆうゆうとした姿が目に残る。水と銀やんまの出会いもいい。(高橋正子)

湯上りの冷気うれしい秋の午後★★★
稲藁を小脇に抱え農の人★★★

●多田有花
鳥取より秋のメロンを売りに来る★★★
次々と手が出る炒りたて落花生★★★
たい焼きの温みに秋を惜しみける★★★

●桑本栄太郎
切り口の古ぶ薪(まき)積み秋深し★★★★
切り口の古びた薪の色は、まさに「秋深し」の色。わびしくは質実な色を思う。(高橋正子)

黒き実の古きもありぬ柿熟るる★★★
もちの実のびつしり赤き大樹かな★★★

●小西 宏
窓に入る秋日が小犬抱いている★★★
紅葉の山に桜の香の仄か★★★

団栗の降る音靴に踏まるる音★★★★
くぬぎ林に入ると団栗がびっしりというほど落ちている。一方で木からは団栗がしきりに降ってくる。秋の森の明るさと深さに温かく包まれる。(高橋正子)

●祝恵子
気まぐれに赤のまんまを手折り持つ★★★
秋耕や花苗のこと頼み来る★★★
稲刈りの今朝も足元ぬかるみて★★★

●佃 康水
 文化の日の公民館祭り2句
餅撒きやぴたり手に受く菊日和★★★
たおやかな友の書仰ぐ文化の日★★★

萩は実になりて山路の豊かさよ★★★★
山路を花で飾った萩は、いまはすっかり実になっている。萩の花ではなく、実に着目し、それを「豊かさ」と見たのは、それこそ落ち着いた心の豊かさである。(高橋正子)