7月24日(水)

●小口泰與
嘴で羽根を掻きけり通し鴨★★★
た走るや横谷渓谷乙女滝★★★
野を分けて利根迸る夕立かな★★★★

●多田有花
段ボール畳んで捨てる大暑の日★★★
蓮の葉の裏より蜻蛉生まれけり★★★
午後の部屋通り抜けたる大南風★★★★

●桑本栄太郎
昇降機を降りてひぐらし鳴き初むる★★★★
ビルの高層階では聞こえなかったひぐらしの声が、地上階で昇降機を下りると、とたんに聞こえ始めた。 気密的なビルも地上に通じればひぐらしの声も聞こえるのだ。(高橋正子)

空蝉の虚空の果てを見つめけり★★★
池の辺の風をさえぎり蘆茂る★★★

●祝恵子
家裏に立てかけられてゴムプール★★★★
カラフルなゴムプールが、ひっそりとした家裏に立てかけられて、目に楽しく映る。家裏が涼しそうである。(高橋正子)

オクラ採る少しぬめりを感じつつ★★★
子かまきり夏日に足を揺り踏み出す★★★

7月25日(木)

★枇杷の実のあかるさ葉ごと買いにけり  正子
厚手の緑葉の中にかたまって生る輝くような枇杷の実。その姿そのままに買い帰られたのでしょうね。帰路の軽い足取りが目に見えるようです。(小西 宏)

○今日の俳句
金蚊の仰向いて脚生きんとす/小西 宏
金蚊が何かにぶち当たってひっくり返った。起き上がろうとしてか、必死に脚を動かしている。作者はその様子を「生きんとす」と捉えた。金蚊の命を直視しているのがよい。(高橋正子)

○鬼百合

[鬼百合/東京・新宿御苑]          [鬼百合/大船植物園]

★亭寂寞薊鬼百合なんど咲く/夏目漱石
★望岳のころの鬼百合おいらん草/和知喜八
★鬼百合も写ってしまう心電図/岸本マチ子
★鬼百合を闘志の花として残す/柴田悦子
★鬼百合あれは出征前夜の父/石倉夏生
★鬼百合に負けてはならじとぞ思う/高橋正子

オニユリ(鬼百合・学名Lilium lancifolium)とは、ユリ科ユリ属の植物。グアム東部、中国、朝鮮半島、日本に自生する。日本では北海道から九州の平地から低山で普通に見られ、一説には中国からの渡来種と言われている。変種に対馬に自生するオウゴンオニユリ(Lilium lancifolium var. flaviflorum)がある。草丈は1~2m程となる大型のユリ。葉は互生し、小さめの披針形で先端はゆるく尖る。茎は紫褐色で細かい斑点がある。花季は7月から8月で、花弁はオレンジ色、濃褐色で暗紫色の斑点を生じる。花弁は強く反り返る。種子は作らないが、葉の付け根に暗紫色のムカゴを作る。鱗茎はヤマユリと同様、食用となる。 花言葉は「賢者」「愉快」「華麗」「陽気」など。

◇生活する花たち「あさざ・野萱草(のかんぞう)・山百合」(東京白金台・自然教育園)