5月22日(水)

★葉桜に夜も残れる空の紺  正子
美しく広がった葉桜のうす緑と、暮れなずむ初夏の夜空の深い紺色とが溶け合って独特の色彩の世界を描いている、との句意かと存じます。色ばかりでなく爽やかな夜風も感じられるように思いました。 (河野啓一)

○今日の俳句
 山口、サビエル記念大聖堂
聖堂の鐘粛々と若葉谷/桑本栄太郎
聖堂の鐘が粛々と谷若葉に響く。谷の中の聖堂である。谷若葉が聖堂の位置と大きさを目に浮かばせて、句を生かしている。(高橋正子)

○十薬(ドクダミ)

[十薬/横浜日吉本町]

★どくだみや真昼の闇に白十字/川端茅舎
★十薬や四つの花びらよごれざる/池内友次郎
★叢に十薬花を沈め咲き/星野立子
★十薬の根の長々と瓦礫より/細見綾子
★測量の人十薬に踏み込みぬ/稲畑汀子
★十薬や夜へ突立つ坂がかり/鷲谷七菜子
★花言葉なき十薬は十字切る/上田五千石
★毒だみや十文字白き夕まぐれ/石橋秀野

十薬は、生薬名の十薬(じゅうやく、重薬とも書く)で、ドクダミ(蕺草、学名:Houttuynia cordata)ともいわれ、ドクダミ科ドクダミ属の多年草。 住宅周辺や道ばたなどに自生し、特に半日陰地を好む。全草に悪臭がある。開花期は5~7月頃。茎頂に、4枚の白色の総苞(花弁に見える部分)のある棒状の花序に淡黄色の小花を密生させる。本来の花には花弁も、がくもなく、雌しべと雄しべのみからなる。加熱することで臭気が和らぐことから、日本では山菜として天ぷらなどにして賞味されることがある。他の香草と共に食されるドクダミ(ベトナム)、また、ベトナム料理ではザウゾプカー(rau giấp cá)またはザウジエプカー(rau diếp cá)と称し、主要な香草として重視されている。ただし、日本に自生している個体群ほど臭気はきつくないとも言われている。中国西南部では「折耳根(ジョーアルゲン 拼音: zhéěrgēn )」と称し、四川省や雲南省では主に葉や茎を、貴州省では主に根を野菜として用いる。根は少し水で晒して、トウガラシなどで辛い味付けの和え物にする。生薬として、開花期の地上部を乾燥させたものは生薬名十薬(じゅうやく、重薬とも書く)とされ、日本薬局方にも収録されている。十薬の煎液には利尿作用、動脈硬化の予防作用などがある。なお臭気はほとんど無い。 また、湿疹、かぶれなどには、生葉をすり潰したものを貼り付けるとよい。

◇生活する花たち「ネーブルの花・八朔の花・すだちの花」(横浜日吉本町)

5月22日(水)

●小口泰與
いちはつの疾風凌ぎて咲きにけり★★★
ぼうたんの蘂くっきりと花を了う★★★
天つ日を受けてさ迷う鉄線花★★★

●古田敬二
人待てば五月の風来る京都駅★★★
方丈の四角い窓の若葉光★★★
新緑の小倉山から水の音★★★

●祝恵子
子は待てりザザッと噴水上がる時★★★
噴水のやめば集まりダンス輪に★★★
バラの色くるくる回しシャボン玉★★★★
虹色でなく「バラ色」のシャボン玉が新鮮で、観察が確か。バラ色のシャボン玉の球面が近く目に浮かぶ。(高橋正子)

●藤田裕子
登りきて青き山河に埋れおり★★★★
別子銅山であろうか。下から登ってくると、青葉が茂り、青葉を分けて河が流れる。青山河の別世界は、「埋もれて」こそ生まれるもの。命の洗濯のできた一日。(高橋正子)

薫風を窓いっぱいに招き入れ★★★
「わたみたい」空豆ポンと児の剥けり★★★

●桑本栄太郎
短夜の喉の渇きに目覚めけり★★★
小満の朝は”おめざ”と洒落てみる★★★
風抜ける図書館通りやえごの花★★★

●川名ますみ
はつ夏や少年ピアノを弾き止まず★★★★
ピアノの音とはつ夏が「少年」の初々しさを美しく仕上げている。少年の意志によってひき続けられるピアノ。「弾き止まず」に、ピアノ線のような強さがある。(高橋正子)

きらめきは白露草のしべの青★★★
白露草閉じて花弁を降ろしたり★★★

●河野啓一
カモミールの白き香を摘み陰干しに★★★
白鷺の名を冠せらる城のあり★★★ 
白々と短夜明けて鳥の声★★★

●多田有花
小満や花に囲まれ子らの像★★★★
小満は、二十四節季の一つ。麦の穂が熟れはじめ、農作物の出来にほっと一息つくころ。明るさのある小さな満足感のある季節だ。花に囲まれた子らの像は、子らへの願い。(高橋正子)

藍色の空に月出て夕薄暑★★★
花の名を確かめ巡る薔薇の園★★★

●小西 宏
朝の若葉にひかり散らして雀たち★★★
若葉雨あがれば柔き土の匂い★★★
毛虫ゆれる見えない糸の小さな風★★★