●小口泰與
見晴るかす桃咲く里やうす曇★★★★
連翹や真白き富士を眼間に★★★★
桃咲くや甲斐の山々薄き靄★★★
●桑本栄太郎
幼等のくつ脱ぎ走る野遊びに★★★★
うぐいすの池に木魂す谷渡り★★★
登校の花菜明かりや通学路★★★
●河野啓一
街並みに薄紅見えて躑躅咲く★★★★
光が次第に強くなった街並みがいっそう初夏らしく輝くのは、薄紅のつつじの色の所為だ。とりわけ鮮やかではない色が初夏の光によく馴染み、街並みに溶けている。(高橋正子)
小さき手を広げ箕面の若楓★★★
春深し生あたたかき曇り空★★★
●黒谷光子
またの日と言うて別るる春の夜★★★★
また会える日を思っての別れの句であるが「春の夜」がしっとりとした抒情で別れを包んでいる。(高橋正子)
夜の窓に篝火の浮く春の湖★★★
送る人送らる人の春の宴★★★
●小西 宏
春の鴨水音高く池に着く★★★★
「春の鴨」は、春深くなっても北に帰らない鴨のことを言うが、残されたり、残った意識もないのだろう。「水音高く」には、水も鴨も生き生きとしている様子が表現されている。
雲垂れて日の永き街ほの暗し★★★
ベランダに満天星躑躅夜を照らす★★★
★春月の光りにも触る午前二時 正子
真夜中の春の月が明るく、またうるむように照り映えている。つと手を伸ばせば触れそうな気がするほど。神秘的で幻想的な気分に誘われる御句です。(河野啓一)
○今日の俳句
ムスカリのかたまり青く日溜まりに/河野啓一
ムスカリは白や薄水色などもあるが、青い色がかたまって咲いているのをよく見かける。日溜まりに咲き揃っているのを見るとかわいらしい。(高橋正子)
○あやめ


[あやめ/横浜日吉本町・西光院(2012年5月6日)][いちはつ/横浜日吉本町・西量寺(2013年4月16日)]
★あやめ生ひけり軒の鰯のされかうべ/松尾芭蕉
★あやめ草足に結ばん草履の緒/松尾芭蕉
★鯉のぼり泳ぐよ下に花あやめ/高橋正子
★入学して校門内の花あやめ/高橋正子
アヤメ(菖蒲、文目、綾目、学名:Iris sanguinea)はアヤメ科アヤメ属の多年草である。アヤメは山野の草地に生える(特に湿地を好むことはない)。葉は直立し高さ40~60cm程度。5月ごろに径8cmほどの緑色の花を1-3個付ける。外花被片(前面に垂れ下がった花びら)には網目模様があるのが特徴で、本種の和名のもとになる。花茎は分岐しない。北海道から九州まで分布する。古くは「あやめ」の名はサトイモ科のショウブを指した語で、現在のアヤメは「はなあやめ」と呼ばれた。
○生活する花たち「三葉躑躅(みつばつつじ)・葱坊主・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)
