今日の秀句/7月21日-31日

[7月31日]
★炎天や我が影のほか影は無し/古田敬二
炎天の高く立つものがない畑などでは、こうした場面に出会う。炎天の下に静まったところに立っているのは自分だけ。自分の影だけが黒く立つ。(高橋正子)

[7月30日/2句]
★まだ熱き陽のぬくもりの瓜もらう/多田有花
夕方もまだ早い時間だろう。畑の瓜をもらったが、手に受けてみるとまだ陽のぬくもりがある。日中の暑い太陽を受け、野菜も温もっているが、そのほの暖かさに驚く。(高橋正子)

★ふと見上ぐ窓の青さや晩夏光/桑本栄太郎
まだ暑い盛りであるが、草木の繁茂も終わり、烈日にも陰りが見え、夏が終わる感慨が湧くのが、晩夏。ふと見上げた窓の青さに秋めく気配を感じた。(高橋正子)

[7月29日]
★近づくと我へわれへと目高かな/小口泰與
目高などが、自分に近寄ってくるのは、遊びに寄ってくるようで、楽しいものだ。ひと時そんな楽しみを味わう。それも涼しいことだ。(高橋正子)

[7月28日/2句]
★樹にもたれ絵描く数人夏帽子/祝恵子
絵を描くのに、必ずしも座って描くとは限らない。木陰を作る木の幹に持たれ、夏帽子を冠り、スケッチをしているグループなのであろう。暑苦しくなく、軽やかな光景だ。(高橋正子)

★風吹けば光りて現る青胡桃/古田敬二
葉隠れに生っているまだ青い胡桃は、葉に隠れてめだたないが、風が葉を翻えすと、胡桃のありかがよくわかる。ましてや光っているのだから、存在は確かだ。(高橋正子)

[7月27日]
★一面の青田を真っ直ぐ行く列車/高橋秀之
下五を名詞で止めると句のイメージがはっきりする。一面の青田が広がる平野。その中を列車が、まっすぐ行く。青田の清々しい風景が、旅心を誘う句。(高橋正子)

[7月26日]
★鴨はもう植田の高さに隠れおり/祝恵子
植田に鴨を泳がせ、鴨に雑草を食べさせ、鴨の飼育を目的としているケースなのだろう。植田の苗は、みるみる生長し、鴨の姿を隠してしまうほどになった。苗も、鴨も生長盛ん。(高橋正子)

[7月25日/2句]
★白粉花暮れゆく空に咲き揃う/小川和子
白粉花は夕方から咲く花。暮れゆく空に咲く花は、かすかな良い香りがあり、抒情的。(高橋正子)

★嬬恋のきゃべつ山積み湖隠す/小口泰與
夏の冷涼な気候を生かして、嬬恋ではキャベツがたくさん生産される。湖を隠ししてしまうほどのキャベツの収穫量。壮観であろう。(高橋正子)

[7月24日]
★はちきれんばかりの紅トマトもぐ/古田敬二
木で熟れたトマトは真っ赤。それもはちきれんばかりの紅。強い夏の日差しを糧に赤々と熟れるトマトが見事だ。(高橋正子)

[7月23日]
★外つ人のあまた祇園や日盛りに/桑本栄太郎
京都を訪れる外国人は多いが、なかでも祇園の情緒に惹かれる外国人が多いだろう。京の日盛りをものともせず、祇園を楽しむ外国人たちの姿は、京の風景になっているようだ。(高橋正子)

[7月22日]
 六甲アイランド埠頭
★夏潮の海原蒼きカフェレストラン/桑本栄太郎
夏潮の海原の蒼さは、見るだけで爽快な、広々とした気分になる。カフェレストランでゆっくり喫茶しながら眺める時間は至福の時。(高橋正子)

[7月21日]
★黒光りして児の掌にかぶと虫/河野啓一
子ども、特に男の子は、虫の中ではかぶと虫がとりわけ好きだ。黒光りする胴体、たくましい角、決して敏速には動かない堂々とした様子。そのかぶと虫を掌に乗せて、王者の気分だ。(高橋正子)

7月21日-31日

7月31日

●古田敬二
炎天や我が影のほか影は無し★★★★
炎天の高く立つものがない畑などでは、こうした場面に出会う。炎天の下に静まったところに立っているのは自分だけ。自分の影だけが黒く立つ。(高橋正子)

忘れ鍬越えて南瓜の蔓伸びる★★★
地下鉄という涼しき箱に入り座す★★★

●小口泰與
ダリア咲く頭花かがやく雨しづく★★★
手に乗せし桃や小犬の駆け寄りて★★★
青芝を手ずから刈って大の字に★★★★

●桑本栄太郎
雲流れ青空蒼き晩夏かな★★★★
落ち蝉の白き腹見せあおのけに★★★
寝ていても部活の声と蝉しぐれ★★★

●小西 宏
ヒマワリに顔見つめらる知らぬ道★★★★
波音に耳を澄ませば夏の星★★★
窓開けて寝れば澄む夜の風涼し★★★

7月30日

●小口泰與
まんまるなしずくにうつるダリアかな★★★
緋のダリアほろと落ちたる雨雫★★★★
天牛や茎のしずくのほろと落つ★★★

●河野啓一
きゅうり漬カリリと噛んで朝の膳★★★★
異国より来れる芙蓉オクラ咲く★★★
 淡路島西海岸にて
夕凪や人麻呂の歌碑ひとり立ち★★★

●多田有花
まだ熱き陽のぬくもりの瓜もらう★★★★
夕方もまだ早い時間だろう。畑の瓜をもらったが、手に受けてみるとまだ陽のぬくもりがある。日中の暑い太陽を受け、野菜も温もっているが、そのほの暖かさに驚く。(高橋正子)

虫取り網手に少年の夏休み★★★
頂に揚羽蝶の翅残る★★★

●桑本栄太郎
ふと見上ぐ窓の青さや晩夏光★★★★
まだ暑い盛りであるが、草木の繁茂も終わり、烈日にも陰りが見え、夏が終わる感慨が湧くのが、晩夏。ふと見上げた窓の青さに秋めく気配を感じた。(高橋正子)

部活子の校舎に音色や夏深し★★★
すさまじく蚊を打つ吾を恥にけり★★★

●小西 宏
群青の海遥かなる夏の雲★★★
日焼けして目玉ばかりや浮き輪の子★★★★
青草に大の字に寝て星いくた★★★

●高橋秀之
夏の空昇る朝日は眩しくて★★★
拍子打つ神田明神夏の朝★★★★
男坂の階段登り汗拭う★★★

7月29日

●古田敬二
梅を干す四日目塩の光り出ず★★★★
梅干しは土用干しをすると、ふっくらとして甘みがでると聞く。干して四日目にもなると塩の粒が光るようになる。土用の太陽のもとの塩の光がいかにも真夏らしい。(高橋正子)

赤き口見せて烏の暑に喘ぐ★★★
夕風にひそかな秋の気配せり★★★

●小口泰與
近づくと我へわれへと目高かな★★★★
目高などが、自分に近寄ってくるのは、遊びに寄ってくるようで、楽しいものだ。ひと時そんな楽しみを味わう。それも涼しいことだ。(高橋正子)

あけぼのや花粉にまみる黄亀虫★★★
独りなら朝は珈琲秋近し★★★

●桑本栄太郎
黒雲の驟雨来るらし風立ちぬ★★★
さるすべり揺れ特急電車の通過駅★★★★
真夜に起き窓を閉め居る涼夜かな★★★

●高橋正子
しもつけの花の紅色箱根の野★★★★
街とは違った、高原の風景に旅人の目を楽しませてくれる。箱根の野のしもつけは、淡い紅色だが鮮明だ。(高橋信之)

山嫁菜箱根の山の涼しかり★★★
夏雲の水に映りて姫河骨★★★

7月28日

●祝恵子
八百八橋の一つを渡り夏歩き★★★
空蝉の転がりおりぬビルの街★★★
樹にもたれ絵描く数人夏帽子★★★★
絵を描くのに、必ずしも座って描くとは限らない。木陰を作る木の幹に持たれ、夏帽子を冠り、スケッチをしているグループなのであろう。暑苦しくなく、軽やかな光景だ。(高橋正子)

●小口泰與
雲の峰水面に暮の色さだか★★★
あじさいや川に沿いたる吾妻線★★★★
山小屋や俄かに黒雲あらわれし★★★

●古田敬二
風吹けば光りて現る青胡桃★★★★
葉隠れに生っているまだ青い胡桃は、葉に隠れてめだたないが、風が葉を翻えすと、胡桃のありかがよくわかる。ましてや光っているのだから、存在は確かだ。(高橋正子)

チェロケース黒光りして行く炎天★★★
涼風の芦原まあるく撫でて来る★★★

●河野啓一
レース越し道行く人の見え隠れ★★★
ひとしきりうるさき蝉のしづまりて★★★
鱧つつき川を見下ろす天神祭★★★★

●桑本栄太郎
<高瀬川>
せせらぎの木陰に流れ白木槿★★★
<祇園界隈>
紅壁の花見小路や朝驟雨★★★
驟雨去り日差し明るき京町家★★★★

●高橋秀之
列車降り出歩く街に夏の雨★★★
町おこしラリーの店で梅酒飲む★★★

夏の虹海岸線に大きな弧★★★★
虹は雨上がりの水滴に日光が当たって生まれ、この現象は夏に多く見られる。そのため、虹は夏の季語となっているので、「夏の虹」には、問題がある。

7月27日

●河野啓一
蝉の声猛暑を短き一生に★★★★
蝉が羽化してから一生を終える期間は、ごく短い。猛暑を鳴き通して死ぬのは、力強いが気の毒と思える。そういう一生もある。(高橋正子)

人の世もかくて在りなむ蝉すだく★★★
野牡丹の紫の艶愛しかり★★★

●小口泰與
夏枯れやかりつと噛みし花林糖★★★
ゆうがおや畦に鍬おく老夫婦★★★
犬ずれの吾にからみし西日かな★★★★

●桑本栄太郎
さるすべり白という風誘いけり★★★★
炎暑来る音みな黙す午後の二時★★★
風通る一間に集う午睡かな★★★

●多田有花
雲生まれ初めにし盛夏の山の上★★★
暑き日の風よく通る部屋に座し★★★
アイスショー終わり熱帯夜の中へ★★★★

●高橋秀之
一面の青田を真っ直ぐ列車行く
【添削】一面の青田を真っ直ぐ行く列車★★★★
下五を名詞で止めると句のイメージがはっきりする。一面の青田が広がる平野。その中を列車が、まっすぐ行く。青田の清々しい風景が、旅心を誘う句。(高橋正子)

日の盛り旧型汽動車が唸る音★★★
百選の小さな駅舎に扇風機★★★

7月26日

●小口泰與
嬬恋のきゃべつ畑や風と雲★★★★
風死すや寝に着く前の般若湯★★★
雨後の朝日矢を受けたる茄子かな★★★

●迫田和代
空に香があると思える虹が咲く★★★★
虹を花と見たロマンティックな句だが、「空に香がある」には、感覚の鋭さがある。美しいものには、「香」がまとう。(高橋正子)

緑燃え木陰の多い夏館★★★
青田道山陰に向きまっすぐに★★★

●祝恵子
鴨はもう植田の高さに隠れおり★★★★
植田に鴨を泳がせ、鴨に雑草を食べさせ、鴨の飼育を目的としているケースなのだろう。植田の苗は、みるみる生長し、鴨の姿を隠してしまうほどになった。苗も、鴨も生長盛ん。(高橋正子)

墓地の草抜き散策の足のばす★★★
夏休み竹刀の音と掛け声と★★★

●桑本栄太郎
黒瓦屋根が好みよ百日紅★★★★
飛ぶものと鳴くもの黙し炎暑来る★★★
八方に討死したる昼寝かな★★★

7月25日

●河野啓一
早朝の木漏れ日蝉を連れてくる★★★★
「蝉を連れてくる」に、今日一日の生活の楽しさが想像できる。早朝の木漏れ日に蝉がなきはじめている。(高橋正子)

柿の葉のゆらりと揺れて青柿も★★★
白良浜白波寄せて浜木綿に★★★

●小口泰與
嬬恋のきゃべつ山積み湖隠す★★★★
夏の冷涼な気候を生かして、嬬恋ではキャベツがたくさん生産される。湖を隠ししてしまうほどのキャベツの収穫量。壮観であろう。(高橋正子)

爪立ってカメラ構える祭りかな★★★
夏蝶のつかず離れず高みへと★★★

●桑本栄太郎
 真夏の山陰街道
緑蔭の杜の大樹や朱の鳥居★★★★
街道の古び炎暑の犬矢来★★★
バス道の触れんばかりや百日紅★★★

●川名ますみ
茂りから透り来し陽の編み物に★★★
コットンのニットを抜けて風薫る★★★
レース着て母はわたしを抱きたり★★★★

●小川和子
白粉花暮れゆく空に咲き揃う★★★★
白粉花は夕方から咲く花。暮れゆく空に咲く花は、かすかな良い香りがあり、抒情的。(高橋正子)

暮れてゆく一日咲き継ぐ花白粉★★★
 庄内メロン
メロン食ぶ匙よく通る頃合いに★★★

7月24日

●小口泰與
卓袱台の塵の浮き立つ西日かな★★★
白昼に空酒飲みて暑気払い★★★
近づくや水面にぎわす目高どち★★★★

●多田有花
清流に足を浸して夏の午後★★★★
梅雨明けの部屋全開に風入れる★★★
熊蝉の声に囲まれ目を覚ます★★★

●河野啓一
窓越しに見る百日紅デイの朝★★★★
川沿いに酒酌み交わし天神祭★★★
コンチキチン音彩織れる交響詩★★★

●桑本栄太郎
高槻の青田につづく瓦屋根★★★★
青田に瓦屋根は、日本の原風景といってよい。夏の日に輝く青田を遠巻きにするように瓦屋根の民家ある。青田と瓦の色は、懐かしくここと安らぐ日本の風景だ。(高橋正子)

立つ風の淡き隣の扇子かな★★★
峰雲の嶺から谷へ送電線★★★

●小西 宏
マンションにひまわり育つ子らの水★★★★
赤土に木星のごとスイカ寝る★★★
水黽(あめんぼ)の脚止まりたるとき水輪★★★

●古田敬二
はちきれんばかりの紅トマトもぐ★★★★
木で熟れたトマトは真っ赤。それもはちきれんばかりの紅。強い夏の日差しを糧に赤々と熟れるトマトが見事だ。(高橋正子)

桜木の樹形丸ごと蝉しぐれ★★★
人は皆仲よくすべし椋の花★★★

7月23日

●小口泰與
百日紅雨をともない散りにけり★★★★
百日紅は、真夏の暑さにもめげず咲き続ける強靭な花だが、一つ一つのはなは、フリルのような花弁をもって繊細だ。雨が降りかかるとその小花が雨とともに散るが、真夏の暑のなかで儚さを思わせる。(高橋正子)

凌霄花や水に沈みし無人駅★★★
音のして青梅落ちし流れかな★★★

●桑本栄太郎
外つ人のあまた祇園や日盛りに★★★★
京都を訪れる外国人は多いが、なかでも祇園の情緒に惹かれる外国人が多いだろう。京の日盛りをものともせず、祇園を楽しむ外国人たちの姿は、京の風景になっているようだ。(高橋正子)

祇園花見小路界隈
さるすべり寺苑に多き建仁寺★★★
涼風の木陰となりぬ高瀬川★★★

●古田敬二
モロコシの固き実りをごきともぐ★★★★
ごきごきと太きモロコシもげば風★★★
モロコシをもげば畑に風来たる★★★

●高橋信之
夏休みの子ら球を蹴る公園広場★★★
炎天の白い空見上げては歩く★★★★
黄花揺れてそこに涼しい風が吹く★★★

●高橋正子
午後の日の色に染まりて黄花コスモス★★★★
炎天に咲く黄花が明るい。暑さを忘れさせるほどの明るさが嬉しい。(高橋信之)

真昼間の影をもちたる金糸梅★★★
六月に入りたる朝摘むブルーベリー★★★

7月22日

●小口泰與
百日紅そぼふる雨の牧場かな★★★
木道の一筋続くきすげかな★★★★
ありんこは二肢より歩みそめにけり★★★

●河野啓一
梅雨明けて列島覆う高気圧★★★
朝採りのトマト回転楕円体★★★
中玉の西瓜を一つ選びたり★★★★

●桑本栄太郎
<六甲アイランド埠頭海浜レストラン>
夏潮の海原蒼きカフェレストラン★★★★
夏潮の海原の蒼さは、見るだけで爽快な、広々とした気分になる。カフェレストランでゆっくり喫茶しながら眺める時間は至福の時。(高橋正子)

水脈ひろげ舟が船曳く夏の海★★★
岸壁に竿立ち並ぶ晩夏かな★★★

●小西 宏
雷神の水に遊べるガラス窓★★★
紫や白や槿の散歩道★★★
瀬に裸足入れて多摩川梅雨明ける★★★★

7月21日

●古田敬二
 相生山から市街地を望む
夏雲やわが青春の街の上★★★★
青春といえるのは、大学生ぐらいの年代であろうが、その時を過ごした街は、特になつかしいものである。その街の上に浮かぶ真っ白なはつらつとした雲に、わが青春を重ねて思う。(高橋正子)

ラグビー場夕陽に向かって照明塔★★★
明け易しガン病棟の友思う★★★

●小口泰與
百日紅沛雨に打たる野良犬よ★★★
つぶらなる茎立つ皿のさくらんぼ★★★★
喰われたるばらの蕾や鴉二羽★★★

●河野啓一
黒光りして児の掌にかぶと虫★★★★
子ども、特に男の子は、虫の中ではかぶと虫がとりわけ好きだ。黒光りする胴体、たくましい角、
決して敏速には動かない堂々とした様子。そのかぶと虫を掌に乗せて、王者の気分だ。(高橋正子)

浜木綿の咲いてま白の糸紡ぎ★★★
釣果提げ息の来たるや梅雨晴間★★★

●佃 康水
噴水に濡れて雀の小躍りす★★★
語り部と旅人仰ぐ夾竹桃★★★
緑濃き稲に白鷺見え隠れ★★★★

●多田有花
森歩く時おり涼風吹く中を★★★★
日に焼けた少年の肌夏休み★★★
滝行に向う白装束の群れ★★★

●桑本栄太郎
唐黍の採り頃つたえ赤き髪★★★
凌霄花(のうぜん)の夕日にこぼれ風にゆれ★★★★
推敲の窓の茜の西日かな★★★

7月21日(月)/海の日

★泳ぎ子の母呼び父と沖にいる  正子
広い海で「お母さん」と呼ぶ声が青い空に吸い込まれていくようです。優しい父母のもとで育てられている子どもの姿が輝き、楽しい夏の思い出の1ページが甦るようです。(井上治代)

○今日の俳句
たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
夏は水が気持ちがよい。野菜を洗うにも手に水を楽しみながら洗う。夏野菜もいろいろとあって、新鮮そのもの。それが涼感を句にもたらしている。(高橋正子)

○山百合

[山百合/横浜・四季の森公園(2012年7月19日)]_[山百合/東京白金台・自然教育園(2013年7月9日)]

★山百合を捧げて泳ぎ来る子あり/富安風生
★山百合の木蔭孤高を守り咲く/宮崎正
★山百合や幾曲りして通夜の家/石田邦子
★山百合のいつせいに咲く坂の町/庄中健吉
★山百合を剪るや五輪の花おもく/瀧春一
★夜を徹す百合の香にあり書き継げり/岡本眸
★一月の百合を捧げて祈りけり/稲畑汀子
★いよよ咲く百合よ歓喜の蘂放ち/林翔
★百合といふ百合が鉄砲百合の島/宮津昭彦

 子どものころは、百合と言えば梅雨の走りのころから咲く白い鉄砲百合と夏休みに咲く赤い鬼百合の二つであった。今はカサブランカのような豪華な百合やさまざまな色のすかし百合の仲間がたくさんあるようである。昭和30年代だったと思う。父が前の畑に百合の花を売るために植えた。そのころは売る花は菊に限って農家が栽培していたようだが、父は鉄砲百合に挑戦して、うまく咲かせた。蕾のときに切り取られるが、白がかった緑色の蕾と鋏で切り取る音が目に耳に残っている。咲いてしまった花は学校に持っていった。鉄砲百合の花は生活の花となっていた。
 もう7,8年前になるだろうか。瀬戸内海が遠くみえる松山のマンションのベランダでカサブランカを育てた。その芽は、筍ほどで、百合の芽とは思えなかった。たしかにカサブランカの花であった。
 夏休みのころ咲く赤い百合は、すぐ前の伯父の家にあって、垂らした簾に似合っていた。冷房もない時代、それも涼しい景色だった。旅をすれば、切通しのがけなどに白い百合が咲いている。白百合は、清純さの代表ともなって、祈りの花としても欠かせない。
今年7月19日、四季の森公園へ行った。この日は大賀蓮を見るのが主な目的であったが、里山の林縁を歩くうちに、山百合に出会った。花の重みで茎が倒れている。細い竹を支柱に立ててあったが、ヘクソカズラの蔓が山百合に巻きついて支柱も用をなさないところもあった。数花咲かせているのも、一輪のもあったが、その大きさと蕊の朱色の強烈さに驚いた。今年は四季の森公園の山百合が例年になくよく咲いているとのことであったが、私が山百合を見たのは初めてである。神奈川県の県花に指定されていて、北陸地方を除く、近畿地方以北の山の林縁や叢に生えていると知った。

★雲行かす山百合朱き蕊を立て/高橋正子
 
  富士登山のとき・河口湖
★松林に白百合のまばら富士裾野/高橋正子

 百合は、ユリ目ユリ科のうち主としてユリ属(学名:Lilium)の多年草の総称である。属名の Lilium はラテン語でユリの意。アジアを中心にヨーロッパ、北アメリカなどの亜熱帯から温帯、亜寒帯にかけて広く分布しており、原種は100種以上を数える。代表的な種に、ヤマユリ、オニユリ、カノコユリ、ササユリ、テッポウユリ、オトメユリなどがある。ヤマユリ(山ユリ、学名:Lilium auratum)とはユリ科ユリ属の球根植物。日本特産のユリ。北海道と関東地方や北陸地方を除く近畿地方以北の山地の林縁や草地に分布する。和名は、山中に生えることからつけられた。草丈は1~1.5m。花期は7~8月頃。花は、花弁が外に弧を描きながら広がって、1~10個程度を咲かせる。その大きさは直径20cm以上でユリ科の中でも最大級であり、その重みで全体が傾くほどである。花の色は白色で花弁の内側中心には黄色の筋、紅色の斑点がある。花の香りは日本自生の花の中では例外的ともいえるほど、甘く濃厚でとても強い。発芽から開花までには少なくとも5年以上かかり、また株が古いほど多くの花をつける。風貌が豪華で華麗であることから、『ユリの王様』と呼ばれる。1873年、ウィーン万博で日本の他のユリと共に紹介され、ヨーロッパで注目を浴びる。それ以来、ユリの球根は大正時代まで主要な輸出品のひとつであった。西洋では栽培品種の母株として重用された。カサブランカ(Casa blanca)は、日本に自生する山百合と鹿の子百合等を交配して育種された。 ヤマユリは神奈川県の県の花に指定されている。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)