■雛祭りネット句会入賞発表■

■ひな祭りネット句会■
○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

■入賞発表/2015年3月4日■

【金賞】
★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
青畳は、藺草の匂いが芬々としてすがすがしい。そして畳替えをした新鮮さがある。その座敷に雛が飾られ雛飾りが力強く印象づけられる。(高橋正子)

【銀賞2句】
★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
「伸びゆけり」が、春の耕しをよく伝えている。耕して畝を作る。黒々とした畝がどんどんと出来上がり、畝自体が「伸びる」ようで、力強く、農作業の楽しさがある。(高橋正子)

★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
囀りが空から降ってくるうららかさ。空を仰げば空の色は柔らかな水色。このうららかさは、やはり、瀬戸内の穏やかな春をよく詠っていると思う。(高橋正子)

【銅賞3句】
★美しやあの色この色雛あられ/迫田和代
雛あられの色は、ひし餅の色も含めて、時には黄色も加わる。あの色この色がとり混ざり、小さな色の転がりが美しい。(高橋正子)

★一軸の墨痕清し雛の間に/藤田洋子
雛の部屋に軸が一本掛けられ、墨痕が匂うようにすがすがしい。あでやかな雛の色と対比され、黒々とした墨痕の力強さが雛の間を引き締めている。(高橋正子)

★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
ミモザと焼きたてパンの取り合わせが、軽やかでお洒落だ、ミモザが咲く道を焼きたてパンを買って自転車で帰る生活の楽しさ。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
ミモザだっていい香りでしょう。それに焼きたてのパン 生活力のある生き生きした句ですね。 (迫田和代)

★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
作物や野菜の種を撒く前や苗を植え付ける前に畑の土を耕し柔らかく解します。天地返しの土は黒々と伸び、いよいよ種まきですね。「伸びゆけり」の措辞が作物の豊作をも予想させます。(佃 康水)

★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
春めいた野山や公園などにはとりどりの鳥の囀りを聞く事ができます。
何の鳥だろうと空を仰ぎ囀りを聞いている作者も鳥達も瑞々しい蒼天の春を謳歌している様です。(佃 康水)

★一軸の墨痕清し雛の間に/藤田洋子
お雛様を飾ったお部屋に一幅のお軸が掛けられています。清々しい軸の墨痕が雛の間の一層の品格と佇まいを想起させ素敵です。(佃 康水)

★菜花つむ袋に一杯透くほどに/古田敬二
やっと寒さも和らぎ野に出て菜花をつむひととき、あたたかな心楽しい季節の喜びが伝わります。袋に一杯の菜花の黄色が、いっそう明るい春を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★大空は小さな梅の向こう側/高橋秀之
小さな梅の花の向こう側には、広い大きな空が広がる。梅の清潔で、慎ましい花の姿が印象づけられる。(高橋正子)

★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
★青という空に垂れたる榛の花/高橋正子

【高橋正子特選/8句】
★美しやあの色この色雛あられ/迫田和代
雛あられは作者にとって格別の感慨をお持ちの事でしょう。お婆様が毎年作って送って下さっていたことをお聞きした事があります。淡い彩りの雛あられに遠い昔を懐かしみ明るく詠まれた御句です。 (佃 康水)

★ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に/藤田洋子
黄色いミモザの花が美しく咲く春の朝にパンを焼く。香ばしい香りが漂う。おすそ分けにと自転車に乗る。春の生き生きとした暮らしが浮かんでくる。 (内山富佐子)

★紅梅やふるさと発ちし頃なりき/桑本栄太郎
紅梅が咲く頃、故郷を後にして、都会へ出られたのでしょう。紅梅が咲くのを見ると、そのころを思い出す。過ぎてしまえばみな美しくなつかしいものになります。(多田有花)

★ぼんぼりに桃花耀く雛飾り/河野啓一
ほのかなぼんぼりの光に照らされたお雛様。桃の花もやさしく、現代の雛祭りというよりも、旧暦で祝われていたころのイメージが浮かんできます。(多田有花)

★春耕の畝黒々と伸びゆけり/古田敬二
★青畳匂う座敷に雛飾る/佃康水
★囀を仰げば空の水色に/柳原美知子
★ひな祭り嫁ぎし娘(こ)の幼なき日よ/高橋信之

【入選/8句】
★雛めぐりする町安芸の小京都/高橋秀之
安芸の小京都といえば、竹原。江戸時代に製塩業で栄えた古い町並みの中で所蔵される雛人形が展示されているのですね。それを巡って歩くのも趣のある雛祭りでしょう。 (多田有花)

★杉玉の揺るる街並み雛めぐる/佃康水
杉玉は別名酒林とも言われ、造り酒屋の軒先に飾り宣伝のひとつともしていました。杉玉のある街並みとは
それだけ古く鄙びた街並みでもあり、その町は旧家も多く、桃の節句には雛人形をお披露目もするのでしょう。そこをめぐり歩くとは趣きを覚えます。 (桑本栄太郎)
歴史を感じ風情漂う街並みに、雛飾りを愛でるひととき。しっとりと落ち着いた佇まいの中、しみじみと日本のよさが感じられます。 (藤田洋子)

★難しきことはともあれ桜餅/内山富佐子
人生生きていれば何かと難しいことに出会う。まあ、命をとられるほどのことはないと思うし、美味しい桜餅があることだ。今日はいい日だったと思うことにしよう。 (古田敬二)

★蓬摘む故郷恋しくなる夕べ/古田敬二
蓬を摘めば、香りと手に触れる感触に子供の頃の思い出が蘇ります。お母様の手作りの蓬餅の味、故郷の豊かな自然、かけがえのない故郷がいつまでも平和であってほしいものです。 (柳原美知子)   

★春寒の厨に立ちて卵とく/内山富佐子
まだまだ寒さの残る日の台所。料理のためにたまごをとくことにも気持ちが引き締まります。(高橋秀之)

★日の目見る十年越しの雛かな/小口泰與
十年という歳月を経て飾られたお雛様。変わらぬお雛様の優しい微笑に、自ずと心和み明るい気持ちになられたことでしょう。(藤田洋子)

★春夕焼け京阪電車の車窓より/多田有花
京阪電車は京都と大阪を結ぶ電車なので、京の雅やかさや商都大阪の生き生きと活動的な人たちが乗合っている。春夕焼けもそんな雰囲気で眺められるのだろう。(高橋正子)

★初恋の面輪もならぶ紙びいな/矢野文彦
紙の雛にそれぞれの顔が描かれている。一つ一つを眺めていて、遠い昔の初恋の乙女の面輪がふと浮かび、懐かしくも遠い昔が忍ばれた。品のある句。(高橋正子)

■選者詠/高橋信之
★ひな祭り嫁ぎし娘(こ)の幼なき日よ
雛祭りが来て、嫁いで行かれた娘さんの幼児時を想い出しておられる親心に共感を覚えます。色んな思い出が次々浮かんでくることでしょう。(河野啓一 )

★ひな祭りの朝暗がりの窓外よ
ひな祭りの日の未明。まだ明けやらぬ窓外の暗がりが、ひな祭りと思えばこそ、うるおって、春めいて感じられる。未明のひな祭りを詠んだ句も珍しい。(高橋正子)

★もの書くに窓外春の暗がりよ
ものを書く人は、昼間のしんとした時間だけでなく、夜や未明に起きて書く人が多い。ものを書きながら手を休め窓の外を見ると、暗がりながら、潤い春めいている。曙の日が差すのはもう少しあと。微妙な時間帯の暗がりを楽しむ。(高橋正子)

■選者詠/高橋正子
★身ほとりに紙雛かざり雛祭り
十段飾りや五段飾りも素晴らしいが、身のまわりをご自分で作った紙雛で飾って人生を楽しんでいる作者の素晴らしい生き方に感銘を覚えます。(小口泰與)

★青という空に垂れたる榛の花
早春の雑木林でいち早くみかける榛の木の花、下垂した紐状の花穂が独特の存在感です。高々と木立の枝先に垂れる榛の花が、まさに「青」と呼べる美しい空に映えて、辺りの清々しく澄んだ空気、明るい春の気配を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★山桜帰り遅れし鶫おり
「山桜」の開花時期は、その種類によって、まちまちだが、この句の「山桜」は、開花時期の比較的早いものであろう。開花時期の早い「山桜」と帰りの遅い鶫との取り合わせで、にぎやかな風景を捉えた。早春の面白い風景で、「春が来た」という嬉しさと楽しさのある句だ。(高橋信之)

■互選高点句
●最高点(7点)
★青という空に垂れたる榛の花/高橋正子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

◆雛祭りネ ット句会清記◆

■雛祭りネ ット句会清記(2015年3月)■
【14名42句】

01.有職のおもざし愁う雛灯り
02.紅梅やふるさと発ちし頃なりき
03.店先の京の老舗や花菜漬
04.日の目見る十年越しの雛かな
05.百千鳥マーブルチョコの色あわし
06.五色豆かりっと噛むや百千鳥
07.春夕焼け京阪電車の車窓より
08.山下りてさっと炙りし鰆食ぶ
09.春の夜のホームにスイートポテトの香
10.蓬摘む故郷恋しくなる夕べ

11.菜花つむ袋に一杯透くほどに
12.春耕の畝黒々と伸びゆけり
13.雛めぐりする町安芸の小京都
14.大空は小さな梅の向こう側
15.うっすらと夜明けの生駒は春霞
16.青畳匂う座敷に雛飾る
17.杉玉の揺るる街並み雛めぐる
18.稲株を覆い一面草青む
19.埃箱中から昔の雛の顔
20.美しやあの色この色雛あられ

21.懐かしい故郷想う田螺あえ
22.囀を仰げば空の水色に
23.青饅の瑞々しきを小鉢に盛り
24.色紙に描く女雛いつしか我に似て
25.一軸の墨痕清し雛の間に
26.雨水晴れ花鉢一つ買い求む
27.ミモザ咲き焼きたてパンを自転車に
28.孫娘幼き頃の雛人形
29.ぼんぼりに桃花耀く雛飾り
30.春霞み瀬戸の島影海の色

31.身ほとりに紙雛かざり雛祭り
32.山桜帰り遅れし鶫おり
33.青という空に垂れたる榛の花
34.ひな祭りの朝暗がりの窓外よ
35.ひな祭り嫁ぎし娘(こ)の幼なき日よ
36.もの書くに窓外春の暗がりよ
37.白酒に酔いしふりしていたりけり
38.初恋の面輪もならぶ紙びいな
39.うすれゆく二日やいとの痕正す
40.春川の流れにまかせ番鳥

41.春寒の厨に立ちて卵とく
42.難しきことはともあれ桜餅

※選句を開始してください。明日(3月4日)午前9時までに済ませてください。

◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、3月3日(火)午後7時から始め、翌日(3月4日)午前9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、3月4日(水)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、3月4日(水)正午~3月5日(木)午後6時です。

◆雛祭りネ ット句会ご案内◆

●雛祭りネット句会投句案内●
①投句:当季雑詠(雛祭り・春の句)3句
②投句期間:2015年3月2日(月)午前0時~2015年3月3日(火)午後6時
③投句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。
※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:3月3日(火)午後7時~3月4日(水)午前9時
②入賞発表:3月4日(水)正午
③伝言・お礼等の投稿は、3月4日(水)正午~3月6日(金)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

3月2日(月)

★芽柳のるると色燃ゆ向こう岸   正子
柔らかい風にさ緑の芽を付けた柳の枝が川の畔などで靡くさまに瑞々しい春の趣を感じます。「るると色燃ゆ」の措辞に向こう岸の若緑の芽柳は日毎に濃い緑へと成長し、しなやかにそして爽やかに揺れる光景が目に浮かびます。傍で見るよりも向こう岸に揺れている芽柳の方が朧に見えて余計風情を感じられる様に思います。(佃 康水) 

○今日の俳句
海の味口に溢るる牡蠣祭り/佃 康水
牡蠣をはじめ貝類は、とくに潮の香りがする。牡蠣祭りでたくさん牡蠣を召し上がったことだろうから、口中には海の味があふれるほどに。(高橋正子)

○ヒアシンス(風信子)

[ヒアシンスの花/横浜日吉本町]

★一筋の縄ひきてありヒヤシンス/高浜虚子
★敷く雪の中に春置くヒヤシンス/水原秋桜子
★銀河系のとある酒場のヒヤシンス/橋石
★誰もゐなくて満開の風信子/如月美樹

★ヒアシンス白水仙とあわせ活け/高橋正子
★ヒアシンスの香り水より立つごとし/高橋正子

ヒアシンスともいう。小アジア原産。草丈20センチほど。色は白・黄・桃色・紫紺・赤など。香りが高い。ヒヤシンスの名は、ギリシャ神話の美青年ヒュアキントスに由来する。彼は愛する医学の神アポロンと一緒に円盤投げに興じていた。その楽しそうな様子を見ていた西風の神ゼピュロスは、やきもちを焼いて、意地悪な風を起こした。その風によってアポロンが投げた円盤の軌道が変わり、ヒュアキントスの額を直撃してしまった。アポロンは医学の神の力をもって懸命に治療するが、その甲斐なくヒュアキントスは大量の血を流して死んでしまった。ヒヤシンスはこの時に流れた大量の血から生まれたとされる。
ヒヤシンスは花茎がまっすぐで意外と頼もしい。しかし優艶。こんなところからか、特に青い花を見ていると美青年が髣髴される。
ヒヤシンスを植えたところは踏まれないように縄を一筋張って置く。縄を張るなんていかにも昭和らしい。今日2月29日は朝から粉雪が舞い、2センチほど積もっている。春の雪が敷く花壇にヒヤシンスが咲けば、そこだけ「春」が置かれたようになる。虚子、秋桜子と対照的な句だが、ヒヤシンスの姿をよく表わしている。わが家では、年末水栽培のヒヤシンスを買い、早も咲いていたのだが、花の匂いを楽しんだ。水栽培で子どもたちでも楽しめる。

 以上の文は、2月が29日あった最近の年の文。つまり、2012年。
 今年(2013年)も年が明けてヒアシンスの鉢植を近所の花屋で買って楽しんだ。薄い紫を選んだ。一鉢に三球ある。花は全部で六本咲いた。一球から二本ずつ花が咲いた。二本目が立ちあがるころ最初の花の茎が斜めに倒れるので切り取って花瓶やコップに挿した。ヒアシンスが一番似合ったのはキッチン。薄紫ばかりで単調なので散歩の途中、山裾の捨て球根から育った蕾の水仙を二本摘んで来て一緒に挿して置いたら、とても清楚なまっしろな水仙が開いた。それが、またヒアシンスと特別よく似合った。

◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)